(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の実施の形態にて示すジャーナル軸受とは、回転軸を回転自在に支持する滑り軸受である。そして、当該ジャーナル軸受は、回転電機等の種々の回転機器に適用できる。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1によるジャーナル軸受100の構成を示す断面図である。
図1は、ジャーナル軸受100および回転機器1000(下記の実施の形態において説明する。
図13参照)の回転軸101を、回転軸101の軸心Qに垂直な平面で切断した断面を示している。
図1の紙面上の上下方向は、鉛直の上下方向を表している。
図2は、
図1に示したジャーナル軸受100のA−A線断面図である。
【0011】
図1および
図2に示すように、ジャーナル軸受100は、全体として環状の形状を有している。ジャーナル軸受100には、回転軸101が挿入されている。ジャーナル軸受100は、回転軸101を回転自在に支持するように構成されている。回転軸101の軸心Qは、水平方向に延伸している。
図1において、回転軸101の回転方向Hは、反時計回り方向である。そして、回転方向Hの前方側を前方側H1、回転方向Hの後方側を後方側H2とする。以下の説明において、回転方向Hの前方側H1、および、回転方向Hの後方側H2とは、対象箇所を基準として説明する。また、回転軸101の鉛直方向Gとし、下方側G1、上方側G2として示す。尚、以下の実施の形態においても同様に図示されている図においては適宜同様に示す。
【0012】
回転軸101の軸心Qに平行な方向を軸方向Yと、軸心Qを中心とした周方向を周方向Zと示す。また、これら各方向は、回転機器1000における、周方向Z、軸方向Yと同一であり、他の箇所においても、これらの方向を基準として、各方向Y、Zを示して説明する。
【0013】
ジャーナル軸受100は、キャリアリング1、上流パッド21、下流パッド22、サイドプレート4を備える。キャリアリング1は、回転軸101の外周側に配置される。キャリアリング1のうち、回転軸101の下方側G1、すなわち荷重方向側に位置する部分を下半部11とし、上方側G2、すなわち反荷重方向側に位置する部分を上半部12とする。上流パッド21および下流パッド22は、下半部11と回転軸101の外周面との間に配置される。サイドプレート4は、
図2に示すように、後述する軸受領域Tの軸方向Yの両端を囲うようにそれぞれ設置されている。尚、これは一例であり、サイドプレート4は、少なくとも、上流パッド21および下流パッド22の軸方向Yの両端でそれぞれを囲うように形成されていればよい。
【0014】
上流パッド21および下流パッド22は、回転軸101の外周面に沿って、周方向Zの異なる位置に設けられる。上流パッド21は、周方向Zに間隔を空けて下流パッド22の回転方向Hの後方側H2に配置される。上流パッド21の外周面には、キャリアリング1の内周面に上流パッド21を揺動可能に支持する上流ピボット31を備える。下流パッド22の外周面には、キャリアリングの内周面に下流パッド22を揺動可能に支持する下流ピボット32を備える。
【0015】
これら各ピボット31、32により、各パッド21、22が回転軸101の外周面に対して自由に傾くように構成される。このような上流パッド21および下流パッド22を有するジャーナル軸受100は、一般的に、ティルティングパッドジャーナル軸受と称される。また、ジャーナル軸受100は、キャリアリング1の、上半部12と回転軸101の外周面との間に配置されるガイドメタル13を備えている。ガイドメタル13は、振動などの影響による回転軸101の上方側G2への跳ね上がりを防止する。
【0016】
ジャーナル軸受100は、回転軸101の外周面と、キャリアリング1の内周面との間であって、軸方向Yの両端のサイドプレート4に軸方向Yに囲まれた領域(以下、軸受領域Tと称す)を有する。また、ジャーナル軸受100は、当該軸受領域Tに油(潤滑油)を供給する、キャリアリング1から内側に延伸する給油ノズル5を複数個備える。
【0017】
キャリアリング1は、周方向Zに複数配置した排油口61、62、63、64、65、66、67を備えている。尚、いずれかの排油口をただ単に示す場合には、排油口6として示す。排油口6は、例えば、キャリアリング1の内周面から外周面まで貫通した貫通穴であり、軸受領域Tの油をキャリアリング1の外に排出する穴である。
【0018】
まず、
図1において、ジャーナル軸受100の軸方向Y、すなわち、回転軸101の軸方向Yに垂直な断面において、回転方向Hへ荷重方向の上端部Z11を0度とし、下端部Z12を180度とし、さらに、上端部Z11を360度として説明する。尚、当該内容は以下の実施の形態においても同様であるため、その説明は適宜省略する。
【0019】
図1に示すように、排油口62、63、64は、上流ピボット31より回転軸101の回転方向Hの前方側H1であって、かつ、下流ピボット32より回転軸101の回転方向Hの後方側H2の範囲に形成される。当該範囲は、
図1において、矢印Z10から矢印Z20までの周方向Zの範囲である。尚、上流ピボット31および下流ピボット32の位置は、キャリアリング1の内周面との支点箇所を指すものとする。
【0020】
また、排油口65、66、67は、180度から360度までの範囲であって、下流ピボット32の鉛直高さL1の位置から、回転軸101の最も高い鉛直高さL3の位置までの範囲に形成される。尚、180度から360度までの範囲とは、
図1において紙面上、下端部Z12から上端部Z11までの右半分の範囲である。
【0021】
また、排油口61は、0度から180度までの範囲であって、上流ピボット31の鉛直高さL2の位置から、回転軸101の最も高い鉛直高さL3の位置までの範囲に形成される。尚、0度から180度までの範囲とは、
図1において紙面上、上端部Z11から下端部Z12までの左半分の範囲である。
【0022】
このように示した3つの範囲は、周方向位置Z1、周方向位置Z2、周方向位置Z3にて、周方向Zにおいて3分割される範囲であり、本実施の形態1においては、これら3つの全ての範囲に排油口6が配置されている。尚、これら3つの範囲のいずれか2つの範囲に形成する場合も考えられる。但し、周方向位置Z1から周方向位置Z2まで、および、周方向位置Z1から周方向位置Z3までの各範囲においては、上記において示したように、鉛直高さL3より上方側G2に排油口6が形成される場合は含まれていない。
【0023】
上記のように構成された実施の形態1における、ジャーナル軸受100と回転軸101とに介在する油の流れについて説明する。給油ノズル5から軸受領域Tに供給された油の大半は、回転軸101の回転によるせん断力に伴って回転軸101の回転方向Hと同じ方向に流れ、そのうちの一部は、回転軸101の外周面と各パッド21、22の内周面との間に流入する。軸受領域Tが油で満たされると、各部品間の隙間に油膜が形成され、油膜が回転軸101の回転によってせん断されることで、回転軸101の外周面と各パッド21、22の内周面に油膜圧力が発生する。
【0024】
回転軸101の回転数が高い時には、この油膜圧力によって、回転軸101と各パッド21、22とは非接触に支持される。そして、給油ノズル5から供給される油の一部または、回転軸101の外周面と各パッド21、22の内周面との隙間から漏れ出た油は、その他の軸受領域Tに溜まる。ジャーナル軸受100で発生する軸受領域Tの油を攪拌することによって発生する攪拌損失(以下、単に攪拌損失と称す)は、回転軸101の回転に伴って、軸受領域Tに溜まった油を攪拌することで発生し、回転軸101の外周面と軸受領域Tに溜まっている油との接触面積に比例して大きくなる。
【0025】
軸受領域Tに溜まった油の一部は、回転軸101の回転に伴って、回転軸101の外周面と各パッド21、22の内周面との間に再び供給されて循環する。その他の油の一部は、サイドプレート4と回転軸101の外周面との隙間(例えば、
図2において点線にて囲まれた箇所Sにて示す)を通ってジャーナル軸受100の外に排出され、他の油の一部は、排油口6を通ってジャーナル軸受100の外に排出される。
【0026】
次に、排油口6の作用について説明する。一般的なティルティングパッドジャーナル軸受では、軸受領域Tの下方側G1から順に油が溜まっていくため、軸受領域Tの下方側G1では、油が溜まり、軸受領域Tの上方側G2の上方では、空気が溜まっていることが多い。回転軸101が回転している場合には、上流パッド21の回転方向Hの後方側H2では、軸受領域Tの上方側G2に溜まっている空気が、回転軸101の回転によるせん断力に伴って回転方向Hの前方側H1に流れ、下流パッド22の回転方向Hの前方側H1では、軸受領域Tの下方側G1に溜まっている油が、回転軸101の回転によるせん断力に伴って回転方向Hの前方側H1に流れる。
【0027】
そのため、油と空気の界面(以下、油面と称す)の高さは、上流パッド21の回転方向Hの後方側H2では低下しやすく、下流パッド22の回転方向Hの前方側H1では上昇しやすい。油面の高さ以下にある回転軸101の外周面では攪拌損失が発生する。攪拌損失は、油面の高さに比例する。例えば、特許文献1の排油口を備えたパッド型ジャーナル軸受は、排油口により油面高さを低下させると、回転軸の外周面と油との接触面積が減り、攪拌損失を低減することができるが、回転軸の外周面とパッドの内周面との軸受領域の油面が低くなり、各隙間で油が不足して、油膜圧力が常時もしくは過渡的に低下し、パッドおよび回転軸の不安定振動が増大する。
【0028】
一方、
図1に示す実施の形態1では、排油口6は、上流ピボット31よりも回転軸101の回転方向Hの前方側H1であって、かつ、下流ピボット32より回転軸101の回転方向Hの後方側H2の範囲、または、180度から360度までの範囲であって、下流ピボット32の鉛直高さL1の位置から、回転軸101の最も高い鉛直高さL3の位置までの範囲、または、0度から180度までの範囲であって、上流ピボット31の鉛直高さL2の位置から、回転軸101の最も高い鉛直高さL3の位置までの範囲のうち、少なくともいずれか2つの範囲に配置されている。
【0029】
そして、上流ピボット31は、キャリアリング1と上流パッド21を接続し、下流ピボット32は、キャリアリング1と下流パッド22を接続するため、上流ピボット31または下流ピボット32の周方向Zの位置では、油の流路がない、または、非常に狭いため、上流ピボット31または下流ピボット32の周方向Zの位置を通る油の移動量は、非常に少ない。また、重力の影響により、回転軸101の上方側G2の周方向Zの位置を通る油の移動量も少ない。
【0030】
そのため、軸受領域Tに溜まる油は、回転軸101の軸心Qを中心に、上流ピボット31の周方向位置Z2、下流ピボット32の周方向位置Z3、回転軸101の鉛直方向Gの上方側G2の周方向位置Z1で周方向Zに3分割される。本実施の形態によれば、3分割された油のうち、少なくとも2つの領域は、排油口6により排出できるため、油面分布を周方向Zの領域によって調整できる。
【0031】
つまり、本実施の形態1によれば、上流パッド21の回転方向Hの後方側H2の油面高さJ1、周方向Zに向かい合う上流パッド21の端部と下流パッド22の端部との間の油面高さJ2、下流パッド22の回転方向Hの前方側H1の油面高さJ3を、それぞれを個別に調整できる。尚、各油面高さJ1、J2、J3の例は、
図4に参考例を示している。
【0032】
例えば、上流ピボット31より回転軸101の回転方向Hの前方側H1であって、かつ、下流ピボット32より回転軸101の回転方向Hの後方側H2の位置に排油口62、63、64を、そして、180度から360度までの範囲であって、下流ピボット32の鉛直高さL1の位置から、回転軸101の最も高い鉛直高さL3の位置までの範囲に排油口65、66、67をそれぞれ形成すれば、上流パッド21と下流パッド22の間の油面高さJ2と、下流パッド22の回転方向Hの前方側H1の油面高さJ3を個別に調整できる。
【0033】
これにより、回転軸101の回転によって油面が上昇しやすい下流パッド22の回転方向Hの前方側H1の油面高さJ3を大幅に低下させつつ、上流パッド21と下流パッド22の間の油面高さJ2は、下流パッド22の内周面と回転軸101の外周面の隙間に油を満たせる程度に保持できる。
【0034】
また、例えば、上流ピボット31より回転軸101の回転方向Hの前方側H1であって、かつ、下流ピボット32より回転軸101の回転方向Hの後方側H2の位置に排油口62、63、64を、そして、0度から180度までの範囲であって、上流ピボット31の鉛直高さL2の位置から、回転軸101の最も高い鉛直高さL3の位置までの範囲に排油口61をそれぞれ形成すれば、上流パッド21と下流パッド22の間の油面高さJ2と、上流パッド21の回転方向Hの後方側H2の油面高さJ1を個別に調整できる。
【0035】
これにより、上流パッド21と下流パッド22の間の油面高さJ2は、下流パッド22の内周面と回転軸101の外周面の隙間に油を満たせる程度に低下させつつ、回転軸101の回転によって油面が低下しやすい上流パッド21の回転方向Hの後方側H2の油面高さJ1は、上流パッド21の内周面と回転軸101の外周面の隙間に油を満たせる程度に保持できる。
【0036】
また、例えば、180度から360度までの範囲であって、下流ピボット32の鉛直高さL1の位置から、回転軸101の最も高い鉛直高さL3の位置までの範囲に排油口65、66、67を形成し、そして、0度から180度までの範囲であって、上流ピボット31の鉛直高さL2の位置から、回転軸101の最も高い鉛直高さL3の位置までの範囲に排油口61をそれぞれ形成すれば、下流パッド22の回転方向Hの前方側H1の油面高さJ3と、上流パッド21の回転方向Hの後方側H2の油面高さJ1を個別に調整できる。
【0037】
これにより、回転軸101の回転によって油面が上昇しやすい下流パッド22の回転方向Hの前方側H1の油面高さJ3を大幅に低下させつつ、回転軸101の回転によって油面が低下しやすい上流パッド21の回転方向Hの後方側H2の油面高さJ1は、上流パッド21の内周面と回転軸101の外周面の隙間に油を満たせる程度に保持できる。
【0038】
また、いずれの排油口6も、回転軸101のうち最も高い鉛直高さL3より低い位置に配置していることから、下方側G1から順に溜まる油と回転軸101の外周面との接触面積を確実に減らすことができる。本実施の形態によれば、軸受領域Tの油面分布を周方向Zの範囲によって調整することで、回転軸101の外周面とパッド2の内周面の隙間において、回転方向Hの後方側H2の油面高さJ1の低下を抑えつつ、それ以外の油面高さJ2、J3は、低下させて回転軸101の外周面と軸受領域Tに溜まっている油との接触面積を減らすことで、回転軸101および各パッド21、22の不安定振動を抑制しつつ、攪拌損失を最大限低減する。
【0039】
上記のように構成された実施の形態1のジャーナル軸受によれば、
回転機器の回転軸を支えるジャーナル軸受であって、
前記回転軸の外周側に間隔を隔てて配置されたキャリアリングと、
前記キャリアリングのうち前記回転軸の荷重方向側に位置する半分を下半部とし、
前記キャリアリングの前記下半部の内周面と前記回転軸の外周面との間の、周方向の異なる位置に配置される、前記回転軸の回転方向の後方側に位置する上流パッドおよび前記回転軸の回転方向の前方側に位置する下流パッドを有し、
前記上流パッドを前記キャリアリングの内周面に揺動可能に支持する上流ピボットと、
前記下流パッドを前記キャリアリングの内周面に揺動可能に支持する下流ピボットと、
前記上流パッドおよび前記下流パッドの軸方向の両端でそれぞれ囲うサイドプレートとを備え、
前記キャリアリングは、内周面から外周面に貫通する排油口を周方向に複数個備え、
前記ジャーナル軸受の軸方向に垂直な断面において、回転方向へ荷重方向の上端部を0度とし、下端部を180度とし、さらに、上端部を360度とすると、
前記排油口は、前記キャリアリングの、
前記上流ピボットより前記回転軸の回転方向の前方側であって、かつ、前記下流ピボットより前記回転軸の回転方向の後方側の範囲、
または、180度から360度までの範囲であって、前記下流ピボットの鉛直高さの位置から、前記回転軸のうち最も高い鉛直高さの位置までの範囲、
または、0度から180度までの範囲であって、前記上流ピボットの鉛直高さの位置から、前記回転軸のうち最も高い鉛直高さの位置までの範囲のうち、
少なくともいずれか2つの範囲に配置されるので、
排油口の作用により、軸受領域の油面分布を周方向の範囲によって調整でき、回転軸の外周面と各パッドの内周面の隙間において、上流パッドの回転方向の後方側の油面高さの低下を抑えたり、それ以外の油面高さは、低下させて回転軸の外周面と軸受領域に溜まっている油との接触面積を減らしたりできるため、各パッドおよび回転軸の不安定振動を抑制しつつ、攪拌損失を最大限低減できる。
【0040】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2におけるジャーナル軸受100の軸方向Yに垂直な断面図である。尚、上記実施の形態1と同様の部分については同一符号を付して説明を省略する。
図3に示すように、排油口6は、周方向Zの同一位置に、軸方向Yに複数個の排油口6A、6B、6C、6Dが形成される。
【0041】
上記のように構成された実施の形態2によれば、排油口6A、6B、6C、6Dにより、軸受領域Tに溜まった油を軸方向Yに分配して排油できる。このため、排油口6の軸方向Yの中心位置から離れた軸方向Yの位置で油面が低下せずに、回転軸101の外周面と油が接触して、攪拌損失が発生することを抑制できる。また、この構成によれば、油面分布を軸方向Yの排油口6A〜6Dの形成位置によって調整できる。
【0042】
排油口6からの排油量よりも、サイドプレート4の内周面と回転軸101の外周面との隙間(例えば、
図3において点線にて囲まれた箇所Sにて示す)を通って排出される排油量の方が多い場合、軸受領域Tの軸方向Yの両端の油面は、低下しやすいが、軸方向Yの中心の油面は、低下しにくい場合がある。この場合であれば、軸方向Yの中心の排油口6B、6Cを、軸方向Yの端部の排油口6A、6Dより大きく形成する、または、排油口6を軸方向Yの中心近傍に多く配置して調整すれば、軸方向Yの油面分布を一様に低下できる。つまり、この構成によれば、回転軸101の外周面と油との接触面積を最大限に減らし、攪拌損失をさらに低減できる。
【0043】
軸受領域Tの油の流れは、回転軸101の回転方向Hへの回転に伴った流れであるため、油の軸方向Yへの流速は、回転方向Hへの流速よりも小さい。本実施の形態によれば、油が軸方向Yに流れなくても、軸方向Yに複数配置した排油口6A〜6Dにより効率よく排油できる。そのため、油が軸方向Yに流れる過程で発生する攪拌損失を低減できる。
【0044】
上記のように構成された実施の形態2のジャーナル軸受によれば、上記実施の形態1と同様の効果を奏するとともに、
前記排油口のうち少なくとも1つは、同じ周方向位置において軸方向に複数個形成されているので、
効率よく排油できるため、各パッドおよび回転軸の不安定振動をさらに抑制しつつ、攪拌損失をさらに低減できる。
【0045】
実施の形態3.
図4は、実施の形態3によるジャーナル軸受100の軸方向Yに垂直な断面図である。
図5は、
図4に示したジャーナル軸受100のB―B線断面図である。尚、上記各実施の形態と同様の部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
図4および
図5に示すように、上流パッド21の形成されている周方向Zであって、かつ、上流ピボット31より回転方向Hの前方側H1に配置される排油口68を備える。
【0047】
上記のように構成された実施の形態3によれば、
図4に示すように、上流パッド21と下流パッド22の間の油面高さJ2を低下でき、さらに、
図5に示すように、油膜圧力の発生に寄与しない上流パッド21の軸方向Yの両端側にある油900を、排油口68により積極的に排出し、油面高さJ2を低下できる。つまり、上流パッド21と下流パッド22との間で発生する攪拌損失だけでなく、上流パッド21の軸方向Yの両端側で発生する攪拌損失を低減できる。
【0048】
上記のように構成された実施の形態3のジャーナル軸受によれば、上記各実施の形態と同様の効果を奏するとともに、
前記排油口のうち少なくとも1つは、前記上流パッドの配置されている周方向であって、かつ、前記上流ピボットより前記回転軸の回転方向の前方側に配置されているので、
上流パッドの軸方向の両端側に発生する攪拌損失が低減できるため、各パッドおよび回転軸の不安定振動をさらに抑制しつつ、攪拌損失をさらに低減できる。
【0049】
実施の形態4.
図6は、実施の形態4によるジャーナル軸受100の軸方向Yに垂直な断面図である。
図7は、
図6に示したジャーナル軸受100のC―C線断面図である。尚、上記各実施の形態と同様の部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
図6および
図7に示すように、下流パッド22の形成されている周方向Zであって、かつ、下流ピボット32より回転方向Hの前方側H1に配置される排油口69を備える。よって、回転軸101の軸心Qと、下流パッド22と、排油口69とを通る断面上において、排油路が存在する。
図6および
図7には、油900の位置を示している。
【0051】
上記のように構成された実施の形態4によれば、
図6に示すように、上流パッド21と下流パッド22の間の油面高さJ2(
図4参照)を低下でき、さらに、
図7に示すように、油膜圧力の発生に寄与しない下流パッド22の軸方向Yの両端側にある油900を、排油口69により積極的に排出し、油面高さJ2を低下できる。つまり、上流パッド21と下流パッド22との間で発生する攪拌損失だけでなく、下流パッド22の軸方向Yの両端側で発生する攪拌損失を低減できる。
【0052】
上記のように構成された実施の形態4のジャーナル軸受によれば、上記各実施の形態と同様の効果を奏するとともに、
前記排油口のうち少なくとも1つは、前記下流パッドの配置されている周方向であって、かつ、前記下流ピボットより前記回転軸の回転方向の前方側に配置されているので、
下流パッドの軸方向の両端側に発生する攪拌損失が低減できるため、各パッドおよび回転軸の不安定振動をさらに抑制しつつ、攪拌損失をさらに低減できる。
【0053】
実施の形態5.
図8は、実施の形態5によるジャーナル軸受100の軸方向Yに垂直な断面図である。尚、上記各実施の形態と同様の部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
図8に示すように、排油口6のうち少なくとも1つ、当該実施の形態5においては2つの排油口6、ここでは排油口62、63に、排油量を調整する開閉部75、76を備える。尚、
図8に示す開閉部75、76を備えた排油口6の例は一例であり他の位置の排油口6に備える例も考えられる。開閉部75、76の開閉度を調整することで、複数の排油パターンが可能となる。また、開閉部75、76を微調整することで、1つの排油口6から排出できる最大限の排油量に対して、100%〜0%の排油量に微調整できる。
【0055】
開閉部75、76は、例えば、
図8が示すようにキャリアリング1の外周側に設けてもよいが、キャリアリング1の内周側または、キャリアリング1の内部に設けてもよく、その位置は限定されない。尚、当該開閉部は、以下の実施の形態の開閉部においても同様であるためその説明は適宜省略する。また、いずれかの開閉部を指す場合には、開閉部7と示す。
【0056】
上記のように構成された実施の形態5によれば、例えば回転機器1000の運転時間などに合わせて排油口6の開閉を調整し、排油パターンを最適化できる。回転機器1000の運転時間が長くなると、劣化などによって各部品の配置および接合状態が微妙に変化し、回転軸101の振動が大きくなる場合がある。回転軸101の振動が大きくなると、回転軸101の外周面と各パッド21、22の内周面との隙間の大きさが時間変化するため、初期稼働時に調整した油面の高さが低くなり、隙間で油が不足して、回転軸101または各パッド21、22の不安定振動が増大してしまう場合がある。
【0057】
本実施の形態5によれば、回転機器1000の運転時間に合わせて、開閉部75、76にて、排油口6の開閉を調整して、油面分布を常に最適化し、各パッド21、22および回転軸101の不安定振動を抑制できる。例えば、回転機器1000の運転時間が長くなれば、開閉部7により、排油口6の一部を閉じて油面を高くすることで、油不足による各パッド21、22および回転軸101の不安定振動を抑制できる。
【0058】
また、例えば回転機器1000の設置環境によっては、給油ノズル5から供給する油の温度が規定の温度より高くなる場合がある。外気の温度が非常に高温となっている場合、または、冷却装置の劣化などにより、油の冷却性能が低下している場合などが考えられる。油の温度上昇によって粘度が低下すると、回転軸101の荷重を支える油膜圧力が低下し、回転軸101は、油の溜まっている鉛直方向Gの下方側G1に沈み込むため、油面は、通常より上昇し、油面の上昇に伴って攪拌損失が増加してしまう。
【0059】
これに対し、実施の形態5によれば、回転機器1000の設置環境に合わせて、開閉部7により排油口6の開閉を調整して、油面分布を常に最適化して、常に不安定振動を抑制しつつ、攪拌損失を最大限低減できる。例えば、回転機器1000の外気温度が高い場合は、排油口6の一部を開いて油面を低下させることで、通常より上昇した油面を低下させて、通常より増加した攪拌損失を最大限低減できる。
【0060】
上記のように構成された実施の形態5のジャーナル軸受によれば、上記各実施の形態と同様の効果を奏するとともに、
前記排油口のうち少なくとも1つは、前記回転軸の外周面と、前記キャリアリングの内周面と、前記サイドプレートとに囲まれた軸受領域の油の排油量を調整する開閉部を備えているので、
開閉部の調整により、攪拌損失が低減できるため、各パッドおよび回転軸の不安定振動をさらに抑制しつつ、攪拌損失をさらに低減できる。
【0061】
実施の形態6.
図9は、実施の形態6によるジャーナル軸受100の軸方向Yに垂直な断面図である。尚、上記各実施の形態と同様の部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
図9に示すように、排油口60、62、63、64に、排油量を調整する開閉部71、72、73、74をそれぞれ備える。さらに、0度から180度までの範囲であって、上流ピボット31の鉛直高さL2の位置から、回転軸101の最も高い鉛直高さL3の位置までの範囲に配置した油の有無を検知するセンサ81と、センサ81の測定値に基づいて開閉部71、72、73、74のうち少なくとも1つの開閉を調整する制御部9とを備える。
【0063】
尚、排油口60は、0度から180度までの範囲であって、上流ピボット31の鉛直高さL2の位置から、回転軸101の最も高い鉛直高さL3の位置までの範囲に形成されたものである。
【0064】
センサ81とは、油の有無を検知するものであり、例えば粘度計、圧力計、温度計、赤外線サーモグラフィ、電磁波レーダー計、超音波厚さセンサ計などが考えられ、油と空気との物性の差から検知する。また、軸受領域Tの油は、回転軸101の回転によるせん断力で発熱して空気より温度が高くなるため、この温度差から検知してもよい。
【0065】
上記のように構成された実施の形態6によれば、例えば、センサ81にて油が存在することが検出された場合、制御部9が、開閉部71または開閉部74の開閉を調整して排油口60または排油口65からの排出量を増やすように制御する。これにより、上流パッド21の回転方向Hの後方側H2の油面高さJ1を保持する、または下流パッド22の回転方向Hの前方側H1の油面高さJ3を低下させて攪拌損失を確実に低減しつつ、上流パッド21の内周面と回転軸101の外周面の隙間には油を満たして、油不足による各パッド21、22および回転軸101の不安定振動を抑制できる。
【0066】
上記のように構成された実施の形態6のジャーナル軸受によれば、上記各実施の形態と同様の効果を奏するとともに、
前記軸受領域のうち、0度から180度までの範囲であって、前記上流ピボットの鉛直高さの位置から、前記回転軸のうち最も高い鉛直高さの位置までの範囲の油の有無を検知するセンサと、
前記センサの測定値に基づいて前記開閉部を制御する制御部とを備えたので、
制御部の制御により、攪拌損失がさらに低減できるため、各パッドおよび回転軸の不安定振動をさらに抑制しつつ、攪拌損失をさらに低減できる。
【0067】
実施の形態7.
図10は、実施の形態7によるジャーナル軸受100の軸方向Yに垂直な断面図である。尚、上記各実施の形態と同様の部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0068】
図10に示すように、上流ピボット31より回転軸101の回転方向Hの前方側H1であって、かつ、下流ピボット32より回転軸101の回転方向Hの後方側H2に配置した油の有無を検知するセンサ82を備える。制御部9は、センサ82の測定値に基づいて開閉部71、72、73、74のうち少なくとも1つの開閉を調整する。
【0069】
上記のように構成された実施の形態7によれば、例えば、センサ82にて油が存在することが検出された場合、制御部9が、開閉部72、開閉部73または開閉部74の開閉を調整して排油口62、排油口63または排油口64からの排出量を増やす。これにより、上流パッド21と下流パッド22の間の油面高さJ2、または、下流パッド22の回転方向Hの前方側H1の油面高さJ3を低下させて攪拌損失を確実に低減しつつ、下流パッド22の内周面と回転軸101の外周面の隙間には油を満たして、油不足による各パッド21、22および回転軸101の不安定振動を抑制できる。
【0070】
上記のように構成された実施の形態7のジャーナル軸受によれば、上記各実施の形態と同様の効果を奏するとともに、
前記軸受領域のうち、前記上流ピボットより前記回転軸の回転方向の前方側であって、かつ、前記下流ピボットより前記回転軸の回転方向の後方側の油の有無を検知するセンサと、
前記センサの測定値に基づいて前記開閉部を制御する制御部とを備えたので、
制御部の制御により、攪拌損失がさらに低減できるため、各パッドおよび回転軸の不安定振動をさらに抑制しつつ、攪拌損失をさらに低減できる。
【0071】
実施の形態8.
図11は、実施の形態8によるジャーナル軸受100の軸方向Yに垂直な断面図である。尚、上記各実施の形態と同様の部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0072】
図11に示すように、180度から360度までの範囲であって、下流ピボット32の鉛直高さL1の位置から、回転軸101の最も高い鉛直高さL3の位置までの範囲に配置した油の有無を検知するセンサ83を備える。制御部9は、センサ83の測定値に基づいて開閉部71、72、73、74のうち少なくとも1つの開閉を調整する。
【0073】
上記のように構成された実施の形態8によれば、例えば、センサ83にて油が存在することが検出された場合、制御部9が、開閉部74を調整して排油口65からの排出量を増やす。これにより、下流パッド22の回転方向Hの前方側H1の油面高さJ3を低下させて攪拌損失を確実に低減できる。
【0074】
上記のように構成された実施の形態8のジャーナル軸受によれば、上記各実施の形態と同様の効果を奏するとともに、
前記軸受領域のうち、180度から360度までの範囲であって、前記下流ピボットの鉛直高さの位置から、前記回転軸のうち最も高い鉛直高さの位置までの範囲の油の有無を検知するセンサと、
前記センサの測定値に基づいて前記開閉部を制御する制御部とを備えたので、
制御部の制御により、攪拌損失がさらに低減できるため、各パッドおよび回転軸の不安定振動をさらに抑制しつつ、攪拌損失をさらに低減できる。
【0075】
実施の形態9.
図12は、実施の形態9によるジャーナル軸受100の軸方向Yに垂直な断面図である。尚、上記各実施の形態と同様の部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0076】
図12に示すように、回転軸101の外周面近傍に配置した油の有無を検知するセンサ84を備える。センサ84は、回転軸101の回転に伴って、全ての周方向Zの位置で油の有無を計測できる。制御部9は、センサ84の測定値に基づいて開閉部71、72、73、74のうち少なくとも1つの開閉を調整する。
【0077】
上記のように構成された実施の形態9によれば、例えば、センサ84にて油が存在することが検出された箇所が、回転軸101の外周面と各パッド21、22の内周面との隙間より油面が低くなっていると判断できる領域では、制御部9はその近傍の排油口6を開閉部により閉じることで、その近傍の油面のみを上昇させて、回転軸101および各パッド21、22の不安定振動を抑制できる。
【0078】
逆に、計測した油面分布を基に、油面が回転軸101の外周面と各パッド21、22の内周面との隙間に対して過剰に高くなっていると判断できる領域では、制御部9により、その近傍の排油口6を開閉部により開くことで、その近傍の油面のみを低下させて、攪拌損失を低減できる。
【0079】
また、センサ84を回転軸101の外周面近傍に備えることで、回転軸101の表面に張り付いた油の有無も検出できるため、より精度の高い油面分布を測定できる。油は、ジャーナル軸受100の下方側G1に溜まりやすいため、例えば、上流パッド21と下流パッド22の間のように空気層が少ない領域では、油と空気の界面である油面が複雑な分布を示す場合があるが、本実施の形態9によれば、周方向Zの油面分布を精度よく検出できる。
【0080】
例えば、センサ84の測定値を基に制御部9は、上流パッド21と下流パッド22の間において、上流パッド21近傍は、油を検出できないが、下流パッド22近傍では油を検出できた場合、下流パッド22と回転軸101の隙間への油の供給は、十分に確保できていると判断できるため、開閉部72を調整して排油口62を開くことで、下流パッド22と回転軸101の隙間への油の供給を確保して、不安定振動を抑制しつつ、攪拌損失を低減できる。
【0081】
逆に、センサ84の測定値を基に制御部9は、上流パッド21と下流パッド22の間において、上流パッド21近傍は、油を検出できるが、下流パッド22近傍は、油を検出できない場合、下流パッド22と回転軸101の隙間への油の供給を確保しづらい状態になると判断できる。この場合、もし、開閉部72を調整して排油口62を開くと、油を検出できている上流パッド21近傍の油面だけでなく、油を検出できていない下流パッド22近傍の油面を低下させて不安定振動が発生することを予測できる。
【0082】
よってその場合は、上流ピボット31より回転方向Hの前方側H1であって、かつ、下流ピボット32より回転方向Hの後方側H2の位置にない排油口60を調整する開閉部71、または排油口65を調整する開閉部74を調整して排油口60または排油口65を開き、上流パッド21より回転方向Hの後方側H2の油面または下流パッド22より回転方向Hの前方側H1の油面のみを低下させて、不安定振動を抑制しつつ攪拌損失を低減できる。
【0083】
これらのように、回転軸101に備えたセンサ84の計測値により少なくとも一部の油面分布を基に、制御部9により各開閉部71〜74を調整することで、回転軸101および各パッド21、22の不安定振動を抑制しつつ、攪拌損失を低減できる。
【0084】
上記のように構成された実施の形態9のジャーナル軸受によれば、上記各実施の形態と同様の効果を奏するとともに、
前記回転機器が前記回転軸の外周面側に油の有無を検知するセンサを備える場合、
前記センサの測定値に基づいて前記開閉部を制御する制御部を備えたので、
制御部の制御により、攪拌損失がさらに低減できるため、各パッドおよび回転軸の不安定振動をさらに抑制しつつ、攪拌損失をさらに低減できる。
【0085】
実施の形態10.
図13は、実施の形態10による回転機器1000を軸方向Yに沿って切断した構成を示す断面図である。尚、上記各実施の形態と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。
図13に示すように、回転機器1000は、水平に設置された回転軸101と、回転軸101の両端部を回転自在に支持する一対のジャーナル軸受100と、回転軸101の外周側に設置された固定子102と、を備えている。一対のジャーナル軸受100のうちの少なくとも一方は、上記各実施の形態のいずれかに係るジャーナル軸受100である。また、ジャーナル軸受100の詳細な構成は図においては適宜省略している。
【0086】
ジャーナル軸受100のそれぞれは、回転軸101の端部の外周側に設置されている。ジャーナル軸受100のそれぞれは、回転軸101を支持している。回転軸101には、磁極が形成された回転子111を備える。本実施の形態では、回転機器1000として、固定子102に交流電圧を誘導させて発電を行う回転電機を例示している。
【0087】
本実施の形態によれば、回転軸101のエネルギーに対してジャーナル軸受100で発生する軸受損失を低減できるため、回転電機の発電効率を向上できる。また、排油パターンを調整し、油面分布を適切に制御することで、ジャーナル軸受100に供給される給油量を必要最低限にできるため、給油ポンプ103などの給油設備を小型化できる。
【0088】
上記のように構成された実施の形態10の回転機器によれば、上記各実施の形態と同様の効果を奏するとともに、
ジャーナル軸受と、
前記ジャーナル軸受により支持される前記回転軸とを備えたので、
を備えたので、
回転機器の、各パッドおよび回転軸の不安定振動を抑制しつつ、攪拌損失を低減できる。
【0089】
実施の形態11.
図14および
図15は、実施の形態11による回転機器1000を軸方向Yに沿って切断した構成を示す断面図である。尚、上記各実施の形態と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。また、ジャーナル軸受100の詳細な構成は図においては適宜省略している。よって、図において示していない符号の構成は上記各実施の形態と同様である。
【0090】
図14においては、回転機器1000は、各パッド21、22の振動または変位を検知する振動計10を備える。また、
図15においては、回転機器1000は、回転軸101の振動または変位を検知する振動計10を備える。よって、
図14および
図15は振動計10の設置場所が異なるものである。制御部9は、振動計10の測定値に基づいて少なくとも1つの開閉部7を調整する。
【0091】
上記のように構成された実施の形態11によれば、各パッド21、22の内周面と回転軸101の外周面の隙間で油不足すると、隙間の回転方向Hの後方側H2の油膜圧力が常時または過渡的に減少し、上流パッド21は、上流ピボット31を中心としたモーメントの釣り合いから上流ピボット31より回転方向Hの後方側H2では回転軸101に近づく方向に変位または振動し、上流ピボット31より回転方向Hの前方側H1では回転軸101に遠ざかる方向に変位または振動する。この時、回転軸101は、上流ピボット31に近づく方向に変位または振動する。
【0092】
また、下流パッド22の内周面と回転軸101の外周面の隙間で油不足すると、隙間の回転方向Hの後方側H2の油膜圧力が常時または過渡的に減少し、下流パッド22は、下流ピボット32を中心としたモーメントの釣り合いから、下流ピボット32より回転方向Hの後方側H2では回転軸101に近づく方向に変位または振動し、下流ピボット32のより回転方向Hの前方側H1では回転軸101に遠ざかる方向に変位または振動する。この時、回転軸101は、下流ピボット32に近づく方向に変位または振動する。
【0093】
つまり、各パッド21、22の変位または振動の方向、および回転軸101の変位または振動の方向を検知すれば、どこの隙間で油が不足して油膜圧力が常時または過渡的に減少しているのかがわかる。本実施の形態11によれば、各パッド21、22または回転軸101の振動または変位を検知する振動計10により、隙間で油が不足している場所を特定することができ、制御部9により開閉部7を調整することで、油が不足している場所近傍の排油口6からの油の排出量を減少させて油面を上昇させ、油不足を解消して、各パッド21、22および回転軸101の不安定振動を抑制できる。
【0094】
尚、上流パッド21の振動または変位を検知する振動計10は、上流ピボット31からなるべく離れた位置に取り付け、下流パッド22の振動または変位を検知する振動計10は、下流ピボット32からなるべく離れた位置に取り付けることで、検知される変位量および振動量が大きくなり、微小な油不足が発生した段階で、油が不足している場所近傍の排油口6からの油の排出量を減少させて油面を上昇させ、油不足を解消することで、各パッド21、22および回転軸101の不安定振動をさらに抑制できる。
【0095】
また、本実施の形態によれば、油が不足していない場所も同時に特定できるため、制御部9により開閉部7を調整することで、油が不足していない場所近傍の排油口6からの油の排出量を増加させて油面を低下させ、攪拌損失を低減することも可能である。
【0096】
上記のように構成された実施の形態10の回転機器によれば、上記各実施の形態と同様の効果を奏するとともに、
ジャーナル軸受と、
前記ジャーナル軸受により支持される回転軸とを備えた回転機器であって、
前記上流パッドまたは前記下流パッドまたは前記回転軸の振動または変位を検知する振動計と、
前記振動計の測定値に基づいて前記開閉部を制御する制御部とを備えたので、
回転機器の、各パッドおよび回転軸の不安定振動をさらに抑制しつつ、攪拌損失をさらに低減できる。
【0097】
尚、上記各実施の形態においては、給油ノズル5の数は、5個の例を示したが、給油ノズル5の数は、0〜4個、または、5個以上であってもよい。給油ノズル5が0個の場合は、ジャーナル軸受100は、別の給油部を有するものとする。また、各パッド21、22および給油ノズル5のそれぞれの配置位置についても、各図に示した配置位置には限定されるものではない。また、各排油口6の配置位置および形状についても、各図に示した配置位置および形状に限定されない。
【0098】
また、各排油口6の作用による回転軸101および各パッド21、22の不安定振動の抑制効果および攪拌損失の低減効果は、各パッド21、22および給油ノズル5の形状によらないため、各パッド21、22および給油ノズル5の形状は、各図に示した形状には限定されない。
【0099】
また、上流パッド21および下流パッド22は、単一の材料により形成された単層構造を有していてもよいし、複数の材料により形成された多層構造を有していてもよい。上流パッド21および下流パッド22の形成材料には、金属、樹脂などの種々の材料を用いることができる。
【0100】
また、排油口6の数、配置位置および形状は、各図に示した数、配置位置および形状に限定されない。
また、開閉部7の数、配置位置は、各図に示した数、配置位置に限定されない。
また、制御部9の数、配置位置は、各図に示した数、配置位置に限定されない。
【0101】
また、回転機器1000は、回転機器1000の運転状態などを表す数値データに合わせて、制御部9が開閉部7を調整し、排油パターンを最適化できる。上流パッド21の回転方向Hの後方側H2では、軸受領域Tの上方側G2に溜まっている空気が、回転軸101の回転によるせん断力に伴って回転方向Hの前方側H1に流れるため、上流パッド21の回転方向Hの後方側H2では油面が低下しやすいが、回転数によってその低下量は異なる。回転数が低い時には、回転軸101の回転によるせん断力は小さいため、上流パッド21の回転方向Hの後方側H2の油面の低下量は小さく、回転数が高い時には、回転軸101の回転によるせん断力は、大きいため、上流パッド21の回転方向Hの後方側H2の油面の低下量は大きい。
【0102】
例えば回転数が低い時には、制御部9により開閉部7を調整して、上流パッド21近傍の排油口6を開き、回転数が高い時には、制御部9により開閉部7を調整して、上流パッド21近傍の排油口6を閉じることで、回転数によらず常に一定の油面高さを保つことができる。そのため、回転数によって各パッド21、22および回転軸101の不安定振動が増大すること、および、回転軸101と油との接触面積が増えて攪拌損失が大きくなることがなく、常に各パッド21、22および回転軸101の不安定振動を抑制しつつ、攪拌損失を最大限低減し続けることができる。
【0103】
また、センサまたは振動計により油面分布を把握し、回転軸101の外周面と各パッド21、22の内周面との隙間より油面が低くなっていると判断できる領域では、制御部9により開閉部7を調整して、その近傍の排油口6を閉じることで、その近傍の油面のみを上昇させて、回転軸101および各パッド21、22の不安定振動を抑制できる。また、油面が回転軸101の外周面と各パッド21、22の内周面との隙間に対して過剰に高くなっていると判断できる領域では、制御部9により開閉部7を調整して、その近傍の排油口6を開くことで、その近傍の油面のみを低下させて、攪拌損失を低減できる。
【0104】
また、回転機器1000において、
図13〜
図15に示したジャーナル軸受100の数は、2個であるが、ジャーナル軸受の数は、1個、または、3個以上であってもよい。また、ジャーナル軸受100の配置位置についても、
図13〜
図15に示した配置位置に限定されない。
【0105】
また、ジャーナル軸受100は、ジャーナル軸受100の軸受領域Tに油が供給されていない状態も含まれる。
【0106】
尚、制御部9は、ハードウエアの一例を
図15に示すように、プロセッサ200と記憶装置201から構成される。記憶装置は図示していないが、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを備える。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を備えてもよい。プロセッサ200は、記憶装置201から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶措置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ200にプログラムが入力される。また、プロセッサ200は、演算結果等のデータを記憶装置201の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
【0107】
本願は、様々な例示的な実施の形態および実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
キャリアリング(1)の内周面から外周面に貫通する排油口(6)は、上流ピボット(31)より回転軸(101)の回転方向(H)の前方側(H1)であって、かつ、下流ピボット(32)より回転軸(101)の回転方向(H)の後方側(H2)の範囲、180度から360度までの範囲であって、下流ピボット(32)の鉛直高さ(L1)の位置から、回転軸(101)の最も高い鉛直高さ(L3)の位置までの範囲、0度から180度までの範囲であって、上流ピボット(31)の鉛直高さ(L2)の位置から、回転軸(101)の最も高い鉛直高さ(L3)の位置までの範囲のうち、少なくともいずれか2つの範囲に配置される。