(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6975815
(24)【登録日】2021年11月10日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】移動防止要素を備えたステント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/07 20130101AFI20211118BHJP
A61F 2/848 20130101ALI20211118BHJP
【FI】
A61F2/07
A61F2/848
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-42576(P2020-42576)
(22)【出願日】2020年3月12日
(62)【分割の表示】特願2017-532120(P2017-532120)の分割
【原出願日】2015年12月18日
(65)【公開番号】特開2020-116399(P2020-116399A)
(43)【公開日】2020年8月6日
【審査請求日】2020年4月7日
(31)【優先権主張番号】62/094,216
(32)【優先日】2014年12月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】オショーネシー、シェーマス エフ.
(72)【発明者】
【氏名】リアーナ、ゲイリー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ワイナー、ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】セドン、デーン ティ.
(72)【発明者】
【氏名】フルーリー、ショーン ピー.
【審査官】
川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0172983(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0018452(US,A1)
【文献】
特開2007−185363(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2001/0047208(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0005782(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/07
A61F 2/848
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端と、前記第1端に対向する第2端と、前記第1端及び第2端の間で長手軸線に沿って内部を貫通して延びるルーメンとを含む拡張可能な管状フレームワークを備える体内プロテーゼであって、前記管状フレームワークは、管状部材の材料を除去することにより形成された複数の相互に連結された支柱を備え、
各支柱は、径方向内側面と、径方向外側面と、その間に画定された一定の厚みとを備え、
前記径方向外側面は、複数の移動防止溝と、これら移動防止溝間に形成され、かつ組織に係合して体管腔内で前記体内プロテーゼの移動に抵抗するように構成された複数の移動防止歯とを備え、各移動防止歯は隣接する移動防止溝間に形成され、
前記移動防止歯は、前記第1端に近接して配置された第1部分と、前記第2端に近接して配置された第2部分とからなり、前記第1部分は、前記第1端に向かって傾斜した第1側面と第2側面とを含み、前記第2部分は、前記第2端に向かって傾斜した第1側面と第2側面とを含み、前記第1及び第2部分の第1側面は、対応する第2側面に向かって収束するように構成され、
前記第1部分の第1側面は、前記長手軸線に対して鋭角をなして前記第1端に向かって径方向外方に傾斜し、
前記第1部分の第2側面は、前記長手軸線に対して鋭角をなして前記第1端に向かって径方向外方に傾斜し、
前記第1部分の第1側面がなす鋭角の角度は、前記第1部分の第2側面がなす鋭角の角度よりも小さく、
前記第2部分の第1側面は、前記長手軸線に対して鋭角をなして前記第2端に向かって径方向外方に傾斜し、
前記第2部分の第2側面は、前記長手軸線に対して鋭角をなして前記第2端に向かって径方向外方に傾斜し、
前記第2部分の第1側面がなす鋭角の角度は、前記第2部分の第2側面がなす鋭角の角度よりも小さく、
前記移動防止歯を備える部分における支柱の径方向内側面からこれら移動防止歯の頂部までの長さは、前記移動防止歯を欠く部分における支柱の厚みと同一である、体内プロテーゼ。
【請求項2】
各移動防止溝は、前記管状部材の材料を除去して前記支柱を形成するのに先立ち、前記管状部材に形成される、請求項1に記載の体内プロテーゼ。
【請求項3】
各移動防止溝は、前記管状部材の材料を除去して前記支柱を形成した後、前記管状部材に形成される、請求項1に記載の体内プロテーゼ。
【請求項4】
前記管状フレームワークは、前記第1部分と前記第2部分との間で移動防止歯を欠く、請求項1〜3のいずれか一項に記載の体内プロテーゼ。
【請求項5】
各移動防止歯は、前記第1側面と前記第2側面の双方に交差する平坦面を備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の体内プロテーゼ。
【請求項6】
前記平坦面は、前記長手軸線に対して平行をなす、請求項5に記載の体内プロテーゼ。
【請求項7】
各移動防止歯は、頂部に収束する前記第1側面と前記第2側面とを備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の体内プロテーゼ。
【請求項8】
管状部材から拡張可能な拡張可能な管状フレームワークを形成する工程であって、前記管状フレームワークは、第1端と、前記第1端に対向する第2端と、前記第1端及び前記第2端の間で長手軸線に沿って内部を貫通して延びるルーメンとを備え、かつ管状部材の材料を除去することによって形成された複数の相互に連結された支柱を含み、各支柱は、径方向内側面と、径方向外側面と、その間に一定の厚みとを有する、前記管状部材から拡張可能な拡張可能な管状フレームワークを形成する工程と、
前記径方向外側面に複数の移動防止溝を形成することにより複数の移動防止歯を画定する工程であって、各移動防止歯は、隣接する移動防止溝間に画定され、かつ組織に係合して体管腔内で体内プロテーゼの移動に抵抗するように構成される、前記径方向外側面に複数の移動防止歯を形成することにより複数の移動防止歯を画定する工程と、
を含み、
前記移動防止歯は、前記第1端に近接して配置された第1部分と、前記第2端に近接して配置された第2部分とからなり、
前記第1部分は、前記管状フレームワークの前記第1端に向かって傾斜した第1側面と第2側面とを含み、前記第2部分は、前記管状フレームワークの前記第2端に向かって傾斜した第1側面と第2側面とを含み、前記第1及び第2部分の第1側面は、対応する第2側面に向かって収束するように構成され、
前記移動防止歯を備える部分における支柱の径方向内側面からこれら移動防止歯の頂部までの長さは、前記移動防止歯を欠く部分における支柱の厚みと同一である、体内プロテーゼを形成する方法。
【請求項9】
前記第1部分の第1側面は、前記長手軸線に対して鋭角をなして前記管状フレームワークの第1端に向かって径方向外方に傾斜し、
前記第1部分の第2側面は、前記長手軸線に対して鋭角をなして前記管状フレームワークの第1端に向かって径方向外方に傾斜し、
前記第1部分の第1側面がなす鋭角の角度は、前記第1部分の第2側面がなす鋭角の角度より小さい、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2部分の第1側面は、前記長手軸線に対して鋭角をなして前記管状フレームワークの前記第2端に向かって径方向外方に傾斜し、
前記第2部分の第2側面は、前記長手軸線に対して鋭角をなして前記管状フレームワークの前記第2端に向かって径方向外方に傾斜し、
前記第2部分の第1側面がなす鋭角の角度は、前記第2部分の第2側面がなす鋭角の角度より小さい、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
各移動防止歯は、前記第1側面と前記第2側面の双方に交差する平坦面をさらに備える、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
各移動防止歯は、頂部に収束する前記第1側面と前記第2側面とを備える、請求項9または10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動防止要素を備えるステント等の体内プロテーゼに関する。より詳細には、本発明は、外表面に沿って複数の移動防止歯を備えるステント等の体内プロテーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
体内プロテーゼは、様々な医学的な用途で、身体の管腔内に配置できるように構成されている。例えば、体内プロテーゼは、血管内の狭窄を治療し、血管、尿管、胆管、気管支、食道、腎臓の管内に液体の通り口又は経路を確保し、又は身体の管腔内に人工弁やフィルターといった装置を配置するのに用いられる。最小限にまたは部分的に被覆された体内プロテーゼでは、組織が体内プロテーゼの構造を貫通して内部成長するため、体内プロテーゼの移動に抵抗することができる。しかしながら、後で体内プロテーゼを除去することが必要とされる場合は、内部成長した組織を切り取らなければならず、その結果、身体の管腔に大きな外傷を与えることになる。逆に、完全に被覆された体内プロテーゼは、組織の内部成長を阻止するため、取り除くことが容易になる。しかしながら、その反面、完全に被覆された体内プロテーゼは、体の管腔を通って移動しやすくなる。
【0003】
したがって、体内プロテーゼを除去することが必要とされる場合は、患者の体の管腔への外傷を軽減しつつ、移動防止要素を備える体内プロテーゼを提供することが求められる。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、医療装置の構造体、アセンブリのいくつかの代替的な設計、材料、製造方法、及びそれらの使用方法に関する。
一実施形態では、体内プロテーゼは、第1の端、第2の端及び、長軸に沿ってその内部を貫通して延びる管腔を備える拡張可能な管状のフレームワークから成る。拡張可能な管状のフレームワークは、相互に連結された複数の支柱を備える。相互に連結された支柱は、移動防止溝の間に形成される移動防止歯を画定する複数の移動防止溝を備える、径方向外方へ向かう面を備える。移動防止歯は、身体の管腔内で体内プロテーゼの移動に抵抗するために、組織と係合するように構成される。
【0005】
追加的にまたは代替的に、移動防止歯の各々は、第1側面と第1側面に向かって収束する第2側面とを備える。
追加的にまたは代替的に、第1側面は、長軸に対して鋭角をなし、径方向外方へ第1の端に向かって傾斜している。
【0006】
追加的にまたは代替的に、第2側面は、長軸に対して鋭角をなし、径方向外方へ第1の端に向かって傾斜している。
追加的にまたは代替的に、第1側面の角度は、第2側面の角度より小さい。
【0007】
追加的にまたは代替的に、第1側面および第2側面は、線に沿って頂部に収束する。
追加的にまたは代替的に、移動防止歯は、第1側面と第2側面の両方に交差する平坦な表面をさらに備える。
【0008】
追加的にまたは代替的に、平坦な表面は長軸に対して平行である。
追加的にまたは代替的に、移動防止歯の第1部分は、第1の端に向かって傾斜された第1側面と第2側面のうちの少なくとも一方を備え、移動防止歯の第2部分は、第2の端に向かって傾斜された第1側面と第2側面のうちの少なくとも一方を備える。
【0009】
追加的にまたは代替的に、移動防止歯の第1部分は、第1の端の近位に配置され、移動防止歯の第2部分は、第2の端の近位に配置される。
追加的にまたは代替的に、移動防止歯の第1部分は、第2の端の近位に配置され、移動防止歯の第2部分は、第1の端に配置される。
【0010】
追加的にまたは代替的に、拡張可能な管状のフレームワークは、移動防止歯の第1部分と移動防止歯の第2部分間で移動防止歯を欠く。
追加的にまたは代替的に、移動防止歯は、一般的に長軸に対して直交して配置される。
【0011】
追加的にまたは代替的に、移動防止歯は、長軸に対して斜めの角度で配置される。
追加的にまたは代替的に、移動防止溝は、支柱の中に支柱の厚みの約1%乃至10%の深さに延びる。
【0012】
別例では、体内プロテーゼは、第1の端、第2の端および長軸に沿ってその中を貫通して延びる管腔を備える拡張可能な管状のフレームワークから成る。拡張可能な管状のフレームワークは、径方向外方に向かう表面を含む相互に連結された複数の支柱を備える。径方向外方に向かう表面は、移動防止溝の間に形成される移動防止歯を画定する為に、相互に連結された支柱の径方向外方に向かう面内に切り込まれた複数の移動防止溝を含む。移動防止歯は、第1側面と第1側面に向かって収束する第2側面を含む。移動防止歯は、身体内の管腔の内側で体内プロテーゼの移動に抵抗する為に、組織と係合するように構成される。
【0013】
追加的にまたは代替的に、移動防止歯の第1部分は、第1の端に向かって傾斜された第1側面と第2側面のうちの少なくとも一方を含み、移動防止歯の第2部分は、第2の端に向かって傾斜された第1支柱と第2支柱のうちの少なくとも一方を含む。
【0014】
追加的にまたは代替的に、第1側面は、長軸に対して鋭角をなして、径方向外方へ第1の端に向かって傾斜している。
追加的にまたは代替的に、第2側面は、長軸に対して鋭角をなして、径方向外方へ第1の端に向かって傾斜している。
【0015】
追加的にまたは代替的に、第1側面の角度は、第2側面の角度より小さい。
追加的にまたは代替的に、移動防止歯は、第1側面と第2側面の両方に交差する平坦な表面をさらに含む。
【0016】
別例は、体内プロテーゼを形成する方法に関する。方法は、管状の部材から拡張可能な管状のフレームワークを形成することを含む。拡張可能な管状のフレームワークは、第1の端、第2の端および長軸に沿ってその中を貫通して延びる管腔を備える。拡張可能な管状のフレームワークは、径方向外方に向かう表面を有する、複数の相互に連結された支柱を備える。方法は、径方向外方に向かう表面において、複数の移動防止溝を形成することをさらに含み、これにより、隣接する移動防止溝の間に複数の移動防止歯が画定される。
【0017】
追加的にまたは代替的に、移動防止歯は、第1側面と第1側面に向かって収束する第2側面を備える。第1側面は、長軸から鋭角をなして径方向外方へ第1の端に向かって傾斜し、第2側面は、長軸から鋭角をなして径方向外方へ第1の端に向かって傾斜している。第1側面の角度は、第2側面の角度より小さい。
【0018】
追加的にまたは代替的に、移動防止歯は、第1側面と第2側面の両方に交差する平坦な表面をさらに備える。
いくつかの実施形態の例についての上記の概要は、開示された実施形態の各々を説明することまたは発明の態様の全ての実施を説明することを目的としていない。
【0019】
本発明の態様は、添付の画像と共に種々の実施態様についての以下の詳細な説明を考慮することによりさらに理解することができる。
本発明の態様は、種々の変化形および代替形が可能であるが、それらの内の特別なものが、例示することを目的として図面に示され、詳細に説明されている。しかしながら、その意図は、本発明の態様を説明される特別な実施形態に限定することではないことに留意されたい。むしろ、その意図は、本願発明の精神と範囲に入る全ての変化物、均等物、変更物を包含することにある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】
図1の線2−2に沿って取得した体内プロテーゼの長軸断面図。
【
図3】
図1の線3−3に沿って取得した体内プロテーゼの短軸断面図。
【
図4】
図1の体内プロテーゼの拡張可能なプロテーゼの一部拡大図。
【
図5A】
図1の体内プロテーゼの拡張可能なフレームワーク上に形成された移動防止歯の構成の例を示す図。
【
図5B】
図1の体内プロテーゼの拡張可能なフレームワーク上に形成された移動防止歯の構成の例を示す図。
【
図5C】
図1の体内プロテーゼの拡張可能なフレームワーク上に形成された移動防止歯の構成の例を示す図。
【
図5D】
図1の体内プロテーゼの拡張可能なフレームワーク上に形成された移動防止歯の構成の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に定義される用語については、請求項または本明細書の他の場所において異なる定義が与えられない限り、これらの定義が用いられるものとする。
ある用語の定義には、請求項または本明細書の他の場所において異なる定義が与えられない限り、以下に与えられ、且つ使用されるものとする。
【0022】
全ての数値は、本明細書では、明確に記載されているいないに関わらず、「約」という語で修飾されることが想定されている。「約」という語は、一般的に当業者が開示された値に等しいと考える範囲の数値をいう(同じ機能又は結果を生じるなど)。多くの場合において、「約」という用語は、最も近い有効数字に四捨五入される数字が含まれることを表す。
【0023】
数値の範囲が終点で説明される場合は、その範囲(1から5の場合は、1,1.5,2,2.75,3,3.80,4及び5など)のすべての数値が含まれるものとする。
種々の構成要素、要素、及び又は特徴を開示するためのある好適な次元、範囲及び/又は値が開示されているが、当業者であって、本発明によって動機づけられた者であれば、所望の次元、範囲及び/又は値がこれらの明示された内容からはずれ得ることを理解するであろう。
【0024】
本明細書および添付の請求項で使用されているように、「a」,「an」,「the」の単数形は、その内容が明らかに別の内容を指示しない限り、単数の指示対象と同様に複数の指示対象も指すものとする。本明細書及び添付の請求項で使用されるように、「or」の用語は、その内容が明らかに別の内容を指示しない限り、一般的に「and/or」の意味を含んで使用される。
【0025】
以下の発明の詳細な説明は、図面を参照して読まれたい。異なる図面の類似の要素については、同じ番号が付される。詳細な説明及び図面は、必ずしも縮尺通りではなく、例示的に実施形態を示すものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。図示されている例示の実施形態は、単なる典型例にすぎない。図示されているどの実施形態の選択された要素も、反対のことが明確に述べられていない限り、別の実施形態に取り込むことができる。
【0026】
図1は、体内プロテーゼ10の例を示したものである。体内プロテーゼ10は、種々の医療的な用途で身体の管腔内に配置できるように構成される。例えば、体内プロテーゼ10は、血管内の狭窄を治療し、血管、尿管、胆管、気管支、食道又は腎臓の管など液体の通り口又は通路を確保し、または身体の管腔内に人工弁又はフィルターなどの装置を配置する為に使用される。ある例では、体内プロテーゼ10は、プロテーゼグラフト、ステントグラフト又はステント(血管ステント、気管ステント、気管支ステント、食道ステントなど)、又は大動脈弁、フィルター等である。ステントが例示されているが、体内プロテーゼ10は、器官、組織または心臓、動脈、静脈、尿管、食道、気管、気管支、胆管などの管腔内に配置されるように、内視鏡的に、経皮的に、又は外科的に導入される多数の装置のうちのいずれかひとつである。
【0027】
体内プロテーゼ10は、第1の端14、第2の端16、および体内プロテーゼ10の全長を貫通して延びる管腔18を画定する体内プロテーゼ10の長軸周りに配置された拡張可能な管状のフレームワーク12、を備える。「拡張可能な管状のフレームワーク12」という用語は、これ以降「拡張可能なフレームワーク12」と呼ばれる。拡張可能なフレームワーク12は、拡張可能なフレームワーク12のメッシュ状の構造を形成する為に、多数の相互に連結された支柱20を含む。支柱20は、圧縮状態から拡張状態へと移行するように構成される。
【0028】
体内プロテーゼ10は、患者の血管、例えば大動脈口や蛇行する血管内などに埋め込まれるように構成される。別の実施形態では、体内プロテーゼ10は、例えば、尿管、胆管、気管と気管支の管、食道、腎臓の管内に埋め込まれるように構成される。体内プロテーゼ10またはその一部は、生物的に安定な材料、生体吸収性材料またはそれらの組み合わせから作られる。生物学的に安定な材料の例には、ステンレス鋼、タンタラム、タングステン、ニオビウム、プラチナ、ニッケル‐クロム合金、Elgioy(登録商標)及びPhynox(登録商標)等のコバルト‐クロム合金、ニチノール(55%ニッケル、45%チタンなど)及びニッケルチタン合金、またはその他の好適な金属またはそれらの組み合わせまたはそれらの合金を含むチタンをベースとするその他の合金が含まれるが、これらに限定されるものではない。いくつかの好適な生物学的に安定なポリマ材料には、ポリアミド、ポリエーテルブロックアミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロプレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン及び、共重合体、混合物、混錬物またはそれらの組み合わせが含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。好適な生体吸収性材料の例には、ポリ‐L‐乳酸(PLLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ‐D−乳酸(PLDA)、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリグルコネート(polygluconate)、ポリ乳酸‐ポリエチレンオキシド共重合体、変性セルロース、コラーゲン、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ無水物、ポリホスホエステル、ポリ(アミノ酸)およびこれらの組み合わせなどのポリマが含まれる。
【0029】
図2及び
図3を参照すると、相互に連結された支柱20は、拡張可能なフレームワーク12の外側表面の周りに径方向外方に向かう面22を備え、および反対側であって、拡張可能なフレームワーク12を貫通して延びる管腔18に面する径方向内方に向かう面24を備える。
図2に示されているように、径方向外方に向かう面22は、移動防止溝32の間に形成される移動防止歯30を画定する複数の移動防止溝32を備える。移動防止歯30は、組織に係合して、身体の管腔に埋め込まれた際に体内プロテーゼ10の移動に抵抗するように構成される。
【0030】
移動防止歯30は、拡張可能なフレームワーク12の径方向外方に向かう面22のどの所望の領域に沿って形成されてもよい。例えば、移動防止歯30は、径方向外方に向かう面22のほぼ全体に沿って形成されてもよいし、その所望される一部に沿って形成されてもよい。ある例では、移動防止歯30は、拡張可能なフレームワーク12の径方向外方に向かう面22にとびとびに存在し、拡張可能なフレームワーク12の径方向外方に向かう面22のその他の部分は、移動防止歯30を欠く場合もある。例えば、ある例では、移動防止歯30は、拡張可能なフレームワーク12の円周周りにとびとびの円周リング状で存在し、及び/又は移動防止歯30は拡張可能なフレームワーク12の長軸Xに沿ってとびとびの縦縞状で存在する。所望される場合は、移動防止歯30は、径方向外方に向かう面22上にその他のとびとびのパターンで存在してもよいことに留意されたい。
【0031】
移動防止歯30は、径方向外方に向かう面22上に所望の方向に配置される。例えば、
図4に示されているように、ある例では、移動防止歯30は、移動防止歯の間に配置される移動防止溝32と平行に配置される。移動防止歯30の列は、拡張可能なフレームワーク12の長軸Xに対して所望の角θの方向に配置される。つまり、外方に向かう面22に沿って移動防止歯30の長手方向の伸展部は、拡張可能なフレームワーク12の長軸Xに対して所望の角度で互いに平行して配置される。例えば、
図4に示されているように移動防止歯30の列は、角度θが90度またはほぼ90度、例えば88度と92度の間など、拡張可能なフレームワーク12の長軸に対して一般的に直交して配置される。別例では、移動防止歯30の列は、角度θが0度またはほぼ0度など、例えば3度以下または2度以下など、拡張可能なフレームワーク12の長軸Xに対して一般的に平行に配置される。さらに別例では、移動防止歯30は、長軸Xに対して斜角で配置される。ある例では、角度θは、例えば、5度から85度の範囲または約5度から約85度、10度から80度または約10度から約80度、15度から75度または約15度から約75度、30度から60度または約30度から60度、5度から60度又は約5度から約60度、45度から85度または約45度から約85度、である。ある例では、角度θは、例えば、5度、10度、15度、20度、30度、45度、60度、75度、80度または85度、または約5度、10度、15度、20度、30度、45度、60度、75度、80度または85度である。
【0032】
移動防止歯30は、拡張可能なフレームワークの径方向外方に向かう面22に所望の方法で形成される。例えば、移動防止歯30は、レーザーカッティング工程、化学エッチング工程、マイクロマシーニング工程、または移動防止溝32の間の移動防止歯32を画定する移動防止溝32を形成するために拡張可能なフレームワーク12の材料を取り除く工程などのその他の工程などによって、移動防止溝32を作ることにより形成される。レーザーカッティング工程では、例えば、レーザーは、移動防止歯30が長軸Xに対して鋭角をなして形成されるように、拡張可能なフレームワーク12の長軸に対して鋭角をなして配置される。移動防止歯30を画定する移動防止溝32は、相互に連結された支柱20を形成する為に、管状の部材の材料を取り除く前に管状の部材内に形成されることに留意されたい。換言すれば、管状の部材、例えば金属製の管状の部材(ニチロールハイポチューブなど)は、管状の部材の外表面上に移動防止歯30を画定する移動防止溝32を形成するために第1レーザーカッティング工程で処理され、相互に連結された支柱20は、その後のレーザーカッティング工程の間において管状の部材内に(隣接する支柱20間の管状の部材の材料を取り除くことにより)形成される。別例では、移動防止歯30を画定する移動防止溝32は、相互に連結された支柱20を形成する為に、管状の部材から材料を取り除いた後に形成される。
【0033】
図5Aないし5Dは、拡張可能なフレームワーク12の相互に連結された支柱20の径方向外方に向かう面22上に形成された移動防止歯30の構成を例示したものである。移動防止歯30は、第1側面34および該第1側面34に向かって収束する第2側面36から成る。
【0034】
第1側面34は、管状のフレームワーク12の長軸Xに対して角度αで延びている。角度αは、鋭角など、所望される如何なる角度でもよい。ある例では、角度αは、45度から80度の範囲または約45度から約80度の間、45度から75度の間または約45度から約75度の間、45度から70度の間または約45度から約70度の間、60度から80度の間または約60度から約80度の間、60度から70度の間または約60度から約70度の間である。
【0035】
第2側面36は、管状のフレームワーク12の長軸Xに対して角度βで延びている。角度βは、所望される如何なる角度、たとえば鋭角(90度以下の角度βなど)、直角(90度の角度βなど)、鈍角(90度以上の角度βなど)であってもよい。ある例では、角度βは、60度から135度の間または約60度から約135度の間、または60度から120度の間または約60度から約120度の間、または60度から100度の間または約60度から約100度の間、または60度から90度の間または約60度から約90度の間、60度から85度の間または約60度から約85度の間、または60度から80度の間または約60度から約80度の間、または60度から75度の間または約60度から約75度の間または60度から70度の間または約60度から約70度の間である。
【0036】
第1側面34の角度αは、第2側面36の角度βよりも小さい。例えば、第1側面34は、上記の範囲に入る鋭角を有する一方で、第2側面36は、上記の範囲に入る角度βを有し且つ第1側面34の角度αよりも大きい。
【0037】
図5Aに示されているように、ある例では、第1側面34の角度αと第2側面36の角度βの両方は、第1側面34と第2側面36の両方が長軸から拡張可能なフレームワーク12の同じ端(第1の端14または第2の端16など)に向かって径方向に外方へ傾斜するように鋭角をなしてよい。
【0038】
図5Bに示されているように、ある例では、第1側面34の角度αは第1側面34が、長軸から拡張可能なフレームワーク12の端(第1の端14または第2の端16など)に向かって径方向に外方へ傾斜するように鋭角をなしてよい。一方で、第2側面36の角度βは第2側面36が、拡張可能なフレームワーク12の長軸に直交して延びてもよい。
【0039】
別の例では、第1側面34の角度αは、第1側面34が長軸から拡張可能なフレームワーク12の端(第1の端14または第2の端16など)に向かって径方向外方へ傾斜する一方で、第2側面36の角度βは、第2側面36が長軸から拡張可能なフレームワーク12(第2の端16又は第1の端14)の反対の端に向かって径方向外方へ傾斜するように鈍角をなしてもよい。
【0040】
図5A及び
図5Bの実施例で示されているように、ある例では、第1側面34及び第2側面36は、移動防止歯30の径方向に最も外方の位置において線に沿って頂部38で収束する。ある例では、線沿いの頂部38は、拡張可能なフレームワーク12の径方向に外方に向かう面22上において、拡張可能なフレームワーク12の径方向の最も外方に位置する表面26に一致する。
【0041】
別の実施形態では、
図5Cに示されているように、移動防止歯30は、表面、たとえば平坦な表面35のような、第1側面34及び第2側面36の両方と交差する表面を備える。ある例では、表面35は、拡張可能なフレームワーク12の長軸Xに対して一般的に平行である。別の例では、表面35は、拡張可能なフレームワーク12の長軸Xに対して斜めの角度で配置される。ある例では、表面35は、拡張可能なフレームワーク12の径方向外方に向かう面22上で、拡張可能なフレームワーク12の径方向に最も外方に向かう面26である。
【0042】
ある例では、拡張可能なフレームワーク12は、ポリマのコーティング、ポリマのスリーブなどであって、拡張可能なフレームワーク12の径方向外方に向かう表面26を覆う外側の被覆50を含む。例えば、
図5Dに示されているように、外側の被覆50は、移動防止歯30の表面35、又は拡張可能なフレームワーク12の径方向外方へ向かう表面26の別の部分を覆う。ある例では、外側の被覆50は、移動防止溝32が移動防止溝32の間の移動防止歯30を画定して、拡張可能なフレームワーク12に形成されるより前(移動防止溝32及び/または相互に連結された支柱20が管状の部材から切り出される前)に、径方向外方に向かう表面26に対して施される。したがって、移動防止歯30の間の移動防止溝32は、被覆50を欠いている。つまり、被覆50は、移動防止溝32に存在しない。別の例では、被覆50は、移動防止溝32が形成された後に、拡張可能なフレームワーク12に施される。
【0043】
図5Aを参照すると、ある例では、第1歯30の第1側面34と隣接する第2歯30の第2側面36の間に画定される移動防止溝32の底は、丸みを帯びている(第1側面34から第2側面36まで曲率半径を有する)。別の例では、
図5Bないし5Dに示されているように、第1歯30の第1側面34と隣接する第2歯30の第2側面36の間に画定される移動防止溝32の底は、鋭角をなしている(第1歯30の第1側面34及び第2歯30の第2側面36は、ある角度で交差している)。移動防止溝32について丸みを帯びた底を示しているのは、
図5Aのみであるが、その他のどの実施形態も丸みを帯びた底を有する移動防止溝32を備えてもよい。
【0044】
図5Aの表記は、
図5Bないし
図5Dの実施形態にも等しく適用されるが、拡張可能なフレームワーク12の相互に連結された支柱20は、拡張可能なフレームワーク12の長軸に直交する径方向に計測される厚みTを有する。厚さTは、拡張可能なフレームワーク12の相互に連結された支柱20の径方向内方に向かう面24の径方向内方に向かう表面28から拡張可能なフレームワーク12の相互に連結された支柱20の径方向外方に向かう面22の径方向外方に向かう表面26(頂部38及び/または表面35など)までの間で計測される。
【0045】
移動防止溝32は、深さDの相互に連結された支柱20の径方向外方に向かう面22上で、径方向外方に向かう表面26から支柱20の中に延びており、深さDは厚さTに対して平行に計測される。深さDは、移動防止溝32が、相互に連結された支柱20の径方向内方に向かう面24の径方向に内方に向かう表面28にまで完全に延びないように支柱20の厚さTより小さい。したがって、支柱20の材料は、移動防止溝32の底の内側に径方向に残っている。ある例では、移動防止溝32の深さDは、支柱20の厚さTの1%から25%または約1%から約25%、1%から20%または約1%から約20%、1%から10%または約1%から約10%、2%から15%または約2%から約15%、2%から10%または約2%約10%、5%から15%のまたは約5%から約15%、5%から10%または約5%から約10%である。
【0046】
図6で示されているように、ある例では、拡張可能なフレームワーク12は、第1端部領域42及び第2端部領域44を含み、これらは、中間領域40によって離間されている。第1端部領域42は第1の端14を有し、第1の端14から中間領域40まで延びている。第2端部領域44は、第2の端16を有し、第2の端16から中間領域40まで延びている。つまり、第1端部領域42は、中間領域40から第1の端14に又は第1の端14に向かって延びる一方、第2端部領域44は中間領域40から第2の端16に又は第2の端16に向かって延びる。
【0047】
ある例では、移動防止歯30の第1部分は、拡張可能なフレームワーク12の第1の端14に向かって傾斜された第1側面34及び第2側面36のうちの少なくとも一方を備え、且つ移動防止歯30の第2部分は、第2の端16に向かって傾斜された第1側面34及び第2側面36のうちの少なくとも一方を含む。ある例では、
図6に示されているように、移動防止歯30の第1部分は、拡張可能なフレームワーク12の第1の端14に向かって傾斜された第1側面34及び第2側面36の両方を含む一方で、移動防止歯30の第2部分は、第2の端16に向かって傾斜された第1側面34及び第2側面36の両方を含む。ある例では、移動防止歯30の第1部分は、第1の端14の近位に配置され、移動防止歯30の第2部分は、第2の端16の近位に配置される。例えば、第1端部領域42は、拡張可能なフレームワーク12の第1の端14に向かって傾斜された第1側面34及び2側面36のうちの少なくとも一方(または、第1と第2側面の両方)を含む移動防止歯30の第1部分を備える。第2端部領域44は、拡張可能なフレームワーク12の第2の端16に向かって傾斜された第1側面34及び第2側面36のうちの少なくとも一方(または、第1と第2側面の両方)を含む移動防止歯30の第2部分を備える。
【0048】
別例では、第1端部領域42は、拡張可能なフレームワーク12の第2の端16に向かって傾斜された第1側面34及び第2側面36のうちの少なくとも一方(または、第1と第2側面の両方)を含む移動防止歯30の第2部分を備える。第2端部領域44は、拡張可能なフレームワーク12の第1の端14に向かって傾斜された第1側面34及び第2側面36のうちの少なくとも一方(または、第1と第2側面の両方)を含む移動防止歯30の第1部分を備える。
【0049】
ある例では、拡張可能なフレームワーク12の一部分は、移動防止歯30を欠いてもよい。例えば、
図6に示されているように、拡張可能なフレームワーク12の中間領域40、つまり移動防止歯30の第1部分と移動防止歯30の第2部分の間は、移動防止歯を欠いている。
【0050】
移動防止歯30は、体内プロテーゼ10と体内プロテーゼが埋め込まれた身体の管腔の管腔表面の間の静止摩擦を増大させるために、追加の表面領域を提供する。これにより、移動防止歯30は組織に係合して身体の管腔に埋め込まれた際に体内プロテーゼ10の移動に抵抗することができる。例えば、体内プロテーゼ10は、移動防止歯30が身体の管腔の管腔表面に係合するように、体内の管腔内に埋め込まれる(拡張されるなど)。近位方向及び/又は遠位方向に体内プロテーゼ10に付与される如何なる力も、身体内の管腔表面と移動歯30が係合することによって抵抗を受けるため、身体内の管腔内で体内プロテーゼ10の縦方向の移動(近位方向または遠位方向のいずれか)を阻止することができる。
【0051】
当業者であれば、本発明の態様は、本明細書で説明され、及び考慮された特別な実施形態以外の種々の形態で実施することができることを理解するであろう。したがって、添付の請求項に記載されているように、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、形式及び詳細上の発展的変更が可能である。