【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和1年11月22日以降、4回に亘り株式会社平成建設静岡支店等に販売 (2)令和2年2月10日に株式会社長谷萬のウェブサイトにて公開 (3)令和2年3月19日に株式会社長谷萬の性能評価結果の報告書にて公開 (4)令和2年3月20日に株式会社長谷萬のBSボード リーフレットにて公開 (5)令和2年6月4日に株式会社長谷萬のBSボード リーフレットにて公開 (6)令和2年10月1日に株式会社長谷萬のウェブサイトにて公開 (7)令和2年10月1日に公益財団法人日本デザイン振興会のウェブサイトにて公開 (8)令和2年10月20日に宮田雄二郎が「「木ダボ積層板の水平せん断試験と力学特性の検証」日本建築学会技術報告集(64),p.940−945,2020−1」にて公開
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一軸方向に長手方向を有し、当該長手方向を揃えて隣り合う2本が接するように配列された複数の基材であって、前記基材の配列方向に貫通する複数の穴をそれぞれ備える複数の基材と、
前記穴のそれぞれに1本ずつ前記配列方向に圧入されて前記複数の基材を締結する複数の第1の締結材と、
を備えるパネルであって、
前記複数の基材は、第1の樹種である第1の木材を少なくとも2本以上含み、
前記第1の木材は、前記パネルを用いて建築物が建築された場合に形成される内部空間の平衡含水率より高い含水率となるように乾燥度が調整されており、
前記複数の第1の締結材のそれぞれは、
円柱状の本体部と、前記本体部から径方向に突出する複数の突出部を備え、
前記第1の樹種より気乾比重が大きい第2の樹種の木材であり、
前記平衡含水率より低い含水率となるように乾燥度が調整されており、
前記複数の突出部のそれぞれは、
前記第1の締結材の長手方向と平行して配置され、
隣接する突出部における前記本体部の側の端部同士が接続し、
前記突出部の先端部が前記穴の周面に沿って変形する変形部を備える
ことを特徴とするパネル。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略する。
【0016】
<実施形態1>
図1(a)は、本実施形態1にかかるパネル100の斜視図である。パネル100は、複数の基材110と、各基材を締結する複数の木ダボ130とを備える。基材110は、一軸方向に長手方向を有する部材である。尚、本実施形態1にかかるパネル100の基材110は少なくとも2本以上であればよい。また、本実施形態1にかかるパネル100の木ダボ130は少なくとも2本以上であればよい。また、
図1では、基材110の側面から木ダボ130の長手方向の端部が突出しているが、突出していなくてもよい。
【0017】
本実施形態1にかかる基材110は、第1の樹種である第1の木材である。第1の木材は、パネル100を用いて建築物が建築された場合に形成される内部空間(室内等)の平衡含水率より高い含水率となるように乾燥度が調整されている。例えば、基材110である第1の木材は、含水率15〜20%程度である。また、第1の樹種は、木ダボ130の気乾比重よりも小さな樹種である。例えば、第1の樹種は、気乾比重0.4程度の樹種が望ましい。
【0018】
図1(b)は、本実施形態1にかかるパネル100g(他の例)の斜視図である。パネル100gは、パネル100と異なり、基材110の側面に8つの穴を設け、各穴に1本ずつの木ダボを圧入し、計8本の木ダボを用いる例である。
【0019】
図2(a)は、本実施形態1にかかるパネル100における配列された基材110の正面図である。各基材110は、長手方向を揃えて隣り合う2本が接するように配列されている。また、各基材110は、基材の配列方向に各基材を貫通する複数の穴121から124を有する。尚、本実施形態1にかかる基材110の穴の数は、2以上であればよい。
【0020】
図2(b)は、本実施形態1にかかるパネル100における基材110の穴の位置の一例を示す側面図である。ここでは、基材110の高さ方向の中心部に略等間隔の位置に4つの穴121から124が設けられていることを示す。尚、穴の直径は、穴ごとにことなっていてもよい。但し、その場合、各穴に対応する木ダボを用いるものとする。
【0021】
図2(c)及び
図2(d)は、本実施形態1にかかるパネル100における基材110の穴の位置の他の例を示す側面図である。
図2(c)は、基材110の高さ方向の右寄りや左寄りの位置に2つずつ穴が設けられていることを示す。
図2(d)は、パネル100gに対応する基材110の高さ方向に2つずつ穴121から128が設けられていることを示す。尚、基材110に設けられる複数の穴の位置はこれらに限定されない。
【0022】
図1(a)に戻り説明を続ける。木ダボ130は、第1の締結材の一例である。木ダボ130は、基材110の複数の穴121から124のそれぞれに1本ずつ圧入されて複数の基材110を締結する。木ダボ130は、第1の樹種より気乾比重が大きい第2の樹種の木材である。第2の樹種は、例えば、気乾比重0.6程度の樹種が望ましい。また、木ダボ130は、上記平衡含水率より低い含水率となるように乾燥度が調整されている。そのため、木ダボ130は、基材110の含水率より低い。尚、
図1(b)では、木ダボ130は、基材110の複数の穴121から128のそれぞれに1本ずつ圧入されて複数の基材110を締結する。
【0023】
図3(a)は、本実施形態1にかかる(基材の穴への圧入前の)木ダボ130の断面形状を示す図である。木ダボ130は、本体部1301と、複数の突出部1302とを備える。本体部1301は、断面形状が円形である。突出部1302は、本体部1301から径方向に突出する先端部を有する。よって、木ダボ130の断面形状は、略円形といえる。複数の突出部1302のそれぞれは、木ダボ130の長手方向と平行して配置され、隣接する突出部1302における本体部1301の側の端部同士が接続する。つまり、木ダボ130は、軸方向の表面に、軸方向と平行に隙間なく連続して複数の突出部を備えた形状である。
【0024】
図3(b)から(e)は、(基材の穴への圧入前の)木ダボ130の突出部1302の先端部の形状の一例を示す図である。
図3(b)は、突出部が円弧である例である。
図3(c)は、突出部が半円である例である。
図3(d)は、突出部が放物線である例である。
図3(e)は、突出部がV字である例である。その他、基材の穴への圧入前の)木ダボ130の突出部1302の先端部の形状は、楕円形、懸垂線系、U字形又はこれらに近似する形状であってもよい。つまり、突出部1302は、本体部1301の断面外周部に近付くほど先端が細くなる形状である。そのため、木ダボ130の突出部1302の先端部は、基材の穴への圧入前においては、表面に平滑面が少ないといえる。このように、基材の穴の周面と接触する木ダボの突出部の先端部の面積を小さくすることで、先端部の弾塑性変形が生じ易くなる。
【0025】
図4は、本実施形態1にかかるパネルの製造方法の流れを示すフローチャートである。前提として、複数の基材110は、略矩形断面で所定の長さで加工済みとする。尚、各基材の長手方向の断面形状や長さは、後述するように異なっていても良い。ここで、まず、各基材について上記平衡含水率より高い含水率となるように乾燥させる(S11)。尚、ステップ11の乾燥は、基材の加工前に行っても良い。
【0026】
次に、各基材を、長手方向に揃えて、隣り合う2本が接するように配列する(S12)。例えば、上述した
図2(a)のように配列し、周囲から固定する。そして、配列後の各基材を配列方向に貫通する穴を複数個所に穿孔する(S13)。例えば、上述した
図2(b)又は(c)のように複数の穴が形成される。このように、配列した複数の基材を固定した状態でまとめて穴を開けることで、基材ごとの穴のズレを防止し、後述する木ダボの圧入を容易にできる。
【0027】
ステップS11からS13とは独立して、板状の所定の長さの木ダボの基材について、上記平衡含水率より低い含水率となるように乾燥させる(S14)。尚、木ダボの基材の長さは、基材110の配列方向の長さ以上であればよい。
【0028】
次に、各木ダボの基材を切削し、上記の断面形状と突出部を形成する(S15)。また、木ダボの直径は、ステップS13で穿孔する基材の穴の直径よりも大きいものとする。つまり、木ダボの軸方向の断面形状の最外径が基材穴の直径よりも大きいものとする。そして、各木ダボは、断面形状において、円形である本体部1301の外周上に連続して複数の突出部1302が形成される。尚、木ダボの本体部1301の直径は、基材の穴の直径より小さいことが望ましい。
【0029】
ステップS13及びS15の後、配列後の基材の穴のそれぞれに、突出部を備える木ダボを配列方向と同一方向に1本ずつ圧入する(S16)。これにより、複数の基材110が木ダボ130により締結され、
図1に示したようなパネル100が製造される。そのため、特許文献1と比べて容易にパネルを製造することができる。
【0030】
図5(a)は、本実施形態1にかかる基材110の穴121と圧入される木ダボ130の関係を示す概念図である。実際には、複数の基材が配列されており、基材間で穴の位置が概ね一致していることから、木ダボ130が複数の基材の穴を貫通する。このとき、基材より木ダボの比重が大きいため、木ダボ130の突出部1302の先端部が、穴の周面に沿ってめり込む。
図5(b)は、本実施形態1にかかる木ダボ130が圧入されたことにより、突出部1302の先端部がめり込むことを概念的に示す図である。そして、
図5(c)は、本実施形態1にかかる圧入後の木ダボ130の突出部1302の先端部1303に変形部1304が形成されたことを概念的に示す図である。つまり、突出部1302の接触部と基材の穴表面の接触部が穴の周面に沿って塑性変形し、変形部1304を形成する。
【0031】
このように、基材の穴にステップS15で突出部が形成された木ダボを圧入することで、基材の穴表面と木ダボの突出部の先端部が基材の穴の径方向に押し付け合う結果、微小な弾塑性変形が生じる。そのため、木ダボの突出部と穴表面との間で嵌め合いが生じる。よって、接着剤や木ダボへのくさびなど、木ダボの接合効果を高める部材を用いずとも、初期から接合耐力が生じさせることができる。
【0032】
また、パネル100の製造後(つまり、複数の基材が複数の木ダボの圧入により接合された後)、所定の場所における建築物の施工部材として用いられる。例えば、パネル100は、木造軸組工法や枠組壁工法の躯体に接合することで、構造パネル兼意匠パネルとして、屋根、壁、床、天井などに利用することできる。つまり、パネル100は、建築物の部屋等の内部空間を形成するための部材の一部として用いることができる。また、パネル100を隣り合うよう配列して、隣り合うパネル100で共通の木ダボを圧入することにより、隣り合うパネル100を相互に連結することで、1枚のパネルでは製造できない大型の版面を構成することが可能となる。
【0033】
この場合、時間の経過と共に、木ダボは当初(ステップS14)の含水率から、建築物の室内(内部空間)の平衡含水率に近づくように上昇する。一方、基材は当初(ステップS11)の含水率から、室内の平衡含水率に近づくように低下する。これらによって、木ダボは含水率の増大により、微小な膨張が生じ、一方、基材は基材の含水率の低下、すなわち乾燥の進行によって、微小な縮小が生じる。そのため、基材の穴は広がる方向となるが、木ダボの微小な膨張が生じる。結果として、嵌合力の低下を抑制でき、長期にわたって、接合耐力を維持できる。
【0034】
尚、基材110に用いる木材の第1の樹種は、例えば、杉(気乾比重0.38、曲げヤング係数80)、桧(気乾比重0.41、曲げヤング係数90)、SPF(Spruce Pine Fir)(気乾比重0.41、曲げヤング係数95)としてもよい。また、木ダボ130に用いる木材の第2の樹種は、例えば、ブナ(気乾比重0.63、曲げヤング係数120)であるとよい。但し、樹種はこれらに限定されない。
【0035】
図6は、本実施形態1にかかるパネル100の配列方向の断面図であり、基材の断面形状の例を示す図である。
図6(a)は、各基材110が同一形状であり、矩形又は略矩形である例を示す。
図6(b)は、各基材110が同一形状であり、隣接する一方の基材の凹部に、他方の基材の凸部が嵌り合う例を示す。
図6(c)は、各基材110が同一形状であり、端部の一方を斜めに切り欠いた(切り欠き形状を有する)例を示す。尚、切り欠き形状は、内部空間側であるとよい。つまり、パネル100の見え掛かりとなる面に予め加工を行うことや、溝を設けることを行っても良い。これにより、意匠性を高めることができる。
図6(d)は、各基材110が異なる長さ及び幅である例を示す。但し、この場合でも、各基材110は、配列方向に貫通する共通の穴を有するものとする。
図6(e)は、各基材110のそれぞれは、隣接する基材との接触面に複数の凹部及び凸部を備える例を示す。そして、隣接する一方の基材の凹部に、他方の基材の凸部が嵌り合う例を示す。
図6(f)は、各基材110が同一形状であり、両端部が丸みを帯びた例を示す。
図6(g)は、
図6(e)とは凹部及び凸部の形状のパターンが異なる例を示す。上記のことから、本実施形態1にかかるパネル100に用いられる各基材110は、隣り合う基材との接触面を有し、接触面は、長手方向と平行な略平滑面を有するといえる。
【0036】
また、例えば、
図6(b)(e)及び(g)は、次のような特徴を有するといえる。すなわち、複数の基材のうち隣接する第1の基材と第2の基材において、第1の基材は、凸部を有し、記第2の基材は、凸部と篏合される凹部状を有する。言い換えると、例えば、第1の基材における第2の基材との第1の接触面は、凸形状を有し、第2の基材における第1の基材との第2の接触面は、凸形状と対応する凹形状を有する。これにより、隣接する基材同士で凸部と凸部が嵌り合うことにより、基材の配列時に固定される(容易に固定できる)。そのため、穿孔が容易となり、精度よく複数の基材を貫通させる(穴を形成する)ことができる。
【0037】
尚、本実施形態1では、パネル100を構成する複数の基材110の全てが第1の木材である場合について説明した。このように、基材の全てが木材であるため、木ダボとの嵌合度が高くパネル全体の嵌合度が向上する。但し、パネル100を構成する基材は、少なくとも2本以上が木材であればよい。また、
図6に示したように、複数の基材は、同一寸法に限定されず、さらに、同一樹種に限定せずに、複数の寸法及び樹種を基材として複合的に使用することも可能である。また、基材は、正確な矩形断面ではない入り皮つきや丸身つきの木材も含めて使用してもよい。これにより、意匠性が高まり、従来では使用が限定された木質部材を有効活用できる。また、基材の接触面の一部に予め加工を施しても良い。
【0038】
尚、
図4のステップS13において、各穴は、基材の配列方向、つまり、長手方向(軸方向)とは鉛直方向に、各基材を貫通するように穿孔される。そして、ステップS16において、木ダボは、基材に対して鉛直方向に挿入する。但し、穿孔時には、基材内部の節など組織が硬い部分によって、ドリルの経路が微小に曲がり、結果として貫通穴が微小に曲がることがある。しかし、微小に曲がった穴であっても、木ダボが弾性変形の範囲で変形することで、問題無く圧入ができる。
【0039】
また、本実施形態1にかかるパネル100の基材110は、パネル面を押す方向の外力に対して、断面性能が高い向きに並べて接合することで、断面性能が低い向きにも並べて用いる既存のパネルと比べて、基材が持つ断面性能を有効に発揮させることができる。
【0040】
また、本実施形態1にかかるパネル100の木ダボ130は、基材110の長手方向と直交する側面から打つため、パネルを構成する6面体のうち、打ち込み面の面積が少ない方向から打つこととなる。そのため、パネル正面の面外方向から打つ方式のパネルと比べ、木ダボの打ち込み箇所が少なくて済む。
【0041】
また、本実施形態1にかかる木ダボ130は、軸方向の断面形状の全周に渡って、突出部を隙間なく配置することにより、(圧入前において)木ダボの表面に平滑面を設けていない。そのため、圧入時に穴の周面と接触する面積が小さく、木ダボの挿入が容易である。また、突出部の先端部が弾塑性変形し易く、製造直後から嵌合度を高めることができる。
【0042】
尚、上記の例では、木ダボが複数の基材の配列方向の全長に渡って貫通した例を示したが、これに限定されない。例えば、木ダボは、少なくとも2以上の基材を配列方向に貫通する長さであればよい。
【0043】
木材は、繊維飽和点以下の範囲で含水率の変化によって膨張又は収縮し、その変化量は繊維方向ではほぼ同じで横方向(接線方向、放射方向)では木材の比重に比例する。接合後の木材がその使用状態において、木材中の含水率が平衡状態になろうとすることで木材の含水率が変化し、基材の変化量に比べ木ダボの変化量が大きい。そのため、基材の穿孔径より木ダボ径が大きいことで木ダボに設けた突出部の先端部が木材の穴の外周にめり込み、嵌合の度合いが強化される。
【0044】
また、本実施形態1にかかるパネル100は 接着剤やボルト類、木ダボへのくさび等を用いなくても、木ダボのみで接合初期から接合耐力を有する積層が可能となり、かつ、部材点数が削減され、組み立て(製造)が効率化される。また、接着剤を用いなくても、基材と木ダボの嵌め合いと、木ダボの微小な膨張効果により、長期にわたり木ダボの接合耐力が保持される。さらに、ボルトを用いないため、時間の経過による乾燥の進行に対して、ボルトの締め直し等の手間が無い。
【0045】
また、木ダボの嵌め合い効果のために、予め木ダボを圧縮しておき、後から膨張させるなどの手間が無く、木ダボの製造が複雑にならない。また、木ダボの膨張のために、平衡含水率との差異を利用するため、組み立て時に水を含ませるなどの必要が無い。
【0046】
さらに、木ダボを基材に垂直方向に打ち込めばよいので、特許文献1のような斜め方向の打ち込みと異なり、穴あけや木ダボを圧入する場合、最も容易にできる。
【0047】
また、ダボが木材で、適度な靭性があるため、穴が若干曲がっても、ダボも曲がるため圧入できる。
【0048】
また、基材が隙間なく積層されているので、パネル面を押す方向に外力を受ける場合、木材の横倒れによる横座屈を防ぐことができるので、木材がもつ断面性能を有効に活用できる。木ダボを打ち込む穴を交差させることもないため、断面の欠損により強度が低下するおそれが少ないだけでなく、パネルを構成する最外部分の基材に力が作用しても木ダボにより他の基材に荷重が分散される効果も確認されている。
【0049】
さらに、パネル100を建築物の床部に天井現しで用いれば、天井仕上げ工事を省略でき、天井施工を簡略化できる。
【0050】
<実施形態2>
本実施形態2は、上述した実施形態1の変形例である。
図7は、本実施形態2にかかる実施例2−1のパネル100aの配列方向の断面図である。パネル100aは、上述したパネル100のパネル面に合板140aを備え、合板140aを複数の基材110に対して釘150により固定したものである。つまり、複数の基材を接合するために木ダボに加えて、応力伝達部材として構造用合板をパネル面に打ち付けて、基材と一体化させている。尚、釘150の先端は、各基材110内の穴120に圧入された木ダボ130とは重ならないものとする。これにより、パネルの外観のバリエーションが増え、構造性能も向上できる。
【0051】
図8(a)は、本実施形態2にかかる実施例2−2のパネル100bの側面図である。パネル100bは、上述したパネル100のパネル面にコンクリート140bを打設したものである。つまり、複数の基材を接合するために木ダボに加えて、応力伝達部材としてコンクリートを用いて、基材と一体化させている。また、
図8の例では、各基材110のパネル面に凹部を設けることで、コンクリート140bとの嵌合度を向上させている。また、例えば、
図8(b)のパネル100hのようにしてもよい。パネル100hは、異なる断面高さの基材の組み合わせなどにより、パネルの幅方向のコンクリート140cの打設面に凹凸を構成しコンクリートの付着力により応力伝達することで基材と一体化させることもできる。
【0052】
このように、本実施形態2にかかる実施例2−1及び2−2によっても上述した実施形態1と同様の効果を奏することができる。さらに、本実施形態2では、複数の基材を接合するために木ダボに加えて、応力伝達部材を用いることで、せん断力要素とともにパネルを一体化して、パネル全体の構造性能を向上させることができる。
【0053】
<実施形態3>
本実施形態3は、上述した実施形態1の変形例である。本実施形態3にかかるパネルは、配列された複数の基材のうち少なくとも2本以上を締結する第2の締結材をさらに備えるものである。そして、第2の締結材は、金属であるものとする。
【0054】
図9(a)は、本実施形態3にかかるパネル100cの正面図である。
図9(b)は、本実施形態3にかかるパネル100cの側面図である。パネル100cは、複数の基材111等と、第1の締結材である複数の木ダボ131等と、第2の締結材であるビス161及び162を備える。例えば、パネル100cを構成する複数の基材のうち一部である基材111から114には、木ダボ131から134とは別の位置に、ビス161及び162が打ち込まれていることを示す。第2の締結材は、釘等の金属部材であってもよい。尚、第2の締結材は、複数の基材の全てを貫通しなくて良い。
【0055】
このように、本実施形態3では、上述した実施形態1と同様の効果の加えて、さらにパネルの必要部分の嵌合度を向上させることができる。尚、実施形態3は、実施形態2に適用してもよい。
【0056】
<実施形態4>
本実施形態4は、上述した実施形態1の変形例である。本実施形態4にかかるパネルは、複数の基材のうち隣接する第3の基材と第4の基材の間に吸音材を備えるものである。
【0057】
図10(a)は、本実施形態4にかかるパネル100dの配列方向の断面図である。パネル100dは、各基材の穴120及び木ダボ130の位置よりパネル面側に吸音材170が埋め込まれたことを示す。ここで、吸音材170は、例えば、グラスウール、ロックウール、ウレタンフォーム、不織布などの多孔質材、又は、これらの吸音材の表面にフェルト、不織布、その他の薄い板を貼ったものを含む。但し、吸音材170は、これらに限定されない。
【0058】
図10(b)は、(第3の)基材113dと(第4の)基材114dの間に設けられた吸音材170を示す図である。
図10(c)は、基材113dの端部周辺について説明するための図である。基材113dと基材114dとは互いに隣接するため、隣接面(接触面183)を有する。そして、基材113d及び基材114dのパネル面側(例えば、内部空間側)には、開口部180が存在する。基材113dは、軸方向の内部空間側の端部に、第1の切り欠き部181と、切り欠き部181と隣接し、接触面183側に第2の切り欠き部182とを備える。切り欠き部181は、接触面183の延長線上から基材113dの内側に長さd1で切り欠きされている。また、切り欠き部182は、接触面183の延長線上から基材113dの内側に長さd2で切り欠きされている。ここで、長さd2は、長さd1より長い。つまり、切り欠き部182は、切り欠き部181よりも深く切り欠きされている。また、基材114dの基材113d側も同様の構成である。そのため、基材113dと基材114dとを接触面183で接触させると、対応する切り欠き部181の間に開口部180が形成される。また、対応する切り欠き部182の間に形成される空間には、吸音材170が設置される(埋め込む)。ここで、吸音材170は、長さd1の2倍以上、かつ、長さd2の2倍以下の幅を有すればよい。
【0059】
このように、本実施形態4では、上述した実施形態1の効果に加えて、次の効果を奏する。すなわち、部屋の壁材、床材、天井材としてパネルを用いることで、部屋内(内部空間)で発生した音が、開口部180を通過して吸音材170により吸音できる。そのため、パネル100dを用いて防音効果のある部屋を提供できる。言い換えると、防音効果のある部屋を建築する際に、パネル100dを用いることができる。尚、実施形態4は、実施形態2又は3に適用してもよい。
【0060】
<実施形態5>
本実施形態5は、上述した実施形態1の変形例である。上述した実施形態1では、パネル100を構成する複数の基材110の全てを第1の木材としていたが、本実施形態5では、複数の基材のうち一部に木質材料以外の素材を用いるものである。尚、本実施形態5であっても、複数の基材のうち少なくとも2本以上は第1の木材であるものとする。
【0061】
図11(a)は、本実施形態5にかかる実施例5−1のパネル100eの正面図である。パネル100eは、基材111eから119eと、木ダボ131から134とを備える。木ダボ131から134は、実施形態1と同様である。ここで、基材111e、112e、114e、115e、118e及び119eは、第1の木材であるものとする。一方、基材113e、116e及び117eは、木質材料以外の素材、例えば、アクリル素材等であるものとする。つまり、複数の第1の木材である基材の配列の中に、木質材料以外の素材を基材として挿入していることを示す。その際、木質材料以外の素材を連続して(隣接して)配列してもよい。
【0062】
図11(b)は、本実施形態5にかかる実施例5−2のパネル100fの正面図である。パネル100fは、基材111fから119fと、木ダボ131から134とを備える。木ダボ131から134は、実施形態1と同様である。ここで、基材111f、113f、116f及び118fは、第1の木材であるものとする。一方、基材112f、114f、115f、117f及び119fは、木質材料以外の素材、例えば、アクリル素材等であるものとする。つまり、複数の第1の木材である基材のうち少なくとも2本以上が第1の木材であればよく、第1の木材同士が必ずしも隣接していなくてもよい。さらに、パネル100fの端の基材119fが第1の木材でなくてもよい。
【0063】
このように、本実施形態5においても複数の木材を含む基材を積層しているため、本実施形態1にかかる木ダボにより一定の嵌合度を生じさせることができる。また、基材の素材が異なっていたとしても、
図4のステップS12以降は同様である。そのため、本実施形態5によっても、複数の木材を含む基材を積層した建築用部材(パネル)を製造する際に、接着剤を用いずに、初期段階から接合耐力を高め、かつ、接合耐力を維持できるように製造することができる。尚、本実施形態5は、実施形態2、3又は4に適用してもよい。
【0064】
<その他の実施の形態>
尚、本開示では、
図4のステップS12及びS16を必須とし、他のステップは、別途行われても構わないものとする。例えば、基材はステップS11による乾燥済みで、各基材で個別に穿孔を行ったものを用いてパネルを製造してもよい。
【0065】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、本開示は、それぞれの実施の形態を適宜組み合わせて実施されてもよい。
【解決手段】パネル100は、長手方向を揃えて隣り合う2本が接するように配列され、配列方向に貫通する複数の穴をそれぞれ備える複数の基材110と、穴のそれぞれに1本ずつ配列方向に圧入されて複数の基材を締結する複数の締結材130と、を備える。複数の基材のうち少なくとも2本以上である第1の木材はパネルを用いて建築物が建築された場合に形成される内部空間の平衡含水率より高い含水率である。締結材は、円柱状の本体部と、本体部から径方向に突出する複数の突出部を備え、第1の木材より気乾比重が大きい木材であり、平衡含水率より低い含水率である。突出部は、締結材の長手方向と平行して配置され、隣接する突出部における本体部の側の端部同士が接続し、突出部の先端部が穴の周面に沿って変形する変形部を備える。