特許第6975871号(P6975871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 松田産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6975871-電解回収装置 図000002
  • 特許6975871-電解回収装置 図000003
  • 特許6975871-電解回収装置 図000004
  • 特許6975871-電解回収装置 図000005
  • 特許6975871-電解回収装置 図000006
  • 特許6975871-電解回収装置 図000007
  • 特許6975871-電解回収装置 図000008
  • 特許6975871-電解回収装置 図000009
  • 特許6975871-電解回収装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6975871
(24)【登録日】2021年11月10日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】電解回収装置
(51)【国際特許分類】
   C25C 7/02 20060101AFI20211118BHJP
【FI】
   C25C7/02 303
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2021-144834(P2021-144834)
(22)【出願日】2021年9月6日
【審査請求日】2021年9月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596133201
【氏名又は名称】松田産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉井 大介
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3191315(JP,U)
【文献】 特開2013−79427(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/153001(WO,A1)
【文献】 特表平8−508068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 7/00−7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属が含有された溶液を電気分解することで前記金属を回収する電解回収装置であって、
前記溶液が導入される電解槽と、
前記電解槽の重力方向下方に設けられた空間部と、
前記電解槽内から前記空間部まで延在するシャフトと、
前記電解槽内で前記シャフトに固定され、前記シャフトの回転軸を中心として回転する回転陰極と、
前記電解槽内に配置された陽極と、
前記シャフトを前記回転軸回りに回転駆動させる駆動機構と、
前記空間部内に配置され、前記シャフトの前記重力方向下方の端部側で前記シャフトを保持するベアリングと、
絶縁性を有し、前記ベアリングを収納するベアリングケースと、
前記空間部内に配置され、前記シャフトを介して前記ベアリングケースが受けた前記回転陰極の荷重を計測するロードセルと、
前記シャフトの振動を低減させる振動低減部と、
を備える、電解回収装置。
【請求項2】
前記振動低減部は、前記ロードセルを前記空間部内で吊り下げる支持体を有する、
請求項1に記載の電解回収装置。
【請求項3】
前記振動低減部は、前記ロードセルと前記空間部の底面部の間に配置された振動吸収シートを有する、
請求項1に記載の電解回収装置。
【請求項4】
前記振動低減部は、
前記ロードセルを前記空間部内で吊り下げる支持体と、
前記ロードセルと前記支持体の間に配置された振動吸収シートと、
を有する、
請求項1に記載の電解回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品や半導体装置などの製造工程においては、金属被膜を形成する湿式めっき工程が行われる。湿式メッキ工程では、金属(ニッケル、コバルト、金、銀、白金、パラジウム)を含有する溶液が発生する。そこで、これらの溶液から金属を回収する電解回収装置が知られている(特許文献1)。特許文献1には、軸回りに回転する陰極に金属を析出させることで溶液中の金属を回収する電解回収装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5651332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電解回収装置では、陰極を回転させながら当該陰極に金属を析出させることで、当該陰極への電着状態を良化させつつ、電解槽内の電流効率が高められる。一方、陰極での金属の析出量、すなわち、金属の回収量を把握することは、電解回収装置の運用上重要である。一般的には、電解回収装置を稼働停止させた状態で電解回収装置から陰極を取り外し、電子天秤などで当該陰極の重量を計量することで、金属の回収量が測定される。しかしながら、この方法は、電解回収装置を稼働停止させる必要があり、電解回収装置の稼働率を低下させてしまう。また、電解回収装置から取り外された陰極が盗難されるなどの懸念もある。
【0005】
本発明は、電解回収装置を稼働停止させることなく、金属の回収量を測定できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、回転陰極が固定されたシャフトの振動を低減させる構成を設けた。
【0007】
具体的には、本発明は、金属が含有された溶液を電気分解することで前記金属を回収する電解回収装置であって、前記溶液が導入される電解槽と、前記電解槽の重力方向下方に設けられた空間部と、前記電解槽内から前記空間部まで延在するシャフトと、前記電解槽内で前記シャフトに固定され、前記シャフトの回転軸を中心として回転する回転陰極と、前記電解槽内に配置された陽極と、前記シャフトを前記回転軸回りに回転駆動させる駆動機構と、前記空間部内に配置され、前記シャフトの前記重力方向下方の端部側で前記シャフトを保持するベアリングと、絶縁性を有し、前記ベアリングを収納するベアリングケースと、前記空間部内に配置され、前記シャフトを介して前記ベアリングケースが受けた前記回転陰極の荷重を計測するロードセルと、前記シャフトの振動を低減させる振動低減部と、を備える。
【0008】
上記の電解回収装置において、前記振動低減部は、前記ロードセルを前記空間部内で吊り下げる支持体を有していてもよい。
【0009】
上記の電解回収装置において、前記振動低減部は、前記ロードセルと前記空間部の底面
部の間に配置された振動吸収シートを有していてもよい。
【0010】
上記の電解回収装置において、前記振動低減部は、前記ロードセルを前記空間部内で吊り下げる支持体と、前記ロードセルと前記支持体の間に配置された振動吸収シートと、を有していてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電解回収装置を稼働停止させることなく、金属の回収量を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る電解回収装置を軸方向に沿って切断した場合の断面図である。
図2図2は、比較例に係る電解回収装置を軸方向に沿って切断した場合の断面図である。
図3図3は、実施形態に係る電解回収装置によるロードセルの出力電圧を示すグラフである。
図4図4は、比較例に係る電解回収装置によるロードセルの出力電圧を示すグラフである。
図5図5は、実施形態に係る電解回収装置の回転陰極の重量変化を示すグラフである。
図6図6は、変形例1に係る電解回収装置を軸方向に沿って切断した場合の断面図である。
図7図7は、変形例1に係る電解回収装置によるロードセルの出力電圧を示すグラフである。
図8図8は、変形例2に係る電解回収装置を軸方向に沿って切断した場合の断面図である。
図9図9は、変形例2に係る電解回収装置によるロードセルの出力電圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施形態の構成に限定されるものではない。
【0014】
<実施形態>
実施形態に係る電解回収装置について説明する。図1は、本実施形態に係る電解回収装置を軸方向に沿って切断した場合の断面図である。金属が含有された溶液(以下、単に「溶液」と称する)を電気分解することで金属を析出させ、当該金属を回収する装置である。電解回収装置10は、電解槽12を備える。電解回収装置10は、設置状態における上端に形成された上端開口11Aと、上端開口11Aに対向配置された底面部11Bと、上端開口11Aと底面部11Bとを繋ぐ周壁部11Cとを有する。また、電解回収装置10は、筒状の内側周壁部11Dと、内側周壁部11Dと周壁部11Cを繋ぐ内側底面部11Eとを有する。電解回収装置10は、底面部11B及び周壁部11Cで構成された外壁と、内側周壁部11D及び内側底面部11Eで構成された内壁を有し、その中に各種回路等を収容する。電解槽12は、周壁部11Cと内側周壁部11Dと内側底面部11Eとで画定されている。なお、底面部11B周壁部11C、内側周壁部11D及び内側底面部11Eは、硬質塩化ビニルのような樹脂で形成されている。
【0015】
電解槽12は、設置状態における上端に上端開口12Aが形成されている。図1中、2点鎖線Zは、電解槽12の中心軸を表しており、以降では、2点鎖線Zを中心軸Z(本願
でいう「電解槽の軸」に相当)と称する。電解槽の軸Zは、内側周壁部11Dの中心を通る。周壁部11Cには、溶液の導入孔及び排出孔(不図示)が形成されており、電解回収装置10の外部に設置されたポンプ(不図示)によって当該導入孔から溶液が導入される。また、電解槽12から溢れ出そうになる溶液が当該排出孔から排出され、この溶液は、再度、導入孔から電解槽12内に導入される。このように、電解回収装置10の稼働中においては、溶液が導入孔及び排出孔を介して電解槽12の内外を循環する。
【0016】
また、電解回収装置10は、電解槽12内から電解槽12の中心軸Zに沿って延在するシャフト14を備える。シャフト14は、導電性を有するように金属で形成されており、中心軸Z周りに回転可能である。また、電解回収装置10は、電解槽12の重力方向下方に設けられた空間部13を備える。空間部13は、電解槽12の下方で周壁部11Cと底面部11Bによって画定された領域である。シャフト14は、電解槽12内から空間部13に配置された後述のベアリングケース21内まで延在している。このように、電解回収装置10は、設置状態で上側に電解槽12が設けられ、電解槽12の下方に空間部13が設けられている。
【0017】
また、電解回収装置10は、電解槽12内でシャフト14に固定され、シャフト14の回転軸を中心として回転する回転陰極15と、電解槽12内に配置された陽極17と、を備える。電解回収装置10は、回転陰極15と陽極17との間に電圧を印加することによって溶液を電気分解し、これによって回転陰極15の表面に当該溶液に含有されている金属を析出(電着)させる。このようにして電解回収装置10は、金属を回収することができる。回転陰極15は、円筒形状を有し、上端開口12Aから電解槽12内に配置される。シャフト14の上端部には、ねじ溝が形成されており、シャフト14に回転陰極15が挿通された状態で当該ねじ溝にボルト16が固定されることによって、シャフト14に回転陰極15が取り付けられる。また、シャフト14からボルト16を外すことによって、回転陰極15をシャフト14から取り外し可能となる。また、電解回収装置10は、シャフト14に電気的に接続されたカーボンブラシ19を備える。カーボンブラシ19は、シャフト14と空間部13内で電気的に接続されており、シャフト14を介して回転陰極15に直流電流を供給する。なお、回転陰極15への電流供給は、シャフト14を介して行わればよく、カーボンブラシ19を用いることに限定されない。
【0018】
また、電解回収装置10は、シャフト14を回転軸回りに回転駆動させる駆動機構18を備える。本実施形態では、駆動機構18は、空間部13内でシャフト14に接続されており、シャフト14に回転運動を伝達させる。駆動機構18は、モータ18Aと、モータ18Aの回転軸に固定されたモータプーリ18Bと、シャフト14が挿通されてシャフト14に固定されたプーリ18Dと、モータプーリ18Bの回転運動をプーリ18Dに伝達するタイミングベルト18Cを有する。モータ18Aは、電解回収装置10内に収容された駆動回路(不図示)によって動作する駆動源である。タイミングベルト18Cは、例えばゴム製であり、モータプーリ18Bとプーリ18Dを機械的に接続する。タイミングベルト18Cは、回転陰極15に金属が析出してシャフト14に掛かる荷重が増加しても撓むことができるため、シャフト14に掛かる荷重を後述のロードセル22が計測することを阻害しない。
【0019】
また、電解回収装置10は、空間部13内に配置され、シャフト14の重力方向下方の端部側でシャフト14を保持するベアリング20と、ベアリング20を収納するベアリングケース21を備える。ベアリングケース21は上端全面が開口された箱形状(カップ形状)を有しており、ベアリング20の外周面がベアリングケース21の内周面に固定されている。これによって、ベアリングケース21にはシャフト14の回転運動が伝達されない。ベアリングケース21は、シャフト14と伴に回転しないように設置されている。また、ベアリングケース21は、塩化ビニルのような絶縁性の樹脂材料で形成されており、
絶縁性を有する。
【0020】
また、電解回収装置10は、空間部13内に配置され、シャフト14を介してベアリングケース21が受けた回転陰極15の荷重を計測するロードセル22を備える。ロードセル22は、ベアリングケース21の荷重を計測可能なように、その上側にベアリングケース21が載置されている。ロードセル22は、回転陰極15の荷重をシャフト14のラジアル荷重として検出し、検出した荷重を電気信号に変換して出力する。電解回収装置10の管理者は、ロードセル22の出力信号値を監視することで、回転陰極15に析出した金属量の情報を得ることができる。
【0021】
本実施形態に係る電解回収装置10において、回転陰極15は、シャフト14に取り付けられており、駆動機構18によってシャフト14と伴に回転駆動される。仮に、シャフト14の荷重を直接的にロードセル22が受けると、シャフト14の回転によって摩擦が生じでロードセル22のシャフト14との接触面が摩耗する虞れがある。また、電解槽12内の溶液を電気分解するためには、回転陰極15に直流電流を供給する必要があり、この電流供給は、シャフト14を介して行われる。したがって、仮に、シャフト14とロードセル22が直接的に接触すると、ロードセル22に電圧が印加されることになる。ロードセル22に電圧が印加されることは、ロードセル22の故障の原因となるので好ましくない。
【0022】
そこで、本実施形態に係る電解回収装置10では、シャフト14とロードセル22の間にベアリングケース21を配置した。ベアリングケース21は、ベアリング20によってシャフト14と伴に回転することがないので、ロードセル22に直接的に接触してもロードセル22が摩耗するのを防ぐことができる。また、ベアリングケース21は、絶縁性を有している。このため、ベアリングケース21は、シャフト14に供給される直流電流がロードセル22に流れ、ロードセル22に電圧が印加されるのを防ぐことができる。
【0023】
また、電解回収装置10は、ロードセル22の重力方向下方に配置され、シャフト14の振動を低減させる振動低減部23を備える。シャフト14は、駆動機構18によって回転駆動されており、駆動時には振動が発生する。ロードセル22がこの振動を検知すると、シャフト14のラジアル荷重の検出値にノイズが混在する。これによって、ロードセル22がシャフト14のラジアル荷重を正確に検出することができなくなる。そこで、本実施形態に係る電解回収装置10は、振動低減部23を備える。振動低減部23は、シャフト14の振動を低減させることによって、シャフト14のラジアル荷重の検出値にノイズが混在するのを抑制する。これによって、電解回収装置10は、シャフト14のラジアル荷重、すなわち、回転陰極15に析出した金属量を正確に測定することができる。
【0024】
本実施形態では、振動低減部23は、支持体23Aと振動吸収シート23Bとを有する。支持体23Aは、ロードセル22を空間部13内で吊り下げることによってシャフト14の振動を低減させる。支持体23Aは、ロードセル22が底面部11Bに接触するのを防ぐために、ロードセル22を空間部13内で吊り下げる。支持体23Aは、例えば、塩化ビニルなどの樹脂材料で形成されており、周壁部11Cの内側にボルト(不図示)で固定されている。支持体23Aは、ロードセル22を吊り下げることで、シャフト14の振動を緩衝し、これによって、シャフト14の振動を低減できる。
【0025】
振動吸収シート23Bは、粘弾性を有する材料で形成されたシート形状を有する。本実施形態では、振動吸収シート23Bは、ゲルによって厚さが5mm程度のシート状に形成されている。振動吸収シート23Bは、粘弾性によってシャフト14の振動を低減できる。なお、振動吸収シート23Bは、ゴムやスポンジなどのその他の粘弾性を有する材料によって形成されていてもよい。
【0026】
次に、本実施形態に係る電解回収装置10によるロードセル22の出力電圧と、比較例に係る電解回収装置100よるロードセル22の出力電圧とを比較する。図2は、比較例に係る電解回収装置を軸方向に沿って切断した場合の断面図である。図2に示すように、比較例に係る電解回収装置100は、振動低減部23が設けられておらず、ロードセル22が底面部11B上に設置された台座24上に載置されている。このように、電解回収装置100は、振動低減部23を備えない構成である。
【0027】
図3は、本実施形態に係る電解回収装置10によるロードセル22の出力電圧を示すグラフである。図4は、比較例に係る電解回収装置100によるロードセル22の出力電圧を示すグラフである。図3および図4のグラフにおいて、縦軸はロードセル22の出力電圧(V)を表し、横軸は各電解回収装置の稼働時間(秒)を表している。なお、ロードセル22の出力電圧のノイズを比較するために、電解槽12に溶液を導入しない状態で図3および図4のデータを取得した。なお、ロードセル22の出力電圧はアンプにより増幅して取得したものである。
【0028】
図3において、四角形S1で囲んだ領域は、駆動機構18が駆動していた期間を示し、図4において、四角形S2で囲んだ領域は、駆動機構18が駆動していた期間を示している。図3図4の比較から分かるように、本実施形態に係る電解回収装置10は、比較例に係る電解回収装置100よりもロードセル22の出力電圧のノイズを大幅に低減することができる。
【0029】
したがって、本実施形態に係る電解回収装置10は、ロードセル22の出力電圧によってシャフト14のラジカル荷重、すなわち、回転陰極15に析出した金属量を計測することができる。このため、管理者は、電解回収装置10を稼働停止することなく、金属の回収量を連続的に測定できる。したがって、電解回収装置10は、稼働率を低下させることもなく、回転陰極15の交換タイミングまで回転陰極15を取り外す必要がないため、回転陰極15の盗難を抑制することもできる。
【0030】
次に、本実施形態に係る電解回収装置10を実際に稼働した場合のロードセル22の出力電圧から得られた回転陰極15の重量変化について説明する。図5は、回転陰極15の重量変化を示すグラフである。図5のグラフにおいて、縦軸は回転陰極15の重量(g)を表し、横軸は電解回収装置10の稼働時間を表している。図5のグラフに示すように、ロードセル22のノイズが抑制されており、回転陰極15の重量変化、すなわち金属の回収量を正確に把握することができる。
【0031】
例えば、金属回収行う回収業者と、電解回収装置を使用する半導体装置などの製造業者とが異なる場合がある。この場合には、一般的に、回収業者が電解回収装置を製造業者の製造現場に設置し、回収業者の管理者は、電解回収装置から遠隔地に在住している。本実施形態に係る電解回収装置10によれば、管理者は、電解回収装置10と接続された情報端末装置からネットワークを介して送信される回転陰極15の重量情報を自身が携帯する端末装置や在住場所に設置した端末装置により取得することができる。したがって、本実施形態に係る電解回収装置10は遠隔地から監視可能である。
【0032】
また、回転陰極15の交換タイミングは、例えば、ロードセル22の出力電圧値が約1.4Vになった時点であって、回転陰極15の重量が約2.0kgになった時点である。このように、管理者は、回転陰極15の重量を監視することによって回転陰極15の交換タイミングを判断することができる。なお、回転陰極15の交換タイミングにおけるロードセル22の出力電圧値は、ロードセル22の仕様やアンプによる増幅率の設定によって変化する。管理者は、ロードセル22の仕様やアンプによる増幅率と、ロードセル22の出力電圧値と、回転陰極15の重量との関係を把握しておくことにより、回転陰極15の交換タイミングを適切に判断することができる。
【0033】
<変形例1>
次に、実施形態の変形例1に係る電解回収装置について説明する。図6は、変形例1に係る電解回収装置を軸方向に沿って切断した場合の断面図である。本変形例に係る電解回収装置10は、振動低減部23が、支持体23Aを有し、振動吸収シート23Bを有していない。すなわち、本変形例に係る電解回収装置10は、上記実施形態に係る電解回収装置10から振動吸収シート23Bを省略した構成を備える。
【0034】
図7は、本変形例に係る電解回収装置10によるロードセル22の出力電圧を示すグラフである。図7のグラフにおいて、縦軸はロードセル22の出力電圧(V)を表し、横軸は電解回収装置の稼働時間(秒)を表している。なお、本変形例に係る電解回収装置10のロードセル22の出力電圧と、図4に示す比較例に係る電解回収装置100のロードセル22の出力電圧のノイズを比較するために、電解槽12に溶液を導入しない状態で図7のデータを取得した。なお、ロードセル22の出力電圧はアンプにより増幅して取得したものである。
【0035】
図7において、四角形S3で囲んだ領域は、駆動機構18が駆動していた期間を示している。図4図7の比較から分かるように、本変形例に係る電解回収装置10は、比較例に係る電解回収装置100よりもロードセル22の出力電圧のノイズを低減することができる。したがって、本変形例に係る電解回収装置10は、稼働停止することなく、金属の回収量を連続的に測定できる。
【0036】
<変形例2>
次に、実施形態の変形例2に係る電解回収装置について説明する。図8は、変形例2に係る電解回収装置を軸方向に沿って切断した場合の断面図である。本変形例に係る電解回収装置10は、振動低減部23が、振動吸収シート23Bを有し、支持体23Aを有していない。本変形例において、底面部11B上に設置された台座24上に振動吸収シート23Bが配置されており、振動吸収シート23B上にロードセル22が載置されている。本変形例において、振動吸収シート23Bは、ロードセル22と空間部13の底面部11Bの間に配置されている。なお、台座24を設けずに、底面部11B上に振動吸収シート23Bを配置し、振動吸収シート23B上にロードセル22が載置される構成としてもよい。すなわち、本変形例に係る電解回収装置10は、上記実施形態に係る電解回収装置10から支持体23Aを省略した構成を備える。
【0037】
図9は、本変形例に係る電解回収装置10によるロードセル22の出力電圧を示すグラフである。図9のグラフにおいて、縦軸はロードセル22の出力電圧(V)を表し、横軸は電解回収装置の稼働時間(秒)を表している。なお、本変形例に係る電解回収装置10のロードセル22の出力電圧と、図4に示す比較例に係る電解回収装置100のロードセル22の出力電圧のノイズを比較するために、電解槽12に溶液を導入しない状態で図9のデータを取得した。なお、ロードセル22の出力電圧はアンプにより増幅して取得したものである。
【0038】
図9において、四角形S4で囲んだ領域は、駆動機構18が駆動していた期間を示している。図4図9の比較から分かるように、本変形例に係る電解回収装置10は、比較例に係る電解回収装置100よりもロードセル22の出力電圧のノイズを低減することができる。したがって、本変形例に係る電解回収装置10は、稼働停止することなく、金属の回収量を連続的に測定できる。
【0039】
以上、本願発明の実施形態について説明したが、上述した種々の実施形態は可能な限り組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0040】
10・・電解回収装置
11A・・上端開口
11B・・底面部
11C・・周壁部
11D・・内側周壁部
11E・・内側底面部
12・・電解槽
12A・・上端開口
13・・空間部
14・・シャフト
15・・回転陰極
16・・ボルト
17・・陽極
18・・駆動機構
18A・・モータ
18B・・モータプーリ
18C・・タイミングベルト
18D・・プーリ
19・・カーボンブラシ
20・・ベアリング
21・・ベアリングケース
22・・ロードセル
23・・振動低減部
23A・・支持体
23B・・振動吸収シート
24・・台座
100・・電解回収装置
【要約】
【課題】本発明は、電解回収装置を稼働停止させることなく、金属の回収量を測定できる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】電解回収装置は、溶液が導入される電解槽と、電解槽の重力方向下方に設けられた空間部と、電解槽内から空間部まで延在するシャフトと、電解槽内でシャフトに固定され、シャフトの回転軸を中心として回転する回転陰極と、電解槽内に配置された陽極と、シャフトを回転軸回りに回転駆動させる駆動機構と、空間部内に配置され、シャフトの重力方向下方の端部側でシャフトを保持するベアリングと、絶縁性を有し、ベアリングを収納するベアリングケースと、空間部内に配置され、シャフトを介してベアリングケースが受けた回転陰極の荷重を計測するロードセルと、シャフトの振動を低減させる振動低減部と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9