特許第6975959号(P6975959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6975959アリールアミン誘導体、それを用いたホール輸送材料及び有機EL素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6975959
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】アリールアミン誘導体、それを用いたホール輸送材料及び有機EL素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/91 20060101AFI20211118BHJP
   C07D 333/76 20060101ALI20211118BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   C07D307/91CSP
   C07D333/76
   H05B33/14 B
   H05B33/22 D
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-143560(P2017-143560)
(22)【出願日】2017年7月25日
(65)【公開番号】特開2019-26556(P2019-26556A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年6月3日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度よりの、国立研究法人科学技術振興機構の研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム COI拠点「フロンティア有機システムイノベーション拠点」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】笹部 久宏
(72)【発明者】
【氏名】城戸 淳二
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 嵩弘
【審査官】 神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−016719(JP,A)
【文献】 特表2015−536567(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0142923(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0053561(KR,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1668448(KR,B1)
【文献】 特表2013−536570(JP,A)
【文献】 特表2019−522676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
H01L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式で示されるアリールアミン誘導体;
【化1】
【請求項2】
請求項1に記載のアリールアミン誘導体を用いたホール輸送材料。
【請求項3】
請求項1に記載のアリールアミン誘導体、又は、請求項に記載のホール輸送材料を用いた有機EL素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い三重項エネルギーを有するアリールアミン誘導体、それを用いたホール輸送材料及び有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子では、一対の電極間に電圧を印加することにより、陽極から正孔が、陰極から電子が、発光材料として有機化合物を含む発光層にそれぞれ注入され、注入された電子及び正孔が再結合することによって、発光性の有機化合物中に励起子が形成され、励起された有機化合物から発光を得ることができる。
【0003】
このような有機EL素子の実用性を向上させる手段の一つは、発光効率を上げることにある。有機化合物が形成する励起子には、一重項励起子(ES1)及び三重項励起子(ET1)があり、一重項励起子(ES1)からの蛍光発光と、三重項励起子(ET1)からのリン光発光とがあるが、素子におけるこれらの統計的な生成比率は、ES1:ET1=1:3であり、蛍光発光を用いる有機EL素子では内部量子効率25%が限界といわれる。そのため、電子からフォトンへの変換効率(内部量子効率)を向上させるべく、三重項励起状態を発光に変換することが可能なリン光材料が開発され、最近、このリン光発光を利用した有機EL素子が報告されている。
【0004】
前記リン光材料としては、イリジウム、白金、レニウム、オスミウムなどの金属錯体があるが、発光特性や安定性などの観点から、Ir(ppy)3(トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III);緑色材料)や、Ir(Fppy)3(トリス[2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジン]イリジウム(III);青色材料)などに代表される、キレート型有機配位子を有するイリジウム錯体が知られており、これらの金属錯体をホスト材料にドーピングすることでキャリア密度を高め、電荷移動性を改良し、励起子を生成している。
【0005】
また、熱活性化遅延蛍光(TADF)の利用も、有機EL素子の高性能化に重要である。TADF材料は蛍光材料でありながら、リン光材料と同様、理論上100%の励起子生成確率を実現することが可能であり、高効率化に有用である。さらにイリジウムや白金などの貴金属が不要な分子設計につき、開発の低コスト化が可能である。したがって、このTADFを利用した発光材料を開発することにより、低コストでかつ、高効率の発光素子が得られると考えられる。
【0006】
一方、ホスト材料としては、電子輸送性を有する材料やホール輸送性を有する材料など、様々なキャリア輸送材料を用いることができる。しかしながら、例えば、代表的なホール輸送材料であるα−NPDは、耐久性は高いが、三重項エネルギーが低く(T1=2.28eV)、リン光またはTADF有機EL素子には不向きである。そのため、高い三重項エネルギーを有するワイドギャップホール輸送材料の開発が検討されている。2013年、深川らはアリールアミン誘導体の末端にジベンゾチオフェンを導入したDBTPBを開発し、緑色リン光素子でα−NPDの約1.5倍の高効率化、及び約2倍程度の長寿命化を実現した(非特許文献1)。しかしながら、そのT1は2.37eV程度であり、Ir(ppy)3(T1=2.53eV)のような代表的な緑色リン光ドーパントや、青色リン光、または緑・青色TADFドーパントとしての利用には不十分であり、高耐久性かつ高いT1を併せ持つホール輸送材料の開発は依然として課題である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】H. Fukagawa et al., Appl. Phys. Chem., 2013, 103, 143306
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、有機EL素子のホスト材料となりうる、高い三重項エネルギーを有するアリールアミン誘導体、並びにこれを用いたホール輸送材料及び有機EL素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の事項からなる。
本発明のアリールアミン誘導体は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
【化1】
一般式(1)中、Ar1〜Ar5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基、又は下記一般式(2)で表される置換基である。
【化2】
一般式(2)中、R1〜R5は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルキル基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルコキシ基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のモノアルキルアミノ基、又は、直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のジアルキルアミノ基であり、Xは酸素原子、硫黄原子、又は−CR67−基(R6及びR7−は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルキル基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルコキシ基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のモノアルキルアミノ基、又は、直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のジアルキルアミノ基である。)である。
Xは、酸素原子又は硫黄原子であることが好ましい。
Xは、酸素原子又は硫黄原子であり、かつ、一般式(1)中、R1〜R5は水素原子又はフェニル基であることが好ましい。
本発明のホール輸送材料は、上記アリールアミン誘導体を用いたものであることを特徴とする。
本発明の有機EL素子は、上記アリールアミン誘導体を用いたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアリールアミン誘導体は、架橋ビフェニル部位、具体的にはジベンゾフラン、又はジベンゾチオフェンを末端部位及び中心骨格に有することにより、Tg>100℃以上の高い熱安定性、及びT1>2.6eV以上の高い三重項エネルギーを併せ持つことができ、リン光又はTADF有機素子の高効率化及び長寿命化を可能とする。
本発明のアリールアミン誘導体は、ホール輸送材料として好適に用いられる以外に、有機EL素子のその他の有機層、例えば、発光層中に発光材料と共に分散して用いてもよいし、電子輸送材料として用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1はHTM3の1HNMRスペクトルを表す。
図2図2はHTM4の1HNMRスペクトルを表す。
図3図3はHTM5の1HNMRスペクトルを表す。
図4図4はHTM6の1HNMRスペクトルを表す。
図5図5はHTM7の1HNMRスペクトルを表す。
図6図6はHTM8の1HNMRスペクトルを表す。
図7図7はHTM3〜HTM6のPYS測定結果を表す。
図8図8はHTM3〜HTM6のUV−vis吸収スペクトルを表す。
図9図9はHTM3〜HTM6のPLスペクトルを表す。
図10図10は、ホール輸送層(HTL)にDBTPB、HTM4及びHTM6を使用した素子のJ−V特性(a)、J−V特性(線形)(b)、L−V特性(c)、及びCE−L特性(d)を表す。
図11図11は、ホール輸送層(HTL)にDBTPB、HTM4又はHTM6を使用した素子のPE−L特性(e)、EQE−L特性(f)、ELスペクトル(g)、及び素子寿命(h)を表す。
図12図12は、ホール輸送層(HTL)にDBTPB、又はHTM6を使用した素子のJ−V特性(a),J−V特性(線形)(b)、L−V特性(c)、CE−L特性(d)、PE−L特性(e)、及びEQE−L特性(f)を表す。
図13図13は、ホール輸送層(HTL)にDBTPB、又はHTM6を使用した素子のELスペクトルを表す。
図14図14は実施例の有機EL素子の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、詳細に説明する。
[アリールアミン誘導体]
本発明のアリールアミン誘導体は、下記一般式(1)で表される。
【化3】
一般式(1)中、Ar1〜Ar5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基、又は下記一般式(2)で表される置換基である。
【0013】
【化4】
一般式(2)中、R1〜R5は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルキル基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルコキシ基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のモノアルキルアミノ基、又は、直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のジアルキルアミノ基であり、Xは酸素原子、硫黄原子、又は−CR67−基(R6及びR7−は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルキル基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルコキシ基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のモノアルキルアミノ基、又は、直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のジアルキルアミノ基である。)である。
【0014】
Ar1〜Ar5について、置換基を有していてもよいアリール基とは、炭素原子数6〜22の芳香族置換基である。前記芳香族置換基は、炭化水素環及び複素環のいずれでもよく、単環又は縮合環のいずれでもよい。
Ar1〜Ar5のうち、Ar1、Ar2、Ar4及びAr5は、結合手を1つ有する基であり、具体的には、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、トリフェニレニル基、ターフェニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾール基、及びインドロカルバゾール基等が挙げられる。このうち、ジベンゾフラニル基、及びジベンゾチオフェニル基が好ましく、1−ジベンゾフラニル基、及び1−ジベンゾチオフェニル基がより好ましい。
Ar3は結合手を2つ有する基であり、具体的には、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレニレン基、アントラセニレン基、フェナントレニレン基、トリフェニレニレン基、ターフェニレン基、ジベンゾフラニレン基、ジベンゾチオフェニレン基、カルバゾール基、及びインドロカルバゾール基等が挙げられる。このうち、ジベンゾフラニレン基、及びジベンゾチオフェニレン基が好ましく、3,6−ジベンゾフラニレン基、及び3,6−ジベンゾチオフェニレン基がより好ましい。
アリール基が有してもよい置換基とは、例えば、アルキル基、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントロリル基、アセチル基、シアノ基などが挙げられる。
【0015】
1〜R5について、直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルキル基には、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、イソブチル基、及びt−ブチル基等が挙げられる。
直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルコキシ基には、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、2−プロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、及びt−ブトキシ基等が挙げられる。
直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のモノアルキルアミノ基には、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、1−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、シクロプロピルアミノ基、1−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、s−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、シクロブチルアミノ基、1−ペンチルアミノ基、2−ペンチルアミノ基、3−ペンチルアミノ基、イソペンチルアミノ基、ネオペンチルアミノ基、1−ヘキシルアミノ基、2−ヘキシルアミノ基、3−ヘキシルアミノ基、及びピペリジニル基等が挙げられる。
直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のジアルキルアミノ基には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、及びジヘキシルアミノ基等が挙げられる。
これらのうち、R1〜R5は水素原子又はフェニル基であることがより好ましい。
【0016】
Xは酸素原子、硫黄原子、又は−CR67−基である。−CR67−基において、R6及びR7−は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルキル基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルコキシ基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のモノアルキルアミノ基、又は、直鎖若しくは分岐鎖の炭素原子数1〜6のジアルキルアミノ基である。
上記アルキル基、アルコキシ基、モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基は、R1〜R5について上記したものと同じである。
【0017】
上記アリールアミン誘導体はπ共役系を有する。π共役系を持つ分子は可視領域に光吸収帯を有し、その多くが色素として機能しうることが知られている。さらに、このような分子に官能基を適宜付加して電子的性質を変えることで、エネルギーギャップを調節することができる。すなわち、本発明では、アリールアミン誘導体における、一重項励起状態(ES1)と三重項励起状態(ET1)とのエネルギーギャップをできるだけ小さくするよう分子設計することで、いったん三重項励起状態に移ったエネルギーを、再び一重項励起状態に戻すことが可能となり、効率の高い蛍光を取り出すことができる。よって、本発明のアリールアミン誘導体は、緑色蛍光材料として、例えば、ピーク波長514nmのリン光発光材料Ir(ppy)3を用いた緑色リン光素子に好適に用いられる。
【0018】
上記一般式(1)で表されるアリールアミン誘導体は、具体的には、以下の構造式で表される化合物であることがより好ましい。
【化5】
【0019】
本発明のアリールアミン誘導体は、例えば、以下に示す方法により製造することができる。HTM−4の製造方法を一例に示す。
【化6】
【0020】
4−ブロモジベンゾフラン及びアニリンを脱水1,4−ジオキサン中で、Pd(0)及び塩基の存在下で攪拌した後、N−ヘテロ環状カルベン(NHC)配位子として、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリニウムクロリドを添加し、4−フェニルアミノジベンゾフランを得る。その後、2当量の4−フェニルアミノジベンゾフラン及び2,8−ジブロモジベンゾチオフェンを脱水トルエン中で、塩基の存在下に攪拌した後、Pd(0)及びトリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラートを添加してさらに攪拌することにより、良好な収率でHTM−4を得る。
なお、本発明のアリールアミン誘導体は、上記の方法のほか、種々の公知の方法で製造することができる。
【0021】
[ホール輸送材料、有機EL素子]
本発明のホール輸送材料、及び有機EL素子は、上記アリールアミン誘導体を用いたものである。
上記有機EL素子は、電極間に有機層を一層又は二層以上積層した構造であり、例えば、(i)電極2/ホール輸送層4/発光層5/電子輸送層7/電極2’、又は(ii)電極2/ホール輸送層4/発光層5/電子輸送層7/電子注入層/電極2’がこの順に積層した構造を有する。図14は、実施例の有機EL素子の層構造を示すものであり、基板1上に電極2を成膜し、その上にホール注入輸送層3、ホール輸送層4、発光層5、正孔阻止層6、電子輸送層6、及び電極2’がこの順に積層した構造を示している。なお、有機層とは、電極以外の層、すなわち、ホール注入輸送層、ホール輸送層、発光層、正孔阻止層、及び電子輸送層等を指す。
【0022】
基板1には、透明かつ平滑であって、少なくとも70%以上の全光線透過率を有するものが用いられ、具体的には、フレキシブルな透明基板である、数μm厚のガラス基板や特殊な透明プラスチック等が用いられる。
【0023】
基板1上に形成される、電極2、ホール注入輸送層3、ホール輸送層4、発光層5、正孔阻止層6、電子輸送層7、電極2’といった薄膜は、真空蒸着法又は塗布法で積層される。真空蒸着法を用いる場合、通常10-3Pa以下に減圧した雰囲気で、蒸着物を加熱して行う。各層の膜厚は、層の種類や使用する材料によって異なるが、通常、電極2、2’は100nm程度、発光層5を含む他の有機層は50nm未満である。
【0024】
電極2は、通常は陽極であり、仕事関数が大きく、また全光線透過率は通常80%以上であるものが用いられる。具体的には、陽極から発光した光を透過させるため、酸化インジウムスズ(ITO)やZnO等の透明導電性セラミックス、PEDOT/PSSやポリアニリン等の透明導電性高分子、その他の透明導電性材料が用いられる。陽極の膜厚は、通常10〜200nmである。
【0025】
発光層5には、有機EL素子で用いられる他の発光層と同様に、発光材料と共にホスト化合物を併用することが好ましい。発光材料には、例えば、リン光発光材料であるトリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)、ビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−C2,N](ピコリナト)イリジウム(III)(FIrpic)、トリス[1−フェニルイソキノリン−C2,N]イリジウム(III)(Ir(piq)3)、及び熱活性化遅延蛍光材料である(4s,6s)−2,4,5,6−テトラ(9H−カルバゾール−9−イル)イソフタロニトリル(4CzIPN)、10,10’−(4,4’−スルホニルビス(4,1−フェニレン))ビス(9,9−ジメチル−9,10−ジヒドロアクリジン))(DMAC−DPS)等が挙げられる。ホスト化合物には、例えば、ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシド(DPEPO)、3,6−ビス(ジフェニルホルホリル)−9−フェニルカルバゾール(PO9)、4,4’−ビス(N−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニル(CBP)、3,3’−ビス(N−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニル(mCBP)、トリス(4−カルバゾイル−9−イルフェニル)アミン(TCTA)、2,8−ビス(ジフェニルホスホリル)ジベンゾチオフェン(PPT)、アダマンタン・アントラセン(Ad−Ant)、ルブレン、及び2,2’−ビ(9,10−ジフェニルアントラセン)(TPBA)等が挙げられる。
【0026】
陽極から正孔を効率良く発光層に輸送するために陽極と発光層5の間に、ホール注入輸送層3や、ホール輸送層4が設けられる。
正孔注入輸送層3を構成する正孔注入輸送材料には、例えば、(ポリ(アリーレンエーテルケトン)含有トリフェニルアミン(KLHIP:PPBI)、ヘキサアザトリフェニレンカルボニトリル(HATCN)、PEDOT:PSS等が挙げられる。正孔注入輸送層3は、有機EL素子の駆動電圧を下げる効果を発揮する。正孔注入輸送層3の膜厚は、通常1〜20nmである。
【0027】
電極2’は通常、陰極である。陰極から電子を効率良く発光層5に輸送するために、電極2’と発光層5の間に、正孔阻止層6や電子輸送層7が設けられる。電子輸送層7を形成する電子輸送材料には、例えば、8−ヒドロキシキノリノラトリチウム(Liq)、4,6−ビス(3,5−ジ(ピリジン−3−イル)フェニル)−2−メチルピリミジン(B3PymPm)、4,6−ビス(3,5−ジ(ピリジン−4−イル)フェニル)−2−フェニルピリミジン(B4PyPPm)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)、1,3−ビス[5−(4−t−ブチルフェニル)−2−[1,3,4]オキサジアゾリル]ベンゼン(OXD−7)、3−(ビフェニル−4−イル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−4−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、バソクプロイン(BCP)、1,3,5−トリス(1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン(TPBi)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)等が挙げられる。これらのうち、TPBi及びTAZは、正孔阻止性に優れた電子輸送材料である。正孔阻止層6及び電子輸送層7の膜厚は、目的の設計に応じて適宜変更することができるが、通常3〜50nmである。
【0028】
電極2’には、仕事関数が低く(4eV以下)、かつ、化学的に安定なものが用いられる。具体的には、Al、MgAg合金、又は、AlLiやAlCa等のAlとアルカリ金属との合金等の陰極材料が用いられる。これらの陰極材料は、例えば、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、又はイオンプレーティング法により成膜される。陰極の厚さは、通常10nm〜1μm、好ましくは50〜500nmである。
【0029】
その他、正孔阻止層6、電子阻止層及び励起子阻止層等の層が、必要に応じてさらに形成される。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例により制限されるものではない。
【0031】
〔アリールアミン誘導体の合成〕
合成物の同定に用いた機器及び測定条件は以下のとおりである。
(1)1H核磁気共鳴法(NMR)
日本電子(株)製、400MHz、JNM−EX270FT−NMR
(2)質量分析法(MS)
日本電子(株)製、JMS−K9[卓上 GCQMS]
【0032】
[合成例1]1,4−フェニルアミノジベンゾフランの合成
【化7】
【0033】
25mlの三口フラスコに4−ブロモジベンゾフラン5.0g(20.3mmol)、アニリン2.3g(25.2mmol)、ナトリウムt−ブトキシド(t−BuONa)5.05g(52.7mmol)、及び脱水1,4−ジオキサン100mlを加えて1時間窒素バブリングした。その後、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(Pd(dba)2)581mg(1.01mmol)、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリニウムクロリド859mg(2.02mmol)を加えて窒素気流下、攪拌しながら2時間加熱還流を行った。TLCで原料の消費を確認後、MSで目的物の生成を確認し、反応液を常温に戻した後、水15mlを加えて攪拌した。その後、有機層をジエチルエーテルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、褐色粘体を得た。得られた粘体をトルエン/ヘキサン混合溶媒(1:1)200mlに溶解させ、シリカゲル(ガラスフィルターに4cmほど積む)を通じて吸引ろ過、濃縮し黄白色固体を得た。得られた固体はエタノールを用いて再結晶精製し、白色固体を得た。目的物の同定はMS及び1H−NMRにて行った。
収量4.53g、収率86%
MS:[M]=259.3m/z
【0034】
[合成例2]1,4−フェニルアミノジベンゾチオフェンの合成
【化8】
【0035】
25mLの三口フラスコに4−ブロモジベンゾチオフェン1.00g(3.80mmol)、アニリン450μl(4.94mmol)、ナトリウムt−ブトキシド950mg(9.89mmol)、脱水トルエン20mlを加え、1時間窒素バブリングを行った。そこにトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3)170mg(0.19mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート([(t−Bu)3PH]+BF4-)110mg(0.38mmol)を加え、2時間加熱還流を行った。反応混合物をTLC及びMassにて確認したところ、原料が消失し、目的物のピークが得られた。反応混合物を室温に戻し、トルエン抽出、ブライン洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=7/3)で精製し、目的物である4−フェニルアミノジベンゾチオフェンを951mg(3.45mmol)、収率91%で得た。目的物の同定はMS及び1H−NMRにて行った。
【0036】
[実施例1]HTM3の合成
【化9】
【0037】
50mlの四口フラスコに4−フェニルアミノジベンゾチオフェン2.75g(10mmol)、2,8−ジブロモジベンゾフラン1.63g(5.0mmol)、ナトリウムt−ブトキシド2.5g(26mmol)、脱水トルエン50mlを加えて1時間窒素バブリングした。その後、Pd2(dba)3460mg(0.5mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(t−Bu3PH+BF4-)290mg(1.0mmol)を加えて窒素気流下で攪拌しながら53時間加熱還流を行った。TLC及びMSで目的物の生成を確認した。反応液を常温に冷ました後、有機層をトルエンで抽出、ブラインで洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥、ろ過、濃縮し、褐色粘体を得た。得られた粘体をトルエン10mlに溶解させ、カラムに充填した。そのままシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/ヘキサン=1/4)にて精製し、目的物を得た。
収量1.92g、収率54%
MS:[M+]=714.7m/z
図11HNMRの測定結果を示す。
【0038】
[実施例2]HTM4の合成
【化10】
【0039】
25mlの四口フラスコに4−フェニルアミノジベンゾフラン1.16g(4.5mmol)、2,8−ジブロモジベンゾチオフェン0.51g(1.5mmol)、t−BuONa 1.13g(11.7mmol)、脱水トルエン20mlを加えて1時間窒素バブリングした。その後、Pd2(dba)3 210mg(0.23mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート130mg(0.45mmol)を加えて窒素気流下で13時間加熱還流を行った。TLC及びMSにて目的物の生成を確認し、反応液を常温に戻した。その後、有機層をトルエンで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、褐色粘体を得た。得られた粘体をトルエン10mlに溶解させ、シリカゲルカラムに充填した。そのままシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/ヘキサン=1/3(2.5L)にて精製を行い、目的物であるHTM4を0.46g、収率44%で得た。
MS:[M+]=699.4m/z
図21HNMRの測定結果を示す。
【0040】
[実施例3]HTM5の合成
【化11】
【0041】
25mlの四口フラスコに4−フェニルアミノジベンゾフラン0.52g(2.0mmol)、2,8−ジブロモジベンゾフラン0.33g(1.0mmol)、ナトリウムt−ブトキシド500mg(5.2mmol)、脱水トルエン10mlを加えて1時間窒素バブリングした。その後、Pd2(dba)392mg(0.10mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート58mg(0.20mmol)を加えて、窒素気流下で攪拌しながら12時間加熱還流を行った。TLC及びMSにて目的物の生成を確認した。反応液を常温に冷ました後、有機層をトルエンで抽出、ブラインで洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥、ろ過、濃縮し、褐色粘体を得た。得られた粘体をトルエン5mlに溶解させ、カラムに充填した。そのままシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/ヘキサン=1/4)にて精製し、目的物であるHTM5を0.51g、収率75%で得た。
MS:[M+]=683.7m/z
図31HNMRの測定結果を示す。
【0042】
[実施例4]HTM6の合成
【化12】
【0043】
50mlの三口フラスコに4−フェニルアミノジベンゾチオフェン2.75g(10.0mmol)、2,8−ジブロモジベンゾジオフェン1.71g(5.0mmol)、ナトリウムt−ブトキシド2.50g(26.0mmol)、脱水トルエン50mlを加えて1時間窒素バブリングした。その後、Pd2(dba)3 460mg(0.50mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート290mg(1.0mmol)を加えて窒素気流下で攪拌しながら50時間加熱還流を行った。TLC及びMSにて目的物の生成を確認した。反応液を常温に冷ました後、有機層をトルエンで抽出、ブラインで洗浄後無水硫酸マグネシウムにて乾燥、ろ過、濃縮し、褐色粘体を得た。得られた粘体をトルエン5mlに溶解させ、カラムに充填した。そのままシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/ヘキサン=1/4)にて精製し、目的物であるHTM6を3.33g、収率91%で得た。
MS:[M+]=731.5m/z
図41HNMRの測定結果を示す。
【0044】
[実施例5]HTM7の合成
【化13】
【0045】
25mLの四口フラスコに4−フェニルアミノジベンゾフラン520mg(2.01mmol)、4,4”−ジブロモ−2’,3’,5’,6’−テトラフェニル−p−ターフェニル690mg(1.00mmol)、ナトリウムt−ブトキシド500mg(5.20mmol)、脱水トルエン10mlを加え1時間窒素バブリングを行った。そこにトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)92mg(0.100mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート58mg(0.200mmol)を加え、2.5時間還流撹拌を行った。反応混合物をTLC及びMSにて確認したところ、原料が消失し目的物のピークが得られた。反応混合物を室温に戻し、シリカゲルに通し不溶部をろ別した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=3/2)にて精製を行い、目的物であるHTM7を570mg(0.54mmol)、収率54%で得た。
図51HNMRの測定結果を示す。
【0046】
[実施例6]HTM8の合成
【化14】
【0047】
25mLの四口フラスコに4−フェニルアミノジベンゾチオフェン550mg(2.00mmol)、4,4”−ジブロモ−2’,3’,5’,6’−テトラフェニル−p−ターフェニル690mg(1.00mmol)、ナトリウムt−ブトキシド500mg(5.20mmol)、脱水トルエン10mlを加え、1時間窒素バブリングを行った。そこにトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)92mg(0.100mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート58mg(0.200mmol)を加え、1.5時間還流撹拌を行った。反応混合物をTLC及びMSにて確認したところ、原料が消失し目的物のピークが得られた。反応混合物を室温に戻し、シリカゲルに通し不溶部をろ別した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=3:2)にて精製を行い、目的物であるHTM8を1.05g(0.97mmol)、収率97%で得た。
図61HNMRの測定結果を示す。
【0048】
〔アリールアミン誘導体の評価〕
[分子軌道計算結果]
実施例1〜6で得られたHMT3〜HTM8のHOMO、LUMO、T1をDFT計算(Gaussian03W, B3LYP/6-311+G(d,p)//6-311G)にて見積もった。結果を以下に示す。
【表1】
HMT3〜HTM7のT1cal.は2.75eV以上であり、高い三重項エネルギーを持つことが示唆された。
【0049】
[熱物性評価]
熱物性評価の機器及び測定方法は以下のとおりである。
(1)融点(Tm
試料をアルミニウムパンに封入し、示差走査熱量計((株)パーキンエルマージャパン製;DSCDTA)を用いて窒素ガス中で昇温速度10℃/minでガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc)、融点(Tm)を測定した。
(2)分解点(Td5
試料をアルミニウムパンにのせ、示差熱重量計((株)パーキンエルマージャパン製;TGAダイアモンド)を用いて、窒素ガス中で昇温速度10℃/minで5%重量減衰温度(Td5)を測定した。
実施例1〜4で得られたHMT3〜HTM6の昇華精製後の上記熱物性の結果を以下に示す。
HMT3〜HTM6は、Tgが118℃以上であり、高い熱安定性を持つことがわかる。
【0050】
【表2】
【0051】
[光学特性評価]
光学特性評価に用いた機器及び測定条件は以下のとおりである。
(1)紫外・可視(UV−vis)分光光度計
(株)島津製作所製 UV−3150
測定条件;スキャンスピード 中速、測定範囲 200〜800nm サンプリングピッチ 0.5nm、スリット幅 0.5nm
(2)フォトルミネッセンス(PL)測定装置
(株)堀場製作所製Fluoro MAX−2
常温(300K)及び低温(5K)において、PLスペクトル、及び、ストリークカメラ(浜松ホトニクス(株)製C4334)を用いた時間分解PLスペクトル(PL過渡スペクトル)を測定した。
(3)光電子収量分光(PYS)装置
住友重機械工業(株)製イオン化ポテンシャル測定装置
イオン化ポテンシャル測定装置を用いて、真空中でイオン化ポテンシャル(Ip)の測定を行った。
電子親和力(E)は、UV−vis吸収スペクトルの吸収端よりエネルギーギャップ(E)を見積もることによって算出した。
【0052】
実施例1〜4で得られたHMT3〜HTM6について、PYS(図7)、UV−vis吸収スペクトル(図8)、PLスペクトル(図9)の測定結果に基づき、イオン化ポテンシャル(Ip)、バンドギャップエネルギー(Eg)、電子親和力(Ea)、PLスペクトルの吸収極大(λPL)を求めた。結果を表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
〔有機EL素子の作製及び評価〕
有機EL素子の発光特性の評価に用いた機器は以下のとおりである。
装置;(株)浜松ホトニクス製 PHOTONIC MULTI−CHANNEL ANALYZER PMA−1
【0055】
デバイスの概略断面図を図14に示し、使用した材料を以下に示す。
【化15】
【0056】
<ホストmCBP素子>
以下の構造を有する緑色リン光素子を作製した。なお、HTLはホール輸送層を表し、かっこ内は膜厚(nm)を表す。
ITO/KLHIP:PPBI(20)/HTL(20)/mCBP:Ir(ppy)3 6wt%(30)/TPBi(50)/Liq(1)/Al
HTLはDBTPB、HTM4、又はHTM6である。
素子特性評価の結果を表4に示す。
【0057】
【表4】
【0058】
100cd/m2、1000cd/m2時において、HTM4はDBTPBとほぼ同等の 外部量子効率(EQE)を示した。これに対し、HTM6は100cd/m2、1000cd/m2時どちらもDBTPBよりも高いEQEを示した。J−V特性を見ると(図10(a)(b))、立ち上がりはHTM4、HTM6ともに高電圧化している。これは、HTM4(Ip=5.67eV)、HTM6(Ip=5.72eV)はDBTPB(Ip=5.5eV)よりもIpが深いため、ホール注入層からのホール注入性が悪くなったためと考えられる。HTM4とHTM6では、HTM6の方がmCBP(Ip=6.00eV)とのHOMOのマッチングが良く、発光層に対するホール注入性が良いため低電圧化したものと考えられる。一方で、高電流密度ではHTM4、HTM6はDBTPBよりも高いJ−V特性を示し、1000cd/m2時の駆動電圧ではHTM6はDBTPBよりも低い駆動電圧を示した。このことから、HTM4、HTM6はDBTPBよりも高いホール輸送性を有することが示唆される。また、素子寿命評価の結果、HTM4及びHTM6はDBTPBの約1.5倍程度の素子寿命を示した(図11(h))。このことから、新規ホール輸送材料HTM4及びHTM6は既存のDBTPBよりも化学的安定性が高いものと考えられる。
【0059】
<ホストDBT−TRZ素子>
以下の構造を有する緑色リン光素子を作製した。HTLはホール輸送層を表し、かっこ内は膜厚(nm)を表す。
ITO/KLHIP:PPBI(20)/HTL(20)/DBT−TRZ:Ir(ppy)3 6wt%(30)/TPBi(50)/Liq(1)/Al
HTLはDBTPB、又はHTM6である。
素子特性評価の結果を表5に示す。
【0060】
【表5】
素子特性評価の結果、駆動電圧においては立ち上がり、100cd/m2時においてHTM6では高電圧化がみられた(図12(c))。これは、HTM6(Ip=5.72 eV)はDBTPB(Ip=5.5eV)よりもIpが深いため、ホール注入層からのホール注入性が悪くなったためと考えられる。しかしながら、EQEにおいてはHTM6はDBTPBよりも高い効率を示した(表5)。これは、DBTPBのT1(2.37eV)がIr(ppy)3(T1=2.53eV)よりも低く励起子の閉じ込めが不十分であるのに対し、HTM6はT1(ETcal=2.79eV)が高いためであると考えられる。
【符号の説明】
【0061】
1 基板
2、2’ 電極
3 正孔注入輸送層
4 ホール輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14