(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態における運転支援装置1のシステム構成図である。
運転支援装置1は、運転支援制御部100、外界センサ200、車両センサ300、車載ネットワーク400、401、ヒューマンマシンインタフェース(以下、HMIと表記)500、パワーステアリング601、変速機602、エンジン603、ブレーキ604を備える。
【0010】
運転支援制御部100は、外界認識部110、経路算出部120、衝突判定部130、自車位置推定部140を備える。
外界認識部110は、後述する外界センサ200から入力される情報を用いて、車両が駐車可能な空間や、車両周囲の障害物を認識する。また外界認識部110は、外界センサ200から入力される情報を、外界認識部110内のメモリである障害物マップ111に蓄積する。
【0011】
経路算出部120は、車両センサ300の操舵角センサ302から入力される現在の舵角値に対応する旋回半径を有する円軌道を算出する。
衝突判定部130は、外界認識部110から入力される車両周囲の障害物の情報と、経路算出部120から入力される円軌道の情報を用いて、車両が円軌道上を走行したと仮定した場合に障害物と衝突するか否かを判定する。
【0012】
自車位置推定部140は、車両センサ300の車輪速センサ301から入力される車輪速、および操舵角センサ302から入力される操舵角を用いて、自車の位置座標とヨー角からなる自車位置情報を算出する。
外界センサ200は、車両の外界の空間や障害物、路面の標示を検知し、検知した情報を外界認識部110へ出力する。具体的にはカメラ、ソナー、レーダなど、もしくはこれらの組合せより成るが、本実施形態ではその種類を限定しない。
【0013】
外界センサ200と外界認識部110とは、外界センサ200の種類によって、後述の車載ネットワーク400を介して接続される場合や、専用のインタフェースを経由して直接接続される場合があるが、本実施形態ではその接続形態を限定しない。
車両センサ300は、車両の状態を検知する各種センサの総称であり、本実施形態の構成においては、少なくとも、車両の車輪速を検知する車輪速センサ301、車両の操舵角を検知する操舵角センサ302を含む。
【0014】
車載ネットワーク400は、運転支援制御部100と、車両センサ300、外界センサ200とを接続するネットワークである。車載ネットワーク401は、運転支援制御部100と、パワーステアリング601、変速機602、エンジン603、ブレーキ604などを制御する図示省略した制御部とを接続するネットワークである。各車載ネットワーク400、401に接続される各構成要素の間では、相互に通信が可能である。車載ネットワーク400および401はCAN(Controller Area Network)規格に準拠するが、必ずしも同規格に準拠するものでなくても良い。
【0015】
HMI500は、操作部501、表示部502、スピーカ503を具備し、運転者もしくは同乗者が、操作部501を介して、運転支援に関する設定や、運転支援の開始および終了の指示を行う。また、他の構成要素から運転者への通知情報を受信し、その内容を表示部502に文字もしくは絵記号などで表示したり、スピーカ503から警報音や音声案内などの報知を行う。
操作部501は、運転席付近に配置される物理的なスイッチを用いる形態や、表示部502に重畳されるタッチパネルを指で触れることで操作を行う形態などが考えられるが、本実施形態ではその形態を限定しない。
【0016】
図2は、車両700の内輪側に探索領域を設けた図である。運転支援装置1の出庫支援動作の説明に先立って、本実施形態における出庫支援の概要を説明する。
図2に示すように、車両700は、出庫を開始する直前に現在位置701に位置している。そして、現在の舵角から生成した走行経路702に沿って、車両700を前進しながら左側に旋回したと仮定すると、車両700は、将来位置703に位置すると予測される。この将来位置703における車両700’の内輪側の側方に探索領域704を設定する。探索領域704は、走行経路702からの距離dと車長pで規定される矩形の領域である。本実施形態では、車両700’の外輪側の近傍に障害物705があった場合、車両700’はこの障害物705と衝突すると判定されない。一方、障害物706が探索領域704内にあった場合は、車両700’はこの障害物706と衝突すると判定される。すなわち、障害物706が経路算出部120で算出した走行経路702から所定距離d以内にある場合に障害物706に衝突すると判定される。
【0017】
図2では、車両700’の内輪側の側方に探索領域704を設定する場合について説明したが、車両700の後退時には、車両700’の外輪側の側方に探索領域704を設定する。この場合について、
図3を参照して説明する。
図3に示すように、車両700は、出庫を開始する直前に現在位置701に位置している。そして、現在の舵角から生成した走行経路702に沿って、車両700を後退しながら旋回したと仮定すると、車両700は、将来位置703に位置すると予測される。この将来位置703における車両700’の外輪側の側方に探索領域704を設定する。探索領域704は、走行経路702からの距離dと車長pで規定される矩形の領域である。本実施形態では、車両700’の内輪側の近傍に障害物707があった場合、車両700’はこの障害物707と衝突すると判定されない。一方、障害物708が探索領域704内にあった場合は、車両700’はこの障害物708と衝突すると判定される。すなわち、障害物708が経路算出部120で算出した走行経路702から所定距離d以内にある場合に障害物708に衝突すると判定される。
【0018】
次に、第1の実施形態における運転支援装置1の出庫支援動作について説明する。
運転者がHMI500を用いて、出庫支援の開始を指示すると、外界認識部110は、外界センサ200を動作させ、車両周囲の障害物を探索する。外界センサ200は、障害物を検知すると、障害物の座標値を外界認識部110に出力する。ここで、座標値は、自車位置を基準とする相対座標系における値である。
【0019】
外界認識部110は、自車位置推定部140から現在の自車位置を取得して、障害物の座標値を、例えばエンジン始動時の自車位置を基準とする絶対座標系における値に変換し、障害物マップ111に登録する。このような外界認識部110の動作は、周期的に実行される。
【0020】
外界認識部110の動作と並行して、経路算出部120は、操舵角センサ302が出力する現在の操舵角値を、車載ネットワーク400を介して取得し、その操舵角値から車両の旋回半径を算出する。次いで、経路算出部120は、算出された旋回半径を有する円軌道を経路情報として算出し、衝突判定部130に出力する。なお、操舵角が0の場合は、経路算出部120は、直進軌道を経路情報として衝突判定部130に出力する。このような経路算出部120の動作は、周期的に実行される。
【0021】
衝突判定部130は、経路算出部120からの経路情報の入力が発生すると、その都度、衝突判定動作を行う。
図4は、衝突判定部130における衝突判定動作を示すフローチャートである。なお、このフローチャートで示したプログラムを、CPU、メモリなどを備えたコンピュータにより実行することができる。全部の処理、または一部の処理をハードロジック回路により実現してもよい。更に、このプログラムは、予め運転支援装置1の記憶媒体に格納して提供することができる。あるいは、独立した記憶媒体にプログラムを格納して提供したり、ネットワーク回線によりプログラムを運転支援装置1の記憶媒体に記録して格納することもできる。データ信号(搬送波)などの種々の形態のコンピュータ読み込み可能なコンピュータプログラム製品として供給してもよい。
【0022】
以下、
図4に示すフローチャートを参照して、衝突判定部130の動作を説明する。
図4の処理800において、衝突判定部130は、経路算出部120からの入力が円軌道であるか直進軌道であるかを判定する。円軌道であると判定された場合は、処理801へ進む。
処理801では、後述する変数Nを初期値の1に設定する。ここで変数Nは1から所定の上限値までの整数である。その後、処理802へ進む。
【0023】
処理802では、N×サンプル間隔で算出される走行距離を求める。サンプル間隔は、走行距離を算出する間隔である。その後、処理803へ進む。
処理803では、衝突判定部130は、経路算出部120から入力された経路が円軌道である場合、円軌道の情報を用いて、自車両が将来到達すると予測される位置(以下、将来位置とする)を算出する。将来位置は、円軌道に沿って、N×サンプル間隔で算出される走行距離を走行したときの位置である。その後、処理804へ進む。
【0024】
処理804で、衝突判定部130は、将来位置において自車両の側方に探索領域704を設定する。探索領域704は、衝突判定部130が変速機602から車載ネットワーク401を介して取得した現在の進行方向が前進であれば、
図2に示したように、内輪側の側方に設定される。一方、現在の進行方向が後退であれば、
図3に示したように、外輪側の側方に設定される。これは、前進しながら旋回した場合には内輪側の車体側面が円軌道からはみ出し、後退しながら旋回した場合には外輪側の車体側面が円軌道からはみ出すためである。
【0025】
また、探索領域704の大きさは、舵角が大きいほど大きくすることが望ましい。これは、舵角が大きいと、より遠方にある自車両の側方の障害物を検知する必要があるが、距離が遠いほど、外界センサ200の測定誤差が大きくなり、例えば、障害物が実際より遠方にあると認識して、衝突すると判定すべきところを衝突しないと誤判定する可能性が高くなるためである。
【0026】
探索領域の一例として、車両が前進して左方向へ旋回するとき、
図2に示すように、車両の内輪側の側面の距離d以内の探索領域704を考える。距離dは、前進して旋回したときの内輪側前端の移動距離に対し、外界センサ200の誤差特性から定める係数を乗じた値とする。以下、距離dの算出方法について述べる。
【0027】
車両のホイールベースをLwとすると、実舵角ψで旋回したときに、後輪車軸中心の軌跡となる円軌道の半径Rは、次式(1)で近似される。
R=Lw/tanψ (1)
また、半径Rの円軌道に沿って距離Lだけ旋回走行したときの旋回角θは、次式(2)で求められる。
θ=L/R (2)
【0028】
さらに、車両のフロントオーバハングをLf、全幅をWvとすると、車両の内輪側の前端の移動距離Dは、次式(3)で求められる。
D=sqrt[{(R-Wv/2)cosθ-(Lf+Lw)sinθ-(R-Wv/2)}^2+{(R-Wv/2)sinθ+(Lf+Lw)cosθ-(Lf+Lw)}^2] (3)
【0029】
外界センサ200の誤差特性から定める係数をrとすると、距離dは次式(4)で求められる。
d=r*D (4)
【0030】
次に、処理805へ進む。処理805では、衝突判定部130は、障害物マップ111を参照して、探索領域704内に存在する障害物を探索する。次に、処理806へ進む。
処理806では、探索領域704内に障害物が存在するか否かを判定する。障害物が存在する場合は、将来位置において自車両の側面が障害物に衝突する可能性がある。このように将来位置で衝突する位置を衝突位置とする。探索領域704内に障害物が存在しない場合は、処理807へ進む。
【0031】
処理807では、変数Nに1を加算する。そして、次の処理808で、変数Nが所定の上限値になったかを判定し、変数Nが上限値でなければ、処理802へ戻る。このように、衝突判定部130は、処理802から処理805までの動作を、変数Nに1ずつ加算しながら、衝突位置が求まるか、変数Nが上限値となるまで、繰り返し実行する。
【0032】
処理806で、探索領域704内に障害物が存在すると判定された場合は、処理809へ進む。処理809では、自車両が走行中であるか否かを車輪速センサ301から入力される車輪速に基づいて判定する。走行中であれば処理810へ進む。
処理810では、衝突判定部130は、衝突判定結果として、車輪速センサ301から入力される現在の車速のまま走行したときに衝突位置に到達するまでの時間を求め、これをHMI500へ出力する。
【0033】
処理809の判定で、走行中でなければ、すなわち停車中であれば処理811へ進む。
処理811では、衝突判定部130は、衝突判定結果として、現在位置から衝突位置までの距離を求め、これをHMI500へ出力する。
【0034】
また、処理800で、直進軌道と判定された場合や、処理808で、変数Nが上限値を超えたと判定された場合は、衝突位置が存在しない場合であり、衝突する可能性がないことを示す識別情報を、HMI500へ出力する。
衝突判定部130は、経路算出部120からの経路情報の入力の発生の都度、
図4に示す衝突判定動作を実行する。ただし、衝突判定結果をHMI500に出力する動作については、衝突判定結果が前回にHMI500に出力した値と同じであれば、今回の動作を省略しても良い。
【0035】
HMI500は、衝突判定部130から、衝突位置までの走行距離、もしくは衝突位置に到達するまでの時間を受信すると、それらの値が、予め定義された報知レベルのどれに該当するかを判定し、該当する報知レベルに応じた報知を運転者に対して行う。例えば、表示部502に文言や絵記号を表示する場合は、報知レベルが高くなるほど、運転者への刺激が強い色や明るさで表示する方法が考えられる。また、スピーカ503から報知音を発する場合は、報知レベルが高くなるほど、音量を大きくしたり、鳴動間隔を短くしたりすることが考えられる。さらに、受信した走行距離や時間の値が十分に大きい場合には、HMI500による運転者への報知を停止してもよい。このように、衝突判定部130により、障害物に衝突すると判定された場合に、衝突するまでの残距離や時間を算出し、HMI500は、衝突するまでの残距離や時間の長さに応じて、報知の有無および報知レベルの少なくとも一方を変える。
【0036】
HMI500は、報知を行っているときに、異なる報知レベルに該当する衝突判定結果を受信すると、報知レベルを変更する。また、HMI500は、報知を行っているときに、衝突する可能性がないことを示す識別情報を受信すると、その報知を停止する。
【0037】
以上述べた第1の実施形態によれば、運転者自身による出庫操作の際に、旋回に伴って自車両の側方の障害物に衝突する可能性がある場合は、運転支援装置が運転者に報知するため、運転者にとっては衝突の可能性の有無が直感的にわかりやすくなり、迅速な回避動作が可能になる。また、運転者が停車中にハンドルを操作した場合、運転支援装置は操舵角に応じて衝突判定を行い、その結果に応じて報知の発動、停止を行うため、運転者にとっては、側方障害物に衝突することなく発進するためにどこまでハンドルを切って良いかを把握しやすくなる。
【0038】
[第2の実施形態]
図5は本発明の第2の実施形態における運転支援装置1のシステム構成図である。
図1で示した第1の実施形態と同一の個所には同一の符号を付してその説明を省略する。運転支援制御部100の中に衝突回避判定部150が追加されている点が第1の実施形態と異なる。
【0039】
本実施形態では、衝突判定部130は、自車両が走行中である場合と停車中である場合のいずれにおいても、現在位置から衝突位置までの距離を衝突回避判定部150へ出力する。衝突回避判定部150は、衝突判定部130から衝突位置までの走行距離が入力されると、車輪速センサ301から車載ネットワーク400を通じて取得した現在車速を用いて、現在車速から所定の減速度で停車するまでの残距離を計算する。
【0040】
そして、衝突回避判定部150は、衝突位置までの走行距離が残距離より長ければ、ブレーキによる停車のみで障害物との衝突の回避が可能と判定し、低い報知レベルで報知を行うよう、HMI500に指示する。
一方、衝突位置までの走行距離が残距離より短ければ、衝突回避判定部150は、ブレーキによる停車のみでは衝突の回避は不可能と判定し、回避のためにはハンドルを中立に戻す操作が必要であるので、高い報知レベルで報知を行うよう、HMI500に指示する。報知レベルを変える基準は、残距離が停車のみで舵角を戻さずに衝突回避可能な距離か否かとする。
【0041】
第2の実施形態によれば、運転者自身による出庫操作の際に、旋回に伴って自車両付近の障害物に衝突する可能性がある場合は、回避に必要な操作に応じて報知レベルを変えて報知を行うため、運転者が適切な回避動作を確実にとることができる。
【0042】
[第3の実施形態]
図6は本発明の第3の実施形態における運転支援装置1のシステム構成図である。
図1で示した第1の実施形態と同一の個所には同一の符号を付してその説明を省略する。運転支援制御部100の中に操舵制御部160が追加されている点が第1の実施形態と異なる。
【0043】
操舵制御部160は、衝突判定部130から、衝突位置までの走行距離、もしくは衝突位置に到達するまでの時間が入力されると、舵角が現在の値もしくはそれ以上の大きさでは将来自車側方に障害物が衝突すると判定し、ハンドルの切り増しを抑止するようにハンドルの操舵力を制御する。このとき操舵制御部160は、パワーステアリング601に所定の指示を出力することで、ハンドルの操舵力に対する制御を行う。
【0044】
操舵制御部160からの指示を受信したパワーステアリング601は、運転者がハンドルを切り増そうとすると、その方向のトルクを検知し、それと反対方向のトルクをハンドルに加える。これにより、運転者がハンドルを切り増そうとしても、大きな力を加えなければ回らない状態になり、ハンドルの切り増しが抑止される。
【0045】
衝突判定部130は、HMI500が運転者に障害物への衝突を報知した後に、運転者が舵角を戻したとき、再度障害物に衝突するか否かを判定し、衝突しないと判定された場合、HMI500は報知を停止する。
【0046】
第3の実施形態によれば、運転者自身による出庫操作の際に、旋回に伴って自車両付近の障害物に衝突する可能性がある場合は、旋回方向にハンドルが回らなくなるため、運転者が衝突の可能性に気付きやすくなり、また誤って障害物により近づく方向にハンドルを切る操作を防止することができる。
【0047】
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)運転者による車両の出庫操作を支援する運転支援装置1であって、運転支援装置1は、車両の外界の障害物を検知する外界センサからの入力情報に基づいて、車両の周囲に存在する障害物を認識する外界認識部110と、車両の現在の舵角に基づき走行経路を算出する経路算出部120と、経路算出部120で算出した走行経路を走行した場合に、外界認識部110で認識された障害物に衝突するか否かを判定する衝突判定部130とを備える。これにより、車両の出庫の際の運転支援を適確に行うことができる。
【0048】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限り、本発明の技術思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。