(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に示されている熱伝導性グリスは、比較的熱伝導性が高いものの、近年の電子機器の小型化、高性能化などを背景にして、より熱伝導性に優れる熱伝導性グリスが求められている。一般に、熱伝導性グリスの熱伝導性は、熱伝導性充填剤の種類及び含有量が同じであれば、低粘度であるほど高くなる。これは、低粘度であるほど、同一荷重で圧接したときに、薄くなりやすく、熱抵抗が低減するからである。また、このように熱伝導性充填剤の種類及び含有量が同じであるときに、より低粘度にできる技術を用いれば、従来の同じ圧縮性の熱伝導性グリスと比べて熱伝導性充填剤の充填量を相対的に高めることができるため、熱伝導性グリスの熱伝導率が向上する。
【0005】
以上より、本発明の課題は、熱伝導性充填剤を含有する熱伝導性グリスであって、熱伝導性充填剤の種類及び量が同じである場合に、従来よりも低粘度となる特性、すなわち、優れた熱伝導効率を備える熱伝導性グリスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、熱伝導性充填剤を含有する熱伝導性グリスであって、特定の基油及び特定の分散剤を含有する熱伝導性グリスによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の[1]〜[8]を提供する。
[1]発熱体の発熱を冷却部品へ伝達する熱伝導性グリスであって、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルとα−オレフィンとのコポリマー、及びポリα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種からなる基油と、リン酸系アニオン界面活性剤からなる分散剤と、熱伝導性充填剤とを含有する熱伝導性グリス。
[2]前記基油が不飽和ジカルボン酸ジブチルエステルとα−オレフィンのコポリマーである、上記[1]に記載の熱伝導性グリス。
[3]前記リン酸系アニオン界面活性剤が、ポリオキシアルキレン脂肪族エーテルとリン酸骨格を備える化合物である、上記[1]又は[2]に記載の熱伝導性グリス。
[4]前記ポリオキシアルキレン脂肪族エーテルにおける、脂肪族を構成する脂肪族基の炭素数が8〜16である、上記[3]に記載の熱伝導性グリス。
[5]前記ポリオキシアルキレン脂肪族エーテルにおける、脂肪族を構成する脂肪族基が分岐鎖である、上記[3]又は[4]に記載の熱伝導性グリス。
[6]前記ポリオキシアルキレン脂肪族エーテルにおける、脂肪族を構成する脂肪族基の炭素数が10〜16である、上記[5]に記載の熱伝導性グリス。
[7]前記分散剤の酸価が80〜200mgKOH/gである、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の熱伝導性グリス。
[8]前記熱伝導性充填剤が、金属、金属酸化物、及び金属窒化物からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の熱伝導性グリス。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた熱伝導効率を備える熱伝導性グリスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の熱伝導性グリスは、発熱体の発熱を冷却部品へ伝達する熱伝導性グリスであって、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルとα−オレフィンとのコポリマー、及びポリα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種からなる基油と、リン酸系アニオン界面活性剤からなる分散剤と、熱伝導性充填剤とを含有する熱伝導性グリスである。
【0010】
<基油>
本発明の熱伝導性グリスに含まれる基油は、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルとα−オレフィンとのコポリマー、及びポリα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種からなる。本発明における基油と後述する特定の分散剤とを併用することで、熱伝導性充填剤を含有する熱伝導性グリスの粘度を効果的に低下させることができ、熱伝導効率を向上させることができる。中でも、熱伝導効率をより高める観点から、基油は不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルとα−オレフィンとのコポリマーであることが好ましい。
【0011】
(コポリマー)
基油として使用される不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルとα−オレフィンとのコポリマー(以下、単にコポリマーという場合もある)の構成単位である不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルは、不飽和ジカルボン酸とアルコールとがエステル化した化合物であり、具体的には、不飽和ジカルボン酸の2つのカルボン酸とアルコールとがエステル化した化合物である。
不飽和ジカルボン酸としては、炭素−炭素二重結合と2つのカルボン酸を有する化合物が挙げられ、好ましくはマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸などである。
アルコールは、熱伝導性グリスの粘度を低下させやすいため、好ましくは炭素数3〜10のアルコールであり、より好ましくは炭素数3〜6のアルコールであり、さらに好ましくは炭素数4のアルコール(ブタノール)である。
したがって、コポリマーの中でも、不飽和ジカルボン酸ジブチルエステルとα−オレフィンのコポリマーが特に好ましい。
【0012】
コポリマーの構成単位であるα−オレフィンは、分子鎖の片末端に二重結合を有するオレフィンである。α−オレフィンの中でも、炭素数6〜16のα−オレフィンが好ましい。α−オレフィンが非分岐鎖であるコポリマーは、低温でも良好な流動性を示すため、分岐鎖であるコポリマーよりも好適である。α−オレフィンは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0013】
(ポリα−オレフィン(PAO))
基油として使用されるポリα−オレフィン(PAO)は、α−オレフィンの重合体である。α−オレフィンの種類に特に制限はなく、直鎖であっても、分岐鎖であってもよく、好ましくは炭素数6〜16のα−オレフィンの重合体である。ポリα−オレフィンは、単一のα−オレフィンの重合体であってもよいし、2種以上のα−オレフィンの共重合体であってもよい。
【0014】
基油の40℃における動粘度は、好ましくは60〜1,000mm
2/s、より好ましくは80〜770mm
2/s、さらに好ましくは110〜340mm
2/sである。基油の動粘度がこれら下限値以上であると、得られた熱伝導性グリスから基油が分離し難くなり、さらに高温で基油が蒸発し難いため、熱伝導性グリス中の含油量の低下を抑制し、冷却部品との接触面に割れや空気層などの発生を防止することで、放熱特性を向上させることができる。一方、基油の動粘度がこれら上限値以下であると、熱伝導性充填剤を充填しやすくなり、また一定程度、動粘度が低いことより熱伝導性グリスのディスペンス性が向上する。なお、基油の動粘度はASTM D−445に準拠して測定される。
【0015】
熱伝導性グリス中の基油の含有量は、特に制限されないが、好ましくは5〜50体積%であり、より好ましくは10〜40体積%であり、さらに好ましくは15〜30体積%である。基油の含有量がこれら下限値以上であると、熱伝導性グリスのちょう度を適切な値に調整しやすくなる。基油の含有量がこれら上限値以下であると、基油の離油を抑制して、熱伝導性グリスの塗布部分周辺の汚染を防止することができる。
【0016】
<リン酸系アニオン界面活性剤>
本発明の熱伝導性グリスは、リン酸系アニオン界面活性剤からなる分散剤を含む。上記した特定の基油と、リン酸系アニオン界面活性剤とを併用することにより、熱伝導性充填剤を含有する熱伝導性グリスの粘度が低下し、熱伝導効率に優れる熱伝導性グリスを得ることができる。この理由は定かではないが、リン酸系アニオン界面活性剤のリン酸部分が、熱伝導性充填剤への吸着性に優れ、かつリン酸系アニオン界面活性剤のリン酸部分を含む親水性部位と熱伝導性充填剤との親和性、並びに疎水性部位と基油(マトリックス)との親和性が共に良好であり、その結果、粘度が低い熱伝導性グリスが得られるものと考えられる。
【0017】
リン酸系アニオン界面活性剤は、リン酸基を有する界面活性剤であれば、特に制限されないが、ポリオキシアルキレン脂肪族エーテルとリン酸骨格を備える化合物であることが好ましい。ポリオキシアルキレン脂肪族エーテルは、ポリオキシアルキレンと脂肪族とがエーテル結合(−O−)で連結された化合物であり、式(1)で表される構造を有している。
【0018】
【化1】
(R
1は脂肪族基であり、R
2はアルキレン基をあり、nは1〜50であり、*は結合手を表す)
【0019】
該脂肪族を構成する脂肪族基(R
1)の炭素数は、粘度が低く熱伝導効率に優れる熱伝導性グリスを得る観点から、8〜16が好ましく、10〜16がより好ましい。また、脂肪族基は、直鎖でも分岐鎖でもよいが、粘度が低く熱伝導効率に優れる熱伝導性グリスを得る観点から、分岐鎖であることが好ましい。さらに、熱伝導効率により優れる熱伝導性グリスを得る観点から、脂肪族基は分岐鎖であり、かつ炭素数が10〜16であることが好ましい。
【0020】
脂肪族基(R
1)としては、炭化水素基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。該アルキル基としては、例えば、オクチル基、イソオクチル基(2−エチルヘキシル基)、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、イソウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、イソドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、イソテトラデシル基、ペンタデシル基、イソペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基などが挙げられる。これらの中でも、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基などの分岐アルキル基が好ましく、中でも、イソオクチル基、イソトリデシル基がより好ましく、イソトリデシル基が更に好ましい。
【0021】
アルキレン基(R
2)は、好ましくは炭素数2〜6、より好ましくは炭素数2〜3のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数2のアルキレン基(すなわちエチレン基)である。また、nが2以上の場合において、複数のアルキレン基(R
2)は同一であっても異なっていてもよい。
また、nは1〜50であり、好ましくは3〜40であり、より好ましくは5〜30である。
【0022】
ポリオキシアルキレン脂肪族エーテルとリン酸骨格を備える化合物としては、上記したポリオキシアルキレン脂肪族エーテルとリン酸とが共有結合で連結したリン酸エステルやリン酸ジエステルなどの他、ポリオキシアルキレン脂肪族エーテルとリン酸とが、イオン結合など非共有結合を介して結合した化合物なども挙げられる。さらに、例えば、上記した式(1)の結合手が水素原子と結合したポリオキシアルキレン脂肪族エーテルと、リン酸とを混合した混合物も、本発明のリン酸系アニオン界面活性剤に該当するものとする。
【0023】
これらの中でも、ポリオキシエチレン脂肪族エーテルとリン酸とが共有結合で連結したリン酸エステルである、下記式(2)で表される化合物が、リン酸系アニオン界面活性剤として、特に好適に使用することができる。
【0024】
【化2】
(R
1は脂肪族基であり、nは1〜50である)
【0025】
R
1は脂肪族基であり上記した式(1)で説明したR
1と同様である。また、nは1〜50であり、好ましくは3〜40であり、より好ましくは5〜30である。
式(2)で表される化合物としては、熱伝導性グリスの粘度を低下させ、熱伝導効率を高める観点から、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンエチルヘキシルエーテルリン酸エステル、又はポリオキシエチレンイソトリデシルエーテルリン酸エステルなどが好ましく、この中でも、ポリオキシエチレンエチルヘキシルエーテルリン酸エステル、又はポリオキシエチレンイソトリデシルエーテルリン酸エステルがより好ましく、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテルリン酸エステルがさらに好ましい。
【0026】
リン酸系アニオン界面活性剤からなる分散剤の酸価は、特に限定されないが、好ましくは80〜200mgKOH/gであり、より好ましくは100〜195mgKOH/gである。酸価がこのような範囲のリン酸系アニオン界面活性剤を用いると、熱伝導性グリスの熱伝導効率が向上しやすくなる。なお、分散剤の酸価は、JIS K 0070に準拠して、中和滴定法により求めることができる。
【0027】
リン酸系アニオン界面活性剤からなる分散剤の含有量は、基油100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部であり、より好ましくは3〜20質量部であり、さらに好ましくは5〜15質量部である。分散剤の含有量がこれら下限値以上であると、熱伝導性グリスの熱伝導効率が向上しやすくなり、これら上限値以下であると、添加量に応じた効果を得やすくなる。
【0028】
<熱伝導性充填剤>
本発明の熱伝導性グリスは、熱伝導性充填剤を含有する。熱伝導性充填剤を含有することにより、熱伝導性グリスの熱伝導性が向上し、発熱体の発熱を冷却部品へ伝達することができる。また、上記したように、本発明の熱伝導性グリスは、特定の基油及び分散剤を併用しているため、熱伝導性充填剤を含有しつつ粘度が低下し、熱伝導効率が高いものとなる。
【0029】
熱伝導性充填剤としては、特に限定されず、例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属水酸化物、金属炭化物、グラファイト、炭素繊維などを用いることができ、中でも、金属、金属酸化物、及び金属窒化物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
金属としては、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケルなどが挙げられ、中でもアルミニウムが好ましい。
金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などが挙げられ、中でも酸化アルミニウムが好ましい。
金属窒化物としては、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウムが挙げられ、中でも窒化アルミニウムが好ましい。
金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウムが挙げられる。
金属炭化物としては、炭化ケイ素が挙げられる。
炭素繊維としては、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、樹脂繊維を炭化処理した繊維、樹脂繊維を黒鉛化処理した繊維などが挙げられる。
【0030】
熱伝導性充填剤の平均粒径は特に限定されないが、熱伝導性グリスの粘度を低くする観点、熱伝導性充填剤の充填量を高める観点などから、例えば0.1〜100μmであり、好ましくは0.5〜70μmである。
【0031】
熱伝導性充填剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよいが、熱伝導性充填剤の充填量を多くして、熱伝導性グリスの熱伝導性を高める観点から、平均粒径の異なる2種以上を併用することが好ましく、平均粒径0.1μm以上5μm以下の小粒径熱伝導性充填剤と、平均粒径5μm超70μm以下の大粒径熱伝導性充填剤を併用することが好ましい。小粒径熱伝導性充填剤と大粒径熱伝導性充填剤を併用する場合は、これらの質量比(大粒径熱伝導性充填剤/小粒径熱伝導性充填剤)は、好ましくは0.1〜10であり、より好ましくは0.3〜7であり、さらに好ましくは1〜5である。
熱伝導性充填剤の平均粒径は、電子顕微鏡等で観察して測定できる。より具体的には、例えば電子顕微鏡や光学顕微鏡を用いて、任意の熱伝導性充填剤50個の粒径を測定して、その平均値(相加平均値)を平均粒径とすることができる。なお、ここで測定する熱伝導性充填剤の粒径は、球状、破砕状、鱗片状である場合はその長径とすることができ、繊維状の場合は繊維長とすることができる。
【0032】
熱伝導性充填剤の形状は特に限定されず、球状、破砕状、針状、繊維状、鱗片状などいずれの形状でもよいが、粘度の低い熱伝導性グリスを得やすい観点から、球状が好ましい。
【0033】
熱伝導性グリスにおける熱伝導性充填剤の体積充填率は、好ましくは50〜95体積%であり、より好ましくは60〜90体積%であり、さらに好ましくは70〜85体積%である。熱伝導性充填剤の体積充填率がこれら下限値以上であると、熱伝導性グリスの熱伝導性が高まり、放熱性が向上する。熱伝導性充填剤の体積充填率がこれら上限値以下であると、熱伝導性グリスが硬くなりすぎることを防止し、ディスペンス性を高めることができる。
【0034】
熱伝導性グリスには、上記した基油、分散剤、熱伝導性充填剤以外にも、老化防止剤、腐食防止剤、錆止め剤、増粘剤、増ちょう剤、顔料、染料、消泡剤、可塑剤、溶剤などの各種添加剤を配合することも可能である。
【0035】
本発明の熱伝導性グリスは、上記したように粘度が低く、熱伝導効率が高いため、発熱体の発熱をヒートシンクなどの冷却部品へ伝達する用途に好適に使用することができる。発熱体としては、例えば、コンピュータ、自動車部品、携帯電話等の電子機器に用いられる発熱体が挙げられ、半導体素子や機械部品などが挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0037】
本実施例では、以下の方法により評価した。
【0038】
[熱伝導率]
熱伝導性グリスの熱伝導率を、熱抵抗測定機を用いてASTM D5470−06に準拠した方法で測定した。
(測定機)
図1に示すように、熱抵抗測定機は、側面が断熱材21で覆われた第1の銅製ブロック22及び第2の銅製ブロック23を備えている。第1の銅製ブロック22は、熱抵抗測定機の下部に配置され、第2の銅製ブロック23は、第1の銅製ブロック22の上方に配置されている。第1の銅製ブロック22の上面は、熱伝導性グリス(試料)S2が載置される載置面Q1であり、この載置面Q1の寸法は、25.4mm×25.4mmである。熱抵抗測定機は、第1の銅製ブロック22の下面を加熱するヒーター24と、第2の銅製ブロック23の上面を冷却するファン付きヒートシンク25とをさらに備えている。熱抵抗測定機は、第2の銅製ブロック23に接続されたシリンダ26をさらに備えている。第2の銅製ブロック23は、第1の銅製ブロック22の載置面Q1に載置された試料S2をシリンダ26の押圧動作によって圧縮するように構成されている。
(測定)
熱伝導率の測定は、まず、試料S2を第1の銅製ブロック22の載置面Q1に塗布し、続いて第2の銅製ブロック23で圧縮して、試料S2の厚みが1.5mmとなるように圧縮した。次に、はみ出した試料を拭き取り、第1の銅製ブロック22の載置面Q1の温度が80℃となるようにヒーター24を発熱させた。第1の銅製ブロック22の載置面Q1の温度(温度θ
j1)が80℃の定常状態となるように15分間放置した後、第2の銅製ブロック23の下面Q2(試料S2に接触している接触面)の温度(温度θ
j0)を測定した。さらに、このときのヒーター24の発熱量(発熱量Q)、及び試料S2の正確な厚み(厚みT)を測定した。
さらに試料の厚みを1.0mm、0.5mmとなるように調整して、同様の測定を行い、下記式(2)から算出した各試料S2の熱抵抗の値を、縦軸が熱抵抗、横軸が厚みとなるグラフにプロットして、その傾きから熱伝導率を求めた。
熱抵抗=(θ
j1−θ
j0)/Q・・・(2)
【0039】
[粘度]
熱伝導性グリスの粘度は、粘度計(Brookfield社製「DV2T ヘリパススタンド(Tバースピンドル T−D(94))」)を用いて、室温下(25℃)で、回転数1rpmで60秒間測定して、50〜60秒の平均値を測定値とした。
【0040】
[粘度の改善効果]
各実施例で作製した熱伝導性グリスの粘度の改善効果は、同種、同量の熱伝導性充填剤を用いた比較例を比較対象として、以下の基準で行った。なお、粘度の改善効果が最も高い場合を「A」と評価しており、粘度の改善効果が高い場合は、熱伝導効率が高く、放熱性に優れた熱伝導性グリスと判断できる。
<基準>
A・・比較対象に対して、粘度が20%未満であったもの
B・・比較対象に対して、粘度が20%以上40%未満であったもの
C・・比較対象に対して、粘度が40%以上90%未満であったもの
D・・比較対象に対して、粘度が90%以上95%未満であったもの
E・・比較対象に対して、粘度が95%以上であったもの
F・・粉状または粒状であり、比較できなかったもの
【0041】
実施例及び比較例で用いた各成分は以下のとおりである。
【0042】
(基油)
・基油1:不飽和ジカルボン酸ジブチルエステルとα−オレフィンとのコポリマー Italmatch Chemicals社製「Ketjenlube 115」 動粘度115mm
2/s(40℃)
・基油2:ポリα−オレフィン ExxonMobil社製「SpectraSyn 10」 動粘度66mm
2/s(40℃)
・基油3:シリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン) The Dow Chemical company社製「Dowsil SH200CV」 動粘度110mm
2/s(40℃)
【0043】
(分散剤)
・分散剤1:ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテルリン酸エステル ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK−102」 酸価101mgKOH/g
・分散剤2:ポリオキシエチレンエチルヘキシルエーテルリン酸エステルを主成分とする 第一工業製薬株式会社製「プライサーフA208F」 酸価165〜195mgKOH/g
・分散剤3:ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステルを主成分とする 第一工業製薬株式会社製「プライサーフA208B」 酸価160〜185mgKOH/g
・分散剤4:トリオレイン酸ソルビタン 日本サーファクタント工業製「NIKKOL SO−30V」
【0044】
(熱伝導性充填剤)
・酸化亜鉛:球状、平均粒径0.75μm
・アルミニウム1:球状、平均粒径1μm
・アルミニウム2:球状、平均粒径7μm
・酸化アルミニウム1:球状、平均粒径3μm
・酸化アルミニウム2:球状、平均粒径18μm
・窒化アルミニウム1:破砕状、平均粒径5μm
・窒化アルミニウム2:球状、平均粒径30μm
【0045】
(実施例1〜6、比較例1〜4)
表1に示す配合で、熱伝導性グリスを得た。具体的には、表1で示す基油に、分散剤及び添加剤を添加して攪拌し、次いで小粒径熱伝導性充填剤(平均粒径が0.1μm以上5μm以下)を添加し攪拌した後、さらに大粒径熱伝導性充填剤(平均粒径5μm超70μm以下)を添加し攪拌して、熱伝導性グリスを得た。各評価結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
各実施例の熱伝導性グリスは、比較対象となる各比較例の熱伝導性グリスと比較して、粘度改善効果が高く、熱伝導効率に優れる熱伝導性グリスであることが分かった。
実施例の中でも、基油として不飽和ジカルボン酸ジブチルエステルとα−オレフィンとのコポリマーを用いた実施例1〜5は、基油としてポリα−オレフィンを用いた実施例6よりも粘度改善効果に優れていた。
また、実施例1〜5の熱伝導性グリス中でも、分散剤として脂肪族を構成する脂肪族基が分岐鎖であるものを使用した実施例1、2、4、5の熱伝導性グリスは、分散剤として脂肪族を構成する脂肪族基が直鎖であるものを使用した実施例3と比較して、粘度の改善効果が高いことが分かった。さらに、分散剤として脂肪族を構成する脂肪族基が分岐鎖であり、かつ炭素数10〜16のものを使用した実施例1、4、5は、粘度の改善効果が他の例よりも大きく、熱伝導効率に特に優れる熱伝導性グリスであることが分かった。
以上より、特定の基油及び特定の分散剤を併用した本発明の熱伝導性グリスにより、発熱体の発熱を冷却部品へ効果的に伝達できることが分かった。
発熱体の発熱を冷却部品へ伝達する熱伝導性グリスであって、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルとα−オレフィンとのコポリマー、及びポリα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種からなる基油と、リン酸系アニオン界面活性剤からなる分散剤と、熱伝導性充填剤とを含有する熱伝導性グリス。