特許第6975975号(P6975975)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6975975
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】リテーナーのロック解除装置
(51)【国際特許分類】
   A22C 7/00 20060101AFI20211118BHJP
【FI】
   A22C7/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-175916(P2018-175916)
(22)【出願日】2018年9月20日
(65)【公開番号】特開2020-43823(P2020-43823A)
(43)【公開日】2020年3月26日
【審査請求日】2020年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】393000939
【氏名又は名称】アサヒ技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】河合 秀秋
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−093352(JP,A)
【文献】 米国特許第04603053(US,A)
【文献】 特開昭51−026265(JP,A)
【文献】 実開昭51−124087(JP,U)
【文献】 特開2005−176701(JP,A)
【文献】 実開昭61−047289(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 5/00−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リテーナー(1)の蓋体(3)に対してロック解除操作を行う装置であって、
リテーナー(1)は、上開口を有して内部に肉塊(M)が収容される有底箱状のリテーナー本体(2)と、リテーナー本体(2)の後壁に設置されて左右方向に走るヒンジ軸(14)と、上開口を封止する閉姿勢と上開口を開放する開姿勢との間でヒンジ軸(14)を中心に揺動開閉可能に構成された蓋体(3)と、蓋体(3)を閉姿勢に保持する蓋ロック体(4)とを備えており、
蓋ロック体(4)は、リテーナー本体(2)の前壁に固定される固定ロック体(17)と、蓋体(3)の前部に設けられて固定ロック体(17)に係合するロック姿勢と、固定ロック体(17)との係合状態が解除されるアンロック姿勢との間で揺動軸(25)を中心に切り替え可能に支持される可動ロック体(18)とを備えており、
固定ロック体(17)は、可動ロック体(18)の進入を許して下向きに開口する係止部(23)を備えており、揺動軸(25)を中心にして可動ロック体(18)が回転されて、固定ロック体(17)の前端縁を乗り越えて係止部(23)内に可動ロック体(18)が押し込まれることで可動ロック体(18)と固定ロック体(17)との間の係合状態が確立され、また、逆の手順で係止部(23)内から可動ロック体(18)が押し出されることで可動ロック体(18)と固定ロック体(17)との間の係合状態が解除されるようになっており、
ロック解除装置は、リテーナー支持台(41)と、リテーナー支持台(41)のロック解除位置に向けてリテーナー(1)を送り込む搬送構造(39)と、ロック解除位置に送り込まれたリテーナー(1)の蓋ロック体(4)に対してロック解除操作を行う解除構造(38)とを備えており、
解除構造(38)は、ロック解除位置に送り込まれたリテーナー(1)の可動ロック体(18)の下端を受け止めて、リテーナー(1)を前上がりの傾斜姿勢に支持するロック解除枠(43)と、傾斜姿勢にあるリテーナー(1)の蓋体(3)に対して押し下げ力を付与する押下げ構造(44)とを備えており、
ロック解除枠(43)により前上がりの傾斜姿勢に保持されている状態のリテーナー(1)の蓋体(3)を押下げ構造(44)で押下げ操作し、可動ロック体(18)に押下げ反力を作用させて係止部(23)内から可動ロック体(18)を押し出すことで、固定ロック体(17)に対する可動ロック体(18)の係合状態が解除されて、蓋体(3)のロック解除操作が行われるように構成されていることを特徴とするリテーナーのロック解除装置。
【請求項2】
可動ロック体(18)は、蓋体(3)の前端部に設けられて左右方向に走る複数個の揺動軸(25)と、各揺動軸(25)に揺動可能に支持されて固定ロック体(17)の係止部(23)に係脱するロックピース(26)と、これらロックピース(26)を連結する連結部材(19)とを含み、
ロックピース(26)の下端部がロック解除枠(43)で受け止められることで、リテーナー(1)が前上がりの傾斜姿勢となるように構成されており、
傾斜姿勢に保持されている状態のリテーナー(1)の蓋体(3)を押下げ構造(44)で押下げ操作することで、ロックピース(26)に押下げ反力を作用させて、固定ロック体(17)に対する複数個のロックピース(26)の係合状態を同時に解除することができるように構成されている、請求項1記載のリテーナーのロック解除装置。
【請求項3】
押下げ構造(44)は、リテーナー支持台(41)に固定されるフレーム(65)と、フレーム(65)に固定したガイドブロック(67)で昇降自在に案内支持されるスライド軸(68)と、スライド軸(68)の下端に固定される押下げ体(69)と、押下げ体(69)をリテーナー支持台(41)に向かって押下げ操作するシリンダーユニット(70)とを備えており、
蓋体(3)の上面に設けた複数の補強フレーム(13)を、押下げ体(69)でリテーナー支持台(41)に向かって押下げ操作することで、固定ロック体(17)に対する可動ロック体(18)の係合状態が解除される、請求項1に記載のリテーナーのロック解除装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リテーナーの蓋ロック体を自動的に解除するロック解除装置に関する。リテーナーは、ベーコンやハムを製造する過程で使用される。
【背景技術】
【0002】
この種のリテーナーにおいて、蓋ロック体を自動的に解除することは、特許文献1に開示されている。特許文献1のリテーナーは、横長直方体状のリテーナー本体と、リテーナー本体を開放不能にロック保持する複数個のロック構造などからなり、リテーナー本体は、底板と前板と左側板を備える前本体と、後板と上板と右側板を備える後本体で構成されている。ロック構造は、前板で上下揺動可能に支持される可動L字片(掛金具)と、上板に固定される断面が横臥J字状の爪部(受金具)と、可動L字片を移動付勢するコイルスプリングなどで構成されており、可動L字片には爪部に係脱する断面L字状の係合爪が設けられている。可動L字片を前板の上方へ起立揺動させ、その状態で可動L字片を爪部へ向かって横向きにスライド操作することにより、爪部を係合爪に係合させて、前本体と後本体を開放不能にロック保持できる。
【0003】
特許文献1に記載のロック解除装置(解錠装置)は、ロックされた状態のリテーナーを搬送するベルトコンベアと、リテーナーを前向きに押え保持するリテーナー固定手段と、可動L字片を解錠方向へスライド操作するスライダーとスライダー駆動部とを備えている。リテーナーをリテーナー固定手段で押え保持した状態で、スライダーをスライダー駆動部で横向きにスライド操作すると、可動L字片を爪部から分離させて、前本体と後本体とを開放できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−93352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のロック解除装置によれば、人手に頼っていた可動L字片の解錠操作を自動的に行えるので、作業者の作業負担を軽減できる。しかし、リテーナーの内部により多くの肉塊が収容されてリテーナー本体が僅かでも変形すると、スライダーをスライド操作することが困難となり、解錠操作が不可能となるおそれがあり、当該問題は、特に燻製処理などにより肉塊が膨張したときに顕著となる。また、一般的なリテーナーが、上開口を有する有底箱状のリテーナー本体と、当該上開口を封止する蓋体とで構成されるのに対して、特許文献1のリテーナー本体は、底板と前板と左側板を備える前本体と、後板と上板と右側板を備える後本体で構成されており、リテーナーの構造自体が極めて特殊であり、汎用性に欠け、ロック解除装置のコストアップを招来する不利もある。
【0006】
本発明は、上開口を有して内部に肉塊が収容される有底箱状のリテーナー本体と、上開口を封止する蓋体と、蓋体を閉姿勢に保持する蓋ロック体とを備えるリテーナーを処理対象とするロック解除装置において、当該蓋ロック体を確実にロック解除操作することができ、しかも解除構造が簡素で、製造コストの削減化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、リテーナー1の蓋体3に対してロック解除操作を行うロック解除装置を対象とする。リテーナー1は、上開口を有して内部に肉塊Mが収容される有底箱状のリテーナー本体2と、リテーナー本体2の後壁に設置されて左右方向に走るヒンジ軸14と、上開口を封止する閉姿勢と上開口を開放する開姿勢との間でヒンジ軸14を中心に揺動開閉可能に構成された蓋体3と、蓋体3を閉姿勢に保持する蓋ロック体4とを備えている。蓋ロック体4は、リテーナー本体2の前壁に固定される固定ロック体17と、蓋体3の前部に設けられて固定ロック体17に係合するロック姿勢と、固定ロック体17との係合状態が解除されるアンロック姿勢との間で揺動軸25を中心に切り替え可能に支持される可動ロック体18とを備えている。固定ロック体17は、可動ロック体18の進入を許して下向きに開口する係止部23を備えており、揺動軸25を中心にして可動ロック体18が回転されて、固定ロック体17の前端縁を乗り越えて係止部23内に可動ロック体18が押し込まれることで可動ロック体18と固定ロック体17との間の係合状態が確立され、また、逆の手順で係止部23内から可動ロック体18が押し出されることで可動ロック体18と固定ロック体17との間の係合状態が解除されるようになっている。ロック解除装置は、リテーナー支持台41と、リテーナー支持台41のロック解除位置に向けてリテーナー1を送り込む搬送構造39と、ロック解除位置に送り込まれたリテーナー1の蓋ロック体4に対してロック解除操作を行う解除構造38とを備えている。解除構造38は、ロック解除位置に送り込まれたリテーナー1の可動ロック体18の下端を受け止めて、リテーナー1を前上がりの傾斜姿勢に支持するロック解除枠43と、傾斜姿勢にあるリテーナー1の蓋体3に対して押し下げ力を付与する押下げ構造44とを備える。そして、ロック解除枠43により前上がりの傾斜姿勢に保持されている状態のリテーナー1の蓋体3を押下げ構造44で押下げ操作し、可動ロック体18に押下げ反力を作用させて係止部23内から可動ロック体18を押し出すことで、固定ロック体17に対する可動ロック体18の係合状態が解除されて、蓋体3のロック解除操作が行われるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
可動ロック体18は、蓋体3の前端部に設けられて左右方向に走る複数個の揺動軸25と、各揺動軸25に揺動可能に支持されて固定ロック体17の係止部23に係脱するロックピース26と、これらロックピース26を連結する連結部材19を含むものとすることができる。この場合には、ロックピース26の下端部がロック解除枠43で受け止められることで、リテーナー1が前上がりの傾斜姿勢となるように構成されている。そして、傾斜姿勢に保持されている状態のリテーナー1の蓋体3を押下げ構造44で押下げ操作することで、ロックピース26に押下げ反力を作用させて、固定ロック体17に対する複数個のロックピース26の係合状態を同時に解除することができるように構成することができる。
【0009】
押下げ構造44は、リテーナー支持台41に固定されるフレーム65と、フレーム65に固定したガイドブロック67で昇降自在に案内支持されるスライド軸68と、スライド軸68の下端に固定される押下げ体69と、押下げ体69をリテーナー支持台41に向かって押下げ操作するシリンダーユニット70とを備えるものとできる。そして、蓋体3の上面に設けた複数の補強フレーム13を、押下げ体69でリテーナー支持台41に向かって押下げ操作することで、固定ロック体17に対する可動ロック体18の係合状態が解除される構成を採ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るロック解除装置においては、ロック解除枠43により前上がりの傾斜姿勢に保持されている状態のリテーナー1の蓋体3を押下げ構造44で押下げ操作して、当該蓋体3に対して押下げ力を付与し、可動ロック体18に押下げ反力を作用させることで、可動ロック体18と固定ロック体17との間の係合状態が解除されて、蓋体3がロック解除されるように構成した。当該構成によれば、蓋体3を押下げ操作することでロック解除操作を進めることができるので、例えば肉塊Mの膨張などの影響を受けてリテーナー1の外形形状が変形した場合でも、支障なくロック解除を行うことができ、従来のスライド操作方式の解除構造(特許文献1参照)に比べて、より確実に蓋体3のロック解除操作を行うことが可能であり、信頼性に優れたロック解除装置を得ることができる。また、解除構造38の構造を簡素化することができるので、ロック解除装置の製造コストの低コスト化を図ることができる。
【0011】
可動ロック体18が複数個のロックピース26を含むものとされていると、蓋体3の複数個所で係合状態を確立することができるので、より確実に蓋体3を閉姿勢に保持することができる。そのうえで連結部材19により複数個のロックピース26が連結されていると、固定ロック体17に対する複数個のロックピース26の係合状態を同時に、しかも確実に解除することができる。
【0012】
フレーム65に固定したガイドブロック67でスライド軸68を昇降自在に案内支持し、スライド軸68の下端に固定した押下げ体69を、シリンダーユニット70でリテーナー支持台41に向かって押下げ操作できるようにして押下げ構造44とした。こうした押下げ構造44によれば、蓋体3の上面に設けた複数の補強フレーム13を、押下げ体69でリテーナー支持台41に向かって押下げ操作することにより、複数の可動ロック体18をロック姿勢からアンロック姿勢に確実にしかも同時に切換えることができる。また、蓋体3の上面に設けた複数の補強フレーム13を押下げ体69で押下げ操作して、押下げ力を分散した状態で蓋体3に作用させるので、蓋ロック体4をロック解除操作する場合に蓋体3やリテーナー本体2の一部に押下げ力が集中して変形し、あるいは破損するのを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るリテーナーのロック解除装置と、当該装置の解除操作対象となるリテーナーの縦断側面図である。
図2】蓋体を開放した状態のリテーナーの斜視図である。
図3】蓋ロック体がロック姿勢に切換えられた状態を示す縦断側面図である。
図4】ロック姿勢における蓋ロック体を示す縦断側面図である。
図5】蓋体を支持するヒンジ構造を示す平面図である。
図6】ロック解除装置の正面図である。
図7】ロック解除装置の縦断側面図である。
図8】ロック解除装置の横断平面図である。
図9】蓋ロック体がアンロック姿勢に切換えられた状態を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施例)図1から図9に、本発明に係るリテーナーのロック解除装置の実施例を示す。本実施例における前後、左右、上下とは、図2図6図7に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表記に従う。図2において、ロック解除装置のよる操作対象となるリテーナー1は、有底箱状のリテーナー本体2と、リテーナー本体2の上開口を揺動開閉する蓋体3と、蓋体3を開放不能にロック保持する蓋ロック体4などで構成される。リテーナー本体2は、横長四角形状の本体枠5と、本体枠5の下面開口を塞ぐ網壁6と、本体枠5の下面6個所に固定される補強フレーム7とを備える。本体枠5は、前後左右の各壁と、各壁に連続する部分底壁5a(図3参照)とを一体に備えており、部分底壁5aの内面側に先の網壁6を固定することで、部分底壁5aで囲まれる開口を網壁6で塞いでいる。補強フレーム7はハット形のチャンネル材からなり、その前後部分が部分底壁5aに溶接されている。本体枠5の前後左右の各壁には通気スリット8の一群が形成されており、リテーナー本体2の前壁の上部に沿って蓋受壁9が下り傾斜状に形成されている(図4参照)。リテーナー本体2、蓋体3、および蓋ロック体4は、それぞれステンレス材で形成されている。リテーナー本体2の内部には肉塊Mが収容される(図3参照)。
【0015】
図2および図4に示すように、蓋体3は横長四角形状の蓋枠11と、蓋枠11で囲まれる開口を下面側から塞ぐ網壁12と、蓋枠11の上面8個所に固定される補強フレーム13とを備えており、蓋枠11の全体が、蓋枠11の後縁と本体枠5の後壁の上縁の間に設けたヒンジ軸14で揺動開閉可能に支持されている。補強フレーム13はハット形のチャンネル材からなり、その前後部分が蓋枠11に溶接されている。蓋体3の前部には、閉止壁15が下り傾斜状に形成されており、リテーナー本体2の上開口を蓋体3で閉じた状態において、閉止壁15が蓋受壁9で受止め支持される。
【0016】
図3および図4において蓋ロック体4は、リテーナー本体2の前壁に固定される固定ロック体17と、蓋体3の前部に設けられて固定ロック体17に係合するロック姿勢(図4参照)と、固定ロック体17との係合状態が解除されるアンロック姿勢(図9参照)との間で切り替え可能に支持される可動ロック体18とで構成される。固定ロック体17は、座壁21と係合壁22とを有する断面V字状のプレス金具であり、両壁21・22の下面には下向きに開口して、後述の可動ロック体18のフック部27を受け入れる係止部23が形成されている。固定ロック体17は、リテーナー本体2の前壁に座壁21が密着し、蓋受壁9の下面に係合壁22が密着する状態でリテーナー本体2に溶接されている。固定ロック体17の係合壁22の下端は、蓋受壁9の下端より前側へ突出されている。
【0017】
可動ロック体18は、蓋体3の前端部に設けられて左右方向に走る計6本の揺動軸25と、各揺動軸25に揺動可能に支持されて固定ロック体17の係止部23に係脱するロックピース26と、揺動軸25に外嵌装着されてロックピース26を揺動付勢する付勢ばね28と、6個のロックピース26の先端部どうしを連結するステンレス丸棒からなる連結バー(連結部材)19とで構成される。ロックピース26の揺動先端には、フック部27が折り曲げ形成されており、各ロックピース26は、フック部27が固定ロック体17の係止部23に係合するロック姿勢と、フック部27が係止部23から抜け出るアンロック姿勢とに揺動軸25を中心に切り替え揺動可能に支持されており、捻じりコイルばねからなる付勢ばね28でロック姿勢に向かって揺動付勢されている。連結バー19は、6個のロックピース26を同時に施錠し解錠させるためのものであり、各ロックピース26の外面に溶接されている。
【0018】
図4および図5に示すようにロックピース26は、緩やかなく字状に折曲げ形成されたピース本体31と、ピース本体31の基端部に形成されて揺動軸25に外嵌する4個のヒンジ筒32と、ピース本体31の遊端部に形成されたフック部27とで構成される。フック部27は、ピース本体31に連続してV字状に折曲げられた基部壁33と係止壁34とからなる。ロックピース26がロック姿勢に切換えられた状態では、係止壁34が係合壁22の端部に係合するが、この状態ではピース本体31が弾性変形して伸張している。
【0019】
次に、ロック解除装置について説明する。図6および図7においてロック解除装置は、蓋ロック体4をロック解除操作する解除構造38と、リテーナー1を解除構造38に向って向かって搬送する搬送構造39と、ロック解除後のリテーナー1を次工程へ向かって搬送する排出コンベア40などを備えている。排出コンベア40はベルトコンベアからなる。解除構造38は、リテーナー支持台41と、リテーナー支持台41で支持されたリテーナー本体2を前後に位置決めし固定する位置決め構造42と、蓋ロック体4の移送軌跡に臨んで配置されるロック解除枠43と、リテーナー本体2を押下げ操作する押下げ構造44とを備えている。
【0020】
リテーナー支持台41は、リテーナー1の左右長さより僅かに長く形成されており、台上に位置決め構造42とロック解除枠43が配置されている。ロック解除枠43は、アングル状のステンレス枠体からなり、その縦壁が垂直になる状態でリテーナー支持台41の前端に固定されている(図7参照)。ロック解除枠43の上部には、ロックピース26の下面を支持する主ガイド面45が前下がり傾斜状に形成されている。主ガイド面45の移送始端側には傾斜ガイド面46が下り傾斜状に形成されており(図6参照)、同ガイド面46の下端は、ロックピース26の下面位置より下方に位置されている。従って、リテーナー1が搬送構造39で搬送されて、ロックピース26が傾斜ガイド面46に接当したのちは、ロックピース26を主ガイド面45へ向かって押上げ案内することができる。上記のように主ガイド面45は、ロックピース26の下面を支持して、リテーナー1をリテーナー支持台41および位置決め構造42と協同して前上がり姿勢に保持している。
【0021】
位置決め構造42は、図7および図8に示すように、リテーナー本体2の前壁を受止め案内するロック解除枠43と、リテーナー本体2の後壁を受止め案内する後ガイド枠52と、ロック解除位置においてリテーナー本体2をロック解除枠43に向かって押付け操作する固定構造53を備えている。後ガイド枠52は、リテーナー本体2の後壁の上部寄りに接当するガイド板55と、ガイド板55を支持する3個のブラケット56とを備えており、各ブラケット56はリテーナー支持台41の後部に固定されている。ガイド板55の移送始端側には後ガイド面57が形成されている。リテーナー1を前上がり姿勢に位置決めした状態で固定するために、ロック解除枠43と後ガイド枠52の対向間隔は、リテーナー本体2の前後幅より僅かに大きく設定されている。
【0022】
固定構造53は、リテーナー支持台41の後部2個所に固定されるシリンダーユニット(エアーシリンダー)60と、同ユニット60のピストンロッド61の突端に固定される、左右横長の押圧ブロック62とを備えている。押圧ブロック62は、ガイド板55とリテーナー支持台41の間に配置されており、リテーナー本体2の後壁の下部に接当し、リテーナー1の全体をロック解除枠43に押付けて位置決めし固定する。先に述べた解除位置とは、上記のようにリテーナー1が位置決め構造42で位置決めされ、固定構造53で固定されたときのリテーナー位置を意味している。
【0023】
図6および図7に示すように、押下げ構造44は、リテーナー支持台41の後部に固定される一対のフレーム65と、フレーム65の前端の支持板66に固定される一対のガイドブロック67と、同ブロック67で昇降自在に案内支持される一対のスライド軸68と、スライド軸68の下端に固定される左右横長の押下げ体69と、押下げ体69をリテーナー支持台41に向かって押下げ操作するシリンダーユニット(エアーシリンダー)70などを備えている。シリンダーユニット70はガイドブロック67と一体化されており、そのピストンロッド71の下端に押下げ体69が連結されている。押下げ体69は逆T字状の枠体からなり、その左右長さはリテーナー1の左右長さより幾分小さく設定されている。
【0024】
図6において搬送構造39は、リテーナー支持台41の搬送始端に隣接して設置される搬送台74と、搬送台74に載置されたリテーナー1をリテーナー支持台41に向かって搬送操作する操作体75と、操作体75を往復駆動するロッドレスシリンダー(アクチュエーター)76とを備えている。操作体75は断面が逆L字状のプレス金具からなり、ロッドレスシリンダー76のスライドテーブル77に固定される縦壁75aと、リテーナー1の左側面に接当する水平の横壁75bとを備えている。図6に示す状態から、スライドテーブル77が右方向へ駆動されると、リテーナー1は横壁75bに押されてリテーナー支持台41へ向かって搬送される。リテーナー1がリテーナー支持台41に完全に乗移ったのちは、スライドテーブル77は左方向へ駆動されて、新たなリテーナー1が搬送台74に供給されるのを待つ。新たなリテーナー1を搬送台74に供給する態様としては自動的に行うのが好ましく、例えば、スライドテーブル77がロッドレスシリンダー76の左端まで復帰したのをセンサーで検知し、この検知信号に基づいて待機停止している新たなリテーナー1を搬送台74の台上に移送するとよい。
【0025】
次に、ロック解除装置による蓋ロック体4に対するロック解除操作について説明する。図6に示すように、搬送台74にリテーナー1が供給してある状態で、ロッドレスシリンダー76を作動させると、リテーナー1は操作体75の横壁75bに押されてリテーナー支持台41へ向かって移動し、リテーナー本体2の一部がリテーナー支持台41へと乗移り、リテーナー本体2の後隅部が後ガイド面57に接当する。さらに、後ガイド面57に案内されつつ、リテーナー本体2は前向きに押されながら、ロック解除枠43と後ガイド枠52の間へと誘導案内される。
【0026】
引続きリテーナー1を操作体75で右方向へ搬送操作することにより、右端のロックピース26がロック解除枠43の傾斜ガイド面46に接当して、リテーナー本体2の全体が主ガイド面45へ向かって徐々に押上げ案内される。そのため、右端のロックピース26が主ガイド面45に乗上がった状態では、リテーナー本体2の右半分は図1に示すように前上がり姿勢に保持され、その状態のままでリテーナー支持台41に沿って搬送される。同様にして左端のロックピース26が主ガイド面45に乗上がった状態では、リテーナー本体2の全体が前上がり姿勢に保持されて、下面側の補強フレーム7の前端が、リテーナー支持台41から距離Hの分だけ浮き離れる(図1参照)。この状態のリテーナー本体2は、後ガイド枠52のガイド板55で支持されているので、リテーナー本体2が後向きに移動することはない。
【0027】
リテーナー本体2が操作体75でロック解除位置まで搬送されると、スライドテーブル77はロッドレスシリンダー76の左端位置まで戻され、スライドテーブル77が左移動を開始するのと同時に固定構造のシリンダーユニット60が作動して、リテーナー本体2をロック解除枠43に押付けて固定する。この状態で押下げ構造44のシリンダーユニット70を作動させると、図1に示すように押下げ体69が下降移動し、蓋体3に設けた8個の補強フレーム13の前端上面に接当して、リテーナー1の全体に押下げ力を作用させる。この状態では、主ガイド面45で支持されたロックピース26の基部壁33に押下げ反力が集中して作用する。そのため、ロックピース26には、揺動軸25を中心とする時計回転方向のモーメントが作用し、フック部27の係止壁34が係合壁22から徐々に離れる向きに移動する。
【0028】
最終的には、係止壁34が係合壁22の下端をくぐり抜け、係止部23内からフック部27が押し出されることで、これらロックピース26と係止部23との間の係合状態が解除される。本実施例では、連結バー19により連結された6個のロックピース26と係止部23との間の係合状態が同時に解除され、可動ロック体18はロック姿勢からアンロック姿勢となり、図9に示すように蓋ロック体4はロック解除操作される。蓋ロック体4が解除されるのと同時に、リテーナー1はリテーナー本体2の後縁を中心にして下降揺動して、補強フレーム7の下面がリテーナー支持台41で支持される。なお、押下げ体69が補強フレーム13に接当してから、ロックピース26と係止部23との間の係合状態が同時に解除されるまでに要する時間はごく僅かでしかなく、蓋ロック体4を構成する6個のロックピース26は同時に一瞬で解錠される。
【0029】
蓋ロック体4が解除されると、押下げ体69を上昇させ、固定構造53のピストンロッド61を後退させて、押圧ブロック62によるリテーナー1の拘束を解除する。この後、搬送台74に載置された次のリテーナー1を操作体75で搬送することにより、解除前のリテーナー1をリテーナー支持台41に送込み、解除後のリテーナー1に接当させて、解除前のリテーナー1をロック解除位置まで搬送し、解除後のリテーナー1を排出コンベア40に排出して次工程へと移送する。以後、上記を繰り返すことにより、リテーナー1の蓋ロック体4を断続的に解除することができる。
【0030】
以上のように構成したロック解除装置では、ロック解除枠43の主ガイド面45で前上がり姿勢に保持されている状態のリテーナー1の蓋体3を、押下げ構造44で押下げ操作することにより、複数のロックピース26と係止部23との係合状態を同時に解除することができる。詳しくは、蓋体3を、押下げ構造44で押下げ操作すると、主ガイド面45で支持されたロックピース26の基部壁33に押下げ反力が集中して作用し、その結果、固定ロック体17の係止部23と係合していた6個のロックピース26のフック部27が解除方向へ移動して、固定ロック体17から分離し、固定ロック体17に対する可動ロック体18の係合状態が解除されて、蓋体3のロック解除操作を行うことができる。
【0031】
こうしたロック解除装置によれば、前上がり姿勢に保持されている状態のリテーナー1の蓋体3を、押下げ構造44で押下げ操作することにより、蓋ロック体4の可動ロック体18を自動的にロック解除操作できるので、リテーナー本体2に収容されていた肉塊Mの取出しを速やかに行って、ベーコンなどの生産性の向上に貢献できる。また、蓋体3を押下げ構造44で押下げ操作し、主ガイド面45で支持されたロックピース26に押下げ反力を作用させて、可動ロック体18をロック解除操作するので、解除構造38を簡素化して低コスト化できる。
【0032】
フレーム65に固定したガイドブロック67でスライド軸68を昇降自在に案内支持し、スライド軸68の下端に固定した押下げ体69を、シリンダーユニット70でリテーナー支持台41に向かって押下げ操作できるようにして押下げ構造44とした。こうした押下げ構造44によれば、蓋体3の上面に設けた複数の補強フレーム13を、押下げ体69でリテーナー支持台41に向かって押下げ操作することにより、複数の可動ロック体18をロック姿勢からアンロック姿勢に確実にしかも同時に切換えることができる。また、蓋体3の上面に設けた複数の補強フレーム13を押下げ体69で押下げ操作して、押下げ力を分散した状態で蓋体3に作用させるので、蓋ロック体4をロック解除操作する場合に蓋体3やリテーナー本体2の一部に押下げ力が集中して変形し、あるいは破損するのを確実に防止できる。
【0033】
ロック解除枠43と、後ガイド枠52と、リテーナー本体2をロック解除枠43に向かって押付け操作する固定構造53などで位置決め構造42を構成した。ロック解除枠43はリテーナー本体2の前壁を受止め案内し、後ガイド枠52はリテーナー本体2の後壁を受止め案内して、リテーナー本体2の前後位置を大まかに位置決めする。また、固定構造53は、大まかに位置決めされたリテーナー本体2をロック解除枠43に向かって押付け操作して、リテーナー本体2の前後位置をロック解除位置において正確に位置決めする。こうした位置決め構造42によれば、ロック解除位置まで送り込まれたリテーナー1を、常に一定の前上がり姿勢に固定保持できるので、押下げ構造44による蓋ロック体4のロック解除操作を常に適正に行って、リテーナー本体2に収容されていた肉塊Mの取出しを速やかに行うことができる。
【0034】
リテーナー支持台41の搬送始端に隣接して、搬送構造39を設けるようにした。こうしたロック解除装置によれば、操作体75およびロッドレスシリンダー76でリテーナー1を搬送操作することにより、搬送台74に載置されたリテーナー1をリテーナー支持台41へと搬送できる。また、搬送台74に載置されたリテーナー1と、リテーナー支持台41上のロック解除後のリテーナー1とを、搬送構造39で同時に搬送移動することにより、搬送台74に載置されたリテーナー1をリテーナー支持台41に自動的に送込み、ロック解除後のリテーナー1をリテーナー支持台41から自動的に排出して、一連の作業を自動的に行うことができる。
【0035】
座壁21と係合壁22を備えた固定ロック体17は、リテーナー本体2の前壁と蓋受壁9で挟まれる内隅に固定するようにした。また、可動ロック体18のロックピース26は屈曲状に折曲げ形成して、その一端が蓋体3に設けた揺動軸25で上下揺動可能に支持され、付勢ばね28でロック姿勢に向かって揺動付勢されるようにした。さらに、可動ロック体18のフック部27は、可動ロック体18に連続してV字状に折曲げられる基部壁33と係止壁34を備えるようにした。こうした蓋ロック体4によれば、可動ロック体18がロック姿勢に切換えられた状態では、可動ロック体18を伸張変形させて、係止壁34が係合壁22に強固に密着した状態で蓋体3を閉止固定できる。従って、可動ロック体18に他物が衝突するようなことがあっても、可動ロック体18が不用意にロック解除操作されることを確実に防止することができる。
【0036】
上記の実施例では、自動式の搬送構造39を備えるものであったが、当該搬送構造39は手動式であってもよい。その場合には、リテーナー1を人手で解除構造38に送込んだのち、位置決め構造42で位置決めし、リテーナー本体2を押下げ構造44で押下げ操作して蓋ロック体4を解除し、その状態でリテーナー1を解除構造38から取出すとよい。
【0037】
また、上記の実施例では操作体75をロッドレスシリンダー76で往復操作するようにしたが、その必要はなく、エアーシリンダーや電動シリンダーなどの動力シリンダーや、リニアモーターなどで操作体75を往復操作してもよい。ロック解除枠43の主ガイド面45は水平の平坦面で形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 リテーナー
2 リテーナー本体
3 蓋体
4 蓋ロック体
13 補強フレーム
14 ヒンジ軸
17 固定ロック体
18 可動ロック体
19 連結部材(連結バー)
23 係止部
25 揺動軸
26 ロックピース
27 フック部
28 付勢ばね
38 解除構造
39 搬送構造
41 リテーナー支持台
42 位置決め構造
43 ロック解除枠
44 押下げ構造
65 フレーム
67 ガイドブロック
68 スライド軸
69 押下げ体
70 シリンダーユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9