【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例により制限されるものではない。
【0031】
〔アリールアミン誘導体の合成〕
合成物の同定に用いた機器及び測定条件は以下のとおりである。
(1)
1H核磁気共鳴法(NMR)
日本電子(株)製、400MHz、JNM−EX270FT−NMR
(2)質量分析法(MS)
日本電子(株)製、JMS−K9[卓上 GCQMS]
【0032】
[合成例1]1,4−フェニルアミノジベンゾフランの合成
【化7】
【0033】
25mlの三口フラスコに4−ブロモジベンゾフラン5.0g(20.3mmol)、アニリン2.3g(25.2mmol)、ナトリウムt−ブトキシド(t−BuONa)5.05g(52.7mmol)、及び脱水1,4−ジオキサン100mlを加えて1時間窒素バブリングした。その後、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(Pd(dba)
2)581mg(1.01mmol)、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリニウムクロリド859mg(2.02mmol)を加えて窒素気流下、攪拌しながら2時間加熱還流を行った。TLCで原料の消費を確認後、MSで目的物の生成を確認し、反応液を常温に戻した後、水15mlを加えて攪拌した。その後、有機層をジエチルエーテルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、褐色粘体を得た。得られた粘体をトルエン/ヘキサン混合溶媒(1:1)200mlに溶解させ、シリカゲル(ガラスフィルターに4cmほど積む)を通じて吸引ろ過、濃縮し黄白色固体を得た。得られた固体はエタノールを用いて再結晶精製し、白色固体を得た。目的物の同定はMS及び
1H−NMRにて行った。
収量4.53g、収率86%
MS:[M]=259.3m/z
【0034】
[合成例2]1,4−フェニルアミノジベンゾチオフェンの合成
【化8】
【0035】
25mLの三口フラスコに4−ブロモジベンゾチオフェン1.00g(3.80mmol)、アニリン450μl(4.94mmol)、ナトリウムt−ブトキシド950mg(9.89mmol)、脱水トルエン20mlを加え、1時間窒素バブリングを行った。そこにトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd
2(dba)
3)170mg(0.19mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート([(t−Bu)
3PH]
+BF
4-)110mg(0.38mmol)を加え、2時間加熱還流を行った。反応混合物をTLC及びMassにて確認したところ、原料が消失し、目的物のピークが得られた。反応混合物を室温に戻し、トルエン抽出、ブライン洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=7/3)で精製し、目的物である4−フェニルアミノジベンゾチオフェンを951mg(3.45mmol)、収率91%で得た。目的物の同定はMS及び
1H−NMRにて行った。
【0036】
[実施例1]HTM3の合成
【化9】
【0037】
50mlの四口フラスコに4−フェニルアミノジベンゾチオフェン2.75g(10mmol)、2,8−ジブロモジベンゾフラン1.63g(5.0mmol)、ナトリウムt−ブトキシド2.5g(26mmol)、脱水トルエン50mlを加えて1時間窒素バブリングした。その後、Pd
2(dba)
3460mg(0.5mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(t−Bu
3PH
+BF
4-)290mg(1.0mmol)を加えて窒素気流下で攪拌しながら53時間加熱還流を行った。TLC及びMSで目的物の生成を確認した。反応液を常温に冷ました後、有機層をトルエンで抽出、ブラインで洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥、ろ過、濃縮し、褐色粘体を得た。得られた粘体をトルエン10mlに溶解させ、カラムに充填した。そのままシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/ヘキサン=1/4)にて精製し、目的物を得た。
収量1.92g、収率54%
MS:[M
+]=714.7m/z
図1に
1HNMRの測定結果を示す。
【0038】
[実施例2]HTM4の合成
【化10】
【0039】
25mlの四口フラスコに4−フェニルアミノジベンゾフラン1.16g(4.5mmol)、2,8−ジブロモジベンゾチオフェン0.51g(1.5mmol)、t−BuONa 1.13g(11.7mmol)、脱水トルエン20mlを加えて1時間窒素バブリングした。その後、Pd
2(dba)
3 210mg(0.23mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート130mg(0.45mmol)を加えて窒素気流下で13時間加熱還流を行った。TLC及びMSにて目的物の生成を確認し、反応液を常温に戻した。その後、有機層をトルエンで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、褐色粘体を得た。得られた粘体をトルエン10mlに溶解させ、シリカゲルカラムに充填した。そのままシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/ヘキサン=1/3(2.5L)にて精製を行い、目的物であるHTM4を0.46g、収率44%で得た。
MS:[M
+]=699.4m/z
図2に
1HNMRの測定結果を示す。
【0040】
[実施例3]HTM5の合成
【化11】
【0041】
25mlの四口フラスコに4−フェニルアミノジベンゾフラン0.52g(2.0mmol)、2,8−ジブロモジベンゾフラン0.33g(1.0mmol)、ナトリウムt−ブトキシド500mg(5.2mmol)、脱水トルエン10mlを加えて1時間窒素バブリングした。その後、Pd
2(dba)
392mg(0.10mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート58mg(0.20mmol)を加えて、窒素気流下で攪拌しながら12時間加熱還流を行った。TLC及びMSにて目的物の生成を確認した。反応液を常温に冷ました後、有機層をトルエンで抽出、ブラインで洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥、ろ過、濃縮し、褐色粘体を得た。得られた粘体をトルエン5mlに溶解させ、カラムに充填した。そのままシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/ヘキサン=1/4)にて精製し、目的物であるHTM5を0.51g、収率75%で得た。
MS:[M
+]=683.7m/z
図3に
1HNMRの測定結果を示す。
【0042】
[実施例4]HTM6の合成
【化12】
【0043】
50mlの三口フラスコに4−フェニルアミノジベンゾチオフェン2.75g(10.0mmol)、2,8−ジブロモジベンゾジオフェン1.71g(5.0mmol)、ナトリウムt−ブトキシド2.50g(26.0mmol)、脱水トルエン50mlを加えて1時間窒素バブリングした。その後、Pd
2(dba)
3 460mg(0.50mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート290mg(1.0mmol)を加えて窒素気流下で攪拌しながら50時間加熱還流を行った。TLC及びMSにて目的物の生成を確認した。反応液を常温に冷ました後、有機層をトルエンで抽出、ブラインで洗浄後無水硫酸マグネシウムにて乾燥、ろ過、濃縮し、褐色粘体を得た。得られた粘体をトルエン5mlに溶解させ、カラムに充填した。そのままシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/ヘキサン=1/4)にて精製し、目的物であるHTM6を3.33g、収率91%で得た。
MS:[M
+]=731.5m/z
図4に
1HNMRの測定結果を示す。
【0044】
[実施例5]HTM7の合成
【化13】
【0045】
25mLの四口フラスコに4−フェニルアミノジベンゾフラン520mg(2.01mmol)、4,4”−ジブロモ−2’,3’,5’,6’−テトラフェニル−p−ターフェニル690mg(1.00mmol)、ナトリウムt−ブトキシド500mg(5.20mmol)、脱水トルエン10mlを加え1時間窒素バブリングを行った。そこにトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)92mg(0.100mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート58mg(0.200mmol)を加え、2.5時間還流撹拌を行った。反応混合物をTLC及びMSにて確認したところ、原料が消失し目的物のピークが得られた。反応混合物を室温に戻し、シリカゲルに通し不溶部をろ別した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=3/2)にて精製を行い、目的物であるHTM7を570mg(0.54mmol)、収率54%で得た。
図5に
1HNMRの測定結果を示す。
【0046】
[実施例6]HTM8の合成
【化14】
【0047】
25mLの四口フラスコに4−フェニルアミノジベンゾチオフェン550mg(2.00mmol)、4,4”−ジブロモ−2’,3’,5’,6’−テトラフェニル−p−ターフェニル690mg(1.00mmol)、ナトリウムt−ブトキシド500mg(5.20mmol)、脱水トルエン10mlを加え、1時間窒素バブリングを行った。そこにトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)92mg(0.100mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート58mg(0.200mmol)を加え、1.5時間還流撹拌を行った。反応混合物をTLC及びMSにて確認したところ、原料が消失し目的物のピークが得られた。反応混合物を室温に戻し、シリカゲルに通し不溶部をろ別した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=3:2)にて精製を行い、目的物であるHTM8を1.05g(0.97mmol)、収率97%で得た。
図6に
1HNMRの測定結果を示す。
【0048】
〔アリールアミン誘導体の評価〕
[分子軌道計算結果]
実施例1〜6で得られたHMT3〜HTM8のHOMO、LUMO、T
1をDFT計算(Gaussian03W, B3LYP/6-311+G(d,p)//6-311G)にて見積もった。結果を以下に示す。
【表1】
HMT3〜HTM7のT
1cal.は2.75eV以上であり、高い三重項エネルギーを持つことが示唆された。
【0049】
[熱物性評価]
熱物性評価の機器及び測定方法は以下のとおりである。
(1)融点(T
m)
試料をアルミニウムパンに封入し、示差走査熱量計((株)パーキンエルマージャパン製;DSCDTA)を用いて窒素ガス中で昇温速度10℃/minでガラス転移温度(T
g)、結晶化温度(Tc)、融点(T
m)を測定した。
(2)分解点(T
d5)
試料をアルミニウムパンにのせ、示差熱重量計((株)パーキンエルマージャパン製;TGAダイアモンド)を用いて、窒素ガス中で昇温速度10℃/minで5%重量減衰温度(T
d5)を測定した。
実施例1〜4で得られたHMT3〜HTM6の昇華精製後の上記熱物性の結果を以下に示す。
HMT3〜HTM6は、T
gが118℃以上であり、高い熱安定性を持つことがわかる。
【0050】
【表2】
【0051】
[光学特性評価]
光学特性評価に用いた機器及び測定条件は以下のとおりである。
(1)紫外・可視(UV−vis)分光光度計
(株)島津製作所製 UV−3150
測定条件;スキャンスピード 中速、測定範囲 200〜800nm サンプリングピッチ 0.5nm、スリット幅 0.5nm
(2)フォトルミネッセンス(PL)測定装置
(株)堀場製作所製Fluoro MAX−2
常温(300K)及び低温(5K)において、PLスペクトル、及び、ストリークカメラ(浜松ホトニクス(株)製C4334)を用いた時間分解PLスペクトル(PL過渡スペクトル)を測定した。
(3)光電子収量分光(PYS)装置
住友重機械工業(株)製イオン化ポテンシャル測定装置
イオン化ポテンシャル測定装置を用いて、真空中でイオン化ポテンシャル(Ip)の測定を行った。
電子親和力(E
a)は、UV−vis吸収スペクトルの吸収端よりエネルギーギャップ(E
g)を見積もることによって算出した。
【0052】
実施例1〜4で得られたHMT3〜HTM6について、PYS(
図7)、UV−vis吸収スペクトル(
図8)、PLスペクトル(
図9)の測定結果に基づき、イオン化ポテンシャル(I
p)、バンドギャップエネルギー(E
g)、電子親和力(E
a)、PLスペクトルの吸収極大(λ
PL)を求めた。結果を表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
〔有機EL素子の作製及び評価〕
有機EL素子の発光特性の評価に用いた機器は以下のとおりである。
装置;(株)浜松ホトニクス製 PHOTONIC MULTI−CHANNEL ANALYZER PMA−1
【0055】
デバイスの概略断面図を
図14に示し、使用した材料を以下に示す。
【化15】
【0056】
<ホストmCBP素子>
以下の構造を有する緑色リン光素子を作製した。なお、HTLはホール輸送層を表し、かっこ内は膜厚(nm)を表す。
ITO/KLHIP:PPBI(20)/HTL(20)/mCBP:Ir(ppy)
3 6wt%(30)/TPBi(50)/Liq(1)/Al
HTLはDBTPB、HTM4、又はHTM6である。
素子特性評価の結果を表4に示す。
【0057】
【表4】
【0058】
100cd/m
2、1000cd/m
2時において、HTM4はDBTPBとほぼ同等の 外部量子効率(EQE)を示した。これに対し、HTM6は100cd/m
2、1000cd/m
2時どちらもDBTPBよりも高いEQEを示した。J−V特性を見ると(
図10(a)(b))、立ち上がりはHTM4、HTM6ともに高電圧化している。これは、HTM4(I
p=5.67eV)、HTM6(I
p=5.72eV)はDBTPB(I
p=5.5eV)よりもI
pが深いため、ホール注入層からのホール注入性が悪くなったためと考えられる。HTM4とHTM6では、HTM6の方がmCBP(I
p=6.00eV)とのHOMOのマッチングが良く、発光層に対するホール注入性が良いため低電圧化したものと考えられる。一方で、高電流密度ではHTM4、HTM6はDBTPBよりも高いJ−V特性を示し、1000cd/m
2時の駆動電圧ではHTM6はDBTPBよりも低い駆動電圧を示した。このことから、HTM4、HTM6はDBTPBよりも高いホール輸送性を有することが示唆される。また、素子寿命評価の結果、HTM4及びHTM6はDBTPBの約1.5倍程度の素子寿命を示した(
図11(h))。このことから、新規ホール輸送材料HTM4及びHTM6は既存のDBTPBよりも化学的安定性が高いものと考えられる。
【0059】
<ホストDBT−TRZ素子>
以下の構造を有する緑色リン光素子を作製した。HTLはホール輸送層を表し、かっこ内は膜厚(nm)を表す。
ITO/KLHIP:PPBI(20)/HTL(20)/DBT−TRZ:Ir(ppy)
3 6wt%(30)/TPBi(50)/Liq(1)/Al
HTLはDBTPB、又はHTM6である。
素子特性評価の結果を表5に示す。
【0060】
【表5】
素子特性評価の結果、駆動電圧においては立ち上がり、100cd/m
2時においてHTM6では高電圧化がみられた(
図12(c))。これは、HTM6(I
p=5.72 eV)はDBTPB(I
p=5.5eV)よりもI
pが深いため、ホール注入層からのホール注入性が悪くなったためと考えられる。しかしながら、EQEにおいてはHTM6はDBTPBよりも高い効率を示した(表5)。これは、DBTPBのT
1(2.37eV)がIr(ppy)
3(T
1=2.53eV)よりも低く励起子の閉じ込めが不十分であるのに対し、HTM6はT
1(E
Tcal=2.79eV)が高いためであると考えられる。