特許第6975969号(P6975969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6975969架橋された塗膜用の洗浄剤組成物および床面の管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6975969
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】架橋された塗膜用の洗浄剤組成物および床面の管理方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/72 20060101AFI20211118BHJP
   C11D 1/722 20060101ALI20211118BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20211118BHJP
   C11D 3/30 20060101ALI20211118BHJP
   A47L 11/28 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   C11D1/72
   C11D1/722
   C11D3/20
   C11D3/30
   A47L11/28
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-231138(P2017-231138)
(22)【出願日】2017年11月13日
(65)【公開番号】特開2019-89992(P2019-89992A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2020年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】319001710
【氏名又は名称】シーバイエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】栢森 聡
【審査官】 山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−291178(JP,A)
【文献】 特表2009−511795(JP,A)
【文献】 特表2004−526821(JP,A)
【文献】 特表2013−531090(JP,A)
【文献】 特表2011−504203(JP,A)
【文献】 特開平07−179892(JP,A)
【文献】 特開平09−241687(JP,A)
【文献】 特開2005−329233(JP,A)
【文献】 特表2002−526629(JP,A)
【文献】 特表平08−508523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00−19/00
A47L 11/28
C09D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水で40〜500倍に希釈され、床上の架橋された塗膜に塗布された状態で、上記塗膜の一部を洗浄除去するのに用いられる洗浄剤組成物であって、
a)70〜97質量%のフェニル置換アルキルアルコール、
b)2〜25質量%のポリオキシアルキレンアルキルエーテルおよびポリオキシアルキレンブロックポリマーから選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤
c)1〜15質量%の有機アミン
を含むことを特徴とする、架橋された塗膜用の洗浄剤組成物。
【請求項2】
フェニル置換アルキルアルコールが、ベンジルアルコールを含む、請求項1に記載の、架橋された塗膜用の洗浄剤組成物。
【請求項3】
イ)請求項1〜2のいずれか1項に記載の、架橋された塗膜用の洗浄剤組成物を、水で40〜500倍に希釈して洗浄液とし、汚れもしくは傷のついた床上の塗膜へ、該洗浄液を塗布する工程、
ロ)汚れもしくは傷のついた床上の塗膜に塗布した該洗浄液を、継続して接触させる工程、並びに
ハ)洗浄用パッドにて、汚れもしくは傷のついた該塗膜の表層の一部を研削・研磨にて洗浄除去する工程
を含む、床上の架橋された塗膜の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面を維持管理してきたフロアーポリッシュ組成物、およびそれに代わって近年増加している、床上に高度に架橋された床仕上げ剤塗膜までも長期間にわたり美観維持ができ、簡便で作業性と経済性に優れた床面の維持管理方法及びそれに用いる塗膜洗浄剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
百貨店、スーパーマーケット、量販店、小売店、コンビニエンスストアー、学校、図書館、病院、福祉施設、空港施設、鉄道施設及びオフィスビル等の合成樹脂からなる化学床材、コンクリートや大理石等の石床などの床面には、床材の美観を保つとともに、床面の保護を目的として、フロアーポリッシュ組成物による塗膜が形成されている。
【0003】
なかでも水性ポリマータイプが主流となっているが、美観維持には限度があり、定期的に洗浄と塗り重ねを行なったり、一定期間を経過するとアルカリ性の剥離剤で、塗膜を完全除去する工程を行なう必要があり、作業頻度が多く、廃液処理などの環境負荷が問題視されている。また、病院などでのアルコール消毒剤による塗膜の白化やスーパーマーケットの惣菜コーナーでの油汚れなど解決されていない課題も多い。
【0004】
そこで近年、更なる耐摩耗性や、アルコール消毒剤や次亜塩素酸ソーダなどの消毒剤、油や飲料などの液体に対する耐性の高い塗膜として、高度に架橋された塗膜を床面に形成することが各種提案されている。
【0005】
フロアーポリッシュ塗膜が形成された床面に対する定期清掃においては、アルカリ性の床用クリーナーを用いた洗浄・すすぎ作業を行うことが一般的であるが、できるだけ完全に汚れや傷を除去するためにフロアーポリッシュ塗膜の表層の一部を洗浄除去し、新たにフロアーポリッシュ組成物を塗布・乾燥させて、フロアーポリッシュ塗膜を再形成し、床面の美観を維持管理する作業を行うことが多くなってきた。
【0006】
このような、床面のフロアーポリッシュ塗膜の少なくとも1層を除去することで表面の汚れや傷を効果的に除去できる洗浄剤が提案されている(特許文献1を参照)。
しかし、フロアーポリッシュ塗膜に対しては、一定の塗膜除去性能が得られるものの、近年増えつつある高度に架橋された塗膜に対しては、極表面の洗浄にとどまってしまい、十分な塗膜の洗浄除去効果が得られない。
【0007】
また、化学的耐性のある架橋した床仕上げ剤のための床剥離剤および、剥離するかディープスクラブする方法が提案されている(特許文献2を参照)。
しかし、この技術では、塗膜の洗浄除去を行ないたい場合、洗浄液と塗膜との接触時間を一定にするのは困難であり、ポリッシャーの掛け方の違いなども影響して、多く除去される部分と少なく除去される部分ができるなど、塗膜の表層を均一に研削洗浄することができず、ムラになりやすい。
一方、水の希釈割合を高めると、とりわけ高度に架橋された塗膜に対しては、含有する有機溶剤成分が少なくなり、塗膜内に十分浸透して軟化させることができず、極表面の洗浄にとどまってしまうため、所望の洗浄除去効果が得られない。
【特許文献1】特許第5000098号公報
【特許文献2】特許第5379153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フロアーポリッシュ塗膜の管理においては、洗浄作業に対して、定期的に行なわれる全ての塗膜を除去する剥離除去作業は、その剥離剤組成物成分が溶剤や強アルカリ成分からなるため通常の洗浄作業よりも技術を必要とすること、作業時に床面がすべる事故が起こり易くなること、剥離除去作業後の廃液の処理が必要なことなどの制約が多いことから、剥離除去作業の周期を長くすることが求められており、最近では、極力剥離をしないで床面の美観を維持できる管理方法が要望されている。
【0009】
また、フロアーポリッシュ組成物では、金属架橋比率を高めて化学的耐性を高めたり、水性ウレタン樹脂を添加することで耐摩耗性を高めたりしている。また共有結合架橋などによって化学的耐性などの性能を高めた組成物が増えてきている(これらを塗布・乾燥して得られる塗膜を「高度に架橋された塗膜」と呼ぶ)が、いずれも傷やスカッフマーク(歩行による塗膜の凹み)に食い込んだ汚れが取れにくい場合が多い。従って、より効果的な洗浄剤および、簡便で、作業性と経済性に優れた床面の維持管理方法が要望されている。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、フロアーポリッシュ塗膜だけにとどまらず、高度に架橋された塗膜が形成されている床面を維持管理する方法において、特定の洗浄剤組成物を用いることで、床面に塗り重ねられている塗膜の表層の一部を洗浄除去することを特徴とする、長期間にわたって床面の美観維持ができ、簡便で、作業性と経済性に優れた床面の維持管理方法及びそれに用いる塗膜の洗浄剤組成物の提供をその目的とする。
なお、本発明における塗膜の洗浄除去とは、床面に塗り重ねられているすべての塗膜を除去することなく一部の塗膜を除去および洗浄することであり、床面にある全ての塗膜を除去する剥離とは本質的に異なるものである。その際、除去されずに床面上に残る塗膜が一定の厚みを有していれば、洗浄除去後に必要以上に光沢を低下させず、光沢にムラがない状態を保っていることが好ましい。しかしながら、床面に1〜2層程度しか塗膜が塗られていない場合には、塗膜が薄いため、その全てを除去してしまったとしても、本発明の思想から除外するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、上記の目的を達成する洗浄剤組成物と、床面の維持管理方法を見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、床上に形成された架橋された塗膜の汚れや傷を洗浄除去する洗浄剤組成物であって、a)50〜97質量%のフェニル置換アルキルアルコール、b)2〜25質量%のポリオキシアルキレンアルキルエーテルおよびポリオキシアルキレンブロックポリマーから選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤、c)1〜25質量%の有機アミンを含むことを特徴とする、架橋された塗膜用の洗浄剤組成物を第1の要旨とする。
【0012】
また、本発明は、イ)上記1の洗浄剤組成物を、水で40〜500倍に希釈して洗浄液とし、汚れもしくは傷のついた床上の塗膜へ、該洗浄液を塗布する工程、ロ)汚れもしくは傷のついた床上の塗膜へ、該洗浄液を継続して接触させる工程、並びにハ)洗浄用パッドにて、汚れもしくは傷のついた該塗膜の表層の一部を研削・研磨にて洗浄除去する工程を含む、床上の架橋された塗膜の管理方法を第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の洗浄剤またはそれを用いた特定の洗浄作業工程により、長期間にわたって床面の美観維持ができ、簡便で、作業性と経済性に優れたものとなっている。
即ち、洗浄や剥離が難しい高度に架橋された塗膜であっても、強力に洗浄することができるため、より少ない塗布回数で光沢にムラがない清浄な仕上がり状態の塗膜を形成したり、バフィングによって光沢を向上させるだけで良好な塗膜状態を長期に維持することができる。また、剥離作業が不要になるか、もしくは剥離作業の周期を大幅に延長することができる。
【0014】
特に、本発明の洗浄剤組成物と、望ましくは研削・研磨効果の高いダイヤモンド粒子を付着させた洗浄用パッドを装着したポリッシャー又は自動床洗浄機とを併用することにより、多層の塗膜のうち、汚れと傷が塗膜の内部まで入り込んだ表層の一部の塗膜を均一に研削し、平滑に研磨できるので、洗浄後のリコートを1層で済ませても十分な光沢が得られることが可能になり、作業時間の短縮が図れ、経済的効果も優れている。
また、必要以上に塗膜が厚くならないので、もしも剥離作業が必要になった際も容易に剥離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
まず、本発明の床面の維持管理方法について詳細に説明する。
【0016】
本発明の床面の維持管理方法としては、床材上に、少なくとも床仕上げ剤組成物を繰り返し塗布・乾燥してなる多層の架橋された塗膜が形成されている床構造体の床面を維持管理する方法であって、イ)特定の洗浄剤組成物を、水で40〜500倍に希釈して洗浄液とし、汚れもしくは傷のついた床上の塗膜へ、該洗浄液を塗布する工程、ロ)汚れもしくは傷のついた床上の塗膜へ、該洗浄液を継続して接触させる工程、並びにハ)洗浄用パッドにて、汚れもしくは傷のついた該塗膜の表層の一部を研削・研磨にて洗浄除去する工程を含む、床上の架橋された塗膜の管理方法である。
【0017】
その後、より少ない塗布回数で床仕上げ剤をリコートし、光沢にムラがない高光沢で清浄な仕上がり状態の塗膜を形成したり、リコートの代わりにバフィングによって光沢を復元させるだけで良好な塗膜状態を形成したりすることができる。
【0018】
上記洗浄剤組成物の希釈液を、塗膜を洗浄除去すべき面に適用する作業においては、本発明の洗浄剤組成物を、塗膜の種類や状態により、予め40〜500倍に水で希釈し、モップやアプリケータ等で塗膜を洗浄除去する床面に塗布する方法が好ましい。用いる洗浄剤組成物の希釈液の量としては、洗浄除去する塗膜の種類や状態により適宜決定されるが、洗浄除去すべき床の面積に対して、通常50〜350mL/m、好ましくは100〜250mL/mで用いられる。更に好ましくは150〜200mL/mである。少ないとはじいたり、乾いたりして、均一な洗浄効果が得られない。多すぎると、什器下に流れ込んだり、洗浄時に撒き散らしてしまい周囲を汚染したり、回収量が多くなり清掃効率が低下する。
上記洗浄剤組成物の希釈液の塗布に用いられるモップ等としては、木綿等の天然繊維、アクリル,ナイロン等の化学繊維、不織布を素材とするものが用いられる。
【0019】
なお、上記特定の洗浄剤組成物の希釈液を、汚れもしくは傷のついた床面に塗布した後、比較的すぐにポリッシャーや自動床洗浄機にて洗浄除去作業を行なってもよいが、塗布された洗浄剤組成物の希釈液が、汚れもしくは傷のついた塗膜を軟化させることのできる時間を設けた方が、洗浄パッドの能力に応じた塗膜厚を均一に研削でき、また平滑に研磨できるため望ましい。
上記特定の洗浄剤組成物の希釈液を、汚れもしくは傷のついた床面に塗布してから、通常は5〜60分、更に望ましくは10〜30分程度放置してから、ポリッシャーや自動床洗浄機にて洗浄除去作業を行なうことが望ましい。短すぎると洗浄剤組成物の希釈液が戸膜内に浸透できないので十分な洗浄除去効果が得られず、長すぎると清掃時間が長くなって効率が悪い。
【0020】
上記床仕上げ剤を研削・研磨にて洗浄除去する作業においては、作業場所や作業面積に応じて、ポリッシャー,自動床洗浄機等を用いた機械洗浄除去作業や、パッド,ブラシ等を用いた手作業による洗浄除去作業が行われるが、作業効率等から、ポリッシャー,自動床洗浄機等を用いた機械洗浄除去作業であることが好ましい。
特に、機械洗浄除去作業では、ポリッシャーや自動床洗浄機等に装着されるフロアパッドとしては、通常、床面の剥離作業、洗浄作業や床仕上げ剤のつや出し作業用途で用いられるパッド、例えば、黒パッド(例えば、商品名:ストリッピングパッド/住友3M社製)、茶パッド(例えば、商品名:ブラウンストリッパーパッド/住友3M社製)、緑パッド(例えば、商品名:スクラビングパッド/住友3M社製)、青パッド(例えば、商品名:ブルークリーナーパッド/住友3M社製)、赤パッド(例えば、商品名:レッドバッファーパッド/住友3M社製)、白パッド(例えば、商品名:スーパーポリッシュパッド/住友3M社製)でも可能であるが、ダイヤモンド粒子を付着させたパッドであれば、多層の塗膜のうち、汚れと傷が塗膜の内部まで入り込んだ表層の一部の塗膜を均一に研削し、平滑に研磨できるので、洗浄後のリコートを1層で済ませても十分な光沢を得ることが可能になるため、更に好ましい。例えば、ツイスターレッドパッド(HTC社製)、ツイスターホワイトパッド(HTC社製)、ツイスターイエローパッド(HTC社製)、ツイスターグリーンパッド(HTC社製)、ツイスターSCパッド(HTC社製)、TASKIツイスターインテリパッド(シーバイエス社より販売)などが上げられるが、均一な洗浄除去性および研磨による平滑性の点から、ツイスターホワイトパッド、ツイスターイエローパッド、ツイスターグリーンパッドが好ましく、汚れの程度に応じて適宜選択することが望ましい。
【0021】
上記汚れや洗浄除去された床仕上げ剤を含んだ汚水を回収する作業においては、作業効率の上から、フロアスクイジー等を用いて掻き集めながら、ウエットバキュームや自動床洗浄機等を用いて回収することが好適である。
【0022】
洗浄汚水を回収した後の拭き上げ作業においては、水を含ませ十分に絞ったモップ,雑巾等を使用して、床面に残った洗浄汚水を拭き上げる。拭き上げ作業に用いられるモップ等としては、木綿等の天然繊維、アクリル,ナイロン等の化学繊維、不織布を素材とするものが用いられる。
【0023】
なお、上記特定の洗浄剤組成物の希釈液を、汚れもしくは傷のついた床上の架橋された塗膜に塗布する前に、床面表面のゴミや汚れを、不織布製のダストモップやほうき等を使用して除去する除塵工程や、塗膜を除去すべき区域とそれ以外の区域との境目に養生テープを貼るなどして、洗浄剤組成物の希釈液が、塗膜を除去すべき区域以外に流れ出ないようにしておく養生工程を行うことが好ましい。
【0024】
次に、汚れもしくは傷のついた該塗膜の表層の一部を研削・研磨にて洗浄除去したのち、床仕上げ剤組成物をリコート・乾燥して新たな塗膜を再形成する方法としては、通常の床仕上げ剤組成物の塗布・乾燥と同様の手順であり、モップ,バーニッシュモップやアプリケーター等を用いて、床仕上げ剤組成物を、概ね10〜20mL/mの塗布量の割合で塗布・乾燥し、床仕上げ剤塗膜を再形成することができる。
床仕上げ剤の種類、洗浄パッドの種類、洗浄剤組成物の水希釈倍率、洗浄剤組成物希釈液の放置時間、ポリッシャーや自動床洗浄機による洗浄時間などによって、研削除去される塗膜厚さおよび洗浄後の表面平滑さは変動する。従って、一概には言えないが、本発明においては、床仕上げ剤組成物を概ね10〜20mL/mの塗布量の割合で1〜3層塗り重ねることが好適である。
【0025】
特に、高度に架橋された塗膜の場合は、通常のアルカリ洗剤では極表面の洗浄のみにとどまってしまい、深く入った傷や汚れ・スカッフマーク(凹み)などを効果的に除去することができない。その場合には、一例をあげれば、本発明の洗浄剤組成物を40〜100倍程度に希釈して床面に塗布してから、5〜30分程度放置し、ツイスターイエローパッドを装着したポリッシャーにて、30〜45秒/m程度洗浄することで、0.4〜0.7層程度(厚み1〜2μm)の塗膜を研削除去することができ、深く入った傷や汚れ・スカッフマーク(凹み)などを効果的に除去することができるため、その後、床仕上げ剤組成物を、概ね15mL/mで1層塗布するだけで、元の光沢値またはそれ以上に戻すことが可能になる。
【0026】
次に、本発明の洗浄剤組成物について説明する。
洗浄剤組成物は、その主成分として、a)50〜97質量%のフェニル置換アルキルアルコール、b)2〜25質量%のポリオキシアルキレンアルキルエーテルおよびポリオキシアルキレンブロックポリマーから選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤、c)1〜25質量%の有機アミンを含むことを特徴としている。
【0027】
上記a)成分であるフェニル置換アルキルアルコールは、約60℃を超える引火点、低臭気及び低毒性を有し、好ましくは、少なくとも0.1重量%の水溶解度を有する。代表的なフェニル置換アルキルアルコールとしては、ベンジルアルコール(約4%水溶解度)、エチレングリコールモノベンジルエーテル(水溶性);α−フェニルエチルアルコール(<0.1%水溶解度)、β−フェニルエチルアルコール(4%水溶解度)、エチレングリコールフェニルエーテル(約2%水溶解度、ダウ・ケミカル(Dow Chemical)社からDOWANOL(商標)EPh(商標)として入手できる)、プロピレングリコールフェニルエーテル(約1%水溶解度、ダウ・ケミカル社からDOWANOL PPh(商標)として入手できる)及びこれらの混合物が挙げられる。中でも、ベンジルアルコールが、好ましいフェニル置換アルキルアルコールである。
フェニル置換アルキルアルコールは、全洗浄剤組成物の少なくとも50質量%であり、より好ましくは70質量%以上であり、塗膜内に浸透して効果的に軟化させるのでできるだけ多い方が望ましい。しかし、他の2成分とのバランスにより多くても97質量%となる。
【0028】
上記b)成分であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシブチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシブチレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンブロックポリマー等があげられる。
【0029】
上記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、洗浄剤組成物と他の成分を可溶化し、水と混合した際に、水への溶解度の低いフェニル置換アルキルアルコールを、水中へ透明に分散する役割、床上の汚れを洗浄する役割、洗浄除去された塗膜の乳化及び分散の役割として配合されるもので、各々単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。
【0030】
これらのポリオキシアルキレンアルキルエーテルについて、より詳しく述べると、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、炭素数が6〜24の直鎖又は分岐のアルコールにエチレンオキサイド(ポリオキシエチレン;EO)を2〜20モル付加したポリオキシエチレンアルキルエーテルや、HLBが6〜18、特に好ましくはHLBが8〜15の範囲にある炭素数が8〜18の直鎖又は分岐のアルコールにEOを2〜12モル付加したポリオキシエチレンアルキルエーテル等があげられる。具体的には、炭素数が9〜16の直鎖又は分岐のアルコールにEOを5〜12モル付加したポリオキシエチレンアルキルエーテルが、可溶化力、洗浄剤の貯蔵安定性および床上の汚れ除去性の点から好ましい。
【0031】
また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルとしては、炭素数が6〜24の直鎖又は分岐のアルコールにEOを1〜40モルとプロピレンオキサイド(ポリオキシプロピレン;PO)1〜50モルとを付加したポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等があげられる。具体的には、炭素数が10〜16の直鎖又は分岐のアルコールにEOを2〜20モル、POを2〜30モル付加したポリオキシエチレンアルキルエーテルが、低泡性及び貯蔵安定性の点から好ましい。
【0032】
また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシブチレンアルキルエーテルとしては、炭素数が6〜24の直鎖又は分岐のアルコールにEOを1〜40モルとプロピレンオキサイド(ポリオキシプロピレン;PO)1〜50モルとブチレンオキサイド(ポリオキシブチレン;BO)1〜50モルを付加したポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシブチレンアルキルエーテル等があげられる。
【0033】
そして、ポリオキシアルキレンブロックポリマーとしては、プルロニック型ブロックポリマー及びリバースプルロニック型ブロックポリマーがあげられる。
プルロニック型ブロックポリマーとしては、平均分子量が500〜10,000の範囲にありEO/POの重量比が0.05〜4.0の範囲にあるプルロニック型ブロックポリマー、平均分子量が500〜10,000の範囲にありエチレンオキサイドの含有率が総平均分子量の5%〜80%の範囲にあるプルロニック型ブロックポリマー等があげられる。
また、リバースプルロニック型ブロックポリマーとしては、平均分子量が500〜10,000の範囲にありEO/POの重量比が0.05〜1の範囲にあるリバースプルロニック型ブロックポリマーがあげられる。
【0034】
上記b)成分としては、これらポリオキシアルキレンアルキルエーテルのうち、低泡性の点から、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが好ましい。
【0035】
このようなb)成分であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルの配合量は、本洗浄剤組成物中に2〜25質量%含まれることが望ましい。さらに好ましくは5〜15質量%である。配合量が少ないと、水と混合した際に、水への溶解度の低いフェニル置換アルキルアルコールを水中へ透明に分散することができず濁ったり分離したりしやすい。また床上の汚れの洗浄力が劣る。多いと泡が立ちすぎて洗浄汚水の回収作業性を低下させる。
【0036】
上記c)成分である有機アミンとしては、アルカノールアミンおよびアルキルアミンがあげられる。
アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−t−ブチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−t−ブチルジエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)ジエタノールアミン、イソプロパノールアミン、N−メチルイソプロパノールアミン、N−エチルイソプロパノールアミン、N−n−ブチルイソプロパノールアミン、N−t−ブチルイソプロパノールアミン、N−(β−アミノエチル)イソプロパノールアミン、N,N−ジメチルイソプロパノールアミン、N,N−ジエチルイソプロパノールアミン、N,N−ジブチルイソプロパノールアミンなどがあげられる。
アルキルアミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどがあげられる。
この有機アミンは、塗膜へのフェニル置換アルキルアルコールの浸透性を高め、塗膜の洗浄除去の目的で配合されるもので、各々単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。
【0037】
これらのうち、均一な塗膜洗浄除去性、貯蔵安定性及び入手容易性の点から、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、イソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミンが好ましく用いられるが、なかでも、均一な塗膜洗浄除去性および臭気の点から、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミンが好ましく用いられる。
【0038】
このようなc)成分である有機アミンの配合量は、本洗浄剤組成物中に1〜25質量%含まれることが望ましい。さらに好ましくは2〜15質量%である。配合量が少ないと、床上の汚れの洗浄力が劣り、多いと塗膜の洗浄除去力は高まるが、洗浄剤の放置時間が長い場合に塗膜が軟化しすぎて場合によっては剥離してしまうことがあり、均一な洗浄という点で望ましくない。特に、フロアーポリッシュ組成物の塗膜では、その傾向は顕著である。またリノリウム床やゴム床に対して床を溶解したり着色したりする場合がある。
【0039】
上記洗浄剤組成物は水で40〜500倍に希釈して使用する。希釈倍率は、一概には言えないが、床仕上げ剤の種類、洗浄パッドの種類、洗浄剤組成物の水希釈倍率、洗浄剤組成物希釈液を塗膜へ継続して接触させる時間、ポリッシャーや自動床洗浄機による洗浄時間などによって、最適な濃度を選択する必要がある。例えば、金属架橋されたフロアーポリッシュ塗膜の場合には、100〜500倍程度が適当であり、高度に架橋された塗膜の場合は、40〜100倍程度が望ましい。なお、40倍未満の濃度では、濁ったり、分離したりする場合があり、また洗浄除去ではなく、塗膜の全部を剥離してしまうことがあるので望ましくない。500倍よりも薄い濃度の場合は、洗浄力や塗膜の洗浄除去力が劣る。
【0040】
本発明の洗浄剤組成物には、任意成分として、pH調整剤、染料、香料、防腐剤、防黴剤、消臭剤、帯電防止剤、消泡剤、C10〜C18の脂肪酸、グリコールエーテル系溶剤等を用いることができる。
【0041】
そして、本発明の洗浄剤組成物は、水で希釈して用いられるが、予め少量の水を含んでいても構わない。また、あらかじめ水で40倍〜500倍に希釈した組成物とすることもできるが、輸送や保管時のコンパクト性及び経済性の点から、上記組成の範囲が妥当であり、通常、作業場所にて所定量の倍率に水で希釈して使用される。
【0042】
本発明の洗浄剤組成物は、その希釈液におけるpH(JIS−Z−8802:1984「pH測定方法」)が、25℃で9〜12の範囲となるよう設定することが好ましい。pHが12を越えると、洗浄希釈液を塗膜へ継続して接触させる時間の差によって洗浄除去力の差が大きくなり洗浄ムラを生じ易い。pHが9未満になると、ブラックヒールマーク(BHM)や表面汚れの洗浄除去性が低下しやすい。
【実施例】
【0043】
つぎに、実施例について、比較例と併せて説明する。本発明は、これらに限定されるものではない。
【0044】
後記の表1〜4の実施例1〜15、比較例1〜5に示す組成の洗浄剤組成物およびその希釈液を調製し、塗膜除去厚み、塗膜除去の均一性、ブラックヒールマーク(BHM)、スカッフマーク(SCM)、光沢度の各項目について評価した。また洗浄除去したのちに15mL/mで1層塗布して、同様にスカッフマーク(SCM)、光沢度、外観を評価した。なお、後記の表1〜4において用いた成分とその純分(%)は以下の通りであり、表中のa)〜c)の数値は、純分の配合量を質量%で示したものである。
【0045】
〔床仕上げ剤〕
*A:軽技王エボリューション
(シーバイエス社製水性フロアーポリッシュポリマータイプ/スチレンアクリルポリマーの亜鉛架橋型、不揮発分22%)
*B:サスティナ ソリッドシール
(シーバイエス社製フロアシール剤/アクリル・ウレタンポリマーの共有結合架橋型(高度に架橋された塗膜を形成)、不揮発分20%、主剤:添加剤=10:1で混合した)
*C:ウレテイト水性二液
(大日本塗料社製ポリウレタン塗料/ウレタンポリマーのイソシアネート共有結合型架橋型(高度に架橋された塗膜を形成)、不揮発分37%、主剤:硬化剤=10:1で混合したのち、水で不揮発分20%に調整した)
【0046】
〔a)成分〕
*アルコール1:ベンジルアルコール(純分100%)
*アルコール2:β―フェニルエチルアルコール(純分100%)
*アルコール3:エチレングリコールフェニルエーテル(純分100%)
【0047】
〔b)成分〕
*エーテル1:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル
;C12〜15アルコールのエチレンオキサイド(m)・プロピレンオキサイド(n)(m+n=7)モル付加物。
(三洋化成工業社製/商品名:ナロアクティーN−95、純分100%)
*エーテル2:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル
(ADEKA製/商品名:アデカトールLB−83、純分100%)
*エーテル3:ポリオキシエチレンアルキルエーテル
;C9〜11アルコールのエチレンオキサイド6モル付加物。
(シェルケミカル製/商品名:ネオドール91−6、純分100%)
【0048】
〔C)成分〕
*有機アミン1:モノエタノールアミン(純分100%)
*有機アミン2:イソプロパノールアミン(純分100%)
*有機アミン3:N−メチルエタノールアミン(純分100%)
【0049】
〔洗浄剤原液の製造方法〕
容器内にa)成分を入れて攪拌した。次いでb)成分、c)成分、水を順番に入れていき、30分間攪拌を継続して洗浄剤原液を得た。
【0050】
〔洗浄剤希釈液の調整方法〕
上記洗浄剤原液を容器に計量し、次いで上から水を加え、溶解するまで入念にかき混ぜ、洗浄剤希釈液を得た。
【0051】
〔試験板塗膜の作成方法〕
1)基本的な性能試験に使用する試験板の作成方法
30cm角の白色ホモジニアスビニル床タイル(東リ社製、商品名:ホモジニアスビニル床タイル、MSプレーン5626)に、床用剥離剤「リムーバープロ」(シーバイエス社製)を水で20倍に希釈した剥離液をたらし、「TASKIツイスターホワイトパッド」を装着したハンドポリッシャーにて、入念に剥離洗浄した。乾燥後、各種の床仕上げ剤組成物を1回あたり15mL/mとなるように、ガーゼにて、60分間隔にて3回塗装し、乾燥した。およそ9μmとの塗膜厚となった。室温で1週間経過したのち、その塗布板を試験板Aとして各種試験に適用した。
2)塗膜除去厚測定および塗膜除去均一性の試験にのみ使用する試験床の作成方法
30cm角の白色ホモジニアスビニル床タイル(東リ社製、商品名:ホモジニアスビニル床タイル、MSプレーン5626)を18枚敷いた実際の床に、床用剥離剤「リムーバープロ」(シーバイエス社製)を水で20倍に希釈した剥離液をたらし、「TASKIツイスターホワイトパッド」を装着した14インチポリッシャーにて、入念に剥離洗浄した。乾燥後、各種の床仕上げ剤組成物を1回あたり15mL/mとなるように、モケットモップ(アプソン社製)にて、60分間隔にて3回塗装し、乾燥した。室温で1週間経過したのち、試験床Bとして各種試験に適用した。
【0052】
〔床仕上げ剤の耐アルカリ性〕
上記塗膜作成方法で作成した試験板Aに、水で20倍に希釈した床用剥離剤「リムーバープロ」の剥離液を1mL滴下し、30分放置した。その後、流水で洗い流したのち、滴下した部分の状況を観察した。これにより、剥離されないものを高度に架橋されたと評価した。
<判定基準>
◎:塗膜表面に損傷が殆ど見られず、剥離液を滴下した部分がわからない。
○:塗膜表面に損傷は殆ど見られないが、剥離液を滴下した部分の輪郭が見える。
剥離:塗膜の全ての塗膜が剥離除去された。
【0053】
〔BHM(ブラックヒールマーク)〕〔SCM(スカッフマーク)〕
日本フロアーポリッシュ工業会が発行しているJFPA規格−11「耐ヒールマーク試験方法」に準じて行ない、靴底の黒いゴムを入れた試験機に、上記塗膜作成方法で作成した試験板Aを貼り付けて回転させながら試験板に歩行に似たダメージを与える試験である。BHMはゴムが黒く付着している状態であり、SCMは黒くはないが、塗膜に損傷や凹みが見られる状態の部分を指す。
<判定基準>
ゴム片が衝突して付着や損傷を起こしている部分(ヒールマーク)の相対的面積比に相当して1〜10点にて評価した。10点は全く付着や損傷がない状態であり、1点は無数に付着や損傷がある状態である。
各仕上げ剤組成物で塗膜を作成した試験板Aに対して上記試験の後、後記の洗浄試験に記載のとおり、各洗浄剤組成物の希釈液で、所定の条件で洗浄した後も、上記判定基準によるBHM及びSCMの状態の評価を行った。
洗浄後のBHMは9であれば、さらに丁寧に洗うことで汚れを除去できると考えられるため許容範囲と考えられる。洗浄後のSCMの結果によらず、洗浄後1層塗装後のSCMは10であれば最良だが、9であればさらにもう1層塗装することで改善されるので許容範囲と考えられる。1層塗装後8以下だと、かなり深い凹みであるため、2層塗装後も塗膜外観上不十分である。
【0054】
〔光沢度〕
日本フロアーポリッシュ工業会が発行しているJFPA規格−10「60度鏡面光沢度の測定方法」に準じて、市販の光沢計にて測定した。具体的には「JG−100」(シーバイエス社製)にて計測した数値を記録した。
【0055】
〔洗浄パッド〕
市販の表面洗浄用パッドを、必要に応じてハンドポリッシャーのサイズに切断して使用した。表中では下記の略号で示した。
青:ブルークリーナーパッド(住友3M社製)、
TW白:ツイスターホワイトパッド(HTC社製)、
TW黄:ツイスターイエローパッド(HTC社製)、
TW緑:ツイスターグリーンパッド(HTC社製)、
【0056】
〔洗浄試験方法〕
1) 上記塗膜作成方法で作成した試験板A(30cm角、面積0.09m)に、約150mL/mとなる洗浄剤希釈液13.5gを計量して、試験板上にたらしブラシで塗り広げた。次いで、一定時間希釈液を塗膜面に接触(放置)させたのち、濡れていない洗浄パッドを取り付けたハンドポリッシャーにて、自重にて縦1往復+横1往復させて洗浄した。その後、水で洗い流し、拭き上げて乾燥した。
2) 上記塗膜作成方法で作成した試験床B(30cm角タイルを18枚敷いてある、面積1.62m)では、約150mL/mとなるように洗浄剤希釈液243gを計量カップで計量して、試験板上にたらしブラシで塗り広げた。次いで、一定時間希釈液を塗膜面に接触(放置)させたのち、濡れていない洗浄パッドを取り付けた14インチポリッシャーにて、30秒/mとなるスピード(合計49秒)にて、洗浄作業を行ない、洗浄汚水をスクイジーでかき集めて回収した。清浄なモップで拭き上げ、乾燥させた。
【0057】
〔塗膜除去厚測定方法〕
上記洗浄試験方法2)で回収した洗浄汚水および試験前の洗浄剤希釈液の不揮発分を測定した。2gをステンレス容器に計量し、145℃で1時間乾燥して下記の式にて不揮発分を求めた。次いで下記の式にて塗膜除去厚を計算した。塗膜の比重は一律1.2とした。
N=(WD/WS)×100
ここに、
N:不揮発分(%)
WD:乾燥後の試料の質量(mg)
WS:乾燥前の試料の質量(mg)
次いで、下記の式にて塗膜除去厚を求めた。
T=243×(Na−Nb)/100/1.2/1.62
T:塗膜除去厚(μm)
Na:洗浄汚水の不揮発分(%)
Nb:洗浄剤希釈液の不揮発分(%)
【0058】
〔塗膜除去均一性〕
上記洗浄試験方法2)の作業を行ない、目視にて塗膜表面の洗浄除去の均一性を評価した。
<判定基準>
◎:塗膜表面の光沢が均一で、パッド痕やムラがみられない。
○:塗膜表面の光沢がほぼ均一で、パッド痕やムラが少し見える。
△:塗膜表面は光沢のある部分と無い部分が混在し、パッド痕やムラが明らかにわかるため不可である。
×:塗膜表面は光沢のある部分と無い部分が極端に混在するか、全部または部分的に剥離している。この場合は、作業のやり直しが必要になるため、不可である。
【0059】
〔1層塗装後の外観〕
上記洗浄試験方法1)の作業を行なった後、各種の床仕上げ剤組成物を15mL/mとなるように、ガーゼにて、1回塗装し、乾燥した。目視にて塗膜表面の外観を評価した。
<判定基準>
◎:塗膜表面に十分な光沢があり、パッド痕やムラがみられない。
○:塗膜表面にほぼ十分な光沢があり、パッド痕やムラが少し見えるものの許容範囲。
△:塗膜表面の光沢が不十分で低かったり、パッド痕やムラが明らかにわかるため、不可である。
×:塗膜表面の光沢が明らかに低く、パッド痕やムラが明らかにわかる。再度洗浄、もしくは剥離作業が必要であり、不可である。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
以上の結果により、実施例に記載の洗浄剤組成物及び洗浄方法によって、床上に架橋された塗膜に対して十分な洗浄性を発揮し、さらに1層のみ塗装するだけで、よりいっそうの美感の向上が得られることが確認された。