【発明の効果】
【0009】
本発明における鋼橋を構成する鋼製閉断面部材は、ウエブおよびフランジによって形成される閉空間を有し、その閉空間内にダイヤフラムを備えて構成される。ダイヤフラムは、箱形断面の閉断面部材を、断面変形に伴う2次応力が小さくなるようにして、その断面形状が保持できるように補剛する。本件発明者は、地震によって鋼橋の閉断面部材に圧縮荷重が作用し、したがって、鋼橋の耐震性能を向上するには、閉断面部材を補剛することが重要であることを解明した。地震発生による圧縮荷重が作用する部材は、たとえば、長大橋のトラス桁の横トラスなどの鋼桁を構成する下弦材、中弦材または上弦材などであってもよい。鋼製補剛材は、T形断面またはL形断面を形成するフランジとリブとを有する。補剛材は、閉断面部材に沿って、補剛材のフランジが鋼製閉断面部材のウエブまたはフランジの外表面に配置される。たとえば、各補剛材の長手方向の軸線と閉断面部材の長手方向の軸線とが仮想平面内で平行に、補剛材のフランジが閉断面部材のウエブまたはフランジのいずれか一方、たとえば、ウエブの外表面に、またはウエブおよびフランジの両者の外表面に配置される。補剛材は、ダイヤフラムの位置を避けて配置され、たとえば、閉断面部材の長手方向に複数のダイヤフラムが設けられる構成では、2つのダイヤフラム間で、ダイヤフラムの位置に重ならないように、延びて配置される。
【0010】
補剛材のフランジと鋼製閉断面部材のウエブまたはフランジとを貫通して、補剛材と閉断面部材との長手方向に間隔をあけて、複数の支圧接合用下穴が予めそれぞれ削孔される。したがって、補剛材のフランジの支圧接合用下穴と、閉断面部材のウエブまたはフランジの支圧接合用下穴とは共通の一直線上に軸線をそれぞれ有し、内径D11をする。たとえば、長手方向に隣接する支圧接合用下穴の内径D11は、相互に異なってもよい
【0011】
支圧接合用ボルトは、高強度ボルトによって実現されるワンサイドボルトである。支圧接合用ボルトの軸部には、支圧接合用下穴の内径D11を超える外径D21(D11<D21)を有するおねじが刻設される。支圧接合用ボルトの軸部は、補剛材のフランジと閉断面部材のウエブまたはフランジとの各支圧接合用下穴に、この順序で、ねじ込まれ、めねじを自ら形成しながら進んで、支圧接合孔を形成する。こうして、支圧接合用ボルトは、補剛材のフランジと閉断面部材のウエブまたはフランジとを支圧接合する。
【0012】
したがって、閉断面部材は、補剛材によって補強され、地震時に生じる圧縮力による閉断面部材の座屈を防止することができる。補剛材は、閉断面部材の局部座屈に対する許容応力度の基準耐荷力曲線における幅厚比に関連する断面パラメータR
R を小さく改善し、座屈耐荷力、すなわち、座屈時の座屈応力度σcrを向上する。
【0013】
本発明に用いる支圧接合用ボルトは、支圧接合用下穴の孔壁に、めねじを形成しながらねじ込むので、形成される支圧接合孔におけるねじ部の気密性、水密性の密閉性が高い。閉断面部材の閉空間に臨む内面の防錆塗装がされていなくても、防食性能の低下が生じることはなく、防錆され、本発明は、特に、腐食環境の厳しい海峡部に架設された長大橋などの鋼橋に好適に実施される。
【0014】
本発明の支圧接合によれば、補剛材のフランジに対向する閉断面部材のウエブまたはフランジの表面の塗膜を残したままで施工可能であるので、高い密閉性と相俟って、高い防食性能を達成できる。この塗膜は、支圧接合の施工完了後も、塗膜剥離および塗膜割れを生じないことを、本件発明者は確認している。
【0015】
補剛材を閉断面部材に接合するために、高力ボルトによる摩擦接合が、当業者に容易に考えられるであろう。高力ボルトによる摩擦接合の手法では、補剛材のフランジと閉断面部材のウエブまたはフランジとに、頭部付き高力ボルトの軸部よりも大径の共通なボルト融通孔を削孔し、一方側から高力ボルトの軸部を挿通し、他方側でナットを螺着する。この構成では、多くの問題がある。すなわち、閉断面部材のウエブまたはフランジの内外両側での施工が必要であり、施工作業性が劣る。また、この補剛材を高力ボルトによって摩擦接合する耐震補強工事によれば、高力ボルトの外径よりもボルト融通孔の内径が大きいので、不可避的に隙間が存在し、気密性、水密性の密閉性が劣る。そのため、閉断面部材の閉空間には、空気や雨水が侵入し、特に、腐食環境の厳しい海峡部に架設された鋼橋では、飛来塩分を含んだ空気や雨水が部材内部へ侵入し、閉空間の防食性能が低下する。さらにまた、この摩擦接合では、補剛材のフランジに対向する閉断面部材のウエブまたはフランジの外表面の塗膜を除去して鋼素地としなければならないので、この観点からも、防食性が劣る。密閉性を確保するには、閉断面部材の外方に露出している高力ボルトの頭部またはナットなどを覆うボルトキャップと、その付近を塗布するシール材が必要であり、維持管理コストがかさむ。
【0016】
本発明は、このような前述の多くの問題を解決し、閉断面部材の閉空間内における密閉性が高い耐震補強を可能にするので、維持管理コストの低減を可能にする。本発明は、道路、列車軌道などの使用に支障なく、交通規制、通行止めなどせずに、しかも閉断面部材の外方で簡易な施工作業性で実現できる。
【0017】
本発明では、支圧接合用ボルト181は、補剛材156のフランジ171と閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152との両者の各支圧接合用下穴197、198に、それぞれねじ込まれる構成であってもよいが、実施の他の形態では、補剛材156のフランジ171には支圧接合用下穴197に代えて融通孔が形成され、閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152の支圧接合用下穴198のみに、ねじ込まれて支圧接合孔187(
図12)を形成する構成であってもよい。
【0018】
本発明は、
鋼製閉断面部材121に予め定める長手方向の圧縮荷重が作用したとき、列を成す支圧接合用ボルト181のうち、列の中央寄りに存在する支圧接合用ボルト181に比べて列の端部寄りに存在する支圧接合用ボルト181が、
鋼製閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152の支圧接合孔187からの引抜きを生じることなく、かつその列の少なくとも端部寄りに存在する支圧接合用ボルト181の軸部193が剪断破壊しないように、
鋼製補剛材156のフランジ171および
鋼製閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152、ならびに支圧接合用ボルト181の機械的強度が定められることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、地震時に閉断面部材に生じる長手方向の圧縮力によって、支圧接合用ボルトに剪断力が作用しても、支圧接合用ボルトは、閉断面部材のウエブまたはフランジの支圧接合孔からの引抜きを生じることなく、全ての前記複数のうちの一部の数の支圧接合用ボルトが剪断破壊しても、残余の剪断破壊しない支圧接合用ボルトによって、補剛材は閉断面部材に固定されたままであり、剪断破壊した支圧接合用ボルトの破断した各部分は、めねじが切られている支圧接合孔から抜けることはない。したがって、支圧接合用ボルトの破断した各部分は落下せず、補剛材も落下せず、耐震補強部位の下方における安全が保たれる、という優れた効果が達成される。
【0020】
本件発明者の考え方によれば、地震によって閉断面部材に圧縮荷重が作用したとき、補剛材のフランジおよび閉断面部材のウエブまたはフランジが1列または複数の平行な各列を成す複数の支圧接合用ボルトによって支圧接合される本発明の継手では、その列の中央寄りに存在する、いわば中間の支圧接合用ボルトの軸部には剪断力がほとんど働かず、列の端部寄りに存在する、いわば端部の支圧接合用ボルトの軸部が大部分の大きな剪断力を受ける現象がある。したがって、閉断面部材に作用する圧縮荷重が増大すると、先ず、端部の支圧接合用ボルトの作用力が増加し、中央側になるにつれてそれよりも小さい値になる作用力が、中央側に次々と隣接する支圧接合用ボルトに作用してゆく。したがって、全てが同じ構成を有する各支圧接合用ボルトで同じ支圧接合をする場合、端部の支圧接合用ボルトの軸部が中間の支圧接合用ボルトの軸部よりも先に剪断破壊する。この現象は、圧縮荷重を受ける方向に並んでいる各列の支圧接合用ボルトの数が、たとえば、6以上、さらに10以上である継手範囲が比較的長い場合、顕著に生じる。
【0021】
本発明では、閉断面部材に、たとえば、地震時などに想定される予め定める長手方向の圧縮荷重が作用したとき、中間の支圧接合用ボルトに比べて大きな剪断力が作用する少なくとも端部の支圧接合用ボルトが剪断破壊しないように、前記機械的強度が定められる。したがって、たとえ、閉断面部材に前記予め定める値以上の圧縮荷重が作用して端部の支圧接合用ボルトが剪断破壊したとしても、その剪断破壊した軸部の先端側の一部分は、おねじと、それがねじ込まれためねじとの塑性変形、弾性変形などの係止によって、閉断面部材のウエブまたはフランジの支圧接合孔からの引抜きを生じることはなく、落下せず、また、剪断破壊した軸部の頭部側の残余の部分は、同じように補剛材のフランジの支圧接合孔からの引抜きを生じることはなく、落下せず、また、剪断破壊しない中間の支圧接合用ボルトによって補剛材は落下せず、これらの落下しないことによってそれらの耐震補強部位よりも下方における安全性が確保される。
【0022】
前記機械的強度は、前記落下しないことによる安全性を確保するために、補剛材のフランジおよび閉断面部材のウエブまたはフランジ、ならびに支圧接合用ボルトに関連する機械的な構造、機械特性、物理的特性、物性およびその他の要素によって定まる値である。その機械的強度を達成するために、たとえば、支圧接合用ボルトの寸法、材質、支圧接合用ボルトの数および支圧接合用ボルト相互の間隔、ならびに支圧接合孔が形成される補剛材のフランジおよび閉断面部材のウエブまたはフランジの厚さおよび材質、さらにそれらの剛性などが選ばれる。
【0023】
前記機械的強度は、全てが同じ構成を有する各支圧接合用ボルトで同じ支圧接合をする構成によって、達成できるようにしてもよい。たとえば、全ボルト均等負担で必要本数を算定し、想定した地震力以内であれば結果的に少なくとも端部ボルトが破断しないように構成することによって、中間の支圧接合用ボルトは勿論、端部ボルトも剪断破壊しない機械的強度を得るようにしてもよい。または、中間の支圧接合用ボルトに関連する前記機械的強度に比べて端部の支圧接合用ボルトに関連する前記機械的強度の方が大きい支圧接合をする構成によって、達成できるようにしてもよく、そのために、たとえば、中間の支圧接合用ボルトに比べて端部の支圧接合用ボルトの外径を大きく選んで支圧接合してもよい。
【0024】
本発明は、
鋼製閉断面部材121は、斜張橋100のトラス桁104の横トラス110の弦材112、117、121であることを特徴とする。
【0025】
本発明は、
横トラス110の弦材112、117、121は、下弦材121であり、
鋼製補剛材156による補剛範囲は、主塔103寄りのダイヤフラム15645、148間に選ばれることを特徴とする。
【0026】
本件発明者によれば、たとえば、鋼橋の海峡部長大橋である道路鉄道併用橋の3径間連続鋼トラス斜張橋などにおいて、本発明の補剛材が設けられない従来技術では、本件発明者が解析した耐震性能照査によれば、主塔付近の横トラス下弦材に予め定める圧縮荷重が作用し、そのウエブで損傷の許容値を超過することが確認された。そこで、横トラス下弦材のウエブに補剛材を設け、これによって、その下弦材のウエブの局部座屈を考慮した許容圧縮応力度を決める幅厚比を小さくすることができる。横トラスの断面内で橋軸方向の鉛直な対称面111(
図1、
図2)に関して左右対称に構成される横トラス下弦材では、その横トラス下弦材に前記対称面111に関して左右対称に補剛材が設けられる。補剛材は、長手方向のダイヤフラム間に配置され、ダイヤフラムの位置が避けられる。
【0027】
本発明は、
鋼橋100の鋼製閉断面部材121の座屈防止構造の施工方法であって、
鋼製閉断面部材121は、閉空間を形成するウエブ150およびフランジ152を有し、閉空間内にダイヤフラム145、148を備え、
鋼製補剛材156と支圧接合用ボルト181とを準備し、
鋼製補剛材156は、T形断面またはL形断面を形成するフランジ171とリブ172とを有し、
鋼製補剛材156のフランジ171には、複数の支圧接合用下穴197を、
鋼製補剛材156の長手方向に間隔をあけて列を成して削孔する
鋼製補剛材156の支圧接合用下穴削孔ステップを行ない、
鋼製補剛材156のフランジ171を、
鋼製閉断面部材121に沿って
鋼製閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152の外表面にダイヤフラム145、148の位置を避けて配置し、
鋼製補剛材156のフランジ171の支圧接合用下穴197によって、ドリル工具の刃物を案内して
鋼製閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152に支圧接合用下穴198を削孔する
鋼製閉断面部材121の支圧接合用下穴削孔ステップを行ない、
支圧接合用ボルト181は、高強度ボルトによって実現されるワンサイドボルトであって、支圧接合用下穴の内径D11を超える外径D21(D11<D21)を有するおねじが刻設される軸部193を有し、
支圧接合用ボルト181を、
鋼製補剛材156のフランジ171から
鋼製閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152に向けて支圧接合用下穴197、198に、ねじ込むことによって、めねじを自ら形成しながら進んで支圧接合孔186、187を形成し、
鋼製補剛材156のフランジ171と
鋼製閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152とを支圧接合する
鋼製補剛材156と
鋼製閉断面部材121との支圧接合ステップを行なうことを特徴とする鋼橋の鋼製閉断面部材の座屈防止構造の施工方法である。
【0028】
本発明によれば、地震時に、既設の鋼橋の閉断面部材に長手方向の圧縮荷重が作用したときにおける耐震性能を向上する座屈防止構造を施工できる。
【0029】
閉断面部材のウエブまたはフランジに列をなす複数の支圧接合用下穴を削孔した後に各支圧接合用ボルトを順次的にねじ込んで締付ける操作を行なう作業(すなわち、閉断面部材の支圧接合用下穴削孔ステップを複数の各支圧接合用ボルトのために行なった後、補剛材と閉断面部材との支圧接合ステップを複数の各支圧接合用ボルトのために行なう作業)に比べて、好ましくは、各支圧接合用ボルト毎に、閉断面部材のウエブまたはフランジに支圧接合用下穴を削孔する操作と、その削孔した支圧接合用下穴へ支圧接合用ボルトをねじ込んで締付ける操作とを交互に繰り返す作業(すなわち、閉断面部材の支圧接合用下穴削孔ステップを1つの支圧接合用ボルトのために行なった後、補剛材と閉断面部材との支圧接合ステップをその1つの支圧接合用ボルトのために行ない、この操作を各支圧接合用ボルト毎に繰り返す作業)をすることによって、閉断面部材の閉空間が閉断面部材のウエブまたはフランジの支圧接合用下穴を介して外部に連通している時間を短縮できるので、雨水などの水の浸入リスクを減らすことができるとともに、補剛材のフランジの支圧接合用下穴の軸線と、閉断面部材のウエブまたはフランジに支圧接合用下穴の軸線とを正確に一致させたままで、支圧接合用ボルトを正確にねじ込むことが確実になる。
【0030】
本発明は、
支圧接合用下穴197、198の内径D11未満である外径D22(D22<D11)を有するおねじが刻設される軸部207を有する仮留め用ボルト200を準備し、
鋼製補剛材156の長手方向両端部寄りで
鋼製補剛材156のフランジ171には仮留め用ボルト200のための仮留め用融通孔201を削孔する仮留め用融通孔削孔ステップを行ない、この仮留め用融通孔201は、支圧接合用下穴197、198の内径D11に等しい内径D32を有し、
鋼製閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152に、支圧接合用下穴197、198の内径D11未満の内径D12(D12<D11)を有する仮留め用下穴202を削孔する
鋼製閉断面部材121の仮留め用下穴削孔ステップを行ない、
仮留め用ボルト200の軸部207の外径D22は、仮留め用下穴202の内径D12を超える値に選ばれ(D12<D22<D11)、
仮留め用ボルト200を、
鋼製補剛材156のフランジ171の仮留め用融通孔201を挿通して、仮留め用下穴202に、ねじ込むことによって、めねじを自ら形成しながら進んで
鋼製補剛材156のフランジ171と
鋼製閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152とを密着した仮留め状態とする仮留めステップを行ない、
この仮留め状態で、
鋼製閉断面部材121の前記支圧接合用下穴削孔ステップ、および
鋼製補剛材156と
鋼製閉断面部材121との前記支圧接合ステップを行ない、
その後、仮留め用ボルト200を取り外して仮留め用下穴202の内径D12を支圧接合用下穴197、198の内径D11に拡径し、支圧接合用ボルト181によって、
鋼製補剛材156のフランジ171と
鋼製閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152とを支圧接合する仮留め拡径支圧接合ステップを行なうことを特徴とする。
【0031】
本発明によれば、補剛材の長手方向両端部寄りで、補剛材のフランジに仮留め用融通孔が形成されている(仮留め用融通孔削孔ステップ)。この仮留め用融通孔は、仮留め用ボルトの軸部の外径D22を超える、いわゆるバカ穴であり、支圧接合用下穴の内径D11以下の内径D32(D22<D32≦<D11)を有する。D32=D11でもよいが、D32<D11でもよい。仮留め用ボルトを、その仮留め用融通孔を挿通して閉断面部材のウエブまたはフランジに削孔した仮留め用下穴(閉断面部材であの仮留め用下穴削孔ステップ)にねじ込んで締め付けることによって、補剛材のフランジと閉断面部材のウエブまたはフランジとを密着して肌隙をなくした仮留め状態にできる(仮留めステップ)。したがって、補剛材の長手方向の残余の部分で、補剛材のフランジと閉断面部材のウエブまたはフランジとを、肌隙を可及的になくして支圧接合用ボルトによる支圧接合が可能になる(閉断面部材の前記支圧接合用下穴削孔ステップ、および補剛材と閉断面部材との前記支圧接合ステップ)。その後、仮留め用ボルトを取り外して、仮留め用融通孔の内径D32が支圧接合用下穴の内径D11未満(D32<D11)のとき、その仮留め用融通孔の内径D32を、および仮留め用下穴の内径D12を拡大して拡径し、支圧接合用ボルトによって支圧接合することができる(仮留め拡径支圧接合ステップ)。
【0032】
本発明は、
引き寄せ用手段200aを準備し、
鋼製補剛材156の長手方向中央寄りで
鋼製補剛材156のフランジ171には引き寄せ用手段200aのための引き寄せ用操作孔201aを削孔する引き寄せ用操作孔削孔ステップを行ない、
仮留めステップによる仮留め状態で、
鋼製閉断面部材121の前記支圧接合用下穴削孔ステップを行なう前に、
鋼製閉断面部材121のウエブ150aまたはフランジ152aに、支圧接合用下穴197、198の内径D11未満の内径D12a(D12a<D11)を有する引き寄せ用係止穴202aを削孔する
鋼製閉断面部材121の引き寄せ用係止穴削孔ステップを行ない、
引き寄せ用手段200aによって、
鋼製補剛材156のフランジ171の引き寄せ用操作孔201aと引き寄せ用係止穴202aとに関連して、引き寄せ用操作孔201aの側からの操作によって、
鋼製補剛材156のフランジ171と
鋼製閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152とを密着した引き寄せ状態とする引き寄せステップを行ない、
この引き寄せ状態で、
鋼製閉断面部材121の前記支圧接合用下穴削孔ステップ、および
鋼製補剛材156と
鋼製閉断面部材121との前記支圧接合ステップを行ない、
その後、引き寄せ用手段200aを、引き寄せ用操作孔201aの側からの操作によって、取り外して、引き寄せ用係止穴202aの内径D12aを支圧接合用下穴197、198の内径D11に拡径し、支圧接合用ボルト181によって、
鋼製補剛材156のフランジ171と
鋼製閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152とを支圧接合する引き寄せ拡径支圧接合ステップを行なうことを特徴とする。
【0033】
本発明によれば、補剛材の長手方向中央寄りで、補剛材のフランジに引き寄せ用操作孔が形成される(引き寄せ用操作孔削孔ステップ)。引き寄せ用手段は、引き寄せ用操作孔と閉断面部材のウエブまたはフランジに削孔した引き寄せ用係止穴(閉断面部材の引き寄せ用係止穴削孔ステップ)とに関連して、引き寄せ用操作孔201aの側からの操作によって、たとえば、引き寄せ用操作孔と引き寄せ用係止穴とを挿通することによって、補剛材のフランジと閉断面部材のウエブまたはフランジとを密着して肌隙をなくした引き寄せ状態にできる(引き寄せステップ)。したがって、補剛材の長手方向の残余の部分で、補剛材のフランジと閉断面部材のウエブまたはフランジとを、肌隙を可及的になくして支圧接合用ボルトによる支圧接合が可能になる(閉断面部材の前記支圧接合用係止穴削孔ステップ、および補剛材と閉断面部材との前記支圧接合ステップ)。その後、引き寄せ用手段を取り外して、引き寄せ用操作孔201aの内径D32aが支圧接合用下穴の内径D11未満(D32a<D11)のとき、その引き寄せ用操作孔201aの内径D32aを、および引き寄せ用係止穴202aの内径D12aを拡径し、支圧接合用ボルトによって支圧接合することができる(引き寄せ拡径支圧接合ステップ)。この引き寄せ用操作孔201aは、引き寄せ用ボルトの軸部の外径D22を超える、いわゆるバカ穴であり、支圧接合用下穴の内径D11以下の内径D32a(D22<D32a≦<D11)を有する。D32a=D11でもよいが、D32a<D11でもよい。
【0034】
本発明は、
引き寄せ用手段は、支圧接合用下穴197、198の内径D11未満である外径D22a(D22a<D11)を有するおねじが刻設される軸部207aを有する引き寄せ用ボルト200aであり、
引き寄せ用操作孔削孔ステップでは、
鋼製補剛材156の長手方向中央寄りで
鋼製補剛材156のフランジ171には引き寄せ用ボルト200aのための引き寄せ用操作孔201aを削孔し、
鋼製閉断面部材121の引き寄せ用係止穴削孔ステップでは、
鋼製閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152に、支圧接合用下穴197、198の内径D11未満の内径D12a(D12a<D11)を有する引き寄せ用係止穴202aを削孔し、
引き寄せ用ボルト200aの軸部207aの外径D22aは、引き寄せ用係止穴202aの内径D12aを超える値に選ばれ(D12a<D22a≦D11)、
引き寄せステップでは、引き寄せ用ボルト200aを、
鋼製補剛材156のフランジ171の引き寄せ用操作孔201aを挿通して、引き寄せ用係止穴202aに、ねじ込むことによって、めねじを自ら形成しながら進んで
鋼製補剛材156のフランジ171と
鋼製閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152とを密着した引き寄せ状態とし、
引き寄せ拡径支圧接合ステップでは、引き寄せ用ボルト200aを、引き寄せ用操作孔201aの側からの操作によって、取り外して行なうことを特徴とする。
【0035】
本発明によれば、補剛材の長手方向中央寄りで、補剛材のフランジに引き寄せ用操作孔が形成される(引き寄せ用操作孔削孔ステップ)。前述のとおり、この引き寄せ用操作孔は、引き寄せ用ボルトの軸部の外径D22aを超える、いわゆるバカ穴であり、支圧接合用下穴の内径D11以下の内径D32a(D22a<D32a≦<D11)を有する融通孔である。引き寄せ用ボルトを、その引き寄せ用操作孔を挿通して閉断面部材のウエブまたはフランジに削孔した引き寄せ用係止穴(閉断面部材の引き寄せ用係止穴削孔ステップ)にねじ込んで締め付けることによって、補剛材のフランジと閉断面部材のウエブまたはフランジとを密着して肌隙をなくした引き寄せ状態にできる(引き寄せステップ)。したがって、補剛材の長手方向の残余の部分で、補剛材のフランジと閉断面部材のウエブまたはフランジとを、肌隙を可及的になくして支圧接合用ボルトによる支圧接合が可能になる(閉断面部材の前記支圧接合用下穴削孔ステップ、および補剛材と閉断面部材との前記支圧接合ステップ)。その後、引き寄せ用ボルトを取り外して引き寄せ用係止穴の内径D12aを拡大して拡径し、支圧接合用ボルトによって支圧接合することができる(引き寄せ拡径支圧接合ステップ)。
【0036】
本発明は、
鋼橋の鋼製閉断面部材121は、閉空間を形成するウエブ150およびフランジ152を有し、その閉空間内にダイヤフラム145、148を備え、
鋼製補剛材156と支圧接合用ボルト181とを含み、
鋼製補剛材156は、T形断面またはL形断面を形成するフランジ171とリブ172とを有し、
鋼製閉断面部材121に沿って、
鋼製補剛材156のフランジ171が
鋼製閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152の外表面に、ダイヤフラム145、148の位置を避けて、配置され、
鋼製補剛材156のフランジ171と
鋼製閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152とを貫通して、
鋼製補剛材156と
鋼製閉断面部材121との長手方向に等しい間隔をあけて、複数の同一構造を有する支圧接合用下穴197、198が予めそれぞれ削孔され、
複数の各支圧接合用ボルト181は、同一構造を有し、高強度ボルトによって実現されるワンサイドボルトであって、支圧接合用下穴197、198の内径D11を超える外径D21(D11<D21)を有するおねじが刻設される軸部193を有し、
鋼製補剛材156のフランジ171から
鋼製閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152に向けて支圧接合用下穴197、198に、ねじ込まれることによって、めねじを自ら形成しながら進んで支圧接合孔186、187を形成し、
鋼製補剛材156のフランジ171と
鋼製閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152とを支圧接合し、
鋼製補剛材156のフランジ171および
鋼製閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152、ならびに支圧接合用ボルト181の機械的強度を、
鋼製閉断面部材121に予め定める長手方向の圧縮荷重が作用したとき、列を成す支圧接合用ボルト181のうち、列の中央寄りに存在する支圧接合用ボルト181に比べて列の端部寄りに存在する支圧接合用ボルト181が、
鋼製閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152の支圧接合孔187からの引抜きを生じることなく、かつその列の少なくとも端部寄りに存在する支圧接合用ボルト181の軸部193が剪断破壊しないように、定めることを特徴とする鋼橋の鋼製閉断面部材の座屈防止構造の設計方法である。
【0037】
本件発明者の考え方によれば、補剛材156のフランジ171および閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152は、それらの長手方向に等しい間隔をあけて列を成して削孔された複数の同一構造を有する支圧接合用下穴197、198に、複数の同一構造を有する支圧接合用ボルト181がそれぞれねじ込まれて支圧接合される本発明の継手において、地震によって閉断面部材121に圧縮荷重が作用したとき、その列の中央寄りに存在する、いわば中間の支圧接合用ボルト181の軸部には剪断力が端部寄りに比べて働かず、列の端部寄りに存在する、いわば端部の支圧接合用ボルトの軸部が大部分の大きな剪断力を受けてしまう現象がある。本発明によれば、補剛材156のフランジ171および閉断面部材121のウエブ150またはフランジ152、ならびに支圧接合用ボルト181の機械的強度を、列の中間の支圧接合用ボルト181よりも大きな剪断力を受ける列の端部の支圧接合用ボルトの軸部193が、閉断面部材121に予め定める長手方向の圧縮荷重が作用したとき、剪断破壊しないように、定める。これによって、耐震補強が確実になる。たとえば、全ボルト均等負担で必要本数を算定し、想定した地震力以内であれば結果的に端部ボルトが破断しないように構成することによって、中間の支圧接合用ボルトは勿論、少なくとも端部ボルトも剪断破壊しない機械的強度を得る。