(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の前記光源(81a,81b,81c)は、車幅方向外側に向かうほど車体後方側に配設されることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の鞍乗型車両のコーナリングライト。
前記コーナリングライト(60)が、前記鞍乗型車両(1)のヘッドライト(12)の下方に配設されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の鞍乗型車両のコーナリングライト。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、車体のリーン角度が大きくなるほど車幅方向外側に位置する光源が点灯するようにする構成は、リーン角度に応じてヘッドライトが路面に近づくことで小さくなる照射範囲を補うために有効である。しかし、交差点の右左折等では、横断歩道を渡ろうとする歩行者を確認したり外方からの被視認性を高めるため、リーン角度が小さくても旋回方向に広い照射範囲が得られることが好ましい。この点、特許文献1では、片側3灯のコーナリングライトがそれぞれ同一構造とされており、リーン角度が小さい状態で点灯する光源による照射範囲を他の光源より旋回方向に広く設定することは検討されていなかった。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、リーン角度が小さい場合でも旋回方向に広い照射範囲を得ることができる鞍乗型車両のコーナリングライトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、鞍乗型車両(1)のリーン角度に応じて光源(81a,81b,81c)を点灯して旋回方向を照射する鞍乗型車両のコーナリングライト(60)において、前記光源(81a)が路面(G)を照射することで形成される照射範囲(B1)が、車体前方に延出する主膨出部(C1)と、前記主膨出部(C1)の車体後方寄りの位置から車幅方向外側に延出する副膨出部(C2)とを有する点に第1の特徴がある。
【0008】
また、前記コーナリングライト(60)は、前記鞍乗型車両(1)のリーン角度に応じて点灯箇所が変化する複数の光源(81)を有しており、複数の前記光源(81a,81b,81c)のうち、最も小さいリーン角度で点灯する光源(81a)によって形成される照射範囲(B1)のみが、前記副膨出部(C2)を有する点に第2の特徴がある。
【0009】
また、前記コーナリングライト(60)は、略水平方向に並ぶ少なくとも片側2つの前記光源(81a,81b,81c)を車幅方向に一対で有しており、前記最も小さいリーン角度で点灯する光源(81a)は、車幅方向外側寄りに配設される第1光源であり、前記第1光源(81a)より車幅方向内側に配設される第2光源(81b)は、前記第1光源(81a)が点灯するリーン角度より大きなリーン角度で点灯するように構成されており、前記第2光源(81b)による第2照射範囲(B2)の車幅方向外側の外縁(D2)が、前記第1光源(81a)による主膨出部(C1)の車幅方向外側の外縁(D1)より車幅方向外側に位置する点に第3の特徴がある。
【0010】
また、前記コーナリングライト(60)が、前記第2光源(81b)が点灯するリーン角度より大きなリーン角度で点灯する第3光源(81c)を備え、前記第3光源(81c)による第3照射範囲(B3)の車幅方向外側の外縁(D3)が、前記第2光源(81b)による第2照射範囲(B2)の車幅方向外側の外縁(D2)より車幅方向外側に位置する点に第4の特徴がある。
【0011】
また、複数の前記光源(81a,81b,81c)は、車幅方向外側に向かうほど車体後方側に配設される点に第5の特徴がある。
【0012】
また、前記コーナリングライト(60)が、前記鞍乗型車両(1)のヘッドライト(12)の下方に配設されている点に第6の特徴がある。
【0013】
さらに、前記コーナリングライト(60)は、略水平方向に並ぶ少なくとも片側2つの前記光源(81a,81b,81c)を車幅方向に一対で有しており、前記最も小さいリーン角度で点灯する光源(81a)は、車幅方向外側寄りに配設される第1光源であり、前記第1光源(81a)より車幅方向内側に配設される第2光源(81b)は、前記第1光源(81a)が点灯するリーン角度より大きなリーン角度で点灯するように構成されており、前記第2光源(81b)が点灯するリーン角度より大きなリーン角度で点灯する第3光源(81c)を備え、前記第1光源(81a)による第1照射範囲(B1)の車幅方向内側の外縁(E1)、前記第2光源(81b)による第2照射範囲(B2)の車幅方向内側の外縁(E2)および前記第3光源(81c)による第3照射範囲(B3)の車幅方向内側の外縁(E3)が、互いに重なるように形成される点に第7の特徴がある。
【発明の効果】
【0014】
第1の特徴によれば、鞍乗型車両(1)のリーン角度に応じて光源(81a,81b,81c)を点灯して旋回方向を照射する鞍乗型車両のコーナリングライト(60)において、前記光源(81a)が路面(G)を照射することで形成される照射範囲(B1)が、車体前方に延出する主膨出部(C1)と、前記主膨出部(C1)の車体後方寄りの位置から車幅方向外側に延出する副膨出部(C2)とを有するので、1つの光源を点灯することで、車体前方および車幅方向外側を同時に照射するコーナリングライトを得ることができる。これにより、リーン角度の小さな高速コーナリング時には、主膨出部によって旋回方向を適切に照射しつつ、交差点の右左折等においてリーン角度が小さい場合にも、車幅方向外側に延出する副膨出部によって歩行者等の確認がしやすく、他者からの被視認性も高められることとなる。
【0015】
第2の特徴によれば、前記コーナリングライト(60)は、前記鞍乗型車両(1)のリーン角度に応じて点灯箇所が変化する複数の光源(81)を有しており、複数の前記光源(81a,81b,81c)のうち、最も小さいリーン角度で点灯する光源(81a)によって形成される照射範囲(B1)のみが、前記副膨出部(C2)を有するので、必要な部分のみに副膨出部を設けることで、照射範囲の最適化を図ることができる。これにより、リーン角度が小さい場合に、主膨出部で車体前方を照射すると共に副膨出部で車幅方向外側を照射することが可能となる。
【0016】
第3の特徴によれば、前記コーナリングライト(60)は、略水平方向に並ぶ少なくとも片側2つの前記光源(81a,81b,81c)を車幅方向に一対で有しており、前記最も小さいリーン角度で点灯する光源(81a)は、車幅方向外側寄りに配設される第1光源であり、前記第1光源(81a)より車幅方向外側に配設される第2光源(81b)は、前記第1光源(81a)が点灯するリーン角度より大きなリーン角度で点灯するように構成されており、前記第2光源(81b)による第2照射範囲(B2)の車幅方向外側の外縁(D2)が、前記第1光源(81a)による主膨出部(C1)の車幅方向外側の外縁(D1)より車幅方向外側に位置するので、リーン角度が大きくなる高速時や急カーブを走行する際には、第1光源より車幅方向外側に位置する第2光源によって旋回方向を適切に照射することができる。
【0017】
第4の特徴によれば、前記コーナリングライト(60)が、前記第2光源(81b)が点灯するリーン角度より大きなリーン角度で点灯する第3光源(81c)を備え、前記第3光源(81c)による第3照射範囲(B3)の車幅方向外側の外縁(D3)が、前記第2光源(81b)による第2照射範囲(B2)の車幅方向外側の外縁(D2)より車幅方向外側に位置するので、片側3つの光源を備えることで、コーナリングライトによる照射範囲をリーン角度に応じて3段階に切り替えることが可能となる。
【0018】
第5の特徴によれば、複数の前記光源(81a,81b,81c)は、車幅方向外側に向かうほど車体後方側に配設されるので、車幅方向外側の光源によっても車体近傍に広い照射範囲を確保しやすくなる。また、車体平面視におけるコーナリングライトの外形を、車幅方向中央から左右に向かって車体後方側に傾斜する略V字型とすることで、デザイン性が高く車幅方向中央に収まりやすいコーナリングライトが得られる。
【0019】
第6の特徴によれば、前記コーナリングライト(60)が、前記鞍乗型車両(1)のヘッドライト(12)の下方に配設されているので、コーナリングライトによって車体近傍を照射する場合でも、ヘッドライトの照射光と干渉しにくく、効率のよい照射が可能となる。
【0020】
第7の特徴によれば、前記コーナリングライト(60)は、略水平方向に並ぶ少なくとも片側2つの前記光源(81a,81b,81c)を車幅方向に一対で有しており、前記最も小さいリーン角度で点灯する光源(81a)は、車幅方向外側寄りに配設される第1光源であり、前記第1光源(81a)より車幅方向内側に配設される第2光源(81b)は、前記第1光源(81a)が点灯するリーン角度より大きなリーン角度で点灯するように構成されており、前記第2光源(81b)が点灯するリーン角度より大きなリーン角度で点灯する第3光源(81c)を備え、前記第1光源(81a)による第1照射範囲(B1)の車幅方向内側の外縁(E1)、前記第2光源(81b)による第2照射範囲(B2)の車幅方向内側の外縁(E2)および前記第3光源(81c)による第3照射範囲(B3)の車幅方向内側の外縁(E3)が、互いに重なるように形成されるので、第1照射範囲、第2照射範囲および第3照射範囲の互いのずれが小さくなり、光源の点灯箇所が切り替わったことを運転者に強く感じさせることなく、適切な位置を照射することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両のコーナリングライト60を適用した自動二輪車1の左側面図である。自動二輪車1は、動力源としてのエンジンEの駆動力をドライブチェーン21によって後輪WRに伝達して走行するデュアルパーパスタイプの鞍乗型車両である。車体フレームFを構成する左右一対のメインフレームF2の車体前方端部には、不図示のステアリング軸を揺動自在に軸支するヘッドパイプF1が設けられている。前輪WFを回転自在に軸支する左右一対のフロントフォーク13は、ヘッドパイプF1の上下でステアリング軸に固定されたトップブリッジ6およびボトムブリッジ11によって支持されている。トップブリッジ6に固定される操向ハンドル4には、左右一対のバックミラー5およびナックルガード22が取り付けられている。
【0023】
操向ハンドル4の前方は、ヘッドライト12およびスクリーン8を支持するフロントカウル9で覆われている。フロントカウル
9と操向ハンドル4との間には、左右一対の前側ウインカ装置16aが配設されている。ヘッドライト12の下方には、自動二輪車1のコーナリング時にそのリーン角度に応じて点灯して旋回方向を照射するコーナリングライト60が配設されている。フロントフォーク13には、前輪WFの上部を覆うフロントフェンダ14が固定されている。フロントカウル9の側方および前方には、フロントバンパ33が配設されている。
【0024】
エンジンEはメインフレームF2の下部に配設されており、エンジンEの下部には、クランクケース37や排気管36の前部を保護するアンダカバー34と、クランクケース37の側部を保護するエンジンバンパ35が配設されている。エンジンEの燃焼ガスは、排気管36を介して車幅方向右側のマフラ24から排出される。
【0025】
メインフレームF2の後端下部には、後輪WRを回転自在に軸支するスイングアーム20のピボット18を支持する左右一対のピボットフレームF3が連結されている。ピボット18は、スイングアーム20の前端部を揺動自在に軸支している。スイングアーム20は、ピボット18の後方の位置でリヤクッション19によってメインフレームF2に吊り下げられている。ピボットフレームF3の下端部には、左右一対の足乗せステップ23が取り付けられている。車幅方向左側の足乗せステップ23の後方には、サイドスタンド70が揺動可能に軸支されている。スイングアーム20の上部には、ドライブチェーン21の上方を覆うチェーンカバー39が取り付けられている。
【0026】
ピボットフレームF3の前方で、メインフレームF2とエンジンEとの間の位置には、車載バッテリ等を収納する電装品ボックス30が配設されている。電装品ボックス30の上方で左右のメインフレームF2の間の位置には、車体のリーン角度を検知するリーン角度センサ17aが配設されている。後輪WRの車軸近傍には、後輪WRの回転速度に基づいて車速を検知する車速センサ17bが配設されている。
【0027】
メインフレームF2の上部には燃料タンク2が配設されており、メインフレームF2の後部には、車体後方上方に延びるシートフレームSFが連結されている。シートフレームSFの下部には、タンデムステップ32を支持するタンデムステップホルダ31が左右一対で取り付けられている。
【0028】
燃料タンク2の後方には、シートフレームSFに支持される前側シート7および後側シート29が配設されている。シートフレームSFの車幅方向外側はリヤカウル28で覆われており、後側シート29の車幅方向外側には、シートフレームSFに支持されるリヤキャリア27が配設されている。リヤカウル28の後方には、尾灯装置26およびリヤフェンダ25が配設されており、リヤフェンダ25の基部には、左右一対の後側ウインカ装置16bが配設されている。
【0029】
図2は、自動二輪車1の一部拡大正面図である。フロントカウル9には、車幅方向中央にヘッドライト12を臨ませる上側開口9aと、ヘッドライト12の下方の位置にコーナリングライト60を臨ませる左右一対の下側開口9bとが形成されている。車体を右側にリーンさせた際には、右側の下側開口9bに臨む右側発光部15Rが点灯し、車体を左側にリーンさせた際には、左側の下側開口9bに臨む左側発光部15Lが点灯するように構成されている。ヘッドライト12およびコーナリングライト60は、フロントカウル9の背面側に取り付けられるヘッドライトユニット40に収納されている。
【0030】
図3は、ヘッドライトユニット40の正面図である。また、
図4はアウタレンズ42を取り外した状態のヘッドライトユニット40の正面図である。ヘッドライトユニット40は、合成樹脂等からなるハウジング41にヘッドライト12およびコーナリングライトユニット60を収納し、ハウジング41の前方側を一体成形されたアウタレンズ42で覆った構成とされる。
【0031】
左右2灯式のヘッドライト12は、左右対称形状のヘッドライトリフレクタ43と、ヘッドライトリフレクタ43の下縁部に沿って湾曲する円形断面の導光部材44と、導光部材44の前方に近接配置されて導光部材44の照射光で面発光する左右一体成形の導光板47とを有する。導光部材44の上端部には、導光部材用光源50が近接配設されている。導光部材44および導光板47は、それぞれ無色透明または有色透明の合成樹脂等で形成することができる。導光部材用光源50は、LED(発光ダイオード)等で構成することができる。なお、
図4では、車幅方向左側のヘッドライトリフレクタ43を取り外した状態を示している。
【0032】
リフレクタ43の上部には、ヘッドライト用光源としてのロービーム用光源55aを実装するロービーム用基板55と、ハイビーム用光源56aを実装するハイビーム用基板56とが近接配置されている。ヘッドライトリフレクタ43には、各光源の照射光を車体前方に反射するロービーム用リフレクタ45およびハイビーム用リフレクタ46が設けられている。両リフレクタ45,46の上部には、車体前方に向かって延設する庇部材43aが接続されており、この庇部材43aに、両光源を臨ませる開口(不図示)が形成されている。また、ハウジング41の車幅方向中央の上部には、ロービーム用光源55aおよびハイビーム用光源56aの点灯制御を行うヘッドライトドライバ59が配設されている。
【0033】
ヘッドライト12の下方には、左右一体式のケース90を有するコーナリングライトユニット60(以下、単にコーナリングライト60と示すこともある)が配設されている。ケース90の車幅方向中央の上部は、中央軸51によってハウジング41に支持されている。
【0034】
左右対称形状のケース90には、片側3個の光源がそれぞれ下方に臨む3つの開口71,72,73と、各光源の照射光をそれぞれ車体前方側に反射する3つのコーナリングライトリフレクタ61,62,63(以下、単にリフレクタ61,62,63と示すこともある)が形成されている。ヘッドライト用光源およびコーナリングライト用光源は、それぞれ、LEDによって構成することができる。
【0035】
図5は、アウタレンズ42を取り外したヘッドライトユニット40を車体上方側から見た斜視図である。また、
図6はヘッドライトユニット40を車体下方側から見た斜視図である。ハウジング41の後壁の略中央には、ヘッドライト12に電力を供給するハーネス58が導入される。ハーネス58の前方には、階段状に折り曲げられた薄板材からなる目隠し部材57(
図5では右側半分のみを図示している)が配設されている。
【0036】
片側3つのリフレクタを構成する第1リフレクタ61、第2リフレクタ62および第3リフレクタ63は、車幅方向外側に向かうにつれて車体後方側に位置するように形成されている。これにより、車体平面視におけるコーナリングライト60の外形を、車幅方向中央から左右に向かって車体後方側に傾斜する略V字型とすることで、デザイン性が高く車幅方向中央に収まりやすいコーナリングライト60を得ることができる。
【0037】
車幅方向外側の第1リフレクタ61には、車体後方側に向かって凸をなす湾曲面の車体中央側の端部で、光源の照射光を車幅方向外側に反射する外側反射部61aが設けられている。各リフレクタ61,62,63の上方には、開口71,72,73から下方に臨むコーナリングライト用光源を実装する基板80が配設されている。
【0038】
図6を参照して、ヘッドライト12は、調整ノブ49の操作によってハウジング41に対する保持角度を調整可能なベース部材48に固定されている。これにより、調整ノブ49を操作することでヘッドライト12の光軸調整が可能となる。一方、コーナリングライト60のケース90は、車幅方向中央の中央軸51および左右一対の支持部64によってハウジング41に支持されており、中央軸51および支持部64に設けられるねじ機構によって光軸調整が可能に構成されている。
【0039】
コーナリングライト60は、片側3つのリフレクタ61,62,63を車幅方向外側に向かうにつれて車体後方側に位置するように構成することで、ケース90の後面とハウジング41との間に所定のスペースを有している。本実施形態では、このスペースを利用して、コーナリングライト用光源81a,81b,81cの点灯制御を行うコーナリングライトドライバ83(以下、単にドライバ83と示すこともある)を配設している。また、ドライバ83の車幅方向左側のハウジング41には、コーナリングライト60に電力を供給するハーネス84が導入される。ドライバ83およびハーネス84の車体前方にはケース90が位置するため、車体外方からドライバ83およびハーネス84が視認されることはない。
【0040】
図7は、コーナリングライト60を車体前方側から見た斜視図である。また、
図8はコーナリングライト60を車体後方側から見た斜視図である。第1リフレクタ61に対応する第1光源81a、第2リフレクタ62に対応する第2光源81b、第3リフレクタ63に対応する第3光源81cは、車体正面視で略水平方向に並べられている。これにより、複数の光源が略水平方向に並んで一体のケース90に収められることで、コーナリングライト60の小型化を図ることができる。また、図示においては、各光源をそれぞれ独立した基板80に実装しているが、各光源が水平方向に並ぶことから、複数の光源を同一基板に実装することが容易となり、これにより、部品点数の低減を図ることができる。
【0041】
また、第1光源81a、第2光源81bおよび第3光源81cが、車幅方向外側に向かうにつれて車体後方側に配設されることから、車幅方向外側の光源によって車両近傍にて車幅方向外側を照らす際に必要な照射光が得ることが容易となる。本実施形態では、自動二輪車1のリーン角度が小さい場合に点灯する光源が車幅方向で最も外側に位置するように構成されている。これにより、リーン角度が小さい場合に車両近傍にて車幅方向外方の路面を照射することが容易となる。
【0042】
第1光源81a、第2光源81bおよび第3光源81cは、平面部を車体上下方向に指向して配設された基板80の下面に実装されており、各光源81a,81b,81cの照射光は、基板80の下方に配設されるリフレクタ61,62,63によって車体前方に反射されるので、車体外方から各光源81a,81b,81cが視認しにくくなり、コーナリングライト60の外観性を高めることが可能となる。また、中央軸51を支持する上方突出部65は、フロントカウル9の中央部で覆われるため、車両が完成した状態で外観されることはない。各リフレクタ61,62,63の下端部からは、車体前方に延びて照射範囲の下縁を構形成する平面部94が形成されている。
【0043】
また、コーナリングライト60は、ハウジング41に着脱可能に固定されている。これにより、ヘッドライトを組み立てる際に、コーナリングライト60を有する仕様と有しない仕様とを容易に作り分けることが可能となる。また、コーナリングライト60を有しない仕様でもヘッドライトユニット40の形状が変わらないため、ヘッドライト12とコーナリングライト60とを別体式とする構成に比して、車体デザインの自由度を高めることができる。
【0044】
図9は、コーナリングライト60の点灯制御システムの構成を示すブロック図である。ECU100には、ライト点灯制御部102と、コーナリングライト点灯判定部101が含まれる。ヘッドライト12を常時点灯式とする場合は、IGスイッチ
103のオン操作に伴ってライト点灯制御部102がヘッドライトドライバ59に駆動指令を伝達する。コーナリングライト点灯判定部101は、ライト点灯制御部102の駆動中にのみコーナリングライト用光源81a,81b,81cの点灯判定を行う。
【0045】
コーナリングライト点灯判定部101は、リーン角度センサ17aで検知されるリーン角度θおよび車速センサ17bで検知される車速Vに応じて、車速Vが所定値以上でかつリーン角度が所定値以上である場合に、いずれかのコーナリングライト用光源81a,81b,81cを点灯させる。具体的には、車速が5km/h以上でリーン角度θが10度以上20度未満の場合には第1光源81aを点灯させ、車速が5km/h以上でリーン角度θが20度以上30度未満の場合には第1光源81aおよび第2光源81bの2つを点灯させ、車速が5km/h以上でリーン角度θが30度以上の場合には3つの光源81a,81b,81cを点灯させるように構成できる。
【0046】
なお、上記した点灯判定は、リーン角度が大きくなるにつれて、車幅方向内側から外側に向かって点灯個数が増していくものであるが、例えば、点灯個数を1つに固定してリーン角度が大きくなるにつれて点灯位置のみが切り替わる構成としたり、また、第2光源81bの点灯に伴って第1光源81aを減光するように構成してもよい。この場合、第3光源81cの点灯に伴って、第2光源81bを減光すると共に第1光源81aを消灯するように構成してもよい。
【0047】
図10は、コーナリングライト60による照射イメージを示す説明図である。コーナリング走行時に車体がリーンすると、ヘッドライト12によって路面Gに形成される照射範囲Aが、旋回方向とは反対側に移動することとなる。本実施形態に係るコーナリングライト60は、ヘッドライト12とは別個独立した光源によって、コーナリング走行時に不足する旋回方向の照射範囲を補うものである。この図では、右コーナーで車体が右側にリーンした際に、コーナリングライト60によって旋回方向に照射範囲Bを形成した状態を示している。
【0048】
図11は、ヘッドライト12による照射範囲A1および第1光源81aによる第1照射範囲B1の形状を示す説明図である。ヘッドライト12は、車体上方寄りの高い位置から車体前方下方に向かって照射光を照射するので、車体が右側にリーンすると、路面Gに形成される照射範囲A1が左方向に移動すると共に、その外縁r1も左方向に傾斜することとなる。
【0049】
本実施形態では、車幅方向内側の第1光源81aによる照射範囲B1が、車体前方に延出する主膨出部C1と、主膨出部C1の車体後方寄りの位置から車幅方向外側に延出する副膨出部C2とを有している。車体前方に延出する楕円状の主膨出部C1においても、その右側縁部D1がヘッドライト12の照射範囲A1よりも右側に位置して旋回方向の照射範囲を補っているが、主膨出部C1の右側縁部D1からほぼ車幅方向に延出する副膨出部C2は、より積極的に車幅方向外側に指向することで、主膨出部C1とは異なる役割を果たす。
【0050】
副膨出部C2は、主に、第1光源81aに対応する第1リフレクタ61の形状および第1リフレクタ61の端部に設けられる外側反射部61aによって形成される。このような副膨出部C2を形成することで、車体前方および車幅方向外側を同時に照射することが可能となる。これにより、リーン角度の小さな高速コーナリング時には、主膨出部C1によって旋回方向を適切に照射しつつ、交差点の右左折等においてリーン角度が小さい場合にも、車幅方向外側に延出する副膨出部C2によって歩行者等の確認がしやすく、他者からの被視認性も高められることとなる。また、コーナリングライト60がヘッドライト12の下方に配設されているため、コーナリングライト60で車体近傍を照射する場合でも、ヘッドライト12の照射光と干渉しにくく、効率のよい照射が可能となる。
【0051】
図12は、ヘッドライト12による照射範囲A2および第2光源81bによる第2照射範囲B2の形状を示す説明図である。リーン角度が20度以上30度未満となることで、ヘッドライト12による照射範囲A2は、
図11の状態に比してより左方向に移動すると共に、その外縁r2もより左方向に傾斜することとなる。
【0052】
一方、第2光源81bによる第2照射範囲B2は、車体前方に延出する形状とされ、第1照射範囲B1のような副膨出部を有しない。第2照射範囲B2は、第1照射範囲B1より右側に位置しており、その右側縁部D2も第1照射範囲B1の右側縁部D1より右側に位置することとなる。
【0053】
図13は、ヘッドライト12による照射範囲
A3および第3光源81cによる第3照射範囲B3の形状を示す説明図である。車体のリーン角度が30度以上となることで、ヘッドライト12による照射範囲A3が、
図12の状態に比してより左方向に移動すると共に、その外縁r3もより左方向に傾斜することとなる。
【0054】
第3光源81cによる第3照射範囲B3は、第2照射範囲B2と同様に車体前方に延出する形状とされ、第1照射範囲B1のような副膨出部を有しない。第3照射範囲B3は、第2照射範囲B2より右側に位置しており、その右側縁部D3も第2照射範囲B2の右側縁部D2より右側に位置することとなる。
【0055】
図14は、第1照射範囲B1、第2照射範囲B2および第3照射範囲B3の形状比較図である。本実施形態では、第1照射範囲B1にのみ副膨出部C2を設けることで、必要な部分のみに副膨出部を設けて照射範囲の最適化を図っている。副膨出部C2の右側縁部D4は、第3照射範囲B3の右側縁部D3より右側に位置しており、リーン角度が小さい場合でも車体近傍の右側を照射することを可能とする。なお、上記したコーナリングライト60の照射範囲は、車幅方向左側にも同様に適用されている。
【0056】
また、第1光源81aによる主膨出部C1の右側縁部D1より第2照射範囲B2の右側縁部D2の方が右側に位置し、かつ、第2照射範囲B2の右側縁部
D2より第3照射範囲B3の右側縁部D3の方が右側に位置することで、リーン角度が大きくなるにつれてより旋回方向側を効率よく照射することを可能としている。
【0057】
さらに、コーナリングライト60のケース90において、第1光源81a,第2光源81b,第3光源81cが、車幅方向外側に向かうほど車体後方側に配設されることで、リーン角度が大きくなると点灯する車幅方向外側の光源によっても車体近傍側に広い照射範囲を確保しやすくなる。また、車体平面視におけるコーナリングライトの外形を、車幅方向中央から左右に向かって車体後方側に傾斜する略V字型とすることで、デザイン性が高く車幅方向中央に収まりやすいコーナリングライトが得られる。
【0058】
図15は、本発明の変形例に係るコーナリングライトの照射範囲を示す説明図である。本変形例では、第1光源81aによる第1照射範囲B1の車幅方向内側の外縁E1、第2光源81bによる第2照射範囲B2の車幅方向内側の外縁E2および第3光源81cによる第3照射範囲B3の車幅方向内側の外縁E3が重なると共に、車幅方向外側の縁部の形状のみが異なるように構成されている点に特徴がある。これにより、照射範囲のずれが小さくなり、光源の点灯箇所が切り替わったことを運転者に強く感じさせることなく適切な位置を照射することが可能となる。
【0059】
本変形例では、車速が5km/h以上でリーン角度θが10度以上20度未満の場合には第1光源81aを点灯させ、車速が5km/h以上でリーン角度θが20度以上30度未満の場合には第2光源81bを点灯させ、車速が5km/h以上でリーン角度θが30度以上の場合には第3光源81cを点灯させるように設定される。
【0060】
第1光源81aによる第1照射範囲B1は、前記実施形態と同様に、車体前方に延出する主膨出部C1と、主膨出部C1の車体後方寄りの位置から車幅方向外側に延出する副膨出部C2とを有しており、特にリーン角度が小さい場合に車両近傍の車幅方向外方が照射しやすいように構成される。一方、第2照射範囲B2および第3照射範囲B3においては、リーン角度が大きくなるにつれて車幅方向外方を照射する部分が段階的に小さくなるように設定され、照射範囲形状の最適化が図られている。
【0061】
なお、自動二輪車の構成、ヘッドライトの形状や構造、ハウジングの形状や構造、コーナリングライトの配設位置、ケースやリフレクタの形状や構造、基板の形状や構造、光源の個数や配設位置、コーナリングライトによる照射範囲の形状等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。例えば、本発明に係るコーナリングライトは、自動二輪車に限られず、車体をリーンさせて走行する三輪車等に適用することが可能である。