(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、意匠性を損なうことなく車両に障害物センサを配置可能にすることにある。
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の車両用ドアハンドル装置は、
車両のドアに取り付けられ、当該ドアに対する車外からの開操作がなされるハンドル部材を備えた車両用ドアハンドル装置であって、
前記ハンドル部材は長手状をなし、
車両のドア側から外向きに所定の周波数帯の電磁波を送信するよう配置された送信部と
、前記送信部から送信された電磁波が車外で反射した電磁波を受信するよう配置された受信部と、
が実装された単一の回路基板と、
前記ドアに対しその外側で前記開操作が可能に組み付けられる部材であり、前記回路基板を、前記ハンドル部材の長手方向において前記送信部と前記受信部とが並ぶよう、車両の外側に配置させる基板配置部を有する、前記電磁波が非透過とされたハンドルベースと、
前記ハンドルベースに対し車両の外側に組付けられる部材であり、該ハンドルベースを車両の外側から被覆する外表面部と、それぞれが外表面部に開口を形成する形で車両の内側に延出し、前記基板配置部に配置された前記回路基板に対し当接する2つの環状壁部と、を有し、それら環状壁部の一方には、その内側に前記送信部が配置され、前記回路基板を底部とする第一収容部が形成され、他方には、その内側に前記受信部が配置され、前記回路基板を底部とする第二収容部が形成される、前記電磁波が非透過とされたカバー本体と、
前記ハンドルベースと前記カバー本体とが組付けられたハンドル部材本体に対し車両の外側から被うように組付けられる部材であり、前記送信部から送信される電磁波と前記受信部が受信する電磁波の通過領域においてそれら電磁波が透過可能とされた、意匠用の外表面を有するカバー部材と、
を備え、前記カバー本体は、前記送信部から送信された電磁波が前記ハンドル部材の内部を通過する形で前記受信部に受信されることを妨げる遮蔽部として、前記第一収容部と前記第二収容部を形成する2つの前記環状壁部のうち互いに近い側の壁部である遮蔽壁部が、それらの間に空隙を挟む形で形成されていることを特徴とする。
【0006】
通常の車両のドアは、車両の左右双方に存在し、ドアハンドルはそれら各ドアの上下方向における中央もしくは中央寄りの位置に取り付けられている。このドアハンドルの位置は、車両の左右側方の障害物をTOF(Time Of Flight)法で検知するのに適しており、ドアハンドルに障害物検出手段が設けられれば、ドアが存在する車両の左右側方の障害物検知が良好に可能となる。これにより、ドアアウターパネルに開口を形成してその内部に障害物検出手段を配置する必要が無くなるから、既存のドア意匠そのままで、車両の左右側方の障害物検知が可能になる。また、ドアハンドルは、ドアに取り付けられるパーツであるから取り外しも容易であり、障害物検出手段に係るメンテナンスも行いやすい利点もある。
【0007】
上記本発明
の構成によれば、前記送信部と前記受信部との間に設けられ、前記送信部から送信された電磁波が前記ハンドル部材の内部を通過する形で前記受信部に受信されることを妨げる遮蔽部
が存在する。これにより、送信部から送信される電磁波が、ハンドル部材の外に出ることなく、ハンドル部材の内部空間を通って直接受信部で受信されることを防ぐことができるから、ノイズを減じた高精度の障害物検出や距離画像撮影が可能になる。
【0009】
上記本発明の構成によれば、細長い長手状のハンドル部材において、例えばその長手方向に並んで第一収容部と第二収容部とが設けられ、それぞれに送信部と受信部とを配置することができる。これにより、ハンドル部材内部において、送信部と受信部とを効率的に配置できる。そして、送信部と受信部との間に遮蔽壁部を設け、その遮蔽壁部を、第一収容部と第二収容部の開口を蓋するカバー部材に対し当接させることで、送信部(第一収容部)から送信される電磁波が、ハンドル部材の外に出ることなく、ハンドル部材の内部空間を通って直接受信部(第二収容部)で受信されることを防ぐことができる。これにより、ノイズを減じた高精度の障害物検出や距離画像撮影が可能になる。
【0010】
上記本発明における前記遮蔽部として、前記送信部から送信された電磁波が当該カバー部材の内部を通って前記第一収容部側から前記第二収容部側へと伝達されることを妨げる内部伝達妨害部を備えることができる。上述のようにカバー部材に対
し遮蔽壁部を当接させ、第一収容部と第二収容部とを空間的に隔てたとしても、電磁波を透過するカバー部材そのものの内部を通る形で、第一収容部(送信部)の光が第二収容部(受信部)に伝達する可能性が残る。上記本発明によれば、カバー部材に設けられる内部伝達妨害部によって、カバー部材内部を通って第一収容部(送信部)から遮蔽壁部を越えて第二収容部(受信部)に到達する光を妨害することができる。この内部伝達妨害部については、例えば前記カバー部材
の内側表面に凹部として、
前記第一収容部と前記第二収容部を形成する2つの前記環状壁部のうち互いに近い側の壁部の一方から他方に向けて広がる形で形成できる。凹部を形成してその部分を薄肉化することで、電磁波の通過可能な断面を減らすことができ、また、凹部の内壁面が反射面となって、第二収容部(受信部)側に向かう電磁波を反射して第一収容部(送信部)側に戻すこともできる。
【0011】
上記本発明における前記遮蔽壁部は、前記カバー部材側となる外側に前記電磁波を非透過とする弾性部材を有し、当該弾性部材が前記カバー部材と当接するように構成できる。この弾性部材は、例えば第一収容部の開口と第二収容部の開口とのいずれか又は双方を環状に取り囲む環状弾性部として配置されてもよい。これにより
、遮蔽壁部とカバー部材とが隙間なく密着し、光の漏れを確実に防ぐことができる。
【0012】
前記カバー部材は、その全体が前記送信部から送信された電磁波を透過可能な材料で形成できる。これにより、単一の材料にてカバー部材を容易に形成できる。
【0013】
上記本発明において、前記カバー部材における前記車両の外側となる外表面には、その全面に前記送信部から送信された電磁波を透過可能な金属調の誘電体多層膜を形成することができる。これにより、カバー部材表面を金属調の反射面とすることが容易に可能になり、特徴的な意匠を実現できる。一方で、誘電体多層膜は、送信部から送信された電磁波を透過するため、障害物検出の機能も両立できる。
【0014】
上記本発明において、前記送信部から送信された電磁波が通過する、前記カバー部材の外側までの通過経路上に、当該電磁波が内部を通過する透過部材を設け、当該透過部材における前記送信部側の表面上に反射防止層を形成することができる。これにより、送信部から送信された電磁波を、大きく減衰させることなく外部に出射することができる。例えば、反射防止層が形成される前記透過部材は、前記カバー部材とすることができ、この場合、前記カバー部材の少なくとも前記送信部側となる内側表面の、前記開口を被う開口被覆領域に前記反射防止層を形成することができる。また、前記カバー部材とは別の前記透過部材として、導光部材を配置することもできる。
【0015】
また、上記本発明における前記透過部材は、前記第一収容部の開口を塞ぐ形で設けられ、前記送信部から送信された電磁波がその内部を通過する開口閉塞部材であり、前記送信部側となる内側表面とその逆側の外側表面との双方に前記反射防止層を形成することができる。送信部からカバー部材までの間に空隙が存在するような場合は、その空隙を埋めるように透過部材を配置する(さらにいえば、送信部がLED等の発光部である場合は、その空隙を埋めるように透過部材として導光部材を配置する)ことで、送信部から送信された電磁波を無駄に減衰させることなく外部に出射することができる。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の車両は、上記本発明の車両用ドアハンドル装置が各ドアに取り付けられた車両であって
、前記送信部から電磁波を送信し、その電磁波が車外の障害物に反射して前記受信部が受信するまでの時間を計測し、その計測結果に基づいて前記障害物までの距離情報を取得する障害物検出手段を備え、その取得情報に基づいて前記車両を自動運転させる車両用自動運転制御システムを搭載したことを特徴とする。
【0017】
上記本発明によれば、例えば車両の全周囲において障害物検出する、あるいは全周囲を撮影をする自動運転車両等の車両において、ドアハンドルが存在する側(例えば車両の左右側方)の障害物検出や車外撮影を行うセンサを、ドアハンドル部材に内蔵することで、車両の意匠性を損なうがない。また、ドアハンドル部材として設けられることで取り外しも容易となり、メンテナンス性にも優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0020】
図1に示すように、車両用ドアハンドル装置1は、車両100(ここでは自動車)の左右側面のドア101に取り付けられており、
図3示すように、ドア101に対する車外からの開操作がなされるハンドル部材10と、ドア101に対し固定され、ハンドル部材10が上記開操作が可能に組み付けられる支持部材20と、を備える。
【0021】
ハンドル部材10は、
図2に示すように、車両100のドア101の車外側に配置されるグリップ部10Gを有する。そして、ドア101を車外から開けるためにグリップ部10Gを握って引き起こす上記開操作(引き起こし操作)によって、
図3に示すように、ハンドル長手方向10Xの第一側を支点部10Qとし、その逆の第二側が車内側から車外側に向かう引き起こし方向R1に開動作し、上記開操作が解除されるに伴い元の位置に復帰するようドア101に対して組み付けられる。
【0022】
ハンドル部材10は、ハンドル長手方向10Xの第一側とその逆の第二側とにアーム部10A、10Bを有する。アーム部10A、10Bは、ドア101のアウターパネル102に形成されたそれぞれに対応する開口103、104を通して車外側から車内側へと導かれ、そのアウターパネル102の裏面に固定された支持部材20に対し取り付けられる。第一側(
図2の右側)のアーム部10Aは、支持部材20の回動支持部20Aに対し回動可能に支持され、第二側の車両内外方向への回動を可能にする支点アーム部である。他方、第二側のアーム部10Bは、その車両内外方向の回動をガイドする支持部材20のガイド部をなす開口部(開閉動作案内部)20Bに対し嵌め込まれるガイドアーム部である。ハンドル部材10は、第一側にある回動支持部20Aを支点に、第二側を車両内外方向に所定角度範囲で往復動作が可能とされている。
【0023】
ハンドル部材10は、
図3及び
図4に示すように、ハンドルベース12と、ハンドルベース12を車両100の外側から被うハンドルカバー11と、を備える。ハンドルカバー11は、ハンドルベース12に対し車外側に位置して意匠面を形成しており、ハンドルベース12に対し着脱可能に組み付けられる。ここでのハンドルベース12は、ハンドル長手方向10Xの第一側の端部に上記アーム部10Aを有し、その逆の第二側の端部に上記アーム部10Bを有する。
【0024】
第一側のアーム部10Aは、ハンドルベース12におけるハンドル長手方向10Xの第一側(ここでは車両前側)の端部から車両内向きに突出する。具体的にいえば、アーム部10Aは、ハンドルベース12における第一側の端部(ここでは前端部)から車両内向きに延出し、その先で上記第一側へと屈曲する形で延出する。車両100のドア101に組み付けられる際、アーム部10Aは、そのドア101のアウターパネル102の開口103に車外側から進入して車内側に回り込んだ形で配置され、支点部10Qが支持部材20の回動支持部20Aに支持されることにより、所定の回動軸線R0を中心に、ハンドル部材10を円弧状に回動可能とする。
【0025】
第二側のアーム部10Bは、ハンドルベース12におけるハンドル長手方向10Xの第二側(ここでは車両後ろ側)の端部から車両内向きに突出して形成されている。具体的にいえば、アーム部10Bは、車両100のドア101に組み付けられたときに、そのドア101のアウターパネル102の開口104から車両内側に突出するように配置されるとともに、支持部材20の開口部(開閉動作案内部)20B内に挿通され、その開口部20B内のガイド部(ここでは開口部20B内の図示しないガイドリブ)によって予め定められた引き起こし方向R1に移動するようガイドされる。
【0026】
また、第二側のアーム部10Bは、支持部材20に取り付けられる伝動部(図示なし)を介してドアのロック機構(図示なし)と連結している。ハンドル部材10が引き起こし方向R1に開操作された場合には、その開動作がアーム部10B及び伝動部を介してドア101を閉状態に保持する保持機構に伝達されて、その保持状態が解除される。逆に、ハンドル部材10が引き起こし方向R1とは逆方向に閉動作した場合には、その閉動作がアーム部10B及び伝動部を介して上記保持機構に伝達されて、ドア101を閉状態に保持できる保持状態に戻る。このような切り替わりにより、ドア101の開閉がなされる。
【0027】
ところで、ハンドル部材10は、
図3及び
図4に示すように、ドア101に取り付けられた状態において外部から視認されないようその内部に送信部3及び受信部4を備える。ここでのハンドル部材10は、その内部に、車両100のドア101側から外向きに所定周波数帯の電磁波を送信するよう配置された送信部3と、送信部3から送信された電磁波が車外で反射した反射波を受信するよう配置された受信部4と、送信部3から送信された電磁波が反射して受信部4が受信するまでの時間をTOF(Time Of Flight)法に基づいて計測し、その計測結果に基づいて車外の障害物200(
図6、
図10、
図13、
図16参照)までの距離情報を取得する制御部5(図示なし)と、を回路基板6上に実装した形で配置されている。
【0028】
ここでの送信部3は、赤外線LEDからなる赤外線を出射する発光部であり、受信部4は、赤外線LEDの光を受光可能な感度分布を持つフォトダイオードを有した受光部(以下、受光部4ともいう)である。ここでの受光部4は、平面状に複数配列された受光素子群であり、これを用いて二次元イメージセンサ装置40が構成されている。受光部4は、イメージセンサ装置40のセンサ筐体内に収容されており、制御部5は、そのイメージセンサ装置40が撮影した2次元の距離画像を取得する。
【0029】
このようにハンドル部材10は、送信部3(発光部)、受信部4(受光部)、制御部5(図示なし)を備えた障害物センサ500(
図5、
図9、
図12、
図15参照)を内蔵している。ここでの障害物センサ500は、障害物200を検出するための検出波として赤外光を用いているが、検出波は所定周波数帯の電磁波であればよく、例えば近赤外線や遠赤外線でもよいし、さらには可視光やミリ波等でもよい。
【0030】
ハンドルベース12は、
図3及び
図4に示すように、アーム部10A、10Bを一体に有するとともに、それらアーム部10A、10Bの間に回路基板6が配置される基板配置部12B1を有する。他方、ハンドルカバー11は、ハンドルベース12を車両100の外側から被覆する外表面部11A1と、外表面部11A1に開口11H3、11H4(
図4参照)を形成する形で車両100の内側に延出し、基板配置部12B1に配置された回路基板6に対し当接する環状壁部11A3、11A4と、を有する。環状壁部11A3は、その内側に送信部3が配置され、回路基板6を底部とする第一収容部13を形成しており、他方、環状壁部11A4は、その内側に受信部4が配置され、回路基板6を底部とする第二収容部14を形成している。
【0031】
ハンドルカバー11は、
図4に示すように、加飾カバー11A(加飾部材)と、カバー本体11Bと、を有する。ここでのハンドルカバー11は、カバー本体11Bに対しその車両100の外側となる外表面に意匠用の加飾カバー11A(加飾部材)を固定する形で設けられる。そして、ハンドルカバー11は、
図3に示すように、カバー本体11Bがハンドルベース12に対し組み付けられることにより、車両100に対し外向きの開口11H3を有して送信部3を収容する第一収容部13と、同じく車両100に対し外向きの開口11H4を有して受信部4を収容する第二収容部14と、がハンドル長手方向10Xに並ぶ形で形成されている。
【0032】
なお、本発明におけるカバー部材とはここでの加飾カバー11Aのことであり、本発明のハンドル部材本体とは、ここではカバー本体11Bとハンドルベース12とが組み付けられたものである。つまり、ここでのハンドル部材10は、カバー本体11Bとハンドルベース12とが組み付けられてなるハンドル部材本体に対し、意匠用の加飾カバー11Aが固定されたものである。
【0033】
カバー本体11B及びハンドルベース12は、送信部3から送信される電磁波(ここでは赤外光)を非透過とする樹脂射出成形体である。ここでは、カバー本体11BがPC/PBT(PC:ポリカーボネート、PBT:ポリブチレンテレフタレート)等の非透光性の樹脂材料、ハンドルベース12がPA6/GF30(ポリアミド6−30%ガラス繊維強化)等の非透光性の樹脂材料により成形されており、図示しない係合部によって互いが係合組み付けされる。
【0034】
加飾カバー11Aは、加飾カバー本体19と、誘電体多層膜9と、を有する。加飾カバー本体19は、接着剤もしくは両面テープ等によってカバー本体11Bに接着固定され、これにより、加飾カバー11Aとカバー本体11Bとが固定される。
【0035】
加飾カバー本体19は、少なくとも送信部3から送信される電磁波と受信部4が受信する電磁波の通過領域においてその電磁波が透過可能とされた樹脂射出成形体である。ここでの加飾カバー本体19は、全体が上記電磁波を透過可能とする透光性の樹脂射出成形体からなる。具体的にいえば、ここでの加飾カバー本体19は、例えばPC(ポリカーボネート)のような透明樹脂材料により成形されてなる。他方、誘電体多層膜9は、少なくとも上記電磁波が透過可能であり、加飾カバー本体19における車両100の外側の外表面19aの少なくとも上記通過領域上に形成される。このため、ここでの加飾カバー11Aは、全体が上記電磁波が透過可能とされており、送信部3から送信される上記電磁波を車外へと透過し、なおかつその反射波を車外から内部の第二収容部14へと透過する。
【0036】
また、誘電体多層膜9は、複数の誘電体材料を蒸着により積層した光学薄膜の積層体であり、加飾カバー本体19における上記電磁波の通過領域に少なくとも形成される。ここでの誘電体多層膜9は、加飾カバー本体19の外表面11a全体に形成されており、誘電体層として所定材料の蒸着層が形成されることにより、上記電磁波(ここでは赤外光)が透過可能とされている。誘電多層膜の材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズ等を用いることが可能である。
【0037】
なお、ここでは、誘電体多層膜9が形成されていることにより、その部分が金属調の面として視認される。これにより、ハンドル部材10に意匠的特徴部が形成される。
【0038】
また、ハンドル部材10には、遮蔽部15、11Vが設けられる。
【0039】
遮蔽部15、11Vは、
図4に示すように、送信部3(第一収容部13)と受信部4(第二収容部14)との間に形成されており、送信部3から送信された電磁波(ここでは赤外光)が当該ハンドル部材10の内部空間を通過する形で受信部4に受信されることを妨げる役割を果たしている。
【0040】
遮蔽部15は、カバー本体11Bにおいて、第一収容部13と第二収容部14との間を仕切る遮蔽壁部15(遮光壁部)として形成される。この遮蔽壁部15により、第一収容部13から第二収容部14への上記電磁波(ここでは赤外光)の通過が妨げられる。ここでの遮蔽壁部15は、送信部3から送信される上記電磁波(赤外光)を非透過とする樹脂射出成形体であるカバー本体11Bの一部として形成されている。
【0041】
また、ここでの遮蔽壁部15(遮光壁部)は、加飾カバー11A側となる外側に、送信部3から送信される電磁波(ここでは赤外光)を非透過とする弾性部材16を有する。弾性部材16は、遮蔽壁部15上に配置され、カバー本体11Bと加飾カバー11Aとの間で弾性圧縮状態とされている。この弾性部材16により、カバー本体11Bと加飾カバー11Aとの対向間の隙間を第一収容部13から第二収容部14へと伝達する上記電磁波を妨げることができるから、この弾性部材16も、上述の遮蔽部15の一部として機能している。ここでの弾性部材16は、例えばシリコンゴムやNBR(ニトリルゴム)のような樹脂材料からなる。
【0042】
遮蔽部11Vは、ハンドルカバー11において、送信部3から送信される電磁波(ここでは赤外光)が当該ハンドルカバー11の内部を通って第一収容部13側から第二収容部14側へと伝達されることを妨げる内部伝達妨害部11Vとして形成される。ここでの内部伝達妨害部11Vは、ハンドルカバー11においてハンドルベース12と対向する内側表面11b(カバー本体11Bの内側表面11b)に形成された凹部11Vである。なお、ここでのハンドルカバー11は、第一収容部13を挟んだ逆側にも内部伝達妨害部11W(凹部)を形成している。
【0043】
また、ハンドル部材10には、透過部材7、11Aが設けられている。
【0044】
透過部材7、11Aは、送信部3から送信された電磁波が通過する、送信部3からハンドルカバー11の外側までの通過経路上に設けられており、当該電磁波は、透過部材7、11Aの内部を通過するようになっている。そして
図4に示すように、透過部材7、11Aは、少なくとも送信部3側の表面7b上に、その表面7bでの上記電磁波(ここでは赤外光)の反射を減少させて送信部3から出射される上記電磁波に対しより高レベルの透過率を実現する単層又は複数層の反射防止層8(ARコーティング:Anti-Reflection Coating)が形成されている。同様に、ハンドル部材10には、受信部4への入射する上記電磁波(ここでは赤外光)が通過する、ハンドルカバー11の外側から受信部4までの通過経路上にも、当該入射光が内部を通過する透過部材11Aが設けられ、当該透過部材11Aにおける少なくとも受信部4側の表面7b上に反射防止層8が形成されている。ここでの反射防止層8は、フッ化マグネシウムや酸化ジルコニウム、アルミナ等により形成される。
【0045】
ここでの透過部材7は、透光性を有した部材であり、さらにいえば導光部材(ライトガイド)である。他方、透過部材11Aは、上述の加飾カバー11A(誘電体多層膜9を含む)である。
【0046】
ここでの透過部材7は、送信部3からハンドルカバー11までの間で、送信部3から出射された電磁波(ここでは赤外光)が通過する空隙を埋める形で配置される。透過部材7は、例えばアクリル(PMMA)製の板状導光部材とすることができる。ここでの透過部材7は、第一収容部13に嵌合する形で収容され、第一収容部13の開口11H3を塞ぐ開口閉塞部材である。反射防止層8は、この透過部材7の送信部3側の表面7b(車内側の表面)とその逆側の表面7a(車外側の表面)との双方に形成されている。
【0047】
なお、ハンドルカバー11から受光部4までの間で受光部4への入射光が通過する空隙を埋める形で、透過部材7とは別の透過部材を配置してもよい。
【0048】
ハンドルカバー11は、その少なくとも送信部3側となる内側表面11bの、第一収容部13の開口11H3と対面(ここでは正対)する対面領域11b3に、反射防止層8が形成されている。同様に、ハンドルカバー11は、その少なくとも受信部4側となる内側表面11bの、第二収容部14の開口11H4と対面(ここでは正対)する対面領域11b4にも、反射防止層8が形成されている。
【0049】
また、ハンドルカバー11には、レンズ部18が設けられる。
【0050】
レンズ部18は、ハンドル部材10において送信部3からの電磁波が透過して外部に送出される電磁波出口部183及び受信部4に受信される電磁波が外部から透過して進入する電磁波入口部184のいずれか又は双方に、レンズ機能を有する形状で形成される。レンズ部18は、ハンドルカバー11において第一収容部13の開口11H3及び第二収容部14の開口11H4と対面(ここでは正対)する電磁波出口部183及び電磁波入口部184のいずれか又は双方に形成できる。ここでのレンズ部18は、凸レンズ機能を有した凸レンズ部として電磁波入口部184に形成されており、車外側から受信部4に向かう電磁波をより収束させる形で入射させる。これにより、より高い検出精度(より高精度の距離画像)を得ることを可能にしている。
【0051】
このように、車両用ドアハンドル装置1は、車両100のドア101の外側に持ち手部として露出するハンドル部材10を備えるとともに、そのハンドル部材10の内部に障害物センサ500(
図5、
図9、
図12、
図15参照)を備えている。
【0052】
以下、車両用ドアハンドル装置1の障害物センサ500を利用した車両用制御システム1001について、
図5〜
図8を用いて説明する。
【0053】
車両用制御システム1001は、
図5に示すように、主制御部51に対し、車外情報取得部510、現在位置検出装置502、走行駆動部503、車両状態取得部504、地図データベース505、ナビシステム506が接続して構成される。ここでは車外情報取得部510として、車外撮影手段として機能する障害物センサ500、501、507等を備える車両用自動運転システムである。
【0054】
障害物センサ500、501、507は、車両100の周辺の障害物200を検出するために車両100に配置された障害物検出部であるとともに、車両の周辺を距離画像として撮影し、車両の周辺情報を取得する車外撮影部である。
図6に示すように、障害物センサ500は、各ドア101に取り付けられた車両用ドアハンドル装置1のハンドル部材10に搭載される。障害物センサ501、507は、例えば車両のフロントガラスとリアガラスの内側に取り付けられる。ここでの障害物センサ501、507は、送信部(発光部)から赤外光を出射し、その光が車外の障害物200に反射して受信部(受光部)が受光するまでの時間を計測し、その計測結果に基づいて障害物200までの距離情報を制御部が取得する障害物センサであり、既に述べた障害物センサ500と同様の構成を有する。
【0055】
現在位置検出装置502は、ここではGPS(Global Positioning System)受信部であり、GPS衛星からの受信信号に基づいて、車両100の現在位置情報を検出する。なお、現在位置の特定方法については、他の手法を用いてもよい。
【0056】
走行駆動部503は、主制御部51が実行する車両100の自動走行制御を実行するための駆動部である。ここではスロットルアクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、転舵アクチュエータ等を備える。スロットルアクチュエータは、主制御部51からの制御指令によって車両100のスロットル開度を制御する。なお、電気自動車等の電動駆動車両の場合、スロットルアクチュエータは走行動力源となるモータに置き換えられる。ブレーキアクチュエータは、車両100の車輪に対する制動力を制御する。転舵アクチュエータは、車両100の車輪の転舵角度を変化するために車輪転舵軸の回転角度を制御する。
【0057】
車両状態取得部504は、車両100の走行状態を検出するための各種センサである。ここでは、車速センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ等を含む。
【0058】
地図データベース505は、地図情報を備えたデータベースであり、ここでは主制御部51に接続する記憶部としてのHDD(Hard disk drive)内に形成される。地図情報には、例えば道路の位置情報、道路形状の情報、交差点及び分岐点の位置情報等が含まれる。
【0059】
ナビゲーションシステム506(図中のナビシステム)は、現在位置検出装置502が検出した車両100の現在位置と地図データベース505の地図情報、さらには運転者等からの入力操作に基づいて車両100による走行予定ルートを作成するとともに、この走行予定ルートを画面表示部上に表示し、さらに音声発声部からの音声出力によって経路誘導を行う。複数車線の区間においては、車線認識装置501による車両100の現在の走行車線を認識結果に基づいて、適切な走行車線を画面表示や音声出力によって案内するようにしてもよい。
【0060】
主制御部51は、CPU、ROM、RAM等を備える周知のマイクロコンピュータである。ここでの主制御部51は、運転者がナビゲーションシステム506で目的地を設定し、自動走行を実行する所定の入力操作を行った場合には、例えば
図7に示すような自動運転処理を実行する。
【0061】
図7の自動運転処理が実行されると、主制御部51は、まずは現在の車両状態情報として、車両状態取得部504が検出する自車両100の走行状態と、現在位置検出装置502が検出する自車両100の現在位置情報と、ナビゲーションシステム506が設定している走行予定ルート情報と、等を取得する(S101:車両状態取得手段)。さらに主制御部51は、車外情報取得部510が取得する車外情報として、障害物センサ500、501、507が撮影する車外撮影情報、地図データベース505が記憶する地図情報等を取得する(S102:車外情報取得手段)。なお、車外情報は外部から通信取得してもよい。主制御部51は、これらの取得情報に基づいて、自車両100の状態と、自車両100が走行している道路情報(車線や道路周辺の構造物、道路上の障害物等の情報)を含む車外状況と、を認識する(S102:車外状況認識手段)。車外に状況については、自車両周辺の道路地図データを作成する形で、自車両100の周辺状況を認識する。そして主制御部51は、これらの認識結果に基づいて自車両100の走行計画を作成し(S103:走行計画作成手段)、作成した走行計画に基づいて自車両100が自動走行するよう走行駆動部503を制御する(S104:制御手段)。これらの処理(S101〜S104)が周期的に繰り返されることにより、自車両100は、設定されている走行予定ルートに沿った自動走行を実現する。なお、自動走行を停止させる所定の条件が満たされた際(例えばユーザー操作による自動走行の停止や、目的地への到着等)には、当該処理は終了となる。
【0062】
ここで、
図6に示すように自車両100の走行中に障害物200(他車両201)が接近してきた際の走行計画の作成処理(S103)について、その一例を説明する。
【0063】
図8に示すように、主制御部51は、障害物センサ500の検出結果(車外撮影情報)に基づいて、自車両100の所定距離範囲内に他車両201が接近したか否かを判定する(S111:接近判定手段)。主制御部51は、他車両201の接近が無いと判定された場合(S111:No)、現状の走行が維持されるよう走行駆動部503を制御するが(S116)、所定距離範囲内に他車両201が接近したと判定した場合には(S111:Yes)、自車両100がその他車両201との衝突を回避するための回避動作、即ち回避のための運転計画を決定し(S112〜S115:走行計画決定手段)、走行駆動部503に実行させる(S104:制御手段)。具体的にいえば、主制御部51は、自車両100周辺の道路地図データとして走行車線情報や道路形状を逐次認識しているから、そうした認識情報に基づいて、自車両100に対し他車両201側とは逆側に別車線(隣接レーン)が存在するか否かを判定する(S112)。別車線が存在する場合には(S112:Yes)、その別車線における障害物200(例えば他車両201)の有無を、障害物センサ500、507の検出結果から特定して、その別車線への車線変更が可能か否かを判定し(S113)、可能であれば、その別車線への車線変更を行って他車両201との衝突を回避するよう計画する(S114)。他方、自車両100に対し他車両201側とは逆側に別車線(隣接レーン)が存在しない場合や(S112:No)、別車線が存在しても他の車両が存在する等、車線変更が不可と判定された場合(S113:No)には、減速をして他車両201との衝突を回避するよう計画する(S115)。
【0064】
なお、運転計画は、
図7のS103の処理として繰り返し実行される。ただし、その処理内容は、必ずしも上記のような処理に限られるものではない。例えば上記のような他車両201が接近する走行シチュエーションであっても、他の車外情報や車両状態情報に基づいて、より適した他の運転計画が最終決定される場合があってもよい。また、障害物200は他車両に限らず道路上及び周辺の障害物200も対象に含むことができ、例えば右左折時において自車両100の巻き込み範囲内に障害物(縁石やポール等)を検出した場合には、これを回避するよう運転計画が決定されるようにしてもよい。
【0065】
次に、車両用ドアハンドル装置1の障害物センサ500を利用した車両用制御システム1002について、
図9〜
図11を用いて説明する。
【0066】
車両用制御システム1002は、
図9に示すように、自身固有の照合コードを無線出力する無線通信機能を有する携帯キー150(以下、キーと略する)と、その照合コード(照合情報)を無線受信して照合し、照合OKとなった場合に所定制御を実行する車両100側の主制御部52と、を有して構成される制御システム(いわゆるスマートエントリーシステム)であり、
図10に示すように、自車両100に接近する障害物202(200)が当該車両100に対応する携帯キー150を所持していない場合には、警報を出力するとともに、その障害物202の撮影画像を記録する。
【0067】
キー150においては、キー側制御部151(制御IC)に対し、車両100との間で無線通信を行うための送受信部152、153(無線通信部)と、自身固有の照合コードを格納する記憶部155と、各種操作部154と、が接続して構成される。
【0068】
車両100側においては、主制御部52に対し、障害物センサ500、携帯キー150との間で無線通信を行うための送受信部512、513(無線通信部)、照合用のマスターコードが記憶されている記憶部511、警報音を出力する警報装置514、が接続して構成される。障害物センサ500は、車両用制御システム1001のものと同様であり、車両100の左右のドア101のハンドル部材10に搭載され、それぞれが車両100の左右側方の障害物を検出するとともに、その障害物までの距離、さらにはその距離画像を取得することが可能である。
【0069】
主制御部52は、CPU、ROM、RAM等を備える周知のマイクロコンピュータであり、
図11に示すような防犯処理を実行する。即ち、主制御部52は、まずは障害物センサ500から検出情報を取得し、その検出情報に基づいて所定距離範囲(符号512L、512R)内に障害物202が接近したか否かを判定する(S201:接近判定手段)。障害物202が接近したと判定した場合(S202:Yes)、主制御部52は、車外の所定の通信距離512L、512R内に進入した携帯キー150と無線通信を行い、携帯キー150からキー固有の照合コード(照合情報)を取得するとともに(S203:照合情報取得手段)、取得した照合コードを照合し、携帯キー150が自車両100に対応する携帯キー150であるか否かを判定する(S204:照合手段)。
【0070】
具体的にいえば、主制御部52は、所定周波数帯(ここではLF帯域)の電波としてキー探索信号を送信部512から送信アンテナを介して車外に無線送信する。この信号電波は、左右のドア101、101周辺の所定の通信距離512L、512R内において受信可能である。通信距離512L、512R内に携帯キー150が存在する場合、当該キー150はこれを受信部153にて無線受信する。そしてキー側制御部151は、受信したキー探索信号に対する応答信号を、送信部152から所定周波数帯(ここではUHF帯域)の電波として無線送信する。
【0071】
主制御部52は、これを受信部513が受信アンテナを介して無線受信すると、今度はキー150に対しキー固有の照合コードを要求する照合コード要求信号を、送信部512から所定周波数帯(ここではLF帯域)の電波として送信アンテナを介して車外に無線送信する。通信距離512L、512R内に存在する携帯キー150がこれを受信部153にて無線受信すると、キー側制御部151は、受信したキー探索信号に対する応答信号として、自身に固有の照合コードを含んだ要求応答信号を、送信部152から所定周波数帯(ここではUHF帯域)の電波として無線送信する。そして、主制御部52は、これを受信部513が受信アンテナを介して無線受信すると、これに含まれる照合コードに対して照合処理を行う。
【0072】
照合コードを取得できなかった場合(S204:No)、及び照合コードを取得できたものの当該照合コードに基づいて照合処理を行った結果として自車両100に対応するキー150の照合コードでないとの判定(照合NG)がなされた場合(S204:No)のいずれか又は双方において、主制御部52は、警報出力部に警報を出力させるとともに、記憶部511の所定領域に警報出力継続中に障害物センサ500が撮影した撮影画像を記憶する(S205:制御手段)。障害物センサ500の撮影画像は、警報出力継続中に撮影された画像とすることができ、静止画でも動画でもよい。
【0073】
なお、障害物が検出されなかった場合(S202:No)や、取得した照合コードによる照合結果として自車両100に対応するキー150の照合コードであるとの判定(照合OK)がなされた場合(S204:Yes)には、主制御部52は、警報を出力することなく本処理を終了する。
【0074】
これらの処理(S201〜S205)は、自車両100のエンジン停止時において周期的に繰り返される。
【0075】
次に、車両用ドアハンドル装置1の障害物センサ500を利用した車両用制御システム1003について、
図12〜
図14を用いて説明する。
【0076】
車両用制御システム1003は、主制御部53に対し、障害物センサ500と、登録ユーザーの顔画像を予め記憶した記憶部521と、ドア101を閉状態から開錠状態に移行するためのドア開錠駆動部522(例えばモータ等の電動駆動部)と、が接続して構成される。障害物センサ500は、他のシステム1001、1002のものと同様であり、車両100の左右のドア101のハンドル部材10に搭載され、それぞれが車両100の左右側方の障害物200を検出するとともに、その障害物200までの距離、さらにはその距離画像を取得することが可能である。
【0077】
主制御部53は、CPU、ROM、RAM等を備える周知のマイクロコンピュータであり、
図13に示すように、車両100に接近してくる障害物203(200)を障害物センサ500によって距離画像として撮影した上で、その障害物203から顔画像を認識し、顔画像認証を行って、その結果に基づいてドア開錠処理を実行する。
【0078】
即ち、
図14に示すように、主制御部53は、まずは障害物センサ500の検出情報に基づいて所定距離範囲内に障害物203が接近したか否かを判定する(S301:接近判定手段)。ここでは、障害物センサ500が撮影した撮影画像(距離画像)から、所定距離範囲内に接近した障害物203を検出する。所定距離範囲内に障害物203が接近したと判定された場合(S302:Yes)、主制御部53は、障害物センサ500が障害物検出の際に撮影した撮影画像を取得し、取得した撮影画像から顔画像を認識する(S303:顔画像認識手段)。そして、認識された顔画像が記憶部521に予め登録されている登録ユーザーの顔画像に所定レベル以上一致するか否かを、パターンマッチングにより判定する(S303:顔画像判定手段)。判定の結果、撮影画像から認識された顔画像が記憶部521に登録された登録ユーザーの顔画像に所定レベル以上で一致した場合に、接近した障害物を登録ユーザー203と判定し(S304:Yes)、主制御部53は、ドア開錠駆動部522を開錠駆動させて、施錠状態にあった車両100のドア101のドアロックを開錠状態に移行させる(S305:制御手段)。
【0079】
一方、障害物が検出されなかった場合(S302:No)や、撮影画像から認識された顔画像が登録ユーザーの顔画像に所定レベル以上で一致しなかった場合(S304:No)は、車両100のドア101のドアロックは施錠状態に維持される(S306:制御手段)。
【0080】
なお、これらの処理(S301〜S306)は、自車両100のエンジン停止時において周期的に繰り返される。
【0081】
最後に、車両用ドアハンドル装置1の障害物センサ500を利用した車両用制御システム1004について、
図15〜
図17を用いて説明する。
【0082】
車両用制御システム1004は、主制御部54に対し、障害物センサ500と、ドア101の開操作(引き起こし操作)を検出するドア開操作検出部531と、ドア101の開動作を阻止するドア開動作阻止部532と、が接続して構成される。障害物センサ500は、他のシステム1001、1002、1003のものと同様であり、車両100の左右のドア101のハンドル部材10に搭載され、それぞれが車両100の左右側方の障害物と、その距離を検出するとともに、さらにはその距離画像を取得することが可能である。
【0083】
ドア開動作阻止部532は、車室内からあるいは車外からドア101に対する開操作がなされたとしても、ドア101の開操作を無効化する、あるいはその開操作によって生じるドア101の開動作を妨げるものである。通常、ドア101に対し車外のハンドル部材10への開操作や車室内からの開操作がなされた場合、その操作はドア101を閉状態に維持するロック機構に伝達されることでロックが解除され、ドア101が開動作が可能な状態になるが、ここでのドア開動作阻止部532は、その開動作が生じないように、上記ロック機構とは別で、ドア101に対し車体側からロックをかける第二ロック機構である。なお、この第二ロック機構は、ドアの開動作に対し制動力を作用させて、開動作を妨げるものでもよい。
【0084】
主制御部54は、CPU、ROM、RAM等を備える周知のマイクロコンピュータであり、
図16に示すように、車両100のドア101の周辺に障害物センサ500によって障害物204(200)が検出された場合に、ドア101の開動作を禁止するドア開禁止処理を実行する。即ち、
図17に示すように、主制御部54は、まずは障害物センサ500の検出情報に基づいて所定距離範囲内に障害物204が存在するか否かを判定する(S401:障害物検出手段、接近判定手段)。所定距離範囲内に障害物204が存在したと判定された場合(S402:Yes)、主制御部54は、その障害物204が接近するドア101に対してその開動作を禁止し、当該開動作の不可状態(当該開動作が妨げられた状態)となるようドア開動作阻止部532を制御する(S403:制御手段)。所定距離範囲内に障害物204が存在しないと判定された場合(S402:No)、主制御部54は、その障害物204が接近するドア101に対してその開動作を許可し、開動作が可能な状態となるようドア開動作阻止部532を制御する(S404:制御手段)。
【0085】
なお、これらの処理(S401〜S404)は、自車両100のエンジン停止時において周期的に繰り返される。
【0086】
このように、ハンドル部材10に障害物センサ500を内蔵する車両用ドアハンドル装置1は、これらの車両用制御システム1001〜1004のように、車両100の左右側方の障害物200を検出するシステムにおいて、既存のドア意匠をそのままとしながら、障害物検出が可能になるという利点がある。ドアアウターパネルに開口を形成する必要は無いから、車両の意匠性の低下を気にする必要は無いし、取り外しも既存の方法で可能であるから簡単である。また、ハンドルカバー11の金属調の意匠は、車両の意匠性を高める効果もある。
【0087】
以上、本発明の一実施例を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではない。例えば上記実施例において一部の構成要件を省略する、さらには他の構成要件を追加する等、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【0088】
以下、本発明の他の実施例及び変形例について説明する。なお、上記実施例と共通の機能部や同様の機能部については詳細な説明を省略する。また、上記実施形態と下記変形例は、技術的な矛盾を生じない範囲において適宜組み合わせて実施できる。
【0089】
上記実施例のドアハンドルでは、従来のドアハンドルに搭載される無線通信装置のアンテナ等が配置されていない。上記実施例では、例えば
図10の送信部512のように、無線通信装置のアンテナをハンドル部材10とは異なる位置、例えば車両100のBピラー等に内蔵させることができる。また、こうしたアンテナを発光部3や受光部4と同時に配置してもよい。ただし、
図3に示すハンドル部材10の内部空間10C、10D、10Eの中で、受光部4よりもハンドル長手方向10Xの第二側の空間10Cには、ハンドルカバー11とハンドルベース12とを貫通する形で操作ノブを配置したプッシュスイッチ機構(図示なし)が組み付けられる。このため、アンテナを配置するのであれば、例えば発光部3よりもハンドル長手方向10Xの第一側の空間10E内とすることができる。さらにいえば、アンテナは、遮蔽壁部15の内部空間10Dに配置することもできる。
【0090】
また、上記実施例において、送信部3及び受信部4は、開操作(引き起こし操作)がなされるハンドル部材10のグリップ部10Gに設けられているが、例えば
図18に示すように、ハンドル部材10の端部90(例えば後端)において、その内部に空隙を有している場合には、このハンドル部材端部90の内部に送信部3及び受信部4のいずれか又は双方を配置してもよい。なお、ハンドル部材端部90の内部に送信部3及び受信部4の双方を配置する場合には、既に述べた実施例のように、送信部3及び受信部4の間に遮蔽部15(遮光壁部)を配置するとよい。この場合、グリップ部10Gの内部には、従来のドアハンドル装置において配置されていたアンテナ等を配置することも可能になる。
【0091】
上記実施例において、車両用ドアハンドル装置1が取り付けられるドア101は、車両100の前席左右のドアであったが、本発明はこれに限るものではなく、車両の外周に位置するドアに対し取り付けられる車両用ドアハンドル装置1であればよい。例えば、車両の後席左右のドアであってもよいし、車両100の背面のバックドアであってもよい。
【0092】
上記実施例におけるレンズ部18は、ハンドルカバー11における電磁波出口部183に凸レンズとして形成されているが、電磁波出口部183に凹レンズ機能を有した凹レンズ部として形成してもよい。これにより、送信部3から車外に向かう電磁波をより発散させる形で出射させることがで、より広範囲に電磁波を照射できる。また、レンズ部を凸レンズあるいは凹レンズとする場合には、ハンドルカバー11において送信部3や受信部4と対面する内側表面にのみ凸あるいは凹となるレンズ構造を形成し、車外側となる外側表面については、その周辺の外表面と連続する表面形状となるようにして、外側からレンズの存在を視認されないようにしてもよい。なお、レンズ部は必ずしも形成する必要は無い。