特許第6975816号(P6975816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6975816リポタンパク質のコレステロール取り込み能を測定する方法及び試薬キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6975816
(24)【登録日】2021年11月10日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】リポタンパク質のコレステロール取り込み能を測定する方法及び試薬キット
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20211118BHJP
   G01N 33/566 20060101ALI20211118BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20211118BHJP
   C12Q 1/28 20060101ALI20211118BHJP
   C12Q 1/42 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   G01N33/53 S
   G01N33/566
   G01N33/543 545D
   C12Q1/28
   C12Q1/42
【請求項の数】20
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2020-47833(P2020-47833)
(22)【出願日】2020年3月18日
(62)【分割の表示】特願2017-134578(P2017-134578)の分割
【原出願日】2016年5月27日
(65)【公開番号】特開2020-126052(P2020-126052A)
(43)【公開日】2020年8月20日
【審査請求日】2020年3月27日
(31)【優先権主張番号】特願2015-110510(P2015-110510)
(32)【優先日】2015年5月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-193648(P2015-193648)
(32)【優先日】2015年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-206422(P2015-206422)
(32)【優先日】2015年10月20日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-46069(P2016-46069)
(32)【優先日】2016年3月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】吉川 景子
(72)【発明者】
【氏名】原田 周
(72)【発明者】
【氏名】村上 克洋
(72)【発明者】
【氏名】桐山 真利亜
(72)【発明者】
【氏名】三輪 桂子
(72)【発明者】
【氏名】久保 卓也
【審査官】 三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−020969(JP,A)
【文献】 特開2008−139299(JP,A)
【文献】 特開2004−354284(JP,A)
【文献】 国際公開第99/036785(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/104411(WO,A1)
【文献】 Laura Agnoletto,Effects of oxysterols on cell survival and proliferation pathways in human endothelial cells,2008年,Page.1-108,http://paduaresearch.cab.unipd.it/971/1/agnolettolaura.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/53
G01N 33/566
G01N 33/543
C12Q 1/28
C12Q 1/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者から得られた試料中のリポタンパク質と、タグ付加コレステロールと、前記タグに特異的に結合する標識捕捉体とを接触させることにより、前記リポタンパク質と前記タグ付加コレステロールと前記標識捕捉体とを含む複合体を形成する工程と、
前記複合体に含まれる標識により生じるシグナルを検出する工程と
を含み、前記タグ付加コレステロールのコレステロール骨格のC3位にヒドロキシ基が存在し、これにより前記タグ付加コレステロールがレシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼの基質となり、
前記複合体において、前記タグが、前記リポタンパク質の外表面に露出し、前記標識捕捉体が、前記リポタンパク質の外表面に露出している前記タグと結合している、
コレステロールを測定する方法。
【請求項2】
前記形成工程において、前記リポタンパク質に特異的に結合する抗体が、前記リポタンパク質と前記タグ付加コレステロールと前記標識捕捉体との接触に供される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記形成工程において、前記タグ付加コレステロールを取り込んだリポタンパク質と、前記リポタンパク質に特異的に結合する抗体とをまず接触させ、その後、前記タグ付加コレステロールを取り込んだリポタンパク質と前記抗体との複合体に、前記標識捕捉体を接触させる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記形成工程において、前記タグ付加コレステロールを取り込んだリポタンパク質と、前記リポタンパク質に特異的に結合する抗体とを接触させた後、未反応の遊離成分を除去するB/F分離を行い、その後、前記タグ付加コレステロールを取り込んだリポタンパク質と前記抗体との複合体に、前記標識捕捉体を接触させる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記リポタンパク質に特異的に結合する抗体が、固相に固定化されており、前記複合体が前記固相上に形成される請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記リポタンパク質に特異的に結合する抗体が、抗ApoAI抗体である請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記形成工程と前記検出工程の間に、前記複合体に結合していない未反応の遊離成分を除去するB/F分離工程をさらに含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記標識捕捉体の標識が酵素であり、前記シグナルが、前記酵素と基質とを接触させることにより生じる化学発光シグナルである請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記酵素が、ペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記標識捕捉体が、前記タグに特異的に結合する標識抗体、標識アビジン又は標識ストレプトアビジンである請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記タグ付加コレステロールが、下記の式(III):
【化1】
(式中、R1は、メチル基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基であり、
X及びYは、同一又は異なって、-R2-NH-、-NH-R2-、-R2-(C=O)-NH-、-(C=O)-NH-R2-、-R2-NH-(C=O)-、-NH-(C=O)-R2-、-R2-(C=O)-、-(C=O)-R2-、-R2-(C=O)-O-、-(C=O)-O-R2-、-R2-O-(C=O)-、-O-(C=O)-R2-、-R2-(C=S)-NH-、-(C=S)-NH-R2-、-R2-NH-(C=S)-、-NH-(C=S)-R2-、-R2-O-、-O-R2-、-R2-S-、又は-S-R2-で表され、ここで、R2は、それぞれ独立して、結合手、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数6〜12のアリーレン基若しくはヘテロアリーレン基、又は、置換基を有していてもよい炭素数3〜8のシクロアルキレン基若しくはヘテロシクロアルキレン基であり、
Lは、-(CH2)d-[R3-(CH2)e]f-、又は-[(CH2)e-R3]f-(CH2)d-で表わされ、ここで、R3は、酸素原子、硫黄原子、-NH-、-NH-(C=O)-又は-(C=O)-NH-であり、
TAGは、タグであり、
a及びcは、同一又は異なって、0〜6の整数であり、
bは、0又は1であり、
d及びeは、同一又は異なって、0〜12の整数であり、
fは、0〜24の整数である。)
で表される請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記タグが、下記の式(I):
【化2】
で表される構造、又は、下記の式(II):
【化3】
で表される構造、又は2, 4-ジニトロフェニル基
を含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記タグ付加コレステロールが、下記の式(IV):
【化4】
又は、下記の式(V):
【化5】
(式中、nは、0〜24の整数である。)
又は、下記の式(VI):
【化6】
で表される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記試料が、血液、血清又は血漿である請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記リポタンパク質が、高比重リポタンパク質である請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法により得られた測定値が、前記被検者の脂質異常の指標となる、脂質異常に関する情報の取得方法。
【請求項17】
タグ付加コレステロールと、前記タグに特異的に結合する標識捕捉体とを含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法に用いられる試薬キットであって、
前記タグ付加コレステロールのコレステロール骨格のC3位にヒドロキシ基が存在し、これにより前記タグ付加コレステロールがレシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼの基質となり、
前記方法において、リポタンパク質と前記タグ付加コレステロールと前記標識捕捉体とを含む複合体が形成されるときに、前記タグが、前記リポタンパク質の外表面に露出し、前記標識捕捉体が、前記リポタンパク質の外表面に露出している前記タグと結合する、
前記試薬キット
【請求項18】
リポタンパク質に特異的に結合する抗体をさらに含む、請求項17に記載の試薬キット。
【請求項19】
固相をさらに含む、請求項17又は18に記載の試薬キット。
【請求項20】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法に用いられる試薬組成物であって、
前記試薬組成物が、前記タグ付加コレステロールを含み、
前記タグ付加コレステロールが、下記の式(III):
【化7】
(式中、R1は、メチル基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基であり、
X及びYは、同一又は異なって、-R2-NH-、-NH-R2-、-R2-(C=O)-NH-、-(C=O)-NH-R2-、-R2-NH-(C=O)-、-NH-(C=O)-R2-、-R2-(C=O)-、-(C=O)-R2-、-R2-(C=O)-O-、-(C=O)-O-R2-、-R2-O-(C=O)-、-O-(C=O)-R2-、-R2-(C=S)-NH-、-(C=S)-NH-R2-、-R2-NH-(C=S)-、-NH-(C=S)-R2-、-R2-O-、-O-R2-、-R2-S-、又は-S-R2-で表され、ここで、R2は、それぞれ独立して、結合手、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数6〜12のアリーレン基若しくはヘテロアリーレン基、又は、置換基を有していてもよい炭素数3〜8のシクロアルキレン基若しくはヘテロシクロアルキレン基であり、
Lは、-(CH2)d-[R3-(CH2)e]f-、又は-[(CH2)e-R3]f-(CH2)d-で表わされ、ここで、R3は、酸素原子、硫黄原子、-NH-、-NH-(C=O)-又は-(C=O)-NH-であり、
TAGは、タグであり、
a及びcは、同一又は異なって、0〜6の整数であり、
bは、0又は1であり、
d及びeは、同一又は異なって、0〜12の整数であり、
fは、0〜24の整数である。)
で表される化合物である、試薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リポタンパク質のコレステロール取り込み能を測定する方法に関する。また、本発明は、リポタンパク質のコレステロール取り込み能の測定用試薬キットに関する。さらに、本発明は、これらの方法及び試薬キットに用いることができるタグ付加コレステロールに関する。
【背景技術】
【0002】
コレステロールの代謝異常は種々の疾患に関与し、血中のコレステロール濃度がその指標となることが知られている。しかし、コレステロール濃度は疾患の存在や疾患リスク等を反映していない場合がある。そこで、コレステロール濃度などの量的指標だけでなく、コレステロールの機能に着目した質的指標が注目されている。
【0003】
たとえば、血中の高比重リポタンパク質コレステロール(HDL-C)濃度が高くても心血管疾患(CVD)リスクが低減されない場合があり、HDL-C濃度はCVDリスクを完全に反映していない可能性が指摘されている。高比重リポタンパク質(HDL)の機能が着目されており、HDLによる末梢組織からのコレステロールの排出機能がCVDリスクに対する負の予後因子であることが報告されている。
【0004】
HDLの機能を調べる方法として、例えば、特許文献1には、培養細胞を用いずに、蛍光標識コレステロールにより脂質異常症を判定する方法が記載されている。この方法では、低比重リポタンパク質(LDL)やHDLなどを含む種々のリポタンパク質の周縁の単層を蛍光標識コレステロール(コレステロールピレン)で標識し、標識されたリポタンパク質を測定して得た蛍光スペクトルに基づいて、被験者が脂質異常症か否かを判定している。なお、この文献には、標識されたリポタンパク質と、遊離している蛍光標識コレステロールとを、超遠心分離法、透析、又はゲルろ過カラムを用いるFPLCによって分離できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2012/104411号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リポタンパク質の機能解析法として、リポタンパク質のコレステロール取り込み能に着目した測定法はまだ少なく、さらなる測定法の開発が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、試料中のリポタンパク質と、タグ付加コレステロールと、リポタンパク質に特異的に結合する抗体とを接触させることにより、タグ付加コレステロールを取り込んだリポタンパク質と上記の抗体とを含む複合体を形成する工程と、この複合体に、上記のタグに特異的に結合する捕捉体と、標識物質とを結合させることにより、複合体を標識する工程と、複合体に結合した標識物質より生じるシグナルを検出する工程とを含む、リポタンパク質のコレステロール取り込み能を測定する方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、タグ付加コレステロールと、リポタンパク質に特異的に結合する抗体と、上記タグに特異的に結合する捕捉体と、標識物質とを含む、リポタンパク質のコレステロール取り込み能測定用試薬キットを提供する。
【0009】
また、本発明は、下記の式(III):
【化1】
(式中、R1は、メチル基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基であり、
X及びYは、同一又は異なって、-R2-NH-、-NH-R2-、-R2-(C=O)-NH-、-(C=O)-NH-R2-、-R2-NH-(C=O)-、-NH-(C=O)-R2-、-R2-(C=O)-、-(C=O)-R2-、-R2-(C=O)-O-、-(C=O)-O-R2-、-R2-O-(C=O)-、-O-(C=O)-R2-、-R2-(C=S)-NH-、-(C=S)-NH-R2-、-R2-NH-(C=S)-、-NH-(C=S)-R2-、-R2-O-、-O-R2-、-R2-S-、又は-S-R2-で表され、ここで、R2は、それぞれ独立して、結合手、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数6〜12のアリーレン基若しくはヘテロアリーレン基、又は、置換基を有していてもよい炭素数3〜8のシクロアルキレン基若しくはヘテロシクロアルキレン基であり、
Lは、-(CH2)d-[R3-(CH2)e]f-、又は-[(CH2)e-R3]f-(CH2)d-で表わされ、ここで、R3は、酸素原子、硫黄原子、-NH-、-NH-(C=O)-又は-(C=O)-NH-であり、
TAGは、タグであり、
a及びcは、同一又は異なって、0〜6の整数であり、
bは、0又は1であり、
d及びeは、同一又は異なって、0〜12の整数であり、
fは、0〜24の整数である。)
で表される、タグ付加コレステロールを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リポタンパク質のコレステロール取り込み能の測定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】サンドイッチELISA法により測定した、固相上の抗アポリポプロテインAI(ApoAI)抗体に捕捉された複合体の量を示すグラフである。
図2】サンドイッチELISA法により測定した、抗ApoAI抗体に捕捉された複合体中のHDLに取り込まれたタグ付加コレステロールの量を示すグラフである。
図3A】本実施形態に係る試薬キットの外観の一例を示す図である。
図3B】本実施形態に係る試薬キットの外観の一例を示す図である。
図3C】本実施形態に係る試薬キットの外観の一例を示す図である。
図3D】本実施形態に係る試薬キットの外観の一例を示す図である。
図3E】本実施形態に係る試薬キットの外観の一例を示す図である。
図3F】本実施形態に係る試薬キットの外観の一例を示す図である。
図4】サンドイッチELISA法により測定した、抗ApoAI抗体に捕捉された複合体中のHDLに取り込まれたタグ付加コレステロールの量を示すグラフである。
図5】磁性粒子を用いるELISA法により測定した、抗ApoAI抗体に捕捉された複合体中のHDLに取り込まれたタグ付加コレステロールの量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態に係るリポタンパク質のコレステロール取り込み能を測定する方法(以下、単に「測定方法」ともいう)は、後述のように、試料中のリポタンパク質にタグ付加コレステロールを直接取り込ませるので、従来のコレステロール排出機能の測定法のように、マクロファージなどのコレステロールを溜め込んだ細胞を用いなくともよい。よって、本実施形態に係る測定方法は、後述のいずれの工程においても無細胞系で行うことができる。ここで、無細胞系とは、リポタンパク質のコレステロール取り込み能の測定に利用する目的で細胞を添加することがないことを意味する。すなわち、本実施形態の測定方法は、測定のために細胞を添加してその性質及び機能などを利用することなく、実施できる。なお、本実施形態では、用いる試料に被験者由来の細胞が含まれている場合であっても、その細胞自体はリポタンパク質のタグ付加標識コレステロールの取り込みにほとんど影響しないと考え、測定方法は無細胞系であるとみなす。
【0013】
本実施形態に係る測定方法における、リポタンパク質に取り込まれたタグ付加コレステロールの検出原理は、次のとおりである。リポタンパク質とタグ付加コレステロールとが接触すると、リポタンパク質はタグ付加コレステロールをエステル化して取り込む。リポタンパク質に取り込まれたコレステロールは、リポタンパク質粒子の表層から中心部へと移動する。タグ付加コレステロールにおいて、リポタンパク質に取り込まれるのはコレステロール部分であり、タグは、リポタンパク質の外表面に露出していると考えられる。ここで、「リポタンパク質の外表面」とは、リポタンパク質粒子の外側の面をいう。「外表面に露出している」とは、リポタンパク質の外表面上に存在すること、及び、リポタンパク質の外表面から突出していることの両方を意味する。本実施形態では、この外表面に露出しているタグと、該タグに特異的に結合する捕捉体とを結合させることにより、リポタンパク質に取り込まれたコレステロールを検出する。以下に、本実施形態に係る測定方法の各工程について説明する。
【0014】
本実施形態に係る測定方法では、まず、試料中のリポタンパク質と、タグ付加コレステロールと、リポタンパク質に特異的に結合する抗体とを接触させることにより、該タグ付加コレステロールを取り込んだリポタンパク質と該抗体とを含む複合体を形成させる。
【0015】
本実施形態において、試料は、哺乳動物のリポタンパク質、好ましくはヒトのリポタンパク質を含む限り、特に限定されない。そのような試料としては、例えば、血液、血清及び血漿といった血液試料が挙げられる。
【0016】
本実施形態の測定対象となるリポタンパク質は、HDL、LDL、中間比重リポタンパク質(IDL)、超低比重リポタンパク質(VLDL)、又はカイロミクロン(CM)であり得る。HDLは、1.063 g/mL以上の密度を有するリポタンパク質である。LDLは、1.019 g/mL以上1.063 g/mL未満の密度を有するリポタンパク質である。IDLは、1.006 g/mL以上1.019 g/mL未満の密度を有するリポタンパク質である。VLDLは、0.95 g/mL以上1.006 g/mL未満の密度を有するリポタンパク質である。CMは、0.95 g/mL未満の密度を有するリポタンパク質である。
【0017】
本実施形態の測定に際しては、超遠心分離法やポリエチレングリコール(PEG)沈殿法などの公知の方法によって血液試料を分離して、所定のリポタンパク質を含む画分を取得することができる
【0018】
本実施形態においては、リポタンパク質濃度を調整するために、上記の血液試料及び所定のリポタンパク質画分を水性媒体で希釈して得た液を、試料として用いてもよい。そのような水性媒体としては、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)及びTris-HClなどの緩衝液などが挙げられる。なお、試料中のリポタンパク質濃度は、リポタンパク質の主要な構成成分であるApoAIの濃度が指標となるので、本実施形態では、試料の一部を取り、これに含まれるApoAIの濃度を公知の免疫学的測定法(例えば免疫比濁法)により測定してもよい。得られたApoAIの濃度に基づいて、試料中のリポタンパク質濃度を調整できる。
【0019】
試料には、必要に応じて、ウシ血清アルブミン(BSA)、リポソームなどのブロッキング剤などを添加してもよい。また、リポタンパク質はコレステロールをエステル化して取り込むことが知られているので、リポタンパク質によるコレステロールのエステル化反応に必要となる脂肪酸又はそれを含む組成物(例えばリポソーム)を試料に添加してもよい。
【0020】
本実施形態では、リポタンパク質に取り込ませるコレステロールとして、タグ付加コレステロールを用いる。ここで、タグ付加コレステロールとは、天然に存在するコレステロールのC17位に結合しているアルキル鎖(C20位〜C27位)のいずれかの位置に、直接又はリンカーを介してタグが結合しているコレステロールをいう。タグ付加コレステロールにおけるコレステロール部分は、天然に存在するコレステロールの構造を有してもよいし、又は、天然に存在するコレステロールのC17位に結合しているアルキル鎖から1つ以上のメチレン基及び/又はメチル基が除かれたコレステロール(ノルコレステロールとも呼ばれる)の構造を有してもよい。
【0021】
コレステロールに付加されるタグは、リポタンパク質によるコレステロールの取り込みを阻害せず、且つ、該タグと特異的に結合できる物質(後述の「タグに特異的に結合する捕捉体」と同じ)が存在するか又は得られるかぎり、特に限定されない。
【0022】
上述のように、リポタンパク質はコレステロールをエステル化して取り込むので、リポタンパク質によりエステル化されるタグ付加コレステロールを用いることがより好ましい。なお、本実施形態の方法において、タグ付加コレステロールは、試料と接触した際に、該試料に含まれる生体由来のレシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)によりエステル化される。リポタンパク質によるタグ付加コレステロールのエステル化を確認する方法自体は当該技術において公知であり、当業者にとってルーチンに行うことができる。
【0023】
本実施形態では、タグは、天然由来の物質及び合成された物質のいずれであってもよく、例えば、化合物、ペプチド、タンパク質、核酸及びそれらの組み合わせなどが挙げられる。化合物は、これと特異的に結合できる物質が存在するか又は得られるかぎり、当該技術において公知の標識化合物であってもよく、例えば、色素化合物などが挙げられる。
【0024】
当該技術において、コレステロールはエステル化されることで脂溶性が増大して、リポタンパク質による取り込みが促進することが知られている。コレステロールに付加されるタグは、脂溶性又は疎水性の物質であってもよい。
【0025】
タグと該タグに特異的に結合できる物質との組み合わせとしては、例えば、抗原と該抗原を認識する抗体、ハプテンと抗ハプテン抗体、ペプチド又はタンパク質とそれらを認識するアプタマー、リガンドとその受容体、オリゴヌクレオチドとその相補鎖を有するオリゴヌクレオチド、ビオチンとアビジン(又はストレプトアビジン)、ヒスチジンタグ(6〜10残基のヒスチジンを含むペプチド)とニッケル、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)とグルタチオンなどが挙げられる。タグとしての抗原は、当該技術において公知のペプチドタグ及びプロテインタグであってもよく、例えば、FLAG(登録商標)、ヘマグルチニン(HA)、Mycタンパク質、緑色蛍光タンパク質(GFP)などが挙げられる。タグとしてのハプテンは、例えば、2, 4-ジニトロフェノールなどが挙げられる。
【0026】
タグの例として、下記の式(I):
【0027】
【化2】
で表される構造、又は、下記の式(II):
【0028】
【化3】
で表される構造を有するタグが挙げられる。式(I)で表される構造は、ボロンジピロメテン(BODIPY(登録商標))骨格であり、式(II)で表される構造は、ビオチンの一部分を示す。式(I)又は(II)で表される構造を含むタグ付加コレステロールは、これらのタグに対する捕捉体が一般に入手可能であるので、好ましい。また、2, 4-ジニトロフェニル(DNP)基を有するタグを付加したコレステロールも、抗DNP抗体が市販されているので、好ましい。
【0029】
タグ付加コレステロールとしては、例えば、下記の式(III):
【0030】
【化4】
(式中、R1は、メチル基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基であり、
X及びYは、同一又は異なって、-R2-NH-、-NH-R2-、-R2-(C=O)-NH-、-(C=O)-NH-R2-、-R2-NH-(C=O)-、-NH-(C=O)-R2-、-R2-(C=O)-、-(C=O)-R2-、-R2-(C=O)-O-、-(C=O)-O-R2-、-R2-O-(C=O)-、-O-(C=O)-R2-、-R2-(C=S)-NH-、-(C=S)-NH-R2-、-R2-NH-(C=S)-、-NH-(C=S)-R2-、-R2-O-、-O-R2-、-R2-S-、又は-S-R2-で表され、ここで、R2は、それぞれ独立して、結合手、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数6〜12のアリーレン基若しくはヘテロアリーレン基、又は、置換基を有していてもよい炭素数3〜8のシクロアルキレン基若しくはヘテロシクロアルキレン基であり、
Lは、-(CH2)d-[R3-(CH2)e]f-、又は-[(CH2)e-R3]f-(CH2)d-で表わされ、ここで、R3は、酸素原子、硫黄原子、-NH-、-NH-(C=O)-又は-(C=O)-NH-であり、
TAGは、タグであり、
a及びcは、同一又は異なって、0〜6の整数であり、
bは、0又は1であり、
d及びeは、同一又は異なって、0〜12の整数であり、
fは、0〜24の整数である。)
で表されるタグ付加コレステロールが挙げられる。
【0031】
式(III)においてa、b及びcがいずれも0であるとき、この式で表されるタグ付加コレステロールはリンカーを有さず、タグとコレステロール部分とが直接結合している。式(III)においてa、b及びcのいずれかが0でないとき、この式で表されるタグ付加コレステロールは、タグとコレステロール部分との間にリンカー(-[X]a-[L]b-[Y]c-)を有する。リンカーにより、リポタンパク質の外表面に露出したタグと捕捉体とがより結合しやすくなると考えられる。以下に、式(III)の各置換基について説明する。
【0032】
R1は、炭素数1〜6のアルキレン基を主鎖とし、いずれかの位置にメチル基を有しいてもよい。R1は、天然に存在するコレステロールのC17位に結合したアルキル鎖に相当する。本実施形態では、R1は、炭素数が1〜5の場合、天然に存在するコレステロールにおけるC20の位置にメチル基を有することが好ましい。R1は、炭素数が6の場合、天然に存在するコレステロールのC20位〜C27位のアルキル鎖と同じ構造であることが好ましい。
【0033】
[X]aは、R1と、L、[Y]c又はタグとの連結部分に相当する。[Y]cは、R1、[X]a又はLと、タグとの連結部分に相当する。X及びYは、コレステロール部分とリンカーとを結合させる反応及びリンカーとタグとを結合させる反応の種類に応じて決定される。
【0034】
R2に関して、結合手とは、間に他の原子を介さずに直接結合することをいう。R2が、炭素数1〜10のアルキレン基であるとき、そのようなアルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンチレン、ネオペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、2-エチルヘキシレン、ノニレン及びデシレンなどの基が挙げられる。それらの中でも、炭素数1〜4のアルキレン基が好ましい。R2が、置換基を有するアルキレン基であるとき、上記の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
【0035】
R2が、アリーレン基若しくはヘテロアリーレン基であるとき、そのような基は、N、S、O及びPから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数6〜12の芳香環であればよい。例えば、フェニレン、ナフチレン、ビフェニリレン、フラニレン、ピローレン、チオフェニレン、トリアゾーレン、オキサジアゾーレン、ピリジレン、ピリミジレンなどの基が挙げられる。R2が、置換基を有するアリーレン基又はヘテロアリーレン基であるとき、上記の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
【0036】
R2が、シクロアルキレン基若しくはヘテロシクロアルキレン基であるとき、そのような基は、N、S、O及びPから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3〜8の非芳香環であればよい。例えば、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン、シクロオクチレン、ピロリジニレン、ピペリジニレン、モルホリニレンなどの基が挙げられる。R2が、置換基を有するシクロアルキレン基又はヘテロシクロアルキレン基であるとき、上記の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
【0037】
R2における置換基としては、例えば、ヒドロキシル、シアノ、アルコキシ、=O、=S、-NO2、-SH、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアルキル、カルボキシアルキル、アミン、アミド、及びチオエーテルなどの基挙げられる。R2は、置換基を複数有していてもよい。ここで、ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を表す。アルコキシは、-O-アルキル基を示し、このアルキル基は、炭素数1〜5、好ましくは炭素数1又は2の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基である。
【0038】
好ましくは、a及びcが共に1であり、X及びYが、同一又は異なって、-(C=O)-NH-、又は-NH-(C=O)-である。
【0039】
Lは、スペーサーに相当し、リンカーに所定の長さを付与するポリマー構造を有する。このポリマー構造部分は、リポタンパク質によるコレステロールの取り込みを阻害せず、且つ、リンカー部分がリポタンパク質に取り込まれにくい性質であることが好ましい。そのようなポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)などの親水性ポリマーが挙げられる。好ましい実施形態において、Lは、-(CH2)d-[O-(CH2)e]f-、又は-[(CH2)e-O]f-(CH2)d-で表わされる構造である。ここで、d及びeは、同一又は異なって、0〜12の整数、好ましくは2〜6の整数、より好ましくは共に2である。fは、0〜24の整数、好ましくは2〜11の整数、より好ましくは4〜11の整数である。
【0040】
リンカーを有さないタグ付加コレステロールとしては、例えば、下記の式(IV):
【0041】
【化5】
で表される蛍光標識コレステロール(23-(ジピロメテンボロンジフルオリド)-24-ノルコレステロール)が挙げられる。この蛍光標識コレステロールは市販されている(商品名TopFluor Cholesterol、CAS No: 878557-19-8、Avanti Polar Lipids社)。式(IV)で表されるタグ付加コレステロールは、タグ(BODIPY骨格構造を有する蛍光部分)がコレステロールのC23位に直接結合している。上記のBODIPY骨格構造を有する蛍光部分に特異的に結合する捕捉体として、抗BODIPY抗体(BODIPY FL Rabbit IgG Fraction、A-5770、Lifetechnologies社)が市販されている。
【0042】
タグがリンカーを介して結合しているタグ付加コレステロールとしては、下記の式(V):
【0043】
【化6】
(式中、nは、0〜24の整数、好ましくは2〜11の整数、より好ましくは4〜11の整数である。)
で表されるビオチン付加コレステロールが挙げられる。このタグ付加コレステロールにおいては、タグ(式(II)で表されるビオチン部分)がリンカー(ポリエチレングリコール)を介してコレステロール部分と結合している。ビオチン部分に特異的に結合する捕捉体としては、アビジン又はストレプトアビジンが適している。また、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(ALP)などの標識物質が結合したアビジン又はストレプトアビジンも市販されている。
【0044】
また、下記の式(VI):
【0045】
【化7】
で表されるDNP付加コレステロールが挙げられる。このタグ付加コレステロールにおいては、DNPがリンカー(-(C=O)-NH-CH2-CH2-NH-)を介してコレステロール部分と結合している。DNPに特異的に結合する捕捉体としては、抗DNP抗体が適している。また、HRP、ALPなどの標識物質が結合した抗DNP抗体も市販されている。
【0046】
コレステロール部分とタグとの結合様式は特に限定されないが、コレステロール部分とタグとを結合させてもよいし、コレステロール部分とタグとをリンカーを介して結合させてもよい。結合手段は特に限定されないが、例えば、官能基を利用したクロスリンクが簡便で好ましい。官能基は特に限定されないが、アミノ基、カルボキシル基及びスルフヒドリル基は、市販のクロスリンカーを利用できるので好ましい。
【0047】
コレステロールは、C17位に結合しているアルキル鎖に官能基がないので、タグの付加においては、該アルキル鎖に官能基を有するコレステロール誘導体を用いることが好ましい。そのようなコレステロール誘導体としては、例えば、胆汁酸の前駆体、ステロイドの前駆体などが挙げられる。具体的には、3β-ヒドロキシ-Δ5-コレン酸、24-アミノ-5-コレン-3β-オルなどが好ましい。タグの官能基はタグの種類に応じて異なる。例えば、ペプチド又はタンパク質をタグに用いる場合は、アミノ基、カルボキシル基及びスルフヒドリル基(SH基)が利用でき、ビオチンをタグに用いる場合は、側鎖のカルボキシル基が利用できる。リンカーは、両端に官能基を有するポリマー化合物が好ましい。なお、ビオチンをタグとして付加させる場合、市販のビオチン標識試薬を用いてもよい。この試薬は、末端にアミノ基などの官能基を有する様々な長さのスペーサーアーム(PEGなど)を結合させたビオチンが含まれている。
【0048】
以下に、代表的な官能基のクロスリンクの反応を説明する。官能基としてアミノ基を有する化合物は、反応基としてN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル又はイソチオシアノ基を有する化合物とクロスリンクできる(下図参照)。例えば、アミノ基を有するコレステロールと、アミノ基を有するタグとをクロスリンクする場合は、両端にNHSエステルを有するクロスリンク試薬又はリンカーを用いてもよい。
【0049】
【化8】
【0050】
官能基としてカルボキシル基を有する化合物は、まず、カルボジイミド基(-N=C=N-)を有する化合物と反応させる(下図参照。図では、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩と反応させている)。ここにNHSを反応させることで、不安定なNHSエステルを形成させる。そして、ここに、アミノ基を有する化合物を反応させることにより、カルボキシル基を有する化合物とクロスリンクできる。例えば、カルボキシル基を有するコレステロールと、アミノ基を有するタグとをクロスリンクする場合は、このようにしてクロスリンクできる。また、カルボキシル基を有するコレステロールと、カルボキシル基を有するタグとをクロスリンクする場合は、両端にアミノ基を有するクロスリンク試薬又はリンカーを用いてもよい。
【0051】
【化9】
【0052】
官能基としてスルフヒドリル基を有する化合物は、反応基としてマレイミド基又はブロモ(もしくはヨード)アセトアミド基を有する化合物とクロスリンクできる(下図参照)。例えば、スルフヒドリル基を有するコレステロールと、スルフヒドリル基を有するタグとをクロスリンクする場合は、両端にマレイミドを有するクロスリンク試薬又はリンカーを用いてもよい。
【0053】
【化10】
【0054】
上記のクロスリンク反応は、常温常圧下で行うことができる。反応に用いる溶媒は、上記の反応に対して不活性であって、且つ反応に付される各化合物を溶解又は分散できるかぎり特に限定されない。そのような溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、1, 4-ジオキサンなどのエーテル類、N, N-ジメチルホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。これらの溶媒を単独又は混液として使用できる。
【0055】
本実施形態において、リポタンパク質に特異的に結合する抗体(以下、「抗リポタンパク質抗体」ともいう)は、リポタンパク質の表面の一部と特異的に結合できる抗体であれば特に限定されないが、好ましくは、リポタンパク質の構成成分であるアポリポプロテインと特異的に結合できる抗体である。そのような抗体としては、例えば、抗ApoAI抗体、抗ApoAII抗体などが挙げられるが、それらの中でも、抗ApoAI抗体が特に好ましい。本実施形態においては、市販の抗リポタンパク質抗体及び抗ApoAI抗体を用いてもよい。
【0056】
抗リポタンパク質抗体は、モノクローナル抗体であってもよいし、ポリクローナル抗体であってもよい。抗体の由来は特に限定されず、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ウマ、ラクダなどのいずれの哺乳動物に由来する抗体であってもよい。また、抗体のアイソタイプはIgG、IgM、IgE、IgAなどのいずれであってもよいが、好ましくはIgGである。本実施形態では、抗リポタンパク質抗体として、該抗体のフラグメント及びその誘導体を用いてもよく、例えば、Fabフラグメント、F(ab')2フラグメントなどが挙げられる。
【0057】
抗リポタンパク質抗体として抗ApoAI抗体を用いる場合、抗ApoAI抗体と、タグ付加コレステロールを取り込んだリポタンパク質とを接触させる前に、該リポタンパク質を酸化剤で処理してもよい。酸化剤の作用により、抗ApoAI抗体とリポタンパク質との反応性が改善されうる。そのような酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化亜硝酸、二酸化塩素、次亜塩素酸などが挙げられる。
【0058】
本実施形態において、試料中のリポタンパク質と、タグ付加コレステロールと、抗リポタンパク質抗体との接触は、例えば、リポタンパク質を含む試料と、タグ付加コレステロール溶液と、抗リポタンパク質抗体溶液とを混合することにより行うことができる。これらを混合した後、リポタンパク質がタグ付加コレステロールを取りこみ始め、タグ付加コレステロールを取り込んだリポタンパク質と抗リポタンパク質抗体との複合体が形成される。
【0059】
試料中のリポタンパク質と、タグ付加コレステロールと、抗リポタンパク質抗体とを接触させる順序は特に限定されず、これらを同時に混合してもよいし、逐次混合してもよい。本実施形態では、リポタンパク質とタグ付加コレステロールとを先に混合して、タグ付加コレステロールをリポタンパク質に取り込ませた後、抗リポタンパク質抗体を接触させることが好ましい。タグ付加コレステロールと抗リポタンパク質抗体とを先に接触させると、抗リポタンパク質抗体が結合したタグ付加コレステロールがリポタンパク質に取り込まれにくくなる可能性が考えられるためである。
【0060】
本実施形態において、タグ付加コレステロールの添加量は特に限定されないが、タグ付加コレステロールが枯渇しないよう、やや過剰に添加してもよい。例えば、タグ付加コレステロールを終濃度0.1〜30μM、好ましくは1〜10μMとなるように試料に添加できる。抗リポタンパク質抗体の添加量は特に限定されず、抗体の種類などに応じて当業者が適宜設定できる。
【0061】
接触における温度及び時間の条件は特に限定されないが、例えば、試料とタグ付加コレステロールと抗リポタンパク質抗体との混合液を20〜48℃、好ましくは25〜42℃にて、1分間〜24時間、好ましくは10分間〜2時間インキュベーションすることができる。インキュベーションの間、混合液は静置してもよいし、攪拌又は振とうしてもよい。
【0062】
リポタンパク質とタグ付加コレステロールとを先に混合する場合は、混合液を20〜48℃、好ましくは25〜42℃にて、1分間〜24時間、好ましくは10分間〜2時間インキュベーションすることができる。その後、混合液に抗リポタンパク質抗体を添加して、20〜48℃、好ましくは25〜42℃にて、1分間〜24時間、好ましくは10分間〜2時間インキュベーションすることができる。インキュベーションの間、混合液は静置してもよいし、攪拌又は振とうしてもよい。
【0063】
本実施形態では、タグ付加コレステロールを取り込んだリポタンパク質と抗リポタンパク質抗体との複合体を、固相上に形成させてもよい。この場合、例えば、リポタンパク質を含む試料と、タグ付加コレステロール溶液と、抗リポタンパク質抗体溶液と、固相とを接触させてもよい。また、リポタンパク質を含む試料と、タグ付加コレステロール溶液と、抗リポタンパク質抗体溶液とを混合した後に、得られた混合液と固相とを接触させてもよい。あるいは、抗リポタンパク質抗体をあらかじめ固相上に固定化して用いてもよい。例えば、抗リポタンパク質抗体を固定化した固相を、リポタンパク質を含む試料と、タグ付加コレステロール溶液との混合液に接触させることで、固相上に複合体を形成させることができる。接触における温度及び時間の条件は特に限定されないが、例えば、上記の複合体の形成工程と同様の条件であってもよい。
【0064】
固相としては、複合体中の抗リポタンパク質抗体を捕捉可能な固相が好ましい。固相の種類は特に限定されず、例えば、抗体を物理的に吸着する材質の固相、抗体と特異的に結合する分子が固定化されている固相などが挙げられる。抗体と特異的に結合する分子としては、プロテインA又はG、該抗体を特異的に認識する抗体(すなわち二次抗体)などが挙げられる。また、抗体と固相との間を介在する物質の組み合わせを用いて、両者を結合させることもできる。そのような物質の組み合わせとしては、ビオチンとアビジン(又はストレプトアビジン)、ハプテンと抗ハプテン抗体などの組み合わせが挙げられる。例えば、抗リポタンパク質抗体をあらかじめビオチン修飾している場合、アビジン又はストレプトアビジンが固定化された固相によって該抗体を捕捉できる。
【0065】
固相の素材としては、有機高分子化合物、無機化合物、生体高分子などから選択できる。有機高分子化合物としては、ラテックス、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニルアクリレートなどが挙げられる。無機化合物としては、磁性体(酸化鉄、酸化クロム、コバルト及びフェライトなど)、シリカ、アルミナ、ガラスなどが挙げられる。生体高分子としては、不溶性アガロース、不溶性デキストラン、ゼラチン、セルロースなどが挙げられる。これらのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。固相の形状は特に限定されず、例えば、粒子、マイクロプレート、マイクロチューブ、試験管などが挙げられる。それらの中でも、マイクロプレート及び粒子が好ましく、96ウェルマイクロプレート及び磁性粒子が特に好ましい。
【0066】
本実施形態においては、上記の複合体の形成工程と後述の標識工程との間に、複合体を形成していない未反応の遊離成分を除去するB/F分離を行ってもよい。未反応の遊離成分とは、複合体を構成しない成分をいう。例えば、リポタンパク質に取り込まれなかった遊離のタグ付加コレステロール、リポタンパク質と結合しなかった遊離の抗リポタンパク質抗体などが挙げられる。B/F分離の手段は特に限定されないが、例えば、超遠心分離法などにより、複合体だけを回収することにより、複合体と、未反応の遊離成分とを分離できる。複合体を固相上に形成させている場合は、固相が粒子であれば、複合体を捕捉した粒子だけを回収することにより、複合体と、未反応の遊離成分とを分離できる。固相がマイクロプレートやマイクロチューブなどの容器であれば、未反応の遊離成分を含む液を除去することにより、複合体と、未反応の遊離成分とを分離できる。未反応の遊離成分を除去した後、回収した複合体をPBSなどの適切な水性媒体で洗浄してもよい。
【0067】
本実施形態に係る測定方法では、上記のようにして形成した複合体に、上記のタグに特異的に結合する捕捉体と、標識物質とを結合させることにより、該複合体を標識する。
【0068】
タグに特異的に結合する捕捉体は、上記のタグ付加コレステロールのタグの種類に応じて適宜決定すればよい。例えば、上述したタグと該タグに特異的に結合できる物質との組み合わせを参照して、抗体、リガンド受容体、オリゴヌクレオチド、ビオチン、アビジン(若しくはストレプトアビジン)、ヒスチジンタグ又はニッケル、GST又はグルタチオンなどから選択できる。それらの中でも、捕捉体としては、タグに特異的に結合する抗体が好ましい。そのような抗体は、市販の抗体であってもよいし、当該技術において公知の方法により作製した抗体であってもよい。抗体は、モノクローナル抗体であってもよいし、ポリクローナル抗体であってもよい。抗体の由来及びアイソタイプは特に限定されず、抗HDL抗体について述べたことと同様である。また、抗体のフラグメント及びその誘導体を用いてもよく、例えば、Fabフラグメント、F(ab')2フラグメントなどが挙げられる。
【0069】
標識物質は、それ自体がシグナルを発生する物質(以下、「シグナル発生物質」ともいう)、又は他の物質の反応を触媒して検出可能なシグナルを発生させる物質を用いることができる。シグナル発生物質としては、蛍光物質、放射性同位元素などが例示される。他の物質の反応を触媒して検出可能なシグナルを発生させる物質としては、酵素が例示される。酵素としては、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、チロシナーゼ、酸性ホスファターゼ、ルシフェラーゼなどが挙げられる。蛍光物質としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、Alexa Fluor(登録商標)、シアニン系色素などの蛍光色素、GFPなどの蛍光タンパク質などが挙げられる。放射性同位元素としては、125I、14C、32Pなどが挙げられる。それらの中でも、標識物質として、酵素が好ましく、ペルオキシダーゼ及びアルカリホスファターゼが特に好ましい。
【0070】
好ましい実施形態においては、標識物質を、タグに特異的に結合する捕捉体を介して、間接的に複合体と結合させることにより、該複合体を標識する。例えば、複合体に、標識物質と結合した捕捉体を結合させるか、又は、複合体と結合した捕捉体に、標識物質を結合させることが挙げられる。この場合、標識物質をあらかじめ結合させた捕捉体を用いてもよいし、捕捉体に特異的に結合できる標識物質を用いてもよい。
【0071】
標識物質をあらかじめ結合させた捕捉体は、例えば、タグに特異的に結合する捕捉体を、上記の標識物質で標識することにより得ることができる。なお、物質の標識方法自体は、当該技術において公知である。捕捉体が抗体の場合は、市販のラベリングキットなどを用いて標識してもよい。捕捉体に特異的に結合できる標識物質としては、例えば、捕捉体を特異的に認識する標識抗体(二次抗体)などが挙げられる。
【0072】
この標識工程における温度及び時間の条件は特に限定されないが、例えば、複合体と、タグに特異的に結合する捕捉体と、標識物質との混合物を4〜60℃、好ましくは25〜42℃にて、1秒間〜24時間、好ましくは10分間〜2時間インキュベーションすることができる。インキュベーションの間、混合物は静置してもよいし、攪拌又は振とうしてもよい。
【0073】
本実施形態においては、上記の標識工程と後述の検出工程との間に、複合体に結合していない未反応の遊離成分を除去するB/F分離を行ってもよい。未反応の遊離成分としては、例えば、タグに結合しなかった遊離の捕捉体、捕捉体と結合しなかった遊離の標識物質などが挙げられる。B/F分離の手段は特に限定されず、上記の複合体の形成工程と後述の標識工程との間に行われるB/F分離について述べたことと同様である。
【0074】
本実施形態に係る測定方法では、複合体に結合した標識物質により生じるシグナルを検出する。ここで、「シグナルを検出する」とは、シグナルの有無を定性的に検出すること、シグナル強度を定量すること、及び、シグナルの強度を、「シグナル発生せず」、「弱」、「強」などのように複数の段階に半定量的に検出することを含む。このシグナルは、リポタンパク質に取り込まれたタグ付加コレステロールの量を反映するので、該シグナルの検出結果はリポタンパク質のコレステロール取り込み能の指標となる。したがって、上記の測定方法は、タグ付加コレステロールを取り込んだリポタンパク質と、抗リポタンパク質抗体との複合体から生じるシグナルに基づいて、リポタンパク質のコレステロール取り込み能を評価する方法ともいうことができる。
【0075】
標識物質により生じるシグナルを検出する方法自体は、当該技術において公知である。本実施形態においては、上記の標識物質に由来するシグナルの種類に応じた適切な測定方法を選択できる。例えば、標識物質が酵素である場合、該酵素に対する基質を反応させることによって発生する光、色などのシグナルを、公知の装置を用いて測定することにより行うことができる。そのような測定装置としては、分光光度計、ルミノメータなどが挙げられる。
【0076】
酵素の基質は、該酵素の種類に応じて公知の基質から適宜選択することができる。例えば、酵素としてペルオキシダーゼを用いる場合、基質としては、ルミノール及びその誘導体などの化学発光基質、2, 2'-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸アンモニウム)(ABTS)、1, 2-フェニレンジアミン(OPD)、3, 3', 5, 5'-テトラメチルベンジジン(TMB)などの発色基質が挙げられる。また、酵素としてアルカリホスファターゼを用いる場合、基質としては、CDP-Star(登録商標)(4-クロロ-3-(メトキシスピロ[1, 2-ジオキセタン-3, 2'-(5'-クロロ)トリクシロ[3. 3. 1. 13, 7]デカン]-4-イル)フェニルリン酸2ナトリウム)、CSPD(登録商標)(3-(4-メトキシスピロ[1, 2-ジオキセタン-3, 2-(5'-クロロ)トリシクロ[3. 3. 1. 13, 7]デカン]-4-イル)フェニルリン酸2ナトリウム)などの化学発光基質、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸(BCIP)、5-ブロモ-6-クロロ−インドリルリン酸2ナトリウム、p-ニトロフェニルリン酸などの発色基質が挙げられる。
【0077】
標識物質が放射性同位体である場合は、シグナルとしての放射線を、シンチレーションカウンターなどの公知の装置を用いて測定できる。また、標識物質が蛍光物質である場合は、シグナルとしての蛍光を、蛍光マイクロプレートリーダーなどの公知の装置を用いて測定できる。なお、励起波長及び蛍光波長は、用いた蛍光物質の種類に応じて適宜決定できる。
【0078】
さらなる実施形態においては、上記の測定方法で得られたリポタンパク質のコレステロール取り込み能の結果を、被験者が脂質異常症であるか否かの判定に利用してもよい。すなわち、以下の工程を含む、脂質異常症の判定を補助する方法が提供される:
被験者から得た試料中のリポタンパク質と、タグ付加コレステロールと、リポタンパク質に特異的に結合する抗体とを接触させることにより、該タグ付加コレステロールを取り込んだリポタンパク質と上記抗体とを含む複合体を形成する工程と、
上記複合体に、上記タグに特異的に結合する捕捉体と、標識物質とを結合させることにより、複合体を標識する工程と、
前記複合体に結合した標識物質より生じるシグナルを検出する工程と、
検出結果に基づいて、上記の被験者の脂質異常に関する情報を取得する工程。
【0079】
上記の測定方法により健常者及び脂質異常症患者の試料から得たシグナル測定値のデータを蓄積することで、リポタンパク質のコレステロール取り込み能に関する閾値又は基準範囲を定めることができる。そして、その閾値又は基準範囲と、被験者の検体を用いた際のシグナル測定値とを比較することで、該被験者の脂質異常に関する情報、すなわち、被験者のリポタンパク質のコレステロール取り込み能が正常又は基準の範囲内であるか否かの情報を取得することができる。この情報に基づいて、被験者が脂質異常症であるか否かの判定を補助することができる。
【0080】
本発明の範囲には、上記の測定方法に用いられる試薬キットも含まれる。すなわち、タグ付加コレステロールと、リポタンパク質に特異的に結合する抗体(抗リポタンパク質抗体)と、タグに特異的に結合する捕捉体と、標識物質とを含む、リポタンパク質のコレステロール取り込み能測定用試薬キット(以下、単に「試薬キット」ともいう)が提供される。標識物質が酵素である場合、本実施形態の試薬キットは、該酵素に対する基質をさらに含んでいてもよい。
【0081】
タグ付加コレステロール、抗リポタンパク質抗体、タグに特異的に結合する捕捉体、標識物質、及び基質の形態は特に限定されず、固体(例えば、粉末、結晶、凍結乾燥品など)であってもよいし、液体(例えば、溶液、懸濁液、乳濁液など)であってもよい。本実施形態では、タグ付加コレステロール、抗リポタンパク質抗体、タグに特異的に結合する捕捉体、標識物質、及び基質は、それぞれ別の容器に保存されているか又は個別に包装されていることが好ましい。なお、試料、タグ付加コレステロール、リポタンパク質に特異的に結合する抗体、タグに特異的に結合する捕捉体、標識物質及び酵素の基質の種類、並びにこれらの取り扱いなどの詳細は、上記の測定方法についての説明で述べたことと同様である。図3Aに、本実施形態の試薬キットの外観の一例を示す。図中、11は、タグ付加コレステロールを収容した第1容器を示し、22は、抗リポタンパク質抗体を収容した第2容器を示し、33は、タグと特異的に結合する捕捉体を収容した第3容器を示し、44は、標識物質としての酵素を収容した第4容器を示し、55は、酵素に対する化学発光基質を収容した第5容器を示す。
【0082】
上記の試薬キットは、抗リポタンパク質抗体を固定化するための固相をさらに含んでいてもよい。この場合、タグ付加コレステロールと、抗リポタンパク質抗体と、タグに特異的に結合する捕捉体と、標識物質と、基質と、固相とは、それぞれ別の容器に保管されているか又は個別に包装されていることが好ましい。図3Bに、固相を含む試薬キットの外観の一例を示した。なお、固相についての詳細は、上記の測定方法についての説明で述べたことと同様である。図中、66は、固相としての96ウェルマイクロプレートを示す。
【0083】
本実施形態では、固相に、抗リポタンパク質抗体、好ましくは抗ApoAI抗体があらかじめ固定化されていてもよい。この場合、試薬キットは、タグ付加コレステロールと、タグに特異的に結合する捕捉体と、標識物質と、基質と、抗リポタンパク質抗体を固定化した固相とを含む構成となり得る。図3Cに、当該試薬キットの外観の一例を示した。図中、11は、タグ付加コレステロールを収容した第1容器を示し、22は、タグと特異的に結合する捕捉体を収容した第2容器を示し、33は、標識物質としての酵素を収容した第3容器を示し、44は、酵素に対する化学発光基質を収容した第4容器を示し、66は、リポタンパク質と結合する抗体を固定化した固相(96ウェルマイクロプレート)を示す。
【0084】
本実施形態では、タグに特異的に結合する捕捉体に、標識物質があらかじめ結合されていてもよい(得られる捕捉体を「標識捕捉体」ともいう)。この場合、試薬キットは、タグ付加コレステロールと、抗リポタンパク質抗体と、標識捕捉体と、基質と、固相とを含む構成となり得る。図3Dに、当該試薬キットの外観の一例を示した。図中、11は、タグ付加コレステロールを収容した第1容器を示し、22は、抗リポタンパク質抗体を収容した第2容器を示し、33は、標識物質として酵素を結合させた捕捉体を収容した第3容器を示し、44は、酵素に対する化学発光基質を収容した第4容器を示し、66は、固相(96ウェルマイクロプレート)を示す。
【0085】
さらに、固相に、抗リポタンパク質抗体、好ましくは抗ApoAI抗体があらかじめ固定化されていてもよい。この場合、試薬キットは、タグ付加コレステロールと、標識捕捉体と、基質と、抗リポタンパク質抗体を固定化した固相とを含む構成となる。図3Eに、当該試薬キットの外観の一例を示した。図中、11は、タグ付加コレステロールを収容した第1容器を示し、22は、標識物質として酵素を結合させた捕捉体を収容した第2容器を示し、33は、酵素に対する化学発光基質を収容した第4容器を示し、66は、リポタンパク質と結合する抗体を固定化した固相(96ウェルマイクロプレート)を示す。
【0086】
図3Fには、固相として粒子を用いた場合の試薬キットの外観の一例が示される。図中、タグ付加コレステロールを収容した第1容器を示し、22は、標識物質として酵素を結合させた捕捉体を収容した第2容器を示し、33は、リポタンパク質と結合する抗体を固定化した粒子が収容された第3容器を示し、44は、酵素に対する化学発光基質を収容した第4容器を示す。
【0087】
上記の試薬キットは、必要に応じて、試料を希釈するための水性媒体、ブロッキング剤、コレステロールのエステル化のための脂肪酸若しくはそれを含む組成物、及び酸化剤などを、それぞれ個別の試薬としてさらに含んでいてもよい。なお、これらについての詳細は、上記の測定方法についての説明で述べたことと同様である。
【0088】
上記の試薬を収容した容器及び固相は、箱に収容されてユーザに提供され得る。この箱は、上記の試薬及び固相を全て同梱していてもよいし、一部のみを収容していてもよい。この箱には、さらに試薬の使用方法等を記載した添付文書が同梱されていてもよい。
【0089】
本発明の範囲には、上記の各種試薬を、リポタンパク質のコレステロール取り込み能測定用試薬キットの製造のために使用することも含まれる。すなわち、本発明は、リポタンパク質のコレステロール取り込み能測定用試薬キットの製造のための、タグ付加コレステロール、リポタンパク質に特異的に結合する抗体(抗リポタンパク質抗体)、タグに特異的に結合する捕捉体、及び標識物質の使用にも関する。標識物質が酵素である場合、該酵素に対する基質をさらに使用してもよい。また、固相をさらに使用してもよい。抗リポタンパク質抗体は、固相に固定化された状態にあってもよい。
【0090】
本発明の範囲には、タグ付加コレステロールも含まれる。すなわち、下記の式(III):
【化11】
(式中、R1は、メチル基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基であり、
X及びYは、同一又は異なって、-R2-NH-、-NH-R2-、-R2-(C=O)-NH-、-(C=O)-NH-R2-、-R2-NH-(C=O)-、-NH-(C=O)-R2-、-R2-(C=O)-、-(C=O)-R2-、-R2-(C=O)-O-、-(C=O)-O-R2-、-R2-O-(C=O)-、-O-(C=O)-R2-、-R2-(C=S)-NH-、-(C=S)-NH-R2-、-R2-NH-(C=S)-、-NH-(C=S)-R2-、-R2-O-、-O-R2-、-R2-S-、又は-S-R2-で表され、ここで、R2は、それぞれ独立して、結合手、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数6〜12のアリーレン基若しくはヘテロアリーレン基、又は、置換基を有していてもよい炭素数3〜8のシクロアルキレン基若しくはヘテロシクロアルキレン基であり、
Lは、-(CH2)d-[R3-(CH2)e]f-、又は-[(CH2)e-R3]f-(CH2)d-で表わされ、ここで、R3は、酸素原子、硫黄原子、-NH-、-NH-(C=O)-又は-(C=O)-NH-であり、
TAGは、タグであり、
a及びcは、同一又は異なって、0〜6の整数であり、
bは、0又は1であり、
d及びeは、同一又は異なって、0〜12の整数であり、
fは、0〜24の整数である。)
で表される、タグ付加コレステロールが提供される。
【0091】
このタグ付加コレステロールは、上記の本実施形態の測定方法に用いるのに好適である。なお、式(III)で表されるタグ付加コレステロールの詳細については、本実施形態の測定方法で述べたことと同様である。
【0092】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0093】
実施例1
実施例1では、HDLに取り込ませたタグ付加コレステロールとHDL捕捉用抗体との複合体を固相上に形成させ、HDLに取り込まれたタグ付加コレステロールの当該タグを検出することによって、HDLのコレステロール取り込み能を測定できるか否かを検討した。
【0094】
(1.1) HDL画分の抽出
健常者(n=3)の血清(0.1 ml)に等量の22%ポリエチレングリコール4000(和光純薬工業株式会社)を混合して、懸濁液を得た。得られた懸濁液を室温にて20分間静置した後、3000 rpmで15分間室温にて遠心分離した。そして、上清をHDL画分として回収した。3名の健常者の血清から得られたHDL画分を混合し、得られた混合物(以下、「正常検体」とも呼ぶ)を4℃にて保存した。また、脂質異常症の患者(n=4)の血清についても、同様に処理してHDL画分を回収した。4名の患者の血清から得られたHDL画分を混合し、得られた混合物(以下、「異常検体」とも呼ぶ)を4℃にて保存した。本実施例1では、このようにして得た正常検体及び異常検体を生体試料として、以下の操作に用いた。
【0095】
(1.2) 固相上でのHDLと抗ApoAI抗体との複合体の形成
(i) 測定用プレートの準備(抗ApoAI抗体の固相への固定化)
固相としての96ウェルマイクロプレート(蛍光測定用黒色プレートH、住友ベークライト株式会社製)の各ウェルに50 mM Tris-HCl(pH 7.5)を200μlずつ添加して洗浄した。この洗浄操作を合計2回行った。各ウェルに、50 mM Tris-HCl(pH 7.5)で10μg/mlの濃度に希釈した抗ApoAI抗体(clone 1C5、Cat.No.MONO5030、SANBIO社)の溶液を100μlずつ添加し、4℃にて一晩以上静置した。抗体溶液を除去し、各ウェルにPBSを200μlずつ添加して洗浄した。この洗浄操作を合計3回行った。各ウェルに2%BSA/PBSを200μlずつ添加し、25℃にて600 rpmで2時間振とうした。
【0096】
(ii) 測定用試料の調製(HDLとタグ付加コレステロールとの接触)
上記の正常検体及び異常検体のそれぞれから一部を取り、ApoAI測定用キット(N-アッセイ TIA ApoAI-H、ニットーボーメディカル株式会社)を用いてApoAI濃度を測定した。ApoAI濃度は、正常検体が883μg/mlであり、異常検体が691μg/mlであった。なお、濃度測定の具体的な操作は、該キットに添付のマニュアルに従って行った。測定後、正常検体及び異常検体を反応バッファー(2%BSA及び2mM リポソーム(日本精化株式会社製)を含むPBS)で希釈して、ApoAI濃度が0.05、0.1又は0.3μg/mlのHDL画分含有希釈液を調製した。また、HDL画分を含まない対照検体(ApoAI濃度0μg/ml)として、反応バッファーを用いた。なお、反応バッファーに含まれるリポソームの組成は、2mM ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、2mM コレステロール及び4mM 水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)である。PBSは、Phosphate buffered saline tablet (Sigma-Aldrich社)を水に溶解して調製した。
【0097】
反応バッファーに、0.5 mM BODIPY付加コレステロール(TopFluor Cholesterol、AvantiPolar Lipids社)を終濃度5μMとなるように添加した後、さらに上記のHDL画分含有希釈液を全体量の1/100の量で添加した。得られた混合物を37℃にて800 rpmで2時間振とうした。得られた混合液に酸化剤(8.8 M 過酸化水素、1.76 mM 亜硝酸ナトリウム及び0.86 mMジエチレントリアミン五酢酸(DTPA))を添加した。酸化剤の添加された溶液における各成分の終濃度は、過酸化水素が1M、亜硝酸ナトリウムが200μM、DTPAが100μMである。これらの溶液を37℃にて800 rpmで1時間振とうして、BODIPY付加コレステロールを取り込ませたHDLを含む測定用試料を得た。
【0098】
(iii) コレステロールを取り込んだHDLと抗ApoAI抗体との複合体の形成
抗ApoAI抗体を固定化したプレートからBSA溶液を除去し、各測定用試料を100μlずつウェルに添加した。そして、プレートを25℃にて600 rpmで1時間振とうして、HDLと抗ApoAI抗体との複合体を形成させた。なお、本実施例1では、このようにして複合体を捕捉したプレートを2枚調製した。
【0099】
(1.3) 捕捉された複合体の量の測定及びHDLによるコレステロール取り込みの確認
上記(1.2)で調製した2枚のプレートのうちの1枚において、10 mM シクロデキストリン/PBSを100μlずつ各ウェルに添加し、該プレートを25℃にて600 rpmで30分間振とうした。そして、蛍光強度を蛍光プレートリーダー(Infinite(登録商標)200 Pro、TECAN社製)で測定した(励起光485 nm/蛍光535 nm)。測定後のプレートからシクロデキストリン溶液を除去し、各ウェルをPBSで3回洗浄した。ApoAI測定用キット(N-アッセイ TIA ApoAI-H、ニットーボーメディカル株式会社)のヤギ抗ApoAI血清をブロッキングバッファー(StartingBlock、Thermo Scientific社)で1000倍に希釈し、得られた希釈液を100μlずつ各ウェルに添加した。プレートを25℃にて600 rpmで1時間振とうした後、希釈液を除去して、各ウェルをPBSで3回洗浄した。HRP標識ウサギ抗ヤギIgGポリクローナル抗体(P0449、Dako社)をブロッキングバッファー(StartingBlock、Thermo Scientific社)で1000倍に希釈し、得られた希釈液を100μlずつ各ウェルに添加した。プレートを25℃にて600 rpmで1時間振とうした後、希釈液を除去して、各ウェルをPBSで5回洗浄した。化学発光基質溶液(SuperSignal ELISA Pico、37069、Thermo Scientific社)を100μlずつ各ウェルに添加した。プレートを25℃にて600 rpmで2分間振とうした後、発光量をマイクロプレートリーダー(Infinite(登録商標)F200 Pro、TECAN社製)で測定した。
【0100】
(1.4) 化学発光による、HDLに取り込まれたコレステロール量の測定
上記(1.2)で調製した2枚のプレートのうち、残りの1枚をPBSで5回洗浄した。ウサギ抗BODIPY抗体(BODIPY FL Rabbit IgG Fraction、A-5770、Lifetechnologies社)をPBSで100倍に希釈し、得られた希釈液を100μlずつ各ウェルに添加した。プレートを25℃にて600 rpmで1時間振とうした後、希釈液を除去して、各ウェルをPBSで5回洗浄した。HRP標識ヤギ抗ウサギIgGポリクローナル抗体(P0448、Dako社)をブロッキングバッファー(StartingBlock、Thermo Scientific社)で1000倍に希釈し、得られた希釈液を100μlずつ各ウェルに添加した。プレートを25℃にて600 rpmで1時間振とうした後、希釈液を除去して、各ウェルをPBSで5回洗浄した。化学発光基質溶液(SuperSignal ELISA Pico、37069、Thermo Scientific社)を100μlずつ各ウェルに添加した。プレートを25℃にて600 rpmで2分間振とうした後、発光量をマイクロプレートリーダー(Infinite(登録商標)F200 Pro、TECAN社製)で測定した。
【0101】
(1.5) 測定結果及び考察
上記(1.3)のサンドイッチELISA法の結果を、図1に示す。図1に示されるように、抗ApoAI抗体を固定化したプレートに捕捉された複合体の量は、測定用試料のApoAI濃度に依存して増加していた。捕捉された複合体の量は、正常検体と異常検体との間に大きな差は認められなかった。また、捕捉された複合体におけるBODIPYから生じた蛍光の強度は、捕捉した複合体の量に応じて上昇していた(図示せず)。よって、BODIPY付加コレステロールはHDLに取り込まれていることが確認できた。なお、正常検体におけるHDLのコレステロール取り込み量は、異常検体に比べて2倍以上高かった。
【0102】
上記(1.4)のサンドイッチELISA法の結果を、図2に示す。図2のグラフは、正常検体又は異常検体由来のHDL画分含有希釈液の発光量の平均値から、対照検体の発光量の平均値(バックグラウンド)を差し引いた値を表す。図2に示されるように、測定した発光量は、捕捉した複合体の量に応じて上昇していた。また、正常検体におけるHDLのコレステロール取り込み量は、異常検体に比べて約2倍高かった。この結果は、HDLに取り込まれたBODIPY付加コレステロールから生じる蛍光の測定結果と同様である。したがって、HDLのコレステロール取り込み能は、タグ付加コレステロールをHDLに取り込ませ、該HDLの外表面に露出したタグを検出することによっても測定できることが示された。
【0103】
実施例2
実施例2では、リンカーとしてのPEGを介してビオチンが付加されたコレステロールを調製した。なお、ビオチン付加コレステロールの合成スキームを以下に示す。
【0104】
【化12】
【0105】
0.05 mmolの3β-ヒドロキシ-Δ5-コレン酸(東京化成工業株式会社)と、0.075 mmolの水溶性カルボジイミド(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、同仁化学研究所)とを、0.5 mlのN, N-ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」ともいう。和光純薬株式会社)に溶解し、室温、アルゴン雰囲気下で50分間攪拌した(第1ステップ)。得られた反応液に、0.075 mmolのN-ヒドロキシスクシンイミド(Sigma社)を100μlのDMFに溶解した溶液を添加し、室温、アルゴン雰囲気下で24時間攪拌した(第2ステップ)。出発物質(3β-ヒドロキシ-Δ5-コレン酸)の溶液、第1ステップで得られた反応液、及び第2ステップで得られた反応液をそれぞれシリカゲルプレートにスポットし、展開溶媒(ヘキサン:テトラヒドロフラン(THF) = 5:5)で展開した。出発物質のRf値は0.6であり、第1ステップの生成物のRf値は0.55であり、第2ステップの生成物のRf値は0.5であった。
【0106】
第2ステップで得られた反応液に、0.075 mmolのBiotin-PEG4-Amine (Biovision社)を100μlのDMFに溶解した溶液を添加し、室温、アルゴン雰囲気下で72時間以上攪拌した(第3ステップ)。第2ステップで得られた反応液、第3ステップで得られた反応液、及びそれらの混合液をそれぞれシリカゲルプレートにスポットし、展開溶媒(クロロホルム:メタノール:THF = 9:1:1)で展開した。第3ステップの生成物(ビオチン付加コレステロール)のRf値は0.3であった。薄層クロマトグラフィー分取法によりビオチン付加コレステロールを回収した。
【0107】
実施例3
実施例1のBODIPY付加コレステロールと、実施例2のビオチン付加コレステロールとを用いてHDLによるコレステロール取り込み能を測定して、タグ付加コレステロールにおけるリンカーの効果を検討した。
【0108】
(3.1) 試料
HDL画分を含む試料として、実施例1で調製した異常検体を用いた。
【0109】
(3.2) 固相上でのHDLと抗ApoAI抗体との複合体の形成
(i) 測定用プレートの準備
実施例1と同様にして、96ウェルマイクロプレートに抗ApoAI抗体を固定化して、測定用プレートを準備した。
【0110】
(ii) 測定用試料の調製
異常検体を反応バッファー(PBS)で希釈して、ApoAI濃度が0.1μg/mlのHDL画分含有希釈液を調製した。また、HDL画分を含まない対照検体(ApoAI濃度0μg/ml)として、反応バッファーを用いた。なお、PBSは、Phosphate buffered saline tablet (Sigma-Aldrich社)を水に溶解して調製した。反応バッファーに、0.5 mM ビオチン付加コレステロールを終濃度5μMとなるように添加した後、さらに上記のHDL画分含有希釈液を全体量の1/100の量で添加した。得られた混合物を37℃にて800 rpmで2時間振とうして、ビオチン付加コレステロールを取り込ませたHDLを含む測定用試料を得た。
【0111】
(iii) コレステロールを取り込んだHDLと抗ApoAI抗体との複合体の形成
抗ApoAI抗体を固定化したプレートからBSA溶液を除去し、PBSを200μlずつ添加して洗浄した。この洗浄操作を合計3回行った。各測定用試料を100μlずつウェルに添加し、プレートを25℃にて600 rpmで1時間振とうして、HDLと抗ApoAI抗体との複合体を形成させた。なお、実施例3では、このようにして複合体を捕捉したプレートを1枚調製した。
【0112】
(3.3) 化学発光による、HDLに取り込まれたコレステロール量の測定
上記(3.2)で調製したプレートをPBSで5回洗浄した。HRP標識ストレプトアビジン(N100, Life technologies社)をブロッキングバッファー(StartingBlock、Thermo Scientific社)で3000倍に希釈し、得られた希釈液を100μlずつ各ウェルに添加した。プレートを25℃にて600 rpmで1時間振とうした後、希釈液を除去して、各ウェルをPBSで5回洗浄した。化学発光基質溶液(SuperSignal ELISA Pico、37069、Thermo Scientific社)を100μlずつ各ウェルに添加した。プレートを25℃にて600 rpmで2分間振とうした後、発光量をマイクロプレートリーダー(Infinite(登録商標)F200 Pro、TECAN社製)で測定した。
【0113】
(3.4) 捕捉された複合体の量の測定
上記(3.3)の測定の後、PBSを200μlずつ各ウェルに添加して洗浄した。この洗浄操作を合計3回行った。ApoAI測定用キット(N-アッセイ TIA ApoAI-H、ニットーボーメディカル株式会社)のヤギ抗ApoAI血清をブロッキングバッファー(StartingBlock、Thermo Scientific社)で1000倍に希釈し、得られた希釈液を100μlずつ各ウェルに添加した。プレートを25℃にて600 rpmで1時間振とうした後、希釈液を除去して、各ウェルをPBSで3回洗浄した。HRP標識ウサギ抗ヤギIgGポリクローナル抗体(P0449、Dako社)をブロッキングバッファー(StartingBlock、Thermo Scientific社)で1000倍に希釈し、得られた希釈液を100μlずつ各ウェルに添加した。プレートを25℃にて600 rpmで1時間振とうした後、希釈液を除去して、各ウェルをPBSで5回洗浄した。化学発光基質溶液(SuperSignal ELISA Pico、37069、Thermo Scientific社)を100μlずつ各ウェルに添加した。プレートを25℃にて600 rpmで2分間振とうした後、発光量をマイクロプレートリーダー(Infinite(登録商標)F200 Pro、TECAN社製)で測定した。
【0114】
(3.5) 測定結果
上記(3.4)の測定結果より、HDL及び抗ApoAI抗体を含む複合体がプレート上に形成されていることが確認できた(図示せず)。上記(3.3)の測定結果を、表1及び図4に示す。なお、表1及び図4では、比較のために、実施例1の異常検体由来のHDL画分含有希釈液(ApoAI濃度0.1μg/ml)及び対照検体におけるHDLのBODIPY付加コレステロール取り込み量のデータを並べた。表1は、異常検体由来のHDL画分含有希釈液及び対照検体における発光量の平均値(RLU)及びSDの値を示す。図4のグラフは、異常検体由来のHDL画分含有希釈液の発光量の平均値から、対照検体の発光量の平均値(バックグラウンド)を差し引いた値を表す。表1中、「BODIPY」とは、BODIPY付加コレステロールを表し、「PEG4-Biotin」とは、実施例2で調製したビオチン付加コレステロールを表し、「異常検体」とは、異常検体由来のHDL画分含有希釈液(ApoAI濃度0.1μg/ml)を表す。図4中、「リンカーなし」とは、BODIPY付加コレステロールを表し、「リンカーあり」とは、ビオチン付加コレステロールを表す。
【0115】
【表1】
【0116】
表1及び図4に示されるように、リンカーを有するビオチン付加コレステロールを用いると、バックグラウンドに対して、より高い発光量を得ることができた。よって、本実施形態の測定方法では、BODIPY付加コレステロールと同様に、リンカーを有するビオチン付加コレステロールを用いても、リポタンパク質のコレステロール取り込み能の測定が可能であることが示された。
【0117】
実施例4
様々な長さのPEGリンカーを介してビオチンを付加したコレステロールを調製した。これらのビオチン付加コレステロールと、実施例1のBODIPY付加コレステロールとを用いてHDLによるコレステロール取り込み能を測定した。
【0118】
(4.1) ビオチン付加コレステロールの調製
実施例2の第3ステップにおいて、Biotin-PEG4-Amineに代えて、EZ-Link(商標) Amine-PEG2-Biotin (Life technologies社)、Biotin-PEG7-amine (BroadPharm社)、O-(2-アミノエチル)-O'-[2-(ビオチニルアミノ)エチル]オクタエチレングリコール(Sigma Ardrich社)、又はEZ-Link(商標) Amine-PEG11-Biotin (Life technologies社)を0.075 mmol用いたこと以外は実施例2と同様にして、PEGリンカーの長さの異なるビオチン付加コレステロールを調製した。得られたビオチン付加コレステロールは、それぞれ、上記の式(V)においてnが2、7、9及び11であるタグ付加コレステロールに該当する。
【0119】
また、下記の合成スキームにしたがって、上記の式(V)においてnが3であるビオチン付加コレステロールを調製した。具体的には、4.2μmolの24-アミノ-5-コレン-3β-オル(株式会社ナード研究所に合成委託した)と、5.0μmolのBiotin-PEG3-NHS ester (BPS Bioscience社)とを、100μlのDMSO(和光純薬工業株式会社)に溶解し、室温、アルゴン雰囲気下で72時間攪拌した。得られた反応液をシリカゲルプレートにスポットし、薄層クロマトグラフィー分取法によりビオチン付加コレステロールを回収した。
【0120】
【化13】
【0121】
実施例4では、ビオチン付加コレステロールを、PEGリンカーの長さに応じて、それぞれPEG2-Biotin、PEG3-Biotin、PEG4-Biotin、PEG7-Biotin、PEG9-Biotin及びPEG11-Biotinとも呼ぶ。各ビオチン付加コレステロールのRf値及び薄層クロマトグラフィー分取法に用いた展開溶媒を、表2に示す。
【0122】
【表2】
【0123】
(4.2) 試料
HDL画分を含む試料として、実施例1で調製した異常検体を用いた。
【0124】
(4.3) 固相上でのHDLと抗ApoAI抗体との複合体の形成
(i) 測定用プレートの準備
実施例1と同様にして、96ウェルマイクロプレートに抗ApoAI抗体を固定化して、測定用プレートを準備した。
【0125】
(ii) 測定用試料の調製
実施例1と同様にして、BODIPY付加コレステロールを用いて、異常検体から測定用試料を調製した。実施例3と同様にして、PEG2-Biotin、PEG3-Biotin、PEG4-Biotin、PEG7-Biotin、PEG9-Biotin及びPEG11-Biotinのそれぞれを用いて、異常検体から測定用試料を調製した。
【0126】
(iii) コレステロールを取り込んだHDLと抗ApoAI抗体との複合体の形成
実施例3と同様にして、プレート上にHDLと抗ApoAI抗体との複合体を形成させた。なお、実施例4では、このようにして複合体を捕捉したプレートを1枚調製した。
【0127】
(4.4) HDLに取り込まれたコレステロール量及び捕捉された複合体の量の測定
BODIPY付加コレステロールについては、実施例1と同様にして、ウサギ抗BODIPY抗体及びHRP標識ヤギ抗ウサギIgGポリクローナル抗体を用いて化学発光により、HDLに取り込まれたコレステロール量を測定した。ビオチン付加コレステロールについては、実施例3と同様にして、HRP標識ストレプトアビジンを用いて化学発光により、HDLに取り込まれたコレステロール量を測定した。捕捉された複合体の量は、実施例3と同様にして測定した。
【0128】
(4.5) 測定結果
捕捉された複合体の量の測定結果より、HDL及び抗ApoAI抗体を含む複合体がプレート上に形成されていることが確認できた。HDLに取り込まれたコレステロール量の測定結果を、表3に示す。表3は、異常検体由来のHDL画分含有希釈液及び対照検体における発光量の平均値(RLU)及びSDの値を示す。表3中、「BODIPY」とは、BODIPY付加コレステロールを表し、「異常検体」とは、異常検体由来のHDL画分含有希釈液(ApoAI濃度0.1μg/ml)を表す。
【0129】
【表3】
【0130】
表3に示されるように、いずれの長さのPEGリンカーを有するビオチン付加コレステロールを用いても、バックグラウンドに対して高い発光量を得ることができた。よって、本実施形態の測定方法では、BODIPY付加コレステロールと同様に、様々な長さのリンカーを有するビオチン付加コレステロールを用いても、リポタンパク質のコレステロール取り込み能の測定が可能であることが示された。
【0131】
実施例5
実施例5では、タグとしてDNPが付加されたコレステロールを調製した。DNP付加コレステロールと、実施例1のBODIPY付加コレステロールとを用いてHDLによるコレステロール取り込み能を測定した。測定は、固相として磁性粒子を用いるELISA法により行った。
【0132】
(5.1) DNP付加コレステロールの調製
実施例2の第1ステップと同様にして、3β-ヒドロキシ-Δ5-コレン酸と水溶性カルボジイミドとをDMFに溶解して、室温、アルゴン雰囲気下で反応させた。実施例2の第2ステップと同様にして、第1ステップで得られた反応液に、DMFに溶解したN-ヒドロキシスクシンイミドの溶液を添加し、室温、アルゴン雰囲気下で反応させた。第1ステップで得られた反応液、及び第2ステップで得られた反応液をそれぞれシリカゲルプレートにスポットし、展開溶媒(ヘキサン:酢酸エチル = 4:6)で展開した。第1ステップの生成物のRf値は0.45であり、第2ステップの生成物のRf値は0.5であった。
【0133】
実施例2の第3ステップにおいて、Biotin-PEG4-Amineに代えて、N1-(2,4-ジニトロフェニル)エタン-1,2-ジアミン(Combi-Blocks社)を用いたこと以外は実施例2と同様にして、DNP付加コレステロールを調製した。なお、DNP付加コレステロールの合成スキームにおける第3ステップは、以下のとおりである。
【化14】
【0134】
第2ステップで得られた反応液、第3ステップで得られた反応液、及びそれらの混合液をそれぞれシリカゲルプレートにスポットし、展開溶媒(ヘキサン:THF = 3:7)で展開した。第3ステップの生成物(DNP付加コレステロール)のRf値は0.7であった。薄層クロマトグラフィー分取法によりDNP付加コレステロールを回収した。
【0135】
(5.2) DNP付加コレステロールの分析
回収したDNP付加コレステロールを高速液体クロマトグラフィ(HPLC)で分取精製し、得られた精製物を核磁気共鳴法(NMR)及び液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)によって分析した。JNM-ECX400P(日本電子株式会社製)を用いて、1H-NMRスペクトルを400 MHzで測定し、13C-NMRスペクトルを100 MHzで測定した。HPLC及びLC-MSの測定条件は下記のとおりである。なお、HPLCによる精製とNMR及びLC-MSによる分析は、株式会社ナード研究所に委託した。
【0136】
(HPLC)
装置: LC-2010 (株式会社島津製作所製)
カラム: Kinetex(登録商標) 5μm EVO C18 100A 4.6 x 150 mm (株式会社島津ジーエルシー製)
カラム温度:40℃
流速: 1 mL/min
移動相A: 1 mM リン酸緩衝液(pH 7.4)
移動相B: アセトニトリル(MeCN)
【0137】
【表4】
【0138】
(LC-MS)
装置
MS検出器: waters 3100 Mass Detector (Waters社製)
FAD検出器: waters 2996 Photodiode Array Detector (Waters社製)
ELSD: waters 2424 ELS Detector (Waters社製)
ポンプ: waters 2545 Binary Gradient Module (Waters社製)
SFO: waters SFO System Fluidics Organizer (Waters社製)
カラム: Atlantis(登録商標) 3.5μm 4.6 x 50 mm (Waters社製)
カラム温度:室温
流速: 2 mL/min
移動相A: 0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液
移動相B: MeCN
【0139】
【表5】
【0140】
イオン化法: ESI(エレクトロスプレーイオン化)法
Mass電圧: 30 V
Positive mode
【0141】
NMR及びLC-MSの測定結果を以下に示す。これらの結果より、式(VI)で表されるDNP付加コレステロールが得られたことがわかった。
【0142】
LC-MS m/z 583.7 [M+H]+
1H-NMR (CDCl3) δ: 9.14 (1H, d, J = 2.3 Hz), 8.74 (1H, s), 8.30 (1H, dd, J = 9.4, 2.5 Hz), 7.11 (1H, d, J = 9.6 Hz), 5.83-5.72 (1H, br m), 5.35 (1H, d, J = 5.0 Hz), 3.66-3.47 (5H, m), 2.29-2.23 (3H, m), 2.15-2.07 (1H, m), 2.00-1.94 (2H, m), 1.89-1.75 (4H, m), 1.53-1.23 (10H, m), 1.19-0.88 (12H, m), 0.66 (3H, s).
13C-NMR (CDCl3) δ: 174.8 (C), 148.4 (C), 140.7 (C),136.4 (C), 133.7 (C), 130.5 (CH),124.3 (CH), 121.6 (CH), 114.0 (CH),71.8 (CH), 56.7 (CH), 55.7 (CH),50.0 (CH), 43.0 (CH2), 42.4 (CH2), 42.3 (C), 39.7 (CH2), 38.5 (CH2), 37.2 (CH2), 36.5 (C),35.5 (CH), 33.4 (CH2), 31.9 (CH), 31.8 (CH2), 31.6 (CH2), 28.2 (CH2), 24.2 (CH2), 22.9 (CH), 21.0 (CH), 19.4 (CH3), 18.4 (CH3), 11.8 (CH3).
【0143】
(5.3) 固相上でのHDLと抗ApoAI抗体との複合体の形成
(i) 測定用試料の調製
実施例1の異常検体を反応バッファー(PBS)で希釈して、ApoAI濃度が0.2μg/mlのHDL画分含有希釈液を調製した。また、HDL画分を含まない対照検体(ApoAI濃度0μg/ml)として、反応バッファーを用いた。なお、PBSは、Phosphate buffered saline tablet (Sigma-Aldrich社)を水に溶解して調製した。反応バッファーに、0.5 mM DNP付加コレステロール又は0.5 mM BODIPY付加コレステロール(TopFluor Cholesterol、AvantiPolar Lipids社)を終濃度5μMとなるように添加した後、さらに上記のHDL画分含有希釈液を全体量の1/100の量で添加した。得られた混合物を37℃にて800 rpmで2時間振とうして、測定用試料を得た。
【0144】
(ii) コレステロールを取り込んだHDLと抗ApoAI抗体との複合体の形成
測定用試料を30μl取り、別のチューブに移した。ここに、2.5 ng/μlビオチン化ApoAI抗体(抗ApoA1抗体(SANBIO社)を2-メルカプトエチルアミン塩酸塩(ナカライテスク)で還元し、Biotin-PEAC5-maleimide(Dojindo)で標識して得た)を30μl添加して、42℃で12分間反応させた。ここに、HISCL磁性粒子(シスメックス株式会社)を30μl添加して、42℃で10分間反応させた。HISCL磁性粒子の表面にはアビジンが固定されているので、複合体中のビオチン化抗ApoAI抗体は磁性粒子の表面に結合する。反応液中の磁性粒子を集磁して上清を除去し、HISCLライン洗浄液(シスメックス株式会社)を添加して、磁性粒子を洗浄した。この洗浄操作をさらに2回行った。そして、磁性粒子を集磁して上清を除去した。
【0145】
(5.4) 化学発光による、HDLに取り込まれたコレステロール量の測定
(i) DNP付加コレステロール量の測定
DNP付加コレステロールを取り込んだHDLを有する磁性粒子には、333 ng/μl ALP標識抗DNP抗体(抗DNP抗体(北山ラベス株式会社に作製委託した)を、ALP Labeling Kit-SH (Dojindo)を用いてALP標識して得た)を100μl添加して、42℃で10分間反応させた。反応液中の磁性粒子を集磁して上清を除去し、HISCLライン洗浄液(シスメックス株式会社)を添加して、磁性粒子を洗浄した。この洗浄操作をさらに2回行った。磁性粒子を別のチューブに移し、磁性粒子を集磁して上清を除去した。そして、HISCL発光基質(シスメックス株式会社)のR4試薬を50μlとR5試薬を100μl添加し、42℃で5分間反応させた。反応後、磁性粒子を集磁して上清を96ウェルプレートに移し、発光量をマイクロプレートリーダー(Infinite(登録商標)F200 Pro、TECAN社製)で測定した。
【0146】
(ii) BODIPY付加コレステロール量の測定
BODIPY付加コレステロールを取り込んだHDLを有する磁性粒子には、実施例1と同様にウサギ抗BODIPY抗体(Lifetechnologies社)の希釈液を100μl添加して、25℃で60分間反応させた。反応液中の磁性粒子を集磁して上清を除去し、HISCLライン洗浄液(シスメックス株式会社)を添加して、磁性粒子を洗浄した。この洗浄操作をさらに2回行い、磁性粒子を集磁して上清を除去した。磁性粒子に、実施例1と同様にHRP標識ヤギ抗ウサギIgGポリクローナル抗体(Dako社)の希釈液を100μl添加して、25℃で60分間反応させた。反応後、HISCLライン洗浄液(シスメックス株式会社)による磁性粒子の洗浄を3回行った。磁性粒子を別のチューブに移し、磁性粒子を集磁して上清を除去した。そして、化学発光基質溶液(SuperSignal ELISA Pico、37069、Thermo Scientific社)を100μl添加し、25℃で2分間反応させた。反応後、磁性粒子を集磁して上清を96ウェルプレートに移し、発光量をマイクロプレートリーダー(Infinite(登録商標)F200 Pro、TECAN社製)で測定した。
【0147】
(5.5) 測定結果
測定結果を、図5に示す。図5に示されるように、BODIPY付加コレステロール及びDNP付加コレステロールのいずれを用いても、バックグラウンドに対して高い発光量を得ることができた。本実施形態の測定方法では、BODIPY付加コレステロールと同様に、DNP付加コレステロールを用いても、リポタンパク質のコレステロール取り込み能の測定が可能であることが示された。
【0148】
本出願は、2015年5月29日に出願された日本国特許出願特願2015−110510号、2015年9月30日に出願された日本国特許出願特願2015−193648号、2015年10月20日に出願された日本国特許出願特願2015−206422号及び2016年3月9日に出願された日本国特許出願特願2016−046069号に関し、これらの特許請求の範囲、明細書、図面及び要約書の全ては本明細書中に参照として組み込まれる。
【符号の説明】
【0149】
11:第1容器
22:第2容器
33:第3容器
44:第4容器
55:第5容器
66:固相(96ウェルマイクロプレート)
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5