(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976044
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】プライ、プライの製造方法及びプライを用いた物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 1/30 20060101AFI20211118BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20211118BHJP
C04B 35/80 20060101ALI20211118BHJP
C04B 41/87 20060101ALI20211118BHJP
F01D 5/28 20060101ALI20211118BHJP
F01D 9/02 20060101ALI20211118BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20211118BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
B28B1/30
B33Y70/00
C04B35/80
C04B41/87 P
F01D5/28
F01D9/02 101
F01D25/00 L
F01D25/00 X
F02C7/00 C
F02C7/00 D
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-139000(P2016-139000)
(22)【出願日】2016年7月14日
(65)【公開番号】特開2017-39635(P2017-39635A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2019年7月1日
(31)【優先権主張番号】14/811,351
(32)【優先日】2015年7月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブ・ジョン・キトルソン
【審査官】
小川 武
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/193565(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/153535(WO,A2)
【文献】
国際公開第2014/058499(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84,41/87
F01D 5/28,9/02,25/00
F02C 7/00
B28B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライ(100)の製造方法であって、当該方法が、
ニアネットシェイプ(102)を有しかつセラミックマトリックス複合材不織材料(104)を含むプライ(100)をプリンティングするステップ
を含んでおり、前記プライ(100)をプリンティングするステップが、
被覆予備含浸トウ(300)を連続フィラメント製造プロセスによってプリンタのプリントベッド上に押出すステップであって、被覆予備含浸トウ(300)が、
被覆セラミックマトリックス複合材繊維、セラミックマトリックス複合材粒子及び炭素微粒子と、
溶剤、樹脂、アルコール又はこれらの混合物と
を含む、ステップと、
被覆予備含浸トウ(300)を連続フィラメント製造プロセスによってプリントベッド上に押出しながら、プリントベッドを加熱することによって、被覆予備含浸トウ(300)を加熱し、被覆予備含浸トウ(300)の加熱によって被覆予備含浸トウ(300)が部分的に硬化される、ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ニアネットシェイプ(102)が、タービン部品(400)の所定の層(108)の形状である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タービン部品(400)が翼形部(402)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記タービン部品(400)がノズル(404)である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
物品の製造方法であって、当該方法が、
第1のニアネットシェイプ(202)を有しかつ第1のセラミックマトリックス複合材不織材料(204)を含む第1のプライ(200)をプリンティングするステップと、
第2のニアネットシェイプ(208)を有しかつ第2のセラミックマトリックス複合材不織材料(210)を含む第2のプライ(206)をプリンティングするステップと、
第2のプライ(206)を第1のプライ(200)に取り付けるステップと、
第1のプライ(200)と第2のプライ(206)を合体固化させるステップと
を含んでおり、
第1のプライ(200)をプリンティングするステップ及び第2のプライ(206)をプリンティングするステップが、
被覆予備含浸トウ(300)を連続フィラメント製造プロセスによってプリンタのプリントベッド上に押出すステップであって、被覆予備含浸トウ(300)が、
被覆セラミックマトリックス複合材繊維、セラミックマトリックス複合材粒子及び炭素微粒子と、
溶剤、樹脂、アルコール又はこれらの混合物と
を含む、ステップと、
被覆予備含浸トウ(300)を連続フィラメント製造プロセスによってプリントベッド上に押出しながら、プリントベッドを加熱することによって、被覆予備含浸トウ(300)を加熱し、被覆予備含浸トウ(300)の加熱によって被覆予備含浸トウ(300)が部分的に硬化される、ステップと
を含む、方法。
【請求項6】
第1のニアネットシェイプ(202)及び第2のニアネットシェイプ(208)が、物品の隣接する所定の層(108)の形状である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記物品がタービン部品(400)である、請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記タービン部品(400)が翼形部(402)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記タービン部品(400)がノズル(404)である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
第1のプライ(200)と第2のプライ(206)を合体固化させるステップが、オートクレーブ処理、焼成、局所的熱処理、誘導加熱又はこれらの組合せからなる群から選択された技術を含む、請求項5乃至請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライ、プライ
の製
造方法
並びにプライから物品を製造する方法に関する。より詳細には、本発明は、プライ、プライ
の製
造方法、並びにニアネットシェイプ
を有しかつセラミックマトリックス複合材不織材料を含むプライから物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、効率及び性能
を向上
させるため絶えず改良されている。これらの
改良には、より高い温度
で及び
さらに過酷な条件下で作動できる能力
が含
まれるが、
それには、このような温度及び条件から
部品を保護するために材料の
改良及び/又はコーティングが必要と
されることが多い。
取り込まれる改良点が多いほど、
追加の課題が
明らかになる。
【0003】
性能及び効率を向上させる1つの
改良は、限定
されるものではないが、シュラウド、タービンストラット、ノズル/ベーン、燃焼ライナ、バケット/ブレード、シュラウドリング、排気ダクト、
オーグメンタライナ
及びジェット排気ノズルなどのガスタービン
部品をセラミックマトリックス複合材(CMC)
から形成すること
である。CMCガスタービン
部品は、CMC材料のプライから形成することができる。
しかし、CMC材料は高価であり、CMC材料のシートをプライ
の所要の形状にペアリングする
際に、
かなりの量のCMCスクラップが
生じてしまう。
さらに、ペアリング処理は、プライに欠陥を生じ
るおそれがあ
り、十分に精密な形状構造を
達成するには複数回のペアリングステップが必要と
される
ことがある。
【発明の概要】
【0004】
ある例示的な実施形態
では、プライ
の製
造方法は、プライをプリンティングするステップを含み、プライは、ニアネットシェイプ
を有しかつセラミックマトリックス複合材不織材料を含む。
【0005】
別の例示的な実施形態
では、物品
の製
造方法は、第1のプライ及び第2のプライをプリンティングするステップを含む。第1のプライは、第1のニアネットシェイプ
を有しかつ第1のセラミックマトリックス複合材不織材料を含み、第2のプライは、第2のニアネットシェイプ
を有しかつ第2のセラミックマトリックス複合材不織材料を含む。本方法は
さらに、第1のプライに第2のプライを取り付けて、第1のプライ
と第2のプライを
合体固化させるステップを含む。
【0006】
別の例示的な実施形態
では、プライは、ニアネットシェイプ
を有しかつセラミックマトリックス複合材不織材料を含み、ニアネットシェイプは、物品の
所定の層である。
【0007】
本発明の他の特徴及び利点は、例証として本発明の原理を示す添付図面
と併せて以下
の詳細な説明
を参照することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本開示の
一実施形態に
係る第1のプライ及び第2のプライの斜視図。
【
図3】本開示の
一実施形態に
よって、第1のプライ上
で第2のプライを直接形成
している途中の第1のプライ及び第2のプライの斜視図。
【
図4】本開示の
一実施形態に
よって、タービンノズルを形成するために取り付けられ
るプライの斜視図。
【
図5】本開示の
一実施形態に
よって、タービンノズルを形成するために取り付けられ
るプライの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面全体を通
して同じ
部材にはできるだけ同じ参照符号
を用
いる。
本願では、例示的なプライ、プライ
の製
造方法
及びプライから物品を製造する方法が提供される。本開示の実施形態は、本明細書で開示される1
以上の
技術的特徴を利用しない方法及び製品と比較して、
コスト効率及び時間効率に優れるプライ
の製造方法並びにプライから
の物品
の製
造方法を提供し、プライ内の何れかの箇所
で所定の繊維
配置経路を
追跡する配向性管理能力を不織繊維に
もたらす。
【0010】
図1を参照すると、プライ100は、ニアネットシェイプ102
を有しかつセラミックマトリックス複合材(CMC)不織材料104
を含む。ニアネットシェイプ102は、物品の
所定の層108である。
所定の層108は、限定
されるものではないが、物品の断面層、物品の湾
曲層、物品の角
度付き層又はこれらの
組合せを
始めとする、任意の好適なトポロジ
ー構造とすることができ、
所定の層108は、
さらに大きな物品の一部を構成する
のに適合
している。
【0011】
セラミックマトリックス複合材不織材料104は、限定
されるものではないが、一方向性テープ106、
ランダム配列の繊維を含むテープ、不連続繊維を含むテープ、円形繊維を含むテープ
又はこれらの
組合せを
始めとする、任意の好適な材料とすることができる。
一実施形態
では、不連続繊維は、限定
されるものではないが、約0.15インチ未満、又は約0.1インチ未満、又は約0.05インチ未満、又は約0.01インチ〜約0.15インチ、又は約0.02インチ〜約0.12インチ、又は約0.05インチ〜約0.1インチの繊維長を
始めとする、任意の好適な繊維長を含む。別の実施形態
では、一方向性テープ106におけ
る繊維同士の
互いの配向は変えることができる。別の実施形態
では、一方向性テープ106におけ
る繊維同士の
互いの配向
は約90度変化する。CMCの
具体例
としては、限定
されるものではないが、SiC、SiN、アルミナ、酸化物
系複合セラミックス
及びこれらの
組合せが挙げられる。
【0012】
プライ100
の製
造方法は、プライ100をプリンティングするステップを含む。
一実施形態
では、プライ100は、プリンティングされ
たままでそれ以上の変更を加えていない状態で、ニアネットシェイプ102を
有する。プライ100をプリンティングするステップは、
被覆予備含浸トウ300(
図3に示す)を
連続フィラメント製造プロセスによって押出すことを含むことができる。別の実施形態
では、連続繊維は、
約0.05インチ
以上、又は
約0.1インチ
以上、又は
約0.15インチ
以上、又は約0.05インチ〜約0.5インチ、又は約0.1インチ〜約0.3インチ、又は約0.15インチ〜約0.25インチの繊維長を
始めとする、任意の好適な繊維長を含む。
【0013】
プライ100をプリンティングするステップは
さらに、
被覆予備含浸トウ300を
連続フィラメント製造プロセスによって押出すために、3次元連続繊維配置プリンタ302(
図3に示す)を使用することを含
んでいてもよい。
一実施形態
では、予備含
浸トウ300は
、プライ100を押出す際に、加熱され
、プライ100
を部分的に硬化
させる。
さらなる実施形態では、押出機或いはプリンタ302のプリントベッドに加熱素子が内蔵される。
【0014】
一実施形態
では、
被覆予備含浸トウ300は、被覆CMC繊維、CMC粒
子及び炭素
微粒子を含む。
被覆予備含浸トウ300は
さらに、溶剤、樹脂、アルコー
ル又はこれらの混合物を含むことができる。CMC粒子は、サブミクロンサイズの粒子とすることができる。別の実施形態
では、CMC粒子は、約1ミクロン
以下、又は約10ミクロン
以下、又は約20ミクロン
以下の最大
寸法を含む。炭素
微粒子は、限定
されるものではないが、元素
状炭素、炭化水素、炭素
含有有機材料
又はこれらの
組合せを含むことができる。元素
状炭素は、1
以上の形態で存在
し得る。
【0015】
図2を参照すると、
一実施形態
では、物品
の製
造方法は、第1のプライ200及び第2のプライ206をプリンティングするステップを含む。第1のプライ200は、第1のニアネットシェイプ202
を有しかつ第1のCMC不織材料204を含む。第1のプライ200は、
被覆予備含浸トウ300を基材
上に直接
押出すことにより、
或いは基材なしでプライをプリンティングすることにより
、プリントすることができる。第1のプライ200は、
さらに処理
するため
基材上に機械的に又は手動
で移送することができる。基材は、限定
されるものではないが、物品表面、中間表面、工具
表面、タービン
部品表面又はこれらの
組合せを
始めとする、任意の好適な物体とすることができる。第2のプライ206は、第2のニアネットシェイプ208
を有しかつ第2のCMC不織材料210を含み、第1のニアネットシェイプ202
を有しかつ第2のニアネットシェイプ208は、物品の隣接した
所定の層108である。
本方法は
さらに、第2のプライ206を第1のプライ200に取り付けて、第1のプライ200
と第2のプライ206を
合体固化させるステップを含む。この方法によって、
任意の数のプライ100を取り付けることができる。第1のプライ200
と第2のプライ206(並び
に追加のプライ100)を
合体固化させるステップは、限定
されるものではないが、オートクレーブ処理、焼成、局所的熱処理、誘導加熱
又はこれらの
組合せを
始めとする、任意の好適な技術を含むことができる。
【0016】
一実施形態
では、本製造方法
は、第1のプライ200及び第2のプライ206を
緻密化するステップ
も含む。
緻密化は、限定
されるものではないが、
溶融含浸又は
気相堆積を
始めとする、任意の好適な技術を含むことができる。
気相堆積は、純ケイ素
、限定
されるものではないが酸化ケイ素を
始めとする任意の好適な酸化物又はこれらの
組合せの堆積を含むことができる。
溶融含浸は、限定
されるものではないが、第1のプライ200及び第2のプライ206
中にケイ素を
溶融させ、ケイ素
を炭素
微粒子と反応させて炭化ケイ素を形成
せしめ、第1のプライ200
と第2のプライ206を
合体固化させることを含むことができる。
【0017】
第2のプライ206は、
被覆予備含浸トウ300を基材上に直接
押出すか、
或いは基材なしでプライをプリンティングすることによって、プリンティングすることができる。
一実施形態
では、第2のプライ206は、
さらに処理するために基材に手動で又は機械的に移送される。別の実施形態
では、第2のプライ206は、
さらに処理するために基材上に配置された第1のプライ200に手動で又は機械的に移送される。
【0018】
図3を参照すると、別の実施形態
では、第1のプライ200のプリンティングと、第2のプライ206を第1のプライ200に取り付けることは、
被覆予備含浸トウ300を第1のプライ200に直接
押出すことにより同時に起こる。別の実施形態
では、
被覆予備含浸トウ300を第1のプライ200上に直接
押出すことは、3次元連続繊維配置プリンタ302の使用を含む。
【0019】
図4及び
図5を参照すると、ニアネットシェイプ102は、タービン
部品400の
所定の層である。タービン
部品は、限定
されるものではないが、シュラウド、タービンストラット、翼形部402、ノズル404(ベーン)、燃焼ライナ、バケット(ブレード)、シュラウドリング、排気ダクト、
オーグメンタライナ、ジェット排気ノズル
又はこれらの
組合せを
始めとする、任意の好適な
部品とすることができる。
一実施形態(
図4)
では、プライ100は、断面トポロジーを有する
所定の層108であり、別の実施形態(
図5)
では、プライ100は、湾曲トポロジーを有する
所定の層108である。
【0020】
好ましい実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の
技術的範囲から逸脱
せずに様々な変更を行うことができ
、本発明の
構成要素を均等物で置き換える
ことは当業者には明らかであろう。
さらに、本発明の本質的な
技術的範囲から逸脱することなく、特定の状況又は
材料を本発明の教示に適合
させるために
数多くの修正を
加えることができる。従って、本発明は、本発明を実施するため
の最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、
特許請求の範囲の技術的範囲内に属する
あらゆる実施形態を包含
する。
【符号の説明】
【0021】
100 プライ
102 ニアネットシェイプ
104 セラミックマトリックス複合材不織材料
300
被覆予備含浸トウ