特許第6976073号(P6976073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6976073複合構造物向けの拡張可能な樹脂充填型ファスナ、ファスナシステム、及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976073
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】複合構造物向けの拡張可能な樹脂充填型ファスナ、ファスナシステム、及び方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 35/00 20060101AFI20211118BHJP
   B64C 1/00 20060101ALI20211118BHJP
   B64D 45/02 20060101ALI20211118BHJP
   H05F 3/02 20060101ALN20211118BHJP
【FI】
   F16B35/00 Y
   B64C1/00 A
   B64D45/02
   F16B35/00 A
   F16B35/00 Q
   !H05F3/02 A
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2017-86831(P2017-86831)
(22)【出願日】2017年4月26日
(65)【公開番号】特開2018-21660(P2018-21660A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2020年4月23日
(31)【優先権主張番号】15/141,643
(32)【優先日】2016年4月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】レー, クインザオ エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】グレゴール, ロバート ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィティング, ブレント エー.
【審査官】 鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−503166(JP,A)
【文献】 特開2012−127494(JP,A)
【文献】 特開2015−224789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64B 1/00− 1/70
B64C 1/00− 99/00
B64D 1/00− 47/08
B64F 1/00− 5/60
B64G 1/00− 99/00
F16B 23/00− 43/02
H05F 1/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合構造物(102)との電気的接触(88)を改善し、かつ、前記複合構造物への電流(152)の分配を改善するためのファスナ(10)であって、
第1端部(16)、第2端部(18)、及び、前記第1端部と前記第2端部との間に配置されたシャフト本体(20)であって、外表面(64)と内表面(66)とを有するシャフト本体を有する、細長いシャフト(14)と、
前記第1端部に配置されたヘッド部(22)と、
前記第2端部に配置されたねじ部(42)と、
前記ねじ部にある開口(40)から、前記細長いシャフトの長手方向中心軸(78)に平行に、前記シャフト本体の前記内表面を通り、前記ヘッド部の近位の場所で終端するように延在する、少なくとも1つの供給チャネル(70)とを備え、
前記ファスナが前記複合構造物内に形成された対応するファスナ孔(11)の中に取り付けられている場合、前記シャフト本体は、加圧下で樹脂充填物(120)が前記少なくとも1つの供給チャネル内に注入される際に、径方向に拡張するよう構成され、更に、径方向に拡張する際に、前記シャフト本体の前記外表面は、前記対応するファスナ孔の内側孔表面(86)に直接接触するよう構成され、その結果、前記ファスナが、前記複合構造物との電気的接触を提供し、かつ、前記複合構造物への電流の分配を提供することになる、ファスナ(10)。
【請求項2】
前記ねじ部(42)にある前記開口(40)は前記ねじ部の底部端(46)にあるスロット開口(40a)を含み、前記供給チャネル(70)は中心供給チャネル(70a)を含む、請求項1に記載のファスナ(10)。
【請求項3】
前記ねじ部(42)にある前記開口(40)は前記ねじ部の上部端(44)にある同心輪状開口(40b)を含み、前記供給チャネル(70)は同心輪状供給チャネル(70b)を含む、請求項1又は2に記載のファスナ(10)。
【請求項4】
前記シャフト本体(20)は、前記ねじ部(42)の前記上部端(44)にある前記同心輪状開口(40b)から、前記細長いシャフト(14)の前記長手方向中心軸(78)に平行に、前記シャフト本体の前記外表面(64)を通り、ヘッド部(22)の近位で終端するように延在する、一又は複数の長手方向溝(87)を更に備える、請求項3に記載のファスナ(10)。
【請求項5】
前記シャフト本体(20)の前記外表面(64)は、前記複合構造物(102)との電気的相互接続を提供するため、及び、前記複合構造物にファスナ留めされた前記ファスナによって形成されたファスナ留め接合部(108)に燃料密封(92)を提供するために、前記対応するファスナ孔(11)の前記内側孔表面(86)に接触するよう構成された複数のリッジ(82)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のファスナ(10)。
【請求項6】
前記シャフト本体(20)を径方向に拡張させる前記樹脂充填物(120)と共に使用されると、その結果、電流(152)の分配がヘッド部電流分配(153)とシャフト本体電流分配(154)とを含むことになる、コンプライアント型の隙間嵌めファスナ(12)を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のファスナ(10)。
【請求項7】
航空機(200a)の複合構造物(102)との電気的接触(88)を改善し、かつ、前記航空機への電流(152)の分配を改善するための方法であって、
一又は複数のファスナ(10)を前記複合構造物内に形成された一又は複数の対応するファスナ孔(11)の中に取り付けるステップを含み、各ファスナが、
ヘッド部(22)を有する第1端部(16)、ねじ部(42)を有する第2端部(18)、及び、前記第1端部と前記第2端部との間に配置されたシャフト本体(20)であって、外表面(64)と内表面(66)とを有するシャフト本体を有する、細長いシャフト(14)と、
前記ねじ部にある開口(40)から、前記細長いシャフトの長手方向中心軸(78)に平行に、前記シャフト本体の前記内表面を通り、前記ヘッド部の近位の場所で終端するように延在する、少なくとも1つの供給チャネル(70)とを備え、更に、
前記一又は複数のファスナを前記一又は複数の対応するファスナ孔内の定位置にトルクで固定するステップと、
前記シャフト本体を、径方向に拡張させるため、及び、前記対応するファスナ孔の内側孔表面(86)と直接接触させるために、加圧下で各ファスナの前記ねじ部にある前記開口内に樹脂充填物(120)を注入し、かつ、前記少なくとも1つの供給チャネルを前記樹脂充填物で充填するステップと、
前記複合構造物内に取り付けられ、かつ、前記樹脂充填物で充填された前記一又は複数のファスナと共に、前記複合構造物を硬化させるステップと、
各ファスナと前記対応するファスナ孔の各々の前記内側孔表面との間に電気的接触を提供し、かつ、前記航空機への前記電流の分配を提供するステップとを含む、方法。
【請求項8】
前記ファスナ(10)内に前記樹脂充填物(120)を注入した後に、前記樹脂充填物が前記ファスナから漏れることを防止するために、各供給チャネル(70)の前記開口(40)内に取外し可能なプラグデバイス(94)を挿入するステップを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記一又は複数のファスナ(10)を取り付ける前記ステップは、前記一又は複数のファスナを取り付けることであって、前記少なくとも1つの供給チャネル(70)が中心供給チャネル(70a)と同心輪状供給チャネル(70b)の一方を含む、取り付けることを含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記樹脂充填物(120)を注入し、かつ充填する前記ステップは、前記ファスナ(10)内に前記樹脂充填物を注入するために注入ツールアセンブリ(110)を使用することであって、前記樹脂充填物が、導電性の充填材(124)と混合された樹脂材料(122)を含み、前記注入ツールアセンブリが前記樹脂充填物を内包する容器(118)を備え、前記容器が前記ファスナに連結するよう構成されている、使用することを含み、前記注入ツールアセンブリは、前記容器に連結され、かつ、前記ファスナの前記ねじ部(42)にある前記開口(40)に連結されるよう構成された加圧注入器(126)であって、加圧下で前記ファスナ内に前記樹脂充填物を注入するよう構成された、加圧注入器を更に備える、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記樹脂充填物(120)を注入し、かつ充填する前記ステップは、前記少なくとも1つの供給チャネル(70)を前記樹脂充填物で充填して、前記シャフト本体(20)を、約0.001インチから約0.002インチまでの径方向拡張で、径方向に拡張させることを含む、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
電気的接触(88)を提供し、かつ前記電流(152)の分配を提供する前記ステップは、ヘッド部電流分配(153)とシャフト本体電流分配(154)とを分配することであって、前記シャフト本体電流分配は、径方向に拡張されている前記シャフト本体(20)の長さ(96)に沿って均一であり、前記ヘッド部電流分配が前記シャフト本体電流分配よりも大きい、分配することを含む、請求項7から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、複合構造物向けのファスナ、ファスナシステム、及び方法に関し、より具体的には、航空機での使用などのための、炭素繊維強化型プラスチック(CFRP)構造物といった複合構造物との電気的接触及び伝導性を改善する、拡張可能なコンプライアント型(compliant)の隙間嵌め(clearance fit)ファスナ、ファスナシステム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の記載
炭素繊維強化型プラスチック(CFRP)構造物などの複合構造物は、その高い重量比強度(strength−to−weight ratio)、耐食性、及び他の好ましい特性により、航空機、宇宙船、回転翼航空機、船舶、自動車、トラック、並びに他のビークル及び構造物の製造を含む、広範な応用において使用されうる。CFRP構造物などの複合構造物は、典型的には、マトリクス材(例えば炭素繊維などの繊維材料で強化された樹脂)を含む複合材料で作られる。樹脂は、概括的に、繊維材料とは対照的に、導電性ではない。
【0003】
複合物である航空機翼、胴体部、又は他の航空機構造物と、かかる構造物の部分をまとめて固定するのに使用される金属ファスナ(すなわち金属ボルト)との間の良好な電気的接触は、例えば、落雷発生時、又は他の電磁効果及び電気的事象において、落雷からの電流が分配されるか又は散逸して、ファスナ留め接合部(fastened joint)を越え、複合構造物の表面を通って接地に導かれるために、導電性及び電流分配又は電流散逸を提供する上で重要である。金属ファスナと上記の航空機複合構造物(例えば複合翼外板)との間の電気的接触が不適切である場合、落雷からの電流は、散逸せずに、落雷を受けたファスナの近辺に留まりうる。そして、下部構造、場合によっては翼内の燃料タンクの中に伝わり、そこで、電気アーチング(electrical arching)の結果として望ましくない放電又は火花が発生することがあり、かつ/又は、材料系の分解により接合部から高温プラズマ粒子が放出されることがあり、燃料環境における点火源になる可能性がある。
【0004】
航空機の複合翼燃料タンク及び他の航空機複合構造物における放電及び落雷による影響を防止又は軽減するための、既知のシステム及び方法が存在する。かかる既知のシステム及び方法は、航空機の複合翼燃料タンク内の金属ファスナを覆って、放電をファスナ留め接合部内に抑制するために、電気絶縁密封剤を塗布すること、及び、ファスナキャップ密封を使用することを含む。
【0005】
しかし、かかる既知の電気絶縁密封剤は重いことがあり、かかる既知のファスナ密封キャップは数が多くなることがあり、両方とも航空機に重量を付加しうる。このことは、性能の低下及び燃料消費の増大をもたらし、ひいてはその結果、燃料費を増大させうる。更に、かかる既知の電気絶縁密封剤及びファスナ密封キャップは、航空機の複合翼及び燃料タンク、又は他の航空機構造物に塗布すること又は取り付けること、及び、それらの構造物を検査することに、時間も人手もかかりうる。このことは、ひいては、製造時間及び検査時間の増大、並びに人件費の増大をもたらしうる。
【0006】
加えて、複合翼外板などの航空機複合構造物と、かかる複合物を固定するために使用される金属ファスナとの間の良好な電気的接続を実現し、かつ、航空機複合翼の燃料タンクにおける望ましくない放電又は火花発生の可能性を減少させる、既知のファスナ及びファスナシステムが存在する。かかる既知のファスナ及びファスナシステムは、耐食鋼(CRES)のスリーブであって、それを通ってテーパされたチタニウムボルトが挿入されるスリーブを用いる締まり嵌め(interference fit)ファスナ、すなわちスリーブ式締まり嵌めファスナを使用することを含む。ボルトのカラー部(collar)にトルクが加えられると、スリーブが拡張し、複合翼外板の複合層に接触する。
【0007】
しかし、かかるスリーブ式締まり嵌めファスナは、高価な上に取り付けが困難でありうる。また、締まり嵌めファスナ向けのCRESスリーブは、ファスナ留め接合部に重量を付加することがあり、このことは、燃料消費の増大をもたらし、ひいては結果として、運転コストを増大させうる。更に、ボルトのカラー部にトルクが加えられた時のファスナスリーブの拡張により、ファスナが挿入される穿孔孔内に高伝導性炭素繊維の先端が露出していれば、それらが潰されうるか、損傷を受けうるか、場合によっては破断しうる。このことにより、全体的な電気的接続が限定され、かつ、複合構造物のファスナ留め接合部における微小亀裂が拡大されうる。
【0008】
更に、燃料密封要件を満たすために、かかる既知のスリーブ式締まり嵌めファスナは、典型的には、湿式取り付けされることが必要になる。この湿式取り付けは、スリーブ式締まり嵌めファスナを、複合構造物のファスナ孔内に取り付ける前にポリスルフィドの燃料密封剤に浸すことを伴う。かかる湿式取り付けの結果として、ファスナがファスナ孔内に取り付けられた後、ファスナスリーブとファスナ孔の表面との間に密封剤の薄層が存在することになる。この密封剤層はその燃料密封という目的を果たすが、これが存在することで、ファスナと複合構造物との界面を超える電流伝達の効率が妨げられ、低減しうる。
【0009】
したがって、安価であり、取り付け及び使用が簡単であり、軽量化されており、信頼性が高く、かつ、既知のファスナデバイス、システム、及び方法を凌駕する利点を提供する、改良型のファスナ、ファスナシステム、及び方法が、当該技術分野において必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
この開示の例示的な実行形態は、炭素繊維強化型プラスチック(CFRP)構造物などの複合構造物向けの改良型のファスナ、ファスナシステム、及び方法を、提供する。下記の詳細説明において記述するように、改良型のファスナ、ファスナシステム、及び方法の実施形態は、既知のファスナデバイス、システム、及び方法を凌駕する、有意な利点を提供しうる。
【0011】
一例において、複合構造物との電気的接触を改善し、かつ、複合構造物への電流の分配を改善するための、ファスナが提供される。このファスナは、第1端部、第2端部、及び、第1端部と第2端部との間に配置されたシャフト本体を有する、細長いシャフトを備える。シャフト本体は外表面と内表面とを有する。
【0012】
ファスナは、第1端部に配置されたヘッド部を更に備える。ファスナは、第2端部に配置されたねじ部を更に備える。ファスナは、ねじ部にある開口から、細長いシャフトの長手方向中心軸に平行に、シャフト本体の内表面を通り、ヘッド部の近位の場所で終端するように延在する、少なくとも1つの供給チャネルを更に備える。
【0013】
シャフト本体は、ファスナが複合構造物内に形成された対応するファスナ孔の中に取り付けられている場合、加圧下で樹脂充填物が少なくとも1つの供給チャネル内に注入される際に、径方向に拡張するよう構成される。更に、径方向に拡張する際に、シャフト本体の外表面は、対応するファスナ孔の内側孔表面に直接接触するよう構成され、その結果、ファスナが、複合構造物との電気的接触を提供し、かつ、複合構造物への電流の分配を提供することになる。
【0014】
別の例において、複合構造物との電気的接触を改善し、かつ、複合構造物への電流の分配を改善するための、ファスナシステムが提供される。このファスナシステムは、一又は複数のファスナであって、複合構造物内に形成された一又は複数の対応するファスナ孔の中に取り付けられるよう構成された、一又は複数のファスナを備える。
【0015】
各ファスナは、第1端部、第2端部、及び、第1端部と第2端部との間に配置されたシャフト本体を有する、細長いシャフトを備える。シャフト本体は外表面と内表面とを有する。ファスナは、第1端部に配置されたヘッド部を更に備える。ファスナは、第2端部に配置されたねじ部を更に備える。ファスナは、ねじ部にある開口から、細長いシャフトの長手方向中心軸に平行に、シャフト本体の内表面を通り、ヘッド部の近位の場所で終端するように延在する、少なくとも1つの供給チャネルを更に備える。
【0016】
ファスナシステムは、一又は複数の対応するファスナ孔内に取り付けられた一又は複数のファスナの各々に連結するよう構成された、注入ツールアセンブリを更に備える。ファスナシステムは、シャフト本体を、径方向に拡張させるため、及び、対応するファスナ孔の内側孔表面に直接接触させるために、注入ツールアセンブリを用いて加圧下で各ファスナの少なくとも1つの供給チャネル内に注入されて、この少なくとも1つの供給チャネルを充填する樹脂充填物であって、その結果、ファスナが、複合構造物との電気的接触を提供し、かつ、複合構造物への電流の分配を提供することになる、樹脂充填物を更に備える。
【0017】
別の例では、航空機の複合構造物との電気的接触を改善し、かつ、航空機への電流の分配を改善するための、方法が提供される。この方法は、一又は複数のファスナを、複合構造物内に形成された一又は複数の対応するファスナ孔の中に取り付けるステップを含む。
【0018】
各ファスナは、ヘッド部を有する第1端部、ねじ部を有する第2端部、及び、第1端部と第2端部との間に配置されたシャフト本体を有する、細長いシャフトを備える。シャフト本体は外表面と内表面とを有する。ファスナは、ねじ部にある開口から、細長いシャフトの長手方向中心軸に平行に、シャフト本体の内表面を通り、ヘッド部の近位の場所で終端するように延在する、少なくとも1つの供給チャネルを更に備える。
【0019】
方法は、一又は複数のファスナを一又は複数の対応するファスナ孔内の定位置にトルクするステップを更に含む。方法は、シャフト本体を、径方向に拡張させるため、及び、対応するファスナ孔の内側孔表面と直接接触させるために、加圧下で各ファスナのねじ部にある開口内に樹脂充填物を注入し、かつ、少なくとも1つの供給チャネルを樹脂充填物で充填するステップを、更に含む。
【0020】
方法は、複合構造物内に取り付けられ、かつ、樹脂充填物で充填された一又は複数のファスナと共に、複合構造物を硬化させるステップを更に含む。方法は、各ファスナと対応するファスナ孔の各々の内側孔表面との間に電気的接触を提供し、かつ、航空機への電流の分配を提供するステップを、更に含む。
【0021】
前述の特徴、機能及び利点は、本開示のさまざまな例において個別に実現可能であるか、又は、下記の説明及び図面を参照して更なる詳細が理解されうる更に別の例において、組み合わされうる。
【0022】
本開示は、添付図面と併せて下記の詳細説明を参照することで、より深く理解することが可能である。添付図面は例を示しているが、必ずしも縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】本開示のファスナの一例の側方斜視図である。
図1B図1Aのファスナの切り取り側方斜視図である。
図1C図1Aのファスナの上面図である。
図1D図1Aのファスナの底面図である。
図2A】本開示のファスナの別の例の側方斜視図である。
図2B図2Aのファスナの切り取り側方斜視図である。
図2C図2Aのファスナの上面図である。
図2D図2Aのファスナの底面図である。
図2E】一又は複数のオプションの長手方向溝を有する図2Aのファスナの側方斜視図である。
図2F図2Eのファスナの底面図である。
図3A】本開示のファスナシステムの部分切り取り側方斜視図である。
図3B図1Aのファスナと共に図示されている、ファスナシステムの一例の切り取り側方斜視図である。
図3C図2Aのファスナと共に図示されている、ファスナシステムの別の例の切り取り側方斜視図である。
図4】複合構造物内に取り付けられた既知のスリーブ式ファスナの概略的な側方断面図であり、電流の分配を図示している。
図5A】本開示のファスナシステムの一例の概略的な部分側方断面図であり、複合構造物内に取り付けられたファスナと、ファスナ内に注入された樹脂充填物とを図示している。
図5B図5Aのファスナシステムの概略的な部分側方断面図であり、樹脂充填物で充填されたファスナを示し、かつ、ファスナの径方向拡張及び電流の分配を示している。
図6】本開示の方法の一例を示すフロー図である。
図7】本開示のファスナの一又は複数の例を有する複合構造物を包含しうる航空機の斜視図である。
図8】航空機の製造及び保守方法のフロー図である。
図9】航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この開示に示している各図は、提示されている例の態様の一変形例を示しており、これより相違のみを詳細に記述する。
【0025】
本書ではこれより、添付図面を参照しつつ開示されている例についてより網羅的に説明するが、添付図面に示しているのは開示されている例の一部であって、全てではない。実際には、いくつかの異なる例が提供されることがあり、これらの例は、本書に明記されている例に限定されると解釈すべきではない。これらの例はむしろ、この開示が包括的なものになり、かつ、本開示の範囲が当業者に十分に伝わるように、提供されている。
【0026】
これより図を参照する。一例では、図1A図2Dに示しているように、ファスナ10が提供される。図1A図1Dは、例えばファスナ10aの形態の、ファスナ10の一例を示している。図2A図2Dは、例えばファスナ10bの形態の、ファスナ10の別の例を示している。好ましくは、例えばファスナ10a(図1A参照)の形態、及び、例えばファスナ10b(図2A参照)の形態のファスナ10(図1A図2A参照)は、スリーブを用いない、すなわち、追加の金属スリーブを必要としない、コンプライアント型の隙間嵌めファスナ12(図1A図1B図2A図2B参照)を含む。ファスナ10(図1A図2A参照)は、チタニウム、アルミニウム、又は別の好適な金属などの金属材料、或いは、高温において耐食性の、クロム及び鉄を含有するニッケルの合金、又は、高い引張強度及び耐食性を有するニッケルと銅の合金、又は、別の好適な金属合金といった、金属合金から成りうる。
【0027】
図1Aは、本開示の、例えばファスナ10aの形態の、ファスナ10の一例の側方斜視図である。図1Bは、図1Aの、例えばファスナ10aの形態のファスナ10の切り取り側方斜視図である。
【0028】
図2Aは、本開示の、例えばファスナ10bの形態の、ファスナ10の別の例の側方斜視図である。図2Bは、図2Aの、例えばファスナ10bの形態のファスナ10の切り取り側方斜視図である。図2Eは、オプションで一又は複数の追加の長手方向溝87を有する、図2Aの、例えばファスナ10bの形態のファスナ10の側方斜視図である。
【0029】
図1A図1B、及び図2A図2B図2Eに示しているように、例えばファスナ10a(図1A図1B参照)の形態、及び、例えばファスナ10b(図2A図2B参照)の形態のファスナ10はそれぞれ、第1端部16、第2端部18、及び、第1端部16と第2端部18との間に配置されたシャフト本体20を有する、細長いシャフト14を有する。図1A図2Eに更に示しているように、例えばファスナ10a(図1A図1B参照)の形態、及び、例えばファスナ10b(図2A図2B、2E参照)の形態のファスナ10はそれぞれ、第1端部16に配置されたヘッド部22を有する。ヘッド部22(図1A図1B図2B参照)は、好ましくは、円錐台形状24(図1A図1B図2B参照)を有する。しかし、ヘッド部22(図1A図2A参照)は別の好適な形状も有しうる。図1B図2Bに示しているように、ヘッド部22は、上部端26、底部端28、及び、外表面32(同じく図1A図2A参照)と内部34とを有する中央部30を有する。
【0030】
図1Cは、図1Aの、例えばファスナ10aの形態のファスナ10の上面図である。図2Cは、図2Aの、例えばファスナ10bの形態のファスナ10の上面図である。図1C及び図2Cは、平坦な又は実質的に平坦な上面36を有する、ヘッド部22の上部端26を示している。図1C及び図2Cは、外周部38(同じく図1A図2A参照)又は周縁部を有するヘッド部22の、上部端26を更に示している。例えばファスナ10b(図1A参照)の形態、及び、例えばファスナ10b(図2A参照)の形態のファスナ10(図1A図2A参照)は、径方向軸84(図1C図2C参照)を有する
【0031】
図1A図1B、及び図2A図2B図2Eに示しているように、例えばファスナ10a(図1A図1B参照)の形態、及び、例えばファスナ10b(図2A図2B図2E参照)の形態のファスナ10はそれぞれ、細長いシャフト14の第2端部18に配置されたねじ部42を更に有する。図1B図2Bに示しているように、ねじ部42は、上部端44、底部端46、及び、複数のねじ山52から成る外表面50と内部54とを有する中央部48を有する。ねじ部42は、ねじ式カラー158(図5A図5B参照)、ねじ式ナット、又は別の好適なねじ式要素と嵌合するよう構成されうる。
【0032】
一例では、図1A図1Bに示しているように、例えばファスナ10bの形態のファスナ10は、ねじ部42に、スロット開口40aなどの開口40を備える。スロット開口40a(図1A図1B参照)などの開口40(図1B参照)は、好ましくは、ねじ部42(図1B参照)の底部端46(図1B参照)にある底面56(図1B参照)に形成される。スロット開口40a(図1A図1B参照)は、好ましくは、ファスナ10の一方の側部からファスナ10の反対の側部まで突き抜けている、貫通開口である。更にこの例では、図1A図1Bに示しているように、ねじ部42は、底部端46(図1B参照)に形成された円錐型の先端部55を有する。
【0033】
図1Dは、図1Aの、例えばファスナ10aの形態のファスナ10の底面図である。図1Dは、底面56(図1B参照)に形成されたスロット開口40aなどの開口40を示し、例えば中央供給チャネル70aの形態の供給チャネル70を更に示し、かつ、シャフト本体20の底部及びヘッド部22を更に示している。
【0034】
別の例では、図2A図2Bに示しているように、例えばファスナ10bの形態のファスナ10は、ねじ部42に、同心輪状開口40bなどの開口40を備える。図2A図2Bに更に示しているように、同心輪状開口40bなどの開口40が、好ましくは、ねじ部42の上部端44に形成される。更にこの例では、図2A図2Bに示しているように、ねじ部42は、底部端46(図2B参照)に平坦な又は実質的に平坦な底面56を有する。
【0035】
図2Dは、図2Aの、例えばファスナ10bの形態のファスナ10の底面図である。図2Dは、底部端46にある底面56を示し、同心輪状開口40bなどの開口40を示し、かつ、シャフト本体20の底部及びヘッド部22を示している。
【0036】
図1A図1B、及び図2A図2Bに示しているように、例えばファスナ10a(図1A図1B参照)の形態、及び、例えばファスナ10b(図2A図2B参照)の形態のファスナ10はそれぞれ、シャフト本体20であって、ねじ部42の上部端44と一体型に接合され、接続され、又は連結された第1端部58を有し、ヘッド部42の底部端28に一体型に接合され、接続され、又は連結された第2端部60を有し、かつ、第1端部58と第2端部60との間に配置された中央部62を有する、シャフト本体20を更に備える。
【0037】
シャフト本体(図1A図1B図2A図2B図2E参照)は、外表面64(図1A図1B図2A図2B図2E参照)と内表面66(図1B図2B参照)とを有し、かつ、内部68(図1B図2B参照)とシャフト本体壁168(図1B図2B図2E参照)とを更に有する。一例では、図1A図1Bに示しているように、シャフト本体20の外表面64は、複数のリッジ(ridge)82を有するリッジ型外表面64aを備える。複数のリッジ82は、好ましくは、複合構造物102(図5B参照)との電気的相互接続90(図5B参照)を提供するため、及び、複合構造物102(図3B図3C図5B参照)にファスナ留めされたファスナ10(図3B図3C図5B参照)によって形成されたファスナ留め接合部108(図3A図3C参照)に燃料密封92(図5B参照)を提供するために、対応するファスナ孔11(図5A図5B参照)の内側孔表面86(図5A図5B参照)に接触するよう、構成される。
【0038】
別の例では、図2A図2Bに示しているように、シャフト本体20の外表面64は滑らかな外表面64bを含む。滑らかな外表面64b(図2A図2B参照)は、好ましくは、滑らかであるか又は実質的に滑らかであり、かつ、複数のリッジ82(図1A参照)を有さない。オプションでは、図2Eに示しているように、例えばファスナ10aの形態のファスナ10のシャフト本体20は、ねじ部42の上部端44にある同心輪状開口40bから、細長いシャフト14の長手方向中心軸78(図2B参照)に平行に、シャフト本体の滑らかな外表面64bなどの外表面64を通り、ヘッド部22の近位で終端するように延在する、一又は複数の長手方向溝87を更に備えうる。
【0039】
図2Fは、図2Eの、例えばファスナ10bの形態のファスナ10の底面図であり、長手方向溝87を図示している。一又は複数の長手方向溝87(図2E図2F参照)は、第1長手方向溝87a(図2E図2F参照)と、第2長手方向溝87b(図2F参照)とを含みうる。各長手方向溝87(図2E参照)は、第1端部91a(図2E参照)と第2端部91b(図2E参照)とを有しうる。図2Eに示しているように、長手方向溝87は、例えばファスナ10bの形態のファスナ10の細長いシャフト14の中心ボア部89に至るまで開いている。
【0040】
図2Fは、底部端46にある底面56を示し、例えば同心輪状開口40bの形態の開口40を示し、例えば同心輪状供給チャネル70bの形態の供給チャネル70を示し、長手方向溝87を示し、更に、シャフト本体20の底部及びヘッド部22を示している。
【0041】
図1B及び図2B図2Eに示しているように、例えばファスナ10a(図1B参照)の形態、及び、例えばファスナ10b(図2B図2E参照)の形態のファスナ10はそれぞれ、ねじ部42にある開口40から延在する、少なくとも1つの供給チャネル70を更に有する。図1Bに示す一例では、供給チャネル70は中心供給チャネル70aの形態でありうる。図2B図2Eに示す別の例では、供給チャネル70は同心輪状供給チャネル70bの形態でありうる。供給チャネル70は、別の好適な形態又は構成も有しうる。
【0042】
図1B及び図2Bに示しているように、供給チャネル70は、第1端部72と第2端部74とを有する。図1B及び図2Bに更に示しているように、供給チャネル70は、ねじ部42にある開口40から、細長いシャフト14の長手方向中心軸78に平行に、シャフト本体20の内表面66を通り、ヘッド部22の近位の場所76で終端するように、延在する。供給チャネル70(図1B図2B参照)は、長手方向に、細長いシャフト14(図1B図2B参照)の長手方向中心軸78(図1B図2B参照)に平行に、延在し、かつ、内部80(図1B図2B参照)を有する。図1Bに示しているように、内部80は、シャフト本体20の一方の側部からシャフト本体20の反対の側部まで開いている、貫通内部80aを含みうる。
【0043】
図1Bに示しているように、例えば中心供給チャネル70aの形態の供給チャネル70は、ねじ部42の底部端46にある開口40を通り、ねじ部42の内部54を通り、シャフト本体20の内部68を通って、長手方向に、連続的に、かつ中心に、形成されてよく、好ましくは、ヘッド部22の底部端28の近位、又は若干下方の場所76で、終端する。例えば中心供給チャネル70a(図1B参照)の形態の供給チャネル70(図1B参照)の内部80(図1B参照)は、好ましくは、中空であり、かつ、加圧下で供給チャネル70(図1B参照)内に注入される樹脂充填物120(図5A図5B参照)を受容するよう構成される。
【0044】
図2Bに示しているように、例えば同心輪状供給チャネル70bの形態の供給チャネル70は、ねじ部42の上部端44及びシャフト本体20の第1端部58にある、又はそれらの付近にある開口40を通り、シャフト本体20の内部68を通って、長手方向に連続的に形成されてよく、好ましくは、ヘッド部22の底部端28の近位、又は若干下方の場所76で、終端する。例えば同心輪状供給チャネル70b(図2B参照)の形態の供給チャネル70(図2B参照)の内部80(図2B参照)は、好ましくは、シャフト本体20(図2B参照)の内部68(図2B参照)内に形成された中空の同心輪であり、かつ、加圧下で供給チャネル70(図2B参照)内に注入される樹脂充填物120(図5A図5B参照)を受容するよう構成される。
【0045】
シャフト本体20(図5B参照)は、シャフト本体壁168(図5B参照)であって、各々が約0.020インチから約0.060インチまでの壁厚を有するシャフト本体壁168を、更に有する。例えば、ファスナ10a(図1B図5B参照)などのファスナ10のシャフト本体壁168(図1B図5B参照)の壁厚は、約0.020インチから約0.030インチまでの範囲内でありうる。例えば、例えばファスナ10b(図2B図2E参照)などのファスナ10のシャフト本体壁168(図2B図2E参照)の壁厚は、約0.040インチから約0.060インチまでの範囲内でありうる。電気伝導は主に、シャフト本体壁168(図5B参照)を通じて実現しうる。
【0046】
ファスナ10(図1B図2B図2E図5A図5B参照)が複合構造物102(図3B図3C図5A図5B参照)内に形成された対応するファスナ孔11(図3B図3C図5A図5B参照)の中に取り付けられている場合、シャフト本体壁168(図5B参照)を含む、ファスナ10(図1B図2B参照)のシャフト本体20(図1B図2B参照)は、加圧下で樹脂充填物120(図3B図3C図5A図5B参照)が供給チャネル70(図1B図2B図2E図5A図5B参照)内に注入される際に、径方向に拡張するよう構成される。シャフト本体壁(図1B図2B図2E図5B参照)を含む、ファスナ10(図1B図2B図2E参照)のシャフト本体20(図1B図2B図2E参照)は、加圧下で樹脂充填物(図5B参照)が注入され、充填される際に、径方向外側に向かって、約0.001インチから約0.002インチまでの径方向距離だけ、径方向に拡張するよう構成されうる。
【0047】
更に、径方向に拡張する際に、シャフト本体20(図1B図2B参照)の外表面64(図1B図2B参照)は、対応するファスナ孔11(図3B図3C図5A図5B参照)の内側孔表面86(図5A図5B参照)に直接接触するよう構成され、その結果、ファスナ10(図3B図3C図5A図5B参照)は、複合構造物102(図5B参照)との電気的接触88(図5B参照)を提供し、かつ、複合構造物102(図5B図7参照)への電流152(図5B参照)の分配を提供することになる。電流152(図5B参照)は、例えば、落雷170(図7参照)、或いは他の電磁効果又は電気的事象によって生じるものなどである。ファスナ10(図1A図2A図3A図3C図5A図5B参照)は、好ましくは、複合構造物102(図5A図5B参照)との電気的接触88(図5B参照)を改善し、かつ、複合構造物102(図7参照)への電流152(図5B参照)の分配を改善する。
【0048】
図1A図1B図2A図2B図2Eに示しているように、例えばファスナ10a(図1A図1B参照)の形態、及び、例えばファスナ10b(図2A図2B図2E参照)の形態のファスナ10は、コンプライアント型の隙間嵌めファスナ12を含み、このコンプライアント型の隙間嵌めファスナ12は、シャフト本体20(図5A図5B参照)を径方向に拡張させる樹脂充填物120(図5A図5B参照)と共に使用されると、その結果、ヘッド部22(図5A図5B参照)とシャフト本体20(図5B参照)の両方が、対応するファスナ孔11(図5B参照)の内側孔表面86(図5B参照)との、締まり嵌め150(図5B参照)又は有効な締まり嵌めを有することになる。
【0049】
ここで図3A図3Cを参照するに、別の例では、ファスナシステム100が提供される。図3Aは、本開示のファスナシステム100の部分切り取り側方斜視図である。図3Bは、例えばファスナシステム100aの形態の、ファスナシステム100の一例の切り取り側方斜視図であり、図1Aのファスナ10aと共に図示されている。図3Cは、図3Aの、例えばファスナシステム100bの形態の、ファスナシステム100の別の例の切り取り側方斜視図であり、図2Aのファスナ10bと共に図示されている。ファスナシステム100(図3A図3C図5A図5B参照)は、複合構造物102(図3A図3C参照)との電気的接触88(図5B参照)を改善し、かつ、航空機複合構造物102b(図7参照)などの複合構造物102(図7参照)への電流152(図5B参照)の分配を改善する。電流152(図5B参照)は、例えば、落雷170(図7参照)、或いは他の電磁効果又は電気的事象によって生じるものなどである。
【0050】
ファスナシステム100(図3B図3C参照)は、詳細に上述した、例えばファスナ10a(図3B参照)の形態、及び、例えばファスナ10b(図3C参照)の形態の、一又は複数のファスナ10(図3B図3C参照)を備える。一又は複数のファスナ10(図3B図3C参照)は各々、炭素繊維強化型プラスチック(CFRP)構造物102a(図3A図3C参照)などの複合構造物102(図3A図3C参照)内に形成された一又は複数の対応するファスナ孔11(図3B図3C参照)の中に、及びその内部に、取り付けられるよう構成される。ファスナ10(図3B図3C参照)は、樹脂充填物120(図3B図3C参照)で充填されるよう構成される。
【0051】
図3B及び図3Cは、ファスナ10であって、例えば炭素繊維強化型プラスチック(CFRP)構造物102aの形態の複合構造物102内の対応するファスナ孔11内に挿入された、ファスナ10を示している。ファスナ10(図3B図3C参照)のヘッド部22(図3B図3C参照)の上部端26(図3B図3C参照)の上面36(図3B図3C参照)は、カウンタシンク位置138(図3B図3C参照)で示されている。
【0052】
本書において、「炭素繊維強化型プラスチック(carbon fiber reinforced plastic:CFRP)」とは、炭素繊維105a(図3B図3C参照)などの複数の繊維105(図3B図3C参照)、或いは、炭素繊維105aと、ガラス繊維、アラミド繊維、グラファイト繊維、芳香族ポリアミド繊維、ファイバグラス、アルミニウム繊維、又はそれ以外の好適な強化用繊維といった、他の強化繊維との組み合わせで強化された、樹脂マトリクス104a(図3B図3C参照)などのマトリクス材104(図3B図3C参照)で作られた、複合材料を意味する。CFRPの樹脂マトリクス104a(図3B図3C参照)などのマトリクス材104(図3B図3C参照)は、好ましくは、熱硬化性ポリマー樹脂又は熱可塑性ポリマー樹脂を含むポリマー樹脂を含む。使用されうる例示的な熱硬化性ポリマー樹脂は、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、アリル樹脂、ビスマレイミド(BMI)樹脂、ポリウレタン(PUR)樹脂、シアン酸エステル樹脂、ポリイミド樹脂、或いは、他の好適な熱硬化性ポリマー樹脂又は樹脂系を含む。使用されうる例示的な熱可塑性ポリマー樹脂は、ポリエチレン(PE)樹脂、ビニル樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ナイロン樹脂を含むポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂、ポリエーテルエーテルケトンポリマー(PEEK)樹脂、ポリエーテルケトンケトンポリマー(PEKK)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリスルホン(PSU)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、或いは、他の好適な熱可塑性ポリマー樹脂又は樹脂系を含む。
【0053】
図3A図3Cに示しているように、複合構造物102は、第1部分103aと第2部分103bとを備える。図3B図3Cに示しているように、第1部分103aは、樹脂マトリクス104aなどのマトリクス材104と、炭素繊維105aなどの複数の繊維105とを含む、複合材料で構成されうる。樹脂マトリクス104aなどのマトリクス材104、及び、炭素繊維105aなどの複数の繊維105は、図3B図3C、並びに図5A図5Bには概略的にのみ表されていることに、留意されたい。複数の繊維105(図3B図3C図5A図5B参照)は、マトリクス材104(図3B図3C図5A図5B参照)を通って延在しており、複合構造物102(図3B図3C図5A図5B参照)全体において、長さ方向に、幅方向に、又はそれらの方向を組み合わせて(例えば、0度、90度、+/−45度の配向に)延在するように位置付けられ、かつ、複合構造物102(図3B図3C図5A図5B参照)の厚さ方向に層状にされる。
【0054】
第2部分103b(図3B図3C参照)は、アルミニウムなどの金属材料、又は別の好適な金属材料で作られ、かつ、複合構造物102(図3B図3C参照)の第1部分103a(図3B図3C参照)にファスナ留めされた、又は取り付けられた、金属製構造物107(図3B図3C参照)を含みうる。あるいは、第1部分103a(図3A図3C参照)は金属材料で作られた金属製構造物を含んでよく、第2部分103b(図3A図3C参照)は複合材料を含みうる。
【0055】
図3B及び図3Cに示しているように、第1部分103aは、内部開口106aであって、それを通ってファスナ10が挿入される内部開口106aを有し、第2部分103bは、内部開口106bであって、同様にそれを通ってファスナ10が挿入される内部開口106bを有する。ファスナ10(図3B図3C参照)は、第1部分103a(図3B図3C参照)を第2部分103b(図3B図3C参照)に取り付けるか、又は接合させて、ファスナ留め接合部108(図3A図3C参照)を形成する。
【0056】
上述したように、ファスナシステム100(図3B図3C参照)の各ファスナ10(図1B図2B図3B図3C参照)は、ヘッド部22(図1B図2B図3B図3C参照)が配置されている第1端部16(図1B図2B参照)、ねじ部42(図1B図2B図3B図3C参照)が配置されている第2端部18(図1B図2B参照)、及び、第1端部16(図1B図2B参照)と第2端部18(図1B図2B参照)との間に配置されたシャフト本体20(図1B図2B図3B図3C参照)を有する、細長いシャフト14(図1B図2B参照)を備える。シャフト本体20(図1B図2B参照)は、外表面64(図1B図2B参照)と、内表面66(図1B図2B参照)とを有する。
【0057】
ファスナシステム100(図3B図3C参照)の各ファスナ10(図1B図2B図3B図3C参照)は、上述のように、ねじ部42(図1B図2B図3B図3C参照)にある開口40(図1B図2B図3B図3C参照)から、細長いシャフト14(図1B図2B参照)の長手方向中心軸78(図1B図2B参照)に平行に、シャフト本体20(図1B図2B図3B図3C参照)の内表面66(図1B図2B参照)を通り、ヘッド部22(図1B図2B参照)の近位の場所76(図1B図2B参照)で終端するように延在する、少なくとも1つの供給チャネル(図1B図2B図3B図3C参照)を、更に備える。一例では、ねじ部42(図1B図3B参照)にある開口40(図1B図3B参照)は、ねじ部42(図1B図3B参照)の底部端46(図1B参照)にあるスロット開口40a(図1B図3B参照)を含み、かつ、ファスナ10の一方の側部からファスナ10の反対の側部まで開いている。別の例では、ねじ部42(図2B図3C参照)にある開口40(図2B図3C参照)は、ねじ部42(図2B図3C参照)の上部端44(図2B参照)にある同心輪状開口40b(図2B図3C参照)を含む。オプションでは、図2Eに示しているように、一又は複数の長手方向溝87が、シャフト本体20に形成されてよく、同心輪状開口40bからシャフト本体20の外表面64に沿って延在し、かつ、ヘッド部22の近位で終端しうる。
【0058】
図3A図3Cに示しているように、ファスナシステム100は、一又は複数の対応するファスナ孔11内に取り付けられた、例えばファスナ10a(図3B参照)の形態、及び、例えばファスナ10b(図3C参照)の形態の一又は複数のファスナ10の各々に連結するよう構成された、注入ツールアセンブリ110を更に備える。図3A図3Cに示しているように、注入ツールアセンブリ110は、複合構造物102の第2部分103bの底面112に連結される。図3B図3Cに示しているように、注入ツールアセンブリ110は、ファスナ10のねじ部42に連結される。
【0059】
注入ツールアセンブリ110(図3A図3C参照)は、複合構造物102(図3A図3C参照)の底面112(図3A図3C参照)に取り付けられるための、例えば吸引カップ又は他の好適な取り付け要素の形態の、一又は複数の取り付け部114(図3A図3C参照)を備える。取り付け部114(図3A図3C参照)は、複合構造物(図3A図3C参照)の第2部分103b(図3A図3C参照)の底面112(図3A図3C参照)に取り付けられる第1端部116a(図3A図3C参照)を有し、かつ、第2端部116b(図3A図3C参照)を有する。
【0060】
図3A図3Cに示しているように、取り付け部114は、好ましくは、ファスナ10(図3B図3C参照)の供給チャネル70(図3B図3C参照)内に注入するための樹脂充填物120(図3B図3C参照)を内包する加圧注入器126を有する、容器118に連結される。図3A図3Cに更に示しているように、容器118は、ホルダアセンブリ128に連結され、ホルダアセンブリ128により定位置に保持される。加圧注入器126(図3A参照)を有する容器118(図3A参照)は、樹脂充填物120をファスナ10内に注入するための圧力及び出力を提供する、加圧アセンブリ129(図3A参照)に連結されうるか、又は取り付けられうる。
【0061】
容器118(図3B図3C参照)は、好ましくは、取り付け部114(図3B図3C参照)を介して、ファスナ10(図3B図3C参照)のねじ部42(図3B図3C参照)にある開口40(図3B図3C参照)に連結するよう構成される。加圧注入器126(図3B図3C参照)は、好ましくは、ファスナ10(図3B図3C参照)のねじ部42(図3B図3C参照)にある開口40(図3B図3C参照)に連結され、かつ、加圧下でファスナ10(図3B図3C参照)内に樹脂充填物120(図3B図3C参照)を注入するよう構成される。
【0062】
図3B及び図3Cに更に示しているように、注入ツールアセンブリ110は、取り付け部114の第1端部116aに取り付けられた、又は連結された、例えばOリング圧力密封136aの形態の一又は複数の密封要素136を有しうる。例えば高温Oリング圧力密封136a(図3B図3C参照)の形態の密封要素136(図3B図3C参照)は、好ましくは、取り付け部114(図3B図3C参照)の第1端部116a(図3B図3C参照)を、複合構造物102(図3B図3C参照)の底面112(図3B図3C参照)に当接させて圧力密封する。
【0063】
図3B及び図3Cに更に示しているように、加圧注入器126は、好ましくは、中空注入チューブ130を備え、中空注入チューブ130は、中空注入チューブ130の中に樹脂充填物120を注入するよう構成された第1端部開口134aを有する、第1端部132aを有する。一例では、図3Bに更に示しているように、中空注入チューブ130は第2端部開口134bを有する第2端部132bを有し、第2端部開口134bは、例えばファスナ10aの形態のファスナ10のねじ部42にあるスロット開口40aなどの開口40と位置が合うよう、かつ、かかる開口40に連結するよう、構成されている。この例では、図3Bに示しているように、例えばファスナシステム100aの形態のファスナシステム100の注入ツールアセンブリ110は、中心供給チャネル70aなどの供給チャネル70を樹脂充填物120で充填するために、例えばファスナ10aの形態のファスナ10の中心供給チャネル70aなどの供給チャネル70内に、加圧下で樹脂充填物120を注入するか、又は押し込む。
【0064】
別の例では、図3Cに示しているように、中空注入チューブ130は、取り付け部114の一又は複数の内部142に形成された供給チャネルアセンブリ140に接続するよう構成されうる。図3Cに示しているように、供給チャネルアセンブリ140は2つ以上の横方向チャネル144を備えてよく、各横方向チャネル144は、一方の端部で中空注入チューブ130に連結され、かつ、他方の端部で同心輪状チャネル146に連結される。同心輪状チャネル146(図3C参照)は、例えばファスナ10b(図3C参照)の形態のファスナ10(図3C参照)のねじ部42(図3C参照)の上部端44(図2B参照)にある、同心輪状開口40b(図3C参照)などの開口40(図3C参照)と位置が合うよう、かつ、かかる開口40に連結するよう、構成される。この例では、図3Cに示しているように、例えばファスナシステム100bの形態のファスナシステム100の注入ツールアセンブリ110は、同心輪状供給チャネル70bなどの供給チャネル70を樹脂充填物120で充填するために、例えばファスナ10bの形態のファスナ10の同心輪状供給チャネル70bなどの供給チャネル70内に、加圧下で樹脂充填物120を注入するか、又は押し込む。
【0065】
ファスナシステム100(図3B図3C参照)は、注入ツールアセンブリ110(図3B図3C参照)を介して複合構造物102(図3B図3C参照)内に取り付けられた各ファスナ10(図3B図3C参照)内に注入される、樹脂充填物120(図3B図3C参照)を更に備える。樹脂充填物120(図3B図3C参照)は、好ましくは、ファスナ10(図3B図3C参照)の供給チャネル70(図3B図3C参照)内に分注されるのに有効な粘度レベルを実現するよう考案されるが、好ましくは、自由に流動する液体状態ではない。
【0066】
樹脂充填物120(図3B図3C図5A図5B参照)は、好ましくは、伝導性の添加物又は充填物などの導電性充填材124(図5B参照)と混合された、かかる充填材124で充填された、又はかかる充填材124を含有する、結着樹脂材料又は樹脂系など、或いは、非伝導性材料などの、樹脂材料122(図5B参照)を含む。樹脂材料122(図5B参照)は、熱硬化性ポリマー樹脂又は熱可塑性ポリマー樹脂を含む、ポリマー樹脂を含みうる。使用されうる例示的な熱硬化性ポリマー樹脂は、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、アリル樹脂、ビスマレイミド(BMI)樹脂、ポリウレタン(PUR)樹脂、シアン酸エステル樹脂、ポリイミド樹脂、或いは、他の好適な熱硬化性ポリマー樹脂又は樹脂系を含む。使用されうる例示的な熱可塑性ポリマー樹脂は、ポリエチレン(PE)樹脂、ビニル樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ナイロン樹脂を含むポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂、ポリエーテルエーテルケトンポリマー(PEEK)樹脂、ポリエーテルケトンケトンポリマー(PEKK)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリスルホン(PSU)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、或いは、他の好適な熱可塑性ポリマー樹脂又は樹脂系を含む。樹脂充填物120(図5B参照)向けの例示的な樹脂材料122(図5B参照)或いは結着樹脂材料又は樹脂系は、エポキシ樹脂、ビスマレイミド(BMI)樹脂、フェノール樹脂、及びシアン酸エステル樹脂を含む。
【0067】
充填材124(図5B参照)は、例えば、短炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、カーボンブラック、金属性繊維、金属性粒子(銀粒子、ニッケル粒子、銅粒子、及びアルミニウム粒子を含む)、グラファイト、グラフェン、グラフェンナノ充填物、或いは、他の好適な伝導性材料又は非伝導性材料を含みうる。加えて、充填材124(図5B参照)は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェンなどの伝導性ポリマー、又は他の好適な伝導性ポリマーを含みうる。本書において、「伝導性ポリマー(conductive polymer)」は、「固有伝導性ポリマー(intrinsically conducting polymer)」とも称され、電気を伝導することが可能な有機ポリマーを意味する。樹脂充填物120(図5B参照)向けの例示的な充填材124(図5B参照)は、カーボンナノチューブ、短炭素繊維、銀粒子、及び、伝導性ポリマー ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を含む。
【0068】
例示的な樹脂充填物120(図3B図3C図5A図5B参照)は、銀粒子でドープされたエポキシ樹脂、銀粒子でドープされたビスマレイミド(BMI)樹脂、銀粒子でドープされたフェノール樹脂、銀粒子でドープされたシアン酸エステル樹脂、カーボンナノチューブでドープされたエポキシ樹脂、カーボンナノチューブでドープされたビスマレイミド(BMI)樹脂、カーボンナノチューブでドープされたフェノール樹脂、カーボンナノチューブでドープされたシアン酸エステル樹脂、短炭素繊維を有するエポキシ樹脂、短炭素繊維を有するビスマレイミド(BMI)樹脂、短炭素繊維を有するフェノール樹脂、短炭素繊維を有するシアン酸エステル樹脂、及び、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を有する樹脂を含む。本書において、「ドープされた(doped)」とは、混合され、充填され、又は含有していることを意味する。すなわち、樹脂は、導電性などの伝導性を提供するために、銀粒子、カーボンナノチューブ、又は短炭素繊維などの伝導性の材料又は添加物と混合され、かかる伝導性の材料又は添加物で充填され、又は、かかる伝導性の材料又は添加物を含有するか、或いは、非伝導性材料と混合され、非伝導性材料で充填され、又は非伝導性材料を含有する。
【0069】
好ましくは、樹脂充填物120(図5B参照)の樹脂材料122(図5B参照)又は樹脂系は、樹脂材料122(図5B参照)が挿入又は注入されるファスナ10(図1A図2A図5A図5B参照)に類似した化学的特性、構造特性、及び膨張特性を有する。
【0070】
樹脂充填物120(図3B図3C図5A図5B参照)は、およそ1×10S/m(シーメンス毎メートル)以上の、導電性などの伝導性を有しうる。本書において、「伝導性(conductivity)」及び「導電性(electrical conductivity)」とは、電流を伝導する樹脂充填物の能力を意味する。好ましくは、樹脂充填物120(図3B図3C図5A図5B参照)の導電性などの伝導性は、複合構造物102(図3B図3C図5A図5B参照)を含む複合材料の炭素繊維105a(図5A図5B参照)の方向に沿って、複合構造物102(図5A図5B参照)の複合材料の導電性などの伝導性に接近する。
【0071】
好ましくは、樹脂充填物120(図3B図3C図5A図5B参照)は、樹脂充填物120(図3B図3C図5A図5B参照)の熱膨張率(CTE)が、ファスナ10(図3B図3C図5A図5B参照)の熱膨張率(CTE)に実質的に合致するか、又は合致するように、選択される。本書において、「熱膨張率(coefficient of thermal expansion:CTE)」とは、温度の一単位変化あたりの(例えば華氏又は摂氏1度あたりの)材料の長さ又は体積の変化(インチ単位の線形熱膨張)を意味し、材料が膨張する速度を温度の関数として決定するために使用され、かつ、熱応力の問題が発生しうるか否かを判定するために使用されうる。高分子(polymeric)プラスチックは、金属よりも多く、6回から9回までのいずれかの回数、膨張及び収縮する傾向がある。隣接する材料間のCTEの差は、ポリマー内の内部応力及び応力集中につながることがあり、このことが、早発性の微小亀裂の発生を引き起こしうる。ゆえに、樹脂充填物120(図3B図3C図5A図5B参照)は、好ましくは、樹脂充填物120(図3B図3C図5A図5B参照)のCTEが、ファスナ10(図1A図2A図5A図5B参照)のCTEに実質的に合致するか、又は合致し、したがって、航空機200a(図7参照)が典型的に受ける地上から高所までの典型的な温度変動(これはファスナ留めされた複合接合部における微小亀裂につながる可能性もある)において内部応力が発生しないように、選択される。
【0072】
ファスナシステム100(図3B図3C図5B参照)は、樹脂充填物120(図5B参照)がファスナ10(図5B参照)の供給チャネル70(図5B参照)内に注入された後の、樹脂充填物120(図5B参照)が定位置に硬化される前に、樹脂充填物120(図5B参照)がファスナ10(図5B参照)から漏れることを防止するために、供給チャネル70(図5B参照)の開口40(図5B参照)内に一時的に挿入されるよう構成された、取り外し可能なプラグデバイス94(図5B参照)を、更に備えうる。
【0073】
ここで図4を参照するに、図4は、炭素繊維強化型プラスチック(CFRP)構造物102aなどの複合構造物102内に取り付けられた、例えば締まり嵌めスリーブ式ファスナ1aの形態の既知のスリーブ式ファスナ1の概略的な側方断面図である。図4に示しているように、ファスナ1は、ヘッド部6と、シャフト本体7と、ねじ部8とを備える。CRES(corrosion resistant steel:耐食鋼)スリーブなどのスリーブ2(図4参照)が、ヘッド部6及びシャフト本体7の外側を囲んでいる。密封剤4(図4参照)が、スリーブ2(図4参照)を覆って付加される。図4に示しているように、第1端部160a及び第2端部160bを有するねじ式カラー158が、ファスナ1のねじ部8の周囲に螺合する。
【0074】
ファスナ1(図4参照)は、ヘッド部6(図4参照)において、及びシャフト本体7(図4参照)に沿って、締まり嵌め150(図4参照)を有する。図4は、ヘッド部電流分配153とシャフト本体電流分配154とを含む、電流152の分配を示し、かつ、電流152が、ファスナ1のスリーブ全長156に沿って分配又は伝達されることを示している。電流152(図4参照)の分配は、ファスナ1の(図4参照)のスリーブ全長156(図4参照)に沿って、炭素繊維強化型プラスチック(CFRP)構造物102a(図4参照)などの複合構造物102(図4参照)を通じて均一である。ファスナ1(図4参照)は、燃料密封を確実にするために湿式取り付けが行われる。
【0075】
ここで図5Aを参照するに、図5Aは、本開示の図3Bのファスナシステム100aなどのファスナシステム100を更に示すための、例えばファスナ10aの形態のファスナ10の概略的な部分側方断面図である。図5Aは、炭素繊維強化型プラスチック(CFRP)構造物102aなどの複合構造物102内に取り付けられた、例えばファスナ10aの形態のファスナ10を示しており、複合構造物102は、粗面を有しうる、対応するファスナ孔11を有する。
【0076】
図5Aに示しているように、炭素繊維強化型プラスチック(CFRP)構造物102aなどの複合構造物102は、炭素繊維105などの複数の繊維105と混合された、樹脂マトリクス104aなどのマトリクス材104を含む。複合構造物102(図5A図7参照)は、好ましくは、航空機複合構造物102b(図7参照)を含む。図5Aは、樹脂充填物120がファスナ10内に注入されて、中心供給チャネル70aなどの供給チャネル70の内部80を充填することを、更に示している。
【0077】
図5Aに更に示しているように、例えばファスナ10aの形態のファスナ10は、ヘッド部22と、シャフト本体20と、ねじ部42とを備える。ファスナ10(図5A参照)のヘッド部22(図5A参照)は、複合構造物102(図5A参照)の対応するファスナ孔11(図5A参照)の中で、カウンタシンク位置138(図5A参照)にある。図5Aに示しているように、ファスナ10が対応するファスナ孔11の中に取り付けられている場合、ファスナ10のシャフト本体20の表面上の複数のリッジ82は、対応するファスナ孔11の内側孔表面86に隣接し、直接接触している。図5Aに示しているように、ファスナ10が樹脂充填物120で充填される前の、ファスナ10に径方向拡張162(図5B参照)が行われる前に、ファスナ10は隙間嵌め148を有している。
【0078】
図5Aに示しているように、ねじ式カラー158は、好ましくは、ファスナ10のねじ部42に連結されて、複合構造物102内の対応するファスナ孔11の中におけるファスナ10の定位置での保持を強化し、支援しうる。図5Aに更に示しているように、ねじ式カラー158は、複合構造物102の下部端に隣接する第1端部160aを有し、かつ、第2端部160bを有する。
【0079】
ねじ式カラー158(図5A参照)がファスナ10(図5A参照)に連結されるか、又は取り付けられ、かつ、ファスナ10(図5A参照)が対応するファスナ孔11ファスナ10(図5A参照)内の定位置に固定された後に、樹脂充填物120ファスナ10(図5A参照)が、好ましくは、注入ツールアセンブリ110(図5A参照)を用いてファスナ10(図5A参照)内に注入又は載置される。
【0080】
図5Aに示しているように、注入ツールアセンブリ110は、樹脂充填物120を内包する容器118に連結された加圧注入器126を有する。上述のように、樹脂充填物120(図5A参照)は、導電性であることもそうでないこともある充填材124(図5B参照)と混合された、かかる充填材124を含有する、又は、かかる充填材124で充填された、樹脂材料122(図5B参照)を含む。
【0081】
注入ツールアセンブリ110(図5A参照)には、図3Aに示している加圧アセンブリ129、又は、別の好適な出力及び圧力の供給源又はデバイスによって、圧力及び出力が提供されうる。加圧注入器126(図5A参照)及び容器118(図5A参照)は、図3Bに示す加圧注入器126(図3B参照)及び容器118(図3B参照)に類似した構成要素、及び類似した構造を備えうるか、又は、既知の流体加圧注入プロセスで使用される、他の好適な既知の加圧注入器と容器の構成要素を備えうる。
【0082】
図5Aは、ファスナ10内へと流れる樹脂充填物120の経路を図示する、矢印を示している。樹脂充填物120(図5A参照)は、注入ツールアセンブリ110(図5A参照)を介して、加圧下で、ねじ部42(図5A参照)にあるヘッド部22(図5A参照)の開口40(図5A参照)を通ってファスナ10(図5A参照)内へと流れ、次に、例えば中心供給チャネル70a(図5A参照)の形態の供給チャネル70(図5A参照)内に流れ込み、シャフト本体20の(図5A参照)長さ96(図5A参照)に沿って、供給チャネル70(図5A参照)を通って流れる。有効な又は所望の量の樹脂充填物120(図5A参照)がファスナ10(図5A参照)内に注入又は挿入されると、注入された樹脂充填物120(図5A参照)を有するファスナ10(図5A参照)が、好ましくは、硬化されうる。
【0083】
ここで図5Bを参照するに、図5Bは、図5Aのファスナシステム100の概略的な部分側方断面図であり、が樹脂充填物120で充填された、例えばファスナ10aの形態のファスナ10を示し、かつ、ファスナ10の径方向拡張162と電流152の分配とを示している。図5Bは、炭素繊維強化型プラスチック(CFRP)構造物102aなどの複合構造物102内に取り付けられた、例えばファスナ10aの形態のファスナ10を示しており、複合構造物102は対応するファスナ孔11を有している。図5Bに示しているように、炭素繊維強化型プラスチック(CFRP)構造物102aなどの複合構造物102は、炭素繊維105などの複数の繊維105と混合された、樹脂マトリクス104aなどのマトリクス材104を含む。図5Bは、充填材124と混合された樹脂材料122を含む樹脂充填物120で充填された、例えば中心供給チャネル70aなどの供給チャネル70を、更に示している。
【0084】
図5Bに更に示しているように、例えばファスナ10aの形態のファスナ10は、ヘッド部22と、シャフト本体20と、ねじ部42とを備える。ファスナ10(図5B参照)のヘッド部22(図5B参照)は、複合構造物102(図5B参照)の対応するファスナ孔11(図5B参照)の中でカウンタシンク位置138(図5B参照)にある。図5Bに示しているように、ファスナ10が対応するファスナ孔11の中に取り付けられている場合、ファスナ10のシャフト本体20の表面上の複数のリッジ82は、対応するファスナ孔11の内側孔表面86に隣接し、直接接触している。シャフト本体20(図5B参照)が径方向に拡張すると、シャフト本体20(図5B参照)の外表面64(図1B参照)に沿って形成されたデュアルファンクションねじ山(dual function threads)などの複数のリッジ82(図5B参照)は、ファスナ10(図5B参照)と内側孔表面86(図5B参照)との間の電気的相互接続90(図5B参照)を提供するよう機能又は作用しうると共に、ファスナ留め接合部108(図3A図3C参照)向けの信頼性の高い燃料密封92(図5B参照)としても、機能又は作用しうる。
【0085】
図5Bに更に示しているように、複合構造物102の下部端に隣接した第1端部160aを有し、かつ第2端部160bを有するねじ式カラー158が、好ましくは、ファスナ10のねじ部42に連結されて、複合構造物102内の対応するファスナ孔11の中におけるファスナ10の定位置での保持を強化し、支援しうる。
【0086】
図5Bに更に示しているように、樹脂充填物120がファスナ10の供給チャネル70内に注入された後に、樹脂充填物120がファスナ10から漏れることを防止するために、取外し可能なプラグデバイス94が、供給チャネル70の開口40内に一時的に挿入されうる。取外し可能なプラグ94(図5B参照)は、ファスナ10(図5B参照)及び樹脂充填物120(図5B参照)が硬化された後に除去されうるか、又は、硬化後もファスナ10(図5B参照)に取り付けられたままにされ、その後に除去されうる。ファスナ10(図5B参照)の開口40(図5B参照)は、樹脂充填物120(図5B参照)の注入後の、硬化の前か後のいずれかに、取外し可能なプラグ94(図5B参照)、又は、他の好適な密封要素又はデバイスで、塞がれ、密封され、又は閉じられうる。生産時間のスピードを速めるために、取外し可能なプラグ94(図5B参照)が、樹脂充填物120(図5B参照)が注入された後のファスナ10(図5B参照)の供給チャネル70(図5B参照)の端に挿入されうる。それにより、生産ツールが次の場所に動かされうると共に、樹脂充填物120(図5B参照)の樹脂材料122(図5B参照)が硬化するのを待つ時間がかからなくなる。
【0087】
図5Bは、ヘッド部電流分配153、及びシャフト本体電流分配154を含む、電流152の分配を示し、かつ、電流152が、ファスナ10のヘッド部22において、及び、ファスナ10のシャフト本体20の長さ96に沿って、分配又は伝達されることを示している。シャフト本体電流分配154(図5B参照)などの電流152(図5B参照)の分配は、好ましくは、径方向に拡張されているか、又は径方向拡張162(図5B参照)が行われたシャフト本体20(図5B参照)の長さ96(図5B参照)に沿って、均一になる。径方向拡張162(図5B参照)は、ファスナと複合構造物との界面を越える導電性を提供する。ヘッド部電流分配153(図5B参照)は、好ましくは、シャフト本体電流分配154(図5B参照)よりも大きい。
【0088】
樹脂充填物120(図5B参照)は、加圧下で、注入ツールアセンブリ110(図5A参照)で各ファスナ10(図5B参照)の供給チャネル70(図5B参照)内に注入されて、供給チャネル70(図5B参照)を充填する時に、シャフト本体壁168(図5B参照)を含むシャフト本体20(図5B参照)を、径方向に拡張させ、かつ、対応するファスナ孔11(図5B参照)の内側孔表面86(図5B参照)との直接的な物理的接触及び電気的接触88(図5B参照)を行わせる。その結果、シャフト本体領域98が拡張される。ファスナ10(図5B参照)が、穿孔された対応するファスナ孔11(図5B参照)内に挿入されると、例えば、短炭素繊維又はその同等物などの充填材124(図5B参照)を有する樹脂材料122(図5B参照)を含む、樹脂充填物120(図5B参照)は、ファスナ10(図5B参照)の供給チャネル70(図5B参照)内に注入されてよく、ファスナ留め接合部108(図3A〜3C参照)の構造強化164(図5B参照)としても作用又は機能しうる。
【0089】
ファスナ10(図5B参照)の径方向拡張162(図5B参照)は、複合構造物102(図5B参照)との電気的接触88(図5B参照)を改善し、かつ、複合構造物102(図5B参照)への電流152(図5B参照)の分配を改善する。ファスナ10(図5B参照)の各々は、シャフト本体20(図5B参照)を径方向に拡張させる樹脂充填物120(図5B参照)と共に使用される場合、ヘッド部22(図5B参照)において、かつ、シャフト本体20(図5B参照)に沿って、締まり嵌め150(図5B参照)を提供する、コンプライアント型の隙間嵌めファスナ12(図1B図2B参照)を含む。ゆえに、ファスナ10(図5B参照)は、有効であり、かつ、ファスナ留め接合部108(図3A図3C参照)の電流伝導能力を増大させる、避雷設計166(図5B参照)を提供する。
【0090】
ここで図6を参照するに、別の例では、航空機200a(図7参照)の複合構造物102(図5B参照)との電気的接触88(図5B参照)を改善し、かつ、航空機200a(図7参照)への電流152(図5B参照)、例えば、落雷170(図7参照)或いは他の電磁効果又は電気的事象からの電流152(図5B参照)の、分配を改善するための方法180が、提供される。図6は、本開示の方法180の一例を示すフロー図である。
【0091】
図6に示しているように、方法180は、ファスナ10a(図1A図5A図5B参照)又はファスナ10b(図2A参照)などの一又は複数のファスナ10(図1A図2A図5A図5B参照)を、複合構造物102(図3B図3C図5A図5B参照)内に形成された一又は複数の対応するファスナ孔11(図3B図3C図5A図5B参照)の中に取り付けるステップ182を含む。ファスナ10(図1A図2A図5A図5B参照)が対応するファスナ孔11(図3B図3C図5A図5B参照)内に取り付けられる前に、例えばディスクリートな貫通孔の形態の、この対応するファスナ孔11(図3B図3C図5A図5B参照)が、好ましくは、ドリル又は他の好適な孔形成デバイスなどの既知の形成デバイスを用いて、例えば穿孔又は別の好適な形成プロセスによって、複合構造物102(図3B図3C図5A図5B参照)内に、形成される。複合構造物102(図3B図3C図5A図5B参照)を通る対応するファスナ孔11(図3B図3C図5A図5B参照)を形成することで、この対応するファスナ孔11(図5A参照)は、複合構造物102(図5A図5B参照)の対応するファスナ孔11(図5A図5B参照)の、粗面でありうる内側孔表面86(図5A図5B参照)において、炭素繊維105a(図3B図3C図5A図5B参照)などの複数の繊維105(図3B図3C図5A図5B参照)の全てのうちの一部を、係合する。
【0092】
ファスナ10(図3B図3C図5A図5B参照)が、形成された対応するファスナ孔11(図3B図3C図5A図5B参照)内に取り付けられる前に、この対応するファスナ孔11(図3B図3C図5A図5B参照)は、必要に又は所望に応じて、当該技術分野において既知である、好適な洗浄デバイス又は処理デバイス、洗浄剤又は処理剤、及び/又は洗浄方法又は処理方法を用いて、洗浄されうるか、又は処理されうる。
【0093】
対応するファスナ孔11(図3B図3C図5A図5B参照)が洗浄又は処理されると、ファスナ10(図3B図3C図5A図5B参照)が、この対応するファスナ孔11(図3B図3C図5A図5B参照)内に挿入されるか、又は取り付けられる。好ましくは、ねじ式カラー158(図5A図5B参照)が、複合構造物102(図5A図5B参照)内の対応するファスナ孔11(図5A図5B参照)の中におけるファスナ10(図5A図5B参照)の定位置での保持を支援するために、ファスナ10(図5A図5B参照)のねじ部42(図5A図5B参照)に連結されうる。
【0094】
詳細に上述したように、各ファスナ10(図1A図2A参照)は、上述したような、ヘッド部22(図1A図2A参照)を有する第1端部16(図1A図2A参照)と、ねじ部42(図1A図2A参照)を有する第2端部18(図1A図2A参照)と、第1端部16(図1A図2A参照)と第2端部18(図1A図2A参照)との間に配置されたシャフト本体20(図1A図2A、3A参照)とを有する、細長いシャフト14(図1A図2A参照)を備える。シャフト本体20(図1A図2A参照)は、外表面64(図1A図2A参照)と、内表面66(図1B図2B参照)とを有する。
【0095】
各ファスナ10(図1A図2A参照)は、上述のような、ねじ部42(図1B図2B参照)にある開口40(図1B図2B参照)から、細長いシャフト14(図1B図2B参照)の長手方向中心軸78(図1B図2B参照)に平行に、シャフト本体20(図1B図2B参照)の内表面66(図1B図2B参照)を通り、ヘッド部22(図1B図2B参照)の近位の場所76(図1B図2B参照)で終端するように延在する、少なくとも1つの供給チャネル(図1B図2B参照)を更に備える。
【0096】
一例では、一又は複数のファスナ10(図1A図2A参照)を取り付けるステップ182(図6参照)は、一又は複数のファスナ10(図1A図2A参照)を取り付けることであって、ねじ部42(図1B図2B参照)にある開口40(図1B図2B参照)は、ねじ部42(図1B参照)の底部端46(図1B参照)にあるスロット開口40a(図1B参照)と、ねじ部42(図2B参照)の上部端44(図2B参照)にある同心輪状開口40b(図2B参照)の一方、又は、別の好適な種類の開口を含む、取り付けることを含みうる。
【0097】
図6に示しているように、方法180は、一又は複数のファスナ10(図3B図3C図5A図5B参照)を一又は複数の対応するファスナ孔11(図3B図3C図5A図5B参照)内の定位置にトルクするステップ184を、更に含む。ファスナ10(図3B図3C図5A図5B参照)が定位置に収まった後に、注入ツールアセンブリ110(図3A図3C図5A参照)が、好ましくは、ファスナ10(図3B図3C図5A参照)のねじ部42(図3B図3C図5A参照)に連結される。
【0098】
図6に示しているように、方法180は、シャフト本体20(図3B図3C図5A参照)を、径方向に拡張させ、かつ、対応するファスナ孔11(図3B図3C図5A図5B参照)の内側孔表面86(図5A図5B参照)と直接接触させるために、加圧下で各ファスナ10(図3B図3C図5A参照)のねじ部42(図3B図3C図5A参照)にある開口40(図3B図3C図5A参照)内に樹脂充填物120(図3B図3C図5A参照)を注入し、かつ、各供給チャネル70(図3B図3C図5A参照)を樹脂充填物120(図3B図3C図5A参照)で充填する、ステップ186を更に含む樹脂充填物120(図3B図3C図5A参照)は、好ましくは、注入ツールアセンブリ110(図3B図3C図5A参照)を用いて、ファスナ10(図3B図3C図5A参照)内に注入又は載置される。
【0099】
加圧下で樹脂充填物120(図3B図3C図5A図5B参照)を注入し、かつ、供給チャネル70(図3B図3C図5A図5B参照)を樹脂充填物120(図3B図3C図5A図5B参照)で充填する、ステップ186(図6参照)は、好ましくは、供給チャネル70(図3B図3C図5A図5B参照)を樹脂充填物120(図3B図3C図5A図5B参照)で充填して、シャフト本体20(図3B図3C図5A図5B参照)を、約0.001インチから約0.002インチまでの径方向拡張162(図5B参照)で、径方向に拡張させることを含む。
【0100】
加圧下で樹脂充填物120(図3B図3C図5A図5B参照)を注入し、かつ、各供給チャネル70(図3B図3C図5A図5B参照)を樹脂充填物120(図3B図3C図5A図5B参照)で充填する、ステップ186(図6参照)は、好ましくは、注入ツールアセンブリ110(図3B図3C図5A参照)を使用して、樹脂充填物120(図3B図3C図5A図5B参照)をファスナ10(図3B図3C図5A図5B参照)内に注入することを含む。
【0101】
図3B図3C、及び図5Aに示しているように、注入ツールアセンブリ110は、樹脂充填物120を内包する容器118を備える。容器118(図3B図3C図5A参照)は、好ましくは、ファスナ10(図3B図3C図5A参照)に連結するよう構成される。図3B図3C、及び図5Aに示しているように、注入ツールアセンブリ110は、容器118に連結された加圧注入器126を更に備え、加圧注入器126は、好ましくは、ファスナ10a(図1A図5A参照)及びファスナ10b(図2A参照)などのファスナ10のねじ部42にある開口40に連結するよう、構成される。容器118(図3B図3C図5A参照)は、開口40(図3B図3C図5A参照)に連結するようにも構成されうる。加圧注入器126(図3B図3C図5A参照)は、好ましくは、加圧下で、ファスナ10(図3B図3C図5A参照)内に樹脂充填物120(図3B図3C図5A参照)を注入するよう構成される。
【0102】
加圧下で樹脂充填物120(図5A図5B参照)を注入するステップ186(図6参照)は、導電性であることもそうでないこともある充填材124(図5B参照)と混合された樹脂材料122(図5B参照)を含む、樹脂充填物120(図5A図5B参照)を注入することを更に含む。図5Bに示しているように、樹脂充填物120は、充填材124と混合された樹脂材料122を含む。上述のように、樹脂充填物120(図5B参照)向けの例示的な樹脂材料122(図5B参照)或いは結着樹脂材料又は樹脂系は、エポキシ樹脂、ビスマレイミド(BMI)樹脂、フェノール樹脂、及びシアン酸エステル樹脂を含んでよく、樹脂充填物120(図5B参照)向けの例示的な充填材124(図5B参照)は、カーボンナノチューブ、短炭素繊維、銀粒子、及び、伝導性ポリマー ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を含みうる。例示的な樹脂充填物120(図5A図5B参照)は、銀粒子でドープされたエポキシ樹脂、銀粒子でドープされたビスマレイミド(BMI)樹脂、銀粒子でドープされたフェノール樹脂、銀粒子でドープされたシアン酸エステル樹脂、カーボンナノチューブでドープされたエポキシ樹脂、カーボンナノチューブでドープされたビスマレイミド(BMI)樹脂、カーボンナノチューブでドープされたフェノール樹脂、カーボンナノチューブでドープされたシアン酸エステル樹脂、短炭素繊維を有するエポキシ樹脂、短炭素繊維を有するビスマレイミド(BMI)樹脂、短炭素繊維を有するフェノール樹脂、短炭素繊維を有するシアン酸エステル樹脂、及び、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を有する樹脂を含む。
【0103】
加圧下で樹脂充填物120(図5A図5B参照)を注入するステップ186(図6参照)は、樹脂充填物120(図5A図5B参照)の熱膨張率(CTE)が、ファスナ10(図5A図5B参照)の熱膨張率(CTE)に実質的に合致するように、樹脂充填物120(図5A図5B参照)を選択することを更に含む。更に、CTE及び膨張特性の類似に加えて、樹脂充填物120(図5B参照)の樹脂材料122(図5B参照)或いは結着樹脂材料又は樹脂系は、好ましくは、ファスナ10(図1A図2A図2E図5A図5B参照)を作製する材料と類似した化学的特性、及び類似した構造特性を有する。
【0104】
図6に示しているように、方法180は、オプションで、樹脂充填物120(図5A図5B参照)をファスナ10(図5A図5B参照)内に注入するステップ186の後に、樹脂充填物120(図5B参照)がファスナ10(図5B参照)から漏れることを防止するために、取り外し可能なプラグデバイス94(図5B参照)を、ファスナ10(図5B参照)の各供給チャネル70(図5B参照)の開口40(図5B参照)内に挿入する、ステップ188を更に含みうる。取外し可能なプラグデバイス94(図5B参照)は、ファスナ10(図5B参照)及び樹脂充填物120(図5B参照)の硬化後に取り外されうるか、又は、硬化後にもファスナ10(図5B参照)に取り付けられたままにされうる。
【0105】
図6に示しているように、方法180は、一又は複数のファスナ10(図5B参照)が、複合構造物102(図5B参照)内に取り付けられ、かつ、樹脂充填物120(図5B参照)で充填された状態で、複合構造物102(図5B参照)を硬化させるステップ190を更に含む。有効な又は所望の量の樹脂充填物120(図5A参照)がファスナ10(図5A参照)内に注入又は挿入されると、注入された樹脂充填物(図5A参照)を有するファスナ10(図5A参照)は、好ましくは、硬化される。硬化ステップ190は、オートクレーブ硬化プロセス、真空バッグ硬化プロセス、オートクレーブと真空バッグとを組み合わせた硬化プロセス、圧縮成形硬化プロセス、樹脂トランスファー成形プロセス、室温硬化プロセス、又は別の好適な硬化プロセスなどの、既知の硬化プロセスを使用して実施されうる。硬化は、選ばれた樹脂充填物120(図5A参照)を有効に硬化させるための材料仕様ごとの必要に応じて、高温の有効温度又は有効熱度で、かつ/又は有効な圧力で、有効な時間にわたり、実行されうる。硬化中に、樹脂充填物120(図5A参照)は、ファスナ10(図5A参照)内の載置された場所で固化する。必要とされる硬化の温度又は熱度、及び/又は圧力は、ファスナ10(図5A参照)内に注入されるために選ばれた樹脂充填物120(図5A参照)の種類に依存することから、変動しうる。本書において、「硬化(curing)」とは、加熱を伴うことも伴わないこともある、全体的又は部分的な固化プロセスが行われることを意味し、樹脂を予備硬化させること、又は、予備硬化された樹脂を含む。
【0106】
図6に示しているように、方法180は、ファスナ10a(図1A、5B参照)及びファスナ10b(図1A、5B参照)などの各ファスナ10(図5B参照)と、対応するファスナ孔11(図5B参照)の各々の内側孔表面86(図5B参照)との間の電気的接触88(図5B参照)を提供し、かつ、航空機200a(図7参照)への、例えば落雷170(図7参照)から生じる電流152(図5B参照)の分配を提供する、ステップ192を更に含む。
【0107】
電気的接触88(図5B参照)を提供し、かつ、電流152(図5B参照)の分配を提供するステップ192は、ヘッド部電流分配153(図5B参照)と、シャフト本体電流分配154(図5B参照)とを分配することを含む。図5Bに示しているように、シャフト本体電流分配154は、径方向に拡張されている、例えば径方向拡張162が行われたシャフト本体20の長さ96に沿って均一であり、ヘッド部電流分配153がシャフト本体電流分配154よりも大きい。ファスナ10(図5B参照)が樹脂充填物120(図5B参照)で拡張された後に、ファスナ10(図5B参照)は、好ましくは、ヘッド部22において複合構造物102(図5B参照)との締まり嵌め150(図5B参照)を有し、かつ、シャフト本体20(図5B参照)の端から端まで、複合構造物102(図5B参照)との締まり嵌め150(図5B参照)を有する。
【0108】
ここで図7を参照するに、図7は、本開示のファスナ10(図1A、2A参照)の例を有する一又は複数の複合構造物102(例えば一又は複数の航空機複合構造物102bなど)を包含しうる、航空機200aなどの航空ビークル200の斜視図である。好ましくは、複合構造物102(図7参照)は、炭素繊維強化型プラスチック(CFRP)構造物102a(図3A図3C図5A図5B参照)を含む。図7に示しているように、航空機200aは、胴体部202、ノーズ204、操縦室206、翼208、一又は複数の推進ユニット210又はエンジン、及び、垂直安定板214と水平安定板216を備える尾部212などの、構成要素を備える。
【0109】
図7に示す航空機200aなどの航空ビークル200は、一又は複数の複合構造物102を有する民間旅客機を概括的に表しているが、開示されている例の教示内容は、他の旅客機にも適用されうる。例えば、開示されている例の教示内容は、貨物航空機、軍用航空機、回転翼航空機、及び他の種類の航空機又は飛行ビークル、並びに、航空宇宙ビークル、人工衛星、宇宙打ち上げビークル、ロケット、及び他の航空宇宙ビークルにも、適用されうる。
【0110】
ここで図8図9を参照するに、図8は、航空機の製造及び保守方法300のフロー図である。図9は航空機320のブロック図である。図8図9を参照するに、本開示の例は、図8に示す航空機の製造及び保守方法300、及び、図9に示す航空機320の観点で説明されうる。
【0111】
図8に示しているように、製造前段階において、例示的な航空機の製造及び保守方法300は、航空機320(図9参照)の仕様及び設計302、及び、材料の調達304を含みうる。製造段階において、航空機320(図9参照)の、構成要素及びサブアセンブリの製造306(図8参照)と、システムインテグレーション308(図8参照)が行われる。その後、航空機320(図9参照)は、認可及び納品310(図8参照)を経て、運航312(図8参照)に供されうる。顧客による運航312(図8参照)の期間中に、航空機320(図9参照)には、改造、再構成、改修、及び他の好適な保守作業も含みうる定期的な整備及び保守314(図8参照)が予定されうる。
【0112】
航空機の製造及び保守方法300(図8参照)の各プロセスは、システムインテグレータ、第三者、及び/又はオペレータ(例えば顧客)によって、実施又は実行されうる。この明細書において、システムインテグレータは、任意の数の航空機製造業者及び主要システム下請け業者を含みうるが、それらに限定されるわけではない。第三者は、任意の数の供給業者、下請け業者、及びサプライヤを含みうるが、それらに限定されるわけではない。オペレータは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関、及び他の好適なオペレータを含みうる。
【0113】
図9に示しているように、例示的な航空機の製造及び保守方法300(図8参照)によって生産された航空機320は、複数のシステム324及び内装326を有する機体322を含みうる。図9に更に示しているように、複数のシステム324の例は、推進システム328、電気システム330、油圧システム332、及び環境システム334のうちの一又は複数を含みうる。任意の数の他のシステムも含まれうる。航空宇宙産業の例を示したが、本開示の原理は、自動車産業などの他の産業にも適用されうる。
【0114】
本書で具現化されている方法及びシステムは、航空機の製造及び保守方法300(図8参照)の一又は複数の任意の段階において用いられうる。例えば、構成要素及びサブアセンブリの製造306(図8参照)に対応する構成要素又はサブアセンブリは、航空機320(図9参照)の運航312(図8参照)の期間中に生産される構成要素又はサブアセンブリと同様の様態で作製又は製造されうる。また、一又は複数の装置の例、方法の例、又はそれらの組み合わせは、例えば、実質的に、航空機320(図9参照)の組立てを効率化すること、又はコストを削減することにより、構成要素及びサブアセンブリの製造306(図8参照)及びシステムインテグレーション308(図8参照)において、利用されうる。同様に、装置の例、方法の例、又はこれらの組み合わせのうちの一又は複数は、航空機320(図9参照)の運航312(図8参照)の期間中に、例えば、限定しないが、整備及び保守314(図8参照)に利用されうる。
【0115】
ファスナ10(図1A図2A図2E参照)、ファスナシステム100(図3A図3C図5A図5B参照)、及び方法180(図6)の開示されている例は、拡張可能であり、かつ樹脂で充填される、コンプライアント型の隙間嵌めファスナ12(図1A図2A参照)を提供する。ファスナ10(図1A図2A図2E参照)は、供給チャネル70(図1B図2B図2E図5B参照)の中に樹脂充填物120(図5A図5B参照)を受容するよう構成された、例えば中心供給チャネル70a(図1B図5B参照)の形態、及び、例えば同心輪状供給チャネル70b(図2B図2E参照)の形態の、供給チャネル70(図1B図2B図5B参照)を有する。供給チャネル70(図1B図2B図2E図5B参照)は、中空の内部80(図1B図2B参照)であって、対応するファスナ孔11(図3B図3C図5A図5B参照)内にそれが挿入され、かつ、ファスナ10(図1B図2B図5B参照)のシャフト本体20(図1B図2B図5B参照)の径方向拡張162(図5B参照)を強いるか又は引き起こす樹脂充填物120(図5B参照)で充填されると、径方向に拡張するよう設計されている内部80(図1B図2B参照)を有し、かつ、ファスナ10(図1B図2B図5B参照)と対応するファスナ孔11(図5B参照)の内側孔表面86(図5B参照)との間の直接的な物理的接触、及びより良好な電気的接触88を可能にする。
【0116】
樹脂充填物120(図5B参照)は、ファスナ留め接合部108(図3A図3C参照)の構造強化164(図5B参照)としても作用又は機能する。電気伝導は主にファスナ10(図5B参照)のシャフト本体壁168(図5B参照)を通じて実現しうることから、樹脂充填物120(図5B参照)が導電特性を有することは、必ずしも必要ではない。コンプライアント型の隙間嵌めファスナ12(図1B、2B参照)は、好ましくは、対応するファスナ孔11(図5A参照)内に隙間嵌め148(図5A参照)で取り付けられるよう構成され、ゆえに、コスト高な既知のスリーブ式ファスナ1(図4参照)の必要性を軽減すると共に、組み立てプロセスにおける効率の改善も可能にする。ゆえに、ファスナ10(図5B参照)のシャフト本体20(図5B参照)は、拡張可能であり、かつ、樹脂充填物120(図5B参照)で充填される際に、径方向に拡張するよう構成される。樹脂充填物120(図5B参照)は、構造強化164(図5B参照)も提供する。使用される樹脂充填物120(図5B参照)の種類は、使用されるファスナ10(図1A図2A参照)及びファスナシステム100(図3A図3C図5A図5B参照)の設計及び意図される応用に基づいて、決定されうる。
【0117】
加えて、ファスナ10(図1A図2A図2E参照)、ファスナシステム100(図3A図3C図5A図5B参照)、及び方法180(図6参照)の開示されている例は、既知のスリーブ式ファスナ1(図4参照)と比較すると、ファスナ10(図1A図2A図2E参照)がスリーブ2(図4参照)及び密封剤4(図4参照)を必要としない、避雷設計166(図5B参照)を提供する。ファスナ10(図1A図2A参照)、ファスナシステム100(図3A図3C図5A図5B参照)、及び方法180(図6参照)は、既知のスリーブ式ファスナ1(図4参照)に関連する高コストなファスナという問題、及び、航空機の複合燃料タンクなどの複合構造物の避雷設計に必要とされうる締まり嵌め150(図4参照)を有するファスナ留め接合部を求めるニーズを、解決しうる。更に、ファスナ10(図1A図2A参照)、ファスナシステム100(図3A図3C図5A図5B参照)、及び方法180(図6参照)は、ファスナ留め接合部108(図3A図3C参照)が、シャフト本体20(図5B参照)の長さ96(図5B参照)に沿った締まり嵌め150(図5B参照)、及び、ヘッド部22(図5B参照)における締まり嵌め150(図5B参照)を有することを可能にし、かつ、フルサイズトゥフルサイズ組み立てなどの、低コストでより強固な航空機組み立て手法の応用も可能にしうる。ゆえに、ファスナ10(図1B図2B図2E図5B参照)は、拡張可能であり、かつ、穿孔された対応するファスナ孔11(図5B参照)内に挿入され、樹脂充填物120(図5B参照)で充填された後に拡張されると、ヘッド部22(図5B参照)において、及び、シャフト本体20(図5B参照)又はシャンクに沿って、電流伝達を提供する。ファスナ10(図1A図2A図2E図5B参照)は、好ましくは、安価で、スリーブを用いない、拡張可能な、コンプライアント型の隙間嵌めファスナ12(図1A図2A参照)であって、樹脂充填物120(図5B参照)と併せて使用されて、既知の締まり嵌めスリーブ式ファスナ1a(図4参照)の導電性及び電気的接触と比較して、同程度か又はより良好な導電性及び電気的接触88(図5B参照)を発生させる、コンプライアント型の隙間嵌めファスナ12である。
【0118】
更に、ファスナ10(図1A図2A図2E参照)、ファスナシステム100(図3A図3C図5A図5B参照)、及び方法180(図6参照)の開示されている例は、落雷170或いは他の電磁効果又は電気的事象から保護するための、例えば航空機燃料タンクで使用される、重い電気絶縁密封剤のファスナへの使用を低減することによって、重量を付加しうる締まり嵌めスリーブ式ファスナ1a(図4参照)などの既知のスリーブ式ファスナ1(図4参照)の使用を低減することによって、及び、重量を付加しうる多数のファスナキャップ密封のファスナへの使用を低減することによって、航空機200a(図7参照)などの航空ビークル200(図7参照)の全体重量を減少させうる。更に、ファスナ10(図1A図2A図2E参照)、ファスナシステム100(図3A図3C図5A図5B参照)、及び方法180(図6参照)は、航空機複合翼外板などの複合構造物102(図3A図3C図7参照)との、同程度か又はより良好な電気的接続を提供する、本書で開示されている比較的安価なファスナ10(図1A図2A図2E参照)を用いることによって、航空機200a(図7参照)の複合構造物102(図7参照)に対する雷緩和のコストを削減しうる。
【0119】
二次的な密封剤及びファスナキャップ密封のコストも、開示されているファスナ10(図1A図2A図2E参照)及びファスナシステム100(図3A図3C参照)を用いることで削減されうる。燃料密封のために組み立てにおいてポリスルフィド樹脂などの密封剤4(図4参照)を使用する、既知のスリーブ式ファスナ1(図4参照)と対照的に、ファスナ10(図1B図2B参照)は、スリーブ2(図4参照)も、密封剤4(図4参照)も使用せず、ファスナ10(図1B図2B図2E図5B参照)の供給チャネル70(図1B図2B図2E図5B参照)を充填して、シャフト本体壁168(図5B参照)を径方向に拡張させ、ファスナ10(図1B図2B図2E図5B参照)と、対応するファスナ孔11(図5B参照)の内側孔表面86(図5B参照)との間の電気的接触及び物理的接触を可能にするために、樹脂充填物120(図5A図5B参照)を使用する。
【0120】
ファスナ10(図1B図2B図2E参照)は、コストが削減され、かつ重量が削減されたファスナであって、ファスナ10(図5B参照)と複合構造物102(図5B参照)との間の、例えばファスナと複合構造物との界面の、良好な電気的接触88(図5B参照)を実現し、ひいては、複合構造物102(図5B参照)にファスナ留めされたファスナ10(図5B参照)によって形成されたファスナ留め接合部108(図3A図3C参照)の電流伝導能力を増大させるために、航空機200a(図7参照)の複合燃料タンクなどの複合構造物102(図4参照)内で使用されうるファスナを、提供する。ファスナ留め接合部108(図3A図3C参照)を有する炭素繊維強化型プラスチック(CFRP)構造物102a(図3A図3C図5A図5B参照)の避雷のためには、ファスナ10(図5A図5B参照)の長さ96(図5A図5B参照)に沿って、及び、対応するファスナ孔11(図5B参照)の内側孔表面86(図5B参照)であって、それを通って金属ファスナなどのファスナ10が複合構造物102(図5B参照)内に挿入される、内側孔表面86(図5B参照)に沿って、電気的接触表面領域を提供することによって、ファスナ留め接合部108(図3B図3C参照)の雷電流伝導能力を増大させることが、望ましい。
【0121】
コンプライアント型の隙間嵌めファスナ12(図1A図2A図2E参照)は、航空機200a(図7参照)の翼208(図7参照)に使用されてよく、径方向拡張162(図5B参照)が、落雷170(図6参照)時に、ファスナ10(図5B参照)のシャフト本体20(図5B参照)とCFRP構造物102a(図5B参照)又はCFRPレイアップなどの複合構造物102(図5B参照)との間の電気的接触88(図5B参照)の増大を通じて、電流152(図5B参照)の分配を増大させる。電流分配の増大は、EME(electromagnetic effect:電磁効果)特性を増大させる。
【0122】
更に、ファスナ10(図1A図2A図2E参照)、ファスナシステム100(図3A図3C図5A図5B参照)、及び方法180(図6参照)の開示されている例は、複合構造物102(図5B参照)との電気的相互接続90(図5B参照)を提供するために、対応するファスナ孔11(図5B参照)の内側孔表面86(図5B参照)と接触するよう構成された、例えば複数のリッジ82(図1B参照)を有するリッジ型外表面64a(図1B参照)の形態の外表面64(図1B参照)を有する、シャフト本体20(図1B参照)を有する、ファスナ10(図1B参照)を提供する。径方向拡張162(図5B参照)の後に、複数のリッジ82(図1B、5B参照)は、複合構造物102(図3B図3C図5B参照)にファスナ留めされたファスナ10(図3B図3C図5B参照)によって形成されたファスナ留め接合部108(図3A図3C参照)に燃料密封92(図5B参照)も提供する。ゆえに、シャフト本体20(図1B参照)に沿った複数のリッジ82(図1B参照)は、電流分配を改善することが可能であり、かつ、シャフト本体20(図5B参照)が拡張されると一体型の燃料密封として作用しうる。
【0123】
更に、本開示は下記の条項による実施形態を含む。
【0124】
1.複合構造物との電気的接触を改善し、かつ、複合構造物への電流の分配を改善するためのファスナであって、
第1端部、第2端部、及び、第1端部と第2端部との間に配置されたシャフト本体であって、外表面と内表面とを有するシャフト本体を有する、細長いシャフトと、
第1端部に配置されたヘッド部と、
第2端部に配置されたねじ部と、
ねじ部にある開口から、細長いシャフトの長手方向中心軸に平行に、シャフト本体の内表面を通り、ヘッド部の近位の場所で終端するように延在する、少なくとも1つの供給チャネルとを備え、
ファスナが複合構造物内に形成された対応するファスナ孔の中に取り付けられている場合、シャフト本体は、加圧下で樹脂充填物が少なくとも1つの供給チャネル内に注入される際に、径方向に拡張するよう構成され、更に、径方向に拡張する際に、シャフト本体の外表面は、対応するファスナ孔の内側孔表面に直接接触するよう構成され、その結果、ファスナが、複合構造物との電気的接触を提供し、かつ、複合構造物への電流の分配を提供することになる、ファスナ。
【0125】
2.ねじ部にある開口はねじ部の底部端にあるスロット開口を含み、供給チャネルは中心供給チャネルを含む、条項1に記載のファスナ。
【0126】
3.ねじ部にある開口はねじ部の上部端にある同心輪状開口を含み、供給チャネルは同心輪状供給チャネルを含む、条項1に記載のファスナ。
【0127】
4.シャフト本体は、ねじ部の上部端にある同心輪状開口から、細長いシャフトの長手方向中心軸に平行に、シャフト本体の外表面を通り、ヘッド部の近位で終端するように延在する、一又は複数の長手方向溝を更に備える、条項3に記載のファスナ。
【0128】
5.シャフト本体の外表面は、複合構造物との電気的相互接続を提供するため、及び、複合構造物にファスナ留めされたファスナによって形成されたファスナ留め接合部に燃料密封を提供するために、対応するファスナ孔の内側孔表面に接触するよう構成された、複数のリッジを備える、条項1に記載のファスナ。
【0129】
6.シャフト本体を径方向に拡張させる樹脂充填物と共に使用されると、その結果、電流の分配がヘッド部電流分配とシャフト本体電流分配とを含むことになる、コンプライアント型の隙間嵌めファスナを含む、条項1に記載のファスナ。
【0130】
7.複合構造物との電気的接触を改善し、かつ、複合構造物への電流の分配を改善するためのファスナシステムであって、
一又は複数のファスナであって、複合構造物内に形成された一又は複数の対応するファスナ孔の中に取り付けられるよう構成された、一又は複数のファスナを備え、各ファスナが、
第1端部、第2端部、及び、第1端部と第2端部との間に配置されたシャフト本体であって、外表面と内表面とを有するシャフト本体を有する、細長いシャフトと、
第1端部に配置されたヘッド部と、
第2端部に配置されたねじ部と、
ねじ部にある開口から、細長いシャフトの長手方向中心軸に平行に、シャフト本体の内表面を通り、ヘッド部の近位の場所で終端するように延在する、少なくとも1つの供給チャネルとを備え、更に、
一又は複数の対応するファスナ孔内に取り付けられた一又は複数のファスナの各々に連結するよう構成された、注入ツールアセンブリと、
シャフト本体を、径方向に拡張させるため、及び、対応するファスナ孔の内側孔表面に直接接触させるために、注入ツールアセンブリを用いて加圧下で各ファスナの少なくとも1つの供給チャネル内に注入されて、この少なくとも1つの供給チャネルを充填する樹脂充填物であって、その結果、ファスナが、複合構造物との電気的接触を提供し、かつ、複合構造物への電流の分配を提供することになる、樹脂充填物とを備える、ファスナシステム。
【0131】
8.樹脂充填物がファスナの少なくとも1つの供給チャネル内に注入された後に、樹脂充填物がファスナから漏れることを防止するために、少なくとも1つの供給チャネルの開口内に挿入されるよう構成された、取り外し可能なプラグデバイスを更に備える、条項7に記載のシステム。
【0132】
9.ねじ部にある開口はねじ部の底部端にあるスロット開口を含み、供給チャネルは中心供給チャネルを含む、条項7に記載のシステム。
【0133】
10.ねじ部にある開口はねじ部の上部端にある同心輪状開口を含み、供給チャネルは同心輪状供給チャネルを含む、条項7に記載のシステム。
【0134】
11.注入ツールアセンブリは、樹脂充填物を内包する容器であって、取り付け部を介して、ファスナのねじ部にある開口に連結するよう構成された容器を備え、注入ツールアセンブリは、容器に連結され、かつ、ファスナのねじ部にある開口に連結された加圧注入器であって、加圧下でファスナ内に樹脂充填物を注入するよう構成された、加圧注入器を更に備える、条項7に記載のシステム。
【0135】
12.樹脂充填物は、樹脂充填物の熱膨張率がファスナの熱膨張率に実質的に合致するように選択される、条項7に記載のシステム。
【0136】
13.電流の分配はヘッド部電流分配とシャフト本体電流分配とを含み、シャフト本体電流分配は、径方向に拡張されているシャフト本体の長さに沿って均一であり、ヘッド部電流分配がシャフト本体電流分配よりも大きい、条項7に記載のシステム。
【0137】
14.複合構造物は航空機複合構造物を含み、一又は複数のファスナの各々は、コンプライアント型の隙間嵌めファスナであって、シャフト本体を径方向に拡張させる樹脂充填物と共に使用されると、その結果、ヘッド部とシャフト本体の両方が、対応するファスナ孔の内側孔表との締まり嵌めを有することになる、コンプライアント型の隙間嵌めファスナを含む、条項7に記載のシステム。
【0138】
15.航空機の複合構造物との電気的接触を改善し、かつ、航空機への電流の分配を改善するための方法であって、
一又は複数のファスナを複合構造物内に形成された一又は複数の対応するファスナ孔の中に取り付けるステップを含み、各ファスナが、
ヘッド部を有する第1端部、ねじ部を有する第2端部、及び、第1端部と第2端部との間に配置されたシャフト本体であって、外表面と内表面とを有するシャフト本体を有する、細長いシャフトと、
ねじ部にある開口から、細長いシャフトの長手方向中心軸に平行に、シャフト本体の内表面を通り、ヘッド部の近位の場所で終端するように延在する、少なくとも1つの供給チャネルとを備え、更に、
一又は複数のファスナを一又は複数の対応するファスナ孔内の定位置にトルクするステップと、
シャフト本体を、径方向に拡張させるため、及び、対応するファスナ孔の内側孔表面と直接接触させるために、加圧下で各ファスナのねじ部にある開口内に樹脂充填物を注入し、かつ、少なくとも1つの供給チャネルを樹脂充填物で充填するステップと、
複合構造物内に取り付けられ、かつ、樹脂充填物で充填された一又は複数のファスナと共に、複合構造物を硬化させるステップと、
各ファスナと対応するファスナ孔の各々の内側孔表面との間に電気的接触を提供し、かつ、航空機への電流の分配を提供するステップとを含む、方法。
【0139】
16.ファスナ内に樹脂充填物を注入した後に、樹脂充填物がファスナから漏れることを防止するために、各供給チャネルの開口内に取外し可能なプラグデバイスを挿入するステップを更に含む、条項15に記載の方法。
【0140】
17.一又は複数のファスナを取り付けるステップは、一又は複数のファスナを取り付けることであって、少なくとも1つの供給チャネルが中心供給チャネルと同心輪状供給チャネルの一方を含む、取り付けることを含む、条項15に記載の方法。
【0141】
18.樹脂充填物を注入し、かつ充填するステップは、ファスナ内に樹脂充填物を注入するために注入ツールアセンブリを使用することであって、樹脂充填物が、導電性の充填材と混合された樹脂材料を含み、注入ツールアセンブリが樹脂充填物を内包する容器を備え、容器がファスナに連結するよう構成されている、使用することを含み、注入ツールアセンブリは、容器に連結され、かつ、ファスナのねじ部にある開口に連結されるよう構成された加圧注入器であって、加圧下でファスナ内に樹脂充填物を注入するよう構成された、加圧注入器を更に備える、条項15に記載の方法。
【0142】
19.樹脂充填物を注入し、かつ充填するステップは、少なくとも1つの供給チャネルを樹脂充填物で充填して、シャフト本体を、約0.001インチから約0.002インチまでの径方向拡張で、径方向に拡張させることを含む、条項15に記載の方法。
【0143】
20.電気的接触を提供し、かつ電流の分配を提供するステップは、ヘッド部電流分配とシャフト本体電流分配とを分配することであって、シャフト本体電流分配は、径方向に拡張されているシャフト本体の長さに沿って均一であり、ヘッド部電流分配がシャフト本体電流分配よりも大きい、分配することを含む、条項15に記載の方法。
【0144】
前述の説明及び関連図面に提示した教示内容の利点を有する、この開示に関連する技術分野の当業者には、本開示の多数の変形例及びその他の例が想起されよう。本書に記載の例は、例示のためのものであり、限定的であることも、網羅的であることも意図されていない。本書では特定の用語が用いられているが、それらは、一般的かつ説明的な意味にのみ使用されており、限定を目的とするものではない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9