特許第6976037号(P6976037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立アプライアンス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6976037-洗濯機 図000002
  • 特許6976037-洗濯機 図000003
  • 特許6976037-洗濯機 図000004
  • 特許6976037-洗濯機 図000005
  • 特許6976037-洗濯機 図000006
  • 特許6976037-洗濯機 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976037
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 37/22 20060101AFI20211118BHJP
【FI】
   D06F37/22
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-27525(P2016-27525)
(22)【出願日】2016年2月17日
(65)【公開番号】特開2017-144008(P2017-144008A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年9月11日
【審判番号】不服2020-1123(P2020-1123/J1)
【審判請求日】2020年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】上甲 康之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】和田 努
(72)【発明者】
【氏名】会田 修司
【合議体】
【審判長】 窪田 治彦
【審判官】 小川 恭司
【審判官】 木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−224894(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0217323(US,A1)
【文献】 特開2013−46843(JP,A)
【文献】 特開2007−37804(JP,A)
【文献】 特開2014−33749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を溜める外槽と、
該外槽内に回転可能に設けた洗濯兼脱水槽であるドラムと、
該ドラムを回転駆動するモータと、
前記外槽の下側前方を上方に向かって支持する1本の前側防振部材と、
前記外槽の下側後方を上方に向かって支持する1本の後側防振部材と、を備え、
前記前側防振部材と前記後側防振部材は正面視でハの字に配置された洗濯機において、
前記外槽は、開口部のある槽カバーと背面のある水槽とに分割面で分割可能で、
前記前側防振部材と後側防振部材とが、少なくとも前記外槽と前記ドラムと前記モータとが含まれる系の無負荷時の重心よりも前方に配され、且つ、前記前側防振部材が、少なくとも前記外槽と前記ドラムと前記モータとが含まれる系の最大負荷時の重心と前記外槽の前記分割面との間に配され、且つ、前記後側防振部材が、少なくとも前記無負荷時の重心と前記最大負荷時の重心との間に配されていることを特徴とする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム式洗濯機およびドラム式洗濯乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドラム式洗濯機は、筐体内に水を溜める外槽が防振支持され、その外槽内に洗濯兼脱水槽であるドラムがモータを介して回転自在に支持されている。脱水工程時には、ドラムを高速回転させることにより、そのドラム内に収容された洗濯物の脱水が行われる。このとき、ドラム内の洗濯物に片寄り(アンバランス)が発生すると、遠心力の不釣合いにより加振力が生じる。この加振力により、少なくともドラムと外槽とモータとが含まれる振動系が振動し、振動や騒音をもたらす場合がある。そこで、この種のドラム式洗濯機は、外槽を下方から支持する防振部材を備え、振動系の振動を抑制している。
【0003】
ドラム式洗濯機のようにドラムの回転軸が略水平の洗濯機は、衣類等の洗濯物がドラム内に投入される前と後とで、前記振動系の重心が前後方向に移動する。すなわち、洗濯物や水など外槽が保持する負荷量によって、振動系の重心位置と防振部材の位置関係が変化する。そして、振動系の重心位置が防振部材よりも前方あるいは後側にあるとき、負荷量が大きく、かつ振動系の重心位置と防振部材位置との距離が長いほど、前記負荷量と前記距離との積から成るモーメント力が大きくなり,外槽が傾き易くなる。外槽の傾きが大きくなると、振動状態が変わるだけでなく、外槽と筺体との隙間関係も変わる。その結果、外槽と筺体とが衝突し易い条件も変わることで、負荷量によっては振動や騒音が過大になる場合があり、またそれを防止するための構造や制御が複雑化する場合もある。したがって、振動や騒音が過大となるのを防止するためには、負荷量で外槽が過大に傾くのを防止すること、すなわち負荷量に対する振動系の安定性が必要となる。
【0004】
そこで、従来技術として特許文献1には、「水槽、ドラム、モータ等で構成される被支持部をその重心の前側に1本、後側に2本のサスペンションで支持することにより、安定良く自立して支持することが出来る。また、3本のサスペンションを前後に傾斜させて取り付けることにより、前後方向の振動をよりよく抑えることが出来るようになる」と記載されている。
【0005】
また特許文献2には、「水槽を支持する第1防振部材と第2防振部材との間には、前後方向に関して所定の間隔が開けられている。これにより、水槽は、前後方向に関して第1防振部材と第2防振部材とによって安定的に支持される」と記載され、さらに「第1防振部材と第2防振部材との所定の間隔は、水槽と洗濯槽とが含まれる系の無負荷状態の時の重心、および定格負荷状態のときの重心を含む範囲であることが好ましい。この構成によれば、当該洗濯機の無負荷状態のときと定格負荷状態にて当該洗濯機が運転する時との間にて系の重心が前後方向に移動する場合であっても、第1防振部材と第2防振部材との間に重心が位置するため、系の振動の複雑化を抑制することができる」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−79995号公報
【特許文献2】特開2013−46843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1で開示された技術は、振動系の安定性を向上させるために3本の防振部材で外槽を支持しているが、防振部材が2本の洗濯機と比べて多いため、防振部材のコスト、さらには洗濯機のコストが増加してしまう課題を有していた。したがって、防振部材の数量を増加させることなく、振動系の安定性を向上させる構成としては、上記特許文献1は好ましくない。
【0008】
また上記特許文献2は、前後方向に所定の間隔を隔てて配された2本の防振部材が、最も軽い無負荷時における振動系の重心を前記防振部材の間に含むように設けられていることで、外槽の姿勢変化を防止している。しかしながら、本構成では負荷量による振動系の重心移動量が大きくなるにつれ、2本の防振部材の間隔が広がってしまう。すなわち、最大負荷時における振動系の重心と、無負荷時における振動系の重心よりも後方に配された防振部材との間隔が広がってしまう。その結果、最大負荷時において、2本の防振部材のうち前側に配置された防振部材にかかる荷重が、もう一方の防振部材よりも大きくなり、外槽の前端が下方に傾いてしまう。特に、ドラムの大容量化を図る場合、人の動線がある筺体前方に空間の余裕があることが多いため、ドラムを前後方向に延伸することで、負荷量による振動系の重心移動量が大きくなりやすい。したがって、特許文献2は、大容量ドラムの場合において、負荷量に対する振動系の安定性が十分ではないという課題を有していた。
【0009】
本発明の目的は、大容量のドラムにおいても、防振部材の数量を増加させることなく、洗濯物や水などの負荷量の変化に対して、少なくともドラムと外槽とモータとが含まれる振動系の安定性を向上した洗濯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の洗濯機は、水を溜める外槽と、該外槽内に回転可能に設けた洗濯兼脱水槽であるドラムと、該ドラムを回転駆動するモータと、前記外槽の下側前方を上方に向かって支持する1本の前側防振部材と、前記外槽の下側後方を上方に向かって支持する1本の後側防振部材とを備え、前記前側防振部材と前記後側防振部材は正面視でハの字に配置され、前記外槽は、開口部のある槽カバーと背面のある水槽とに分割面で分割可能で、前記前側防振部材と後側防振部材とが、少なくとも前記外槽と前記ドラムと前記モータとが含まれる系の無負荷時の重心よりも前方に配され、且つ、前記前側防振部材が、少なくとも前記外槽と前記ドラムと前記モータとが含まれる系の最大負荷時の重心と前記外槽の前記分割面との間に配され、且つ、前記後側防振部材が、少なくとも前記無負荷時の重心と前記最大負荷時の重心との間に配されている構成とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前後に間隔を隔てて配置した2本の防振部材は、最大負荷時における振動系の重心とより近い位置に配置できるため、大容量ドラムの場合においても、防振部材の数量を増加させることなく、負荷量に対する振動系の安定性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態例に係るドラム式洗濯機の内部構造を示す右側面図である。(実施例1)
図2】本実施の形態例に係るドラム式洗濯機の内部構造を示す正面図である。(実施例1)
図3】本実施の形態例に係るドラム式洗濯機の主要な要素の位置関係を簡易的に表した模式図である。(実施例1)
図4】本実施の形態例に係るドラム式洗濯機の重心移動について簡易的に表した模式図である。(実施例1)
図5】本実施の形態例に係るドラム式洗濯機の内部構造を示す背面図である。(実施例2)
図6】本実施の形態例に係るドラム式洗濯機の主要な要素の位置関係を簡易的に表した模式図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態例について、適宜図を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
<実施例1>
図1は本実施の形態例におけるドラム式洗濯機の内部構造を示す右側面図、図2はドラム式洗濯機の内部構造を示す正面図である。図2の正面図で、紙面手前方向を前側、紙面奥行き方向を後側として示す。図1のZは、ドラム21及びモータ22の回転軸を表す。
【0015】
図1に示すように、ドラム式洗濯機は、外郭を構成する筐体1の略中央に、洗濯物を出し入れするための投入口1aが設けられており、この投入口1aにはドア2を開閉自在に取り付けてある。筐体1の上部にある操作パネル3は、運転を逐次制御するための制御装置4と電気的に接続されており、運転コースの設定や運転状態の表示を行う。筐体1の内部には、水を溜める外槽23と、衣類を収納するためのドラム21と、ドラム21を回転駆動するためのモータ22が設けられている。筐体1の投入口1a、外槽23の開口部23a、ドラム21の開口部21aは連通しており、ドア2を開くことでドラム21内への洗濯物の出し入れが可能となっている。
【0016】
ドラム21は、開口部21aと背面とを有する略円筒形に形成され、外槽23に内包されている。ドラム21の背面は、シャフト22aを介してモータ22に連結されている。ドラム21は、このモータ22により、左回転(ドラム21の正面から見て反時計回り)と右回転(ドラム21の正面から見て時計回り)の両方向に回転駆動される。ドラム21内周壁には、洗濯物を持ち上げるためのリフタ21bと、脱水のための貫通孔21cが複数設けられている。ドラム21の前端には、円筒状の流体バランサ21dが設けられている。ドラム21の回転軸Zは、略水平、または前側が後側よりも高くなるように傾斜されて設けられている。なお、矢印A(図2参照)で示す脱水回転方向は、最高回転数に上昇させるときの回転方向を基準とし、本実施の形態例では左回転とする。
【0017】
外槽23は、前面と背面を有する略円筒に形成され、開口部23aのある槽カバー23bと、背面のある水槽23cとに、分割面23dで分割可能である。外槽23は、前面の開口部23aが環状のパッキンであるベローズ26で筺体1の投入口1aと接続されており、ドア2を閉めることで水封される。分割面23dは、外槽23の前後方向の中心よりも前方に配されており、後述する前側防振部材24と後側防振部材25が水槽23cに取り付けられた状態で槽カバー23bの取り外しが可能となっている。
【0018】
外槽23の下側には、外槽23の振動を検出するための振動検出手段30が設けられている。振動検出手段30は、電気的に制御装置4と接続されている。振動検出手段30は分割面23dより後方、すなわち水槽23cに設けてあることで、制御装置4との接続を変更することなく、槽カバー23bが取り外し可能となる。なお、振動検出手段30は、制御装置4に近い外槽23の上部に配置しても良く、操作パネル3と近い槽カバー23bに配置しても良い。
【0019】
外槽23の下側には、経路に排水弁13bを有する排水ホース13が排水口13aに接続されている。また、外槽23の正面から見て左側には、給水弁10bと洗剤容器12を経路に有する給水ホース10が接続されており、給水弁10bを開くことで、給水口10aから外槽23内に水の供給が可能となっている。なお、外槽23内の水量は、水位検出手段14によって検出可能となっている。
【0020】
外槽23の上側には、振動低減を目的にウエイト29が設けられている。ウエイト29は、前側防振部材24の上方か、それよりも前に設けられ、槽カバー23bに固定されている。なお、ウエイト29は必ずしも一つである必要はなく、回転軸Zの上側と下側とに分割して設けても良い。また、軽量化により槽カバー23bの取り外しを容易にするために、ウエイト29を水槽23cに設けても良い。
【0021】
外槽23の上側には、外槽23の姿勢を保持するための前吊りばね27と、後吊りばね28が設けられている。前吊りばね27は、一端が外槽23に、もう一端が筺体1に接続され、外槽23を斜め上方に懸架している。後吊りばね28は、一端が外槽23に、もう一端が筺体1に接続され、前吊りばね27と前後方向に関して逆方向に向かって外槽23を懸架している。なお、前吊りばね27と後吊りばね28は、直接外槽23あるいは筺体1と接続されている必要はなく、耐久性を上げるために、潤滑剤などが塗布された部材を介して接続されても良い。
【0022】
外槽23の下部には、外槽23の前端あるいは後端が下方に傾くのを防止するために、外槽23との接続部において、前側防振部材24と後側防振部材25が側面視で所定の間隔を隔てて設けられている。前側防振部材24は、減衰力が発生するダンパ24aと、ばね力が発生する圧縮コイル24bと、回転自在に変形するゴムブッシュ24c(ダンパ24aの上端にも設けられている)と、外槽23に固定された上側ダンパベース24dと、筺体1に固定された下側ダンパベース24eとを備えている。この構成は、後側防振部材25も同様であるため、説明を省略する。前側防振部材24と後側防振部材25は、左右方向の間隔が下端よりも上端の方が狭くなっており、正面視で「ハの字」が描かれるように配置されている。なお、ダンパ24aは、例えば、内封液体の粘性抵抗を利用したオイルダンパや、摺動部の摩擦を利用した摩擦ダンパ、アクチュエータを備えたアクティブダンパなどがある。また、ダンパ24aは、本実施の形態例のようにゴムブッシュ24cを介して上側ダンパベース24d(下側ダンパベース24e)と接続するのではなく、外槽23と直接接続してもよい。
【0023】
ここで図3は、前側防振部材24と後側防振部材25の説明のために、少なくとも外槽23とドラム21とモータ22とウエイト29が含まれる系(以下、振動系と呼ぶ)と、その他主要な要素を簡易的に表したものである。振動系は、外槽23と一体で振動する要素であり、外槽23内に保持される洗濯物や水などの負荷量も含まれる。図3のG0は無負荷時における振動系の重心位置、G1は最大負荷時における振動系の重心位置を表している。
【0024】
無負荷とは、洗濯物と水など外槽23内に保持される負荷量が全く無い状態で、かつ外槽23内に水が全く入っていない状態である。すなわち、無負荷時は振動系の質量と重力の積から成る荷重が最も小さい条件である。なお、無負荷時における重心G0は、モータ22の質量が比較的大きいため、回転軸Z方向に関してドラム21の中心よりも後方に位置する。
【0025】
一方、最大負荷とは、乾いた状態でドラム21内に収納できる洗濯物の最大質量(以下、定格負荷と呼ぶ)がドラム21内に投入され、さらに後述する洗い行程またはすすぎ行程で外槽23内に溜められた水が最大水位となっている状態である。すなわち、最大負荷時は振動系の質量と重力の積から成る荷重が最も大きい条件である。振動系の重心は、無負荷時のG0から負荷量が増加にするにつれ前方に移動して、最大負荷時のG1で最も前方に位置する。これは、負荷自身の重心が回転軸Zに関してドラム21の略中央に位置するためで、負荷量の増加に伴い、モータ22の質量よりも影響が大きくなるためである。このような負荷量の増加に伴う重心移動は、ドラム21の回転軸Zが水平に近いほど、負荷が前に移動し易いため、顕著である。
【0026】
例えば、定格負荷が10kgの場合、洗濯物が水を含んで3〜5倍程度の質量30〜50kgに増加するのに加え、満水時は外槽23内に20〜40kg程度の水が溜められているため、前側防振部材24と後側防振部材25は、約90kgの振動系の質量を支持することになる。
【0027】
ここで、前側防振部材24と後側防振部材25は、共に無負荷時における振動系の重心G0より前方に配置されている。すなわち、後方から、無負荷時における振動系の重心G0、後側防振部材25の中心線L2、前側防振部材24の中心線L1の順に配置されている。これによれば、最も軽い無負荷時における振動系の重心G0を主に後側防振部材25で支持し、逆に最も重い最大負荷時における振動系の荷重負荷G1を前側防振部材24と後側防振部材25の2本で支持するため、振動系の重心移動量が大きい場合においても、安定して外槽23を支持することが出来る。
【0028】
前側防振部材24は、最大負荷時における振動系の重心G1か、それよりも前方に配置するのが望ましい。これによれば、最大負荷時における振動系の重心G1が、前側防振部材24と後側防振部材25の間に位置することになる。前側防振部材24と後側防振部材25の前後方向の中心L3が、無負荷時における振動系の重心G0よりも、最大負荷時における振動系の重心G1に近くなる。したがって、最大負荷時における振動系の安定性をより向上させることが出来る。なお、この構成は無負荷時における振動系の重心G0と前側防振部材24との距離が長くなるが、外槽23を傾かせる力が無負荷時は最も小さいため、その影響は小さい。
【0029】
ここで図4は、前側防振部材24と後側防振部材25とドラム21を用いて、負荷量に伴う振動系の重心移動と、振動系の重心にかかる荷重の大きさを模式的に表したものである。ドラム21の前後方向の略中心には、負荷量による一様荷重Pが掛っており、鉛直下方に荷重F2を発生させている。一方、無負荷時における振動系の重心G0には、鉛直下方に荷重F0が掛っている。負荷量が増加し、一様荷重Pが大きくなると、振動系の重心は、最大負荷時における振動系の重心G1に近づいてき、荷重の大きさも最大のF1に近づいていく。そして、最大荷重F1によって、前側防振部材24あるいは後側防振部材25の縮み量が最大となる。このとき、前側防振部材24と後側防振部材25の距離が近いほど、それらの縮み量の差が小さくなり、外槽23の傾きが小さくなる。逆に、負荷量が小さい時は、前側防振部材24と後側防振部材25の距離が長くても、支持する質量も小さいため、縮み量の差は小さい。したがって、本実施の形態例のように、最大負荷時における振動系の重心G1近傍を、前側防振部材24と後側防振部材25で支持することで、負荷量の増減に対する振動系の安定性を向上できる。
【0030】
また、前側防振部材24は、分割面23dより後方、すなわち水槽23cに設けられている。これによれば、開口部23aのある槽カバー23bに比べて、水槽23cは有底円筒型で強度があるため、安定して最大負荷時における振動系の重心G1を支持することが出来る。
【0031】
一方、後側防振部材25は、矢印A(図2参照)で示すように、ドラム21の脱水回転方向が下向きとなる側に設けられている。これによれば、外槽23が右斜め上方向を長径とする楕円軌道の振動状態(図2の矢印B参照)において、後側防振部材25の伸縮変化量と伸縮速度変化が大きくなるため、効率的に外槽23に減衰を与えて低振動化を図ることが出来る。このような振動状態は、外槽23が左右方向に振動するモードと、上下方向に振動するモードの共振回転数が近い場合に発生し易く、特に、特にバスマット一枚のような少量衣類で大きくなり易い。すなわち、無負荷時における振動系の重心G0近傍が、右方向かつ上方向から左方向かつ下方向に振動することで、図2の矢印Bに示すような楕円軌道となる。したがって、後側防振部材25を無負荷時における振動系の重心G0近傍に設けることで、効率的に振動低減を図ることが出来る。なお、本実施の形態例のようにドラム21の脱水回転方向が左回転の場合は後側防振部材25が正面視で左側となり、脱水回転方向が右回転の場合は後側防振部材25が右側となる。
【0032】
また、前側防振部材24と後側防振部材25は、前吊りばね27と外槽23との接続部よりも後方で、かつ後吊りばね28と外槽23との接続部の前方に配されている。これによれば、最大負荷時における振動系の重心G1が前側防振部材24よりも前方にある場合においても、外槽23の前端あるいは後端が上方に引っ張られるため、振動系の安定性を向上できる。なお、最大負荷時における振動系の安定性をより向上させるためには、前側防振部材24と後側防振部材25を、後吊りばね28と外槽23との接続部よりも後方に配置して、前吊りばね27と後吊りばね28の両方で外槽23の前端を上方に引っ張り上げれば良い。これは、前側防振部材24よりも前方で、外槽23の上部を側面視で「V字」を描くように懸架するものである。
【0033】
上記構成において、その動作を説明する。ドア2を開いてドラム21内に洗濯物を投入し、洗剤容器12内に所定量の洗剤を投入した後、運転を開始させると、まず、洗い工程を実行する。洗い工程において、給水弁10bが開き給水された水は、洗剤容器12および給水ホース10を介して、洗剤と共に外槽23内に入る。この動作を所定時間実行した後、ドラム21が正転、停止、逆転、停止を繰り返す攪拌動作を所定時間実行する。このとき、ドラム21内に収容された洗濯物は、ドラム21内周壁に設けられたリフタ21bによって回転方向に持ち上げられ、持ち上げられた高さ位置から落下する攪拌動作が繰り返されるため、洗濯物にはたたき洗いの作用が働いて洗われる。
【0034】
この動作を所定時間行った後、洗い工程を終了し、脱水工程を実行する。この脱水工程においては、まず排水弁13bが開き、外槽23内の水が排水ホース13を介して機外に排水される。次に、ドラム21を矢印Aの脱水回転方向(本実施例では左回転)に回転させて、所定回転速度(例えば、900r/min)に到達した後に所定時間回転させることで、洗濯物に含まれる水を脱水する。
【0035】
この脱水工程を所定時間行った後、給水弁10bが開き給水され、その水は洗剤容器12および給水ホース10を通り、外槽23内に注水され、すすぎ工程が実施される。このすすぎ工程においては、前述した洗い工程と同様に、正転、休止、反転、休止の動作を繰り返す攪拌動作を所定時間実行する。このとき、洗濯物がドラム21の内周壁に設けられたリフタ21bによって回転方向に持ち上げられ、持ち上げられた高さ位置から落下する攪拌動作が繰り返されるため、洗濯物に含まれる洗剤成分が希釈され、すすぎが行われる。なお、乾燥機能を備えたドラム式洗濯乾燥機の場合は、この後に乾燥工程を実行する。
【0036】
以上のように本実施の形態例においては、前側防振部材24及び後側防振部材25が最も軽い無負荷時における振動系の重心G0よりも前方に配置することで、最大負荷時における振動系の重心G1と前側防振部材24及び後側防振部材25との距離を近づけることが出来るため、大容量ドラムのように、負荷量に伴う振動系の重心移動が大きい場合においても、防振部材の数量を増加させることなく、外槽23の傾きを防止して、負荷量に対する振動系の安定性を向上できる。
【0037】
なお、本実施の形態例においてはドラム式洗濯機について述べたが、乾燥機能の付いたドラム式洗濯乾燥機でも同様の効果が得られる。また、本実施の形態例においては、脱水回転方向を左回転としているが、逆の右回転でもよく、その場合は前側防振部材24が正面視で左側、後側防振部材25が正面視で右側とすることで、同様の効果が得られる。
【0038】
<実施例2>
図5は、第2の実施の形態例におけるドラム式洗濯機の背面の内部構造を示す模式図である。外槽23の下方後側には、モータ50が設けられている。モータ50の前方、すなわち外槽23の右側には、前側防振部材54が設けられており、外槽23の左側には後側防振部材55が設けられている。また、外槽23の背面に設けられたプーリー51は、ドラム21の背面と連結して、ドラム21を回転自在に支持している。モータ50の動力は、ベルト52を介してプーリー51に伝わり、ドラム21が左右方向に回転駆動できる。本実施の形態例では、脱水回転方向は左回転としている。
【0039】
上記構成によれば、後側防振部材55と比べて、前側防振部材54の後方の方が広くなっているため、モータ50を配置するための空間を確保できる。すなわち、モータ50を大きく出来るため、回転数の増加を抑えながら大きな出力を出すことができ、回転数に起因する騒音を抑えることが出来る。
【0040】
なお、本実施の形態例においては、前側防振部材54とモータ50を正面視で右側に配置しているが、脱水回転方向が右回転の場合は、前側防振部材54とモータ50を正面視で左側に配置しても、同様の効果が得られる。
【0041】
<実施例3>
図6は、第3の実施の形態例におけるドラム式洗濯機の上面の内部構造を示す模式図である。図6は、前側防振部材24と後側防振部材25の中間線Xと、それに直交するドラム21の回転軸Zによって、外槽23を上面視でA1、A2、A3及びA4の4つのエリアに分けて示している。外槽23の前端に設けられた前吊りばね60は、ドラム21の回転軸Zに対して後側防振部材25寄りに配置され、外槽23の後端に設けられた後吊りばね61は、ドラム21の回転軸Zに対して前側防振部材24寄りに配置してある。すなわち、エリアA1には後側防振部材25、エリアA2には前吊りばね60、エリアA3には前側防振部材24、そしてエリアA4には後吊りばね61が配されている。なお、他の構成と運転制御は、実施例1と同じであり、同一符号を付して説明を省略する。
【0042】
上記構成によれば、外槽23が下方から支持されていないエリアA2あるいはA4を、前吊りばね60と後吊りばね61とで上方に懸架しているため、外槽23のエリアA2あるいはエリアA4が下方向に傾くのを防止出来る。また、外槽23の上方の空間が最も狭くなるドラム21の回転軸Zの上方を避けて前吊りばね60と後吊りばね61とが配されているため、外槽23の上方の空間が広くなり、外槽23と筺体1との衝突を防止できる。
【0043】
なお、ドラム21の脱水回転方向が逆の場合は、左右対称とすることで、同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0044】
1 筐体
21 ドラム
22 モータ
23 外槽
23b 槽カバー
23c 水槽
23d 分割面
24 前側防振部材
25 後側防振部材
27 前吊りばね
28 後吊りばね
29 ウエイト
図1
図2
図3
図4
図5
図6