【課題を解決するための手段】
【0009】
従来技術に比べると、本発明は、温度50〜350℃においてX線回折分析を行ったときに、少なくとも1つの格子定数(a、b、c)が温度の上昇に伴い低下するリチウムリッチ酸化物正極材料を提供している。
【0010】
リチウムリッチ酸化物正極材料は、一般式Li
1+xNi
yCo
zMn
uM
dO
2で表され、ここで、0<x≦0.2、0≦y≦0.35、0≦z≦0.35、0.5≦u≦0.9、および0≦d≦0.5であり、Mは、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、バナジウム、チタン、ジルコニウム、スズ、ニオブ、モリブデン、およびルテニウムのうちの1種または複数種から選択される。
【0011】
リチウムリッチ酸化物の結晶構造は、層状構造、スピネル型構造、溶融塩構造、および単斜晶層状構造の1種である。
【0012】
Mが、ニッケル、コバルト、マンガンの1種または複数種である場合、結晶構造は、層状構造である。
【0013】
Mが、鉄、アルミニウム、バナジウム、チタン、ジルコニウム、ニオブおよびモリブデンの1種または複数種である場合、結晶構造は、スピネル型構造または溶融塩構造である。
【0014】
Mが、チタン、ジルコニウム、スズ、およびルテニウムの1種または複数種である場合、結晶構造は、単斜晶層状構造である。
【0015】
本発明は、リチウムリッチ酸化物正極材料の製造方法を提供している。材料を、Li
0に対する電位が4.5〜4.8Vの間において充電した後、2.0〜4.4Vまで放電して処理する。好ましくは、電気化学的処理中の電流密度は25〜250mA/gであり、25mA/gであることが好ましい。
【0016】
電気化学的処理後のリチウムリッチ酸化物正極材料について50〜350℃でX線回折分析を行うと、少なくとも1つの格子定数(a、b、c)が、温度の上昇に伴い低下する。
【0017】
リチウムリッチ酸化物正極材料は、一般式Li
1+xNi
yCo
zMn
uM
dO
2で表され、ここで、0<x≦0.2、0≦y≦0.35、0≦z≦0.35、0.5≦u≦0.9、および0≦d≦0.5であり、Mは、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、バナジウム、チタン、ジルコニウム、スズ、ニオブ、モリブデン、およびルテニウムのうちの1種または複数種から選択される。
【0018】
好ましくは、リチウムリッチ酸化物の結晶構造は、層状構造、スピネル型構造、溶融塩構造、および単斜晶層状構造の1種である。
【0019】
結晶構造が層状構造である場合、該材料を、Liに対する電位が4.6〜4.8Vの範囲に充電して電気化学的活性化を行った後、2.0〜3.2Vまで放電し、そのサイクル後の電極材料は、ドイツのブルカー社のX線回折計またはシンクロトロン放射光源により、異なる温度のX線回折分析を行い、試験の温度範囲は20〜400℃であり、好ましくは50〜350℃である。同時に、Full proofなどの関連する結晶構造調整ソフトにより格子定数が調整され、温度が100〜350℃である範囲において、格子定数(a、b、c)は温度の上昇に伴い低下する。
【0020】
Mが、ニッケル、コバルト、およびマンガンの1種又は複数種である場合、結晶構造は、層状構造であり、電気化学的に処理する方法は、層状構造のリチウムリッチ酸化物正極材料を、Li
0に対する電位が4.6〜4.8Vの間において充電し、その後、2.0〜3.2Vまで放電し、電気化学的処理するサイクル回数が1〜300回である。
【0021】
幾つかの実施形態において、電気化学的に処理する方法は、層状構造のリチウムリッチ酸化物正極材料を、Li
0に対する電位が4.6Vの間において充電し、その後、2.0Vまで放電し、電気化学的処理するサイクル回数が1〜300回であり、処理後のリチウムリッチ酸化物正極材料について温度50〜350℃でX線回折分析を行い、その中、100〜350℃で、その格子定数a=bおよびcの少なくとも一つが温度の上昇に伴い低下するが、その得られたX線回折スペクトルにおいて明らかな変化は観察されない。
【0022】
幾つかの実施形態において、電気化学的に処理する方法は、層状構造のリチウムリッチ酸化物正極材料を、Li
0に対する電位が4.8Vの間で充電し、その後、2.0Vまで放電し、電気化学的処理するサイクル回数が1〜300回であり、処理後のリチウムリッチ酸化物正極材料について温度50〜350℃でX線回折分析を行い、その中、100〜350℃で、その格子定数a=bおよびcの少なくとも一つが温度の上昇に伴い低下するが、得られたX線回折スペクトルにおいて明らかな変化は観察されない。
【0023】
幾つかの実施形態において、電気化学的に処理する方法は、層状構造のリチウムリッチ酸化物正極材料をLi
0に対する電位が4.8Vの間で充電し、その後、3.2Vまで放電し、電気化学的処理するサイクル回数が1〜300回であり、処理後のリチウムリッチ酸化物正極材料について温度50〜350℃でX線回折分析を行い、その中、100〜350℃で、その格子定数a=bおよびcの少なくとも一つが温度の上昇に伴い低下するが、得られたX線回折スペクトルにおいて明らかな変化は観察されない。
【0024】
幾つかの実施形態において、電気化学的処理する方法は、層状構造のリチウムリッチ酸化物正極材料を、Li
0に対する電位が4.8Vの間で充電し、その後、2.0Vまで放電し、1〜300回のサイクルを行った後、層状構造のリチウムリッチ酸化物正極材料をLi
0に対する電位が4.6Vの間で充電し、その後、2.0Vまで放電し、1〜300回のサイクルを行い、電気化学的処理後のリチウムリッチ酸化物正極材料について温度50〜350℃でX線回折分析を行い、その中、100〜350℃で、その格子定数a=bおよびcの少なくとも一つが温度の上昇に伴い低下するが、得られたX線回折スペクトルにおいて明らかな変化は観察されない。
【0025】
結晶構造がスピネル型構造又は溶融塩構造である場合、該材料を、Liに対する電位が4.6〜4.8Vの範囲で充電して電気化学活性化を行った後、その後、2.0Vまで放電し、サイクル後の電極材料は、ドイツのブルカー社のX線回折計またはシンクロトロン放射光源により、異なる温度のX線回折分析を行い、試験の温度範囲は20〜400℃であり、好ましくは50〜350℃である。同時に、Full proofなどの関連する結晶構造調整ソフトにより格子定数が調整され、温度が100〜350℃である範囲において、格子定数(a、b、c)は温度の上昇に伴い低下する。
【0026】
Mが、鉄、アルミニウム、バナジウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、およびモリブデンの1種または複数種である場合、結晶構造はスピネル型構造または溶融塩構造であり、電気化学的処理方法は、スピネル型構造または溶融塩構造のリチウムリッチ酸化物正極材料を、Li
0に対する電位が4.6〜4.8Vに範囲おいて充電し、その後、2.0〜3.0Vまで放電し、電気化学的処理するサイクル回数が1〜300回である。
【0027】
幾つかの実施形態では、電気化学的処理する方法は、スピネル型構造または溶融塩構造のリチウムリッチ酸化物正極材料を、Li
0に対する電位が4.8Vの間で充電し、その後、2.0Vまで放電し、電気化学的処理するサイクル回数が1〜300回であり、処理後のリチウムリッチ酸化物正極材料について温度50〜350℃でX線回折分析を行い、その中、100〜350℃で、その格子定数a=bおよびcの少なくとも一つが温度の上昇に伴い低下するが、得られたX線回折スペクトルにおいて明らかな変化は観察されなかった。
【0028】
結晶構造が単斜晶層状構造である場合、該材料を、Liに対する電位が4.6〜4.8Vの範囲で充電して電気化学的活性化を行った後、その後、2.0Vまで放電し、サイクル後の電極材料は、ドイツのブルカー社のX線回折計またはシンクロトロン放射光源により異なる温度のX線回折分析を行い、試験の温度範囲は20〜400℃であり、好ましくは50〜350℃である。同時に、Full proofなどの関連する結晶構造調整ソフトにより格子定数が調整され、温度が50〜350℃である範囲において、少なくとも一つの格子定数(a、b、c)は温度の上昇に伴い低下する。
【0029】
Mがチタン、ジルコニウム、スズ、モリブデン、ルテニウムの1種又は複数種である場合、結晶構造は単斜晶層状構造であり、電気化学的処理する方法は、単斜晶層状構造のリチウムリッチ酸化物正極材料を、Li
0に対する電位が4.6〜4.8Vの範囲で充電し、その後、2.0〜4.4Vまで放電し、電気化学サイクル回数が1〜300回である。
【0030】
幾つかの実施形態において、電気化学的処理する方法は、単斜晶層状構造のリチウムリッチ酸化物正極材料を、Li
0に対する電位が4.8Vの間で充電し、その後、2.0Vまで放電し、電気化学的処理するサイクル回数が1〜300回であり、処理後のリチウムリッチ酸化物正極材料について温度50〜350℃でX線回折分析を行い、その中、100〜350℃で、その格子定数a=bおよびcの少なくとも一つが温度の上昇に伴い低下するが、その得られたX線回折スペクトルにおいて明らかな変化は観察されない。好ましくは、100〜350℃で、その格子定数cの少なくとも一つが温度の上昇に伴い低下するが、その得られたX線回折スペクトルにおいて明らかな変化は観察されない。
【0031】
幾つかの実施形態において、電気化学的処理する方法は、単斜晶層状構造のリチウムリッチ酸化物正極材料をLi
0に対する電位が4.6Vの間で充電し、その後、2.0Vまで放電し、電気化学的処理するサイクル回数が1〜300回であり、その後、処理後のリチウムリッチ酸化物正極材料について温度が50〜350℃でX線回折分析を行い、その中、100〜350℃で、その格子定数a=bおよびcの少なくとも一つが温度の上昇に伴い低下するが、その得られたX線回折スペクトルにおいて明らかな変化は観察されない。好ましくは、100〜350℃で、その格子定数cの少なくとも一つが温度の上昇に伴い低下するが、その得られたX線回折スペクトルにおいて明らかな変化は観察されない。
【0032】
本発明において、電気化学的処理後のリチウムリッチ酸化物正極材料を熱処理することをさらに有し、熱処理の方法は、電気化学的処理のリチウムリッチ酸化物正極材料を150〜350℃の条件で0.5〜10時間処理し、熱処理しないリチウムリッチ酸化物正極材料に比べると、熱処理後の正極材料はより低い欠陥濃度を有し、リチウムイオン電池に応用すると、より高放電比容量および放電電圧を有する。
【0033】
幾つかの具体的な実施形態において、熱処理の温度は、200〜300℃であり、熱処理の時間は、1〜5時間である。
【0034】
本発明は、正極、負極、セパレータ、および電解質を含むリチウムイオン電池を提供し、正極は製造方法で得られたリチウムリッチ酸化物正極材料から製造される。負極は、リチウム金属、チタン酸リチウム、またはグラファイトからなる群から選択され、セパレータはCegard系から選択され、電解液は1mol/L LiPF
6溶液(EC:DMC=3:7)である。