特許第6975360号(P6975360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6975360
(24)【登録日】2021年11月9日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】手動式空気ポンプの人力代用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 35/04 20060101AFI20211118BHJP
   F04B 33/00 20060101ALI20211118BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   F04B35/04
   F04B33/00
   F04B39/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2021-148028(P2021-148028)
(22)【出願日】2021年9月10日
【審査請求日】2021年9月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521401726
【氏名又は名称】阿部 真己
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】特許業務法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真己
【審査官】 大屋 静男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−8827(JP,A)
【文献】 中国実用新案第210106089(CN,U)
【文献】 特表2001−506720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B33/00,F04B35/00,F04B39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略水平に伸びる左・右把持部をユーザが手で把持し人力で上下動させることにより圧縮空気を吐出する縦置きの手動式空気ポンプに備えられた前記左・右把持部に対し、それぞれ係合する左・右係合部と、
駆動力を発生するアクチュエータと、
前記アクチュエータにより発生された駆動力を前記左・右係合部に伝達する伝達機構と、
を有し、
前記左・右係合部を所定ストロークで上下方向に沿って往復動させることにより前記手動式空気ポンプを作動させ、当該手動式空気ポンプの吐出口から吐出された圧縮空気を供給対象物へ供給する
ことを特徴とする、手動式空気ポンプの人力代用駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の手動式空気ポンプの人力代用駆動装置において、
前記アクチュエータは、電動モータであり、
前記伝達機構は、
上下方向に延設されたボールねじと、
前記ボールねじの回転により上下方向に移動可能に螺合されると共に、前記左・右係合部に一体化された螺合部と、
を備える
ことを特徴とする手動式空気ポンプの人力代用駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載の手動式空気ポンプの人力代用駆動装置において、
前記左・右係合部は、
前記螺合部よりも前方側において左・右に張り出すように設けられている
ことを特徴とする手動式空気ポンプの人力代用駆動装置。
【請求項4】
請求項3記載の手動式空気ポンプの人力代用駆動装置において、
前記電動モータを制御する制御部をさらに有し、
前記制御部は、
前記左・右係合部の前記所定ストロークでの往復動を実現するための、下降後に停止し反転して上昇する下部反転処理、及び、上昇後に停止し反転して下降する上部反転処理、を実行する
ことを特徴とする手動式空気ポンプの人力代用駆動装置。
【請求項5】
請求項4記載の手動式空気ポンプの人力代用駆動装置において、
前記制御部は、さらに、
前記左・右係合部を下降させるときに前記モータから発生するトルクを、前記供給対象物の内部の空気圧の増大にしたがって増大させるトルク増大処理と、
前記空気圧が所望の目標値に達したときに、前記モータからの前記駆動力に基づく前記左・右係合部の往復動を停止させる往復動停止処理と、
を実行する
ことを特徴とする手動式空気ポンプの人力代用駆動装置。
【請求項6】
請求項5記載の手動式空気ポンプの人力代用駆動装置において、
前記制御部は、
前記空気圧の目標値として、所定の第1目標値に対応した第1モードと、
前記空気圧の目標値として、前記第1目標値より大きな第2目標値に対応した第2モードと、
を備えており、
前記第2モードにおいて前記左・右係合部の往復動を開始してから前記往復動停止処理により前記往復動を停止するまでの第2所要時間が、
前記第1モードにおいて前記左・右係合部の往復動を開始してから前記往復動停止処理により前記往復動を停止するまでの第1所要時間よりも長い
ことを特徴とする手動式空気ポンプの人力代用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給対象物に圧縮空気を注入する手動式空気ポンプの人力代用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手動操作により圧縮空気を生成し、その圧縮空気を自転車のタイヤに供給する市販の空気ポンプが知られている(例えば特許文献1参照)。
一方、上記のように圧縮空気を供給して用いるもの(供給対象物)として、空気圧を用いて弾丸を発射する空気銃が知られている。このような空気銃において、近年、使用前に内部に備えている空気圧タンクに圧縮空気を注入しておき、その空気圧タンクの圧縮空気により弾丸を発射する、いわゆるプリチャージタイプのものも既に広く使われている。このタイプの空気銃に対しても、上記自転車用の空気ポンプを用いて人力操作により圧縮空気を注入することが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−8779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に市販されている空気ポンプには、略水平に伸びる左・右把持部と、これら左・右把持部に連結されたピストンと、シリンダと、が備えられている。そして、ユーザが左・右把持部を両手でそれぞれ把持し、人力で左・右把持部を上下動させることによりピストンがシリンダ内を下降してシリンダ内の空気を圧縮し、その圧縮空気を吐出口から吐出して供給対象物(上記の例では空気銃)へ供給するようになっている。
【0005】
このとき、例えば、空気銃を使用するために必要な圧縮空気の空気圧は、例えば最大300気圧ほどにもなる場合がある。そのため、上記のように人力操作で空気銃に圧縮空気を充填し終わるまでには、左・右把持部を数十回往復動させる必要があり、その分のユーザの肉体的な負担が生じる。特に、空気銃内の空気圧が増大してくほど、左・右把持部を下降操作するために必要な力が増大するため、空気銃への充填完了の直前にはユーザはかなりの大きな力を左・右把持部に加える必要があり、ユーザの肉体的負担がかなり大きくなる。空気銃以外の供給対象物についても、特に上記のように比較的高い気圧を要するものについては、同様の課題が生じることとなる。
【0006】
本発明の目的は、ユーザの肉体的負担を伴うことなく、圧縮空気の供給対象物に対し圧縮空気を充填できる手動式空気ポンプの人力代用駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願発明の手動式空気ポンプの人力代用駆動装置は、略水平に伸びる左・右把持部をユーザが手で把持し人力で上下動させることにより圧縮空気を吐出する縦置きの手動式空気ポンプに備えられた前記左・右把持部に対し、それぞれ係合する左・右係合部と、駆動力を発生するアクチュエータと、前記アクチュエータにより発生された駆動力を前記左・右係合部に伝達する伝達機構と、を有し、前記左・右係合部を所定ストロークで上下方向に沿って往復動させることにより前記手動式空気ポンプを作動させ、当該手動式空気ポンプの吐出口から吐出された圧縮空気を供給対象物へ供給することを特徴とする。
【0008】
本願発明の手動式空気ポンプの人力代用駆動装置の対象は、人力操作により供給対象物に圧縮空気を注入する、手動式の縦置きの空気ポンプである。この空気ポンプには、略水平に伸びる左・右把持部と、これら左・右把持部に連結されたピストンと、シリンダと、が備えられている。そして、ユーザが左・右把持部を両手でそれぞれ把持し、人力で左・右把持部を上下動させることによりピストンがシリンダ内を下降してシリンダ内の空気を圧縮し、その圧縮空気を吐出口から吐出して供給対象物へ供給するようになっている。
【0009】
このとき、例えば供給対象物の一例である、空気銃を使用するために必要な圧縮空気の空気圧は、例えば最大300気圧ほどにもなる場合がある。そのため、上記のように人力操作で供給対象物に圧縮空気を充填し終わるまでには、左・右把持部を数十回往復動させる必要があり、その分のユーザの肉体的な負担が生じる。特に、供給対象物内の空気圧が増大してくほど、左・右把持部を下降操作するために必要なトルクが増大するため、供給対象物への充填完了の直前にはユーザはかなりの大きな力を左・右把持部に加える必要があり、ユーザの肉体的負担がかなり大きくなる。
【0010】
そこで本願発明の手動式空気ポンプの人力代用駆動装置では、上記のような人力による手動式空気ポンプの駆動を、アクチュエータの駆動力を用いて代用する。そのために、本願発明の駆動装置は、左・右係合部と、上記アクチュエータと、伝達機構と、が備えられている。
【0011】
左・右係合部には手動式空気ポンプの上記左・右把持部が係合され、その係合状態で、アクチュエータからの駆動力が伝達機構を介し左・右係合部に伝達されることで、左・右係合部が所定ストロークで上下方向に往復動する。これにより、前述のように人力操作されたときと同様、手動式空気ポンプの把持部の上下動に応じてピストンがシリンダ内を下降して空気を圧縮し、圧縮空気を吐出して供給対象物へ供給することができる。
【0012】
以上の結果、本願発明によれば、ユーザの肉体的負担を伴うことなく、供給対象物に対し圧縮空気を充填することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザの肉体的負担を伴うことなく、供給対象物に対し圧縮空気を充填できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ポンプ駆動装置に空気ポンプを装着して空気銃に圧縮空気を充填させる作業状態の全体構成を斜視で表す図である。
図2図1中のポンプ駆動装置における矢視II−IIの縦断面とシステム構成を表す図である。
図3】係合部を拡大して表す図である。
図4】空気ポンプの吐出空気圧と係合部の下降動作に必要なトルクとの関係を示す図と、充填動作時におけるモータの交番トルクシーケンスを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
【0016】
<ポンプ駆動装置と空気ポンプの構成>
図1は、本実施形態の手動式空気ポンプの人力代用駆動装置であるポンプ駆動装置に、空気ポンプを装着して空気銃に圧縮空気を充填させる作業状態の全体構成を斜視で示している。図2は、図1中のポンプ駆動装置における矢視II−IIの縦断面とシステム構成を示している。図3は、後述する係合部を拡大して示している。なお、図1における右側を右方向、左側を左方向、上側を上方向、下側を下方向、手前側を前方向、奥側を後方向としてそれぞれ定義し、各方向関係は他の図2図3に示す方向関係と対応しているものとする。
【0017】
まず、本実施形態のポンプ駆動装置1が装着し駆動する対象としている空気ポンプ100は、一般的に自転車のタイヤの空気入れとして市販されている縦置き型の手動式空気ポンプである。図1において、この空気ポンプ100は、略水平に伸びる左・右把持部101,102と、これら左・右把持部101,102の中央から下方へ延設するよう連結されたピストン103と、ピストン103が嵌入されているシリンダ104と、シリンダ104に設けられた空気圧計105と、シリンダ104内に連通する吐出管106と、吐出管106の先端に設けられたノズル107と、シリンダ104の下端部に固定して設けられた固定板108が備えられている。一般的に市販されている通常の空気ポンプ100は上記の構成をほぼ共通に備えており、この空気ポンプ100をユーザが人力操作で使用する場合には、固定板108を足で踏んで当該空気ポンプ100を床面に固定しつつ、左・右把持部101,102を両手でそれぞれ把持し、左・右把持部101,102を上下動させることによりピストン103がシリンダ104内を下降してシリンダ104内の空気を圧縮し、その圧縮空気を吐出管106とノズル107を介して吐出して空気銃200へ供給する(特に図示せず)。なお、ノズル107には特に図示しない逆止弁が設けられており、吐出した圧縮空気をシリンダ104内に逆流させることがない。
【0018】
本実施形態のポンプ駆動装置1は、上記のような構成と使用方法にある空気ポンプ100を人力操作に代えて自動的に駆動操作し、同様に圧縮空気を空気銃200へ供給する。図1図3において、ポンプ駆動装置1は、筐体2と、係合部3と、送りねじ4と、減速機5と、モータ6と、インバータ7と、コントロールユニット8と、操作パネル9とを有している。
【0019】
筐体2は、中空で上下方向に長い略台形形状の主筐体2aと、その右方向側面に位置して主筐体2aより短い中空直方体形状の副筐体2bと、筐体2全体の下端部に位置する押さえ基板2cとを一体に形成して備えている。主筐体2aの内部には主に減速機5と送りねじ4が配置されており、後述の係合部3はその送りねじ4に螺合した状態でそれより前方部分を前面縦穴2dを介して主筐体2aから前方側に張り出すよう設けられている。副筐体2bの内部には後述のモータ6、インバータ7、コントロールユニット8、及び操作パネル9が設けられ、そのうち操作パネル9は副筐体2bの上面に露出するよう設けられている。押さえ基板2cは、空気ポンプ100の固定板108の上面に重なり覆うことで、当該空気ポンプ100の全体を床面に固定する。
【0020】
送りねじ4は、本実施形態の例ではボールねじであり、上下方向に延設する配置でその上端が主筐体2aの天板内面にスラストベアリング4aなどを介して回転可能に軸支され、その下端が減速機5の内部に連結されている。
【0021】
減速機5は、本実施形態の例では複数の平歯車を噛合させた構成のものであり、後述のモータ6の出力軸を主動軸として連結し、このモータ6の軸出力の回転速度を減速してトルクを増大させ、従動軸として連結した上記送りねじ4に伝達させる。
【0022】
モータ6は、本実施形態の例では電力駆動で出力軸の軸回転駆動力を発生するアクチュエータであり、具体的にこの例では三相同期型の電動モータを想定している。またモータ6は、その回転位置を検出可能なエンコーダ6aを備えている。
【0023】
インバータ7は、後述のコントロールユニット8から入力される制御指令に応じて、外部の直流電源10から給電される直流電力を三相交流電力に変換して上記モータ6に給電する電力変換器である。なお外部の直流電源10としては、例えばシガーソケットなどを介して接続される12V車載バッテリーや、100Vの一般商用交流電力を直流電力に整流するAC/DCコンバータなどの適用が想定される。
【0024】
コントロールユニット8は、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリなどを備えたコンピュータであり、後述の操作パネル9を介して設定されたパラメータに従う交番トルクシーケンス(後述の図4(b)参照)でモータ6を駆動するよう上記インバータ7を制御する。
【0025】
操作パネル9は、液晶パネルや操作ボタンを備えたインターフェース装置であり、ユーザに対して各種の情報を表示するとともに、上記コントロールユニット8における各種のパラメータの設定操作をユーザから受け付ける。
【0026】
係合部3は、空気ポンプ100の左・右把持部101,102に対して機械的に係合して固定する部位であり、本体基板31と、2つの係合板32,33と、2つの固定ボルト34とを有している。本体基板31の全体は板状体であり、左右方向に延びた本体部31aと、この本体部31aの中央から後方側に突出した形状の突出部31bと、本体部31aの左側端部と右側端部のそれぞれから前方側に突出した左押圧部31c及び右押圧部31dとが一体に形成されている。本体基板31のこれら各部のうち、突出部31bだけが主筐体2aの内部に配置され、その他の本体部31aと左押圧部31cと右押圧部31dは前面縦穴2dを介して主筐体2aから前方側の外部に配置されており、本体基板31の全体が前面縦穴2dの上下方向範囲に渡って移動可能となっている。
【0027】
突出部31bには内ねじが形成された螺合部31eが固設されており、この螺合部31eが上記送りねじ4に螺合する。左押圧部31cと右押圧部31dのそれぞれの下面には、ヒンジ35を介して上下方向に揺動可能に設けられた左係合板32と右係合板33が設けられている。これら左係合板32と右係合板33は、それぞれ左右方向に延びる配置で下方に湾曲した溝形状の凹曲部32a,33aが形成されている。また、左押圧部31cと右押圧部31d、及び左係合板32と右係合板33のそれぞれの前方側の端部においてネジ穴36が形成されており、それぞれのネジ穴36に固定ボルト34を螺合することで左押圧部31cと左係合板32、及び右押圧部31dと右係合板33のそれぞれの組み合わせで互いに締結することができる。
【0028】
以上の構成により係合部3は、空気ポンプ100の左把持部101を左押圧部31cと左係合板32の凹曲部32aとの間に挟んで係合させ、また右把持部102を右押圧部31dと右係合板33の凹曲部33aとの間に挟んで係合させ、それぞれの係合状態を固定ボルト34で締結固定できる。なお以下においては、左押圧部31cと左係合板32の組み合わせを左係合部37といい、右押圧部31dと右係合板33の組み合わせを右係合部38という。
【0029】
なお、減速機5と送りねじ4が各請求項記載の伝達機構に相当し、空気ポンプ100のシリンダ104における吐出管106の取付口が各請求項記載の吐出口に相当し、コントロールユニット8が各請求項記載の制御部に相当する。
【0030】
<ポンプ駆動装置の作動と交番トルクシーケンスについて>
以上の構成にあるポンプ駆動装置1は、空気ポンプ100に対してその下方にある固定板108を筐体2の押さえ基板2cで上方から押さえ付けて固定しつつ、空気ポンプ100の左把持部101と右把持部102をそれぞれ左係合部37と右係合部38でそれぞれ係合させて装着する。そして調整時には、空気ポンプ100の左・右把持部101,102が上下方向で昇降移動するストローク範囲の上端位置と下端位置を、それぞれモータ6の限界回転位置としてエンコーダ6aから検出してコントロールユニット8に記憶させる。これにより、コントロールユニット8は、それら限界回転位置の間の範囲で往復するようモータ6の回転方向を交番させて駆動制御することで、左・右係合部37,38が空気ポンプ100の左・右把持部101,102を上下動させ、シリンダ104から圧縮空気を吐出させることができる。
【0031】
しかし、この圧縮空気を空気銃200内の所定容積にある空気タンクに充填し続けると、その中の空気圧も次第に増大する。このため、図4(a)に示すように空気ポンプ100において必要とされる吐出空気圧の増大に伴い、左・右把持部101,102を下降操作するために必要なモータ6のトルクも増大する。また図示するように、標準的な200気圧で充填する標準モードに対して、長時間でより多くの弾丸を発射できるよう空気タンクの耐圧限界に近い230気圧まで充填するハードモードや、充填時間の短縮を優先して発射に必要な最低限の150気圧で充填を終了するエコモードなど、使用する目的や状況に応じて異なる目標空気圧まで充填する複数の動作モードの実装も望まれている。
【0032】
これに対して本実施形態では、コントロールユニット8が図4(b)に示すような交番トルクシーケンスでモータ6の出力トルクを制御する。すなわち、空気ポンプ100のピストン103を押圧して圧縮空気を吐出させるよう左・右係合部37,38を下降動作させる際のモータ6の付加トルクを正トルクとし、逆に空気ポンプ100のピストン103を引き上げるために左・右係合部37,38を上昇動作させる際のモータ6の付加トルクを負トルクとする。そしてコントロールユニット8は、モータ6に対してこれら正トルクと負トルクを経時的に交番させて発生させるようインバータ7に給電制御を指令する。
【0033】
このとき、ピストン103を引き上げる際は無負荷となって同じストローク距離だけ左・右係合部37,38を上昇動作させればよいため、負トルクは常に同じトルク値で同じ時間だけ付加すればよい。一方、ピストン103を押圧する際には、同じストローク距離に対し左・右係合部37,38をできるだけ同じ時間で下降動作させるよう、時間経過とともに付加する正トルクを次第に増大させる。
【0034】
また、調整時にあらかじめ各動作モードそれぞれの目標空気圧に対応した必要トルクTe,Ts,Thを検出しておき、充填動作時には実際に設定した動作モードに対応する必要トルクに正トルクが到達した際には、トルクの付加を停止してその充填動作を終了する。これにより、結果的に目標空気圧が一番低いエコモードでの充填所要時間teが一番短く、次に目標空気圧が高い標準モードでの充填所要時間tsが2番目に短く、最も目標空気圧が高いハードモードでの充填所要時間thが最も長くなる。
【0035】
以上のように、コントロールユニット8がモータ6に対してその付加トルクを制御基準とした交番トルクシーケンスでのトルク制御を行うことで、吐出容量や吐出性能などの仕様が異なる多様な機種の空気ポンプ100のいずれに対しても同様の吐出動作を実行させることができる。調整時の交番トルクシーケンスにおける各種パラメータの設定操作は、あらかじめ操作パネル9を介したユーザの設定操作により行えばよい。
【0036】
なお、以上説明したコントロールユニット8による交番トルクシーケンスにおいて、正トルクから負トルクに切り替える際の処理が各請求項記載の下部反転処理に相当し、負トルクから正トルクに切り替える際の処理が各請求項記載の上部反転処理に相当し、正トルクを増大させる処理が各請求項記載のトルク増大処理に相当し、トルクの付加を停止して充填動作を終了する処理が各請求項記載の往復動停止処理に相当する。また、異なる2つの目標空気圧に対応する2つの動作モードの組み合わせにおいて、比較的低い方の目標空気圧とそれ対応する動作モード及び充填所要時間のそれぞれが各請求項記載の第1目標値、第1モード、及び第1所要時間に相当し、比較的高い方の目標空気圧とそれに対応する動作モード及び充填所要時間のそれぞれが各請求項記載の第2目標値、第2モード、及び第2所要時間に相当する。
【0037】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のポンプ駆動装置1においては、左・右係合部37,38と、モータ6と、減速機5及び送りねじ4と、が備えられている。左・右係合部37,38には空気ポンプ100の左・右把持部101,102が係合され、その係合状態で、モータ6からの駆動力が減速機5及び送りねじ4を介し左・右係合部37,38に伝達されることで、左・右係合部37,38が所定ストロークで上下方向に往復動する。これにより、前述のように人力操作されたときと同様、空気ポンプ100の左・右把持部101,102の上下動に応じてピストン103がシリンダ104内を下降して空気を圧縮し、圧縮空気を吐出して空気銃200へ供給することができる。
【0038】
以上の結果、本実施形態によれば、ユーザの肉体的負担を伴うことなく、空気銃200に対し圧縮空気を充填することができる。
【0039】
また、本実施形態では特に、公知のボールねじ機構を用いて、モータ6からの駆動力を螺合部31eを介し左・右係合部37,38に伝達することで空気ポンプ100の左・右把持部101,102を上下動させ、圧縮空気を空気銃200へ充填することができる。
【0040】
なお、モータ6から左・右係合部37,38へ駆動力を伝達する機構としては上記の送りねじ機構に限られず、例えば特に図示しないクランク−スライダ機構やジャッキアップ機構のような他の回転動作から往復動作への変換機構を適用してもよい。また、ボールねじ4による駆動力伝達に代え、循環駆動するチェーン等により駆動力を伝達してもよい。また、アクチュエータについても回転型の電動モータに限られず、例えばリニアモータなどの直動型電動モータや、油圧モータや油圧ピストンなどの油圧アクチュエータを適用してもよく、その場合には適宜の駆動力伝達機構を設ければよい。
【0041】
また、本実施形態では特に、左・右係合部37,38は、螺合部31eよりも前方側においてそれぞれ左側、右側に張り出すように設けられている。これにより、本実施形態のポンプ駆動装置1は、ユーザが直立して腰の前で左・右把持部101,102を左・右でつかんで上下動させる挙動と同様の態様で、そのユーザ人力による上下動を代用する役割を果たすことができる。
【0042】
また、本実施形態では特に、モータ6を制御するコントロールユニット8をさらに有し、コントロールユニット8は、左・右係合部37,38を下降させピストン103を下降させて空気を圧縮した後、モータ6からの付加トルクを正トルクから負トルクに切り替える処理によりピストン103の下降を停止して反転上昇させ、その後ある程度上昇して次の下降を開始するための位置まで到達したら負トルクから正トルクに切り替える処理によりピストン103の上昇を停止して反転下降させる。コントロールユニット8がこれらの処理を行うことで左・右係合部37,38を円滑に往復動させ、人力操作時と同様に、空気ポンプ100から圧縮空気を円滑に吐出させることができる。
【0043】
なお、左・右係合部37,38がストローク範囲の上端位置と下端位置に到達したことの検知は、上述したようにエンコーダ6aから検出したモータ回転位置に限られず、例えば光センサなどを用いた左・右係合部37,38の到達検知を行ってもよい。
【0044】
また、本実施形態では特に、コントロールユニット8が、さらに、左・右係合部37,38を下降させるときにモータ6から発生するトルクを、空気銃200の内部の空気圧の増大にしたがって負トルクを増大させる処理と、空気圧が所望の目標値に達したときに、モータ6からの駆動力に基づく左・右係合部37,38の往復動を停止させる処理と、を実行する。
【0045】
前述したように、空気銃200内の空気圧が増大してくほど、左・右把持部101,102を下降操作するために必要なトルクが増大する。本実施形態はこれに対応し、コントロールユニット8が経時的に正トルクを増大させる処理を行うことで、モータ6から発生するトルクを、空気銃200の内部の空気圧の増大にしたがって増大させる。これにより、上記必要トルクの増大に対応して円滑に圧縮空気の充填を実行することができる。
【0046】
さらに本実施形態では、上記のように充填作業の進展とともに空気銃200の内部の空気圧が増大していくとき、その空気圧の値が所望の目標値に達したら、往復動を停止させる処理を実行する。これにより、ユーザが望む所望の目標値を設定することで、その目標値の空気圧となるまで自動で充填を行うとともに、その目標値の空気圧となったら自動で充填停止することができる。
【0047】
また、本実施形態では特に、コントロールユニット8が、空気圧の目標値として、所定の目標空気圧に対応した所定の動作モード(例えば標準モード)と、空気圧の目標値として、上記所定の目標空気圧より大きな他の目標空気圧に対応した他の動作モード(例えばハードモード)と、を備えており、上記他の動作モードにおいて左・右係合部37,38の往復動を開始してから停止するまでの所要時間が、上記所定の動作モードにおいて左・右係合部37,38の往復動を開始してから停止するまでの所要時間よりも長くなるように制御される。
【0048】
これにより、例えば、空気銃200内の空気圧をその空気銃200の耐圧限界近くまで高圧にしたいユーザや、発射さえできればそれほど高圧にしなくても平気なユーザや、ある程度の命中率を確保したいユーザや、充填完了までの時間を短縮して急ぎたいユーザ等、種々雑多なユーザのニーズに応じて複数の動作モードを設定し、各ニーズに対しきめ細かく対応することができる。なお、吐出空気圧の検出については、上述したモータ6の付加トルクから変換して検出する手法に限られず、他にもシリンダ104やノズル107の内部に圧力センサなどを設けて直接的に検出してもよい。
【0049】
なお、以上においては、圧縮空気を供給する供給対象物として、空気銃を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、供給対象物の別の例として、簡易ダイビングに用いられる小型ボンベに対し上記ポンプ駆動装置1からの圧縮空気を供給するようにしてもよい。そのほかの供給対象物に適用する場合も、上記と同様の効果を得ることができる。
なお、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0050】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0051】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0052】
1 ポンプ駆動装置(人力代用駆動装置に相当)
2 筐体
3 係合部
4 送りねじ(伝達機構、ボールねじに相当)
5 減速機(伝達機構に相当)
6 モータ(電動モータに相当)
6a エンコーダ
7 インバータ
8 コントロールユニット(制御部に相当)
9 操作パネル
10 直流電源
31e 螺合部
37 左係合部
38 右係合部
100 空気ポンプ(手動式空気ポンプに相当)
101 左把持部
102 右把持部
200 空気銃(供給対象物に相当)
【要約】
【課題】ユーザの肉体的負担を伴うことなく、供給対象物に対し圧縮空気を充填する。
【解決手段】略水平に伸びる左・右把持部101,102をユーザが手で把持し人力で上下動させることにより圧縮空気を吐出する縦置きの空気ポンプ100に備えられた左・右把持部101,102に対し、それぞれ係合する左・右係合部37,38と、駆動力を発生するモータ5と、モータ6により発生された駆動力を左・右係合部37,38に伝達する減速機5及び送りねじ4と、を有し、左・右係合部37,38を所定ストロークで上下方向に沿って往復動させることにより空気ポンプ100を作動させ、当該空気ポンプ100から吐出された圧縮空気を空気銃200へ供給する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4