(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明において、図面に示されるいくつかの図の全体にわたり、同様の符号は同様であるかまたは対応する要素を指す。別途に指定されない限り、「上部」、「下部」、「外側」、「内側」、等のような用語は便宜語であり、限定語と解されるべきではないことも了解される。さらに、ある群が要素の群の少なくとも1つ及びそれらの組合せを含むと説明される場合は必ず、その群は、いかなる数の挙げられた要素も、個別にまたは相互の組合せで、含むことができ、基本的にそれらからなることができ、あるいはそれらかなることができると了解される。同様に、ある群が要素の群の少なくとも1つ及びそれらの組合せからなると説明されている場合は必ず、その群はいかなる数の挙げられた要素も、個別にまたは相互の組合せで、含むことができると了解される。別途に指定されない限り、値の範囲は、挙げられた場合、範囲の上限及び下限のいずれも、またそれらの間のいかなる範囲も、含む。本明細書に用いられるように、名詞は、別途に指定されない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」の対象を指す。本明細書及び図面に開示される様々な特徴がいずれかのまたは全ての組合せで用いられ得ることも了解される。
【0011】
本明細書に用いられるように、単数形及び複数形の、用語「ガラス品」は、それらの最も広い意味において、全部また一部がガラスでつくられているいかなる物体も含めるために用いられる。別途に指定されない限り、全ての組成はモルパーセント(モル%)で表される。熱膨張係数(CTE)は、別途に指定されない限り、10
−7/℃を用いて表され、約20℃から約300℃の温度範囲にかけて測定された値を表す。
【0012】
用語「実質的に」及び「約」は、本明細書において、いかなる量的比較、値、測定値またはその他の表現にも帰することができる本質的な不確定性の度合いを表すために用いられ得ることに注意されたい。これらの用語は、本明細書において、量的表現が、当該主題の基本機能に変化を生じさせることなく言明された基準から変わり得る度合いを表すためにも用いられる。すなわち、例えば、「実質的にP
2O
5を含有していない」ガラスは、P
2O
5が意図的にガラスに添加されていないかまたはバッチ成分に含められていないが、汚染物として極めて少量で存在し得る、ガラスである。
【0013】
図面を全般に、特に
図1を、参照すれば、図示が特定の実施形態を説明する目的のためであり、本開示または本開示に添付される特許請求の範囲を制限することは目的とされていないことが理解されるであろう。図面は必ずしも比例尺で描かれておらず、いくつかの特徴及び図面のいくつかの図は、明解さ及び簡潔さのため、規模が誇張されてあるいは簡略に、示されていることがあり得る。
【0014】
イオン交換可能ガラス及びそれで作製された、例えば合わせガラスのような、ガラス品が本明細書に説明される。ガラスは網目形成成分SiO
2、B
2O
3及びAl
2O
3を含有し、高い固有耐スクラッチ強度を達成するため、三回対称配位B
2O
3を特に高濃度で有している。これらのガラスは酸化アルカリ金属Li
2O、Na
2O及びK
2Oの内の少なくとも1つも含有し、一般的な化学強化ガラスに見られるCTE値に比較して小さいCTE値を有する。本明細書に説明されるガラスは個々にまたは合わせガラスのクラッド層としてフュージョンドローされ得る。CTEがより高いコアガラスと対にされると、クラッド層は追加の圧縮応力を受けるであろうし、この追加圧縮応力はガラスの機械的性能(例えば、耐損傷強度及び耐スクラッチ強度)をさらに向上させる。
【0015】
いくつかの実施形態において、本明細書に説明されるガラスは、スロットドロープロセス及びフュージョンドロープロセスのような、技術上既知のダウンドロープロセスによって形成することができる。フュージョンドロープロセスは薄ガラス板の大規模製造に用いられている産業技術である。フロートプロセスまたはスロットドロープロセスのような、他の平板ガラス製造技術と比較すると、フュージョンドロープロセスは優れた平坦性及び表面品質を有する薄ガラス板をもたらす。この結果、フュージョンドロープロセスは液晶ディスプレイ用の、また、ノートブック、エンタテイメントデバイス、タブレット、ラップトップ、等のような、個人用電子デバイスのためのカバーガラス用の、薄ガラス基板の作製における最も有力な製造技術になっている。
【0016】
フュージョンドロープロセスは、一般にジルコンまたは別の耐火材料でつくられる、「アイソパイプ」として知られる細長い槽にかかる溶融ガラスの流れをともなう。溶融ガラスはアイソパイプの頂部を両側から溢流し、アイソパイプの底部で合流して、完成ガラス板の内部だけがアイソパイプの直接に接触していた、一枚板を形成する。完成ガラス板のいずれの露出表面もドロープロセス中にアイソパイプ材料と接触していないから、ガラスのいずれの外表面も清純品質を有し、以降の仕上げ工程を必要としない。
【0017】
フュージョンドロー可能であるためには、ガラスが十分に高い液相粘度(すなわち、液相温度における溶融ガラスの粘度)を有していなければならない。いくつかの実施形態において、本明細書に説明されるガラスは少なくとも約30キロポアズ(kpoise),別の実施形態では少なくとも約100kpoise、別の実施形態では少なくとも約120kpoiseの液相粘度を有し、また別の実施形態において、これらのガラスは少なくとも約300kpoiseの液相粘度を有する。アルカリドープガラス及び無アルカリガラスが合わせガラスのクラッド層として用いられ、温度に関するコアガラスの粘度挙動がクラッドガラスの粘度挙動とほぼ同じである場合、クラッドガラスの液相粘度は約70kpoise以上とすることができる。
【0018】
従来のフュージョンドローは1基のアイソパイプを用いて達成され、均一なガラス製品が得られている。より複雑な積層フュージョンプロセスは、いずれの面も(すなわち両面が)外層クラッドで囲まれたコアガラス組成を有する合わせガラス板を形成するため、2基のアイソパイプを利用する。積層フュージョンの主要な利点の1つは、クラッドガラスの熱膨張係数がコアガラスの熱膨張係数より小さい場合に生じるCTE差が外層クラッドに圧縮応力を生じさせ、これが完成ガラス製品の強度を高め、いくつかの実施形態においては合わせガラスのクラッドガラスのイオン交換による強化の必要を無くすことである。しかし、本明細書に説明されるガラスはイオン交換可能であるから、積層せずに表面圧縮応力をガラスに付与することができる。
【0019】
したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に説明されるアルカリドープガラス及び無アルカリガラスは、
図1に簡略に示される、合わせガラスを形成するために用いることができる。合わせガラス100は、本明細書に説明されるアルカリドープガラス及び無アルカリガラスで形成されたクラッドガラス120、すなわち「クラッド層」で囲まれたコアガラス110を有する。コアガラス110はクラッド層120のアルカリドープガラス及び無アルカリガラスのCTEより大きいCTEを有する。コアガラスは、いくつかの実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスとすることができる。限定ではない例の1つにおいて、コアガラスは、66.9モル%のSiO
2、10.1モル%のAl
2O
3、0.58モル%のB
2O
3、7.45モル%のNa
2O、8.39モル%のK
2O、5.78モル%のMgO、0.58モル%のCaO、0.2モル%のSnO
2、0.01モル%のZrO
2及び0.01モル%のFe
2O
3の組成を有し、ひずみ点が572℃、アニール点が629℃、軟化点が888℃であり、CTE=95.5×10
−7/℃の、アルカリアルミノケイ酸ガラスである。
【0020】
合わせガラス製品のクラッドガラスとして用いられる場合、本明細書に説明されるガラスはクラッド層に大きな圧縮応力を与えることができる。本明細書に説明される低酸化アルカリ金属/アルカリドープ及び無アルカリのフュージョン形成可能なガラスのCTEは一般に約75×10
−7/℃以下の範囲にあり、いくつかの実施形態においては、約55×10
−7/℃以下の範囲にある。そのようなガラスが、例えば90×10
−7/℃のCTEを有するアルカリアルミノケイ酸ガラス(例えばコーニング社(Corning Incorporated)によって製造されるGorilla(登録商標)ガラス)と対にされる場合、推定されるクラッドガラス内の圧縮応力は下式:
【0024】
で与えられる弾性応力方程式を用いて計算することができ、添字1及び2はそれぞれコアガラス及びクラッドガラスを指し、Eはヤング率、νはポアソン比、tはガラス厚、σは応力であり、e
2−e
1はクラッドガラスとコアガラスの間の熱膨張の差である。クラッドガラス及びコアガラスに対して同じ弾性率及びポアソン比を用いれば、上式はさらに簡単になる。
【0025】
クラッドガラスとコアガラスの間の熱膨張の差によるクラッド層内の圧縮応力を計算するため、応力はクラッド及びコアのより軟らかい方のガラスのひずみ点より下で定まると仮定される。クラッド層内の応力は上記仮定及び上式を用いて推定することができる。CTEが約30×10
−7/℃の代表的なディスプレイ様クラッドガラス及びCTEが90×10
−7/℃のアルカリアルミノケイ酸コアガラスに対し、総厚が0.5〜1.0mmの範囲にあり、クラッドガラス厚が10〜100μmであれば、クラッドガラスの圧縮応力は約200MPaから約315MPaの範囲にあると推定される。いくつかの実施形態において、本明細書に説明されるガラスは約40×10
−7/℃より小さく、いくつかの実施形態では約35×10
−7/℃より小さい、熱膨張係数を有する。これらのガラスに対し、クラッド層の圧縮応力は少なくとも約30MPa、別の実施形態では少なくとも約40MPa、また別の実施形態では、少なくとも約80MPaになるであろう。
【0026】
本明細書に説明されるガラスは特に小さい熱膨張係数を有する。いくつかの実施形態において、ガラスのCTEは約40×10
−7/℃より小さく、別の実施形態では約35×10
−7/℃でより小さい。より大きいCTEを有するコアガラスと対にされると、本明細書に説明されるガラスは完成合わせガラス製品のクラッド層内に高レベルの圧縮応力を与える。これは合わせガラス製品の強度を高める。本明細書に開示されるガラスを合わせガラスのクラッド層に用いることにより、少なくとも約30MPa、別の実施形態では少なくとも約40MPa、また別の実施形態では、少なくとも約80MPaの室温圧縮応力が達成され得る。クラッド層として用いられる場合、本明細書に説明されるガラスの液相粘度要件は低められ得る。コアガラスの温度に関する粘度挙動がクラッドガラスの温度に関する粘度挙動とほぼ同じである(すなわち、整合されている)実施形態において、クラッドガラスの液相粘度は約70kpoise以上とすることができる。
【0027】
いくつかの実施形態において、本クラッドガラス組成は他の市販フュージョンドローガラスよりかなり小さいヤング率値及び剪断弾性率値を有する。いくつかの実施形態において、ヤング率は約70ギガパスカル(GPa)より小さく、また別の実施形態においては約65GPaより小さい。小さい弾性率はこれらのガラスに高レベルの固有耐損傷強度を与える。
【0028】
いくつかの実施形態において、本明細書に説明されるガラスは、約50モル%から約70モル%のSiO
2(すなわち50モル%≦SiO
2≦70モル%)、約5モル%から約12モル%のAl
2O
3(すなわち5モル%≦Al
2O
3≦12モル%)、約5モル%から約35モル%のB
2O
3(すなわち5モル%≦B
2O
3≦35モル%)、1モル%≦Li
2O+Na
2O+K
2O≦15モル%として、Li
2O、Na
2O及びK
2Oの内の少なくとも1つ、約5モル%までのMgO(すなわち0モル%≦MgO≦5モル%)、約5モル%までのCaO(すなわち0モル%≦CaO≦5モル%)、及び約2モル%までのSrO(すなわち0モル%≦SrO≦2モル%)から基本的になるかまたはこれらを含有する。いくつかの実施形態において、4モル%≦MgO+CaO+SrO+Li
2O+Na
2O+K
2O≦Al
2O
3+4モル%であり、いくつかの実施形態において、4モル%≦B
2O
3−(MgO+CaO+SrO+Li
2O+Na
2O+K
2O−Al
2O
3)≦35モル%である。いくつかの実施形態において、本ガラスはP
2O
5及び/またはアルカリ金属酸化物修飾成分を実質的に含有していない、すなわち、0モル%を含有する。
【0029】
ガラスはさらに、約0.5モル%までのFe
2O
3(すなわち0モル%≦Fe
2O
3≦0.5モル%)、約0.5モル%までのZrO
2(すなわち0モル%≦ZrO
2≦0.5モル%)及び、必要に応じて、SnO
2、CeO
2、As
2O
3、Sb
2O
3、Cl
−、F
−、等のような、少なくとも1つの清澄剤を含有することができる。少なくとも1つの清澄剤は、いくつかの実施形態において、約0.5モル%までのSnO
2(すなわち0モル%≦SnO
2≦0.5モル%)、約0.7モル%までのCeO
2(すなわち0モル%≦CeO
2≦0.7モル%)、約0.5モル%までのAs
2O
3(すなわち0モル%≦As
2O
3≦0.5モル%)及び約0.5モル%までのSb
2O
3(すなわち0モル%≦Sb
2O
3≦0.5モル%)を含有することができる。
【0030】
特定の実施形態において、ガラスは、約62モル%から約68モル%のSiO
2(すなわち62モル%≦SiO
2≦68モル%)、約6モル%から約10モル%のAl
2O
3(すなわち6モル%≦Al
2O
3≦10モル%)、約6モル%から約20モル%のB
2O
3(すなわち6モル%≦B
2O
3≦20モル%)、6モル%≦Li
2O+Na
2O+K
2O≦13モル%として、Li
2O、Na
2O及びK
2Oの内の少なくとも1つ、約4モル%までのMgO(すなわち0モル%≦MgO≦4モル%)、約4モル%までのCaO(すなわち0モル%≦CaO≦4モル%)、及び約1モル%までのSrO(すなわち0モル%≦SrO≦1モル%)から基本的になるかまたはこれらを含有する。いくつかの実施形態において、本明細書に説明されるガラス内の、MgO、CaO、SrO、Li
2O、Na
2O及びK
2Oの総量は約4モル%以上で、4モル%+ガラス内に存在するAl
2O
3の量以下(すなわち、4モル%≦MgO+CaO+SrO+Li
2O+Na
2O+K
2O≦Al
2O
3+4モル%)である。いくつかの実施形態において、4モル%≦B
2O
3−(MgO+CaO+SrO+Li
2O+Na
2O+K
2O−Al
2O
3)≦20モル%である。いくつかの実施形態において、ガラスはP
2O
5及び/またはアルカリ金属酸化物修飾成分を実質的に含有していない、すなわち、0モル%を含有する。
【0031】
ガラスはさらに、約0.5モル%までのZrO
2(すなわち0モル%≦ZrO
2≦0.5モル%)、約0.5モル%までのFe
2O
3(すなわち0モル%≦Fe
2O
3≦0.5モル%)及び、SnO
2、CeO
2、As
2O
3、Sb
2O
3、Cl
−、F
−、等のような、少なくとも1つの清澄剤を含有することができる。少なくとも1つの清澄剤には、いくつかの実施形態において、約0.5モル%までのSnO
2(すなわち、0モル%≦SnO
2≦0.5モル%)、約0.7モル%までのCeO
2(すなわち、0モル%≦CeO
2≦0.7モル%)、約0.5モル%までのAs
2O
3(すなわち0モル%≦As
2O
3≦0.5モル%)及び約0.5モル%までのSb
2O
3(すなわち0モル%≦Sb
2O
3≦0.5モル%)を含めることができる。
【0032】
これらのガラスの組成の限定ではない実施例が表1に挙げられる。これらのガラスの酸化物成分のそれぞれは何らかの機能を提供する。例えば、シリカ(SiO
2)は、基本的ガラス形成酸化物であり、溶融ガラスに対する中枢網目構造を形成する。純SiO
2は小さいCTEを有し、無アルカリ金属である。しかし、その極めて高い融解温度により、純SiO
2はフュージョンドロープロセスに適合しない。粘度曲線もかなり高すぎて合わせガラス構造のいかなるコアガラスにも整合しない。いくつかの実施形態において、本明細書に説明されるガラス内のSiO
2の量は約60モル%から約70モル%の範囲にある。別の実施形態において、SiO
2濃度は約62モル%から約68モル%の範囲にある。
【0033】
シリカに加えて、本明細書に説明されるガラスは、安定なガラス形成、小さいCTE、小さいヤング率及び小さい剪断弾性率を達成するため、及び融解及び/または成形を容易にするため、網目形成成分Al
2O
3及びB
2O
3を含有する。これらの3つの網目形成の全てを適切な濃度で混合することにより、安定なバルクガラス形成を達成し、同時に、CTE及び弾性率を大きくするように作用する、アルカリ酸化物またはアルカリ土類酸化物のような網目修飾成分の必要を最小限に抑えることが可能である。SiO
2と同様に、Al
2O
3はガラス網目構造への剛性付与に寄与する。アルミナはガラス内に四回対称配位または五回対称配位で存在し得る。いくつかの実施形態において、本明細書に説明されるガラスは約モル5%から約12モル%のAl
2O
3、特定の実施形態においては約6%から約10モル%のAl
2O
3を含有する。
【0034】
酸化ホウ素(B
2O
3)も、粘度を低め、したがってガラスを融解及び成形できる能力を向上させるために用いられるガラス形成酸化物である。B
2O
3はガラス網目内に三回対称配位または四回対称配位で存在し得る。三回対称配位B
2O
3はヤング率及び剪断弾性率を下げ、したがってガラスの固有耐損傷強度を向上させるに最も有効な酸化物である。したがって、本明細書に説明されるガラスは、いくつかの実施形態において、約5モル%から約35モル%までのB
2O
3、別の実施形態においては約6モル%から約20モル%のB
2O
3を含有する。
【0035】
アルカリ土類酸化物(MgO、CaO及びSrO)も、B
2O
3と同様に、ガラスの融解挙動を向上させる。しかし、これらはCTEとヤング率及び剪断弾性率を大きくするようにも作用する。いくつかの実施形態において、本明細書に説明されるガラスは、約5モル%までのMgO、約5モル%までのCaO及び約2モル%までのSrOを含有する。別の実施形態において、これらのガラスは、約4モル%までのMgO、約2モル%から約4モル%までのCaO及び約1モル%までのSrOを含有することができる。
【0036】
アルカリ酸化物Li
2O、Na
2O及びK
2Oはイオン交換によるガラスの化学強化を達成するために用いられる。いくつかの実施形態において、ガラスは、例えばKNO
3が入っている塩浴内でカリウムと交換され得るNa
2Oを含む。本明細書に説明されるガラスに対し、1モル%≦Li
2O+Na
2O+K
2O≦15モル%であり、いくつかの実施形態では6モル%≦Li
2O+Na
2O+K
2O≦13モル%である。いくつかの実施形態において、1モル%≦Na
2O≦15モル%であり、別の実施形態では6モル%≦Na
2O≦13モル%であり、いくつかの実施形態において、ガラスはLi
2O及びK
2Oを実質的に含有していない、すなわち0モル%のLi
2O及びK
2Oを含有する。別の実施形態において、1モル%≦Li
2O≦15モル%であり、いくつかの実施形態では6モル%≦Li
2O≦13モル%である。別の実施形態において、1モル%≦K
2O≦15モル%であり、いくつかの実施形態では6モル%≦K
2O≦13モル%である。
【0037】
ガラス内のB
2O
3の大多数が三回対称配位状態にあり、したがって高い固有耐スクラッチ強度が得られることを保証するためには、4モル%≦MgO+CaO+SrO+Li
2O+Na
2O+K
2O≦Al
2O
3+4モル%である。いくつかの実施形態において、4モル%≦B
2O
3−(MgO+CaO+SrO+Li
2O+Na
2O+K
2O−Al
2O
3)≦35モル%である。別の実施形態においては4モル%≦B
2O
3−(MgO+CaO+SrO+Li
2O+Na
2O+K
2O−Al
2O
3)≦20モル%である。
【0038】
ガラスは、融解中の気体包有物の除去を補助するため、低濃度の、SnO
2、CeO
2、As
2O
3、Sb
2O
3、Cl
−、F
−、等のような少なくとも1つの清澄剤も含有することができる。いくつかの実施形態において、ガラスは、約0.5モル%までのSnO
2、約0.7モル%までのCeO
2、約0.5モル%までのAs
2O
3及び/または約0.5モル%までのSb
2O
3を含有することができる。
【0039】
融解炉のジルコニアベース耐火材料との高温ガラスの接触により、少量のZrO
2も導入され得る。したがって、ガラス内のZrO
2レベルの監視は時間の経過にともなう融解槽減耗率の判定に重要であり得る。ガラスは、いくつかの実施形態において、約0.5モル%までのZrO
2を含有し得る。ガラスはさらに低濃度のFe
2O
3を、この材料はバッチ材料内の普遍的な不純物であるから、含有し得る。いくつかの実施形態において、ガラスは約0.5モル%までのFe
2O
3を含有し得る。
【0040】
本明細書に説明されるガラスの組成の限定ではない実施例が表1に挙げられている。表2は、表1に挙げられている実施例の、選ばれた物理特性(ひずみ、アニール点及び軟化点、密度、CTE、液相温度、弾性率、屈折率及び光弾性係数(SOC))を挙げている。
【0043】
いくつかの態様において、本明細書に説明されるガラスはイオン交換可能である。すなわち、これらのガラスに存在する陽イオン−一般には一価のアルカリ金属陽イオン−が、同じ原子価または酸化状態を有する、より大きな陽イオン−一般には一価のアルカリ金属陽イオンであるが、Ag
+またはTl
+のような別の陽イオンのこともある−と交換される。より小さい陽イオンのより大きい陽イオンとの交換は圧縮状態に、すなわち圧縮応力CS下に、ある表面層を生じさせる。この層はガラスの表面から内部またはバルク内に層深さDOLまで延びる。ガラスの表面層内の圧縮応力はガラスの内部または内領域の引張応力、すなわち中央張力CTと釣り合わされる。圧縮応力及び層深さは技術上既知の手段を用いて測定される。そのような手段には、株式会社ルケオ(Luceo Co., Ltd.)(日本国東京)によって製造されたFSM−6000、等のような市販の計測器を用いる表面応力の測定(FSM)があるが、これには限定されず、また圧縮応力及び層深さの測定は、名称を「化学強化平ガラスに対する標準仕様(Standard Specification for Chemically Strengthened Flat Glass)」とする、ASTM1422C−99及びASTM1279.19779「アニール、熱強化及び十分に強化された平ガラスにおけるエッジ及び表面の応力の非破壊光弾性測定のための標準試験方法(Standard Test Method for Non-Destructive Photoelastic Measurement of Edge and Surface Stresses in Annealed, Heat-Strengthened, and Fully-Tempered Flat Glass)」に説明されている。これらの内容はそれぞれの全体が本明細書に参照として含められる。表面応力測定は、ガラスの応力誘起複屈折に関係する、光弾性係数(SOC)の正確な測定に依存する。ひるがえって、SOCは、名称を「ガラスの光弾性係数の測定のための標準試験方法(Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient)」とする、ASTM標準C770−98(2008
)にいずれもが説明されているファイバ及び4点曲げ法、及びバルクシリンダー法のような、技術上既知の方法によって測定される。このASTM標準の内容はその全体が本明細書に参照として含められる。表1に挙げられたガラス組成に対して決定されたSOC値は表2に報告されている。
【0044】
限定ではない特定の実施形態において、イオン交換は、硝酸カリウム(KNO
3)をかなり含み、必要に応じて少量の硝酸ナトリウム(NaNO
3)を含む、溶融塩浴にガラス品を浸漬することで実施される。塩浴内のガラスは約410℃の温度にあり、ガラスは約16時間かけてイオン交換される。上に説明した以外のアルカリ塩(例えば、塩化物、硫酸塩、等)、塩浴温度及びイオン交換時間を、所望のレベルの圧縮応力及び表面圧縮層深さ(層深さ)を達成するために用いることができる。同様に、イオン交換はガラス内のNa
+イオンに対する塩浴からのK
+イオンの交換に限定されない。例えば、ナトリウム塩を含む溶融塩浴にリチウム含有ガラスを浸漬することでリチウムイオンに対するナトリウムイオン交換を達成することができ、カリウム塩を含む溶融塩浴にリチウム含有ガラスを浸漬することでリチウムイオンに対するカリウムイオン交換を達成することができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、本明細書に説明されるガラスはイオン交換され、ガラスの表面から層深さまで延びる圧縮層を有する。いくつかの実施形態において、圧縮層は少なくとも約220メガパスカル(MPa)の圧縮応力の下にあり、少なくとも約8ミクロン(μm)の層深さDOLまで延びる。別の実施形態において、圧縮応力は少なくとも約400MPaであり、層深さは少なくとも約30μmである。表3は、表1に挙げられた組成を有するガラスについて、KNO
3溶融塩浴内の410℃で16時間のイオン交換後に測定された圧縮応力及び層深さを挙げている。表3はガラスのそれぞれのNa
2O含有量も挙げている。ナトリウム含有量が少ないガラス(実施例1〜3)ではイオン交換がほとんどまたは全くおこらなかったが、ナトリウム含有量が多いガラス(実施例8〜10)は良好なイオン交換性能のために最適化されていて、より大きな圧縮応力及びより深い層深さを示した。最良の総体的な耐損傷強度は組成空間の中間(例えば、実施例5〜7)に見られた。
【0047】
イオン交換による化学強化と組み合わされた大量のホウ素の存在は高レベルの本質的なまたは「固有」の耐スクラッチ強度を提供する。耐スクラッチ強度はヌープスクラッチ発生閾値試験によって決定される。ヌープスクラッチ発生閾値試験では機械的テスターが、横方向クラック、すなわち、元のスクラッチ/溝の幅の2倍より大きい持続クラックの発生点を決定するため、高められていく荷重でガラスにスクラッチが入れられる、ヌープダイアモンドを支持する。この横方向クラック発生点が「ヌープスクラッチ発生閾値」と定義される。イオン交換されると、本明細書に説明されるガラスは約15N(ニュートン)の最小ヌープスクラッチ発生閾値を有する。いくつかの実施形態において、ヌープスクラッチ発生閾値は少なくとも約10Nであり、別の実施形態では少なくとも約15N、別の実施形態では少なくとも約30N、また別の実施形態では少なくとも約40Nである。
【0048】
表1に挙げられたガラスについてのヌープスクラッチ発生閾値が
図2にプロットされている。溶融KNO
3塩浴内の410℃で16時間のガラスのイオン交換後に圧入破壊閾値を決定した。組成5及び7(表1参照)は、測定装置で決定することができた最大閾値(40N)を上回るヌープスクラッチ閾値を示した。
【0049】
本明細書に説明されるガラスに比較して、他のアルカリ土類ホウケイ酸ガラス(コーニング社によって製造されたEagle XG(登録商標)ガラス)は8〜10Nのヌープスクラッチ発生閾値を示し、イオン交換アルカリアルミノケイ酸ガラス(コーニング社によって製造された、Gorilla(登録商標)ガラス及びGorillaガラス3)はそれぞれ、3.9〜4.9N及び9.8〜12Nのヌープスクラッチ発生閾値を示す。
【0050】
本明細書に説明されるイオン交換ガラスは、イオン交換ガラスのビッカースクラック起点発生閾値によって特徴が表され得る、ある大きさの固有耐損傷強度(IDR)も有する。いくつかの実施形態において、イオン交換ガラスは少なくとも約10N、別の実施形態では少なくとも約15N、別の実施形態では少なくとも約30N、また別の実施形態では少なくとも約40Nのビッカースクラック起点発生閾値を有する。本明細書に説明されるビッカースクラック起点発生閾値測定は、ガラス表面に圧入荷重を0.2mm/分の速度で加えていき、次いで抜いていくことによって実施される。最大圧入荷重は10秒間維持される。クラック起点発生閾値は10回の圧入の内の50%で圧痕のコーナーから発しているラジアル/メジアンクラックが1つでも示される圧入荷重において定義される。最大荷重は与えられたガラス組成に対して閾値の定義が満たされるまで増加される。圧入測定は50%の相対湿度において室温で実施される。
【0051】
表1に挙げられたガラスについてのビッカース圧入破壊閾値が
図3にプロットされている。溶融KNO
3塩浴内の410℃で26時間のガラスのイオン交換後に圧入破壊閾値を決定した。
【0052】
これらのガラスによって示される高いスクラッチ発生閾値及び圧入破壊閾値はガラス組成の化学的性質及びイオン交換によって得られる圧縮応力層に帰因させることができる。本明細書に説明されるガラス組成は、完全に結合された(すなわち、非架橋酸素が無い)網目を提供し、高レベルの三回対称配位ホウ素を達成するように、設計されている。三回対称配位ホウ素はより大きく開いた構造をガラスに与え、よって圧入荷重またはスクラッチ荷重の下でのガラスの可塑性緻密化を可能にする。この可塑性緻密化は、普通であればクラックを開始するために用いられるであろう、外部荷重からのエネルギーを吸収する。イオン交換によって形成される圧縮応力層の付加は、ガラスに損傷を与えるには打ち勝たなければならない、追加のバリアをつくりだす。これらの2つの効果の組合せはこれらのガラスに並外れて高い耐損傷強度を与える。
【0053】
本明細書に説明される合わせガラスの作製方法も提供される。方法は、溶融コアガラスを提供する工程及び溶融コアガラスをフュージョンドローして、コアガラスを形成する工程、溶融クラッドガラスを提供する工程、並びに溶融クラッドガラスをフュージョンドローして、コアガラスを囲むクラッドガラスを形成する工程、を有してなり、コアガラスはクラッドガラスの熱膨張係数より大きい熱膨張係数を有する。コアガラスは、いくつかの実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスとすることができる。クラッドガラスは、約50モル%から約70モル%のSiO
2、約5モル%から約12モル%Al
2O
3の、約5モル%から約35モル%のB
2O
3、1モル%≦Li
2O+Na
2O+K
2O≦15モル%として、Li
2O、Na
2O及びK
2Oの内の少なくとも1つ、約5モル%までのMgO、約5モル%までのCaO、及び約2モル%までのSrOを含有する。いくつかの実施形態において、クラッドガラスは、約62モル%から約68モル%のSiO
2、約6モル%から約10モル%のAl
2O
3、約6モル%から約20モル%のB
2O
3、約4モル%までのMgO、約4モル%までのCaO、約1モル%までのSrO及び、必要に応じて、少なくとも1つの清澄剤を含有し、1モル%≦Li
2O+Na
2O+K
2O≦13モル%である。クラッドガラス層は少なくとも約30MPa、別の実施形態では少なくとも40MPa、また別の実施形態では少なくとも約80MPa、の圧縮応力下にある。
【0054】
説明の目的のために代表的な実施形態を述べたが、上記説明は本開示または添付される特許請求項の範囲への限定と見なされるべきではない。したがって、当業者には本開示または添付される特許請求項の精神及び範囲を逸脱しない様々な改変、翻案及び代替が思い浮かび得る。