特許第6975516号(P6975516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6975516外用組成物、化粧料、経皮吸収促進用組成物、外用組成物における有効成分の経皮吸収性を高める方法、経皮投与型医薬及び点眼用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6975516
(24)【登録日】2021年11月10日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】外用組成物、化粧料、経皮吸収促進用組成物、外用組成物における有効成分の経皮吸収性を高める方法、経皮投与型医薬及び点眼用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/42 20170101AFI20211118BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20211118BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20211118BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20211118BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20211118BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20211118BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20211118BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20211118BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20211118BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20211118BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20211118BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20211118BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   A61K47/42
   A61K8/34
   A61K8/64
   A61K45/00
   A61K47/06
   A61K47/08
   A61K47/10
   A61P17/00
   A61P17/14
   A61P27/02
   A61P31/04ZNA
   A61Q19/02
   A61Q19/08
【請求項の数】6
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2015-130996(P2015-130996)
(22)【出願日】2015年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-27036(P2016-27036A)
(43)【公開日】2016年2月18日
【審査請求日】2018年5月29日
【審判番号】不服2020-4446(P2020-4446/J1)
【審判請求日】2020年4月3日
(31)【優先権主張番号】特願2014-134940(P2014-134940)
(32)【優先日】2014年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】羽賀 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】小山田 景子
(72)【発明者】
【氏名】林 裕也
【合議体】
【審判長】 森井 隆信
【審判官】 齋藤 恵
【審判官】 大久保 元浩
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/052613(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/096276(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K47/00
A61K8/00
A61K9/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表される脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩と、
(B)多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類と、
(C)アスコルビン酸、3−Oエチルアスコルビン酸、テルビナフィン及びミノキシジル、並びにそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の有効成分と、
を含む外用組成物であって、
該外用組成物における前記(A)成分の含有量が0.05重量%以上である、外用組成物:
【化1】

(式中、Rは炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、Rは、水素原子、Rは、−(CH−X基を表し、且つ、nは1であり、Xは窒素原子を2個有する5員環基を表し、mは1である。)。
【請求項2】
さらに(D)テルペン類を含む、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
前記テルペン類(D)がメントールである、請求項に記載の外用組成物。
【請求項4】
前記(B)成分の外用組成物中の含有量が0.0001〜75重量%である、請求項1〜のいずれかに記載の外用組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載の、化粧料である外用組成物。
【請求項6】
(C)アスコルビン酸、3−Oエチルアスコルビン酸、テルビナフィン及びミノキシジル、並びにそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の有効成分と(B)多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類とを含む外用組成物に、(A)下記式(1)で表される脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩を配合し、該外用組成物における前記(A)成分の含有量が0.05重量%以上である、外用組成物の製造方法:
【化3】

(式中、Rは炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、Rは、水素原子、Rは、−(CH−X基を表し、且つ、nは1であり、Xは窒素原子を2個有る5員環基を表し、mは1である。)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外用組成物、化粧料、経皮吸収促進用組成物、外用組成物における有効成分の経皮吸収性を高める方法、経皮投与型医薬及び点眼用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
各種薬物等の有効成分を外用組成物に配合し、当該組成物に各種の機能を付与することが従来広く行われている。前記有効成分にはその構造により、親水性のものや親油性のもの、分子サイズの大きなものや小さなものがある。
【0003】
前記組成物が適用される皮膚は、外界からの生体バリアとして機能し、一般的に親水性のものや、分子サイズの大きなものは皮膚を透過しにくい。このような性質により、皮膚は各種の有害物質(細菌等)の生体への侵入を防いでいるが、これが前記の薬物等の有効成分に対してもバリアとして機能し、その生体内への吸収を妨げてしまうことがある。
【0004】
そこで、有効成分の皮膚からの生体内への吸収を高めるため、当該成分の化学構造を修飾してその親油性を高めたり、あるいは経皮吸収促進剤と呼ばれる有効成分以外の第三成分を併用したり、イオントフォレシスのような物理的な方法が採用されている。
【0005】
なお、特許文献1には、下記式で表される低分子脂質ペプチドを含む化粧料が開示されている。
【0006】
【化1】
【0007】
当該文献の実施例では、インドメタシンと、l−メントールと、パルミトイルグリシルヒスチジントリフルオロ酢酸塩とを配合した化粧料や、インドメタシンと、カンフルと、パルミトイルグリシルヒスチジンとを配合した外用剤が調製されている。しかしながら当該文献には、前記低分子脂質ペプチドを、有効成分の経皮吸収性を高めるために使用することについては、何ら開示も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2011/052613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、有効成分の経皮吸収性に優れた外用組成物等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類と、所定の脂質ペプチドとを併用することで、有効成分の経皮吸収性を高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明の要旨は、以下の通りである。
【0012】
<1>(A)下記式(1)で表される脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩と、
(B)多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類とを含む外用組成物であって、
該外用組成物における前記(A)成分の含有量が0.05重量%以上である、外用組成物:
【0013】
【化2】

(式中、R1は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、又は炭素原子数1乃至3の分枝鎖を有し得る炭素原子数3乃至7のアルキル基、フェニルメチル基、フェニルエチル基、又は−(CH2−X基を表し、且つ、R2又はR3のうち少なくとも1つが−(CH2−X基を表し、nは1乃至4の整数であり、Xはアミノ基、グアニジノ基、カルバモイル基、又は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環基若しくは6員環基又は5員環と6員環からなる縮合環基を表し、mは1乃至3の整数であり、mが2以上の場合、複数存在するR2は互いに同一でも異なっていてもよい。)。
【0014】
<2>さらに(C)有効成分を含む、<1>に記載の外用組成物。
【0015】
<3>前記式(1)中、R2が水素原子、メチル基、i−プロピル基、i−ブチル基、又はsec−ブチル基を表す、<1>又は<2>に記載の外用組成物。
【0016】
<4>前記有効成分(C)が、抗菌成分、抗炎症成分、消炎鎮痛成分、鎮痒成分、ビタミン類、局所麻酔成分、保湿成分、美白成分、抗酸化成分、老化防止成分、角質柔軟成分、細胞賦活化成分、血行促進成分、DNAの損傷の予防及び/又は修復作用を有する成分、紫外線吸収成分、紫外線散乱成分、収斂成分、育毛成分、抗ヒスタミン成分及び防腐成分からなる群より選ばれる少なくとも一種である、<2>又は<3>に記載の外用組成物。
【0017】
<5>さらに(D)テルペン類を含む、<1>〜<4>のいずれかに記載の外用組成物。
【0018】
<6>前記テルペン類(D)がメントールである、<5>に記載の外用組成物。
【0019】
<7>前記(B)成分の外用組成物中の含有量が0.0001〜75重量%である、<1>〜<6>のいずれかに記載の外用組成物。
【0020】
<8>前記式(1)中、R1が炭素原子数13乃至17の脂肪族基を表し、R2が水素原子、メチル基、又はi−プロピル基を表し、R3が4−アミノブチル基、4−イミダゾールメチル基、又は3−メチルインドール基を表す、<1>〜<7>のいずれかに記載の外用組成物。
【0021】
<9><1>〜<8>のいずれかに記載の外用組成物を含む化粧料。
【0022】
<10>(A)下記式(1)で表される脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩と、
(B)多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類とを含む経皮吸収促進用組成物であって、
該経皮吸収促進用組成物における前記(A)成分の含有量が0.05重量%以上である、経皮吸収促進用組成物:
【0023】
【化3】

(式中、R1は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、又は炭素原子数1乃至3の分枝鎖を有し得る炭素原子数3乃至7のアルキル基、フェニルメチル基、フェニルエチル基、又は−(CH2−X基を表し、且つ、R2又はR3のうち少なくとも1つが−(CH2−X基を表し、nは1乃至4の整数であり、Xはアミノ基、グアニジノ基、カルバモイル基、又は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環基若しくは6員環基又は5員環と6員環からなる縮合環基を表し、mは1乃至3の整数であり、mが2以上の場合、複数存在するR2は互いに同一でも異なっていてもよい。)。
【0024】
<11>(C)有効成分と(B)多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類とを含む外用組成物に、(A)下記式(1)で表される脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩を配合する、外用組成物における有効成分の経皮吸収性を高める方法:
【0025】
【化4】

(式中、R1は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、又は炭素原子数1乃至3の分枝鎖を有し得る炭素原子数3乃至7のアルキル基、フェニルメチル基、フェニルエチル基、又は−(CH2−X基を表し、且つ、R2又はR3のうち少なくとも1つが−(CH2−X基を表し、nは1乃至4の整数であり、Xはアミノ基、グアニジノ基、カルバモイル基、又は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環基若しくは6員環基又は5員環と6員環からなる縮合環基を表し、mは1乃至3の整数であり、mが2以上の場合、複数存在するR2は互いに同一でも異なっていてもよい。)。
【0026】
<12>医薬成分と、(A)下記式(1)で表される脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩と、(B)多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類とを含む経皮投与型医薬であって、
該経皮投与型医薬における前記(A)成分の含有量が0.05重量%以上である、経皮投与型医薬:
【0027】
【化5】

(式中、R1は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、又は炭素原子数1乃至3の分枝鎖を有し得る炭素原子数3乃至7のアルキル基、フェニルメチル基、フェニルエチル基、又は−(CH2−X基を表し、且つ、R2又はR3のうち少なくとも1つが−(CH2−X基を表し、nは1乃至4の整数であり、Xはアミノ基、グアニジノ基、カルバモイル基、又は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環基若しくは6員環基又は5員環と6員環からなる縮合環基を表し、mは1乃至3の整数であり、mが2以上の場合、複数存在するR2は互いに同一でも異なっていてもよい。)。
【0028】
<13>医薬成分と、(A)下記式(1)で表される脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩と、(B)多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類とを含む点眼用組成物であって、
該点眼用組成物における前記(A)成分の含有量が0.05重量%以上である、点眼用組成物:
【0029】
【化6】

(式中、R1は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、又は炭素原子数1乃至3の分枝鎖を有し得る炭素原子数3乃至7のアルキル基、フェニルメチル基、フェニルエチル基、又は−(CH2−X基を表し、且つ、R2又はR3のうち少なくとも1つが−(CH2−X基を表し、nは1乃至4の整数であり、Xはアミノ基、グアニジノ基、カルバモイル基、又は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環基若しくは6員環基又は5員環と6員環からなる縮合環基を表し、mは1乃至3の整数であり、mが2以上の場合、複数存在するR2は互いに同一でも異なっていてもよい。)。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、有効成分の経皮吸収性に優れた外用組成物等が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施例における実施例1及び比較例1の外用組成物についての、アスコルビン酸の経皮吸収試験の結果を示す図である。
図2】実施例における実施例2及び比較例2の外用組成物についての、アスコルビン酸の経皮吸収試験の結果を示す図である。
図3】実施例における実施例3及び比較例3の外用組成物についての、アスコルビン酸の経皮吸収試験の結果を示す図である。
図4】実施例における実施例4及び比較例4の外用組成物についての、アスコルビン酸の経皮吸収試験の結果を示す図である。
図5】実施例における実施例5及び比較例5の外用組成物についての、アスコルビン酸の経皮吸収試験の結果を示す図である。
図6】実施例における実施例6及び比較例6の外用組成物についての、アスコルビン酸の経皮吸収試験の結果を示す図である。
図7】実施例における実施例7並びに比較例7〜9の外用組成物についての、アスコルビン酸の経皮吸収試験の結果を示す図である。
図8】実施例における実施例8〜11並びに比較例10及び11の外用組成物についての、アスコルビン酸の経皮吸収試験の結果を示す図である。
図9】実施例における実施例12並びに比較例12〜14の外用組成物についての、VCエチルの経皮吸収試験の結果を示す図である。
図10】実施例における実施例13並びに比較例15及び16の外用組成物についての、テルビナフィン塩酸塩の経皮吸収試験の結果を示す図である。
図11】実施例における実施例14及び比較例17の外用組成物についての、ミノキシジルの経皮吸収試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の外用組成物、化粧料、経皮吸収促進用組成物、外用組成物における有効成分の経皮吸収性を高める方法、経皮投与型医薬及び点眼用組成物について詳細に説明する。
【0033】
[外用組成物]
本発明の外用組成物は、(A)上記式(1)で表される脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩と、(B)多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類とを含む。以下、これらの必須成分及び前記組成物が含むことのできる成分等について説明する。
【0034】
<(A)脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩>
本発明で使用される脂質ペプチドは、下記式(1)で表される、R1COの脂質部分と、式(1)においてそれより右側のペプチド部分とで構成された化合物である。
【0035】
【化7】
【0036】
本化合物は、生体適合性及び安全性が高く、塗布の際に肌、髪の表面での伸び、及び肌、髪へのなじみ、並びに塗布後にべたつきが無く及びよれが生じない等の使用感が改善され、さらに液状又はゾル等の剤型の場合には、塗布時に液だれのない化粧料等を提供し得るゲル化剤として開発されたものである。今般本発明者らが本化合物について検討したところ、本化合物が、多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類との相乗作用により、薬物等の各種有効成分の経皮吸収性を高める機能を有することが見出された。本発明においても前記化合物はゲル化剤として作用するが、ゲル化すると一般に有効成分の経皮吸収性は低下するので、前記の機能は当業者の予測を超えるものである。
【0037】
(R1について)
前記式(1)において、R1は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、好ましくは炭素原子数13乃至17の脂肪族基である。
【0038】
1及び隣接するカルボニル基で構成される脂質部分としては、例えば、デコイル基、ドデコイル基、ウンデコイル基、ラウロイル基、ドデシルカルボニル基、ミリストイル基、テトラデシルカルボニル基、パルミトイル基、マルガロイル基、オレオイル基、エライドイル基、リノレオイル基、ステアロイル基、バクセノイル基、オクタデシルカルボニル基、アラキドノイル基、イコサノイル基、ベヘノイル基、エルコイル基、ドコシルカルボニル基、リグノセロイル基、ネルボノイル基等を挙げることができ、好ましくは、ミリストイル基、テトラデシルカルボニル基、パルミトイル基、マルガロイル基、オレオイル基、エライドイル基、リノレオイル基、ステアロイル基、及びバクセノイル基等が挙げられる。
【0039】
これらの中でも脂質ペプチドの製造の容易性や有効成分の経皮吸収性促進効果の観点から、R1COとしてはパルミトイル基が特に好ましい。
【0040】
(R2及びR3について)
上記式(1)において、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基又は炭素原子数1乃至3の分枝鎖を有し得る炭素原子数3乃至7のアルキル基、フェニルメチル基、フェニルエチル基、又は−(CH2−X基を表し、且つ、R2又はR3のうち少なくとも1つが−(CH2−X基を表す。
【0041】
前記炭素原子数3乃至7のアルキル基において、その炭素原子数には、当該アルキル基が有し得る分枝鎖の炭素原子数が含まれる。
【0042】
また、前記−(CH2−X基に関して、nは1乃至4の整数であり、Xはアミノ基、グアニジノ基、カルバモイル基、又は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環基若しくは6員環基又は5員環と6員環からなる縮合環基を表す。R2及びR3の複数が−(CH2−X基である場合には、複数のnは互いに独立であり、複数のXも互いに独立である。
【0043】
有効成分の経皮吸収性促進効果の観点から、好ましくはR2は、水素原子、メチル基、エチル基、又は炭素原子数1乃至3の分枝鎖を有し得る炭素原子数3乃至7のアルキル基を表す。したがって、R2としては、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基又はtert−ブチル基であり、さらに好ましくは、水素原子、メチル基、i−プロピル基、i−ブチル基、又はsec−ブチル基であり、より一層好ましくは水素原子、メチル基、又はi−プロピル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0044】
有効成分の経皮吸収性促進効果の観点から、好ましくはR3は水素原子、メチル基、又は−(CH2−X基を表し、nは1乃至4の整数を表し、Xはアミノ基、グアニジノ基、カルバモイル基、又は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環基若しくは6員環基又は5員環と6員環からなる縮合環基を表す。
【0045】
同様な観点から、R3は好ましくは−(CH2−X基であり、Xは好ましくはアミノ基、グアニジノ基、カルバモイル基、ピロール基、イミダゾール基、ピラゾール基又はインドール基である。したがって、−(CH2−X基としては、好ましくはアミノメチル基、2−アミノエチル基、3−アミノプロピル基、4−アミノブチル基、カルバモイルメチル基、2−カルバモイルエチル基、3−カルバモイルプロピル基、2−グアニジノエチル基、3−グアニジノプロピル基、ピロールメチル基、4−イミダゾールメチル基、ピラゾールメチル基又は3−インドールメチル基であり、より好ましくは4−アミノブチル基、カルバモイルメチル基、カルバモイルエチル基、3−カルバモイルプロピル基、4−イミダゾールメチル基又は3−インドールメチル基であり、さらにより好ましくは4−アミノブチル基、4−イミダゾールメチル基又は3−メチルインドール基であり、より一層好ましくは4−イミダゾールメチル基である。
【0046】
(mについて)
前記式(1)における、ぺプチド構造を構成するアミノ酸由来の単位の繰り返しの数mは1乃至3の整数である。mが2以上の場合には、複数存在するR2は互いに独立である。また、有効成分の経皮吸収性促進効果の観点から、mは好ましくは1である。
【0047】
(脂質ペプチド)
以上説明した脂質ペプチドとして本発明において有用な化合物は、以下の脂質部及びペプチド部から形成される化合物である。なおアミノ酸の略称は、アスパラギン(Asn)、アラニン(Ala)、グルタミン(Gln)、グリシン(Gly)、バリン(Val)、ヒスチジン(His)、リジン(Lys)、ロイシン(Leu)とする。:ミリストイル−Gly−His、ミリストイル−Gly−Lys、ミリストイル−Gly−Asn、ミリストイル−Gly−Gln、ミリストイル−Gly−Gly−His、ミリストイル−Gly−Gly−Lys、ミリストイル−Gly−Gly−Asn、ミリストイル−Gly−Gly−Gln、ミリストイル−Gly−Gly−Gly−His、ミリストイル−Gly−Gly−Gly−Lys、ミリストイル−Gly−Gly−Gly−Asn、ミリストイル−Gly−Gly−Gly−Gln、ミリストイル−Ala−His、ミリストイル−Ala−Lys、ミリストイル−Ala−Asn、ミリストイル−Ala−Gln、ミリストイル−Ala−Ala−His、ミリストイル−Ala−Ala−Lys、ミリストイル−Ala−Ala−Asn、ミリストイル−Ala−Ala−Gln、ミリストイル−Ala−Ala−Ala−His、ミリストイル−Ala−Ala−Ala−Lys、ミリストイル−Ala−Ala−Ala−Asn、ミリストイル−Ala−Ala−Ala−Gln、ミリストイル−Val−His、ミリストイル−Val−Lys、ミリストイル−Val−Asn、ミリストイル−Val−Gln、ミリストイル−Val−Val−His、ミリストイル−Val−Val−Lys、ミリストイル−Val−Val−Asn、ミリストイル−Val−Val−Gln、ミリストイル−Val−Val−Val−His、ミリストイル−Val−Val−Val−Lys、ミリストイル−Val−Val−Val−Asn、ミリストイル−Val−Val−Val−Gln、ミリストイル−Leu−His、ミリストイル−Leu−Lys、ミリストイル−Leu−Asn、ミリストイル−Leu−Gln、ミリストイル−Leu−Leu−His、ミリストイル−Leu−Leu−Lys、ミリストイル−Leu−Leu−Asn、ミリストイル−Leu−Leu−Gln、ミリストイル−Leu−Leu−Leu−His、ミリストイル−Leu−Leu−Leu−Lys、ミリストイル−Leu−Leu−Leu−Asn、ミリストイル−Leu−Leu−Leu−Gln;
パルミトイルGly−His、パルミトイルGly−Lys、パルミトイルGly−Asn、パルミトイルGly−Gln、パルミトイルGly−Gly−His、パルミトイルGly−Gly−Lys、パルミトイルGly−Gly−Asn、パルミトイルGly−Gly−Gln、パルミトイルGly−Gly−Gly−His、パルミトイルGly−Gly−Gly−Lys、パルミトイルGly−Gly−Gly−Asn、パルミトイルGly−Gly−Gly−Gln、パルミトイルAla−His、パルミトイルAla−Lys、パルミトイルAla−Asn、パルミトイルAla−Gln、パルミトイルAla−Ala−His、パルミトイルAla−Ala−Lys、パルミトイルAla−Ala−Asn、パルミトイルAla−Ala−Gln、パルミトイルAla−Ala−Ala−His、パルミトイルAla−Ala−Ala−Lys、パルミトイルAla−Ala−Ala−Asn、パルミトイルAla−Ala−Ala−Gln、パルミトイルVal−His、パルミトイルVal−Lys、パルミトイルVal−Asn、パルミトイルVal−Gln、パルミトイルVal−Val−His、パルミトイルVal−Val−Lys、パルミトイルVal−Val−Asn、パルミトイルVal−Val−Gln、パルミトイルVal−Val−Val−His、パルミトイルVal−Val−Val−Lys、パルミトイルVal−Val−Val−Asn、パルミトイルVal−Val−Val−Gln、パルミトイルLeu−His、パルミトイルLeu−Lys、パルミトイルLeu−Asn、パルミトイルLeu−Gln、パルミトイルLeu−Leu−His、パルミトイルLeu−Leu−Lys、パルミトイルLeu−Leu−Asn、パルミトイルLeu−Leu−Gln、パルミトイルLeu−Leu−Leu−His、パルミトイルLeu−Leu−Leu−Lys、パルミトイルLeu−Leu−Leu−Asn、パルミトイルLeu−Leu−Leu−Gln;
ステアロイルGly−His、ステアロイルGly−Lys、ステアロイルGly−Asn、ステアロイルGly−Gln、ステアロイルGly−Gly−His、ステアロイルGly−Gly−Lys、ステアロイルGly−Gly−Asn、ステアロイルGly−Gly−Gln、ステアロイルGly−Gly−Gly−His、ステアロイルGly−Gly−Gly−Lys、ステアロイルGly−Gly−Gly−Asn、ステアロイルGly−Gly−Gly−Gln、ステアロイルAla−His、ステアロイルAla−Lys、ステアロイルAla−Asn、ステアロイルAla−Gln、ステアロイルAla−Ala−His、ステアロイルAla−Ala−Lys、ステアロイルAla−Ala−Asn、ステアロイルAla−Ala−Gln、ステアロイルAla−Ala−Ala−His、ステアロイルAla−Ala−Ala−Lys、ステアロイルAla−Ala−Ala−Asn、ステアロイルAla−Ala−Ala−Gln、ステアロイルVal−His、ステアロイルVal−Lys、ステアロイルVal−Asn、ステアロイルVal−Gln、ステアロイルVal−Val−His、ステアロイルVal−Val−Lys、ステアロイルVal−Val−Asn、ステアロイルVal−Val−Gln、ステアロイルVal−Val−Val−His、ステアロイルVal−Val−Val−Lys、ステアロイルVal−Val−Val−Asn、ステアロイルVal−Val−Val−Gln、ステアロイルLeu−His、ステアロイルLeu−Lys、ステアロイルLeu−Asn、ステアロイルLeu−Gln、ステアロイルLeu−Leu−His、ステアロイルLeu−Leu−Lys、ステアロイルLeu−Leu−Asn、ステアロイルLeu−Leu−Gln、ステアロイルLeu−Leu−Leu−His、ステアロイルLeu−Leu−Leu−Lys、ステアロイルLeu−Leu−Leu−Asn、ステアロイルLeu−Leu−Leu−Gln。
【0048】
これらの中でも好ましいものとして、ミリストイル−Gly−His、ミリストイル−Gly−Gly−His、ミリストイル−Gly−Gly−Gly−His、パルミトイル−Gly−His、パルミトイル−Gly−Gly−His、パルミトイル−Gly−Gly−Gly−His、ステアロイル−Gly−His、ステアロイル−Gly−Gly−His、ステアロイル−Gly−Gly−Gly−Hisが挙げられる。そしてこれらの中でも、パルミトイル−Gly−Hisが最も好ましい。
【0049】
(脂質ペプチドの薬学的に許容される塩)
本発明の外用組成物は、以上説明した脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩(A)を含むが、当該塩としては、例えば、脂質ペプチドのカルボキシル基に対応する塩として、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が、R3が例えばイミダゾール構造を有する基などの窒素原子を有する基である場合に、それに対応する塩として、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩等の無機酸塩及び有機酸塩が挙げられる。
【0050】
(脂質ペプチド及びその薬学的に許容される塩の製造方法)
以上説明した(A)成分(脂質ペプチド及びその薬学的に許容される塩)の製造方法は公知であり、例えばペプチド固相合成法により、脂質ペプチドを構成することになるアミノ酸のC末端からN末端の方向にアミノ酸を連結していき、そして固相からみて末端の位置にあるアミノ酸のN末端と、脂質部分となる脂肪酸(例:ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸)とを反応させ、そして必要に応じて塩の形態とすることによって製造することができる。
【0051】
また、液相法により、脂肪酸からスタートして、これにアミノ酸を反応させることで、アミノ酸のN末端からC末端の方向にアミノ酸を連結していき、必要に応じて塩の形態とすることで、脂質ペプチド及びその薬学的に許容される塩を製造することができる。
【0052】
((A)成分の含有量等)
本発明の外用組成物は、以上説明した脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩(A)を含むが、これらの含有量は、外用組成物全体(100重量%)中、0.05重量%以上である。(A)成分の含有量が0.05重量%未満では、後述する、(A)成分を添加することによる有効成分(C)の経皮吸収性促進効果が得られない。(A)成分の含有量は、同様な観点から、好ましくは0.05〜10重量%であり、また、(A)成分による外用組成物の良好なゲル化を達成する観点からは、より好ましくは0.1〜8重量%であり、更に好ましくは0.5〜5重量%である。
【0053】
また、本発明において(A)成分は、1種単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
<(B)多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類>
本発明の外用組成物は(B)多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類を含有しており、これらに該当する従来公知の成分が特に制限なく本発明において使用可能である。
【0055】
前記多価アルコールとしては、例えば、炭素数2〜6、水酸基数2〜4の多価アルコールを使用することができる。具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール(トリメチレングリコール)、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール(テトラメチレングリコール)、2−ブテン−1,4−ジオール、1,5−ペンタンジオール(ペンタメチレングリコール)、1,2−ペンタンジオール、イソプレングリコール(イソペンチルジオール)、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、及びジプロピレングリコールなどの2価アルコール;
グリセリン、及びトリメチロールプロパンなどの3価アルコール;並びに
ジグリセリン、ペンタエリスリトール、及び1,2,6−ヘキサントリオールなどの4価アルコール等が挙げられる。
【0056】
これらの中でも、(A)成分との併用による有効成分(C)の経皮吸収性促進効果の観点から、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール及びグリセリンが好ましく、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール及びプロピレングリコールがより好ましい。
【0057】
前記グリコールエーテル類としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エトキシジグリコール)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が例示できる。
【0058】
これらの中でも、有効成分(C)の経皮吸収を促進する作用の観点から、好ましくは、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エトキシジグリコール)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルであり、
より好ましくは、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エトキシジグリコール)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルであり、
更に好ましくはジエチレングリコールモノエチルエーテル(エトキシジグリコール)である。
【0059】
以上説明した多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類(B)は、(A)成分との経皮吸収性に関する相乗作用の点から、エトキシジグリコール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール及びグリセリンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることがさらに好ましく、エトキシジグリコールであることが特に好ましい。
【0060】
本発明の外用組成物における(B)成分の含有量は、本発明の効果を発揮する観点から、外用組成物全体(100重量%)中、通常0.0001〜75重量%であり、好ましくは0.001〜60重量%であり、さらに好ましくは5〜50量%である。
【0061】
<(C)有効成分>
本発明の外用組成物は、上記において説明したとおり多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類(B)並びに所定量の脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩(A)を含有し、必要に応じて後述するテルペン類(D)を含有しており、これらの成分の併用により、各種有効成分(C)の経皮吸収性を大きく高めることができる。
【0062】
このため本発明の外用組成物は一般に各種の有効成分(C)を含んでおり、当該有効成分(C)としては、皮膚に適用されるもの、将来皮膚に適用されるようになる可能性があるものが特に制限なく、本発明において使用可能である。これらの本発明の外用組成物における含有量は、それぞれの成分の用量や外用組成物の一日当たりの適用回数などにより変動するが、従来公知の事項に基づき当業者が適宜設定することができる。
【0063】
前記有効成分(C)の例としては、抗菌成分、抗炎症成分、消炎鎮痛成分、鎮痒成分、ビタミン類、局所麻酔成分、保湿成分、美白成分、抗酸化成分、老化防止成分、角質柔軟成分、細胞賦活化成分、血行促進成分、DNAの損傷の予防及び/又は修復作用を有する成分、紫外線吸収成分、紫外線散乱成分、収斂成分、育毛成分、抗ヒスタミン成分、防腐成分が挙げられる。
【0064】
以下、これらの具体例を挙げるが、複数の成分に該当するものや、後述する基剤・担体や添加剤にも該当するものは、本発明において、その該当する各種の成分としての作用を奏する。なお、各種成分として機能するだけの量が配合されていない場合など、該当する全ての成分としての作用を奏さない場合もある。
【0065】
前記抗菌成分としては、例えば、テルビナフィン及びその塩、ブテナフィン及びその塩、硝酸スルコナゾール、ルリコナゾール、ミコナゾール、塩酸アモロルフィン、クロトリマゾール、ケトコナゾール、ビホナゾール、塩酸ネチコナゾール、ラノコナゾール、リラナフタート、エフィナコナゾール、クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、アクリノール、エタノール、塩化ベンゼトニウム、クレゾール、グルコン酸及びその誘導体、ポピドンヨード、ヨウ化カリウム、ヨウ素、イソプロピルメチルフェノール、トリクロカルバン、トリクロサン、感光素101号、感光素201号、パラベン、フェノキシエタノール、並びに塩酸アルキルジアミノグリシンなどが挙げられる。これらの中でも、テルビナフィン及びその塩、ブテナフィン及びその塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸及びその誘導体、イソプロピルメチルフェノール、トリクロカルバン、トリクロサン、感光素101号、感光素201号、パラベン、フェノキシエタノール、並びに塩酸アルキルジアミノグリシンが好ましく、テルビナフィン及びその塩、ブテナフィン及びその塩、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸及びその誘導体、塩化ベンゼトニウム、並びにイソプロピルメチルフェノールがより好ましい。
【0066】
前記抗炎症成分としては、例えば、植物(例えば、コンフリー)に由来する成分;アラントイン、カラミン、グリチルリチン酸又はその誘導体、グリチルレチン酸又はその誘導体、酸化亜鉛、グアイアズレン、塩酸ピリドキシン並びにテレピン油などが挙げられる。これらの中でも、コンフリー葉エキス、アラントイン、グリチルリチン酸ジカリウム、及びグリチルレチン酸ステアリルが好ましい。
【0067】
前記消炎鎮痛成分としては、インドメタシン;フェルビナク;イブプロフェン;イブプロフェンピコノール;ブフェキサマク;フルフェナム酸ブチル;ベンダザック;ピロキシカム;ケトプロフェンなどが挙げられる。
【0068】
前記鎮痒成分としては、クロタミトン;クロルフェニラミン;マレイン酸クロルフェニラミン;ジフェンヒドラミン;塩酸ジフェンヒドラミン;サリチル酸ジフェンヒドラミン;ノニル酸ワニリルアミド;メキタジン;チモール;オイゲノール;ポリオキシエチレンラウリルエーテル;シソエキスなどが挙げられる。
【0069】
前記ビタミン類としては、例えば、レチノール、レチノール誘導体(酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール等)、レチナール、レチノイン酸、レチノイン酸メチル、レチノイン酸エチル、レチノイン酸レチノール、d−δ−トコフェリルレチノエート、α−トコフェリルレチノエート、及びβ−トコフェリルレチノエート等のビタミンA類;
β−カロチン、α−カロチン、γ−カロチン、δ−カロチン、リコピン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、及びエキネノン等のプロビタミンA類;
α−トコフェロール、β−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム、δ−トコフェロール、及びニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類;
リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビンテトラ酪酸エステル、リボフラビン5’−リン酸エステルナトリウム、及びリボフラビンテトラニコチン酸エステル等のビタミンB2類;
ニコチン酸メチル、ニコチン酸、及びニコチン酸アミドなどのニコチン酸類;
ステアリン酸アスコルビル、ジパルミチン酸L−アスコルビル、テトライソパルミチン酸アスコルビル(テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル)、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、デヒドロアスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、及びアスコルビン酸グルコシドなどのビタミンC類;
メチルヘスペリジン、エルゴカルシフェロール、及びコレカルシフェロールなどのビタミンD類;
フィロキノン、及びファルノキノン等のビタミンK類;
ジベンゾイルチアミン、ジベンゾイルチアミン塩酸塩、チアミン塩酸塩、チアミンセチル塩酸塩、チアミンチオシアン酸塩、チアミンラウリル塩酸塩、チアミン硝酸塩、チアミンモノリン酸塩、チアミンリジン塩、チアミントリリン酸塩、チアミンモノリン酸エステルリン酸塩、チアミンモノリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル塩酸塩、チアミントリリン酸エステル、及びチアミントリリン酸エステルモノリン酸塩等のビタミンB1類;
塩酸ピリドキシン、酢酸ピリドキシン、塩酸ピリドキサール、5’−リン酸ピリドキサール、及び塩酸ピリドキサミン等のビタミンB6類;
シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、及びデオキシアデノシルコバラミン等のビタミンB12類;
葉酸、プテロイルグルタミン酸等の葉酸類;
パントテン酸、パントテン酸カルシウム、パントテニルアルコール(パンテノール)、D−パンテテイン、D−パンテチン、補酵素A、及びパントテニルエチルエーテル等のパントテン酸類;
ビオチン、及びビオシチン等のビオチン類;並びに
カルニチン、フェルラ酸、α−リポ酸、オロット酸、及びγ−オリザノール等のビタミン様作用因子などが挙げられる。
【0070】
これらの中でも、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、及びテトライソパルミチン酸アスコルビル(テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル)などのビタミンC類が好ましい。
【0071】
前記局所麻酔成分としては、リドカイン、塩酸リドカイン、ジブカイン、塩酸ジブカイン、アミノ安息香酸エチル、ユーカリ油、オイゲノール、クロロブタノールなどが挙げられる。
【0072】
前記保湿成分としては、例えば、植物(例えば、ラベンダー、アッケシソウ、チガヤ)に由来する成分;アラニン、セリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、グリシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、グルコサミン、並びにテアニンのようなアミノ酸及びその誘導体;コラーゲン、ゼラチン、及びエラスチンのようなタンパク質、ペプチド、又はそれらの加水分解物;ソルビトールのような糖アルコール;レシチン、及び水素添加レシチンのようなリン脂質;ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、アセチルヒアルロン酸、アセチルヒアルロン酸ナトリウム、ヘパリン、及びコンドロイチンのようなムコ多糖;乳酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、及び尿素のようなNMF由来成分;ポリグルタミン酸;MPCポリマー(例えば、LIPIDURE(登録商標)等)等のリン脂質極性基を有する高分子;ポリオキシプロピレンメチルグルコシド;トリメチルグリシン(ベタイン);ヒドロキシエチルウレア;アクリル酸・アクリルアミド・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体;並びにソルビトールなどが挙げられる。
【0073】
これらの中でも、ラベンダー油、アッケシソウエキス、チガヤ根エキス、加水分解コラーゲン、加水分解エラスチン、MPCポリマー、トリメチルグリシン(ベタイン)、ヒドロキシエチルウレア、アクリル酸・アクリルアミド・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体、水素添加レシチン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、アセチルヒアルロン酸、アセチルヒアルロン酸ナトリウム、及びソルビトールが好ましい。
【0074】
前記美白成分としては、例えば、アルブチン、ハイドロキノン、コウジ酸、エラグ酸、フィチン酸、4−n−ブチルレゾルシノール、カミツレエキス、アスコルビン酸又はその誘導体(例えばアスコルビン酸アルキルエーテル)、ビタミンE又はその誘導体、パントテン酸又はその誘導体、トラネキサム酸、及び美白作用を有する植物成分(例えば、グレープフルーツエキス、ハマメリスエキス、イリス根エキス及びアロエエキス等の植物エキス;褐藻エキス及びカラフトコンブエキス等の海藻由来成分;精油)が挙げられる。これらの中でも、アルブチン、ハイドロキノン、コウジ酸、及びトラネキサム酸が好ましい。
【0075】
前記抗酸化成分としては、例えば、植物(例えば、ブドウ、オタネニンジン、及びコンフリー等)に由来する成分;アスタキサンチン、プロアントシアニジン、トコフェロール及びその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、へスペリジン、グルコシルヘスペリジン、エルゴチオネイン、亜硫酸水素ナトリウム、エリソルビン酸及びその塩、フラボノイド、グルタチオン、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、カタラーゼ、スーパーオキサイドジスムターゼ、チオレドキシン、タウリン、チオタウリン、並びにヒポタウリンなどが挙げられる。
【0076】
これらの中でも、ブドウ種子エキス、ブドウ葉エキス、オタネニンジンエキス、コンフリー葉エキス、アスタキサンチン、プロアントシアニジン、トコフェロール及びその誘導体(特に、δ−トコフェロール、及びα−トコフェロール)、アスコルビン酸及びその誘導体(特に、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、及びテトライソパルミチン酸アスコルビル(テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル))、へスペリジン、グルコシルヘスペリジン、並びにエルゴチオネインが好ましい。
【0077】
前記老化防止成分としては、例えば、加水分解大豆タンパク、レチノイド(レチノール及びその誘導体、レチノイン酸、及びレチナール等)、パンガミン酸、カイネチン、ウルソール酸、ウコンエキス、スフィンゴシン誘導体、ケイ素、ケイ酸、N−メチル−L−セリン、並びにメバロノラクトン等が挙げられる。これらの中でも、アルテミアエキス、加水分解大豆タンパク、レチノール、酢酸レチノール、及びパルミチン酸レチノールが好ましい。
【0078】
前記角質柔軟成分としては、例えば、ラノリン、尿素、フィチン酸、乳酸、乳酸塩、グリコール酸、リンゴ酸、及びクエン酸などが挙げられる。これらの中でも、乳酸、乳酸ナトリウム、グリコール酸、及びフィチン酸が好ましい。
【0079】
前記細胞賦活化成分としては、例えば、植物(例えば、ビルベリー)に由来する成分;γ−アミノ酪酸、及びε−アミノプロン酸などのアミノ酸類;レチノール及びその誘導体、チアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、及びパントテン酸類などのビタミン類;グリコール酸、及び乳酸などのα−ヒドロキシ酸類;タンニン、フラボノイド、サポニン、アラントイン、並びに感光素301号などが挙げられる。これらの中でも、ビルベリー葉エキス、レチノール、酢酸レチノール、及びパルミチン酸レチノールが好ましい。
【0080】
前記血行促進成分としては、例えば、植物(例えば、オタネニンジン、アシタバ、アルニカ、イチョウ、ウイキョウ、エンメイソウ、オランダカシ、カミツレ、ローマカミツレ、カロット、ゲンチアナ、ゴボウ、コメ、サンザシ、シイタケ、セイヨウサンザシ、セイヨウネズ、センキュウ、センブリ、タイム、チョウジ、チンピ、トウキ、トウニン、トウヒ、ニンジン、ニンニク、ブッチャーブルーム、ブドウ、ボタン、マロニエ、メリッサ、ユズ、ヨクイニン、ローズマリー、ローズヒップ、チンピ、トウキ、トウヒ、モモ、アンズ、クルミ、又はトウモロコシ)に由来する成分;ニコチン酸トコフェロール、グルコシルヘスペリジン、並びにヘスペリジンが挙げられる。
【0081】
これらの中でも、オタネニンジンエキス、ニコチン酸トコフェロール、グルコシルヘスペリジン、及びヘスペリジンが好ましい。
【0082】
前記DNAの損傷の予防及び/又は修復作用を有する成分としては、例えば、動物(例えば、アルテミア)に由来する成分;植物(例えば、キャッツクロー)に由来する成分;並びにDNA、DNA塩、RNA、及びRNA塩等の核酸成分が挙げられる。これらの中でも、アルテミアエキス、及びDNA-Naが好ましい。
【0083】
前記紫外線吸収成分としては、例えば、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、2−[4−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル、2,4,6−トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]−1,3,5−トリアジン、ジメトキシベンジリデンオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、及び2,4−ビス−[{4−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシ}−フェニル]−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0084】
これらの中でも、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、2−[4−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル、及び2,4,6−トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]−1,3,5−トリアジンが好ましい。
【0085】
前記紫外線散乱成分としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸チタン、ケイ酸亜鉛、無水ケイ酸、ケイ酸セリウム、及び含水ケイ酸等の無機化合物、これらの無機化合物を含水ケイ酸、水酸化アルミニウム、マイカ、又はタルク等の無機粉体で被覆したもの、これらの無機化合物をポリアミド、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、又はナイロン等の樹脂粉体に複合化したもの、並びにこれらの無機化合物をシリコーン油、又は脂肪酸アルミニウム塩等で処理又は被覆したものなどが挙げられる。
【0086】
これらの中でも、酸化亜鉛、酸化チタン、及び酸化鉄等の無機化合物、これらの無機化合物を水酸化アルミニウム、含水ケイ酸、マイカ、若しくはタルク等の無機粉体、又はシリコーン油で処理又は被覆したものが好ましい。
【0087】
前記収斂成分としては、例えば、ミョウバン、クロロヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、アラントインアルミニウム塩、硫酸亜鉛、及び硫酸アルミニウムカリウム等の金属塩;並びにタンニン酸、クエン酸、乳酸、及びコハク酸などの有機酸を挙げることができる。これらの中でも、ミョウバン、クロロヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、アラントインアルミニウム塩、硫酸アルミニウムカリウム、及びタンニン酸が好ましい。
【0088】
前記育毛成分としては、プロシアニジン、グリチルリチン酸ジカリウム、塩化カプロニウム、セファランチン、ヒノキチオール、L−ヒドロキシプロリン、アセチルヒドロキシプロリン、フコイダン、トウガラシチンキ、セファランチン、スエルチアニン、シンホングギニシン、フラボノステロイド、ミノキシジル、FGF−10、エンメイソウ抽出物(エキス)、センブリ抽出物(エキス)、ミツイシコンブ抽出物(エキス)、アマチャズル抽出物(エキス)、オトギリソウ抽出物(エキス)、ゲンチアナ抽出物(エキス)、セージ抽出物(エキス)、ペパーミント抽出物(エキス)、ホップ抽出物(エキス)、ヨクイニン抽出物(エキス)、柿葉抽出物(エキス)、ジオウ抽出物(エキス)、ニンジン抽出物(エキス)、ボダイジュ抽出物(エキス)、ボタンピ抽出物(エキス)、ジユ抽出物(エキス)などが挙げられる。
【0089】
前記抗ヒスタミン成分としては、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリナートなどのエタノールアミン系化合物;マレイン酸クロルフェニラミンなどのプロピルアミン系化合物;塩酸プロメタジンなどのフェノチアジン系化合物;ヒドロキシジンなどのピペラジン系化合物;塩酸シプロヘプタジンなどのピペリジン系化合物の他、エピナスチン塩酸塩、ロラタジン、および塩酸フェキソフェナジンなどが例示される。また、塩酸塩以外にも各化合物の薬学的に許容される塩を用いることもできる。これらの中でも、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミンが好ましい。
【0090】
前記防腐成分としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、パラオキシ安息香酸メチル、及びフェノキシエタノールなどが挙げられる。これらの中でも、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、及びフェノキシエタノールが好ましい。
【0091】
以上説明した有効成分(C)は、本発明の外用組成物において、1種単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0092】
<(D)テルペン類>
本発明は、以上説明した(A)成分及び(B)成分の相乗作用により、有効成分(C)の経皮吸収性を高めるものであるが、さらに本発明の外用組成物に、(D)テルペン類を配合すると、前記経皮吸収性がさらに高まる。
【0093】
前記テルペン類(D)としては、カンフル、メントール、ボルネオール、オイゲノール、シネオール、チモール、ビサボロール、α−ピネン、リナロール、メントン、酢酸リナリル、ヒノキチオール、リモネン、ゲラニオール(ゼラニオール)、ネロール、シトラール、シトロネロール、ミント、ミルセン、テレピネロール、カルボン、ヨノン、カンファー(樟脳)、ボルネオール、フェランドレン等のモノテルペン類;
エレメン、カジノール、カジネン、ファルネソール、ネロリドール、フムレン(クローブ)、サントニン等のセスキテルペン類;
フィトール、アビエチン酸、タキソール等のジテルペン類;
主に菌類、地衣類などの下等植物や昆虫、海綿などの下等動物から検出されるゲラニルファルネソール等のセスタテルペン類;
ルパン、オレアナン、ウルサン、ボスウェリン酸、リモニン、ウルソール酸、スクワレン、ホパン、ベツリン酸等のトリテルペン類;及び
カロチノイド(カロテノイド)、リコピン等のテトラテルペン類が挙げられる。
【0094】
これらのうち好ましくはカンフルまたはメントール、より好ましくはメントールである。これらのモノテルペン類は、天然品、合成品のいずれも利用することができ、d体、l体又はdl体のいずれでもよい。また、これらモノテルペン類は、ユーカリ油、ハッカ油、チョウジ油、ケイヒ油、ペパーミント油、ミント油、ティーツリー油、カモミール油、ローズマリー油、レモン油、オレンジ油、タイム油、セージ油、クローブ油の精油として本発明の外用組成物に配合してもよい。
【0095】
本発明の外用組成物においては、以上説明したテルペン類(D)を1種単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、当該成分の前記外用組成物中における含有量は、通常0.01〜10重量%であり、(A)及び(B)との有効成分(C)に関する経皮吸収性促進効果の相乗作用の観点から、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0096】
<外用組成物の製剤形態>
本発明の外用組成物は、その必須成分及び上記で説明した有効成分(C)等を、医薬品、医薬部外品、又は化粧品に通常使用される基剤又は担体、及び必要に応じて後述する添加剤と共に常法に従い混合して、医薬品、医薬部外品、又は化粧品の製剤形態の外用組成物とすることができる。
【0097】
前記基剤又は担体としては、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ゲル化炭化水素(プラスチベースなど)、オゾケライト、α−オレフィンオリゴマー、軽質流動パラフィンなどの炭化水素;メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、シリコーン・アルキル鎖共変性ポリエーテル変性シリコーン、シリコーン・アルキル鎖共変性ポリグリセリン変性シリコーン、ポリエーテル変性分岐シリコーン、ポリグリセリン変性分岐シリコーン、アクリルシリコーン、フェニル変性シリコーン、シリコーンレジンなどのシリコーン油;ヤシ油、オリーブ油、コメヌカ油、シアバターなどの油脂;ホホバ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、ラノリンなどのロウ類;エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン;カラギーナン;ポリビニルブチラート;ポリエチレングリコール;ジオキサン;ブチレングリコールアジピン酸ポリエステル;アジピン酸ジイソプロピル、イソノナン酸イソノニル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリットなどのエステル類;デキストリン、マルトデキストリンなどの多糖類;カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマーなどのビニル系高分子;水などが挙げられる。
【0098】
本発明の外用組成物が多価アルコールを含む場合、多価アルコールは基剤又は担体としての役割も果たす場合がある。
【0099】
本発明の外用組成物が水以外の基剤又は担体を含む場合、当該基剤または担体としては、炭化水素、油脂、エステル類、シリコーン油、ロウ類が好ましく、エステル油、シリコーン油がより好ましい。これらの成分の中では、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジメチコン、シクロメチコン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーンがさらに好ましい。
【0100】
以上説明した基剤又は担体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、またそれらの使用量は当業者に公知の範囲から適宜選択される。
【0101】
<形態>
医薬品製剤の外用組成物の形態は特に限定されず、例えば、軟膏剤、液剤、懸濁剤、乳化剤(乳液及びクリーム)、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤、テープ剤及びパップ剤などが挙げられる。これらの製剤は、第16改正日本薬局方製剤総則に記載の方法等に従い製造することができる。
【0102】
医薬部外品又は化粧品製剤の外用組成物の形態は特に限定されず、例えば、化粧水、美容液、乳液、クリーム、ゲル剤、軟膏剤、スプレー剤、ハンドクリーム、ボディローション、ボディークリーム、リップクリーム、日焼け止めなどが挙げられる。これらの製剤は常法に従い製造することができる。
【0103】
<添加剤>
本発明の外用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、医薬品、医薬部外品、又は化粧品に添加される公知の添加剤、例えば、経皮吸収促進剤、安定化剤、酸化防止剤、着色剤、パール光沢付与剤、分散剤、キレート剤、pH調整剤、保存剤、増粘剤、刺激低減剤等を添加することができる。
【0104】
これらの添加剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。さらに以下の添加剤で複数の成分に該当するものは、その該当する複数の成分としての作用を奏するが、所定の場合には複数の作用を奏さない場合もある。
【0105】
前記経皮吸収促進剤としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルフォルムアミド、メチルデシルスルホキシド、ジイソプロパノールアミン等のアミノ化合物;
1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オンなどのアザシクロアルカン−2−オン誘導体;
ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、アジピン酸ジイソプロピル、モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール等の有機酸エステル類;
オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等の炭素数6〜20の脂肪酸;
脂肪酸エーテル;
2−ヒドロキシエチルピロリドン等のアルキルピロリドン類;
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の親水性ポリエーテル類;
セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、フィトステロール及びコレステロール等の高級アルコール、並びに、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、などの脂肪族アルコール類;
サリチル酸類;ベンジルアルコール;スクワラン;ヒマシ油;
ポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸塩、アルキル(又はアルケニル)硫酸塩、高級脂肪酸塩、エーテルカルボン酸塩、アミドエーテルカルボン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、N−アシルアミノ酸塩、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミドエーテル硫酸塩、アシル化イセチオン酸塩、及びアシル化タウレート等のアニオン性界面活性剤、アミンオキサイド、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルサッカライド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、及びポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油等の非イオン性界面活性剤、アルキレンオキサイドが付加していてもよい、直鎖又は分岐鎖の長鎖アルキル基を有するモノ又はジ長鎖アルキル第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤、並びに、カルボベタイン、スルホベタイン、イミダゾリニウムベタイン、及びアミドベタイン等の両性界面活性剤などの界面活性剤;
レシチン;及びAZONが挙げられる。
【0106】
前記安定化剤としては、例えば、硫酸マグネシウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどが挙げられる。
【0107】
前記酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ソルビン酸、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、エリソルビン酸、L−システイン塩酸塩などが挙げられる。
【0108】
前記着色剤としては、無機顔料、天然色素などが挙げられる。
【0109】
前記パール光沢付与剤としては、例えば、ジステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、ジステアリン酸トリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0110】
前記分散剤としては、例えば、ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸架橋コポリマー、有機酸等が挙げられる。
【0111】
前記キレート剤としては、例えば、EDTA・2ナトリウム塩、EDTA・カルシウム・2ナトリウム塩などが挙げられる。
【0112】
前記pH調整剤としては、例えば、無機酸(塩酸、硫酸など)、有機酸(乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウムなど)、無機塩基(水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなど)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなど)などが挙げられる。
【0113】
前記保存剤としては、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノールなどが挙げられる。
【0114】
前記増粘剤としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースなどのセルロース系増粘剤、グアーガム、ペクチン、プルラン、ゼラチン、ローカストビーンガム、カラギーナン、寒天、ジェランガム、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ポリエチレングリコール、ベントナイト、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコール、マクロゴール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマーなどが挙げられる。
【0115】
前記刺激低減剤としては、甘草エキス、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、甘草エキス、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0116】
<経皮適用>
本発明の外用組成物は上述の各成分により構成され、必要に応じて所定の製剤とされて使用される。当該組成物は多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類(B)並びに所定量の脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩(A)を含んでおり、これらの相乗作用により、有効成分(C)の経皮吸収促進作用に特に優れている。具体的には、後述する実施例におけるフランツセル及びStrat-MTM膜を使用した吸収試験を実施した場合において、(A)成分を配合しない場合に比べて、有効成分(C)の経皮吸収量が増大する。また、後述する実施例にあるように、通常の公知のゲル化剤では経皮吸収促進作用は示されない。
【0117】
本発明の外用組成物は皮膚に適用されるが、ここで皮膚とは、体の皮膚、粘膜(例えば鼻粘膜や口腔粘膜)や頭皮など、動物の体の表面を覆っている組織を意味する。さらに、本発明においては歯茎も皮膚に含まれるものとする。
【0118】
また、皮膚に適用する方法としては、例えば、塗布する、スプレー噴霧する、テープ剤などとして貼付する、といった方法が挙げられる。以下の本発明の化粧料等においても同様である。
【0119】
<外用組成物の調製方法>
本発明の外用組成物の調製方法は特に制限されず、必須成分のほか、有効成分(C)及びテルペン類(D)や、通常の、外用組成物を製造するのに必要な各種成分(上記基剤又は担体、添加剤等)を適宜選択、配合して、常法により製造することができる。製造された本発明の外用組成物の形態は、上述の通りである。
【0120】
[化粧料]
本発明の外用組成物は有効成分として、例えばビタミン類、保湿成分や美白成分など、化粧料に配合される成分を含むものであるので、化粧料として好適に用いることができる。また、本発明によれば、有効成分(C)の経皮吸収性が高められているので、有効成分(C)の配合によって機能性を持たせた化粧料の機能をさらに高めることができる。
【0121】
本発明の化粧料の製剤形態としては、本発明の外用組成物の製剤形態として挙げたもののうち、化粧料の製剤形態に該当するもののほか、化粧料の製剤形態として採用されている従来公知の各種のものを、特に制限なく採用することができる。
【0122】
[経皮吸収促進用組成物・外用組成物における有効成分の経皮吸収性を高める方法]
本発明の外用組成物は上述の通り、脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩(A)と多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類(B)とを含有し、各種の有効成分(C)の経皮吸収性を高めることができる。従って前記組成物は、各種の有効成分(C)の経皮吸収性を高めるための新規な経皮吸収促進用組成物として使用することができる。
【0123】
また、前記脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩(A)と多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類(B)との併用にかかる本発明は、有効成分(C)並びに多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類(B)を含む従来の外用組成物に、所定の脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩(A)を配合することによって、外用組成物における有効成分(C)の経皮吸収性を高める方法ととらえることもできる。
【0124】
なお、当該方法において、「脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩(A)を配合する」としたが、この成分や多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類(B)並びに有効成分(C)などの配合方法(順序や条件)は、特に制限されるものではない。前記方法の実施の結果として、外用組成物において、脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩(A)、多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類(B)並びに有効成分(C)が共存していればよい。例えば、これら3成分(及び必要に応じてその他の成分等)を同時に配合(混合)してもよいし、これらの成分を任意の順序で逐次配合してもよい。
【0125】
[点眼用組成物]
本発明の点眼用組成物は、医薬成分と、上記で説明した多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類(B)と、上記式(1)で表される脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩(A)とを含み、前記(A)成分の含有量が0.05重量%以上である。
【0126】
点眼された医薬成分のうち眼内へ移行するもののほとんどが角膜を通して眼内に移行するとされているので、医薬成分の角膜透過性が点眼用組成物を開発する上で非常に重要である。本発明の点眼用組成物は、多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類(B)並びに所定量の脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩(A)を含んでおり、これらの相乗作用により、医薬成分の角膜透過を促進する。
【0127】
前記医薬成分としては、点眼剤に適用するもの、または将来点眼剤に適用するようになる可能性があるものである限り特に限定されない。その具体例としては、本発明の外用組成物における有効成分として挙げたもののうち医薬成分に該当するものが挙げられる。すなわち、抗菌成分、抗炎症成分、ビタミン類、局所麻酔成分、抗アレルギー剤、細胞賦活化成分、血行促進成分、抗ヒスタミン成分及び防腐成分である。
【0128】
[経皮投与型医薬]
本発明の経皮投与型医薬は、医薬成分と、上記式(1)で表される脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩(A)と、上記で説明した多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類(B)とを含み、前記(A)成分の含有量が0.05重量%以上である。
【0129】
前記医薬成分としては、皮膚に適用するもの、または将来皮膚に適用するようになる可能性があるものである限り特に限定されない。その具体例としては、本発明の外用組成物における有効成分として挙げたもののうち医薬成分に該当するものが挙げられる。すなわち、抗菌成分、抗炎症成分、消炎鎮痛成分、鎮痒成分、ビタミン類、局所麻酔成分、保湿成分、抗酸化成分、細胞賦活化成分、血行促進成分、DNAの損傷の予防及び/又は修復作用を有する成分、並びに収斂成分、育毛成分、抗ヒスタミン成分及び防腐成分である。
【0130】
本発明の経皮投与型医薬の製剤形態としては、経皮投与する医薬の製剤形態として従来採用されているものを特に制限なく本発明において採用することができる。その具体例としては、第16改正日本薬局方製剤総則に記載の、外用固形剤、外用散剤、リニメント剤、ローション剤、スプレー剤、エアゾール剤、ポンプスプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、テープ剤、及びパップ剤が挙げられる。これらの製剤は、第16改正日本薬局方製剤総則に記載の方法等に従い製造することができる。
【実施例】
【0131】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、数値の単位は特に言及しない限り重量%である。
【0132】
[実施例1及び比較例1]
以下の表1の組成に従って、常法により各外用組成物を調製した。
【0133】
【表1】
【0134】
<アスコルビン酸(ビタミンC))の経皮吸収試験>
上記で調製した外用組成物についてのアスコルビン酸の経皮吸収性は、無限閉鎖系においてフランツセルを用いた経時的な測定をすることで確認した。
【0135】
より詳細には、フランツセル(PermeGear社、ジャケット付静置型−平面ジャケット−クリア−9mm,5mL,透過面積0.64平方センチ)に、撹拌子を入れ、さらに精製水を5mL注入して、フランツセルとすり付きガラスドナーの間にStrat-MTM膜(メルクミリポア社製)を挟み、クリップで固定した。無限閉鎖系にするため、ガラスドナーに試験サンプル(外用組成物)を載せ、アルミホイルでサンプルの蒸発による変化を防いだ。
【0136】
恒温槽を37℃に設定し、シリコンチューブで恒温槽とフランツセル同士を直列に繋ぎ、リザーバー溶液が一定温度に保たれるようにした。各フランツセルを攪拌機にセットし、400rpmで攪拌を開始し、試験開始とした。攪拌開始時から一定時間後(30分、1時間、2時間、4時間、8時間)に200uLのリザーバー溶液を採取して、HPLCにてリザーバー溶液中のVC含有量を測定した。アスコルビン酸(和光純薬工業(株)製)のHPLCによる検出は紫外吸光光度計を用いて波長270nmにて行い、検量線から含有率の計算を行った。
【0137】
以上の経皮吸収試験の結果を図1に示す。図1より、多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類と所定量の脂質ペプチドとを併用した本発明の外用組成物(実施例1)は、脂質ペプチドを含有しない比較例1の外用組成物に比べて、アスコルビン酸(有効成分)の経皮吸収量が非常に多く、各ポイントにおいて、統計学的に有意差があることがわかる。
【0138】
[実施例2〜7並びに比較例2〜9]
実施例1及び比較例1の場合と同様にして、下記表2及び3に記載の組成物を調製した。
【0139】
【表2】
【0140】
【表3】
【0141】
<アスコルビン酸の経皮吸収試験>
実施例1及び比較例1の場合と同様にして、得られた外用組成物について、アスコルビン酸の経皮吸収性(フランツセルを撹拌開始から8時間後の時点の量)を求めた。
【0142】
結果を図2〜7に示す。図2〜7より、多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類と所定量の脂質ペプチドとを併用した本発明の外用組成物は、脂質ペプチドを含有しない比較例の外用組成物に比べて、アスコルビン酸(有効成分)の経皮吸収量が統計学的に有意に多いことがわかる。
【0143】
また、実施例4(図4)は実施例7(図7)においてl−メントール(和光純薬工業(株)製)を追加した組成であるが、当該成分の追加により、アスコルビン酸の吸収量が大きく上昇していることがわかる。
【0144】
さらに、比較例8(図7)より、所定量の脂質ペプチドを含有していても、多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類をあわせて使用しなければ、アスコルビン酸の経皮吸収量は上昇しないことがわかる。
【0145】
[実施例8〜11並びに比較例10及び11]
実施例1及び比較例1の場合と同様にして、下記表4に記載の組成物を調製した。
【0146】
【表4】
【0147】
<アスコルビン酸の経皮吸収試験>
実施例1及び比較例1の場合と同様にして、得られた外用組成物について、アスコルビン酸の経皮吸収性(フランツセルを撹拌開始から8時間後の時点の量)を求めた。
【0148】
結果を図8に示す。図8より、脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩が配合されていない場合(比較例10)やその含有量が0.01重量%の場合(比較例11)では、アスコルビン酸の経皮吸収は促進されず、含有量が0.1重量%以上の場合(実施例8〜11)には経皮吸収が促進されることがわかる。
【0149】
[実施例12並びに比較例12〜14]
実施例1及び比較例1の場合と同様にして、下記表5に記載の組成物を調製した。
【0150】
【表5】
【0151】
<3−O−エチルアスコルビン酸(VCエチル、東京化成工業(株)製)の経皮吸収試験>
実施例1及び比較例1の場合と同様にして、得られた外用組成物について、VCエチルの経皮吸収性(フランツセルを撹拌開始から8時間後の時点の量)を求めた。VCエチルのHPLCによる検出は紫外吸光光度計を用いて波長245nmにて行い、検量線から含有率の計算を行った。
【0152】
結果を図9に示す。図9より、所定量の脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩と多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類とを組み合わせることで、VCエチルの経皮吸収量も統計学的に有意に増加させることができることがわかる。
【0153】
また、図9における比較例12及び13の結果より、従来公知のゲル化剤であるジェランガム(ケルコゲルHM、DSP五協フード&ケミカル(株)製)や寒天(イナカンテンCS-6、伊那食品工業(株)製)を使用したのでは、本発明における脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩を使用した場合の経皮吸収促進効果は得られないことがわかる。
【0154】
[実施例13並びに比較例15及び16]
実施例1及び比較例1の場合と同様にして、下記表6に記載の組成物を調製した。
【0155】
【表6】
【0156】
<テルビナフィン塩酸塩の経皮吸収試験>
実施例1及び比較例1の場合と同様にして、得られた外用組成物について、テルビナフィン塩酸塩(和光純薬工業(株)製)の経皮吸収性(フランツセルを撹拌開始から8時間後の時点の量)を求めた。テルビナフィン塩酸塩のHPLCによる検出は紫外吸光光度計を用いて波長282nmにて行い、検量線から含有率の計算を行った。
【0157】
結果を図10に示す。図10より、所定量の脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩と多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類とを組み合わせることで、テルビナフィン塩酸塩の経皮吸収量も統計学的に有意に増加させることができることがわかる。
【0158】
また、図10における比較例15の結果より、従来公知のゲル化剤であるジェランガム(ケルコゲルHM、DSP五協フード&ケミカル(株)製)を使用したのでは、本発明における脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩を使用した場合の経皮吸収促進効果は得られないことがわかる。
【0159】
[実施例14及び比較例17]
実施例1及び比較例1の場合と同様にして、下記表7に記載の組成物を調製した。
【0160】
【表7】
【0161】
<ミノキシジルの経皮吸収試験>
実施例1及び比較例1の場合と同様にして、得られた外用組成物について、ミノキシジル(東京化成工業(株)製)の経皮吸収性(フランツセルを撹拌開始から8時間後の時点の量)を求めた。ミノキシジルのHPLCによる検出は紫外吸光光度計を用いて波長230nmにて行い、検量線から含有率の計算を行った。
【0162】
結果を図11に示す。図11より、所定量の脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩と多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類とを組み合わせることで、ミノキシジルの経皮吸収量も統計学的に有意に増加させることができることがわかる。
【0163】
[処方例]
以下、本発明の外用組成物の処方例を示す。
【0164】
【表8】
【0165】
【表9】
【0166】
【表10】
【0167】
【表11】
【0168】
【表12】
【0169】
【表13】
【0170】
【表14】
【0171】
【表15】
【0172】
【表16】
【0173】
【表17】
【0174】
【表18】
【0175】
【表19】
【0176】
【表20】
【0177】
【表21】
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11