(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御は、前記殺菌工程における前記濃縮余剰汚泥の加熱温度を殺菌可能な範囲で定めた所定の温度に設定するステップS1と、前記混合汚泥の温度がメタン発酵に適した所定の温度となるように、前記濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥との混合比を設定するステップS2と、前記生汚泥の発生量及び前記余剰汚泥の発生量の変動に応じて、前記濃縮生汚泥と前記濃縮余剰汚泥との混合比が前記ステップS2で設定した混合比になるように、前記生汚泥濃縮工程における濃縮生汚泥の濃度及び前記余剰汚泥濃縮工程における濃縮余剰汚泥の濃度を調整するステップS3とを含む、請求項1記載の有機廃水の処理方法。
前記殺菌工程における前記濃縮余剰汚泥の加熱温度は、平均温度が80℃以上であって、局所的には90〜100℃となるように設定する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機廃水の処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の有機性排水の処理方法のように、余剰汚泥を可溶化処理する場合には、可溶化のための設備が必要となるため、設備コストが増大すると共に、設備の維持管理のためのランニングコストもかかるというデメリットがあった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、メタン発酵槽を小型化して、メタン発酵処理時のガス発生量を増大させると共に、設備コストやランニングコストを抑えることができる、有機性排水の処理方法及び有機性排水の処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一つは、有機性廃水から生汚泥を除去する生汚泥除去工程と、前記有機性廃水から除去された前記生汚泥を、所定濃度に濃縮して濃縮生汚泥とする生汚泥濃縮工程と、前記生汚泥が除去された前記有機性廃水を生物処理する生物処理工程と、生物処理後の処理液から余剰汚泥を分離する余剰汚泥分離工程と、前記処理液から分離された前記余剰汚泥を、所定濃度に濃縮して濃縮余剰汚泥とする余剰汚泥濃縮工程と、前記濃縮生汚泥と前記濃縮余剰汚泥とを混合して混合汚泥とする汚泥混合工程と、前記混合汚泥をメタン発酵槽に供給してメタン発酵処理するメタン発酵処理工程とを含む有機性廃水の処理方法において、前記汚泥混合工程の前に、前記濃縮余剰汚泥を加熱して殺菌する殺菌工程を更に含み、前記生汚泥の発生量及び前記余剰汚泥の発生量の変動に応じて、(1)前記殺菌工程における前記濃縮余剰汚泥の加熱温度、(2)前記生汚泥濃縮工程における前記濃縮生汚泥の濃度及び/又は前記余剰汚泥濃縮工程における前記濃縮余剰汚泥の濃度、(3)前記汚泥混合工程における前記濃縮生汚泥と前記濃縮余剰汚泥との混合比、の少なくとも1つを調整して、前記混合汚泥の温度がメタン発酵に適した温度となるように制御することを特徴とする。
【0009】
また、本発明のもう一つは、有機性廃水から生汚泥を除去する生汚泥除去手段と、前記有機性廃水から除去された前記生汚泥を、所定濃度に濃縮して濃縮生汚泥とする生汚泥濃縮手段と、前記生汚泥が除去された前記有機性廃水を生物処理する生物処理槽と、生物処理後の処理液から余剰汚泥を分離する余剰汚泥分離手段と、前記余剰汚泥を、所定濃度に濃縮して濃縮余剰汚泥とする余剰汚泥濃縮手段と、前記濃縮生汚泥と前記濃縮余剰汚泥とを混合して混合汚泥とする汚泥混合槽と、前記混合汚泥をメタン発酵処理するメタン発酵槽とを備えた有機性廃水の処理装置において、前記余剰汚泥濃縮手段から取出された前記濃縮余剰汚泥を加熱して殺菌する加熱殺菌装置と、前記生汚泥の発生量及び前記余剰汚泥の発生量の変動に応じて、(1)前記加熱殺菌装置による殺菌工程における前記濃縮余剰汚泥の加熱温度、(2)前記生汚泥濃縮手段による生汚泥濃縮工程における前記濃縮生汚泥の濃度及び/又は前記余剰汚泥濃縮手段による余剰汚泥濃縮工程における前記濃縮余剰汚泥の濃度、(3)前記汚泥混合槽による汚泥混合工程における前記濃縮生汚泥と前記濃縮余剰汚泥との混合比、の少なくとも1つを調整して、前記混合汚泥の温度がメタン発酵に適した温度となるように制御する制御装置とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、濃縮余剰汚泥を加熱して殺菌することにより、混合汚泥をメタン発酵させる際に、濃縮余剰汚泥が微生物によって分解されやすくすることができ、メタン発酵に要する時間を短縮し、メタン発酵槽の容量を小さくすることができると共に、汚泥の分解率を向上し、消化ガスの発生量を大きくすることができる。
【0011】
また、濃縮余剰汚泥を加熱して殺菌した後、加温された濃縮余剰汚泥を濃縮生汚泥と混合することにより、混合汚泥がメタン発酵に適した温度となるようにするので、濃縮余剰汚泥の加熱殺菌に要した熱エネルギーを利用してメタン発酵を促進することができ、メタン発酵槽における加温を不要又は低減することができる。
【0012】
更に、生汚泥の発生量及び余剰汚泥の発生量が変動しても、(1)殺菌工程における濃縮余剰汚泥の加熱温度、(2)生汚泥濃縮工程における濃縮生汚泥の濃度及び/又は余剰汚泥濃縮工程における濃縮余剰汚泥の濃度、(3)汚泥混合工程における濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥との混合比、の少なくとも1つを制御することにより、混合汚泥の温度がメタン発酵に適した温度となるように維持することができる。
【0013】
本発明に係る有機性排水の処理方法においては、前記制御は、前記殺菌工程における前記濃縮余剰汚泥の加熱温度を殺菌可能な範囲で定めた所定の温度に設定するステップS1と、前記混合汚泥の温度がメタン発酵に適した所定の温度となるように、前記濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥との混合比を設定するステップS2と、前記生汚泥の発生量及び前記余剰汚泥の発生量の変動に応じて、前記濃縮生汚泥と前記濃縮余剰汚泥との混合比が前記ステップS2で設定した混合比になるように、前記生汚泥濃縮工程における濃縮生汚泥の濃度及び/又は前記余剰汚泥濃縮工程における濃縮余剰汚泥の濃度を調整するステップS3とを含むことが好ましい。
【0014】
この態様によれば、殺菌工程における濃縮余剰汚泥の加熱温度を設定し、混合汚泥の温度がメタン発酵に適した所定の温度となるように、濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥との混合比を決定し、生汚泥の発生量及び余剰汚泥の発生量の変動に応じて、生汚泥濃縮工程における濃縮生汚泥の濃度及び/又は余剰汚泥濃縮工程における濃縮余剰汚泥の濃度を調整して、濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥との混合比が前記混合比になるようにすることにより、生汚泥の発生量及び余剰汚泥の発生量が変動しても、混合汚泥の温度をメタン発酵に適した所定の温度に維持することができる。
【0015】
本発明に係る有機性排水の処理方法においては、前記ステップS3の濃度の調整において、前記濃縮生汚泥の濃度及び/又は前記濃縮余剰汚泥の濃度の調整可能な範囲を超えた場合には、該濃度を調整可能な範囲で求められる値に近づくように調整することが好ましい。
【0016】
この態様によれば、生汚泥の発生量及び余剰汚泥の発生量が大きく変動して、ステップS3の濃度の調整において、濃縮生汚泥の濃度及び/又は濃縮余剰汚泥の濃度の調整可能な範囲を超えた場合でも、混合汚泥の温度をメタン発酵に適した所定の温度にできる限り維持することができる。
【0017】
本発明に係る有機性排水の処理方法においては、前記ステップS3の濃度の調整において、前記濃縮生汚泥の濃度及び/又は前記濃縮余剰汚泥の濃度の調整可能な範囲を超えた場合には、前記ステップS1における前記濃縮余剰汚泥の加熱温度を殺菌可能な範囲で変更し、該加熱温度の変更に伴って前記ステップS2における前記濃縮生汚泥と前記濃縮余剰汚泥との混合比を再設定して、前記ステップS3の濃度の調整を可能とすることが好ましい。
【0018】
この態様によれば、生汚泥の発生量及び余剰汚泥の発生量が大きく変動して、ステップS3の濃度の調整において、濃縮生汚泥の濃度及び/又は濃縮余剰汚泥の濃度の調整可能な範囲を超えた場合でも、濃縮余剰汚泥の加熱温度を殺菌可能な範囲で変更し、該加熱温度の変更に伴ってステップS2における濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥との混合比を再設定することにより、ステップS3の濃度の調整を可能にして、混合汚泥の温度をメタン発酵に適した所定の温度に維持することができる。
【0019】
本発明に係る有機性排水の処理方法においては、前記制御は、前記生汚泥の発生量と、前記余剰汚泥の発生量の変動に伴う、前記濃縮生汚泥と前記濃縮余剰汚泥との混合比を求めるステップS21と、前記変動した混合比において、前記混合汚泥の温度がメタン発酵に適した所定の温度になるように、前記濃縮
余剰汚泥の加熱温度を調整するステップS22とを含むことが好ましい。
【0020】
この態様によれば、生汚泥の発生量と、余剰汚泥の発生量の変動に伴う、濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥との混合比の変動に基づいて、混合汚泥の温度がメタン発酵に適した所定の温度になるように、濃縮
余剰汚泥の加熱温度を調整することにより、生汚泥の発生量及び余剰汚泥の発生量が変動しても、混合汚泥の温度をメタン発酵に適した所定の温度に維持することができる。
【0021】
本発明に係る有機性排水の処理方法においては、前記ステップS22において、前記濃縮余剰汚泥の加熱温度の調整可能な範囲を超えた場合には、前記濃縮生汚泥の濃度及び/又は前記濃縮余剰汚泥の濃度を変更して、前記ステップS21における前記濃縮生汚泥と前記濃縮余剰汚泥との混合比を変えることにより、前記濃縮余剰汚泥の加熱温度の調整を可能とすることが好ましい。
【0022】
この態様によれば、生汚泥の発生量及び余剰汚泥の発生量が大きく変動して、ステップS22において、濃縮余剰汚泥の加熱温度の調整可能な範囲を超えた場合でも、濃縮生汚泥の濃度及び/又は濃縮余剰汚泥の濃度を変更して、前記ステップS21における前記濃縮生汚泥と前記濃縮余剰汚泥との混合比を変えることにより、濃縮余剰汚泥の加熱温度の調整を可能として、混合汚泥の温度をメタン発酵に適した所定の温度に維持することができる。
【0023】
本発明に係る有機性排水の処理方法においては、前記殺菌工程における前記濃縮余剰汚泥の加熱温度は、60〜160℃の範囲で設定することが好ましい。
【0024】
本発明に係る有機性排水の処理方法においては、前記殺菌工程における前記濃縮余剰汚泥の加熱温度は、平均温度が80℃以上であって、局所的には90〜100℃となるように設定することが好ましい。
【0025】
本発明に係る有機性排水の処理方法においては、前記混合汚泥の温度は、30〜40℃とされており、中温発酵に適応可能とされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、濃縮余剰汚泥を加熱して殺菌することにより、混合汚泥をメタン発酵させる際に、濃縮余剰汚泥が微生物によって分解されやすくすることができ、メタン発酵に要する時間を短縮し、メタン発酵槽の容量を小さくすることができると共に、汚泥の分解率を向上し、消化ガスの発生量を大きくすることができる。
【0027】
また、濃縮余剰汚泥を加熱して殺菌した後、加温された濃縮余剰汚泥を濃縮生汚泥と混合することにより、混合汚泥がメタン発酵に適した温度となるようにするので、濃縮余剰汚泥の加熱殺菌に要した熱エネルギーを利用してメタン発酵を促進することができ、メタン発酵槽における加温を不要又は低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明に係る有機性排水の処理装置の一実施形態について説明する。
【0030】
図1に示すように、この実施形態に係る有機性排水の処理装置(以下、単に「処理装置」ともいう)は、有機性排水から生汚泥を除去する生汚泥除去槽10を有している。この生汚泥除去槽10には、下水等の有機性排水の供給源から伸びた配管L1が接続されている。そして、生汚泥除去槽10は、配管L1から供給された有機性排水中の繊維成分などの固形物を固液分離して、生汚泥(初沈汚泥)と、生汚泥が除去された有機性排水とに分離する。なお、生汚泥除去槽としては、有機性排水を固液分離可能であればよく、例えば、周知の重力沈殿槽等を利用することができ、また、沈殿槽ではなく、高速ろ過槽等を利用してもよく、特に限定はされない。この生汚泥除去槽10が、本発明における「生汚泥除去手段」をなしている。
【0031】
上記生汚泥除去槽10には、配管L2を介して生汚泥濃縮機15が接続されている。この生汚泥濃縮機15は、生汚泥除去槽10から配管L2を通して供給される、有機性排水から除去された生汚泥を、所定濃度に濃縮して濃縮生汚泥とする。この生汚泥濃縮機15が、本発明における「生汚泥濃縮手段」をなしている。
【0032】
また、この生汚泥濃縮機15としては、例えば、重力を利用して生汚泥を沈めて濃くする重力濃縮槽を用いることができ、該重力濃縮槽の場合、汚泥の投入負荷や、薬注率(高分子凝集剤等の薬の注入量の比率を意味する。以下の説明でも同様)等の制御によって、単位時間当たりに得られる濃縮生汚泥の体積(V(x’))を調整可能となっている。なお、生汚泥の濃縮方法としては、重力を利用する上記の重力濃縮以外にも、例えば、遠心濃縮、ベルト式ろ過濃縮、常圧浮上濃縮などの、機械濃縮を採用することもできる。遠心濃縮の場合は、遠心力や薬注率等の制御により、ベルト式ろ過濃縮の場合は、ベルトの回転数等の制御により、常圧浮上濃縮の場合は、気泡助剤の添加量等の制御によって、前記濃縮生汚泥の体積(V(x’))を調整可能である。
【0033】
更に、生汚泥除去槽10には、配管L3を介して生物処理槽20が接続されている。この生物処理槽20は、生汚泥除去槽10から配管L3を通して供給される、生汚泥が除去された有機性排水を生物処理する。生物処理槽20としては、例えば空気を吹き込んで好気性微生物により有機物を分解する曝気槽などが用いられるが、有機物を分解処理できる方法であれば、特に限定はされない。
【0034】
上記生物処理槽20には、配管L4を介して汚泥分離槽25が接続されている。この汚泥分離槽25は、生物処理槽20から配管L4を通して供給される、生物処理後の処理液から、汚泥と処理水とに固液分離する。この汚泥分離槽としては、重力沈降槽、膜分離装置等を利用することができ、生物処理後の処理液を、汚泥と処理水とに固液分離可能であれば特に限定はされない。
【0035】
汚泥分離槽25で汚泥を分離された処理水は、配管L5を介して系外に排出される。また、汚泥分離槽25は、配管L7を介して生物処理槽20に接続されると共に、配管L6を介して余剰汚泥濃縮機30に接続されている。そして、汚泥分離槽25で分離された汚泥の大部分は、配管L7を介して返送汚泥として生物処理槽20に返送されるが、上記汚泥の一部は、余剰汚泥として、配管L6を介して余剰汚泥濃縮機30に送られるようになっている。汚泥分離槽25、配管L6が本発明における「余剰汚泥分離手段」をなしている。
【0036】
余剰汚泥濃縮機30は、余剰汚泥分離槽25から配管L6を通して供給される余剰汚泥を、所定濃度に濃縮して濃縮余剰汚泥とする。この余剰汚泥濃縮機30が、本発明における「余剰汚泥濃縮手段」をなしている。
【0037】
余剰汚泥濃縮機30としては、例えば網状のベルト上でろ過して濃くするベルト型濃縮機などが利用できる。このベルト型濃縮機では、ベルトの回転数(移動速度)によって余剰汚泥の濃度を調整して(ベルト式ろ過圧縮)、単位時間当たりに得られる濃縮余剰汚泥の体積(V(y’))を調整可能となっている。なお、余剰汚泥の濃縮方法としては、上記のようなベルト式ろか濃縮以外にも、遠心濃縮や常圧浮上濃縮などの機械濃縮を用いてもよく、更に、重力を利用して余剰汚泥を沈めて濃くする重力濃縮を用いてもよい。前記遠心濃縮の場合は、遠心力や薬注率等の制御により、常圧浮上濃縮の場合は、気泡助剤の添加量等の制御により、また、前記重力濃縮の場合には、汚泥の投入負荷や薬注率等の制御によって、前記体積(V(y’))を調整可能となっている。
【0038】
また、生汚泥濃縮機15は配管L8を介して汚泥混合槽35に接続され、また、余剰汚泥濃縮機30は配管L9を介して汚泥混合槽35が接続されている。この汚泥混合槽35は、生汚泥濃縮機15から配管L8を介して供給される濃縮生汚泥と、余剰汚泥濃縮機30から配管L9を介して供給される濃縮余剰汚泥とを混合して、混合汚泥とする。
【0039】
上記汚泥混合槽35は、配管L10を介してメタン発酵槽40に接続されている。このメタン発酵槽40は、汚泥混合槽35から配管L10を通して供給される混合汚泥を、メタン菌等の嫌気性微生物の作用でメタン発酵処理(嫌気処理)して、メタンガス等の消化ガスに分解する。なお、このメタン発酵槽40には、槽内の発酵液を攪拌する図示しない攪拌装置が配置されている。
【0040】
また、この実施形態では、メタン発酵槽40内に、嫌気性消化菌を担持する担体41が配置されている。これによって、メタン発酵槽40内での、混合汚泥の滞留時間(HRT)を短くすることができるので、メタン発酵槽40を小型化してその建設費を低減することができると共に、混合汚泥の消化率を向上させることができ、消化ガスの発生量を増加させることができる。なお、担体41としては、メタン発酵槽40内での混合汚泥の攪拌の邪魔とならないように、浮遊性のものであることが好ましい。
【0041】
また、メタン発酵槽40には、メタンガス等の消化ガスを引き抜くための配管L12が接続されており、この消化ガスの一部を、後述する加熱殺菌装置50の燃料として利用することができる。更にメタン発酵槽40には、メタン発酵液を引き抜くための、配管L13が接続されており、メタン発酵槽40から引き抜かれたメタン発酵液は、図示しない汚泥処理系へと移送されて処理される。
【0042】
そして、この処理装置は、余剰汚泥濃縮手段から取出された濃縮余剰汚泥を加熱して殺菌する加熱殺菌装置50と、生汚泥の発生量及び余剰汚泥の発生量の変動に応じて、(1)加熱殺菌装置50による殺菌工程における濃縮余剰汚泥の加熱温度、(2)生汚泥濃縮手段(生汚泥濃縮機15)による生汚泥濃縮工程における濃縮生汚泥の濃度及び/又は余剰汚泥濃縮手段(余剰汚泥濃縮機30)による余剰汚泥濃縮工程における濃縮余剰汚泥の濃度、(3)汚泥混合槽35による汚泥混合工程における濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥との混合比、の少なくとも1つを調整して、混合汚泥の温度がメタン発酵に適した温度となるように制御する制御装置55とを有している。
【0043】
前記加熱殺菌装置50としては、例えば、配管L9に蒸気を吹き込んだり、温水を放水したりする構造のものや、或いは、配管内や配管外周に配置可能な、チューブ式やプレート式やスパイラル式等の熱交換器を用いてもよく、配管L9を流れる濃縮余剰汚泥を加熱殺菌可能であればよい。また、加熱殺菌装置50における、蒸気や温水、熱交換器の燃料源としては、メタン発酵槽40から引き抜かれる消化ガスを利用してもよい。
【0044】
この実施形態では、
図1に示すように、余剰汚泥濃縮機30と汚泥混合槽35とを互いに接続する配管L9の途中に、加熱殺菌装置50が配置されており、この加熱殺菌装置50に制御装置55が接続されている。
【0045】
また、配管L8には、濃縮生汚泥の単位時間当たりの流量や温度を測定する図示しない計測器が設けられ、配管L9には、濃縮余剰汚泥の単位時間当たりの流量や加熱殺菌後の温度を測定する図示しない計測器が設けられている。なお、計測器により測定された流量や温度は、前記制御装置55に送信されて、該制御装置55が、これらの測定値と予め設定された設定値とを利用して、上述した(1)〜(3)の制御を実行可能となっている。
【0046】
次に、本発明に係る有機性排水の処理方法について、上記構造をなした有機性排水の処理装置を用いた場合を例に挙げて説明する。
【0047】
配管L1を通して供給される有機性排水は生汚泥除去槽10に送られ、生汚泥除去槽10にて有機性排水中の繊維成分などの固形物が沈降して生汚泥(初沈汚泥)として固液分離される(生汚泥除去工程)。
【0048】
この生汚泥は、配管L2を通して生汚泥濃縮機15に送られ、そこで濃縮されて濃縮生汚泥とされる(生汚泥濃縮工程)。濃縮生汚泥の濃度は、例えば、重力濃縮の場合は、汚泥の投入量や薬注率等の制御によって調整可能である。また、遠心濃縮、ベルト式ろ過濃縮、常圧浮上濃縮などの機械濃縮では、遠心濃縮の場合は遠心力や薬注率等の制御、ベルト式ろ過圧縮の場合はベルトの回転数等の制御、常圧浮上濃縮の場合は気泡助剤の添加量等の制御によって、調整可能であり、それによって単位時間当たりに得られる濃縮生汚泥の体積(V(x’))が調整可能となっている。こうして得られた濃縮生汚泥は、配管L8を通して汚泥混合槽35に送られる。
【0049】
一方、生汚泥除去槽10にて生汚泥を除去された有機性排水は、配管L3を通して生物処理槽20に送られ、生物処理槽20にて曝気処理などの生物処理がなされる。この生物処理によって、好気性微生物などにより有機性排水中の有機物が分解されると共に、微生物の菌体を主成分とする活性汚泥が形成される。
【0050】
生物処理槽20で有機物の分解処理がなされた処理液は、配管L4を通して汚泥分離槽25に送られ、そこで汚泥を分離される。汚泥を分離された処理液は、配管L5を通して系外に排出される。
【0051】
汚泥分離槽25で分離された汚泥の大部分は、配管L7を通して生物処理槽20に返送汚泥として返送される。一方、汚泥分離槽25で分離された汚泥の一部は、余剰汚泥として配管L6を通して余剰汚泥濃縮機30に送られる(余剰汚泥分離工程)。
【0052】
そして、余剰汚泥濃縮機30に送られた余剰汚泥は、そこで濃縮されて濃縮余剰汚泥とされる(余剰汚泥濃縮工程)。濃縮余剰汚泥の濃度は、例えば、ベルト式ろ過圧縮の場合には、ベルトの回転数(移動速度)によって余剰汚泥の濃度を調整して、単位時間当たりに得られる濃縮余剰汚泥の体積(V(y’))を調整可能となっている。また、上記のようなベルト式ろか濃縮以外の、遠心濃縮や常圧浮上濃縮などの機械濃縮を用いてもよく、更に、重力を利用して余剰汚泥を沈めて濃くする重力濃縮を用いてもよい。前記遠心濃縮の場合は、遠心力や薬注率等の制御により、常圧浮上濃縮の場合は、気泡助剤の添加量等の制御により、また、前記重力濃縮の場合には、汚泥の投入負荷や薬注率等の制御によって、前記体積(V(y’))を調整可能となっている。
【0053】
余剰汚泥濃縮機30で濃縮された濃縮余剰汚泥は、配管L9を通して加熱殺菌装置50に送られ、そこで加熱殺菌される(殺菌工程)。
【0054】
殺菌工程における濃縮余剰汚泥の加熱温度は、60〜160℃の範囲で設定されることが好ましく、60〜100℃の範囲で設定されることがより好ましい。濃縮余剰汚泥の加熱温度が60℃未満の場合は、濃縮余剰汚泥の殺菌が不十分となりやすく、濃縮余剰汚泥の加熱温度が160℃を超えると、殺菌工程におけるエネルギーが過大になる。
【0055】
また、殺菌工程における濃縮余剰汚泥の加熱温度は、平均温度が80℃以上であって、局所的には90〜100℃となるように設定することが好ましい。
【0056】
更に、殺菌工程における濃縮余剰汚泥の加熱温度及び加熱時間は、(a)120〜160℃で1〜5秒、(b)75〜85℃で15〜20分、(c)63〜65℃で30分、の中から選ばれたいずれかの条件であることが好ましい。
【0057】
また、メタン発酵により発生した消化ガスを、加熱殺菌のための燃料源として、濃縮余剰汚泥を加熱殺菌することができ、それによってエネルギーの追加投入が不要となるという効果が得られる。
【0058】
殺菌された濃縮余剰汚泥は、配管L9を通して汚泥混合槽35に送られて、配管L8を通して送られてくる濃縮生汚泥と混合され、混合汚泥が形成される(汚泥混合工程)。混合汚泥の温度は、濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥の混合比や、濃縮余剰汚泥の加熱殺菌温度によって調整することができる。
【0059】
汚泥混合工程における濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥との混合比は、例えば、殺菌工程における濃縮余剰汚泥の加熱温度が60℃の場合には、濃縮生汚泥:濃縮余剰汚泥=1:1〜3:1であることが好ましく、同加熱温度が80℃の場合には、濃縮生汚泥:濃縮余剰汚泥=2:1〜5:1であることが好ましく、同加熱温度が120℃の場合には、濃縮生汚泥:濃縮余剰汚泥=4:1〜9:1であることが好ましい。
【0060】
制御装置55は、生汚泥の発生量及び余剰汚泥の発生量の変動に応じて、(1)殺菌工程における濃縮余剰汚泥の加熱温度、(2)生汚泥濃縮工程における濃縮生汚泥の濃度及び/又は余剰汚泥濃縮工程における濃縮余剰汚泥の濃度、(3)汚泥混合工程における濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥との混合比、の少なくとも1つを調整して、混合汚泥の温度がメタン発酵に適した温度となるように制御する。
【0061】
また、上述した殺菌工程における濃縮余剰汚泥の加熱温度や、汚泥混合工程における濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥との混合比により、混合された混合汚泥は、特に、その発酵温度が30〜40℃の中温発酵に適応可能であることが好ましい。
【0062】
そして、以上説明した処理方法によれば、濃縮余剰汚泥を加熱して殺菌することにより、混合汚泥をメタン発酵させる際に、濃縮余剰汚泥が微生物によって分解されやすくすることができ、それによってメタン発酵に要する時間(滞留時間:HRT)を短縮し、メタン発酵槽の容量を小さくすることができると共に、汚泥の分解率を向上させ、消化ガスの発生量を大きくすることができる。
【0063】
また、メタン発酵槽の小型化を図ることができるので、設備コストを削減することができる。なお、濃縮余剰汚泥を加熱殺菌する設備(加熱殺菌装置)が必要となるが、これについては、従来技術で必要であった余剰汚泥を可溶化するための設備に比べて、コンパクトにすることができ、更に加熱温度が高い場合(後述するが100〜160℃等)には、その加熱時間は数秒でよいため、配管内で加熱工程を実施することも可能であり、設備コストの低減を図ることができる。
【0064】
また、濃縮余剰汚泥を加熱して殺菌した後、加温された濃縮余剰汚泥を濃縮生汚泥と混合することにより、混合汚泥がメタン発酵に適した温度となるようにするので、濃縮余剰汚泥の加熱殺菌に要した熱エネルギーを利用してメタン発酵を促進することができ、メタン発酵槽における加温を不要又は低減することができ、ランニングコストを低減することができる。
【0065】
本発明の好ましい態様においては、メタン発酵処理工程において、メタン発酵槽40への加温は行わないようにする。この態様によれば、濃縮余剰汚泥の加熱殺菌に要した熱エネルギーを利用してメタン発酵を促進し、メタン発酵槽への加温をしないことにより、メタン発酵により得られるエネルギーの消費を抑制して、他の用途に利用できるエネルギー量を増大させることができる。
【0066】
また、生汚泥の発生量及び余剰汚泥の発生量が変動しても、(1)殺菌工程における濃縮余剰汚泥の加熱温度、(2)生汚泥濃縮工程における濃縮生汚泥の濃度及び/又は余剰汚泥濃縮工程における濃縮余剰汚泥の濃度、(3)汚泥混合工程における濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥との混合比、の少なくとも1つを制御することにより、混合汚泥の温度がメタン発酵に適した温度となるように維持することができる。
【0067】
次に、制御装置55による制御方法の一例について、
図2,3を参照して説明する。この方法は、
図2に示すように、殺菌工程における濃縮余剰汚泥の加熱温度を殺菌可能な範囲で定めた所定の温度に設定するステップS1と、混合汚泥の温度がメタン発酵に適した所定の温度となるように、濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥との混合比を設定するステップS2と、生汚泥の発生量及び余剰汚泥の発生量の変動に応じて、濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥との混合比がステップS2で設定した混合比になるように、生汚泥濃縮工程における濃縮生汚泥の濃度及び/又は余剰汚泥濃縮工程における濃縮余剰汚泥の濃度を調整するステップS3とを含むものである。
【0068】
ステップS3において、生汚泥濃縮工程における濃縮生汚泥の濃度を調整する場合の方法について、生汚泥濃縮機15としてベルト型濃縮機を用いた場合の一例によって説明すると、
図3(a)に示すように、まず、ステップS4にて、得られる濃縮生汚泥の単位時間当たりの体積(言い換えると、配管L8を流れる濃縮生汚泥の単位時間当たりの流量)V(x’)と、その目標値Aとを比較して、V(x’)>目標値Aの場合は、ステップS5にて、生汚泥濃縮機15の図示しないベルト型濃縮機の回転数eをe−1にする。そして、ステップS6にて再び目標値Aと比較し、目標値Aに到達していれば終了し、到達していなければ再びステップS4に戻って、ステップS5を通って回転数を更に減少させ、ステップS6にて目標値Aに到達した否かをみる。この操作を繰り返して、V(x’)をA値に到達させて終了することができる。
【0069】
また、ステップS4において、V(x’)<目標値Aの場合は、ステップS7にて、生汚泥濃縮機15の図示しないベルト型濃縮機の回転数eをe+1にする。そして、ステップS6にて再び目標値Aと比較し、目標値Aに到達していれば終了し、到達していなければ再びステップS4に戻って、ステップS7を通って回転数を更に増大させ、ステップS6にて目標値Aに到達した否かをみる。この操作を繰り返して、V(x’)をA値に到達させて終了することができる。
【0070】
なお、ステップS4において、V(x’)=目標値Aの場合は、ステップS8、S6を経て目標値Aに到達していることを確認して終了する。
【0071】
次に、ステップS3において、余剰汚泥濃縮工程における濃縮余剰汚泥の濃度を調整する場合の方法について、余剰汚泥濃縮機30としてベルト型濃縮機を用いた場合の一例によって説明すると、
図3(b)に示すように、まず、ステップS9にて、得られる濃縮余剰汚泥の単位時間当たりの体積(言い換えると、配管L9を流れる濃縮余剰汚泥の単位時間当たりの流量)V(y’)と、その目標値Bとを比較して、V(y’)>目標値Bの場合は、ステップS10にて、余剰汚泥濃縮機30の図示しないベルト型濃縮機の回転数fをf−1にする。そして、ステップS11にて再び目標値Bと比較し、目標値Bに到達していれば終了し、到達していなければ再びステップS9に戻って、ステップS10を通って回転数を更に減少させ、ステップS11にて目標値Bに到達したか否かをみる。この操作を繰り返して、V(y’)をB値に到達させて終了することができる。
【0072】
また、ステップS9において、V(y’)<目標値Bの場合は、ステップS12にて、余剰汚泥濃縮機30の図示しないベルト型濃縮機の回転数fをf+1にする。そして、ステップS11にて再び目標値Bと比較し、目標値Bに到達していれば終了し、到達していなければ再びステップS9に戻って、ステップS12を通って回転数を更に増大させ、ステップS11にて目標値Bに到達したか否かをみる。この操作を繰り返して、V(y’)をB値に到達させて終了することができる。
【0073】
なお、ステップS9において、V(y’)=目標値Bの場合は、ステップS13、S11を経て目標値Aに到達していることを確認して終了する。
【0074】
この態様によれば、殺菌工程における濃縮余剰汚泥の加熱温度を設定し、混合汚泥の温度がメタン発酵に適した所定の温度となるように、濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥との混合比を決定し、生汚泥の発生量及び余剰汚泥の発生量の変動に応じて、生汚泥濃縮工程における濃縮生汚泥の濃度及び/又は余剰汚泥濃縮工程における濃縮余剰汚泥の濃度を調整して、濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥との混合比が前記混合比になるようにすることにより、生汚泥の発生量及び余剰汚泥の発生量が変動しても、混合汚泥の温度をメタン発酵に適した所定の温度に維持することができる。
【0075】
なお、
図3(a),(b)で説明した、濃縮生汚泥及び濃縮余剰汚泥を目標値A,Bに調整する手段としては、上記のように生汚泥濃縮機15の撹拌装置や余剰汚泥濃縮機30のベルト型濃縮機の回転数を増減させる方法のみならず、高分子凝集剤等の薬の注入量の比率(薬注率)を増減させることによって行ってもよい。
【0076】
図4には、上記制御方法を更に改良した例が示されている。この方法では、ステップS3にて求められた濃縮生汚泥及び/又は濃縮余剰汚泥の濃度が、調整可能な範囲であるか否かをステップS14にて判断する。そして、ステップS3にて求められた濃縮生汚泥及び/又は濃縮余剰汚泥の濃度が、調整可能な範囲を超えている場合には、ステップS1に戻って濃縮余剰汚泥の殺菌温度を変えて再設定する。そして、再設定された温度に基づいて、ステップS2にて濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥との混合比を求め、ステップS3でその混合比になるように濃縮生汚泥及び/又は濃縮余剰汚泥の濃度を調整する。そして、ステップS14にて、上記濃度が調整可能な範囲を超えているかどうかを再度判断し、なおかつ調整可能な範囲を超えている場合には、ステップS1に戻って再度濃縮余剰汚泥の殺菌温度を変えて再設定し、上記ステップを繰り返す。そして、ステップS14にて、濃縮生汚泥及び/又は濃縮余剰汚泥の濃度が調整可能な範囲であることを確認したら終了する。
【0077】
この態様によれば、濃縮生汚泥及び/又は濃縮余剰汚泥の濃度が調整可能な範囲を超えても、濃縮余剰汚泥の殺菌温度を変えて再設定することにより、濃縮生汚泥及び/又は濃縮余剰汚泥の濃度が調整可能な範囲となるように調整することができ、生汚泥の発生量及び余剰汚泥の発生量が大きく変動しても、混合汚泥の温度がメタン発酵に適した温度となるように維持することができる。
【0078】
なお、上記態様において、ステップS14において、濃縮生汚泥及び/又は濃縮余剰汚泥の濃度が調整可能な範囲を超えていると判断されたときに、該濃度を調整可能な範囲で求められる値にできるだけ近づくように調整して終了することもできる。
【0079】
図5には、制御装置55による制御方法の更に他の例が示されている。この方法では、ステップS21において、生汚泥の発生量及び/又は余剰汚泥の発生量の変動に伴う、濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥との混合比を求める。すなわち、生汚泥の発生量及び/又は余剰汚泥の発生量が変動すると、生汚泥濃縮機15で得られる濃縮生汚泥の単位時間当たりの体積や、余剰汚泥濃縮機30で得られる濃縮余剰汚泥の単位時間当たりの体積が変動し、濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥との混合比が変わってくるので、その混合比を求める。
【0080】
そして、ステップS22において、変化した混合比に合わせて、混合汚泥の温度がメタン発酵に適した温度となるように、濃縮余剰汚泥の加熱殺菌温度を設定する。
【0081】
この状態で制御を終了させてもよいが、この例では、更に、ステップS23にて、上記加熱殺菌温度が調整可能な範囲を超えたか否かを判断する。そして、加熱殺菌温度が調整可能な範囲を超えている場合は、ステップS24にて、濃縮生汚泥及び/又は濃縮余剰汚泥の濃度を調整し、ステップS21に戻って、再度濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥との混合比を求め、ステップS22にて加熱殺菌温度を再設定し、ステップS23にて加熱殺菌温度が調整可能な範囲を超えたか否かを判断する。この操作を繰り返すことにより、加熱殺菌温度を調整可能な範囲とすることができる。
【0082】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【実施例1】
【0083】
以下、シミュレーションによって本発明の効果を確認した。なお、シミュレーションソフトとしては、Hydromantis Environmental Software Solutions社製のソフトウェア「GPS−X6.4」を用いた。
【0084】
<汚泥性状の条件>
【0085】
生汚泥及び余剰汚泥として、下記表1に示される条件のものを用いた。
【表1】
【0086】
なお、上記表1中、(gSS/m
3)の「SS」は浮遊物質量であり、懸濁している不溶解性物質のことをいう。また、(gSS/m
3)は、汚泥1m
3当たりの浮遊物質の質量(g)を意味する。更に、(gVSS/m
3)の「VSS」は、SSの強熱減量であり、SSを強熱したときに揮発する物質(主として有機物)のことをいう。また、(gVSS/m
3)は、汚泥1m
3当たりの有機物の質量(g)を意味する。
【0087】
<実施例1>
【0088】
図1に示す有機性排水の処理装置において、メタン発酵槽40として、微生物の担体41を有さないものを用いて処理を行った。生汚泥除去槽10から分離される生汚泥、生汚泥濃縮機15で濃縮される濃縮生汚泥、汚泥分離槽25から分離される余剰汚泥、余剰汚泥濃縮機30で濃縮される濃縮余剰汚泥の性状は、表1に示される通りである。
【0089】
濃縮余剰汚泥を加熱殺菌装置50により80℃で加熱殺菌し、濃縮生汚泥と、濃縮余剰汚泥とを体積比で3:1となるように汚泥混合槽35に導入して混合し、混合汚泥の温度を35℃とした。この混合汚泥を容量9000m
3のメタン発酵槽40に導入し、20日間メタン発酵を行った。この場合に発生する消化ガス量、メタン濃度、消化率を、前記シミュレーションソフトによってシミュレーションし、下記表2に示される結果を得た。
【0090】
なお、濃縮生汚泥の温度が20℃で、混合汚泥の目標温度が35℃の場合、濃縮余剰汚泥の加熱殺菌温度をT(℃)とし、濃縮生汚泥の1日当たりの体積をV(x’)とし、濃縮余剰汚泥の1日当たりの体積をV(y’)としたとき、これらの関係は、下記数式によって求めることができる。なお、下記数式において「15」という値は、目標とする混合汚泥の温度(35℃)から、濃縮生汚泥の温度(20℃)を引くことによって求められる係数である。
【数1】
【0091】
上記実施例1の場合、V(x’)が345m
3/d、V(y’)が115m
3/dであるため、
濃縮余剰汚泥の加熱殺菌温度は、T=15×(345/115)+35=80℃となる。
【0092】
<実施例2>
図1に示す有機性排水の処理装置において、メタン発酵槽40として、微生物の担体41を有するものを用いて処理を行った。その他の条件は、実施例1と同じである。この場合に発生する消化ガス量、メタン濃度、消化率を前記シミュレーションソフトによってシミュレーションし、下記表2に示される結果を得た。
【0093】
<比較例>
図1に示す有機性排水の処理装置において、加熱殺菌装置50を有さず、メタン発酵槽40を加温するタイプの従来の処理装置を用いて処理を行った。生汚泥除去槽10から分離される生汚泥、生汚泥濃縮機15で濃縮される濃縮生汚泥、汚泥分離槽25から分離される余剰汚泥、余剰汚泥濃縮機30で濃縮される濃縮
余剰汚泥の性状は、表1に示される通りである。
【0094】
濃縮余剰汚泥を加熱殺菌することなく、濃縮生汚泥と、濃縮余剰汚泥とを体積比で3:2となるように汚泥混合槽35に導入して混合した。この混合汚泥を容量14000m
3のメタン発酵槽40に導入し、メタン発酵槽40にて混合汚泥の温度が35℃となるように加温して、25日間メタン発酵を行った。この場合に発生する消化ガス量、メタン濃度、消化率を前記シミュレーションソフトによってシミュレーションし、下記表2に示される結果を得た。
【表2】
【0095】
上記表2に示すように、実施例1においては、比較例と比べて、ガス発生量が25%増加すると共に、メタン発酵槽の槽容量も36%減少することが分かった。また、メタン発酵槽に担体を配置した実施例2においては、比較例と比べて、ガス発生量が29%増加すると共に、メタン発酵槽の槽容量も36%減少することが分かった。
【0096】
<濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥との混合比>
【0097】
濃縮余剰汚泥の加熱温度を120℃、80℃、60℃に設定した場合に、混合汚泥の温度がメタン発酵に適した35±5℃となるようにするための、濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥との混合比率(体積比)を求めた。この結果を下記表3に示す。
【表3】
【0098】
<生汚泥や余剰汚泥の発生量の変動に対するシミュレーション>
【0099】
生汚泥や余剰汚泥の発生量は、下水処理場への流入水質等により変動する。そこで、濃縮生汚泥や濃縮余剰汚泥の濃度を調整することで、濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥の混合比率を、上記表3のようにできるか否かを確認した。
【0100】
すなわち、濃縮生汚泥の発生量(V(x))を一定とすると共に(1000m
3/d)、濃度(C(x))を一定とした場合において(1%)、余剰汚泥の発生量(V(y))や濃度(C(y))が変動したときに、濃縮生汚泥の濃度(C(x’))や、濃縮余剰汚泥の濃度(C(y’))を、どのように調整すれば、例えば、濃縮余剰汚泥の加熱温度が80℃である場合において、濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥の混合比率が9:3となるか確認した。この濃度調整も、その濃度調整の例を、下記表4に示す。
【0101】
【表4】
【0102】
上記表4に示すように、例1では、濃縮生汚泥を2.9%、濃縮余剰汚泥を7.8%、例2では、濃縮生汚泥を2.9%、濃縮余剰汚泥を5.2%、例3では、濃縮生汚泥を4.3%、濃縮余剰汚泥を5.2%に調整することで、濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥の混合比率を9:3に調整できることを確認できた。