特許第6975984号(P6975984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6975984
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】カップ打込器
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/46 20060101AFI20211118BHJP
【FI】
   A61F2/46
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-62420(P2019-62420)
(22)【出願日】2019年3月28日
(65)【公開番号】特開2020-156977(P2020-156977A)
(43)【公開日】2020年10月1日
【審査請求日】2020年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】508282465
【氏名又は名称】帝人ナカシマメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西脇 徹
(72)【発明者】
【氏名】宮下 高利
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 巧司
【審査官】 土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−503328(JP,A)
【文献】 米国特許第06416553(US,B1)
【文献】 特表2014−521395(JP,A)
【文献】 特表2015−500047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/46
A61F 2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工股関節の半球状のカップを臼蓋に打ち込む際に使用されるカップ打込器であって、
棒状の打込器本体と、
前記カップが取り付けられる、前記打込器本体の先端に着脱可能な先端アタッチメントと、を備え、
前記カップの中心にはネジ穴が設けられており、前記カップの内側面には、前記ネジ穴を中心とする多角形状の窪みが形成されており、
前記先端アタッチメントは、前記ネジ穴に螺合するネジ軸を有するロッドと、前記ロッド挿通された筒状のハウジングであって、前記カップの窪みに嵌合するハウジングを含み、
前記ハウジングが前記打込器本体の先端に設けられた挿入穴に回転不能に挿入される、カップ打込器。
【請求項2】
前記ロッドは、前記ハウジングの端面に当接する頭部と、前記頭部と前記ネジ軸との間に介在する、前記ネジ軸よりも小径の中間軸を有し、
前記ハウジングの内周面には、前記ネジ軸と螺合可能なネジ部であって、前記中間軸の周囲に位置するネジ部が設けられている、請求項1に記載のカップ打込器。
【請求項3】
前記挿入穴の内周面には、係合リングを保持する保持溝が形成されており、
前記ハウジングの外周面には、前記係合リングが嵌まり込む係合溝が形成されている、請求項1または2に記載のカップ打込器。
【請求項4】
前記ハウジングの外周面には、少なくとも1つの突起が形成されており、
前記挿入穴の内周面には、前記突起が嵌まり込む回転規制溝が形成されている、請求項1〜3の何れか一項に記載のカップ打込器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工股関節の半球状のカップを臼蓋に打ち込む際に使用されるカップ打込器に関する。
【背景技術】
【0002】
人工股関節では、患者の臼蓋(大腿骨の骨頭が嵌まり込む骨盤の窪み、寛骨臼ともいう)よりも少し大きめのサイズの半球状のカップが選択され、そのカップが臼蓋に圧入される。この圧入を行うために、カップ打込器が使用される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
カップ打込器は棒状の器具であり、カップ打込器の先端にカップが取り付けられる。カップ打込器はカップが臼蓋に圧入可能な位置に到達するように操作され、その状態でカップ打込器の基端がハンマーなどで叩かれることにより、カップが臼蓋に打ち込まれて臼蓋に圧入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−33793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、カップには臼蓋に固定するためのネジ用の貫通穴が設けられているため、臼蓋に対するカップの相対回転位置を調整したいという要望がある。このような観点から、カップの内側面には、その中心に正方形状の窪みが形成され、この窪みを利用してカップがカップ打込器の先端に回転不能に取り付けられることもある。
【0006】
ところで、カップをカップ打込器へ取り付けるための構造としては、カップの中心に設けられたネジ穴にカップ打込器の先端に設けられたネジ軸を螺合させる構造もある。このようなネジ式取付構造のカップ打込器に対しては、上述したカップ打込器に対するカップの相対回転を防止する構成の採用は困難である。
【0007】
そこで、本発明は、ネジ式取付構造とカップ打込器に対するカップの相対回転の防止とを両立することができるカップ打込器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のカップ打込器は、人工股関節の半球状のカップを臼蓋に打ち込む際に使用されるカップ打込器であって、棒状の打込器本体と、前記カップが取り付けられる、前記打込器本体の先端に着脱可能な先端アタッチメントと、を備え、前記カップの中心にはネジ穴が設けられており、前記カップの内側面には、前記ネジ穴を中心とする多角形状の窪みが形成されており、前記先端アタッチメントは、前記ネジ穴に螺合するネジ軸を有するロッドと、前記ロッドに挿通された筒状のハウジングであって、前記カップの窪みに嵌合するハウジングを含み、前記ハウジングが前記打込器本体の先端に設けられた挿入穴に回転不能に挿入される、ことを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、先端アタッチメントのハウジングはロッドに挿通されているので、ハウジングをカップの多角形状の窪みに嵌め込んだ状態でロッドを回転させることができる。これにより、ロッドのネジ軸をカップのネジ穴に螺合してカップを先端アタッチメントに取り付けることができる。先端アタッチメントは、打込器本体に対して着脱可能であるので、先端アタッチメントを打込器本体から取り外した状態でカップを先端アタッチメントに取り付ければ、その取付作業を簡単に行うことができる。さらに、先端アタッチメントのハウジングは、打込器本体の挿入穴に回転不能に挿入されるので、先端アタッチメントを打込器本体の先端に装着すれば、カップ打込器の操作によって臼蓋に対するカップの相対回転位置を調整することができる。
【0010】
前記ロッドは、前記ハウジングの端面に当接する頭部と、前記頭部と前記ネジ軸との間に介在する、前記ネジ軸よりも小径の中間軸を有し、前記ハウジングの内周面には、前記ネジ軸と螺合可能なネジ部であって、前記中間軸の周囲に位置するネジ部が設けられていてもよい。この構成によれば、ハウジングのネジ部がロッドの抜け止めとして機能するため、簡単な構造でハウジングにロッドを保持させることができる。
【0011】
前記挿入穴の内周面には、係合リングを保持する保持溝が形成されており、前記ハウジングの外周面には、前記係合リングが嵌まり込む係合溝が形成されていてもよい。この構成によれば、先端アタッチメントを打込器本体の挿入穴へ挿入するだけで、先端アタッチメントを打込器本体へ装着することができる。
【0012】
例えば、前記ハウジングの外周面には、少なくとも1つの突起が形成されており、前記挿入穴の内周面には、前記突起が嵌まり込む回転規制溝が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ネジ式取付構造とカップ打込器に対するカップの相対回転の防止とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るカップ打込器の側面図である。
図2図1に示すカップ打込器の先端部の断面図である。
図3】打込器本体の先端の一部を断面で示した斜視図である。
図4】(a)は先端アタッチメントを前方から見た斜視図、(b)は先端アタッチメントを後方から見た斜視図である。
図5】カップを内側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に、本発明の一実施形態に係るカップ打込器1を示す。カップ打込器1は、人工股関節の半球状のカップ7を臼蓋(図示せず)に打ち込む際に使用される。
【0016】
具体的に、カップ打込器1は、棒状の打込器本体2と、打込器本体2の先端に着脱可能な先端アタッチメント3を含む。先端アタッチメント3には、カップ7が取り付けられる。
【0017】
打込器本体2は、医師などにより把持されるグリップ部22と、グリップ部22から延びるポール部21を含む。ポール部21の先端は、患者の体内に挿入される。本実施形態では、ポール部21が、患者の体内の筋組織との干渉を回避し易いように弓なりに湾曲している。ただし、ポール部21は、直線状であってもよい。
【0018】
ポール部21の先端は打込器本体2の先端でもあり、グリップ部22のポール部21と反対側の端はハンマーなどで叩かれる打込器本体2の基端である。
【0019】
ポール部21の先端は、グリップ部22の中心線の延長線上に位置している。ポール部21の先端には、図2および図3に示すように、先端アタッチメント3が挿入される挿入穴23が設けられている。挿入穴23は、グリップ部22の中心線の延長線を中心とする穴であり、グリップ部22の中心線の延長線に沿ってポール部21の先端を貫通している。
【0020】
以下では、説明の便宜上、グリップ部22の中心線の延長線に沿う方向を前後方向(ポール部21側を前方、グリップ部22側を後方)ということもある。
【0021】
先端アタッチメント3は、図2に示すように、ロッド4と、このロッド4に挿通された筒状のハウジング5を含む。ハウジング5は、ポール部21の先端面に当接するフランジ部52と、フランジ部52から前方に突出する嵌合部51と、フランジ部52から後方に突出する管状部53を有する。
【0022】
図5に示すように、カップ7には、中心にネジ穴71が設けられているとともに、その周りに複数の貫通穴73が設けられている。貫通穴73は、カップ7を臼蓋に固定するためのネジ用の穴である。また、カップ7の内周面には、ネジ穴71を中心とする多角形状の窪み72が形成されている。
【0023】
本実施形態では、窪み72の形状が四角形(図例では正方形)である。ただし、窪み72の形状は、六角形などの他の多角形であってもよい。
【0024】
上述したハウジング5の嵌合部51は、カップ7の窪み72に嵌合する部分であり、図2ならびに図4(a)および(b)に示すように、窪み72の輪郭よりも僅かに小さな輪郭を有する。
【0025】
ハウジング5の管状部53は、挿入穴23に挿入される部分である。挿入穴23の内周面には、ポール部21の先端面から少し奥まった位置に、図3に示すように周方向に連続する保持溝27が形成されている。この保持溝27には、図2に示すように係合リング6が保持されている。
【0026】
一方、管状部53の外周面には、図4(a)および(b)に示すように周方向に連続する係合溝55が形成されている。管状部53が挿入穴23に挿入されたときには、保持溝27に保持された係合リング6が係合溝55に嵌まり込む。すなわち、先端アタッチメント3を打込器本体2の挿入穴23へ挿入するだけで、先端アタッチメント3を打込器本体2へ装着することができる。一方、先端アタッチメント3を打込器本体2から取り外す際には、先端アタッチメント3を挿入穴23から引き抜くだけでよい。
【0027】
さらに、管状部53の外周面には、少なくとも1つの突起54が形成されている。本実施形態では、2つの突起54が180度間隔で設けられており、各突起54が管状部53の軸方向に延びている。
【0028】
一方、挿入穴23の内周面には、2つの回転規制溝26が形成されている。各回転規制溝26は、管状部53の軸方向に延びており、ポール部21の先端面に開口している。管状部53が挿入穴23に挿入されたときには、突起54が対応する回転規制溝26に嵌まり込む。これにより、打込器本体2に対するハウジング5の相対回転が防止される。すなわち、ハウジング5は、挿入穴23に回転不能に挿入される。
【0029】
先端アタッチメント3のロッド4は、カップ7のネジ穴71と螺合するネジ軸43と、ハウジング5の後端面に当接する頭部41と、頭部41とネジ軸43の間に介在する中間軸42を有する。中間軸42とネジ軸43の合計長さは、ハウジング5の長さよりも長い。このため、ネジ軸43の先端は、ハウジング5の前端面よりも前方に位置している。そして、カップ7のネジ穴71へのネジ軸43の螺合によって、カップ7がハウジング5の前端面に押し付けられる。
【0030】
中間軸42は、ネジ軸43よりも小径である。ハウジング5の内周面の前方部分は平滑な円筒面であるが、内周面の後方部分にはネジ部56が設けられている。すなわち、ネジ部56は、中間軸42の周囲に位置する。
【0031】
ネジ部56は、ロッド4のネジ軸43と螺合可能である。換言すれば、ネジ部56の呼び径とネジ軸43の呼び径は同じである。このため、ロッド4をハウジング5に挿通する際には、ネジ軸43をネジ部56に螺合させながらロッド4を一方向に回転させれば、ネジ軸43がネジ部56を通過する。この構成であれば、ネジ部56がロッド4の抜け止めとして機能するため、簡単な構造でハウジング5にロッド4を保持させることができる。また、先端アタッチメント3を洗浄する際には、ネジ軸43をネジ部56に螺合させながらロッド4を逆方向に回転させれば、ロッド4をハウジング5から引き抜くことができる。
【0032】
頭部41には、工具係合用の六角穴44が設けられている。図1に示すように、ポール部21は弓なりに湾曲することにより前側傾斜部と後側傾斜部との間にオフセット部を有しており、このオフセット部に工具挿通用の貫通穴25が設けられている。また、前側傾斜部にも、六角穴44と貫通穴25を結ぶ線上に切欠き24が形成されている。
【0033】
以上説明したように、本実施形態のカップ打込器1では、先端アタッチメント3のハウジング5がロッド4に挿通されているので、ハウジング5をカップ7の窪み72に嵌め込んだ状態でロッド4を回転させることができる。これにより、ロッド4のネジ軸43をカップ7のネジ穴71に螺合してカップ7を先端アタッチメント3に取り付けることができる。
【0034】
また、先端アタッチメント3は、打込器本体2に対して着脱可能であるので、先端アタッチメント3を打込器本体2から取り外した状態でカップ7を先端アタッチメント3に取り付ければ、その取付作業を簡単に行うことができる。さらに、先端アタッチメント3のハウジング5は、打込器本体2の挿入穴23に回転不能に挿入されるので、先端アタッチメント3を打込器本体2の先端に装着すれば、カップ打込器1の操作によって臼蓋に対するカップ7の相対回転位置を調整することができる。
【0035】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0036】
例えば、前記実施形態では、回転規制溝26への突起54の嵌まり込みによりハウジング5が挿入穴23に回転不能に挿入されているが、挿入穴23の前方部分およびハウジング5の管状部53が多角形状になっていることによってハウジング5が挿入穴23に回転不能に挿入されてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 カップ打込器
2 打込器本体
23 挿入穴
26 回転規制溝
27 保持溝
3 先端アタッチメント
4 ロッド
41 頭部
42 中間軸
43 ネジ軸
5 ハウジング
54 突起
55 係合溝
56 ネジ部
6 係合リング
7 カップ
71 ネジ穴
72 窪み
図1
図2
図3
図4
図5