特許第6976058号(P6976058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6976058免疫療法のための化学療法薬耐性T細胞を工学的に作製する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976058
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】免疫療法のための化学療法薬耐性T細胞を工学的に作製する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20211118BHJP
   A61K 31/7076 20060101ALI20211118BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20211118BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20211118BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20211118BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20211118BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   C12N5/10ZNA
   A61K31/7076
   A61K35/17 Z
   A61P35/00
   A61P35/02
   C12N5/0783
   C12N15/55
【請求項の数】25
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2016-533125(P2016-533125)
(86)(22)【出願日】2014年11月21日
(65)【公表番号】特表2016-538861(P2016-538861A)
(43)【公表日】2016年12月15日
(86)【国際出願番号】EP2014075317
(87)【国際公開番号】WO2015075195
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2017年10月27日
【審判番号】不服2019-14646(P2019-14646/J1)
【審判請求日】2019年11月1日
(31)【優先権主張番号】61/907,874
(32)【優先日】2013年11月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】PA201470362
(32)【優先日】2014年6月17日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】512213549
【氏名又は名称】セレクティス
【氏名又は名称原語表記】CELLECTIS
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・ヴァルトン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・デュシャトー
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィッド・スールダイブ
【合議体】
【審判長】 森井 隆信
【審判官】 平林 由利子
【審判官】 中島 庸子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/176915(WO,A1)
【文献】 Blood,2013年11月15日,Vol.122,No.1661
【文献】 Biochemical Pharmacology,2003年,Vol.65, pp.237−247
【文献】 Cancer Research,1999年,Vol.59,pp.5956−5963
【文献】 Scand. J. Immunol.,2000年,Vol.51,pp.626−633
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
CAPlus/MEDLINE/BIOSIS/REGISTRY/WPIDS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
Uniprot/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリン類似体薬物に対して耐性であるT細胞をエクスビボで作製する方法であって、
(a)T細胞を提供する工程、
(b)前記T細胞に、デオキシシチジンキナーゼ活性を有する酵素(dcK - EC 2.7.1.74)を発現する遺伝子を特異的に標的とする低頻度切断型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列をトランスフェクトする工程、
(c)前記エンドヌクレアーゼを前記T細胞内に発現させて、前記dcK遺伝子の標的不活性化を得る工程、
(d)任意選択で前記プリン類似体薬物の存在下で、工程c)において得られる工学的に作製されたT細胞を増殖させる工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記T細胞が、初代細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記T細胞が、CD8+細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記T細胞が、TIL(腫瘍浸潤リンパ球)である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記T細胞が、癌と診断される患者を起源とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記T細胞が、ドナーを起源とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記T細胞を、TCRアルファ又はTCRベータをコードするその遺伝子において更に不活性化して同種抗原の認識を防止する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記低頻度切断型エンドヌクレアーゼが、TALE-ヌクレアーゼである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
TALE-ヌクレアーゼのdCK遺伝子不活性化が、配列番号63又は配列番号64のTALE-ヌクレアーゼを使用することにより実施され、dCK標的配列が、配列番号62である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記工学的に作製された細胞を、インビトロで増殖させる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
キメラ抗原受容体を前記T細胞において発現させる工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記キメラ抗原受容体が、CD19+又はCD123+である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
免疫チェックポイント遺伝子を不活性化させる工程を更に含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記プリン類似体薬物が、クロファラビン又はフルダラビンである、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
プリン類似体薬物に対して耐性であり、低頻度切断型エンドヌクレアーゼを使用することにより不活性化した薬物感受性化遺伝子dCKを有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法により得られる単離T細胞
【請求項16】
T細胞受容体成分をコードする少なくとも1つの破壊された遺伝子を含み、デオキシシチジンキナーゼ活性を有する酵素(dcK - EC 2.7.1.74)を発現する遺伝子又はヒトヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子(Genbank:M26434.1)が低頻度切断型エンドヌクレアーゼを使用することにより不活性化された、プリン類似体に対して耐性である単離T細胞。
【請求項17】
TCR不活性化が、低頻度切断型エンドヌクレアーゼにより実施される、請求項16に記載の単離T細胞。
【請求項18】
前記低頻度切断型エンドヌクレアーゼが、TALE-ヌクレアーゼである、請求項15又は17に記載の単離T細胞。
【請求項19】
低頻度切断型エンドヌクレアーゼを使用することにより不活性化した薬物感受性化遺伝子dCKを有し、抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を賦与されている、プリン類似体に対して耐性である単離T細胞。
【請求項20】
前記CARが、CD19+細胞又はCD123+細胞を標的とする、請求項19に記載の単離T細胞。
【請求項21】
医薬としてのその使用のための、請求項15から20のいずれか一項に記載の単離T細胞であって、キメラ抗原受容体(CAR)の遺伝子が、前記単離T細胞に導入されており、前記T細胞が同種である場合、前記T細胞におけるT細胞受容体成分をコードする遺伝子の少なくとも1つが破壊されている、単離T細胞
【請求項22】
プリン類似体薬物と組み合わせて使用するための、請求項15から21のいずれか一項に記載の単離T細胞であって、キメラ抗原受容体(CAR)の遺伝子が、前記単離T細胞に導入されており、前記T細胞が同種である場合、前記T細胞におけるT細胞受容体成分をコードする遺伝子の少なくとも1つが破壊されている、単離T細胞
【請求項23】
癌の治療としてのその使用のための、請求項15から22のいずれか一項に記載の単離T細胞であって、キメラ抗原受容体(CAR)の遺伝子が、前記単離T細胞に導入されており、前記T細胞が同種である場合、前記T細胞におけるT細胞受容体成分をコードする遺伝子の少なくとも1つが破壊されている、単離T細胞
【請求項24】
前記癌が、急性リンパ芽球性白血病(ALL)又は筋萎縮性骨髄腫白血病(AML)である、請求項23に記載の単離T細胞。
【請求項25】
請求項15から24のいずれか一項に記載の少なくとも1つの単離T細胞を含む医薬組成物であって、キメラ抗原受容体(CAR)の遺伝子が、前記単離T細胞に導入されており、前記T細胞が同種である場合、前記T細胞におけるT細胞受容体成分をコードする遺伝子の少なくとも1つが破壊されている、医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌患者を治療するための、化学療法と併用する免疫療法のための「既製」同種治療細胞("off-the-shelf" allogeneic therapeutic cell)の使用に関する。特に、本発明者らは、化学療法剤に対して耐性である同種T細胞を工学的に作製する(engineering)方法を開発した。この戦略により与えられる治療的利益は、化学療法と免疫療法との間の相乗効果により増強されるはずである。特に、本発明は、T細胞受容体成分をコードする少なくとも1つの遺伝子を不活性化させること、及び前記T細胞を改変して薬物耐性を付与することにより、T細胞を改変するための方法に関する。本発明は、癌を治療するための標準的で低価格な養子免疫療法戦略への道を開く。
【背景技術】
【0002】
エクスビボで生成された自家抗原特異的T細胞の移植を伴う養子免疫療法は、癌を治療する有望な戦略である。養子免疫療法のために使用されるT細胞は、抗原特異的T細胞の増殖又は遺伝子工学を通じたT細胞の再指向により生成できる(Park、Rosenbergら 2011)。ウイルス抗原特異的T細胞の移植は、移植関連ウイルス感染症及びまれなウイルス関連悪性疾患の治療のために使用される、よく確立された処置である。同様に、腫瘍特異的T細胞の単離及び移植により、黒色腫の治療に成功することが示されてきた。T細胞における新規の特異性の生成は、トランスジェニックT細胞受容体又はキメラ抗原受容体(CAR)の遺伝子導入を通じて成功してきた。CARは、単一の融合分子における1つ又は複数のシグナル伝達ドメインと関連付けられる標的化部分からなる合成受容体である。CARは、リンパ腫及び固形腫瘍を含む様々な悪性疾患由来の腫瘍細胞の表面に発現する抗原に対してT細胞を再指向することを可能にすることに成功した(Jena、Dottiら 2010)。
【0003】
養子免疫療法を使用した患者の治療のための現行のプロトコルは、自己細胞移植に基づく。このアプローチでは、Tリンパ球が患者から回収され、エクスビボで遺伝的に改変されるか又は選択され、必要に応じて細胞数を増幅するためにインビトロで培養され、最後に患者内に注入される。自己療法は、実用化に対して実質的な技術及び供給の面で困難に直面し、それらの生成には高価な専用施設と専門家を必要とし、それらは患者の診断後短時間で生成されなければならず、多くの場合、患者の前処置は免疫機能の低下をもたらし、結果として患者のリンパ球は機能が不十分になり、非常に少数しか存在しなくなることがあり得る。これらの困難のために、各患者の自己細胞調製は事実上新たな生成物であり、有効性及び安全性において実質的な変動をもたらす。
【0004】
理想的には、同種治療細胞があらかじめ製造され、詳細に特徴付けられ、患者への即時投与のために利用可能であり得る、標準化された治療法を使用することが望まれる。しかしながら、同種T細胞は、同種に属するが、遺伝的に類似しない個体から得られる。したがって、同種細胞の内因性TCR特異性は宿主組織を外来性と認識し、深刻な組織の損傷及び死を引き起こし得る移植片対宿主病(GvHD)をもたらす。T細胞受容体(TCR)は、抗原の提示に応答してT細胞の活性化に関与する細胞表面受容体である。免疫グロブリン分子に関しては、アルファ及びベータ鎖の可変領域がV(D)J組換えにより生成され、T細胞の集団内に抗原特異性の高度の多様性を創出する。しかしながら、無傷抗原を認識する免疫グロブリンと対照的に、T細胞は、MHC分子と関連する処理ペプチド断片により活性化され、T細胞による抗原認識に、MHC拘束として知られている更なる側面を導入する。T細胞受容体を通じたドナーとレシピエントとの間のMHC相違の認識は、T細胞増殖及びGVHDの潜在的発症をもたらす。同種細胞を効果的に使用するために、本発明者らは、TCRアルファ又はTCRベータ遺伝子を不活性化させ、これは、T細胞の表面からのTCRの除去をもたらし、そのことにより同種抗原の認識を防止し、そのことによりGVHDを予防する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,683,195号
【特許文献2】国際出願第WO94/24277号
【特許文献3】米国特許第US6,642,043号
【特許文献4】WO2012/058458
【特許文献5】米国特許第6,010,613号
【特許文献6】国際PCT出願第WO2004083379号
【特許文献7】米国特許第6,352,694号
【特許文献8】米国特許第6,534,055号
【特許文献9】米国特許第6,905,680号
【特許文献10】米国特許第6,692,964号
【特許文献11】米国特許第5,858,358号
【特許文献12】米国特許第6,887,466号
【特許文献13】米国特許第6,905,681号
【特許文献14】米国特許第7,144,575号
【特許文献15】米国特許第7,067,318号
【特許文献16】米国特許第7,172,869号
【特許文献17】米国特許第7,232,566号
【特許文献18】米国特許第7,175,843号
【特許文献19】米国特許第5,883,223号
【特許文献20】米国特許第6,905,874号
【特許文献21】米国特許第6,797,514号
【特許文献22】米国特許第6,867,041号
【特許文献23】米国特許出願公開第20060121005号
【特許文献24】国際出願第WO2006/097854号
【特許文献25】PCT/US2013/051783
【特許文献26】WO2012138927
【特許文献27】PCT/EP2014/059662
【特許文献28】WO 2013/176915
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Current Protocols in Molecular Biology(Frederick M. AUSUBEL、2000、Wiley and son Inc、Library of Congress、USA)
【非特許文献2】Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版、(Sambrookら、2001、Cold Spring Harbor、New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press)
【非特許文献3】Oligonucleotide Synthesis(M. J. Gait編、1984)
【非特許文献4】Nucleic Acid Hybridization(B. D. Harries & S. J. Higgins編 1984)
【非特許文献5】Transcription And Translation (B. D. Hames & S. J. Higgins編 1984)
【非特許文献6】Culture Of Animal Cells(R. I. Freshney、Alan R. Liss, Inc.、1987)
【非特許文献7】Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press、1986)
【非特許文献8】B. Perbal、A Practical Guide To Molecular Cloning(1984)
【非特許文献9】シリーズ、Methods In ENZYMOLOGY(J. Abelson及びM. Simon、責任編集、Academic Press, Inc.、New York)、特に、Vols.154及び155(Wuら編)並びにVol. 185、「Gene Expression Technology」(D. Goeddel編)
【非特許文献10】Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J. H. Miller及びM. P. Calos編、1987、Cold Spring Harbor Laboratory)
【非特許文献11】Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer及びWalker編、Academic Press、London、1987)
【非特許文献12】Handbook Of Experimental Immunology、I〜IV巻(D. M. Weir及びC. C. Blackwell編、1986)
【非特許文献13】Manipulating the Mouse Embryo、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1986)
【非特許文献14】Quintarelli C、Vera F、blood 2007
【非特許文献15】Tey SK、Dotti G.、Rooney CM、boil blood marrow transplant 2007
【非特許文献16】Donnellyら、J. of General Virology 82:1013〜1025頁(2001)
【非特許文献17】Donnellyら、J. of Gen. Virology 78:13〜21頁(1997)
【非特許文献18】Doroninaら、Mol. And. Cell. Biology 28(13):4227〜4239頁(2008)
【非特許文献19】Atkinsら、RNA 13:803〜810頁(2007)
【非特許文献20】Liuら、Cell 66:807〜815頁、11
【非特許文献21】Hendersonら、Immun. 73:316〜321頁、1991
【非特許文献22】Biererら、Citrr. Opin. mm n. 5:763〜773頁、93
【非特許文献23】Kochenderfer JN、Wilson WH、Janik JEら Eradication of B-lineage cells and regression of lymphoma in a patient treated with autologous T cells genetically engineered to recognize CD19. Blood 2010;116(20):4099〜410頁
【非特許文献24】Coffin, J. M.、Retroviridae: The viruses and their replication、Fundamental Virology、第3版収録、B. N. Fieldsら編、Lippincott-Raven Publishers、Philadelphia、1996
【非特許文献25】Reyon, D.、Tsai, S. Q.、Khayter, C、Foden, J. A.、Sander, J. D.、及びJoung, J. K.(2012)FLASH assembly of TALE-nucleases for high-throughput genome editing. Nat Biotechnologies
【非特許文献26】Shendure, J.、& Ji, H.(2008).Next-generation DNA sequencing. Nature biotechnology、26(10)、1135〜1145頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
癌検出及び腫瘍細胞生物学の分野において顕著な進歩があったとはいえ、末期及び転移癌の治療は、依然として大きな課題である。細胞傷害性化学療法剤は、依然として最も使用され、運用に成功している抗癌治療の1つである。複数の細胞傷害剤、例えば代謝拮抗物質、アルキル化剤、アントラサイクリン、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、白金化合物及び紡錘体毒物が、癌細胞を殺傷するために開発されてきた。しかしながら、それらは一様に有効ではなく、新規治療法、例えば免疫療法でのこれらの薬剤の導入には問題がある。例えば、化学療法剤は、その非特異的毒性プロファイルのために、強力な抗腫瘍免疫担当細胞の確立に有害であり得る。細胞増殖経路を標的とする小分子ベースの治療法もまた、抗腫瘍免疫の確立を妨げ得る。しかしながら、一過的に有効な化学療法レジメンが、新規の免疫担当細胞療法と組み合わされ得る場合、抗新生物療法における顕著な改善が達成されるかもしれない[概説については(Dasgupta、McCartyら 2011)]。
【0008】
したがって、「既製」同種治療細胞を化学療法と併用するため、本発明者らは、化学療法剤に対して耐性である同種T細胞を工学的に作製する方法を開発する。この戦略により与えられる治療的利益は、化学療法と免疫療法との間の相乗効果により増強されるはずである。更に、薬物耐性はまた、工学的に作製されたT細胞を選択的に増殖させ、そのことにより、これらの細胞への非効率的な遺伝子導入による問題を回避する能力から利益を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、本発明は、プリンヌクレオチド類似体(PNA)化学療法薬、例えばクロファラビン(clorofarabine)及びフルダラビンに対して耐性にするよう免疫細胞を工学的に作製するための方法を提供し、結果として従来の化学療法で前処置された患者における癌免疫療法治療において免疫細胞を使用できる。免疫細胞は、TIL(腫瘍浸潤リンパ球)の場合のように、自己治療を実施することに鑑みて患者を起源とするか、又は、同種治療において使用できる同種細胞を作製することに鑑みてドナーを起源とし得る。
【0010】
後者の場合、免疫細胞がT細胞であるとき、本発明はまた、化学療法薬及び同種の両方に対して耐性にしたT細胞を工学的に作製する方法を提供する。かかる方法は、薬物感受性化遺伝子(drug sensitizing gene)、例えばdcK及びHPRT遺伝子の不活性化に加えて、T細胞受容体(TCR)成分をコードする少なくとも1つの遺伝子、特にTCRアルファ、TCRベータ遺伝子を不活性化させる工程を含む。
【0011】
別の態様によれば、薬物への耐性を、薬物耐性遺伝子を発現させることによりT細胞に付与できる。複数の遺伝子、例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ2(IMPDH2)、カルシニューリン又はメチルグアニントランスフェラーゼ(MGMT)のバリアント対立遺伝子が、本発明による細胞に薬物耐性を付与すると同定された。
【0012】
本発明は、本発明の方法により得られる単離細胞又は細胞株、より具体的には、本明細書に記載のタンパク質、ポリペプチド、対立遺伝子バリアント、改変若しくは欠失遺伝子又はベクターのいずれかを含む単離免疫細胞を包含する。
【0013】
本発明の免疫細胞若しくは細胞株は、外来性組換えポリヌクレオチド、特にCAR若しくは自殺遺伝子を更に含み得るか、又は、それらは、治療生成物としての、理想的には「既製」生成物としてのそれらの効率に寄与するチェックポイントタンパク質若しくはそれらのリガンドをコードする改変若しくは欠失遺伝子を含み得る。別の態様において、本発明は、上の方法により得られる工学的に作製された免疫細胞を投与することにより、患者の癌を治療又は予防するための方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】プリンヌクレオシド類似体(PNA)の経路及び細胞毒性のスキーム図に相当する図である。酵素デオキシシチジンキナーゼ(dCK)の不活性化は、薬物クロファラビン及びフルダラビンへの耐性を付与する。
図2】酵素ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)の不活性化が、薬物6-メルカプトプリン(6MP)及び6チオ-グアニン(6TG)への耐性を付与することを示す図である。
図3図3Aは、エクソン及びイントロンの観点からdCK遺伝子構造全体を示す図であり、図3Bは、2つのTALE-ヌクレアーゼペアのためのdCKエクソン2に位置するTALE-ヌクレアーゼ標的部位の配列を示す図である。
図4】HPRT KO T細胞を生成して特徴付けるために従うワークフローを示す図である。D0は第0日を表し、Dnは第n日を表す。T7はエンドT7アッセイ(endo T7 assay)に相当する。
図5】dCK遺伝子のプロセシングを確認するエンドT7アッセイから得られる結果を表す図である。上側のバンドは、非処理WT dCK遺伝子に相当し、下側の2つのバンドは、処理dCK遺伝子に相当する。
図6】エレクトロポレーション後14日間の期間にわたる、dCK2 TALE-ヌクレアーゼをコードする5μg又は10μgのmRNAで処理されたdCK KO T細胞並びにWT T細胞対照1及び2の細胞増殖を表す図である。
図7】1μMのクロファラビンの存在下(+)又はクロファラビンの非存在下(-)での、(5μgのTALE-ヌクレアーゼdCK2ペアを使用することによる)T細胞におけるdCK不活性化を確認するために第8日(D8)に実施されたエンドT7アッセイを表す図である。
図8】漸増量のクロファラビン(10nMから10μΜ)の存在下で2日間培養された(dCK2 TALE-ヌクレアーゼペアをコードする5μg又は10μgのmRNAで処理された)WT及びdCK KO T細胞の細胞生存率のパーセンテージを表す図である。このグラフは、両方の細胞集団に対するクロファラビンIC50を決定することを可能にする。
図9】クロファラビン耐性同種T細胞を生成して特徴付けるために使用される2つのワークフローを示す図である。上図は、薬物選択が行われなかったときの下図と対照的に、薬物選択が実施された場合に相当する。第0日(D0)は、TRAC及びdCK2 TALE-ヌクレアーゼによる二重のエレクトロポレーションが実施された日である。
図10】エレクトロポレーション後の様々な時点(D1、D3及びD6)での、T細胞における二重KO dCK/TRACの効率を遺伝的に確認するためのエンドT7アッセイに相当する図である。各遺伝子座のために使用されたプライマーは、単純KO dCK T細胞(+-)及び単純KO TRAC T細胞(-+)、二重KO dCK/TRAC T細胞(++)及びWT T細胞(--)について、実施例において提示される。下側のバンドは、正確なdCK及びTRAC遺伝子プロセシングを意味する。
図11】TRAC不活性化を伴う(+)か又は伴わない(-)、クロファラビンの存在下(+)又は非存在下(-)でのdCK不活性化の効率を確認するためのエンドT7アッセイ及びディープシークエンシングデータに相当する図である。レジェンドは図10と同じである。dCK遺伝子座における挿入/欠失率を評価するためにindel頻度を実施した。
図12-1】図12Aは、抗TCR mAb-PEの存在下(標識化T細胞)又は非存在下(非標識化T細胞)のT細胞で実施された標識化制御実験を表す図である。
図12-2】図12Bは、TRAC KO T細胞精製の前後で、クロファラビンの存在下又は非存在下でのインキュベーション後に回収されたTRAC陰性細胞をモニタリングする図である。これらの細胞はまた、dCK遺伝子について不活性化された。
図12-3】図12Bは、TRAC KO T細胞精製の前後で、クロファラビンの存在下又は非存在下でのインキュベーション後に回収されたTRAC陰性細胞をモニタリングする図である。これらの細胞はまた、dCK遺伝子について不活性化された。
図13】エレクトロポレーション後12日間の期間にわたるクロファラビンの非存在下でのWT T細胞に対する単純KO dCK及びTRAC T細胞並びに二重KO dCK/TRAC T細胞の成長速度を示す図である。
図14】11日間の期間にわたる(クロファラビンを伴うか又は伴わない)CAR T細胞と比較した、異なるクロファラビン用量(0.1から10μM)を有する培地中のdCK/TRAC二重KO CAR T細胞の成長速度曲線を示す図である。
図15】異なるクロファラビン用量(1nMから100μM)を有する培地中の、WT T細胞に対する単純KO dCK又はTRAC T細胞、二重KO dCK/TRAC T細胞についての細胞生存率のパーセンテージを示す図である。このグラフは、各T細胞集団におけるクロファラビンのIC50の決定を可能にする。
図16】CAR FMC63 T細胞と比較した二重KO TRAC/dCK CAR T細胞(両方がCD19抗原を発現する)について、二重KO TRAC/dCK T細胞(CARなし、したがってCD19抗原を発現しない)及びWT T細胞(KOなし及びCARなし)に対する特異的細胞傷害性のパーセンテージを表す図である。
図17】漸増用量のクロファラビン(10ngから100μg、上側のグラフ)、及びフルダラビン(10μMから100μM、下側のグラフ)中でインキュベートされたときの、CAR T細胞対照に対する二重KO dCK/TRAC CAR T細胞についての細胞生存率のパーセンテージを示す図である。これらのグラフは、クロファラビン及びフルダラビンの両方の薬物のIC50の決定を可能にする。
図18】WT細胞(-)に対するDaudi細胞(+)(dCK TALE-ヌクレアーゼをコードする5μgのmRNAを使用した)におけるdCK不活性化の効率を遺伝的に確認するための、第2日(D2)のエンドT7アッセイに相当する図である。上側のバンドは非処理dCK遺伝子に相当し、2つの下側のバンドは、dCK不活性化の生成物に相当する。
図19】7日間の期間にわたる、漸増量のクロファラビン(0.1から1μM)の存在又は非存在下での、WT Daudi細胞に対するKO dCK Daudi細胞の成長速度(×106細胞で表示)を表す図である。
図20】エクソン及びイントロンの観点からのHPRT遺伝子構造全体並びに異なるTALE-ヌクレアーゼ標的部位の位置(そのすべてがエクソン2内である)を示す図である。
図21】HPRT KO T細胞を生成して特徴付けるために使用されたワークフローを示す図である。
図22】第4日(D4)、TALE-ヌクレアーゼHPRTペア番号1及びTペア番号2(2つの用量を試験した:5μg及び10μg)によるT細胞におけるHPRT遺伝子不活性化を確認するためのエンドT7アッセイを表す図である。
図23】13日間の期間にわたる、5又は10μgのTALE-ヌクレアーゼHPRT1ペア(HPRT1)又はTALE-ヌクレアーゼHPRT2ペア(HPRT2)を使用することによる、WT T細胞対照1及び対照2に対するKO HPRT T細胞の成長速度(×106細胞で表示)を表す図である。
図24】1μMの薬物6TG中にインキュベートされたときの、D8及びD18における、5又は10μgのTALE-ヌクレアーゼHPRTペア番号1(TALE-ヌクレアーゼHPRT1)を使用した、WT T細胞[(-)と表示]に対する、T細胞におけるHPRT遺伝子不活性化を確認するためのエンドT7アッセイを表す図である。
図25】4G7 CARの存在下又は非存在下での、T細胞におけるHPRT遺伝子不活性化を確認するためのエンドT7アッセイを表す図である。このアッセイは、6TG選択なしに実施された。
図26】KO HPRT CAR T細胞についての、CAR 4G7 T細胞(両方がCD19抗原を発現する)及びWT T細胞(KOなし及びCARなし)と比較した特異的細胞傷害性のパーセンテージを示す図である。
図27】漸増用量の6TG薬物(10ngから50μM)中のKO HPRT CAR T細胞についての、WT T細胞に対する細胞生存率のパーセンテージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において特に定義されない限り、使用されるすべての技術及び科学用語は、遺伝子療法、生化学、遺伝学、及び分子生物学の分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0016】
本明細書に記載のものと類似又は同等のすべての方法及び材料を、本発明の実施又は試験において使用でき、好適な方法及び材料は本明細書に記載される。本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。更に、材料、方法、及び例は例示でしかなく、特に指定しない限り、限定を意図しない。
【0017】
本発明の実施は、特に指示のない限り、当技術分野の技術の範囲内である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の従来技術を用いる。かかる技術は、文献において十分に説明される。例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Frederick M. AUSUBEL、2000、Wiley and son Inc、Library of Congress、USA);Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版、(Sambrookら、2001、Cold Spring Harbor、New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press);Oligonucleotide Synthesis(M. J. Gait編、1984);Mullisら 米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization(B. D. Harries & S. J. Higgins編 1984);Transcription And Translation(B. D. Hames & S. J. Higgins編 1984);Culture Of Animal Cells(R. I. Freshney、Alan R. Liss, Inc.、1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press、1986);B. Perbal、A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);シリーズ、Methods In ENZYMOLOGY(J. Abelson及びM. Simon責任編集、Academic Press, Inc.、New York)、特に、Vols.154及び155(Wuら編)並びにVol. 185、「Gene Expression Technology」(D. Goeddel編);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J. H. Miller及びM. P. Calos編、1987、Cold Spring Harbor Laboratory);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer及びWalker編、Academic Press、London、1987);Handbook Of Experimental Immunology、I〜IV巻(D. M. Weir及びC. C. Blackwell編、1986);並びにManipulating the Mouse Embryo、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1986)を参照のこと。
【0018】
- 薬物耐性T細胞
本明細書において使用される「治療剤」、「化学療法剤」、又は「薬物」という用語は、癌細胞と相互作用でき、そのことにより細胞の増殖状態を減少させる且つ/又は細胞を殺傷する化合物又はそれらの誘導体を指す。化学療法剤の例には、アルキル化剤[例えば、シクロホスファミド、イホスファミド(ifosamide)]、代謝拮抗剤[例えば、プリンヌクレオシド代謝拮抗物質、例えばクロファラビン、フルダラビン若しくは2'-デオキシアデノシン、メトトレキセート(MTX)、5-フルオロウラシル又はそれらの誘導体]、抗腫瘍抗生物質(例えば、マイトマイシン、アドリアマイシン)、植物由来抗腫瘍剤(例えばビンクリスチン、ビンデシン、タキソール)、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド等が含まれるが、これに限定されない。かかる薬剤には、抗癌剤TRIMETHOTRIXATE(商標)(TMTX)、TEMOZOLOMIDE(商標)、RALTRITREXED(商標)、S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン(NBMPR)、6-ベンジルグアニジン(6-benzyguanidine)(6-BG)、ビス-クロロニトロソウレア(BCNU)及びCAMPTOTHECIN(商標)、又はそれらのいずれかの治療誘導体が更に含まれてもよいが、これに限定されない。
【0019】
本明細書において使用される薬剤に「耐性又は耐容性」の細胞は、改変されていない細胞の増殖を阻害又は防止する量の薬剤の存在下で増殖するよう遺伝的に改変された細胞を意味する。
【0020】
薬物耐性遺伝子の発現
特定の実施形態において、前記薬物耐性は、少なくとも1つの薬物耐性遺伝子の発現によりT細胞に付与できる。前記薬物耐性遺伝子は、薬剤、例えば化学療法剤(例えばメトトレキセート)に対する「耐性」をコードする核酸配列を指す。換言すれば、細胞における薬物耐性遺伝子の発現は、薬物耐性遺伝子を有しない対応する細胞の増殖よりも大きな程度で、薬剤の存在下での細胞の増殖を可能にする。本発明の薬物耐性遺伝子は、代謝拮抗物質、メトトレキセート、ビンブラスチン、シスプラチン、アルキル化剤、アントラサイクリン、細胞傷害性抗生物質、抗イムノフィリン剤(anti-immunophilin)、それらの類似体又は誘導体等に対する耐性をコードできる。
【0021】
標的細胞に薬物耐性を付与するために使用できる可能性のある複数の薬物耐性遺伝子が同定されてきた(Takebe、Zhaoら 2001;Sugimoto、Tsukaharaら 2003;Zielske、Reeseら 2003;Nivens、Felderら 2004;Bardenheuer、Lehmbergら 2005;Kushman、Kablerら 2007)。
【0022】
薬物耐性遺伝子の一例はまた、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)の変異又は改変型であり得る。DHFRは、細胞におけるテトラヒドロ葉酸の量の調節に関与する酵素であり、DNA合成に必須である。葉酸類似体、例えばメトトレキセート(MTX)は、DHFRを阻害し、それゆえ臨床において抗新生物剤として使用される。治療法において使用される抗葉酸剤による阻害に対する耐性を増加させたDHFRの様々な変異型が記述されてきた。特定の実施形態において、本発明による薬物耐性遺伝子は、抗葉酸剤治療、例えばメトトレキセートに対する耐性を付与する少なくとも1つの変異を含む、ヒト野生型DHFRの変異型をコードする核酸配列(配列番号14、GenBank:AAH71996.1)であり得る。特定の実施形態において、DHFRの変異型は、位置G15、L22、F31又はF34、好ましくは位置L22又はF31に少なくとも1つの変異アミノ酸を含む[(Schweitzer、Dickerら 1990);国際出願第WO94/24277号;米国特許第US6,642,043号]。特定の実施形態において、前記DHFR変異型は、位置L22及びF31に2つの変異アミノ酸を含む。本明細書に記載のアミノ酸位置の対応は、多くの場合、配列番号14に記載の野生型DHFRポリペプチドの形態のアミノ酸の位置の観点から表現される。特定の実施形態において、位置15のセリン残基は、好ましくは、トリプトファン残基と置き換えられる。別の特定の実施形態において、位置22のロイシン残基は、好ましくは、抗葉酸剤に対する変異体DHFRの結合を破壊するアミノ酸、好ましくは非荷電アミノ酸残基、例えばフェニルアラニン又はチロシンと置き換えられる。別の特定の実施形態において、位置31又は34のフェニルアラニン残基は、好ましくは、小さな親水性アミノ酸、例えばアラニン、セリン又はグリシンと置き換えられる。
【0023】
本明細書において使用される「抗葉酸剤」又は「葉酸類似体」は、あるレベルで葉酸代謝経路を阻害するよう指向された分子を指す。抗葉酸剤の例には、例えば、メトトレキセート(MTX);アミノプテリン;トリメトレキセート[Neutrexin(商標)];エダトレキセート;N10-プロパルギル-5,8-ジデアザ葉酸(CB3717);ZD1694(Tumodex)、5,8-ジデアザイソ葉酸(IAHQ);5,10-ジデアザテトラヒドロ葉酸(DDATHF);5-デアザ葉酸;PT523[Nアルファ-(4-アミノ-4-デオキシプテロイル)-Nデルタ-ヘミフタロイル-L-オルニチン);10-エチル-10-デアザアミノプテリン[DDATHF、ロメトレキソール(lomatrexol)];ピリトレキシム;10-EDAM;ZD1694;GW1843;ペメトレキセド(Pemetrexate)及びPDX(10-プロパルギル-10-デアザアミノプテリン)が含まれる。
【0024】
薬物耐性遺伝子の別の一例はまた、グアノシンヌクレオチドの新規合成における律速酵素である、イノシン-5'-一リン酸デヒドロゲナーゼII(ionisine-5'-monophosphate dehydrogenase II)(IMPDH2)の変異又は改変型であり得る。IMPDH2の変異又は改変型は、IMPDH阻害剤耐性遺伝子である。IMPDH阻害剤は、ミコフェノール酸(MPA)又はそのプロドラッグであるミコフェノール酸モフェチル(MMF)であり得る。変異体IMPDH2は、野生型ヒトIMPDH2のMAP結合部位(配列番号15、NP_000875.2)に、IMPDH阻害剤に対する耐性の有意な増加をもたらす少なくとも1つ、好ましくは2つの変異を含み得る。変異は、好ましくは、位置T333及び/又はS351である(Yam、Jensenら 2006;Sangiolo、Lesnikovaら 2007;Jonnalagadda、Brownら 2013)。特定の実施形態において、位置333のトレオニン残基は、イソロイシン残基と置き換えられ、位置351のセリン残基は、チロシン残基と置き換えられる。本明細書に記載のアミノ酸位置の対応は、多くの場合、配列番号15に記載の野生型ヒトIMPDH2ポリペプチドの形態のアミノ酸の位置の観点から表現される。
【0025】
別の薬物耐性遺伝子は、カルシニューリンの変異型である。カルシニューリン(PP2B)は、多くの生物学的過程に関与する普遍的に発現しているセリン/トレオニンタンパク質ホスファターゼであり、T細胞活性化の中核をなす。カルシニューリンは、触媒サブユニット(CnA、3つのアイソフォーム)及び調節サブユニット(CnB、2つのアイソフォーム)から構成されるヘテロダイマーである。T細胞受容体の結合後、カルシニューリンは転写因子NFATを脱リン酸化し、それが核の重要な標的遺伝子、例えばIL2へと移動させることを可能にする。FKBP12と複合したFK506、又はCyPAと複合したシクロスポリンA(CsA)は、カルシニューリンの活性部位に対するNFATのアクセスを遮断し、その脱リン酸化を防止し、そのことによりT細胞活性化を阻害する(Brewin、Mancaoら 2009)。本発明の薬物耐性遺伝子は、カルシニューリン阻害剤、例えばFK506及び/又はCsAに対して耐性であるカルシニューリンの変異型をコードする核酸配列であり得る。特定の実施形態において、前記変異型は、野生型カルシニューリンヘテロダイマーaの少なくとも1つの変異アミノ酸を位置V314、Y341、M347、T351、W352、L354、K360に、好ましくは二重変異を位置T351及びL354又はV314及びY341に含み得る。特定の実施形態において、配列番号16の位置341のバリン残基は、リシン又はアルギニン残基と置き換えられ得、位置341のチロシン残基は、フェニルアラニン残基と置き換えられ得る;位置347のメチオニンは、グルタミン酸、アルギニン又はトリプトファン残基と置き換えられ得る;位置351のトレオニンは、グルタミン酸残基と置き換えられ得る;位置352のトリプトファン残基は、システイン、グルタミン酸又はアラニン残基と置き換えられ得、位置353のセリンは、ヒスチジン又はアスパラギン残基と置き換えられ得、位置354のロイシンは、アラニン残基と置き換えられ得る;位置360のリシンは、アラニン又はフェニルアラニン残基と置き換えられ得る。本明細書に記載のアミノ酸位置の対応は、多くの場合、配列番号16に記載の野生型ヒトカルシニューリンヘテロダイマーaポリペプチド(GenBank:ACX34092.1)の形態のアミノ酸の位置の観点から表現される。
【0026】
別の特定の実施形態において、前記変異型は、野生型カルシニューリンヘテロダイマーbの少なくとも1つの変異アミノ酸を位置V120、N123、L124又はK125に、好ましくは二重変異を位置L124及びK125に含み得る。特定の実施形態において、アミノ酸配列配列番号17において、位置120のバリンは、セリン、アスパラギン酸、フェニルアラニン又はロイシン残基と置き換えられ得る;位置123のアスパラギンは、トリプトファン、リシン、フェニルアラニン、アルギニン、ヒスチジン又はセリンと置き換えられ得る;位置124のロイシンは、トレオニン残基と置き換えられ得る;位置125のリシンは、アラニン、グルタミン酸、トリプトファンと置き換えられ得るか、又は2つの残基、例えばロイシン-アルギニン若しくはイソロイシン-グルタミン酸が、位置125のリシンの後に付加され得る。本明細書に記載のアミノ酸位置の対応は、多くの場合、配列番号17に記載の野生型ヒトカルシニューリンヘテロダイマーbポリペプチド(GenBank:ACX34095.1)の形態のアミノ酸の位置の観点から表現される。
【0027】
別の薬物耐性遺伝子は、ヒトアルキルグアニントランスフェラーゼ(hAGT)をコードする0(6)-メチルグアニンメチルトランスフェラーゼ(MGMT)である。AGTは、アルキル化剤、例えばニトロソウレア及びテモゾロマイド(TMZ)の細胞傷害効果に対する耐性を付与するDNA修複タンパク質である。6-ベンジルグアニン(6-BG)は、ニトロソウレア毒性を増強するAGTの阻害剤であり、この薬剤の細胞傷害効果を増強するためにTMZと同時投与される。AGTのバリアントをコードするMGMTの複数の変異型が、6-BGによる不活性化に対して高度に耐性であるが、DNA損傷を修復するその能力を保持する(Maze、Kurpadら 1999)。特定の実施形態において、AGT変異型は、アミノ酸配列配列番号18(UniProtKB:P16455)において、野生型AGT位置P140の変異アミノ酸を含み得る。好ましい実施形態において、位置140の前記プロリンは、リシン残基と置き換えられる。
【0028】
別の薬物耐性遺伝子は、多剤耐性タンパク質1(MDR1)であり得る。この遺伝子は、細胞膜を横断する代謝副産物の輸送に関与する、P-糖タンパク質(P-GP)として知られている膜糖タンパク質をコードする。P-Gpタンパク質は、複数の構造的に無関係な化学療法剤に対して広範な特異性を示す。したがって、MDR-1をコードする核酸配列(NP_000918)の発現により、薬物耐性を細胞に付与できる。
【0029】
薬物耐性遺伝子はまた、細胞傷害性抗生物質、例えばble遺伝子又はmcrA遺伝子であり得る。免疫細胞におけるble遺伝子又はmcrAの異所性発現は、それぞれブレオマイシン又はマイトマイシンCという化学療法剤に曝露されたときに選択的利点を与える。
【0030】
遺伝子療法に対する最も実用的なアプローチは、ベクター、好ましくはウイルスベクターによる効率的な遺伝子送達を使用することによりT細胞を工学的に作製するための、遺伝子の付加である。したがって、特定の実施形態において、前記薬物耐性遺伝子は、好ましくは少なくとも1つのベクターによりコードされる導入遺伝子を細胞内に導入することにより、細胞において発現し得る。
【0031】
遺伝子のゲノム内へのランダムな挿入は、挿入遺伝子又は挿入部位の近傍の遺伝子の不適切な発現をもたらし得る。ゲノム内の特定の部位に対する遺伝子を標的とする、内在性配列を含む外来性核酸の相同的組換えを使用する特定の遺伝子療法は、安全なT細胞を工学的に作製することを可能にし得る。上述の通り、この方法の遺伝子改変工程は、内在性遺伝子と外来性核酸との間で相同的組換えが生じるように、薬物耐性遺伝子及び内在性遺伝子の一部をコードする配列を少なくとも含む外来性核酸の細胞内への導入工程を含み得る。特定の実施形態において、前記内在性遺伝子は、野生型「薬物耐性」遺伝子であり得、結果として、相同的組換え後に野生型遺伝子は、薬物に対する耐性を付与する遺伝子の変異型により置き換えられる。
【0032】
エンドヌクレアーゼ的切断は、相同的組換えの速度を速めることが知られている。したがって、特定の実施形態において、本発明の方法は、内在性遺伝子内の標的配列を切断可能な低頻度切断型エンドヌクレアーゼ(rare-cutting endonuclease)を細胞において発現させる工程を更に含む。前記内在性遺伝子は、例えばDHFR、IMPDH2、カルシニューリン又はAGTをコードできる。前記低頻度切断型エンドヌクレアーゼは、TALE-ヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼ、MBBBD-ヌクレアーゼ又はメガヌクレアーゼであり得る。
【0033】
薬物感受性化遺伝子の不活性化
別の特定の実施形態において、薬物感受性化遺伝子の不活性化により、前記薬物耐性をT細胞に付与できる。本発明者らは初めて、免疫療法のためのT細胞を工学的に作製するため、潜在的薬物感受性化遺伝子を不活性化させることを探究した。
【0034】
遺伝子を不活性化させることにより、目的の遺伝子が機能タンパク質形態で発現しないことが意図されている。特定の実施形態において、この方法の遺伝子改変は、工学的に作製する提供された細胞における、1つの低頻度切断型エンドヌクレアーゼの発現に依存し、結果として前記低頻度切断型エンドヌクレアーゼは、1つの標的遺伝子における切断を特異的に触媒し、そのことにより前記標的遺伝子を不活性化させる。特定の実施形態において、少なくとも1つの薬物感受性化遺伝子を不活性化させる工程は、少なくとも1つの薬物感受性化遺伝子を破壊可能な低頻度切断型エンドヌクレアーゼを細胞内に導入することを含む。より具体的な実施形態において、前記細胞は、薬物感受性化遺伝子を破壊可能な低頻度切断型エンドヌクレアーゼをコードする核酸で形質転換され、前記低頻度切断型エンドヌクレアーゼは、前記細胞内に発現する。前記低頻度切断型エンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPR/Cas9ヌクレアーゼ、MBBBD-ヌクレアーゼ又はTALE-ヌクレアーゼであり得る。好ましい実施形態において、前記低頻度切断型エンドヌクレアーゼは、TALE-ヌクレアーゼである。
【0035】
好ましい実施形態において、T細胞に薬物耐性を付与するために不活性化できる薬物感受性化遺伝子は、ヒトデオキシシチジンキナーゼ(dCK)遺伝子である。この酵素は、デオキシリボヌクレオシドであるデオキシシチジン(dC)、デオキシグアノシン(dG)及びデオキシアデノシン(dA)のリン酸化に必要とされる。プリンヌクレオチド類似体(PNA)は、dCKにより一、二及び三リン酸PNAへと代謝される。それらの三リン酸形態、特にクロファラビン三リン酸は、DNA合成についてATPと競合し、アポトーシス促進剤として作用し、トリヌクレオチド生成に関与するリボヌクレオチドレダクターゼ(RNR)の強力な阻害剤である(図1の推定作用機序を参照のこと)。
【0036】
好ましくは、T細胞におけるdCKの不活性化は、TALEヌクレアーゼにより媒介される。この目的を達するため、複数のペアのdCK TALE-ヌクレアーゼが設計され、ポリヌクレオチドレベルで構築され、シークエンシングにより検証された。本発明により使用できるTALE-ヌクレアーゼペアの例は、配列番号63及び配列番号64により示される。TALE-ヌクレアーゼのこのペアが使用されるとき、dCK標的配列は、配列番号62に相当する。
【0037】
例に示される通り、T細胞におけるこのdCK不活性化は、プリンヌクレオシド類似体(PNA)、例えばクロファラビン及びフルダラビンに対する耐性を付与する。
【0038】
別の好ましい実施形態において、T細胞におけるdCK不活性化は、TRAC遺伝子の不活性化と組み合わされ、これらの二重ノックアウト(KO)T細胞を薬物、例えばクロファラビン及び同種の両方に対して耐性にする。この二重の特徴は、治療目的で特に有用であり、癌患者を治療するための、化学療法と併用する免疫療法のための「既製」同種細胞を可能にする。この二重KO不活性化dCK/TRACは、同時又は連続的に実施できる。本発明において成功したTALE-ヌクレアーゼdCK/TRACペアの一例はそれぞれ、配列番号63及び配列番号64並びに配列番号66及び番号67の使用である。2つの遺伝子座における標的配列(dCK及びTRAC)はそれぞれ、配列番号62及び配列番号65に示される。
【0039】
不活性化できる酵素の別の一例は、ヒトヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子(Genbank:M26434.1)である。特に、HPRTは、HPRTにより細胞傷害性チオグアニンヌクレオチドへと変換され、癌、特に白血病患者を治療するために現在使用されている細胞増殖抑制代謝物である、6-チオグアニン(6TG)に対する耐性を付与するための工学的に作製されたT細胞において不活性化できる(Hacke、Tregerら 2013)。グアニン類似体は、ホスホリボシル部分の付加を触媒し、TGMPの形成を可能にする、HPRTトランスフェラーゼにより代謝される(図2)。6メルカプトプリン(6MP)及び6チオグアニン(6TG)を含むグアニン類似体は、通常はALLを治療するためのリンパ球枯渇薬として使用される。それらは、ホスホリボシル部分の付加を触媒し、TGMP形成を可能にする、HPRT(ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ)により代謝される。それらの引き続くリン酸化は、最終的にDNA内に組み込まれるそれらの三リン酸化形態の形成をもたらす。DNA内に組み込まれると、チオGTPが、そのチオレートグループメント(thiolate groupment)を介してDNA複製の忠実度を損ない、細胞統合性にとって高度に有害なランダム点変異を生成する。
【0040】
別の実施形態において、T細胞の表面に通常は発現するCD3の不活性化は、抗CD3抗体、例えばテプリズマブに対する耐性を付与できる。
【0041】
薬物耐性同種CAR T細胞の細胞傷害性を試験するためのCD19+/luc+薬物耐性Daudi細胞
本発明はまた、CAR T細胞に特異的な表面受容体及び耐性遺伝子の両方を発現する標的細胞を製造するための方法を包含する。これらの標的細胞は、CAR T細胞の細胞傷害性を試験するために特に有用である。これらの細胞は、臨床的意義のある用量のクロファラビンに対して十分耐性であり、ルシフェラーゼ活性を有する。この特徴の組合せは、マウスモデルにおいてインビボでそれらを追跡することを可能にする。より具体的には、それらは、クロファラビン又は他のPNAの存在下での、マウスにおける薬物耐性T細胞の細胞傷害特性を評価するために使用できる。クロファラビン耐性Daudi細胞は、導入療法から再燃した、薬物耐性B細胞悪性疾患を有する急性リンパ芽球性白血病(ALL)患者の生理状態を模倣する。したがって、これらの細胞は、薬物耐性CAR T細胞の信頼性及び細胞傷害性を評価するために重要である。好ましくは、これらの標的細胞は、CD19+ルシフェラーゼ+Daudi細胞である。
【0042】
単離細胞
本発明はまた、上述の方法により得られる単離細胞に関する。特に、本発明は、T細胞受容体成分をコードする少なくとも1つの破壊された遺伝子を含む、薬物に対して耐性である単離T細胞に関する。特定の実施形態において、前記T細胞は、少なくとも1つの薬物耐性遺伝子、好ましくはble遺伝子又はmcrA遺伝子又は変異体DHFR、変異体IMPDH2、変異体AGT若しくは変異体カルシニューリンをコードする遺伝子を発現する。別の特定の実施形態において、前記T細胞は、少なくとも1つの破壊された薬物感受性化遺伝子、例えばdCK又はHPRT遺伝子を含む。より具体的な実施形態において、前記単離T細胞は、破壊されたHPRT遺伝子を含み、DHFR変異体を発現する;前記単離T細胞は、破壊されたHPRT遺伝子を含み、IMPDH2変異体を発現する;前記単離T細胞は、破壊されたHPRT遺伝子を含み、カルシニューリン変異体を発現する;前記単離T細胞は、破壊されたHPRT遺伝子を含み、AGT変異体を発現する。別の好ましい実施形態において、前記単離細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現し、これはCD19又はCD123であり得る。
【0043】
薬物に対して耐性である同種T細胞
特に、本発明は、免疫療法に特に好適な、薬物に対して耐性である同種T細胞に関する。薬物の耐性は、薬物感受性化遺伝子の不活性化又は前述のもの等の薬物耐性遺伝子の発現により付与できる。本発明に適した薬物のいくつかの例は、プリンヌクレオシド類似体(PNA)、例えばクロファラビン若しくはフルダラビン、又は他の薬物、例えば6-メルカプトプリン(6MP)及び6チオ-グアニン(6TG)である。
【0044】
本発明による細胞とは、生得的及び/又は適応的免疫応答の開始及び/又は実行に機能的に関与する造血由来の細胞を指す。本発明による細胞は、好ましくは、ドナーから得られるT細胞である。本発明による前記T細胞は、幹細胞由来であり得る。幹細胞は、成体幹細胞、胚性幹細胞、より具体的には非ヒト幹細胞、臍帯血幹細胞、前駆細胞、骨髄幹細胞、全能性幹細胞又は造血幹細胞であり得る。代表的なヒト幹細胞は、CD34+細胞である。前記単離細胞はまた、樹状細胞、キラー樹状細胞、肥満細胞、NK細胞、B細胞、又は炎症性Tリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、調節性Tリンパ球若しくはヘルパーTリンパ球からなる群から選択されるT細胞であり得る。別の実施形態において、前記細胞は、CD4+Tリンパ球及びCD8+Tリンパ球からなる群に由来し得る。本発明の細胞の増殖及び遺伝子改変前に、細胞の供給源が、様々な非限定的方法を通じて対象から得られる。細胞は、数多くの非限定的供給源、例えば末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍から得られる。本発明のいくつかの実施形態において、当業者に利用可能で知られている任意の数のT細胞株を使用できる。別の実施形態において、前記細胞は、好ましくは、健康なドナーに由来する。別の実施形態において、前記細胞は、様々な表現型特性を呈する混合細胞集団の一部である。
【0045】
多剤耐性
別の特定の実施形態において、本発明者らは、患者が様々な薬物で治療されているときに工学的に作製されたT細胞の選択を媒介するため、多剤に対して耐性である同種T細胞を使用して、「既製」免疫療法戦略を開発することを探究した。多剤耐性同種T細胞を遺伝子工学的に作製することにより、治療効率を有意に増強できる。かかる戦略は、相乗効果を示す複合製剤に応答する腫瘍の治療において、特に有効であり得る。更に、多剤耐性の工学的に作製されたT細胞は、最小限の用量の薬剤を使用して増殖でき、選択され得る。
【0046】
したがって、本発明による方法は、T細胞に多剤耐性を付与するために前記細胞を改変する工程を含み得る。前記多剤耐性は、2つ以上の薬物耐性遺伝子を発現させること又は2つ以上の薬物感受性化遺伝子を不活性化させることのいずれかにより付与できる。別の特定の実施形態において、多剤耐性は、少なくとも1つの薬物耐性遺伝子を発現させること及び少なくとも1つの薬物感受性化遺伝子を不活性化させることにより、前記T細胞に付与できる。特に、多剤耐性は、少なくとも1つの薬物耐性遺伝子、例えばDHFRの変異型、IMPDH2の変異型、カルシニューリンの変異型、MGMTの変異型、ble遺伝子、及びmcrA遺伝子を発現させること、並びに少なくとも1つの薬物感受性化遺伝子、例えばHPRT遺伝子を不活性化させることにより、前記T細胞に付与できる。好ましい実施形態において、多剤耐性は、HPRT遺伝子を不活性化させること及びDHFRの変異型を発現させることにより;又はHPRT遺伝子を不活性化させること及びIMPDH2の変異型を発現させることにより;又はHPRT遺伝子を不活性化させること及びカルシニューリンの変異型を発現させることにより;HPRT遺伝子を不活性化させること及びMGMTの変異型を発現させることにより;HPRT遺伝子を不活性化させること及びble遺伝子を発現させることにより;HPRT遺伝子を不活性化させること及びmcrA遺伝子を発現させることにより、付与できる。
【0047】
薬物耐性同種T細胞を工学的に作製する方法:
癌治療及び同種T細胞の選択的移植を改良するため、化学療法剤の毒性副作用から前記細胞を保護するためにそれらに薬物耐性を付与する。T細胞の薬物耐性はまた、インビボ又はエクスビボでのそれらの富化を可能にするが、これは、薬物耐性遺伝子を発現するT細胞が薬物感受性細胞と比較して生存及び増加するからである。特に、本発明は、免疫療法に耐性である同種及び薬物耐性T細胞を工学的に作製する方法であって、
(a)T細胞を提供する工程、
(b)少なくとも1つの薬物を選択する工程、
(c)T細胞受容体(TC)成分をコードする少なくとも1つの遺伝子を不活性化させることにより、前記T細胞を改変する工程、
(d)前記T細胞に薬物耐性を付与するためにT細胞を改変する工程、
(e)前記薬物の存在下で前記工学的に作製されたT細胞を増殖させる工程
を含む、方法に関する。
【0048】
- 同種T細胞
本発明は、同種免疫療法に関する。同種T細胞の移植は、TCR成分をコードする少なくとも1つの遺伝子を不活性化させることにより可能である。TCRは、TCRアルファ遺伝子及び/又はTCRベータ遺伝子を不活性化させることにより、細胞において機能しないようにされる。同種T細胞におけるTCR不活性化は、GvHDを回避する。遺伝子を不活性化させることにより、目的の遺伝子が機能タンパク質形態で発現しないことが意図されている。特定の実施形態において、この方法の遺伝子改変は、工学的に作製する提供された細胞における、1つの低頻度切断型エンドヌクレアーゼの発現に依存し、結果として前記低頻度切断型エンドヌクレアーゼは、1つの標的遺伝子における切断を特異的に触媒し、そのことにより前記標的遺伝子を不活性化させる。低頻度切断型エンドヌクレアーゼに起因する核酸鎖切断は、一般に、相同的組換え又は非相同末端結合(NHEJ)という別々の機序を通じて修復される。しかしながら、NHEJは不完全な修復過程であり、多くの場合、切断部位でDNA配列の変化をもたらす。機序は、直接的な再ライゲーションを通じた(Critchlow及びJackson 1998)、又はいわゆるマイクロホモロジー媒介末端結合を介する(Betts、Brenchleyら 2003;Ma、Kimら 2003)、2つのDNA末端の残存部の再結合を伴う。非相同末端結合(NHEJ)を介した修復は、多くの場合、小さな挿入又は欠失をもたらし、特異的遺伝子ノックアウトの創出のために使用できる。前記改変は、少なくとも1つのヌクレオチドの置換、欠失、又は付加であってもよい。切断誘導変異誘発事象、すなわちNHEJ事象と連続した変異誘発事象が生じた細胞は、当技術分野においてよく知られている方法により同定及び/又は選択できる。特定の実施形態において、各個体試料の細胞内のT細胞受容体(TCR)の成分をコードする少なくとも1つの遺伝子を不活性化させる工程は、T細胞受容体(TCR)の成分をコードする少なくとも1つの遺伝子を破壊可能な低頻度切断型エンドヌクレアーゼを細胞内に導入することを含む。より具体的な実施形態において、各個体試料の前記細胞は、T細胞受容体(TCR)の成分をコードする少なくとも1つの遺伝子を破壊可能な低頻度切断型エンドヌクレアーゼをコードする核酸で形質転換さ
れ、前記低頻度切断型エンドヌクレアーゼは、前記細胞内に発現する。
【0049】
前記低頻度切断型エンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPR/Cas9ヌクレアーゼ、TALE-ヌクレアーゼ又はMBBBD-ヌクレアーゼであり得る。好ましい実施形態において、前記低頻度切断型エンドヌクレアーゼは、TALE-ヌクレアーゼである。TALE-ヌクレアーゼにより、転写活性化因子様エフェクター(TALE)に由来するDNA結合ドメイン及び核酸標的配列を切断する1つのヌクレアーゼ触媒ドメインからなる融合タンパク質が意図される(Boch、Scholzeら 2009;Moscou及びBogdanove 2009;Christian、Cermakら 2010;Cermak、Doyleら 2011;Geissler、Scholzeら 2011;Huang、Xiaoら 2011;Li、Huangら 2011;Mahfouz、Liら 2011;Miller、Tanら 2011;Morbitzer、Romerら 2011;Mussolino、Morbitzerら 2011;Sander、Cadeら 2011;Tesson、Usalら 2011;Weber、Gruetznerら 2011;Zhang、Congら 2011;Deng、Yanら 2012;Li、Piatekら 2012;Mahfouz、Liら 2012;Mak、Bradleyら 2012)。本発明において、新たなTALE-ヌクレアーゼが、養子免疫療法戦略のための関連遺伝子を正確に標的とするために設計された。
【0050】
本発明による好ましいTALE-ヌクレアーゼは、配列番号1から5(TCRアルファ)、配列番号6及び7(TCRベータ)からなる群から選択される標的配列を認識及び切断するものである。前記TALE-ヌクレアーゼは、好ましくは、配列番号8から配列番号13から選択されるポリペプチド配列を含む。別の実施形態において、標的遺伝子を不活性化させるそれらの能力を増強するために、変異誘発を増加させる前記低頻度切断型エンドヌクレアーゼを有する追加の触媒ドメインを、細胞内に更に導入できる。特に、前記追加の触媒ドメインは、DNA末端プロセシング酵素である。DNA末端プロセシング酵素の非限定的な例には、5-3'エキソヌクレアーゼ、3-5'エキソヌクレアーゼ、5-3'アルカリエキソヌクレアーゼ、5'フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、ホスファターゼ(hosphatase)、ヒドロラーゼ及び鋳型非依存性DNAポリメラーゼが含まれる。かかる触媒ドメインの非限定的な例には、hExol(EXO1_HUMAN)、酵母Exol(EXO1_YEAST)、大腸菌(E.coli)Exol、ヒトTREX2、マウスTREX1、ヒトTREX1、ウシTREX1、ラットTREX1、TdT(末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ)ヒトDNA2、酵母DNA2(DNA2_YEAST)からなる群から選択されるタンパク質ドメイン又はタンパク質ドメインの触媒的に活性な誘導体が含まれる。好ましい実施形態において、前記追加の触媒ドメインは、3'-5'-エキソヌクレアーゼ活性を有し、より好ましい実施形態において、前記追加の触媒ドメインはTREXであり、より好ましくは、TREX2触媒ドメインである(WO2012/058458)。別の好ましい実施形態において、前記触媒ドメインは、単鎖TREX2ポリペプチドによりコードされる。前記追加の触媒ドメインは、本発明によるヌクレアーゼ融合タンパク質又はキメラタンパク質に、任意選択でペプチドリンカーにより融合されていてもよい。
【0051】
エンドヌクレアーゼ的切断は、相同的組換えの速度を速めることが知られている。したがって、別の実施形態において、この方法の遺伝子改変工程は、標的核酸配列と外来性核酸との間で相同的組換えが生じるように、標的核酸配列の一部と相同な配列を少なくとも含む外来性核酸の細胞内への導入工程を更に含む。特定の実施形態において、前記外来性核酸は、標的核酸配列の領域5'及び3'とそれぞれ相同な第1及び第2の部分を含む。これらの実施形態における前記外来性核酸はまた、標的核酸配列の領域5'及び3'との相同性を含まない、第1及び第2の部分間に配置された第3の部分を含む。標的核酸配列の切断後に、相同的組換え事象が、標的核酸配列と外来性核酸との間で刺激される。好ましくは、少なくとも50bp、好ましくは100bp超、より好ましくは200bp超の相同配列が、前記ドナーマトリクス内に使用される。特定の実施形態において、相同配列は、200bpから6000bp、より好ましくは、1000bpから2000bpであり得る。実際に、共有される核酸相同性は、切断部位の上流及び下流に隣接する領域に位置し、導入される核酸配列は、2つのアーム間に位置すべきである。
【0052】
特定の実施形態において、前記外来性核酸は、本発明による薬物耐性遺伝子をコードする導入遺伝子を含み得る。
【0053】
更なる可能なT細胞属性の工学的作製
本発明による免疫細胞は、それらのより具体的又は効率的な治療的使用に寄与する追加の属性を獲得するよう更に工学的に作製されてもよい。
【0054】
- キメラ抗原受容体
キメラ抗原受容体(CAR)は、リガンド結合ドメイン特性を利用して、免疫細胞特異性及び応答性を選択された標的へと再指向することが可能である。したがって、別の特定の実施形態において、この方法は、キメラ抗原受容体を前記リンパ球内に導入する工程を更に含む。前記キメラ抗原受容体は、特異的抗標的細胞性免疫活性を示すキメラタンパク質を生成するため、標的細胞上に存在する成分に対する結合ドメインを、T細胞受容体活性化細胞内ドメインと、例えば所望の抗原(例えば腫瘍抗原)に対する抗体ベースの特異性で結合する。一般に、CARは、T細胞抗原受容体複合体ゼータ鎖(scFv:ζ)の細胞内シグナル伝達ドメインと融合された細胞外単鎖抗体(scFv)からなり、T細胞における発現時に、モノクローナル抗体の特異性に基づいて抗原認識を再指向する能力を有する。本発明において使用されるCARの一例は、CD19抗原に対して指向するCARであり、非限定的な例として、アミノ酸配列:配列番号19又は20を含み得る。
【0055】
- 免疫チェックポイント遺伝子の不活性化
T細胞媒介性免疫は、抗原特異的細胞のクローン選択、二次リンパ組織におけるそれらの活性化及び増殖、抗原及び炎症部位へのそれらの輸送、直接的エフェクター機能の実行並びに多数のエフェクター免疫細胞に対する(サイトカイン及び膜リガンドを通じた)補助の提供を伴う、複数の連続的工程を含む。これらの工程のそれぞれは、応答を微調整する刺激及び阻害シグナルを均衡することにより調節される。「免疫チェックポイント」という用語はT細胞が発現する一群の分子を意味することが、当業者により理解されると考えられる。これらの分子は、免疫応答を抑制的調節又は阻害する「ブレーキ」として事実上役立つ。免疫チェックポイント分子には、免疫細胞を直接阻害するProgrammed Death1(PD-1、PDCD1又はCD279としても知られている、受託番号:NM_005018)、Cytotoxic T-Lymphocyte Antigen4(CTLA-4、CD152としても知られている、GenBank受託番号AF414120.1)、LAG3(CD223としても知られている、受託番号:NM_002286.5)、Tim3(HAVCR2としても知られている、GenBank受託番号:JX049979.1)、BTLA(CD272としても知られている、受託番号:NM_181780.3)、BY55(CD160としても知られている、GenBank受託番号:CR541888.1)、TIGIT(VSTM3としても知られている、受託番号:NM_173799)、LAIR1[CD305としても知られている、GenBank受託番号:CR542051.1、(Meyaard、Ademaら 1997)]、SIGLEC10(GeneBank受託番号:AY358337.1)、2B4(CD244としても知られている、受託番号:NM_001166664.1)、PPP2CA、PPP2CB、PTPN6、PTPN22、CD96、CRTAM、SIGLEC7(Nicoll、Niら 1999)、SIGLEC9(Zhang、Nicollら 2000;Ikehara、Ikeharaら 2004)、TNFRSF10B、TNFRSF10A、CASP8、CASP10、CASP3、CASP6、CASP7、FADD、FAS、TGFBRII、TGFRBRI、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD10、SKI、SKIL、TGIF1、IL10RA、IL10RB、HMOX2、IL6R、IL6ST、EIF2AK4、CSK、PAG1、SIT1、FOXP3、PRDM1、BATF(Quigley、Pereyraら 2010)、GUCY1A2、GUCY1A3、GUCY1B2、GUCY1B3が含まれるが、これに限定されない。例えば、CTLA-4は、ある種のCD4及びCD8T細胞上に発現する細胞表面タンパク質であり、抗原提示細胞上のそのリガンド(B7-1及びB7-2)により結合されたとき、T細胞活性化及びエフェクター機能が阻害される。したがって、本発明は、免疫チェックポイント、特にPD1及び/又はCTLA-4に関与する少なくとも1つのタンパク質を不活性化させることによりT細胞を改変する工程を更に含む、薬物に対して耐性である同種T細胞を工学的に作製する方法に関する。好ましい実施形態において、免疫チェックポイントに関与する少なくとも1つのタンパク質を不活性化させる工程は、免疫チェックポイント遺伝子内の標的配列を特異的に切断可能な低頻度切断型エンドヌクレアーゼを発現させることにより実現される。好ましい実施形態において、前記低頻度切断型エンドヌクレアーゼは、TALE-ヌクレアーゼである。例えば、前記TALE-ヌクレアーゼは、配列番号21から23(CTLA-4)及び配列番号24及び配列番号25(PDCD1)からなる群から選択される標的配列を特異的に切断でき、より好ましい実施形態において、前記TALE-ヌクレアーゼは、配列番号26から配列番号35からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0056】
- 免疫抑制薬耐性T細胞
同種細胞は、宿主免疫系により急速に拒絶される。放射線非照射血液製剤中に存在する同種白血球は、5から6日を超えて持続しないことが実証された(Boni、Muranskiら 2008)。したがって、同種細胞の拒絶を防止するために、宿主の免疫系は通常、ある程度抑制されなければならない。しかしながら、養子免疫療法の場合には、免疫抑制薬の使用もまた、導入された治療T細胞に対して有害な影響を有する。したがって、これらの条件において養子免疫療法アプローチを効果的に使用するために、導入細胞もまた、免疫抑制薬治療に対して耐性である必要があると考えられる。したがって、特定の実施形態において、本発明による方法は、好ましくは、免疫抑制剤の標的をコードする少なくとも1つの遺伝子を不活性化させることにより、T細胞を改変し、それらを免疫抑制剤に対して耐性にする工程を更に含む。免疫抑制剤は、複数の作用機序のうちの1つにより免疫機能を抑制する薬剤である。換言すれば、免疫抑制剤は、免疫応答の範囲を減少させる能力により示される、化合物により果たされる役割である。本発明による方法は、T細胞における免疫抑制剤の標的を不活性化させることにより、免疫療法のためにT細胞に免疫抑制薬耐性を付与することを可能にする。非限定的な例として、免疫抑制剤の標的は、免疫抑制剤の受容体、例えば、CD52、グルココルチコイド受容体(GR)、FKBPファミリー遺伝子メンバー及びサイクロフィリンファミリー遺伝子メンバーであり得る。特定の実施形態において、この方法の遺伝子改変は、工学的に作製する提供された細胞における、1つの低頻度切断型エンドヌクレアーゼの発現に依存し、結果として前記低頻度切断型エンドヌクレアーゼは、1つの標的遺伝子における切断を特異的に触媒し、そのことにより前記標的遺伝子を不活性化させる。前記低頻度切断型エンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ又はTALE-ヌクレアーゼであり得る。本発明による好ましいTALE-ヌクレアーゼは、配列番号36から41(GR)、及び配列番号54から59(CD52)からなる群から選択される標的配列を認識及び切断するものである。前記TALE-ヌクレアーゼは、好ましくは、配列番号42から配列番号53及び配列番号60から配列番号61から選択されるポリペプチド配列を含む。
【0057】
- 自殺遺伝子
別の態様において、工学的に作製されたT細胞は投与後数年間増殖及び持続できるので、投与されたT細胞の選択的除去を可能にするための安全機序を含むことが望ましい。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の方法は、組換え自殺遺伝子での前記T細胞の形質変換を含み得る。前記組換え自殺遺伝子は、対象に投与されると、前記T細胞の直接毒性及び/又は無制御増殖のリスクを減少させるために使用される(Quintarelli C、Vera F、blood 2007;Tey SK、Dotti G.、Rooney CM、boil blood marrow transplant 2007)。自殺遺伝子は、インビボの形質転換細胞の選択的除去を可能にする。特に、自殺遺伝子は、非毒性プロドラッグを細胞傷害性薬物へと変換するか、又は毒性遺伝子発現生成物を発現させる能力を有する。換言すれば、「自殺遺伝子」は、それ自体で又は他の化合物の存在下で細胞死を引き起こす生成物をコードする核酸である。かかる自殺遺伝子の代表的な例は、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼをコードするものである。追加の例は、水痘帯状ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ及び、5-フルオロシトシンを高毒性化合物5-フルオロウラシルへと変換できる細菌遺伝子シトシンデアミナーゼである。自殺遺伝子はまた、非限定的な例として、カスパーゼ-9若しくはカスパーゼ-8又はシトシンデアミナーゼを含む。カスパーゼ-9は、特定の二量化化学誘導物質(CID)を使用して活性化できる。自殺遺伝子はまた、細胞表面に発現するポリペプチドであり得、細胞を治療用モノクローナル抗体に対して感受性にすることができる。本明細書において使用される「プロドラッグ」は、毒性生成物へと変換できる、本発明の方法において有用な任意の化合物を意味する。プロドラッグは、本発明の方法において、自殺遺伝子の遺伝子産物により毒性生成物へと変換される。かかるプロドラッグの代表的な例は、インビボでHSV-チミジンキナーゼにより毒性化合物へと変換されるガンシクロビルである。ガンシクロビル誘導体は引き続いて、腫瘍細胞に対して毒性を有する。プロドラッグの他の代表的な例には、VZV-TKについてアシクロビル、FIAU[1-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)-5-ヨードウラシル]、6-メトキシプリンアラビノシド、及びシトシンデアミナーゼについて5-フルオロシトシンが含まれる。
【0058】
- 送達方法
上述の様々な方法が、目的のタンパク質、例えば薬物耐性遺伝子、低頻度切断型エンドヌクレアーゼ、キメラ抗原受容体(CAR)、自殺遺伝子を細胞内に発現させる工程を伴う。非限定的な例として、前記目的のタンパク質は、好ましくは少なくとも1つのプラスミドベクターによりコードされる導入遺伝子としてそれを導入することにより、細胞において発現し得る。ポリペプチドは、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの細胞内への導入の結果として、細胞において発現してもよい。或いは、前記ポリペプチドは、細胞外に生成され、次にその内部に導入され得る。ポリヌクレオチドコンストラクトを細胞内に導入するための方法は、当技術分野において知られており、非限定的な例として、ポリヌクレオチドコンストラクトが細胞のゲノム内に組み込まれる安定的形質転換方法、ポリヌクレオチドコンストラクトが細胞のゲノム内に組み込まれない一過性形質転換方法及びウイルス媒介性の方法を含む。前記ポリヌクレオチドは、例えば、組換えウイルスベクター(例えばレトロウイルス、アデノウイルス)、リポソーム等により細胞内に導入されてもよい。例えば、一過性形質転換方法は、例えば、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション又はパーティクルボンバードメントを含む。前記ポリヌクレオチドは、細胞において発現させることに鑑みて、ベクター、より具体的にはプラスミド又はウイルスに含まれていてもよい。前記プラスミドベクターは、前記ベクターを受けた細胞の同定及び/又は選択を提供する選択マーカーを含み得る。異なる導入遺伝子が、1つのベクターに含まれ得る。前記ベクターは、リボソームスキップ配列をコードする核酸配列、例えば2Aペプチドをコードする配列を含み得る。ピコルナウイルスのアフトウイルス亜群において同定された2Aペプチドは、あるコドンから次のコドンへとリボソーム「スキップ」を引き起こし、これらコドンによりコードされる2つのアミノ酸の間にはペプチド結合が形成されない[Donnellyら、J. of General Virology 82:1013〜1025頁(2001);Donnellyら、J. of Gen. Virology 78:13〜21頁(1997);Doroninaら、Mol. And. Cell. Biology 28(13):4227〜4239頁(2008);Atkinsら、RNA 13:803〜810頁(2007)を参照のこと]。「コドン」とは、リボソームにより1つのアミノ酸残基へと翻訳されるmRNA上(又はDNA分子のセンス鎖上)の3つのヌクレオチドを意味する。したがって、2つのポリペプチドが、mRNA内の単一の連続するオープンリーディングフレーム内の2Aオリゴペプチド配列により分離されるとき、それらポリペプチドをそのフレームから合成できる。かかるリボソームスキップ機序は、当技術分野においてよく知られており、単一のメッセンジャーRNAによりコードされる複数のタンパク質の発現のために複数のベクターにより使用されることが知られている。
【0059】
本発明のより好ましい実施形態において、本発明によるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えばエレクトロポレーションにより、細胞内に直接導入されたmRNAであり得る。本発明者らは、T細胞におけるmRNAエレクトロポレーションにとって最適な条件を決定した。本発明者らは、パルス電場の使用により、細胞内への物質の送達のために生細胞を一過的に透過処理することを可能にするcytoPulse技術を使用した。PulseAgile(BTX Havard Apparatus、84 October Hill Road、Holliston、MA 01746、USA)エレクトロポレーション波形の使用に基づくこの技術は、パルス幅、強度とともに、パルス間の間隔の正確な制御を可能にする(米国特許第6,010,613号及び国際PCT出願第WO2004083379号)。すべてのこれらのパラメータは、最小限の死亡率を伴う高いトランスフェクション効率のための最良の条件に達するために変更できる。基本的に、最初の高電場パルスが、細孔形成を可能にし、一方で続くより低い電場パルスが、ポリヌクレオチドが細胞内に移動することを可能にする。
【0060】
- T細胞の活性化及び増殖
T細胞の遺伝子改変の前後を問わず、例えば、米国特許第6,352,694号;米国特許第6,534,055号;米国特許第6,905,680号;米国特許第6,692,964号;米国特許第5,858,358号;米国特許第6,887,466号;米国特許第6,905,681号;米国特許第7,144,575号;米国特許第7,067,318号;米国特許第7,172,869号;米国特許第7,232,566号;米国特許第7,175,843号;米国特許第5,883,223号;米国特許第6,905,874号;米国特許第6,797,514号;米国特許第6,867,041号;及び米国特許出願公開第20060121005号に記載の方法を一般に使用して、T細胞を活性化及び増殖させ得る。T細胞は、インビトロ又はインビボで増殖させ得る。一般に、本発明のT細胞は、T細胞のための活性化シグナルを創出するために、T細胞表面上のCD3 TCR複合体及び副刺激分子を刺激する薬剤との接触により増殖させる。例えば、化学物質、例えばカルシウムイオノフォアA23187、ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)、又はマイトジェンレクチン、例えばフィトヘマグルチニン(PHA)を、T細胞のための活性化シグナルを創出するために使用できる。非限定的な例として、例えば抗CD3抗体、若しくはその抗原結合断片、又は表面上に固定化された抗CD2抗体との接触により、或いはカルシウムイオノフォアと併用するタンパク質キナーゼC活性化剤(例えばブリオスタチン)との接触により、T細胞集団をインビトロで刺激できる。T細胞表面上のアクセサリー分子の副刺激については、アクセサリー分子と結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞の集団を、T細胞増殖の刺激に適切な条件下で、抗CD3抗体及び抗CD28抗体と接触させ得る。CD4+ T細胞又はCD8+ T細胞のいずれかの増殖を刺激するために、抗CD3抗体及び抗CD28抗体。例えば、各シグナルを提供する薬剤は、溶液中であっても表面に結合されていてもよい。当業者が容易に認める通り、細胞に対する粒子の比は、標的細胞と比較した粒径に依存してもよい。
【0061】
T細胞培養に適切な条件には、増殖及び生存性に必要な因子、例えば血清(例えばウシ胎仔又はヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-g、IL-4、IL-7、GM-CSF、-10、-2、IL-15、TGFp、IL-21及びTNF-又は当業者に知られている細胞の成長のための任意の他の添加剤を含有し得る適切な培地[例えばMinimal Essential Media又はPMI Media1640又は、X-vivo5、(Lonza社)]が含まれる。細胞の成長のための他の添加剤には、界面活性剤、プラスマネート、及び還元剤、例えばN-アセチル-システイン及び2-メルカプトエタノールが含まれるが、これに限定されない。培地は、RPMI1640、AIM-V、DMEM、MEM、a-MEM、F-12、X-Vivo1、及びX-Vivo20、Optimizerを、添加されるアミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、及びビタミンとともに、無血清か又は適量の血清(又は血漿)若しくは所定のセットのホルモン、並びに/若しくはT細胞の成長及び増殖に十分な量のサイトカインを添加されるかのいずれかで、含み得る。抗生物質、例えばペニシリン及びストレプトマイシンは、実験培地にのみ含まれ、対象内に注入される細胞の培地には含まれない。標的細胞は、成長を支持するのに必要な条件下、例えば適切な温度(例えば37℃)及び雰囲気(例えば大気プラス5%CO2)で維持される。異なる刺激時間に曝露されたT細胞は、異なる特徴を示し得る。
【0062】
治療への適用
別の実施形態において、前述の通り得られた前記単離T細胞は、同種養子細胞免疫療法において使用できる。特に、本発明による前記T細胞は、それを必要とする患者における癌、感染症又は自己免疫疾患を治療するために使用できる。別の態様において、本発明は、それを必要とする患者を治療するための方法に依存し、前記方法は、
(a)前述の方法のうちの任意の1つにより得られる単離T細胞を提供する工程、
(b)前記細胞を前記患者に投与する工程
のうちの少なくとも1つを含む。
【0063】
一実施形態において、本発明の前記T細胞は、強力なインビボ増殖を経ることができ、長時間持続できる。
【0064】
前記治療は、寛解的、治癒的又は予防的であり得る。本発明は、典型的にはドナーから得られるT細胞の、非アロ反応性細胞への形質転換を可能にする限りにおいて、同種免疫療法に特に適する。これは、標準的プロトコルの下でなされ得、必要な回数で再現され得る。得られた改変T細胞は、1人又は複数の患者に投与され、「既製」治療生成物として入手可能とされる。
【0065】
本開示の方法とともに使用できる細胞は、前のセクションに記載している。前記治療は、癌、ウイルス感染症、自己免疫異常と診断される患者を治療するために使用できる。治療できる癌には、血管新生していないか、又はまだ実質的に血管新生していない腫瘍が、血管形成した腫瘍とともに含まれる。癌は、非固形腫瘍(例えば、血液系腫瘍、例えば白血病及びリンパ腫)を含んでいてもよく、又は固形腫瘍を含んでいてもよい。本発明の薬物に対して耐性である同種T細胞で治療される癌のタイプには、癌腫、芽細胞腫、及び肉腫、並びにある種の白血病又はリンパ性悪性疾患、良性及び悪性腫瘍、並びに悪性疾患、例えば肉腫、癌腫、及び黒色腫が含まれるが、これに限定されない。成人腫瘍/癌及び小児腫瘍/癌もまた含まれる。本発明の実施形態において、小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)及び筋萎縮性骨髄腫白血病(amyotrophic myeloma leukemia)(AML)疾患は、典型的に、本発明による同種薬物耐性T細胞により治療される。これはそれぞれ、薬物耐性KO TRAC CD19+ CAR T細胞及び薬物耐性KO TRAC CD123+ T細胞を使用することにより達成できる。
【0066】
それは、抗体療法、化学療法、サイトカイン療法、樹状細胞療法、遺伝子療法、ホルモン療法、レーザー光療法及び放射線療法の群から選択される癌に対する1つ又は複数の治療法と組み合わせた治療であり得る。
【0067】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記治療は、免疫抑制薬治療を受けている患者内に投与される。本発明は、好ましくは、薬物耐性遺伝子の発現又は薬物感受性化遺伝子の不活性化のいずれかにより、本発明による少なくとも1つの薬剤に対して耐性にされた細胞又は細胞集団に依存する。この態様において、薬物治療は、患者内での本発明によるT細胞の選択及び増殖に役立つはずである。
【0068】
本発明による細胞又は細胞集団の投与は、任意の簡便な仕方で、例えばエアロゾル吸入、注射、摂取、注入、内植又は移植により実施できる。本明細書に記載の組成物は、皮下、皮内、腫瘍内、節内、髄内、筋肉内、頭蓋内で、静脈内若しくはリンパ内注射により、又は腹腔内で患者に投与できる。一実施形態において、本発明の細胞組成物は、好ましくは、静脈内注射により投与される。
【0069】
細胞又は細胞集団の投与は、体重1kg当たり103〜1010個の細胞、好ましくは体重1kg当たり105〜106個の細胞の投与からなり得、これらの範囲内のすべての整数値の細胞数を含める。細胞又は細胞集団は、1回又は複数の用量で投与できる。別の実施形態において、前記有効量の細胞は、単一用量として投与される。別の実施形態において、前記有効量の細胞は、一定期間にわたって2回以上の用量として投与される。投与のタイミングは、管理する医師の判断に任され、患者の臨床状態に依存する。細胞又は細胞集団は、任意の供給源、例えば血液バンク又はドナーから得られてもよい。個体の必要性は変化する一方で、特定の疾患又は病態についての所定の細胞タイプの有効量の最適な範囲の決定は、当業者の能力の範囲内である。有効量とは、治療的又は予防的利益を提供する量を意味する。投与される用量は、レシピエントの年齢、健康状態及び体重、併用治療をしていればその種類、治療の頻度並びに所望の効果の性質に依存する。
【0070】
別の実施形態において、前記有効量の細胞又はそれらの細胞を含む医薬組成物は、非経口投与される。前記投与は、静脈内投与であり得る。前記投与は、腫瘍内に注射により直接的になされ得る。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態において、細胞は、薬剤での治療、例えば抗ウイルス療法、シドホビル及びインターロイキン-2、シタラビン(ARA-Cとしても知られている)又はMS患者のためのナタリズマブ治療又は乾癬患者のためのエファリズマブ治療又はPML患者のための他の治療を含むが、これに限定されない任意の数の関連する治療法と併用して(例えばそれらの前に、それらと同時に、又はそれらの後に)患者に投与される。更なる実施形態において、本発明のT細胞は、化学療法、放射線、免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノール酸、及びFK506、抗体、又は他の免疫除去剤、例えばCAMPATH、抗CD3抗体又は他の抗体療法、シトキシン(cytoxin)、フルダラビン(fludaribine)、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、及び照射と組み合わせて使用できる。これらの薬物は、カルシウム依存性ホスファターゼカルシニューリン(シクロスポリン及びFK506)を阻害するか、又は成長因子誘導性シグナル伝達に重要なp70S6キナーゼ(ラパマイシン)を阻害するかのいずれかである(Liuら、Cell 66:807〜815頁、11;Hendersonら、Immun. 73:316〜321頁、1991;Biererら、Citrr. Opin. mm n. 5:763〜773頁、93)。更なる実施形態において、本発明の細胞組成物は、骨髄移植、化学療法剤、例えばフルダラビン、体外照射療法(XRT:external-beam radiation therapy)、シクロホスファミド、又は抗体、例えばOKT3若しくはCAMPATHのいずれかを使用したT細胞除去療法と併用して(例えばそれらの前に、それらと同時に、又はそれらの後に)患者に投与される。別の実施形態において、本発明の細胞組成物は、B細胞除去療法、例えばCD20と反応する薬剤、例えばリツキサン後に投与される。例えば、一実施形態において、対象は、大量化学療法での標準的治療を受け、続いて末梢血幹細胞移植を受けてもよい。いくつかの実施形態において、移植後に、対象は、増殖させた本発明の免疫細胞の注入を受ける。追加の実施形態において、増殖させた細胞は、手術の前又は後に投与される。
【0072】
医薬組成物
本発明の単離T細胞は、単独で、或いは希釈剤及び/又は他の成分、例えばIL-2又は他のサイトカイン若しくは細胞集団と組み合わせた医薬組成物としてのいずれかで投与されてもよい。簡潔に述べると、本発明の医薬組成物は、本明細書に記載のT細胞を、1種又は複数の薬学的又は生理学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わせて含んでいてもよい。かかる組成物は、緩衝液、例えば中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水等;炭水化物、例えばグルコース、マンノース、スクロース又はデキストラン、マンニトール;タンパク質;ポリペプチド又はアミノ酸、例えばグリシン;抗酸化剤;キレート化剤、例えばEDTA又はグルタチオン;補助剤(例えば水酸化アルミニウム);及び保存剤を含んでいてもよい。本発明の組成物は、好ましくは、静脈内投与のために配合される。本発明の医薬組成物は、治療(又は予防)される疾患に対し適切な仕方で投与されてもよい。適切な用量は臨床試験により決定され得るとはいえ、投与の量及び頻度は、患者の病態、並びに患者の疾患のタイプ及び重症度等の因子により決定される。
【0073】
単離CAR T細胞の細胞傷害性を試験するための方法及びその使用のためのキット
本発明の別の実施形態は、単離キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、例えば前述のものの薬物耐性標的細胞に対する細胞傷害性を試験するための方法を包含し、前記単離CAR T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するとともに、標的細胞は、少なくとも特定の表面抗原(及び任意選択でマーカー遺伝子、例えばルシフェラーゼ)を発現し、この方法は、
(a)前記T細胞及び標的細胞の集団の両方を調製する工程、
(b)前記T細胞集団を少なくとも前記特定の標的細胞とともにインキュベートする工程、
(c)前記特定の標的細胞の生存率を決定する工程
を含む。
【0074】
耐性遺伝子は、以前のセクションで提示されたもののなかから選択できる。
【0075】
好ましくは、前記耐性遺伝子は、dCKである。
【0076】
本発明において選択される表面抗原は、キメラ抗原受容体(CAR)によりT細胞において発現させ得るものであり、標的とされる細胞に依存し、通常は癌性細胞に特異的である。好ましくは、CAR T細胞において使用される表面抗原はCD19であるが、これは、この抗原がある種のリンパ腫又は白血病、例えば急性リンパ性白血病(ALL)において特異的に発現されるようであるからである。
【0077】
最後に、本発明は、標的細胞に対するCAR T細胞の細胞傷害性を試験するための方法を実施するためのキットに関し、このキットは、
(d)抗原に特異的なCARを賦与されている前記T細胞集団、
(e)前記抗原を発現する前記標的細胞、
(f)任意選択で培養培地
を含み、T細胞及び標的細胞の両方が、本発明に従って化学療法薬に対して耐性にされている。
【0078】
本出願は、プリンヌクレオチド類似体(PNA)薬物及び6TGに対して耐性であるT細胞を工学的に作製するための一般的方法のための保護を求めるだけではない。それはより広く、化学療法薬に対して耐性であるとともに同種でもあるT細胞を得る方法に関し、以下の対象のうちの少なくとも1つを包含する。
1)免疫療法のための同種及び薬物耐性T細胞を工学的に作製する方法であって、
(a)T細胞を提供する工程、
(b)前記T細胞が感受性である、少なくとも1つの化学療法薬を選択する工程、
(c)T細胞受容体(TC)成分をコードする少なくとも1つの遺伝子を不活性化させることにより、前記T細胞を改変する工程、
(d)前記化学療法薬に対する薬物耐性を付与するために前記T細胞を改変する工程、
(e)任意選択で前記薬物の存在下で、前記工学的に作製されたT細胞を増殖させる工程
を含む、方法。
2)TCR成分をコードする少なくとも1つの遺伝子を、TCR成分をコードする少なくとも1つの遺伝子内で標的配列を切断可能な低頻度切断型エンドヌクレアーゼを発現させることにより不活性化する、請求項1に記載の方法。
3)前記薬物耐性が、少なくとも1つの薬物感受性化遺伝子を不活性化させることによりT細胞に付与される、請求項1又は2に記載の方法。
4)前記薬物感受性化遺伝子を、前記薬物感受性化遺伝子内で標的配列を切断可能な低頻度切断型エンドヌクレアーゼを発現させることにより不活性化する、請求項3に記載の方法。
5)前記低頻度切断型エンドヌクレアーゼがTALE-ヌクレアーゼである、請求項4に記載の方法。
6)前記薬物感受性化遺伝子がdCKである、請求項3から5に記載の方法。
7)dCK遺伝子をTALE-ヌクレアーゼにより不活性化する、請求項6に記載の方法。
8)TALE-ヌクレアーゼのdCK遺伝子不活性化が、配列番号63及び配列番号64のTALE-ヌクレアーゼを使用することにより実施され、dCK標的配列が配列番号62である、請求項7に記載の方法。
9)前記薬物感受性化遺伝子がHPRTである、請求項3から5に記載の方法。
10)前記薬物耐性が、少なくとも1つの薬物耐性遺伝子を発現させることによりT細胞に付与される、請求項1に記載の方法。
11)前記薬物耐性遺伝子が、抗葉酸剤治療、好ましくはメトトレキセート(MTX)に対する耐性を付与する変異ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)タンパク質である、請求項10に記載の方法。
12)前記変異DHFRが、配列番号14のG15、L22、F31、又はF34からなる群から選択される位置に少なくとも1つのアミノ酸変異を含む、請求項11に記載の方法。
13)前記変異DHFRが、配列番号14の位置L22及びF31に2つのアミノ酸変異を含む、請求項12に記載の方法。
14)前記薬物耐性遺伝子が、IMPDH阻害剤、好ましくはミコフェノール酸モフェチル(MMF)に対する耐性を付与する変異イノシン-5'-一リン酸デヒドロゲナーゼII(IMPDH2)である、請求項10に記載の方法。
15)前記変異IMPDH2が、配列番号15の位置T333及び/又はS351に少なくとも1つのアミノ酸変異を含む、請求項14に記載の方法。
16)前記薬物耐性遺伝子が、カルシニューリン阻害剤、好ましくはFK506及び/又はCsAに対する耐性を付与する変異カルシニューリン(CN)ヘテロダイマーa及び/又はbである、請求項10に記載の方法。
17)前記変異カルシニューリンヘテロダイマーaが、配列番号16のV314、Y341、M347、T351、W352、L354及びK360からなる群から選択される位置に少なくとも1つのアミノ酸変異を含む、請求項16に記載の方法。
18)前記変異カルシニューリンヘテロダイマーaが、配列番号16の位置T351及びL354にアミノ酸変異を含む、請求項17に記載の方法。
19)前記変異カルシニューリンヘテロダイマーaが、配列番号17の位置V314及びY341にアミノ酸変異を含む、請求項17に記載の方法。
20)前記変異カルシニューリンヘテロダイマーbが、配列番号17のV120、N123、L124及びK125からなる群から選択される位置に少なくとも1つのアミノ酸変異を含む、請求項16に記載の方法。
21)前記変異カルシニューリンヘテロダイマーbが、配列番号17の位置L124及びK125にアミノ酸変異を含む、請求項20に記載の方法。
22)前記薬物耐性遺伝子が、前記薬物耐性遺伝子をコードする導入遺伝子をT細胞内に導入することによりT細胞において発現する、請求項10から21のいずれか一項に記載の方法。
23)前記薬物耐性遺伝子が、内在性遺伝子の少なくとも1つの相同配列及び薬物耐性遺伝子をコードする配列を含むドナーマトリクスを、内在性遺伝子と前記ドナーマトリクスとの間で相同的組換えが生じるようにT細胞内に導入することによりT細胞において発現する、請求項10から21のいずれか一項に記載の方法。
24)相同的組換え速度が速められるように、前記内在性遺伝子内の標的配列を選択的に切断可能な低頻度切断型エンドヌクレアーゼをT細胞内に導入する工程を更に含む、請求項23に記載の方法。
25)前記低頻度切断型エンドヌクレアーゼがTALE-ヌクレアーゼである、請求項24に記載の方法。
26)キメラ抗原受容体をT細胞において発現させる工程を更に含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
27)前記キメラ抗原受容体がCD19+又はCD123+である、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
28)免疫チェックポイント遺伝子を不活性化させる工程を更に含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
29)前記工学的に作製されたT細胞を患者の血中で増殖させる、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
30)前記工学的に作製されたT細胞をインビトロで増殖させる、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
31)前記工学的に作製されたT細胞を前記薬物の存在下で増殖させる、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
32)請求項1から31のいずれか一項に記載の方法から得られる単離T細胞又は細胞株。
33)T細胞受容体成分をコードする少なくとも1つの破壊された遺伝子を含む、薬物に対して耐性である単離T細胞。
34)少なくとも1つの薬物耐性遺伝子を発現する、請求項33に記載の単離T細胞。
35)前記薬物耐性遺伝子が、ble遺伝子、mcrA遺伝子、並びに変異体DHFR、変異体IMPDH2、変異体カルシニューリン及び変異体AGTをコードする遺伝子からなる群から選択される、請求項33に記載の単離T細胞。
36)少なくとも1つの破壊された薬物感受性化遺伝子、好ましくはHPRT遺伝子を含む、請求項33に記載の単離T細胞。
37)抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を賦与されている、請求項32から36のいずれか一項に記載の単離T細胞。
38)前記CARが、CD19+細胞又はCD123+細胞を標的とする、請求項37に記載の単離T細胞。
39)薬剤としての使用のための、請求項32から38のいずれか一項に記載の単離T細胞。
40)癌、自己免疫状態又は病原体による感染症を治療するための、請求項32から39のいずれか一項に記載の単離T細胞。
41)急性リンパ芽球性白血病(ALL)又は筋萎縮性骨髄腫白血病(AML)の治療としての使用のための、請求項40に記載の単離T細胞。
42)請求項32から41のいずれか一項に記載の少なくとも1つの単離T細胞を含む医薬組成物。
43)それを必要とする患者を治療するための方法であって、
(a)請求項1から27のいずれか一項に記載の方法に従ってT細胞の集団を調製する工程、
(b)前記形質転換T細胞を前記患者に投与する工程
を含む、方法。
44)前記患者が、請求項1から31に記載の方法において使用される前記薬物で治療されている、請求項36に記載の方法。
45)請求項32から41のいずれか一項に規定の単離キメラ抗原受容体(CAR)T細胞の薬物耐性標的細胞に対する細胞傷害性を試験するための方法であって、単離CAR T細胞が、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するとともに、標的細胞が、少なくとも特定の表面抗原(及び任意選択でマーカー遺伝子、例えばルシフェラーゼ)を発現し、
(a)前記T細胞及び標的細胞の集団の両方を調製する工程、
(b)前記T細胞集団を少なくとも前記特定の標的細胞とともにインキュベートする工程、
(c)前記特定の標的細胞の生存率を決定する工程
を含む、方法。
46)前記耐性遺伝子がdCKである、請求項45に記載の方法。
47)前記表面抗原がCD19である、請求項44又は請求項45に記載の方法。
48)前記標的がCD19+ルシフェラーゼ+Daudi細胞である、請求項47に記載の方法。
49)標的細胞に対するCAR T細胞の細胞傷害性を試験するための方法を実施するためのキットであって、
(a)抗原に特異的なCARを賦与されているT細胞集団、
(b)前記抗原を発現する標的細胞
を含み、前記T細胞及び標的細胞の両方が、化学療法薬に対して耐性にされているキット。
【0079】
定義
上の説明において、多くの用語が広範に使用されている。以下の定義は、本実施形態の理解を容易にするために提供される。
【0080】
- ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基は、本明細書において1文字コードにより指定され、例えば、QはGin又はグルタミン残基を意味し、RはArg又はアルギニン残基を意味し、DはAsp又はアスパラギン酸残基を意味する。
【0081】
- ヌクレオチドは、以下の通り指定される。1文字コードが、ヌクレオシドの塩基を指定するために使用され、aはアデニン、tはチミン、cはシトシン、gはグアニンである。変性ヌクレオチドについては、rはg又はaを表し(プリンヌクレオチド)、kはg又はtを表し、sはg又はcを表し、wはa又はtを表し、mはa又はcを表し、yはt又はcを表し(ピリミジンヌクレオチド)、dはg、a又はtを表し、vはg、a又はcを表し、bはg、t又はcを表し、hはa、t又はcを表し、nはg、a、t又はcを表す。
【0082】
- 本明細書において使用される「核酸」又は「核酸分子」は、ヌクレオチド及び/又はポリヌクレオチド、例えばデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により生成される断片、並びにライゲーション、切断、エンドヌクレアーゼ作用、及びエキソヌクレアーゼ作用のいずれかにより生成される断片を指す。核酸分子は、天然ヌクレオチド(例えばDNA及びRNA)であるモノマー、若しくは天然ヌクレオチドの類似体(例えば、天然ヌクレオチドのエナンチオマー型)、又は両方の組合せから構成され得る。核酸は、一本鎖又は二本鎖のいずれかであり得る。
【0083】
- 「遺伝子」とは、染色体に沿って直線状に配置されたDNAのセグメントからなる遺伝の基本単位を意味し、これは、特定のタンパク質又はタンパク質のセグメント、小型RNA等をコードする。遺伝子は、典型的には、プロモーター、5'非翻訳領域、1つ又は複数のコーディング配列(エクソン)、任意選択でイントロン、3'非翻訳領域を含む。遺伝子は、ターミネーター、エンハンサー及び/又はサイレンサーを更に含んでいてもよい。
【0084】
- 「導入遺伝子」という用語は、(例えば1つ又は複数のポリペプチドをコードする)核酸配列を意味し、これは、それが導入される宿主細胞に対して部分的若しくは全体的に非相同、すなわち外来性であるか、又はそれが導入される宿主細胞の内在性遺伝子と相同であるが、それが挿入される細胞のゲノムを改変するように細胞ゲノム内に挿入されるよう設計できるか、又は挿入できる(例えば、それは天然の遺伝子とは異なる位置に挿入されるか、又はその挿入がノックアウトをもたらす)。導入遺伝子は、1つ又は複数の転写制御配列及びポリペプチドをコードする選択された核酸の最適な発現に必要であり得る任意の他の核酸、例えばイントロンを含み得る。導入遺伝子によりコードされるポリペプチドは、導入遺伝子が挿入される細胞において発現しないか、又は発現するが生物学的に活性でないかのいずれかであり得る。
【0085】
- 「ゲノム」とは、細胞に含有される遺伝物質全体、例えば核ゲノム、葉緑体ゲノム、ミトコンドリアゲノムを意味する。
【0086】
- 「変異」とは、ポリヌクレオチド(cDNA、遺伝子)又はポリペプチド配列における1つ又は複数のヌクレオチド/アミノ酸の置換、欠失、挿入を意図する。前記変異は、遺伝子のコーディング配列又はその調節配列に影響し得る。それはまた、ゲノム配列の構造又はコードされたmRNAの構造/安定性に影響し得る。
【0087】
- 「低頻度切断型エンドヌクレアーゼ」という用語は、DNA又はRNA分子、好ましくはDNA分子内の核酸間の結合の加水分解(切断)を触媒可能な野生型又はバリアント酵素を指す。特に、前記ヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼ、より好ましくは、高度に特異的な低頻度切断型エンドヌクレアーゼであり得、10から45塩基対(bp)の長さの範囲、通常は10から35塩基対の長さの範囲の核酸標的部位を認識する。本発明によるエンドヌクレアーゼは、「標的配列」と更に呼ばれる特定のポリヌクレオチド配列で、核酸を認識及び切断する。低頻度切断型エンドヌクレアーゼは、特定のポリヌクレオチド配列で一本鎖又は二本鎖切断を認識及び生成できる。
【0088】
特定の実施形態において、本発明による前記低頻度切断型エンドヌクレアーゼは、Cas9エンドヌクレアーゼであり得る。実際に近年、II型原核生物CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short palindromic Repeats)適応免疫系[概説については、(Sorek、Lawrenceら 2013)を参照のこと]から、RNAにガイドされたCas9ヌクレアーゼに基づく新たなゲノム遺伝子工学ツールが開発されてきた(Gasiunas、Barrangouら 2012;Jinek、Chylinskiら 2012;Cong、Ranら 2013;Mali、Yangら 2013)。CRISPR関連(Cas)系は、最初は細菌において発見され、ウイルス性又はプラスミドのいずれかの外来DNAに対する防衛として機能する。CRISPR媒介ゲノム遺伝子工学は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる短配列モチーフが多くの場合隣接する標的配列の選択により最初は進められる。標的配列選択後、この標的配列と相補的な特定のcrRNAが設計される。CRISPR II型系において必要とされるトランス活性化crRNA(tracrRNA)が、crRNAとペアになり、提供されるCas9タンパク質と結合した。Cas9は、tracrRNAとcRNAとの塩基対形成を促進する分子アンカーとして作用する(Deltcheva、Chylinskiら 2011)。この三重複合体において、二重tracrRNA:crRNA構造は、エンドヌクレアーゼCas9を同族標的配列へと指向するガイドRNAとして作用する。Cas9-tracrRNA:crRNA複合体による標的認識は、標的配列とcrRNAとの間の相同性について標的配列を走査することにより開始される。標的配列-crRNA相補性に加えて、DNAターゲッティングは、プロトスペーサーと隣接する短モチーフ(プロトスペーサー隣接モチーフ-PAM)の存在を必要とする。二重NAと標的配列との間の対形成後、Cas9は続いて、PAMモチーフの3塩基上流に平滑末端二本鎖切断を導入する(Garneau、Dupuisら 2010)。本発明において、例えばTCR成分をコードする遺伝子を特異的に標的とするために、ガイドRNAを設計できる。ガイドRNAと標的配列との間の対形成後、Cas9は、TCR遺伝子内の切断を誘導する。
【0089】
低頻度切断型エンドヌクレアーゼはまた、メガヌクレアーゼの名称でも知られているホーミングエンドヌクレアーゼであり得る。かかるホーミングエンドヌクレアーゼは、当技術分野によく知られている(Stoddard 2005)。ホーミングエンドヌクレアーゼは、高度に特異的であり、12から45塩基対(bp)の長さの範囲、通常は14から40bpの長さの範囲のDNA標的部位を認識する。本発明によるホーミングエンドヌクレアーゼは、例えば、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼ、HNHエンドヌクレアーゼ、又はGIY-YIGエンドヌクレアーゼに相当してもよい。本発明による好ましいホーミングエンドヌクレアーゼは、I-Crelバリアントである。「バリアント」エンドヌクレアーゼ、すなわち自然界に天然で存在せず、遺伝子工学又はランダム変異誘発により得られるエンドヌクレアーゼは、野生型エンドヌクレアーゼにより認識されるのとは異なるDNA配列に結合できる(国際出願第WO2006/097854号を参照のこと)。
【0090】
前記低頻度切断型エンドヌクレアーゼは、モジュラーDNA結合ヌクレアーゼであり得る。モジュラーDNA結合ヌクレアーゼとは、エンドヌクレアーゼの少なくとも1つの触媒ドメイン及び少なくとも1つのDNA結合ドメインを含む任意の融合タンパク質又は核酸標的配列を特定するタンパク質を意味する。DNA結合ドメインは、一般に、二本鎖又は一本鎖ポリヌクレオチドを認識する少なくとも1つのモチーフを含有する、独立に折り畳まれたポリペプチド又はタンパク質ドメインにより形成されるRNA又はDNA結合ドメインである。特定の核酸配列に結合する能力を有する多くのかかるポリペプチドが、当技術分野において記載されてきた。かかる結合ドメインは、多くの場合、非限定的な例として、ヘリックスターンヘリックスドメイン、ロイシンジッパードメイン、翼状ヘリックスドメイン、ヘリックスループヘリックスドメイン、HMGボックスドメイン、イムノグロブリンドメイン、B3ドメイン又は工学的に作製されたジンクフィンガードメインを含む。
【0091】
本発明の好ましい実施形態によれば、DNA結合ドメインは、転写活性化因子様エフェクター(TALE)に由来し、配列特異性は、キサントモナス(Xanthomonas)又はラルストニア(Ralstonia)細菌タンパク質を起源とする一連の33〜35アミノ酸リピートにより駆動される。これらのリピートは、塩基対との相互作用を特定する2つのアミノ酸位置により本質的に異なる(Boch、Scholzeら 2009;Moscou及びBogdanove 2009)。DNA標的における各塩基対は単一のリピートにより接触され、特異性はリピートの2つのバリアントアミノ酸から生じる[いわゆるリピート可変ジペプチド(repeat variable dipeptide)、RVD]。TALE結合ドメインは、標的配列の最初のチミン塩基(T0)の要件に寄与するN末端転移ドメイン及び核局在化シグナル(NLS)を含有するC末端ドメインを更に含んでいてもよい。TALE核酸結合ドメインは、一般に、複数のTALEリピート配列を含む工学的に作製されたコアTALE骨格に相当し、各リピートは、TALE認識部位の各ヌクレオチド塩基に特異的なRVDを含む。本発明において、前記コア骨格の各TALEリピート配列は、30から42個のアミノ酸、より好ましくは、33又は34個からなり、位置12及び13に位置する2つの決定的に重要なアミノ酸(いわゆるリピート可変ジペプチド、RVD)が、前記TALE結合部位配列の1つのヌクレオチドの認識を媒介する。対応する2つの決定的に重要なアミノ酸は、特に33又は34アミノ酸長よりも長いTALEリピート配列において、位置12及び13以外に位置し得る。好ましくは、異なるヌクレオチドの認識と関連付けられるRVDは、Cの認識についてHD、Tの認識についてNG、Aの認識についてNI、G又はAの認識についてNNである。別の実施形態において、決定的に重要なアミノ酸12及び13は、ヌクレオチドA、T、C及びGに対するそれらの特異性を調節し、特にこの特異性を増強するために、他のアミノ酸残基へと変異し得る。TALE核酸結合ドメインは、通常は、8個から30個の間のTALEリピート配列を含む。より好ましくは、本発明の前記コア骨格は、8個から20個の間のTALEリピート配列、やはりより好ましくは15個のTALEリピート配列を含む。それはまた、前記TALEリピート配列のセットのC末端に位置する20個のアミノ酸からなる追加の単一切断TALEリピート配列、すなわち、追加のC末端ハーフTALEリピート配列を含み得る。
【0092】
他の工学的に作製されたDNA結合ドメインは、モジュラー1塩基対1塩基対応特異的核酸結合ドメイン(MBBBD:modular base-per-base specific nucleic acid binding domain)である(PCT/US2013/051783)。前記MBBBDは、例えば、新規に同定されたタンパク質、すなわち最近シークエンシングされた内部共生真菌バークホルデリア・リゾキニカ(Burkholderia Rhizoxinica)のゲノムからのEAV36_BURRH、E5AW43_BURRH、E5AW45_BURRH及びE5AW46_BURRHタンパク質から工学的に作製できる(Lackner、Moebiusら 2011)。MBBBDタンパク質は、塩基特異的な約31から33個のアミノ酸のモジュールを含む。これらのモジュールは、キサントモナスTALEコモンリピートとの40%未満の配列同一性を示す一方で、それらは、より大きなポリペプチド配列可変性を提示する。それらが組み上がるとき、これらのモジュラーポリペプチドはまた、キサントモナスTALE-ヌクレアーゼときわめて類似した仕方で特定の核酸配列を標的とし得る。本発明の好ましい実施形態によれば、前記DNA結合ドメインは、10個から30個の間のモジュール、好ましくは16個から20個の間のモジュールを含む工学的に作製されたMBBBD結合ドメインである。バークホルデリア及びキサントモナスからの上のタンパク質からの異なるドメイン(モジュール、N及びC末端)は、特定の核酸配列に対する結合特性を有する新たなタンパク質又は骨格を工学的に作製するのに有用である。特に、工学的に作製されたMBBBDの追加のN末端及びC末端ドメインは、天然TALE、例えば非限定的な例としてAvrBs3、PthXo1、AvrHah1、PthA、Tal1cに由来し得る。
【0093】
- 「TALE-ヌクレアーゼ」又は「MBBBD-ヌクレアーゼ」は、典型的には転写活性化因子様エフェクタータンパク質(TALE)又はMBBBD結合ドメインに由来するDNA結合ドメインと、エンドヌクレアーゼ触媒ドメインとの融合から得られる工学的に作製されたタンパク質を指す。かかる触媒ドメインは、好ましくは、ヌクレアーゼドメイン、より好ましくはエンドヌクレアーゼ活性を有するドメイン、例えばI-TevI、ColE7、NucA及びFok-Iである。特定の実施形態において、前記ヌクレアーゼは、単量体TALE-ヌクレアーゼ又はMBBBD-ヌクレアーゼである。単量体ヌクレアーゼは、特異的認識及び切断のための二量化、例えば、WO2012138927に記載の工学的に作製されたDNA結合ドメインとI-TevIの触媒ドメインとの融合等を必要としないヌクレアーゼである。別の特定の実施形態において、前記低頻度切断型エンドヌクレアーゼは、二量体TALE-ヌクレアーゼ又はMBBBD-ヌクレアーゼであり、好ましくはFokIと融合されたDNA結合ドメインを含む。TALE-ヌクレアーゼは、すでに記述されており、遺伝子ターゲッティング及び遺伝子改変を刺激するために使用されてきた(Boch、Scholzeら 2009;Moscou及びBogdanove 2009;Christian、Cermakら 2010)。かかる工学的に作製されたTALE-ヌクレアーゼは、TALEN(商標)の商品名で市販されている(Cellectis社、8 rue de la Croix Jarry、75013 Paris、France)。
【0094】
- 「切断」という用語は、ポリヌクレオチドの共有結合骨格の切断を指す。切断は、リン酸ジエステル結合の酵素的又は化学的加水分解を含むが、これに限定されない様々な方法により開始できる。一本鎖切断及び二本鎖切断の両方が可能であり、二本鎖切断は、2つの別個の一本鎖切断事象の結果として生じ得る。二本鎖DNA、RNA又はDNA/RNAハイブリッド切断は、平滑末端又は付着末端のいずれかの生成をもたらし得る。
【0095】
- 「キメラ抗原受容体」(CAR)とは、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン及びシグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体を意味する。
【0096】
- 本明細書において使用される「細胞外リガンド結合ドメイン」という用語は、リガンドに結合可能なオリゴ又はポリペプチドとして定義される。好ましくは、このドメインは、細胞表面分子と相互作用可能である。例えば、細胞外リガンド結合ドメインは、特定の病状と関連付けられる標的細胞上で細胞表面マーカーとして作用するリガンドを認識するよう選択できる。
【0097】
好ましい実施形態において、前記細胞外リガンド結合ドメインは、フレキシブルリンカーにより結合された標的抗原特異的モノクローナル抗体の軽鎖(VL)及び重鎖(VH)可変断片を含む単鎖抗体断片(scFv)を含む。好ましい実施形態において、前記scFVは、CD19又はCD123抗体に由来する。好ましくは、本発明の前記scFVは、CD19モノクローナル抗体4G7に由来するscFVを含む(Peipp、Saulら 2004)。
【0098】
- 本発明によるCARのシグナル伝達ドメイン又は細胞内シグナル伝達ドメインは、標的に対する細胞外リガンド結合ドメインの結合後の細胞内シグナル伝達に寄与し、免疫細胞及び免疫応答の活性化をもたらす。CARにおける使用のためのシグナル伝達ドメインの好ましい例は、抗原受容体結合後にシグナル伝達を開始するために協力して作用するT細胞受容体及び共受容体の細胞質配列であり得る。シグナル伝達ドメインは、細胞質シグナル伝達配列の2つの別個のクラス、すなわち抗原依存性一次活性化を開始するもの、及び二次又は副刺激シグナルを提供するために抗原非依存的に作用するものを含む。一次細胞質シグナル伝達配列は、ITAMという免疫受容体チロシンベース活性化モチーフとして知られているシグナル伝達モチーフを含み得る。特定の実施形態において、本発明のCARのシグナル伝達ドメインは、副刺激シグナル分子を含む。副刺激分子は、抗原受容体又はそれらのリガンド以外の細胞表面分子であり、効率的な免疫応答に必要とされる。副刺激分子には、MHCクラスI分子、BTLA及びTollリガンド受容体が含まれるが、これに限定されない。副刺激分子の例には、CD27、CD28、CD8、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1:lymphocyte function-associated antigen-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3及びCD83と特異的に結合するリガンド等が含まれる。
【0099】
本発明によるCARは、細胞の表面膜上に発現する。したがって、CARは、膜貫通ドメインを含み得る。適切な膜貫通ドメインの顕著な特徴は、細胞、本発明において好ましくは免疫細胞、特にリンパ球又はナチュラルキラー(NK)細胞の表面に発現し、所定の標的細胞に対する免疫細胞の細胞性応答を指向するために共に相互作用する能力を含む。膜貫通ドメインは、前記細胞外リガンド結合ドメインと前記膜貫通ドメインとの間のストーク領域を更に含み得る。本明細書において使用される「ストーク領域」という用語は、一般に、膜貫通ドメインを細胞外リガンド結合ドメインと連結するために機能する任意のオリゴ又はポリペプチドを意味する。特に、ストーク領域は、細胞外リガンド結合ドメインに更なる柔軟性及びアクセシビリティを提供するために使用される。ストーク領域は、300個までのアミノ酸、好ましくは10から100個のアミノ酸、最も好ましくは25から50個のアミノ酸を含んでいてもよい。ストーク領域は、天然分子の全部若しくは一部、例えばCD8、CD4若しくはCD28の細胞外領域の全部若しくは一部、又は抗体定常領域の全部若しくは一部に由来してもよい。或いは、ストーク領域は、天然ストーク配列に対応する合成配列であってもよく、完全に合成のストーク配列であってもよい。
【0100】
標的抗原の下方制御又は変異が、癌細胞において通常観察され、抗原欠損回避バリアントを創出する。したがって、腫瘍回避を相殺して免疫細胞を標的により特異的にするため、CD19特異的CARは、標的における異なる要素に同時に結合し、そのことにより免疫細胞活性化及び機能を増幅するために、別の細胞外リガンド結合ドメインを含み得る。CD19特異的CARの例は、ScFv FMC63(Kochenderfer JN、Wilson WH、Janik JEら Eradication of B-lineage cells and regression of lymphoma in a patient treated with autologous T cells genetically engineered to recognize CD19. Blood 2010;116(20):4099〜410頁)又はScFv 4G7 CAR(番号PCT/EP2014/059662で提出された出願に記載)である。一実施形態において、細胞外リガンド結合ドメインは、同じ膜貫通ポリペプチド上に直列に配置でき、任意選択で、リンカーにより分離できる。別の実施形態において、前記異なる細胞外リガンド結合ドメインは、CARを構成する異なる膜貫通ポリペプチド上に配置できる。別の実施形態において、本発明は、それぞれが異なる細胞外リガンド結合ドメインを含むCARの集団に関する。特に、本発明は、免疫細胞を工学的に作製する方法であって、免疫細胞を提供する工程、及びそれぞれが異なる細胞外リガンド結合ドメインを含むCARの集団を前記細胞の表面に発現させる工程を含む、方法に関する。別の特定の実施形態において、本発明は、免疫細胞を工学的に作製する方法であって、免疫細胞を提供する工程、及びそれぞれが異なる細胞外リガンド結合ドメインを含むCARの集団を構成するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを前記細胞内に導入する工程を含む、方法に関する。CARの集団とは、それぞれが異なる細胞外リガンド結合ドメインを含む少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ以上のCARを意味する。本発明による異なる細胞外リガンド結合ドメインは、好ましくは、標的における異なる要素に同時に結合でき、そのことにより免疫細胞活性化及び機能を増強できる。本発明はまた、それぞれが異なる細胞外リガンド結合ドメインを含むCARの集団を含む単離免疫細胞に関する。
【0101】
- 「ベクター」という用語は、それが連結された別の核酸を輸送可能な核酸分子を指す。本発明における「ベクター」には、ウイルスベクター、プラスミド、RNAベクター又は染色体、非染色体、半合成若しくは合成核酸からなっていてもよい線状若しくは環状DNA若しくはRNA分子が含まれるが、これに限定されない。好ましいベクターは、自律複製(エピソームベクター)及び/又はそれらが連結されている核酸の発現(発現ベクター)が可能なものである。多数の好適なベクターが、当業者に知られており、市販されている。
【0102】
- 「送達ベクター」とは、本発明において必要とされる薬剤/化学物質及び分子(タンパク質又は核酸)を、細胞に接触させる(すなわち「接触させること」)又は細胞若しくは細胞内コンパートメント内に送達する(すなわち「導入すること」)ために本発明において使用できる任意の送達ベクターを意図する。それには、リポソーム送達ベクター、ウイルス送達ベクター、薬物送達ベクター、化学物質担体、ポリマー担体、リポプレックス、ポリプレックス、デンドリマー、マイクロバブル(超音波造影剤)、ナノ粒子、エマルジョン又は他の適切なトランスファーベクターが含まれるが、これに限定されない。
【0103】
- ウイルスベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス、例えばオルソミクソウイルス(例えばインフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば狂犬病及び水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば麻疹及びセンダイ)、プラス鎖RNAウイルス、例えばピコルナウイルス及びアルファウイルス、並びに二本鎖DNAウイルス、例えばアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス1型及び2型、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)、及びポックスウイルス(例えば牛痘、鶏痘及びカナリア痘)が含まれる。他のウイルスには、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス、及び肝炎ウイルスが例えば含まれる。レトロウイルスの例には、トリ白血病肉腫、哺乳類C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、スプーマウイルスが含まれる(Coffin, J. M.、Retroviridae: The viruses and their replication、Fundamental Virology、第3版収録、B. N. Fieldsら編、Lippincott-Raven Publishers、Philadelphia、1996)。
【0104】
- 「レンチウイルスベクター」とは、それらの比較的大きなパッケージング容量、低い免疫原性及び広範な異なる細胞タイプに高効率で安定的に形質導入するそれらの能力のために、遺伝子送達のために非常に有望なHIVベースレンチウイルスベクターを意味する。レンチウイルスベクターは通常、3つ(パッケージング、エンベロープ及びトランスファー)以上のプラスミドの生成細胞内への一過性トランスフェクション後に生成される。HIVと同様、レンチウイルスベクターは、ウイルス表面糖タンパク質と細胞表面上の受容体との相互作用を通じて標的細胞に侵入する。侵入の際、ウイルスRNAは、ウイルス逆転写酵素複合体により媒介される逆転写を受ける。逆転写の生成物は、二本鎖線状ウイルスDNAであり、これは感染細胞のDNAにおけるウイルス組み込みのための基質である。「組み込みレンチウイルスベクター(又はLV)」とは、非限定的な例として、標的細胞のゲノムを組み込むことが可能なベクターを意味する。反対に「非組み込みレンチウイルスベクター(又はNILV)」とは、ウイルスインテグラーゼの作用を通じて標的細胞のゲノムを組み込まない効率的な遺伝子送達ベクターを意味する。
【0105】
- 細胞(cell)又は細胞(cells)とは、インビトロ培養のためのこれら生物に由来する任意の真核生細胞、初代細胞及び細胞株を意図する。
【0106】
- 「初代細胞(primary cell)」又は「初代細胞(primary cells)」とは、生体組織(すなわち生検材料)から直接採取され、インビトロでの成長のために確立され、集団倍加をほとんど経ておらず、それゆえ、それらが由来する組織の主な機能成分及び特徴について、連続的腫瘍形成又は人工不死化細胞株と比較して、より代表的である細胞を意図する。非限定的な例として、細胞株は、CHO-K1細胞;HEK293細胞;Caco2細胞;U2-OS細胞;NIH 3T3細胞;NSO細胞;SP2細胞;CHO-S細胞;DG44細胞;K-562細胞、U-937細胞;MRC5細胞;IMR90細胞;Jurkat細胞;HepG2細胞;HeLa細胞;HT-1080細胞;HCT-116細胞;Hu-h7細胞;Huvec細胞;Molt4細胞からなる群から選択できる。
【0107】
- これらのポリペプチドが由来するゲノムデータから一定の変動性が生じ得るので、また、活性の有意な消失なしにこれらのポリペプチドに存在するアミノ酸のいくつかを置換する可能性(機能的バリアント)を考慮するために、本発明は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より一層好ましくは95%の同一性を、本特許出願において提供される配列と共有する、上のポリペプチドのポリペプチドバリアントを包含する。
【0108】
したがって、本発明は、配列番号8から配列番号20及び配列番号26から配列番号35からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含むポリペプチドに関する。
【0109】
- 「同一性」は、2つの核酸分子又はポリペプチドの間の配列同一性を指す。同一性は、比較目的でアラインされ得る各配列における位置を比較することにより決定できる。比較される配列におけるある位置が同じ塩基により占められるとき、分子はその位置において同一である。核酸又はアミノ酸配列間の類似性又は同一性の程度は、核酸配列により共有される位置における同一の又は一致するヌクレオチドの数の関数である。GCG配列解析パッケージの一部として入手可能なFASTA、又はBLAST(University of Wisconsin、Madison、Wis.)を含む様々なアラインメントアルゴリズム及び/又はプログラムを、2つの配列間の同一性を算出するために使用でき、例えばデフォルト設定で使用できる。例えば、本明細書に記載の特定のポリペプチドと少なくとも70%、85%、90%、95%、98%又は99%の同一性を有し、好ましくは実質的に同じ機能を示すポリペプチドが、かかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとともに考慮される。
【0110】
- 《ノックアウト》は、遺伝子を発現できない程度に変異させることを意味する。
【0111】
- 「TRAC」は、「T細胞受容体アルファ定常」を指し、TCRαサブユニット定常遺伝子に相当する。
【0112】
以上の特徴に加えて、本発明は、免疫療法のための同種及び耐性T細胞を工学的に作製する方法を例示する以下の実施例並びに添付の図面から明らかになる更なる特徴を含む。
【実施例1】
【0113】
クロファラビン耐性T細胞の生成及び特徴付け
dCKのTALE-ヌクレアーゼ媒介性不活性化
dCKを不活性化させるため、dCK TALE-ヌクレアーゼの2つのペアを設計し、構築し、シークエンシングにより検証した。以降の作業は、TALE-ヌクレアーゼdCK2の名称の、配列番号63及び配列番号64を有するペアのみで実施した。dCK遺伝子構造全体(エクソン及びイントロン)に関する詳細及びエクソン2に位置するTALE-ヌクレアーゼ標的部位の配列が、図3に示される。
【0114】
TALE-ヌクレアーゼdCK2ペアのためのdCK標的配列は、配列番号62に相当する。
【0115】
検証すると、WO 2013/176915に記載されているように、2つのTALE-ヌクレアーゼをコードするmRNAを生成し、ポリアデニル化し、pulse agile技術を使用してT細胞にエレクトロポレーションするために使用した(5又は10μgのTALE-ヌクレアーゼmRNA左及び右を使用した)。エレクトロポレーション直後にT細胞を30℃で24時間インキュベートすることにより、低温ショックを実施した。再活性化(12.5μlビーズ/細胞106個)をD8(エレクトロポレーション8日後)に実施した。
【0116】
得られたT細胞を成長させ、最終的に遺伝子型(dCK及びTRAC遺伝子座でのエンドT7アッセイ及びディープシークエンシングにより)並びに表現型について特徴付けた。それらの表現型の特徴付けは、(i)薬物の存在又は非存在下で成長するそれらの能力を確認すること、(ii)T細胞に対するPNA、クロファラビン及びフルダラビンのIC50を決定すること、並びに(iii)二重KOが実施されるときにFACS解析によりTRAC不活性化の範囲を決定することからなっていた。
【0117】
dCK KO T細胞の遺伝子型の特徴付け
dCK遺伝子不活性化の効率を評価するため、5又は10μgのいずれかのTALE-ヌクレアーゼmRNAをトランスフェクトした細胞を4日間(D4、エレクトロポレーション4日後)成長させ、dCK遺伝子座でのT7アッセイを実施するために回収した(図5)。
【0118】
これらのT7アッセイにおいて使用されたプライマーのための配列は、配列番号68及び配列番号69に相当する。T7アッセイプロトコルは、Reyon, D.、Tsai, S. Q.、Khayter, C.、Foden, J. A.、Sander, J. D.、及びJoung, J. K.(2012)FLASH assembly of TALE-nucleases for high-throughput genome editing. Nat Biotechnologiesに記載されている。
【0119】
このエンドT7アッセイからの結果は、5及び10μgの左及び右のdCK2 TALE-ヌクレアーゼがトランスフェクトされたとき、有意な遺伝子プロセシングが、dCKが効率的に不活性化すると示すことを示す。
【0120】
dCK KO T細胞の成長速度の決定
図6に提示する通り、dCK KO細胞は、WT細胞に対して同等の成長速度を示す。加えて、それらは、D8にWT T細胞と同じ効率で再活性化させることができた。
【0121】
クロファラビンの存在下でのdCK KO T細胞の選択
dCK KO又はWT T細胞を、D8からD13まで成長させ、次に1μMのクロファラビンあり又はなしでD18までインキュベートした。D8(薬物添加前)及びD18(薬物インキュベーション後)に細胞を回収し、エンドT7アッセイを実施するために使用した。
【0122】
図7に提示する結果は、D18での培地中の1μMのクロファラビンの存在が、WT T細胞と比較して選択的にdCK KO T細胞を富化したことを示す(WT T細胞の高分子量の単一のバンドと比較したdCK KO T細胞の低分子量の2つのバンド)。これは、dCKのTALE-ヌクレアーゼ媒介性不活性化が、WT T細胞に対する薬物耐性T細胞の選択を可能にすることを示した。したがって、dCK KO T細胞は、欧州医薬品庁(EMA)により報告されたCmaxに従った急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療のための臨床的意義のある用量に相当する1μMのクロファラビンの存在に対して、耐性であることが可能である。
【0123】
dCK KO T細胞対WT T細胞に対するクロファラビンのIC50の決定
T細胞のクロファラビンに対する耐性能力を更に研究するため、この薬物のIC50を、dCK KO及びWT T細胞に対して決定した。トランスフェクション3日後に回収した細胞を、漸増濃度のクロファラビン(0から10μΜ)の存在下で2日間インキュベートした。クロファラビンインキュベーションの最後に、T細胞の生存率をFACS解析2により決定した。
【0124】
図8に提示する結果は、TALE-ヌクレアーゼにより媒介されるdCK遺伝子のプロセシングが、T細胞におけるdCK活性を効率的に不活性化させることを明確に示す。かかる不活性化は、WT T細胞の感受性とは対照的に、クロファラビン耐性と相関する。IC50値(細胞生存率を50%まで減少させる、培地に添加される薬物の量)は、WT及びdCK KO T細胞についてそれぞれ、約100nM及び10μMに相当する。
【0125】
総じて、この第1のデータセットは、dCK遺伝子のTALE-ヌクレアーゼ媒介性不活性化が効率的であると結論することを可能にする。dCKの不活性化は、工学的に作製されたT細胞の成長速度を損なわない一方で、それらが臨床的意義のある用量のクロファラビンに対して耐性であることを可能にする。
【実施例2】
【0126】
クロファラビン耐性同種T細胞の生成及び特徴付け
クロファラビン耐性同種CAR T細胞を開発及び製造するため、dCK及びTRAC遺伝子を同時に不活性化させる。dCK不活性化が成功したことを実施例1において実証後、TRAC/dCK二重KO T細胞を生成して特徴付けた。図9に提示する2つのワークフローに平行して従った。それらのうちの1つは、クロファラビンの存在下での5日間の細胞インキュベーションに相当する。
【0127】
遺伝子型の特徴付け
TRAC及び/又はdCK遺伝子不活性化の効率を反応速度とともに最初に評価するため、トランスフェクト細胞を6日間成長させ、dCK及びTRAC遺伝子座でのT7アッセイを実施するためにD1、D3及びD6に回収した。これを達成するため、配列番号68及び番号69;並びに配列番号70及び番号71をそれぞれ有する2つのペアのプライマーを、dCK及びTRAC遺伝子座についてのT7アッセイにおいて使用した。
【0128】
プロトコルは、Reyon, D.、Tsai, S. Q.、Khayter, C.、Foden, J. A.、Sander, J. D.、及びJoung, J. K.(2012)FLASH assembly of TALE-nucleases for high-throughput genome editing. Nat Biotechnolに記載のものを使用した。
【0129】
図10に提示する結果は、TALE-ヌクレアーゼ媒介性単一TRAC及びdCK KOは、D1であっても高度に効率的であることを示す。二重KO細胞を均質集団として特徴付けることができなかったとはいえ、TRAC/dCK二重KOもまた、高度に効率的であるようである。
【0130】
次に、1μMのクロファラビンの存在又は非存在下で細胞を成長させた。D6(トランスフェクション6日後)及びクロファラビンの存在又は非存在下での3日間の培養後に、細胞を回収し、エンドT7アッセイ及びハイスループットDNAシークエンシングによりdCK KO効率を決定した。
【0131】
ディープシークエンシングのために使用されたプロトコルは、Shendure, J.、& Ji, H.(2008).Next-generation DNA sequencing. Nature biotechnology、26(10)、1135〜1145頁に記載されている。
【0132】
図11に提示する結果は、dCK遺伝子座に生成されたindelの頻度が、すべての実験でおよそ80〜90%であることを示す。これは再び、dCKのTALE-ヌクレアーゼ媒介性不活性化が、それが同時TRAC不活性化と組み合わされるときでも、高度に効率的であることを示した。培養培地における5日間の1μMのクロファラビンの存在は、第1の実験セットに見られる通り、dCK KO特異的T7バンドを増加させない。これは、この特定の実験において、dCK不活性化が、工学的に作製されたT細胞がクロファラビンの存在下で成長することを可能にする程度に十分成功したことを示唆した。興味深いことに、これは、dCK KOが十分効率的である場合、薬物耐性T細胞を得るためにクロファラビンの存在下でT細胞を選択する必要がないことを示した。したがって、この特徴は、薬物耐性同種T細胞の製造における明らかな利点を表す。
【0133】
TRAC KO効率の表現型の評価
二重KO実験から回収したTRAC KO T細胞を、FACS(CliniMACS)により解析及び精製した。図12Aに提示する結果は、抗TCR mAb-PEあり又はなしでのT細胞の標識化実験を示す。図12Bはまた、TRAC KO T細胞精製前後のクロファラビンあり又はなしの培地におけるT細胞のmAb-PE標識化に関する。
【0134】
結果は、TRAC及びdCK mRNAで処置された(dCK/TRAC二重ノックアウト)T細胞においてTCR KOの効率が高い(およそ85%)ことを示す。この精製方法は、99.3%の純度までのTCR陰性細胞の効率的な選択/精製を可能にする。
【0135】
TRAC/dCK KO T細胞の表現型の特徴付け
クロファラビンの非存在下でのT細胞の成長速度を図13に示す。KO dCK Tが若干の成長欠陥を示す場合であっても、これらは、D10にWT T細胞と同じ効率で再活性化させることができた。
【0136】
クロファラビンの存在下でのT細胞の成長速度を図14に示す。この実験は、二重KO dCK/TRAC T CAR T細胞(出願番号PCT/EP2014/059662を有する特許出願に記載のFMC63)で、これらの細胞を11日間、様々なクロファラビン(0.1μMから10μM)を有する培地中で培養することにより実施した。図14に提示する結果は、二重KO dCK/TRAC CAR T細胞の細胞増殖が、薬物なしのこれらの細胞ほどは成長を示さなかったとしても、1μMのクロファラビン(Cmaxに相当)まで正常であることを明確に示す。
【0137】
工学的に作製されたT細胞対WT T細胞に対するクロファラビンのIC50の決定
二重KO T細胞のクロファラビンに対処する能力を更に研究するため、この薬物のIC50を決定した。D3からD8の間、クロファラビンあり又はなしでT細胞を成長させ(図9のワークフロー2を参照のこと)、次にそれらを2日間(D15からD17まで)、様々な濃度のクロファラビンを有する培地中でインキュベートした。次に、count brightキットを使用して、FACS解析によりT細胞生存率を評価した。
【0138】
図15に提示する結果は、dCK及びdCK/TRAC KO T細胞が、陰性対照T細胞及びTRAC単純KO T細胞と比較して、クロファラビンに対する有意な耐性能力を示すことを示す。注目すべきことに、1μMのクロファラビンを使用することによるD3からD8の間の5日間(図9のワークフロー2を参照のこと)の細胞選択は、それらのクロファラビンに対する耐性能力を改善しない。これは、dCK不活性化が十分効率的であり、クロファラビン耐性同種CAR T細胞を得るために、薬物選択のための5日間のインキュベーションが必要ないことを示唆する。
【0139】
薬物耐性同種CAR T細胞の細胞傷害性
細胞傷害性アッセイを以下の通り実施した。10 CAR T細胞(FMC63、参考文献は上を参照のこと)を、DAUDI細胞(特異的標的)及びK562細胞(非特異的標的)とともに5時間インキュベートした。次に、細胞を回収し、標的細胞溶解の頻度を算出することにより、DAUDI及びK562細胞の生存率を決定した。
【0140】
図16に提示する結果は、dCK/TRAC二重KO CAR T細胞がWT CAR T細胞と同様の標的細胞傷害性(35%の標的細胞傷害性)を示すことを示す。これは、dCK及びTRAC遺伝子の不活性化が、CAR FMC63 T細胞の細胞傷害性に影響しないことを示した。
【0141】
次に、これらの細胞を、前に実施した通り、クロファラビン及びフルダラビンに対するそれらの感受性を決定するために使用した。図17に提示する結果は、dCK/TRAC KO CAR T細胞が、CAR T細胞陰性対照と比較して、クロファラビンに対する有意な耐性能力を有することを示す(それぞれIC50=500nM及び0.1nM)。フルダラビンについて、同様の結果が得られた(二重KO CAR T細胞及びT CARについてそれぞれIC50=400μΜ及び10μΜ)。
【0142】
結論
総じて、これらの実験は、dCK及びTRAC遺伝子の同時不活性化が高度に効率的であり、単回のエレクトロポレーションで70%超の二重KO T細胞を生成することを可能にすることを示す。興味深いことに、この高い効率のために、時間のかかる選択工程が必要ない。工学的に作製されたT細胞は、クロファラビンに対する顕著な耐性能力を示し、臨床的意義のあるクロファラビン用量の圧力下でそれらの生存率の最大限を保った。
【実施例3】
【0143】
クロファラビン耐性Daudi細胞の生成
目的は、クロファラビン耐性同種CAR T細胞の細胞傷害性を評価するために、薬物耐性CD19+/Luc+ Daudi標的細胞を調製することである。
【0144】
dCK KO Daudi細胞の遺伝子型の特徴付け
WO2013/176915に記載のプロトコルに従い、dCK TALE-ヌクレアーゼmRNAを調製し、Daudi細胞をdCK TALE-ヌクレアーゼmRNAによりエレクトロポレーションした。
【0145】
実施例1のようにdCK KO効率を評価するためにエンドT7アッセイを実施した。トランスフェクション2日後に解析を実施した。プライマーは、配列番号68及び番号69を有する。
【0146】
図18に提示する結果は、dCK遺伝子の高い不活性化を示す。
【0147】
dCK KO Daudi細胞の表現型の特徴付け
Daudi細胞を、様々な濃度のクロファラビン(0;0.1;0.25;0.5及び1μΜ)を有する培地で数日間培養し、各継代で計数した。
【0148】
図19に提示する結果は、dCK KO Daudi細胞が1μMまでのクロファラビンの存在下で成長可能だったことを示す。それらの成長速度は、クロファラビンの非存在下で成長させたWT T細胞のものと同様であり、dCK不活性化がDaudiの成長能力を損なわないことを示唆する。予想された通り、WT Daudi細胞成長は、明らかに損なわれた。この結果は、dCK KO-CD19+-Luc+-GFP+細胞の生成に成功したことを実証する。
【実施例4】
【0149】
6TG耐性T細胞の生成及び特徴付け
6MP及び6TG耐性T細胞(HPRT KO T細胞)を開発するため、HPRT遺伝子について以下の通りTALE-ヌクレアーゼ媒介性不活性化を行った。HPRT遺伝子構造全体(エクソン及びイントロン)及び異なるTALE-ヌクレアーゼ標的部位の位置を図20に示す。
【0150】
HPRT遺伝子のTALE-ヌクレアーゼ媒介性不活性化
HPRT単一KO T細胞を生成して特徴付けるこの実験において使用されたワークフローを、図21に報告する。HPRT遺伝子を不活性化させるため、2つのペアのHPRT TALE-ヌクレアーゼを設計し、構築し、シークエンシングにより検証した(HPRT1について配列番号74及び配列番号75;HPRT2について配列番号77及び配列番号78)。HPRT遺伝子構造全体(エクソン及びイントロン)に関する詳細及びTALE-ヌクレアーゼ標的部位の位置が、図20に示される。HPRT1及びHPRT2 TALE-ヌクレアーゼペアの標的配列はそれぞれ、配列番号76及び配列番号79に相当する。
【0151】
HPRT KO T細胞の遺伝子型の特徴付け
HPRT KO T細胞を、D4にエンドT7アッセイにより遺伝子型について特徴付け、T細胞におけるHPRT遺伝子不活性化を示した。このアッセイにおいて使用されたプライマーのペアは、配列番号72及び配列番号73を有する。図22に提示する結果は、HPRT TALE-ヌクレアーゼのペアが、HPRT遺伝子を高度に効率的に処理可能だったことを示す。
【0152】
HPRT KO T細胞の成長速度
図23に提示する結果によれば、KO HPRT細胞は、TALE-ヌクレアーゼHPRT2ペア(10μgのTALE-ヌクレアーゼで実施)について少し低いとはいえ、WT T細胞と同様の成長速度を示す。その一方で、10μgのTALE-ヌクレアーゼHPRT2ペアにより不活性化したT細胞は、D10にWT T細胞と同じ効率で再活性化し、HPRT不活性化がT細胞成長を有意には損なわないことを示す。TALE-ヌクレアーゼHPRT1ペアが、以下の実験において選択された。
【0153】
6TGの存在下でのHPRT KO T細胞の選択
HPRT KO又はWT T細胞を、D8からD13まで成長させ、次に1μMの6TGの存在又は非存在下でD18までインキュベートした(図22に示すワークフロー)。D8(薬物添加前)及びD18(薬物インキュベーション後)に細胞を回収し、エンドT7アッセイを実施するために使用した。使用されたプライマーのペアは、配列番号72及び配列番号73の配列を有する。図24に提示する結果は、培地中の1μMの6TGの存在が(D18の6TGの存在下での比較的濃くないWTバンドによりわかる通り)HPRT KO T細胞の選択的富化を可能にすることを示す。
【0154】
HPRT KO CAR T細胞の生成
CAR T細胞の細胞傷害活性に対するHPRT不活性化の影響を研究するため、CAR 4G7レンチウイルスベクターを形質導入したT細胞(例えば、番号PCT/EP2014/059662で提出された出願に記載)を、TALE-ヌクレアーゼHPRT1をコードするmRNAとともにエレクトロポレーションした。下に記載するすべての実験を、6TG選択なしに生成された、工学的に作製されたT細胞で実施した。HPRTプロセシングの効率を、エンドT7アッセイにより評価した。このアッセイのために使用されたプライマーのペアは、配列番号72及び配列番号73に対応する。図25に提示する結果は、CAR 4G7の存在又は非存在下でHPRT遺伝子の不活性化に成功したことを示す。HPRTのより良好な不活性化が、CAR T細胞よりもT細胞において得られる。
【0155】
Daudi細胞に対するHPRT KO CAR-T細胞の細胞傷害特性
細胞傷害性アッセイを、図27に概略図で示す通り実施した。10 CAR T細胞のセットを、Daudi細胞(特異的標的)及びK562細胞(非特異的標的)とともに5時間インキュベートする。次に、細胞を回収し、標的細胞溶解の頻度を算出するために、Daudi及びK562細胞の生存率を決定した。図26に提示する結果は、HPRT KO CAR T細胞が、WT CAR T細胞のものと同様の標的細胞傷害性を有することを示す。これは、HPRT遺伝子の不活性化が、CAR 4G7 T細胞の細胞傷害性に影響しないことを示す。
【0156】
工学的に作製されたT細胞対WT T細胞に対する6TGのIC50の決定
図27に提示する結果は、HPRT遺伝子のプロセシングが(T7アッセイにより前に見られる通り)T細胞におけるHPRT活性を効率的に不活性化させることを示す。かかる不活性化は6TG耐性を付与し、これは、この薬物に対するWT T細胞の感受性とは対照的である。IC50は、WT及びHPRT KO T細胞についてそれぞれ、10nM及び>100μMと近似的に決定できる。
【0157】
結論
総じて、これらの結果は、HPRT遺伝子の不活性化が効率的であることを示す。かかる不活性化は、時間のかかるプロセスによる精製の必要なしに、T細胞が高用量の6TGに対して耐性であることを可能にする。HPRT不活性化を、若干低い程度でCAR T細胞において実施できることも示される。かかる不活性化は、Daudi細胞に対するCAR T細胞の細胞傷害特性を損なわない。
【0158】
(参考文献)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]