(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976111
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20211125BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20211125BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20211125BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L21/78 B
H01L21/78 F
H01L21/78 V
H01L21/78 X
B24B27/06 M
B23K26/53
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-173957(P2017-173957)
(22)【出願日】2017年9月11日
(65)【公開番号】特開2019-50296(P2019-50296A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2020年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 裕之
【審査官】
中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−230955(JP,A)
【文献】
特開2009−200140(JP,A)
【文献】
特開2007−142002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 27/06
B23K 26/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板のストリートに沿ってレーザーを照射し、前記半導体基板内部に改質層を形成する工程と、
前記半導体基板の裏面にメタル層を形成する工程と、
前記メタル層を前記ストリートに沿ってブレードによりダイシングする工程と、
前記改質層が形成された半導体基板に外力を加えて前記半導体基板をダイシングする工程と、
を備え、
前記外力は、前記メタル層をダイシングする工程において、前記ブレードにより加えられることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記メタル層の形成は、前記改質層を形成する工程よりも後に行われ、
前記レーザーは、前記半導体基板の裏面から照射されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に、裏面にメタルが形成されたウェハを個片化する工程を含む半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーデバイスなどが形成されたウェハには、その裏面に端子としてメタル(例えば、CuやAgなど)を形成する構造がとられているものがある。
【0003】
前述した構造のウェハをブレードダイシングで個片化する場合、半導体基板とメタルの両方を切断する必要がある。しかし、半導体基板とメタルを切断するブレードや条件は異なり、例えば、メタル向けのブレード及び条件でダイシングをすると半導体基板に欠けやクラック(以下、「チッピング」ともいう)が入り易く、半導体基板向けのブレード及び条件でダイシングすると裏面のメタルがブレードに貼り付き、目詰まりが起こり易い。目詰まりしたブレードは切断能力が著しく低下して、半導体基板のチッピングの原因となる。また、メタルの切断能力が低いとメタルが綺麗に切断されず裏面側に伸びてしまい、後の工程でこの伸びた部分が欠落し、ショート不良の原因となる場合もある。また、裏面のメタルが延性の高い性質のものである場合、メタルが延びて切断されず不良となることもある。
【0004】
このような問題に対し、従来、裏面のメタルをストリートに沿って予め除去しておき、半導体基板の表面からストリートに沿ってブレードにより半導体基板を切断して個片化する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−056149号公報
【特許文献2】特開平4−335550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、裏面にメタルが形成された構造のウェハでは、デバイスの特性向上の要求から、半導体基板をより薄くし、メタルをより厚くして抵抗を下げる方向になっており、現在の構成比は、半導体基板/メタルの膜厚は、およそ3/2〜1/1といった比率にまでなってきている。
【0007】
そのため、特許文献1や2のように、裏面のメタルをストリートに沿って予め除去した場合、非常に薄い膜厚の半導体基板をブレードで切断することになるため、チッピングが多く発生して歩留まりが落ち、生産性が低下する。
【0008】
したがって、本発明は、裏面にメタルが形成されたウェハを、チッピングの発生や切断不良を抑えて個片化することが可能な半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板の裏面にメタル層を形成する工程と、前記メタル層をブレードダイシングする工程と、前記半導体基板をステルスダイシング(登録商標)する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、メタル層についてはメタル向けのブレード及び条件でダイシングを行うことができ、半導体基板についてはステルスダイシングを行うことによりチッピングの発生がないことから、生産性を低化させることなくウェハを個片化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1(a)〜(g)は、本発明の第1の実施形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図であり、特に、半導体基板の裏面にメタルを形成し、これを個片化する工程を説明するための工程断面図である。
【0014】
図1(a)に示すように、例えば、MOSFET等のパワーデバイスが形成された半導体基板11の表面11の表面11tにサポート基板20及びバックグラインドテープ21を順に貼り付ける。
【0015】
次に、バックグラインドを行い、
図1(b)に示すように、半導体基板11の厚さを薄くした後、サポート基板20からバックグラインドテープ21を剥がす。
【0016】
次に、半導体基板11に格子状に複数設けられた
図2に示すストリート11stに沿って、半導体基板11の裏面11b側からレーザーを照射する。これにより、
図1(c)に示すように、半導体基板11の内部に改質層(ダメージ層)12が形成される。
【0017】
次に、
図1(d)に示すように、半導体基板11の裏面11b上に、めっきによりメタル層13を形成する。
【0018】
続いて、ストリート11st(
図2参照)に沿って、メタル層の裏面13b側からメタル層13をブレード22によりダイシングする。このとき、半導体基板11はダイシングしないため、メタル向けのブレード及び条件を用いる。これにより、
図1(e)に示すように、メタル層13は、格子状に分割される。
【0019】
次に、半導体基板11からサポート基板20を剥がした後、
図1(f)に示すように、メタル層13の裏面にエキスパンドテープ23を貼り付ける。
【0020】
最後に、エキスパンドテープ23をエキスパンドする。これにより、半導体基板11に外力が加わるため、
図1(g)に示すように、半導体基板11の改質層12から上下に分断が進み、半導体基板11がストリート11stに沿って格子状に分割される。
【0021】
以上のようにして、半導体基板11の裏面にメタル層13が形成されたウェハを個片化することができる。
【0022】
本実施形態によれば、半導体基板11についてはステルスダイシング(改質層12の形成及び外力の印加)によって分割し、メタル層13についてはメタル向けのブレード及び条件でのダイシングにより分割することができるため、チッピングの発生や切断不良を抑制して、ウェハを個片化することが可能となる。
【0023】
また、上述のとおり、メタル層13の切断は、メタル層13の裏面13b側からのブレードダイシングにより行っているため、メタルのメタル層13の裏面側への伸びの発生が抑制され、伸びた部分の欠落による不良の発生も防止できる。
【0024】
なお、本実施形態においては、メタル層13を形成する前に、半導体基板11の裏面11bからレーザーを照射して改質層12を形成している。これに対し、半導体基板11の裏面にメタル層13を形成した後に、改質層12の形成を行うことも可能である。ただし、一般に、半導体基板11表面11t側のストリートには、マークやTEGなどが配置されているため、半導体基板11表面11t側からレーザー照射を行った場合、マークやTEGなどが妨げとなり、ステルスダイシングに悪影響が生じるおそれがある。そのため、本実施形態のように、メタル層13の形成前に半導体基板11の裏面11b側からレーザーの照射を行っておくのが望ましい。
【0025】
図3は、
図1(g)におけるP部分の拡大図の一例を示す図である。また、
図4は、
図1(g)におけるP部分拡大図の他の例を示す図である。
【0026】
図1(e)に示す工程において、
図3に示すように、ブレード22による切り込み13cが半導体基板11まで達さず、メタル層13が切り込み13cの底部に薄く残っていても、
図1(g)に示す工程におけるエキスパンドによる外力によって改質層12から上下に分断が進み、薄く残ったメタル層13も分断されるため、ウェハを個片化することができる。
【0027】
一方、
図1(e)に示す工程において、
図4に示すように、ブレード22による切り込み13cが半導体基板11に達していると、エキスパンドによって、半導体基板11の切り込み13cの部分からも分断が進むことになるため、切り込み13cが
図3に示すような状態である場合と比べ、より確実にウェハを個片化することができる。したがって、ブレード22による切り込み13cは、半導体基板11にまで達している方が望ましい。
【0028】
ただし、切り込み13cを半導体基板11に達するようにするか否かは、半導体基板11やメタル層13の厚さやその他の条件等に応じて、適宜選択するのが好ましい。
【0029】
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【0030】
本実施形態による半導体装置の製造方法は、
図1に示す第1の実施形態の半導体装置の製造方法の
図1(d)に示す工程までは同一であるため、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0031】
本実施形態では、
図1(d)に示すように、半導体基板11の裏面11b上にメタル層13を形成した後、
図5に示すように、ストリート11st(
図2参照)に沿って、メタル層13の裏面13b側からメタル層13をブレード22によりダイシングする。このとき、半導体基板11に力が加わるようにブレードダイシングを行うことにより、半導体基板11に外力が加わることにより、改質層12から上下に分断が進み、ウェハを個片化することができる。したがって、本実施形態によれば、エキスパンドテープが不要となり、工程を簡略化することができる。なお、本実施形態は、半導体基板11のバックグラインド後の厚さが特に薄い場合に有効である。
【0032】
[第3の実施形態]
図6(a)〜(c)は、本発明の第3の実施形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
本実施形態による半導体装置の製造方法は、
図1に示す第1の実施形態の半導体装置の製造方法の
図1(d)に示す工程までは同一であるため、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0033】
本実施形態では、
図1(d)に示すように、半導体基板11の裏面11b上にメタル層13を形成した後、
図6(a)に示すように、サポート基板20を半導体基板11の表面から剥がす。
【0034】
次に、
図6(b)に示すように、メタル層13をメタル層13の裏面13bの方向に反らすことにより、半導体基板11に外力が加えられて、半導体基板11が改質層12に沿って格子状に分割される。
【0035】
その後、
図6(c)に示すように、メタル層13の裏面13b側からメタル層13をブレード22によりダイシングする。これにより、メタル層13も格子状に分割され、ウェハの個片化が完了する。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0037】
例えば、上記第1の実施形態では、メタル層13をブレードダイシングした後に、エキスパンドにより半導体基板11を分割しているが、メタル層13の延性が高い場合には、エキスパンドによる半導体基板11の分割を先に行い、その後、メタル層13をブレードダイシングするようにしてもよい。
【0038】
また、上記実施形態においては、バックグラインドを行う際に、サポート基板20を用いる例を示したが、サポート基板20は用いなくても構わない。
【符号の説明】
【0039】
11 半導体基板
12 改質層
13 メタル層
20 サポート基板
21 バックグラインドテープ
22 ブレード
23 エキスパンドテープ