(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6975988
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】アミン‐金属錯体と硫黄徐放性前駆体を使用した発光2D層状材料の合成
(51)【国際特許分類】
C09K 11/08 20060101AFI20211118BHJP
C01G 39/06 20060101ALI20211118BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20211118BHJP
C09K 11/68 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
C09K11/08 G
C01G39/06
B82Y40/00
C09K11/68
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-541795(P2019-541795)
(86)(22)【出願日】2018年1月25日
(65)【公表番号】特表2020-512427(P2020-512427A)
(43)【公表日】2020年4月23日
(86)【国際出願番号】IB2018050465
(87)【国際公開番号】WO2018142247
(87)【国際公開日】20180809
【審査請求日】2019年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】517438033
【氏名又は名称】ナノコ 2ディー マテリアルズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NANOCO 2D MATERIALS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダニエルス,スティーブン
【審査官】
武重 竜男
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2018/002607(WO,A3)
【文献】
特表2018−534784(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2017/0029697(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第106395765(CN,A)
【文献】
特開2007−169605(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0159849(US,A1)
【文献】
特開2009−161372(JP,A)
【文献】
特表2015−523314(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0011317(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第105129748(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第103896222(CN,A)
【文献】
国際公開第09/035163(WO,A3)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0213420(US,A1)
【文献】
特開2004−051985(JP,A)
【文献】
カナダ国特許出願公開第02432993(CA,A1)
【文献】
Jin Joo, et al.,Generalized and Facile Synthesis of Semiconducting Metal Sulfide Nanocrystals,J. American Chemical Society,米国,2003年,Vol.125,11100-11105
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K11/00−11/89、
C01G 1/00−99/00
B82Y20/00、
B82Y40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MoS2ナノ粒子を調製する方法において、
MoS2ナノ粒子を形成させる工程であって、
モリブデンヘキサカルボニル(Mo(CO)6)と脱ガスしたオレイルアミンの混合物を密封容器で撹拌して、オレイルアミン/Mo(CO)6の懸濁液を生成することと、
オレイルアミン/Mo(CO)6の懸濁液の少なくとも一部を、脱ガスしたオレイルアミンが入った容器に移して反応混合物を作ることと、
反応混合物を約250℃に加熱することと、
1‐ドデカンチオール(DDT)の第1の部を反応混合物に加えることと、
反応混合物を約250℃で約30分間加熱することと、
1‐ドデカンチオール(DDT)の第2の部を反応混合物に加えることと、
反応混合物を約250℃で約30分間加熱することと、
その後、反応混合物を約300℃に加熱することと、
その後、1‐ドデカンチオール(DDT)の第3の部を反応混合物に加えることと、
反応混合物を約300℃で約30分間加熱することとによって、MoS2ナノ粒子を形成させる工程と、
MoS2ナノ粒子を単離する工程と、
単離されたMoS2ナノ粒子を溶媒に溶解させる工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
発光組成物を調製する方法において、
モリブデンヘキサカルボニル(Mo(CO)6)と脱ガスしたヘキサデシルアミンの混合物を密封容器で約45℃で攪拌して、第1の反応混合物を生成する工程と、
第1の反応混合物を約150°Cに加熱して、Mo(CO)6‐アミン錯体を形成させる工程と、
ある量の脱ガスされたヘキサデシルアミンを約300℃に加熱する工程と、
Mo(CO)6‐アミン錯体を含む第1の反応混合物に1‐ドデカンチオール(DDT)を加えて、第2の反応混合物を生成する工程と、
約300℃に加熱された脱ガスされたヘキサデシルアミンに第2の反応混合物を加えて、第3の反応混合物を生成する工程と、
第3の反応混合物の温度を約260℃に調整する工程と、
第3反応混合物の温度を約40分間約260℃に維持する工程と、
その後、ヘキサデシルアミンを還流するのに十分な程度に第3の反応混合物の温度を上昇させる工程と、
第3の反応混合物を約20分間還流して沈殿物を形成させる工程と、
とを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の参照>
本願は、2017年2月2日に出願された米国仮出願第62/453,780と、2017年11月20日に出願された米国仮出願第62/588,774の利益を主張し、それらの内容は、参照によって全体として本明細書の一部となる。
<連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載>
無し。
【0002】
本発明は概して、二次元(2D)材料に関する。より詳細には、本発明は2Dナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0003】
グラファイトの機械的剥離によるグラフェンの分離[K.S. Novoselov, A.K. Geim, S.V. Morozov, D. Jiang, Y. Zhang, S.V. Dubnos, I.V. Grigorieva and A.A. Firsov, Science, 2004, 306, 666]は、2次元(2D)層状材料への強い関心を引き起こした。グラフェンの特性には、非常に優れた強度と、高い電気伝導性と、熱伝導性とが含まれる一方で、グラフェンは、軽量で柔軟性があって、透明である。これにより、高速トランジスタ及びセンサ、バリア材料、太陽電池、バッテリ、及び複合材料を含む、広範な潜在的用途の可能性が開かれる。
【0004】
広く関心が持たれている他のクラスの2D材料には、遷移金属ジカルコゲニド(TMDC)材料、六方晶窒化ホウ素(h‐BN)に加えて、シリセンやゲルマネンなどの14族元素を用いた材料が含まれる。これらの材料の特性は、NiTe
2やVSe
2等の半金属から、WSe
2やMoS
2な等の半導体、h‐BN等の絶縁性まで及んでいる。
【0005】
TMDC材料の2Dナノシートは、触媒からセンシング、エネルギー貯蔵、オプトエレクトロニクスデバイスに至る用途で関心を集めている。
【0006】
TMDC単分子層は、MX
2型の原子レベルで薄い半導体であって、ここで、Mは遷移金属元素(Mo、W等)、Xはカルコゲン元素(S、Se、又はTe)である。M原子の単一層は、X原子の2つの層の間に挟まれている。MoS
2モノレイヤの厚さは6.5Åである。2DのTMDCの中で、半導体WSe
2及びMoS
2に特に関心が持たれている。それは、材料の大きさが単層又は数層に縮小されると、それらのバルク特性をほとんど維持しながら、量子閉じ込め効果に起因して更なる特性が生じるからである。WSe
2及びMoS
2の場合、厚さが単一のモノレイヤに減少すると、これらは、強い励起子効果を伴う間接から直接へのバンドギャップ遷移を示す。これにより、フォトルミネッセンス効率が非常に増大するので、このような材料をオプトエレクトロニクスデバイスに適用する新たな機会が開かれる。特定の関心が持たれている他の材料には、WS
2及びMoSe
2が挙げられる。
【0007】
グラフェンの発見は、巨視的な大きさのバルク結晶が1原子層まで薄くなると、新しい物理的性質がどのように現れ得るかを例示している。グラファイトと同様に、TMDCバルク結晶は、ファンデルワールス引力によって互いに結合したモノレイヤで形成される。TMDCモノレイヤの特性は、半金属グラフェンとは明らかに異なっている。例えば、TMDCモノレイヤMoS
2、WS
2、MoSe
2、WSe
2、MoTe
2は直接バンドギャップを有しており、電子工学分野ではトランジスタとして、光学分野ではエミッタ及び検出器として使用できる。第4乃至7族のTMDCの大半は、層状構造で結晶化しており、電気的、化学的、機械的、熱的特性に異方性をもたらす。各層は、金属原子の六方充填層(hexagonally packed layer)を備えており、当該六方充填層は、共有結合を介してカルコゲン原子の2つの層の間に挟まれている。隣接している層は、ファンデルワールス相互作用によって弱く結合しており、これは、機械的又は化学的方法によって容易に壊れて、単層構造や数層構造が作られる。
【0008】
TMDCモノレイヤ結晶構造には反転中心がなく、これは、電荷キャリアの新しい自由度、所謂kバレーインデックスの利用を可能として、物理学の新しい分野である「バレートロニクス(valleytronics)」を開くものである。
【0009】
TMDCモノレイヤにおける強いスピン軌道結合によって、価電子帯で数百meV、伝導帯で数meVのスピン軌道分裂が生じ、これによって、励起レーザーの光子エネルギーを調整することで電子スピンが制御になる。
【0010】
TMDCモノレイヤの働きは、直接バンドギャップの発見以来の新しい研究開発分野であって、電子工学及びバレー物理学における潜在的な用途である。TMDCは、ファンデルワールスヘテロ構造デバイスを作るために、グラフェンや六方晶窒化ホウ素などの他の2D材料と組み合わされてよい。
【0011】
半導体は、そのバンドギャップ以上のエネルギーの光子を吸収できる。これは、より波長が短い光が吸収されることを意味する。伝導帯エネルギーの最小値が価電子帯の最大値と同じk空間位置にある場合、即ち、バンドギャップが直接的である場合、半導体は通常、効率的なエミッタである。バルクTMDC材料のバンドギャップは、2モノレイヤの厚さに減ってもまだ間接的であるので、放出効率はモノレイヤ材料と比較して低い。放出効率は、TMDCモノレイヤの場合、バルク材料の場合よりも約10
4倍大きい。TMDCモノレイヤのバンドギャップは、可視範囲(400乃至700nm)である。直接放出は、スピン軌道結合エネルギーによって分離されたAとBと呼ばれる2つの遷移を示す。最も低いエネルギー、故に、強度において最も重要なのは、A放出である。TMDCモノレイヤは、直接バンドギャップよって、オプトエレクトロニクス用途の有望な材料となっている。
【0012】
MoS
2は、その多層形態において、銀黒色の固体であって、鉱物のモリブデナイト‐モリブデンの主要鉱石、として存在する。MoS
2は比較的不活性である。それは、希酸や酸素の影響を受けない。MoS
2の外観と感触は、グラファイトに似ている。それは、その低摩擦特性と耐性のおかげで、固体潤滑剤として広く使用されている。TMDCとして、MoS
2は、グラフェンの望ましい品質の幾つか(機械的強度や電気伝導性等)を備えており、光を放出できるので、光検出器やトランジスタなどの用途の可能性を開く。
【0013】
高性能用途では、平坦で欠陥のない材料が必要とされている一方で、バッテリやスーパーキャパシタの用途では、欠陥、空隙、空洞が望ましい。
【0014】
単層及び数層の2Dナノシートは、「トップダウン(top-down)」法と「ボトムアップ(bottom-up)」法を使用して製造できる。トップダウン法では、バルク材料から機械的又は化学的に層が外される。そのような技術には、機械的剥離、超音波支援液相剥離(LPE)、インターカレーション技術が挙げられる。2D層を構成要素から成長させるボトムアップ法には、化学蒸着(CVD)、原子層堆積(ALD)、分子線エピタキシ(MBE)に加えて、ホットインジェクションを含む溶液ベースのアプローチが挙げられる。
【0015】
2Dナノシートを合成するための多くの手法が先行技術で説明されており、それらの中で最も一般的なものとして、機械的剥離、LPE及びCVDが挙げられる。溶液ベースの手法に関する少数の報告は、主にホットインジェクション技術を利用している。機械的剥離は高結晶質フレークをもたらすが、プロセスの歩留まりは低く、厚さの制御が不十分であって、拡張性がない。LPEは、2Dナノシートの生産への拡張性がある手段をもたらし、他の技術よりも危険性の低い化学物質を使用して、周囲条件下で実行できる。しかしながら、機械的剥離の場合と同様に、反応収率が低く、厚さの制御が不十分で、生成されるフレークは小さい。低い反応収率は、CVD合成では典型的である。この方法の利点には、大面積の拡張性、均一性、厚さの制御が挙げられる。しかしながら、得られる材料の品質は、機械的剥離されたフレークの品質には及ばず、生成されたフレークは通常小さくて、長期間安定性が低い。溶液ベースの合成法への関心は高まっており、得られる2D材料のサイズ、形状、均一性を制御できる可能性がある。しかしながら、望ましい結晶相を有するフレークを生成する拡張性のある合成方法と、調整可能で狭いサイズ及び形状分布と、揮発性リガンドでのキャッピングとの最高の組み合わせを提供するには、更なる改善が必要である。
【0016】
「ボトムアップ」手法によって作製される2D量子ドットのコロイド合成に関する文献報告は僅かである。大半は、「トップダウン」の剥離ベースの方法、即ち、2D材料を得るためにバルク材料を剥離する方法である。溶液ベースの手法は、2Dフレークを形成するためには非常に望ましい。得られる材料のサイズ、形状、均一性を制御できることに加えて、材料の表面にリガンドを適用して、溶解性、ひいては溶液処理性を与えることができるからである。材料の表面への有機リガンドの適用はまた、CVD成長サンプルで観察されるように、酸素や他の外的化学種に対するバリアとして機能することで、劣化を制限し得る。得られる材料はフリースタンディング(free-standing)であり、加工性が更に向上している。しかしながら、これまでに開発された溶液ベースの方法は、所望の結晶相と、調整可能な狭い形状及びサイズ分布と、デバイスの処理中に簡単に削除できるという点で望ましい揮発性キャッピングリガンドとを有する2D層状物質を生成するための拡張可能な反応をもたらさない。MoS
2に関するある有望な文献は、単一源の前駆体アンモニウムテトラチオモリブデート((NH
4)
2MoS
4)を使用した[H. Lin, C. Wang, J. Wu, Z. Xu, Y. Huang and C. Zhang, New J. Chem., 2015, 39, 8492]。しかしながら、報告されている方法は、不溶物を生じる。有機可溶性材料は、特定の用途及び/又は使いやすさで非常に有利であると考えられる。
【0017】
2D層状材料の製造における課題の1つは、高品質、無欠陥、又は欠陥を含む材料が求められている否かに拘わらず、大規模で組成の均一性を達成することである。更なる課題には、均一な形状とサイズ分布を有する2Dフレークの形成が挙げられる。
【0018】
故に、均一な特性を有しており、溶液処理が可能な2Dナノ粒子を生成する合成方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0019】
本明細書では、ナノ粒子を調製する方法が説明される。その方法を使用して、均一な特性を有する2Dナノ粒子を生成することができ、当該2Dナノ粒子は、溶液処理できる。
【0020】
ある実施形態において、合成方法は、第1のナノ粒子前駆体と第2のナノ粒子前駆体を1又は複数の溶媒中で混合して溶液を作る工程と、その後、第1の期間、溶液を第1の温度に加熱する工程と、続いて、第2の期間、溶液を第2の温度に加熱する工程とを含んでおり、第2の温度が第1の温度よりも高いことで、それらナノ粒子前駆体が2Dナノ粒子に変換される。
【0021】
ある実施形態では、第1のナノ粒子前駆体は金属‐アミン錯体である。ある実施形態では、第2のナノ粒子前駆体は徐放性カルコゲン源である。
【0022】
ある実施形態では、合成方法は、単一源前駆体を溶媒に溶解させて溶液を作る工程と、第1の期間、溶液を第1の温度に加熱する工程と、続いて、第2の期間、溶液を第2の温度に加熱する工程とを含んでおり、第2の温度が第1の温度よりも高いことで、単一源前駆体が2Dナノ粒子に変換される。
【0023】
ある実施形態では、2Dナノ粒子はTMDCナノ粒子である。
【0024】
ある実施形態では、2Dナノ粒子は2D量子ドット(QD)である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、実施例4に基づいて調製されたMoS
2 2Dナノ粒子の光ルミネセンス等高線図である。
【0026】
【
図2】
図2は、実施例4に基づいて調製されたMoS
2 2Dナノ粒子のラマンスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書では、ナノ粒子を調製する方法が説明される。この方法を使用することで、特性が均一である2Dナノ粒子が生成される。ある実施形態では、2Dナノ粒子は、ワンポット法により調製される。
【0028】
本明細書では、用語「ナノ粒子」は、大きさが約1乃至100nmである粒子を述べるために使用される。用語「量子ドット」(QD)は、量子閉じ込め効果を示す半導体ナノ粒子を述べるために使用される。QDの大きさは通常、1乃至10nmであるが、これに限定されない。用語「ナノ粒子」及び「量子ドット」は、粒子の形状に制限を加えることを意図していない。用語「2Dナノ粒子」は、約1乃至100nmの大きさの横方向寸法と、1乃至10原子又は分子層の厚さとを有しており、横方向寸法は厚さより大きい粒子を述べるために使用される。用語「2Dナノフレーク」は、横方向の寸法が約1乃至100nmの大きさで、厚さが1乃至5原子又は分子層の粒子を述べるために使用される。
【0029】
本明細書では、用語「ワンポット法」は、単一の反応容器内でナノ粒子前駆体が2Dナノ粒子に変換される合成方法を記述するために使用される。
【0030】
ナノ粒子の組成は限定されない。適切な物質としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
酸化グラフェン及び還元型酸化グラフェン。
【0032】
遷移金属ジカルコゲニド(TMDC)。例えば、WO
2、WS
2、WSe
2、WTe
2、MnO
2、MoO
2、MoS
2、MoSe
2、MoTe
2、NiO
2、NiTe
2、NiSe
2、VO
2、VS
2、VSe
2、TaS
2、TaSe
2、RuO
2、RhTe
2、PdTe
2、HfS
2、NbS
2、NbSe
2、NbTe
2、FeS
2、TiO
2、TiS
2、TiSe
2、及びZrS
2。
【0033】
遷移金属トリカルコゲニド。TaO
3、MnO
3、WO
3、ZrS
3、ZrSe
3、HfS
3、及びHfSe。
【0034】
13‐16(III‐VI)族化合物。例えば、InS、InSe、GaS、GaSe、及びGaTe。
【0035】
15‐16(V‐VI)族化合物。例えば、Bi
2Se
3及びBi
2Te
3。
【0037】
酸化物。例えば、LaVO
3、LaMnO
3、V
2O
5、LaNbO
7、Ca
2Nb
3O
10、Ni(OH)
2、Eu(OH)
2、層状酸化銅、雲母、及びビスマス・ストロンチウム・カルシウム・銅酸化物(BSCCO)。
【0038】
リン化物。例えば、Li
7MnP
4、及びMnP
4。
【0039】
上述の物質では、隣接する層は、ファンデルワールス相互作用によって結合しており、合成中に容易に分離して2Dフレークが形成される。別の実施形態では、ナノ粒子は、以下の非層状半導体材料を含むが、これらに限定されない。
【0040】
12‐16(II‐VI)族半導体。例えば、ZnS、ZnSe、CdS、CdSe、及びCdTe。
【0041】
13‐15(III‐V)族材料。例えば、GaN、GaP、GaAs、InN、InP、及びInAs。
【0042】
I‐III‐VI族材料。例えば、CuGaS
2、CuGaSe
2、CuGa(S、Se)
2、CuInS
2、CuInSe
2、CuIn(S、Se)
2、Cu(In、Ga)S
2、Cu(In、Ga)Se
2、Cu(In、Ga)(S、Se)
2、CuInTe
2、AgInS
2、及びAgInSe
2。
【0044】
幾つかの実施形態では、2Dナノ粒子は2Dナノフレークである。幾つかの実施形態では、2Dナノ粒子は2D QDである。QDは、特有の光学的、電子的、化学的特性について幅広く研究されている。それら特性は、「量子閉じ込め効果」に由来しており、これは、半導体ナノ粒子の大きさがボーア半径の2倍より小さくなると、エネルギーレベルが量子化されて、離散的エネルギーレベルが生じるからである。粒子サイズの減少に伴ってバンドギャップが増加して、サイズ調整可能な光学的、電気的、及び化学的特性、例えば、サイズ依存フォトルミネッセンスが導かれる。更に、2Dナノフレークの横方向寸法を量子閉じ込め領域まで小さくすると、2Dナノフレークの横方向寸法と層数の両方に依存した、更なる独特な特性が生じることがわかっている。幾つかの実施形態では、2Dナノフレークの横方向寸法は、量子閉じ込め領域にあってよく、ナノ粒子の光学的、電気的、及び化学的特性は、横方向寸法を変えることで操作され得る。例えば、横方向寸法が約10nm以下であるMoSe
2やWSe
2等の材料の金属カルコゲニドモノレイヤナノフレークは、励起されると、サイズ調整可能な放射等の特性を示し得る。これにより、ナノ粒子の横方向寸法を操作することで、2Dナノフレークのエレクトロルミネッセンス極大(EL
max)又はフォトルミネッセンス(PL
max)を調整できる。本明細書では、「2D量子ドット」又は「2D QD」とは、量子閉じ込め領域にある横方向寸法と、1乃至5原子又は分子のモノレイヤの厚さとを有する半導体ナノ粒子を示す。本明細書では、「単層量子ドット」又は「単層QD」とは、量子閉じ込め領域における横方向寸法と、単一モノレイヤの厚さとを有する半導体ナノ粒子を示す。従来のQDと比較して、2D QDの表面積対体積比は非常に高く、モノレイヤの数が減少するにつれて増加する。最も高い表面積対体積比は、単層QDで見られる。これは、従来のQDとは非常に異なる表面化学を持つ2D QDを導く可能性があり、触媒等の用途に活用され得る。
【0045】
ある実施形態では、合成方法は、第1のナノ粒子前駆体と第2のナノ粒子前駆体を1又は複数の溶媒中で混合して溶液を作る工程と、続いて第1の期間、溶液を第1の温度に加熱する工程と、続いて、第2の期間、溶液を第2の温度に加熱する工程とを含む。第2の温度が第1の温度よりも高いことで、それらナノ粒子前駆体が2Dナノ粒子に変換される。
【0046】
別の実施形態では、合成方法は、単一源前駆体を溶媒に溶解させて溶液を作る工程と、第1の期間、溶液を第1の温度に加熱する工程と、その後、第2の期間、溶液を第2の温度に加熱する工程とを含んでおり、第2の温度が第1の温度よりも高いことで、単一源前駆体が2Dナノ粒子に変換される。
【0047】
ある実施形態では、第1の前駆体は金属前駆体である。適切な金属前駆体としては、例えば、以下の無機前駆体が挙げられるが、これらに限定されない。
・金属ハロゲン化物。WCl
n(n=4乃至6)、Mo
6Cl
12、MoCl
3、[MoCl
5]
2、NiCl
2、MnCl
2、VCl
3、TaCl
5、RuCl
3、RhCl
3、PdCl
2、HfCl
4、NbCl
5、FeCl
2、FeCl
3、TiCl
4、SrCl
2、SrCl
2・6H
2O、WO
2Cl
2、MoO
2Cl
2、CuCl
2、ZnCl
2、CdCl
2、GaCl
3、InCl
3、WF
6、MoF
6、NiF
2、MnF
2、TaF
5、NbF
5、FeF
2、FeF
3、TiF
3、TiF
4、SrF
2、NiBr
2、MnBr
2、VBr
3、TaBr
5、RuBr
3・XH
2O、RhBr
3、PdBr
2、HfBr
4、NbBr
5、FeBr
2、FeBr
3、TiBr
4、SrBr
2、NiI
2、MnI
2、RuI
3、RhI
3、PdI
2、又はTiI
4。
・(NH
4)
6H
2W
12O
40又は(NH
4)
6H
2Mo
12O
40。
・金属カルボニル塩などの有機金属前駆体。例えば、Mo(CO)
6、W(CO)
6、Ni(CO)
4、Mn
2(CO)
10、Ru
3(CO)
12、Fe
3(CO)
12、又はFe(CO)
5、並びに、それらのアルキル誘導体及びアリール誘導体。
・酢酸塩。例えば、Ni(ac)
2・4H
2O、Mn(ac)
2・4H
2O、Rh
2(ac)
4、Pd
3(ac)
6、Pd(ac)
2、Fe(ac)
2、Sr(ac)
2、Cu(ac)
2、Zn(ac)
2、Cd(ac)
2、又はIn(ac)
3。ここで、ac=OOCCH
3;
・アセチルアセトネート。例えば、Ni(acac)
2、Mn(acac)
2、V(acac)
3、Ru(acac)
3、Rh(acac)
3、Pd(acac)
2、Hf(acac)
4、Fe(acac)
2、Fe(acac)
3、Sr(acac)
2、Sr(acac)
2・2H
2O、Cu(acac)
2、Ga(acac)
3、又はIn(acac)
3。ここで、acac=CH
3C(O)CHC(O)CH
3である。
・ヘキサノエート。例えば、Mo[OOCH(C
2H
5)C
4H
9]
x、Ni[OOCCH(C
2H
5)C
4H
9]
2、Mn[OOCCH(C
2H
5)C
4H
9]
2、Nb[OOCCH(C
2H
5)C
4H
9]
4、Fe[OOCCH(C
2H
5))C
4H
9]
3、又はSr[OOCCH(C
2H
5)C
4H
9]
2。
・ステアリン酸塩。例えば、Ni(st)
2、Fe(st)
2、又はZn(st)
2。ここで、st=O
2C
18H
35である。
・アミン前駆体。例えば、式[M(CO)
n(amine)
6−n]の錯体。ここで、Mは金属である。
・金属アルキル前駆体。例えば、W(CH
3)
6。
【0048】
・ビス(エチルベンゼン)モリブデン[(C
2H
5)
yC
6H
6−y]
2Mo(y=1乃至4)。
【0049】
ある実施形態では、第2の前駆体は非金属前駆体である。非限定的な例としては、カルコゲン前駆体が挙げられ、限定ではないが、例えば、アルコール、アルキルチオール又はアルキルセレノール;カルボン酸;H
2S又はH
2Se;チオ尿素又はセレノ尿素のような有機カルコゲン化合物;Na
2S、Na
2Se又はNa
2Teなどの無機前駆体;トリオクチルホスフィンスルフィド、トリオクチルホスフィンセレニド又はトリオクチルホスフィンテルリドなどのホスフィンカルコゲニド;オクタデセンスルフィド、オクタデセンセレニド又はオクタデセンテルリド;ジフェニルジスルフィド、ジフェニルジセレニド又はジフェニルジテルリドなどのジフェニルジカルコゲニド;元素硫黄、セレン又はテルル。特に適切なカルコゲン前駆体としては、オクタンチオール、オクタンセレノール、ドデカンチオール又はドデカンセレノールなどの直鎖アルキルセレノール及びチオール、或いは、tert‐ジブチルセレノール又はtert‐ノニルメルカプタンなどの分岐アルキルセレノール及びチオールが挙げられ、それらは、カルコゲン源とキャッピング剤の両方として機能してよい。徐放性カルコゲン源を使用すると、2Dナノ粒子の合成方法において制御可能な成長が得られることがわかった。これに関連して、「徐放性カルコゲン源(slow-releasing chalcogen source)」は、カルコゲン‐炭素結合を有する化合物として定義され、カルコゲン‐炭素結合は、ナノ粒子合成反応において化合物がカルコゲン前駆体として作用する際に破壊される。更なる実施形態では、徐放性カルコゲン源は、最初にカルコゲン‐カルコゲン結合の開裂によって分解するので、後続の工程では、ナノ粒子合成反応において化合物がカルコゲン前駆体として作用すると、炭素−カルコゲン結合が破壊される。適切な徐放性カルコゲン前駆体には、R‐S‐R’型の化合物が挙げられ、ここで、Rはアルキル基又はアリール基であり、Xはカルコゲンであり、R’は、H、アルキル、アリール、又はX‐R’’(R’’はアルキル又はアリール)である。特定の実施形態では、徐放性カルコゲン源は、1‐ドデカンチオール(DDT)などの徐放性硫黄源である。
【0050】
他の適切な非金属前駆体には、限定ではないが、以下のような第15族前駆体が含まれる:NR
3、PR
3、AsR
3、SbR
3(R=Me、Et、
tBu、
iBu、
iPr、Phなど);NHR
2、PHR
2、AsHR
2、SbHR
2(R=Me、Et、Bu、Bu、Pr、Phなど);NH
2R、PH
2R、AsH
2R、SbH
2R
3(R=Me、Et、
tBu、
iBu、Pr
i、Phなど);PH
3、AsH
3;M(NMe)
3、ここで、M=P、As、Sb;ジメチルドラジン(Me
2NNH
2);エチルアジド(Et−NNN);
ヒドラジン(H
2NNH
2);Me
3SiN
3;トリス(トリメチルシリル)ホスフィン;及び、トリス(トリメチルシリル)アルシン。
【0051】
ある実施形態では、単一源前駆体は、金属前駆体及び非金属前駆体の両方として作用してよい。単一源前駆体の適切な例には、限定ではないが、以下が挙げられる:アルキルジチオカルバメート;アルキルジセレノカルバメート;チウラムとの錯体、例えば、WS
3L
2、MoS
3L
2、又はMoL
4であって、ここで、L=E
2CNR
2、E=S及び/又はSe、及びR=メチル、エチル、ブチル及び/又はヘキシル;(NH
4)
2MoS
4;(NH
4)
2WS
4;又は、Mo(S
tBu)
4。
【0052】
1又は複数の溶媒において、第1及び第2の前駆体が混合され、又は単一源前駆体が溶解される。溶媒の沸点は、溶媒を十分に高い温度に加熱して、第1及び第2ナノ粒子前駆体、又は単一ソース前駆体からナノ粒子への変換を可能にする程に十分高い必要がある。幾つかの実施形態では、1又は複数の溶媒は、配位性溶媒を含んでよい。適切な配位性溶媒の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:C
6−C
50アルキルアミンなどの飽和アルキルアミン;オレイルアミンなどの不飽和脂肪族アミン;ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸などの脂肪酸;例えば、トリオクチルホスフィン(TOP)などのホスフィン;トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)などのホスフィンオキシド;ヘキサデカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール。更に、第一級溶媒、第二級溶媒、第三級溶媒、及び分岐溶媒も挙げられる。幾つかの実施形態では、1又は複数の溶媒は、限定されないが、C
11−C
50アルカンなどの非配位性溶媒を含んでよい。幾つかの実施形態では、溶媒の沸点は、150℃乃至600℃、例えば160℃乃至400℃、より詳細には180℃乃至360℃である。ある特定の実施形態では、溶媒はヘキサデシルアミンである。別の実施形態では、溶媒はミリスチン酸である。非配位性溶媒が使用される場合、反応は、リガンド又はキャッピング剤として作用する更なる配位剤(coordinating agent)の存在下で進行してよい。キャッピング剤は、典型的にはルイス塩基であって、例えば、ホスフィン、ホスフィンオキシド、及び/又はアミンであるが、オレイン酸又は有機ポリマーなどの他の薬剤が利用可能であって、ナノ粒子の周りに保護シースを形成する。他の適切なキャッピング剤としては、アルキルチオール又はセレノールが挙げられ、オクタンチオール、オクタンセレノール、ドデカンチオール又はドデカンセレノールなどの直鎖アルキルセレノール及びチオール、又はtert‐ジブチルセレノール又はtert‐ノニルメルカプタンなどの、分岐アルキルセレノール及びチオールであってよく、それらは、カルコゲン源とキャッピング剤の両方として機能してよい。更なる適切なリガンドには、二座配位子が挙げられる。二座配位子は、異なる官能基、例えばS末端基及びO末端基とナノ粒子の表面を配位結合させる。
【0053】
ある実施形態では、溶液は、第1の期間、第1の温度に加熱される。第1の温度は、50乃至550℃の範囲、例えば150乃至450℃、又はより具体的には200乃至350℃であってよい。第1の期間は、10秒乃至5時間、例えば2分乃至2時間、又はより具体的には5分乃至50分の範囲であってよい。特定の例では、溶液は約20分間、約260℃の第1の温度に加熱される。
【0054】
ある実施形態において、溶液は、続いて、第2の期間、第2の温度に加熱され、第2の温度は、第1の温度よりも高い。第2の温度は、80乃至600℃、例えば200乃至500℃、より具体的には300乃至400℃の範囲であってよい。特定の実施形態では、第2の温度は溶液の沸点であり、溶液は加熱されて還流する。第2の期間は、5分乃至1週間、例えば10分乃至1日、より具体的には20分乃至5時間の範囲であってよい。特定の例では、溶液は、約330℃の第2の温度に約20分間加熱される。第2の温度で溶液を加熱する継続期間を長くすることで、収率を増加させること、及び/又は、得られる2Dナノ粒子の寸法を変化させることができる。
【0055】
2Dナノ粒子は、任意の適切な技術を用いて反応溶液から単離されてよい。例としては、遠心分離、ろ過、透析、カラムクロマトグラフィーが挙げられるが、これらに限定されない。サイズ選択的な単離手順を使用して、同様な寸法を、従って同様な放射特性を有する2Dナノ粒子を抽出できる。
【0056】
コロイド溶液中でのナノ粒子の合成は、ナノ粒子の形状、サイズ、及び組成を制御できることから、特に有利であって、そして、拡張性をもたらす。コロイドナノ粒子は、リガンド(キャッピング剤)で表面機能化されてよい。リガンドは、様々な溶媒における溶解性を与えるために選択されてよい。リガンドは、生じるナノ粒子の形状を制御するために使用されてもよい。ナノ粒子合成中にナノ粒子表面に付いた固有のリガンドが代替リガンドと交換されて、特定の溶媒での改善された溶液加工性のような特定の機能が付与されてよい。
【0057】
反応物の選択と、温度や時間などの反応パラメーターとを調整して、2Dナノ粒子の横方向の寸法と厚さの両方を、ひいては、放射される光の波長(色)のような放射特性を制御することができる。
【0058】
本明細書に記載の方法によって生成された2Dナノ粒子は、適切な溶媒に溶解又は分散して、溶液加工性をもたらし得る。溶液処理可能な2Dナノ粒子は、フォトルミネッセンスディスプレイ及び照明、エレクトロルミネッセンスディスプレイ及び照明、2Dヘテロ構造デバイス、触媒(例えば、水素発生反応、酸素発生反応、触媒脱硫など)、センサー、生物イメージングなどの用途について特に魅力的である。
【0059】
本発明のある特定の例示的な実施形態は、MoS
2の2Dナノ粒子を生成するシンプルな方法である。最初に、モリブデンとアミンを含む錯体が形成される。モリブデンヘキサカルボニルがモリブデン源として使用されてもよい。金属カルボニルの結合に関する議論については、例えば、C. Kraihanzel and F. Cotton, Inorg. Chem., 1963, 2, 533 及び R. Dennenberg and D. Darensbourg, Inorg. Chem., 1972, 11, 72を参照のこと。オレイルアミンが、アミン源として使用されてよい。これは、液体で使いやすいという理由だけでなく、金属中心にπ結合することで揮発性Mo(CO)
6の溶解を助けることで、二重結合が機能的使用をもたらすからである。揮発性Mo(CO)
6は、非常に簡単に昇華する(S. Ghosh, S. Khamarui, M. Saha and S.K. De, RSC Adv., 2015, 5, 38971を参照)。アミンは、好ましくは完全に脱ガスされ、その後、事前に秤量されたモリブデン源の懸濁液を作るために使用され、反応フラスコに戻される。Mo(CO)
6は容易に昇華することから、真空下に置くことはできず、錯体を形成するために約150°Cまで穏やかに加熱される必要がある。溶液は緑がかった黄色に変わり、150℃で深黄色/茶色になる。この時点で、それは、約250°C乃至300°Cまで急速に加熱されてよい。その後、DDTが素早く添加されて、溶液は一定時間放置される。
【0060】
更なる例示的な実施形態では、モリブデンとアミンを含む錯体が形成される。150℃で、硫黄源を加えて、混合物をシリンジに移し、追加量のアミンに素早く注入する。溶液は、第1の期間、260°Cに加熱される。その後、温度が上昇して還流し、第2の期間保持される。
【実施例】
【0061】
<実施例1:MoS
2ナノ粒子の調製>
グローブボックス内で、SUBA−SEAL(登録商標)ゴムセプタム[シグマ−アルドリッチCO.,LLC、63103、セントルイス ミズーリ、スプルースストリート 3050]で蓋をしたバイアルに0.132gのMo(CO)
6を加えた。
【0062】
丸底フラスコ内で、14mLのオレイルアミンを100℃で2時間脱ガスして、次に室温まで冷却した。
【0063】
脱ガスした10mLのオレイルアミンをシリンジで取り出し、2〜3mLをMo(CO)
6を含むバイアルに注入して、よく振った。窒素で3回パージされた清浄なシリンジ/針を用いて、オレイルアミン/Mo(CO)
6懸濁液を丸底フラスコに戻した。
【0064】
2〜3mLのオレイルアミンを、Mo(CO)
6を含むバイアルに更に加えた。それをよく振って、内容物を再び丸底フラスコに戻した。これを、全てのオレイルアミンとMo(CO)
6が丸底フラスコに移るまで繰り返した。
【0065】
反応混合物を150℃まで緩やかに温めて、フラスコを振って、昇華したMo(CO)
6を溶解させた。
【0066】
次に、反応混合物を250℃に加熱した。
【0067】
0.25mLのDDTを素早く注入した。
【0068】
反応物を30分間放置し、0.25mLのDDTを更に注入して、再度30分間放置した。
【0069】
次に、反応物を300℃に加熱して、0.5mLのDDTを注入し、30分間放置した。
【0070】
反応混合物を室温まで冷却した。
【0071】
生成物を分離するために、20mLのアセトンを添加し、上清を廃棄した。
【0072】
次に、20mLのトルエンを、続いて60mLのアセトンを加えた。
【0073】
混合物を遠心分離して、上清を廃棄した。
【0074】
次に、10mLのヘキサンを加え、続いて20mLのアセトンを、その後10mLのアセトニトリルを加えて、遠心分離した。上清を廃棄し、固体をアセトンでリンスして、最後に5mLのヘキサンに溶解させた。完全に溶解させるには、固体を短時間超音波処理する必要があった。
【0075】
溶液を遠心分離して、残った固体を廃棄した。
【0076】
<実施例2:MoS
2ナノ粒子の調製>
合成を不活性N
2環境下で行った。
【0077】
0.132gのMo(CO)
6を、グローブボックス内でSUBA−SEAL(登録商標)ゴムセプタムで蓋をしたバイアルに加えた。
【0078】
オクタデカン14gを、丸底フラスコ内で100℃で2時間脱ガスした後、室温まで冷却した。
【0079】
2gのヘキサデシルアミンと2gのオクタデカンとを、バイアル内で100℃で2時間脱ガスし、その後40〜50℃に冷却し、Mo(CO)
6を含むバイアルに注入し、よく振った。
【0080】
反応混合物を150℃まで緩やかに温めて、バイアルを振って昇華したMo(CO)
6を溶解させて、その後、室温まで冷却してMo(CO)
6‐アミン錯体を形成させた。
【0081】
次に、(14gのオクタデカンを含む)丸底フラスコを300℃に加熱した。
【0082】
Mo(CO)
6‐アミン錯体を、固体が融解するまで約40℃まで緩やかに温めて、1.5mLの1‐ドデカンチオール(DDT)を加えた。その後直ぐに、それを、シリンジに装填して、丸底フラスコに素早く注入した。温度を約260℃に調整した。
【0083】
反応混合物を260℃で8分間放置した。
【0084】
生成物を分離するために、10mLのアセトニトリルと混合した40mLプロパノールを加えて、4000rpmで5分間遠心分離し、上清を廃棄した。
【0085】
<実施例3:MoS
2ナノ粒子の調製>
200mLバイアルにて、ヘキサデシルアミン(10g)及びヘキサデカン(50mL)を80℃の真空下で脱ガスした。ヘキサデシルアミン/ヘキサデカン溶液を250mL丸底フラスコ内のMo(CO)
6(0.66g)に加えて、120℃で撹拌して溶液を作った(「溶液A」)。
【0086】
1‐L丸底フラスコ内で、ヘキサデカン(50mL)及びヘキサデシルアミン(5g)を真空下で80℃で1時間加熱した。溶液をN
2下で250℃に加熱して、溶液を作った(「溶液B」)。250℃にて、(120℃に維持された)溶液Aの5mL部を溶液Bに1時間の間、5分毎に加えて溶液を作った(「溶液C」)。
【0087】
続いて、シリンジポンプを用いて、1−ドデカンチオール(7.5mL)を250℃で1時間かけて溶液Cに徐々に添加し、その後、250℃で更に1時間撹拌した。
溶液を60℃に冷却した後、アセトン(400mL)を加えて、その後遠心分離した。残留固形物をヘキサン(125mL)に分散させた。
【0088】
<実施例4:MoS
22Dナノ粒子の調製>
窒素を充填したグローブボックス内で、Mo(CO)
6(0.132g)をSuba−Seal(登録商標)ゴムセプタムで蓋をしたバイアルに加えた。
【0089】
ヘキサデシルアミン(4g)をバイアル内で100℃で2時間脱ガスし、その後40乃至50℃に冷却し、Mo(CO)
6が入ったバイアルに注入し、よく振った。
【0090】
反応混合物を150℃に緩やかに温めて、バイアルを振って昇華したMo(CO)
6を溶解させて、Mo(CO)
6−x‐(amine)
x錯体(1≦x<6)を形成し、溶液の融点のわずかに上に維持した。
【0091】
別個に、ヘキサデシルアミン(14g)を丸底フラスコ内にて100℃で2時間脱ガスし、その後室温まで冷却した。
【0092】
ヘキサデシルアミンが入った丸底フラスコを300℃に加熱した。
【0093】
1‐ドデカンチオール(1.5mL)をMo(CO)
6−x‐(アミン)
x錯体に加えて、その後、混合物を直ちにシリンジに移して、ヘキサデシルアミンが入った丸底フラスコに素早く注入した。温度を約260℃に調節し、40分間保持した。
【0094】
次に、温度を上昇させて還流し(330℃)、黒色の沈殿物が形成されるまでその温度で20分間保持した。
【0095】
フラスコを60℃に冷却し、トルエン(30mL)を加えた。混合物を7000rpmで5分間遠心分離して、黒色物質を分離し廃棄した。真空下で上澄を乾燥させて、その後、アセトニトリル(50mL)を加えて温めて、上側の透明な層をデカント及び廃棄して油性層を残した。このプロセスを3回繰り返して、過剰なヘキサデシルアミンを除去した。最後に材料をプロパノールに溶解させて、0.2μmPTFEフィルターでろ過した。
【0096】
溶液は明るい青色の発光を示した。PL等高線図(
図1を参照)は、MoS
2 2Dナノ粒子溶液について、励起波長(y軸)に対してプロットされた発光波長(x軸)を示している。この材料は、励起波長依存性発光を示しており、370nm付近で励起されると、430nm付近を中心とする最高強度の発光を示した。
【0097】
ラマンスペクトル(
図2)は、375cm
−1及び403cm
−1にピークを示しており、それらは、MoS
2を示している。注:300cm
−1及び500cm
−1付近のピークは、バックグラウンドスペクトルからのものである。
【0098】
上記の説明は、本発明の原理を用いているシステムの特定の実施形態を提示している。当業者は、本明細書で明示的に開示されていなくても、これらの原理を具体化する代替物及び変形物を案出することができ、故に、それらは、本発明の範囲内である。本発明の特定の実施形態が示されて説明されたが、それらはこの特許が保護するものを限定することを意図してはいない。当業者は、添付の特許請求の範囲によって文言上及び均等で保護される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができることを理解するであろう。