特許第6976139号(P6976139)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6976139-記録装置及び記録制御方法 図000002
  • 特許6976139-記録装置及び記録制御方法 図000003
  • 特許6976139-記録装置及び記録制御方法 図000004
  • 特許6976139-記録装置及び記録制御方法 図000005
  • 特許6976139-記録装置及び記録制御方法 図000006
  • 特許6976139-記録装置及び記録制御方法 図000007
  • 特許6976139-記録装置及び記録制御方法 図000008
  • 特許6976139-記録装置及び記録制御方法 図000009
  • 特許6976139-記録装置及び記録制御方法 図000010
  • 特許6976139-記録装置及び記録制御方法 図000011
  • 特許6976139-記録装置及び記録制御方法 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976139
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】記録装置及び記録制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20211125BHJP
【FI】
   B41J2/01 209
   B41J2/01 451
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-211937(P2017-211937)
(22)【出願日】2017年11月1日
(65)【公開番号】特開2019-84685(P2019-84685A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝 拓二
【審査官】 四垂 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−028607(JP,A)
【文献】 特開2002−137479(JP,A)
【文献】 特開2017−132234(JP,A)
【文献】 特開2017−052162(JP,A)
【文献】 特開2004−058527(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0033950(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104009761(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列された記録素子を備える記録ヘッドにより前記記録素子の配列の方向と交差する方向に搬送される記録媒体に画像を記録する記録装置であって、
前記記録ヘッドを駆動し記録を行わせるための複数のコマンドをシリアルデータとして受信する受信手段と、
前記記録装置の内部で第1の信号を生成する第1の生成手段と、
搬送される記録媒体の位置を示す情報に基づいて第2の信号を生成する第2の生成手段と、
前記受信手段により受信したシリアルデータから前記複数のコマンドそれぞれを取り出す取り出し手段と、
前記取り出し手段により取り出された前記複数のコマンドそれぞれに基づいて、前記第1の信号と前記第2の信号とを切替えながら、前記第1の信号に基づいて前記記録ヘッドによる画像の記録前の準備動作を行い、前記第2の信号に基づいて記録媒体に画像データに基づく画像の記録を行うために前記記録ヘッドを駆動する駆動手段と、
前記第1の信号から前記第2の信号に切替える際には、予め定められた期間、前記第1の信号を無効にした後、前記第2の信号への切替えの制御を行う制御手段とを有することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第1の生成手段は、前記記録装置のASICのシステムクロックに基づいて前記第1の信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される記録媒体の位置を検出する検出手段とをさらに有し、
前記第2の生成手段は、前記検出手段により検出される記録媒体の位置に基づいて前記第2の信号を生成することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記第1の信号は、前記シリアルデータをラッチするための第1のラッチ信号であり、
前記検出手段は、前記搬送される記録媒体の位置を検出するエンコーダであり、
前記第2の信号は、前記エンコーダから出力されるエンコーダ信号に基づいて生成される、前記シリアルデータをラッチするための第2のラッチ信号であることを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記第1のラッチ信号に基づいて、前記記録ヘッドによる画像の記録前の準備動作を行い、前記第2のラッチ信号に基づいて、前記第2の信号に基づいて記録媒体に画像データに基づく画像の記録を行うための記録ヘッドの駆動の制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記記録媒体への記録開始の際には、前記第1のラッチ信号に基づいて前記搬送手段により搬送される記録媒体のレジ取りを実行し、前記予め定められた期間の後、前記シリアルデータに含まれる画像データを前記第2のラッチ信号によりラッチして画像の記録を行わせ、該記録の後、前記システムクロックに基づいた空白期間の後、再び、前記第1のラッチ信号に切替えることを特徴とする請求項4又は5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記記録ヘッドは、前記搬送手段により搬送される記録媒体の搬送方向とは異なる方向に配列された複数の記録素子を備え、前記複数の記録素子それぞれからはインクジェット方式に従ってインクを吐出し、
前記複数の記録素子は電気熱変換素子であり、
前記記録ヘッドによる画像の記録前の準備動作には、前記記録ヘッドの温度調整、インクの予備吐出を含むことを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記予め定められた期間、前記第1の信号をウィンドウでマスクすることにより、前記第1の信号を無効にすることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記予め定められた期間、前記シリアルデータの転送を監視する監視手段をさらに有する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記監視手段により監視により前記シリアルデータが転送中であると判断された場合、前記シリアルデータの転送完了まで、前記第2の信号を一時的にマスクすることを特徴とする請求項9に記載の記録装置。
【請求項11】
配列された記録素子を備える記録ヘッドにより前記記録素子の配列の方向と交差する方向に搬送される記録媒体に画像を記録する記録装置の記録制御方法であって、
前記記録ヘッドを駆動し記録を行わせるための複数のコマンドをシリアルデータとして受信する受信工程と、
前記記録装置の内部で第1の信号を生成する第1の生成工程と、
搬送される記録媒体の位置を示す情報に基づいて第2の信号を生成する第2の生成工程と、
前記受信工程において受信したシリアルデータから前記複数のコマンドそれぞれを取り出す取り出し工程と、
前記取り出し工程において取り出された前記複数のコマンドそれぞれに基づいて、前記第1の信号と前記第2の信号とを切替えながら、前記第1の信号に基づいて前記記録ヘッドによる画像の記録前の準備動作を行い、前記第2の信号に基づいて記録媒体に画像データに基づく画像の記録を行うために前記記録ヘッドを駆動する駆動工程と、
前記第1の信号から前記第2の信号に切替える際には、予め定められた期間、前記第1の信号を無効にした後、前記第2の信号への切替えの制御を行う制御工程とを有することを特徴とする記録制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録装置及び記録制御方法に関し、特に、例えば、フルライン記録ヘッドからインクを記録媒体に吐出して画像の記録を行う記録装置とその記録制御方法に関する。さらには、記録時に記録媒体を給送する際に実行するレジストレーション取り(以下、レジ取り)状態から記録状態に遷移した場合でも、フルライン記録ヘッドへの駆動データの転送を確実に行う技術に関わる。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェットプリンタでは、記録ヘッドを装着するキャリッジを記録用紙のようなシート状の記録媒体の搬送方向とは直交方向に往復走査しながら、その記録ヘッドからインク吐出を行い、画像を記録媒体に形成する記録方法が一般的であった。この方法の利点は、記録媒体の同一領域をキャリッジにより繰り返し走査して記録を行う「マルチパス記録」を実行することで、インクドットのバラツキを平均化して写真画質のような高精細な画像を出力することが可能である点にある。しかしながら、テキストのみの文書や表・グラフで構成されるビジネス文書においてはマルチパス記録の必要はなく、キャリッジを往路方向又は復路方向に1回走査して画像を形成する「1パス記録」が一般的である。この場合、その記録速度は記録ヘッドのノズル列の長さに比例する。つまり、記録用紙1枚の画像を形成するためにキャリッジの走査回数分の時間を要してしまう。
【0003】
このような構成を採用すると、記録ヘッドを搭載したキャリッジを往復走査する必要がなく、フルライン記録ヘッドを所定位置に固定しインクを吐出させながら記録媒体だけを搬送すればよいため、記録速度はキャリッジ走査する方式に比較して格段に向上する。
【0004】
さて、キャリッジを往復走査するシリアルタイプの記録装置とフルライン記録ヘッドを搭載した記録装置では記録ヘッドの制御構成が大幅に異なる。
【0005】
図8は従来のシリアルタイプの記録装置に搭載される記録ヘッド(以下、シリアルヘッド)の制御構成の概略を示す図である。
【0006】
図8に示すように、吐出データ、ヒートパルス、サブヒータパルス、ダイオードセンサ出力それぞれを専用の信号線に対して割り当てる。そして、各信号線を介して、吐出データとヒートパルスを吐出ヒータ制御ブロック10Aに入力し、サブヒータパルスをサブヒータ10Bに入力し、ダイオードセンサ信号をDiセンサ10Cから出力する。このように、異なる信号に対して専用の信号線をそれぞれ割当て、シリアルヘッド10とこれを搭載する記録装置との間で、信号の送受信を行うのが一般的である。
【0007】
しかしながら、フルライン記録ヘッドでは、実装するノズル数も大幅に増加するため、図8に示したシリアルヘッドと同様の制御構成をフルライン記録ヘッドに採用すると、信号線の数も膨大なものになってしまう。このため、フルライン記録ヘッドの制御には、特定用途向け集積回路(以下、ASIC)を用いてはコマンド形式のシリアルデータを用いる。
【0008】
図9はフルライン記録ヘッドの制御に用いる信号の構成を示す図である。
【0009】
図9に示すように、信号しては、データ信号(Data)とクロック信号(CLK)とラッチ信号(LT)とを用い、これらは別々の信号線で送受信される。ここで、複数のデータをコマンド化したコマンドデータ列を形成し、これをデータ信号(Data)として、フルライン記録ヘッドに対してシリアル送信することで大量のデータをより少ない数の信号線を用いて転送するのである。
【0010】
図9には、CRC、温度センサ選択、サブヒータ、ヒートデータ、ヒートタイミング、ヒータ選択、スタートタイミングの7つの異なるデータをコマンドデータ列して送信する例が示されている。
【0011】
図10はフルライン記録ヘッドの制御構成の概略を示す図である。
【0012】
図10に示すように、データ信号(Data)として転送されるコマンド化されたシリアルデータは、受信側のフルライン記録ヘッド11のコマンド解析ブロック11aでコマンド解析して、吐出データ、吐出パルス等の個々のデータに復元する。そして、コマンド解析ブロック11aは、復元したデータそれぞれを対応するブロック(吐出ヒータ制御ブロック11b、ヒートパルス内部生成ブロック11c、サブヒータ制御ブロック11d、Diセンサ切替制御ブロック11e)に転送する。このようにして、フルライン記録ヘッド11を制御して記録を行うことが可能である。
【0013】
しかしながら、フルライン記録ヘッドを用いる記録装置が記録を行う時に記録媒体を給送する際のレジ取り動作において、その記録媒体を給送・搬送する搬送ローラは正転・逆転・停止等の複雑な回転動作をする。このため、その搬送ローラの動きを検出するエンコーダ(LFエンコーダ)が出力するエンコーダ信号に基づいて生成されるラッチトリガ周期は不定となる。さて、ラッチトリガ信号はフルライン記録ヘッドの内部ロジック回路に対して画像データを転送し、その記録要素を駆動するためのタイミング信号である。従って、搬送ローラが正転・逆転・停止等によりラッチトリガ周期が不定となった場合、ASICの内部で生成するラッチトリガ信号に切替えてフルライン記録ヘッドの駆動を継続させる必要がある。
【0014】
特許文献1は、シリアルヘッドを搭載した記録装置においてエンコーダをキャリッジに搭載し、そのエンコーダ信号をもとにラッチトリガ信号を生成し、そのラッチトリガ信号に基づいて記録動作を行う場合に、以下のような特徴を備えることを開示している。
【0015】
即ち、その記録装置は、エンコーダ信号の異常を検出する検出部と、エンコーダ信号から生成するラッチトリガ信号と同周期のラッチトリガ信号を生成するトリガ信号生成部とを有する。ここで、エンコーダ信号に異常を検知されると、エンコーダ信号から生成するラッチトリガ信号から、トリガ信号生成部から生成されるラッチトリガ信号に切替えて記録動作を継続するので、エンコーダ信号に異常が発生した時でも印刷を続けることができる。また、特許文献1は、エンコーダセンサ信号の異常をユーザに通知する構成も開示している。
【0016】
以上のように、特許文献1は2つのラッチトリガ信号を切替る手段を備えることにより、エンコーダ信号が異常になった場合、記録装置の内部回路でタイミング生成を行うラッチトリガ信号に切替えて記録ヘッドを駆動して継続印刷ができる構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2005−028607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら特許文献1が開示する構成では、2つのラッチトリガ信号を切替える時のタイミングは考慮されていないので、以下のような問題が生じることがある。
【0019】
例えば、上述のようなフルライン記録ヘッドを駆動制御するためにコマンド化したシリアルデータを転送する方法を採用する場合、必ずコマンドを転送する時間を確保する必要がある。もし、シリアルデータ転送が中断されてしまうとコマンドが欠落してしまう。例えば、コマンド化したシリアルデータにはフルライン記録ヘッドの温調制御のコマンドも含まれており、転送が中断されて、そのコマンドが欠落すると温度制御の間隔が長くなり過ぎる。このため、例えば、インク温度が下降し、インク粘度が高くなり、吐出不良が生じる可能性がある。このように、フルライン記録ヘッドの信頼性を確保できなくなる結果となる。
【0020】
要約すると、記録装置の内部回路で生成されるラッチトリガ(以下、内部ラッチトリガ)から、エンコーダ信号に基づいて生成されるラッチトリガ(以下、外部ラッチトリガ)に切替わった際にシリアルデータ転送が途中で中断されるとコマンドが欠落する。このような場合には、欠落したコマンドに基づいた制御が実行されない。
【0021】
図11は内部ラッチトリガから外部ラッチトリガに切替わるタイミングとデータ転送との関係を示す図である。
【0022】
図11に示すように、内部ラッチトリガによるシリアルデータの転送時間(Ti)が確保されずに、外部ラッチトリガが切替わると先のシリアルデータ転送が中断する。この場合には、転送中のシリアルデータに含まれているコマンドが欠落してしまう。
【0023】
本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、適切なタイミングで2つの信号を切替えながら記録ヘッドを駆動制御して記録を行う記録装置及び記録制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するために本発明の記録装置は次のような構成を有する。
【0025】
即ち、配列された記録素子を備える記録ヘッドにより前記記録素子の配列の方向と交差する方向に搬送される記録媒体に画像を記録する記録装置であって、前記記録ヘッドを駆動し記録を行わせるための複数のコマンドをシリアルデータとして受信する受信手段と、前記記録装置の内部で第1の信号を生成する第1の生成手段と、搬送される記録媒体の位置を示す情報に基づいて第2の信号を生成する第2の生成手段と、前記受信手段により受信したシリアルデータから前記複数のコマンドそれぞれを取り出す取り出し手段と、前記取り出し手段により取り出された前記複数のコマンドそれぞれに基づいて、前記第1の信号と前記第2の信号とを切替えながら、前記第1の信号に基づいて前記記録ヘッドによる画像の記録前の準備動作を行い、前記第2の信号に基づいて記録媒体に画像データに基づく画像の記録を行うために前記記録ヘッドを駆動する駆動手段と、前記第1の信号から前記第2の信号に切替える際には、予め定められた期間、前記第1の信号を無効にした後、前記第2の信号への切替えの制御を行う制御手段とを有することを特徴とする。
【0026】
また本発明を他の側面から見れば、配列された記録素子を備える記録ヘッドにより前記記録素子の配列の方向と交差する方向に搬送される記録媒体に画像を記録する記録装置の記録制御方法であって、前記記録ヘッドを駆動し記録を行わせるための複数のコマンドをシリアルデータとして受信する受信工程と、前記記録装置の内部で第1の信号を生成する第1の生成工程と、搬送される記録媒体の位置を示す情報に基づいて第2の信号を生成する第2の生成工程と、前記受信工程において受信したシリアルデータから前記複数のコマンドそれぞれを取り出す取り出し工程と、前記取り出し工程において取り出された前記複数のコマンドそれぞれに基づいて、前記第1の信号と前記第2の信号とを切替えながら、前記第1の信号に基づいて前記記録ヘッドによる画像の記録前の準備動作を行い、前記第2の信号に基づいて記録媒体に画像データに基づく画像の記録を行うために前記記録ヘッドを駆動する駆動工程と、前記第1の信号から前記第2の信号に切替える際には、予め定められた期間、前記第1の信号を無効にした後、前記第2の信号への切替えの制御を行う制御工程とを有することを特徴とする記録制御方法を備える。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、適切なタイミングで2つの信号を切替えながら記録ヘッドを駆動制御して記録を行うことができる。例えば、記録媒体を給送する際のレジ取り動作から印刷動作に移行する際に、ラッチトリガ信号の切替えが発生するが、その切替え時にも記録ヘッドへのデータ転送時間の確保することにより、記録ヘッドの信頼性を確保するための制御をシームレスに継続できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の代表的な実施例であるインクジェット方式に従うフルライン記録ヘッドからインクを吐出して記録を行う記録装置の概略構成を示す斜視図である。
図2図1に示した記録装置におけるフルライン記録ヘッドと搬送機構との関係を示す側断面図である。
図3図1図2に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
図4】ラッチトリガ切替部の構成を示すブロック図である。
図5】ラッチトリガの切り替え方法を示したタイミングチャートである。
図6】2つラッチトリガの切り替えタイミングを示す図である。
図7】処理を示すフローチャートである。
図8】従来のヘッド構成によるデータ転送の構成を示した図である。
図9】コマンドデータ化したシリアルデータの構成を示した図である。
図10】フルマルチヘッドをコマンド化したシリアルデータにより制御する構成を示した図である。
図11】ラッチトリガの切替えが早い場合を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下添付図面を参照して本発明の好適な実施例について、さらに具体的かつ詳細に説明する。なお、以下の説明では、図面全体を通して、同じ構成要素に対して同じ参照番号を付して言及する。そのため、一度説明した構成要素に対しては同じ参照番号を用いて言及し、その説明を繰り返すことはしない。
【0030】
なお、この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。さらに人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かも問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0031】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0032】
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0033】
またさらに、「記録素子」とは記録媒体に記録剤を付与するためのエネルギーを発生する素子を言うものとする。以下の実施例では、その素子として電気熱変換素子を用いる。
【0034】
<フルライン記録ヘッドを搭載した記録装置(図1)>
図1は本発明の代表的な実施例に従う記録装置の構造を説明するための斜視透視図である。図1に示すように、記録装置1にはインクジェット方式に従うフルライン記録ヘッド(以下、記録ヘッド)11K、11C、11M、11Yを備えている。なお、以下の説明で、4つの記録ヘッド11K、11C、11M、11Yをまとめて言及するときには、記録ヘッド11として言及する。
【0035】
記録装置1において、記録媒体15は、フィーダユニット17から、これら記録ヘッドによる印刷位置に供給され、記録装置の筐体18に具備された搬送ユニット16によって図中の矢印の方向に搬送される。
【0036】
記録媒体15への画像の印刷は、記録媒体15を搬送しながら、所定位置で固定された記録ヘッドによって行う。記録媒体15の基準位置がブラック(K)インクを吐出する記録ヘッド11Kの下に到達したときに、記録ヘッド11Kからブラックインクを吐出する。同様に、シアン(C)インクを吐出する記録ヘッド11C、マゼンタ(M)インクを吐出する記録ヘッド11M、イエロ(Y)インクを吐出する記録ヘッド11Yの順に、各基準位置に記録媒体15が到達すると各色のインクを吐出してカラー画像が形成される。各色の記録ヘッドには、インクを吐出するノズルとそれに対応する電気熱変換素子が記録媒体の搬送方向と交差する方向に配列されている。こうして画像が印刷された記録媒体15はスタッカトレイ20に排出されて堆積される。
【0037】
記録装置1は、更に搬送ユニット16、記録ヘッド11K、11C、11M、11Yにインクを供給するための各インク毎に交換可能なインクカートリッジ(不図示)を有している。またさらに、記録ヘッド11K、11C、11M、11Yへのインク供給や回復動作のためのポンプユニット(不図示)、記録装置1全体を制御する制御基板(不図示)等を有している。またフロントドア19は、インクカートリッジの交換用の開閉扉である。
【0038】
図2図1に示した記録装置のフルライン記録ヘッドと記録媒体の搬送機構との関係を示す図である。
【0039】
図2に示すように、記録媒体15を搬送するための搬送ローラ801とロータリースケーラ802とは同軸上に取り付けられており、LFエンコーダ803はロータリースケーラ802の周縁部に等間隔に設けられたスリットを読取る。これによって、搬送ローラ801の位置情報と速度情報を算出する。また、記録ヘッド11のインク吐出面は記録媒体に対向するようになっている。フィードローラ805は記録ヘッド11によって画像が記録された記録媒体15を排紙口(不図示)からスタッカトレイ20に排出する。
【0040】
<記録装置の制御構成(図3図4)>
図3図1図2に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【0041】
図3において、ASIC901は記録装置の特定な画像処理、記録ヘッド制御、およびに通信インタフェース等の機能をハードウェア化することによって高速処理を行う集積回路である。ホストPC902は一般的なパーソナルコンピュータであって、画像データを展開して記録装置にUSB・イーサネット(登録商標)等のインタフェースを利用して転送をする。インタフェース(IF)制御部903はUSB・イーサネット(登録商標)等の規格に準拠した外部インタフェース部と、そのインタフェース部を介してDRAMコントローラ904を介してDRAM905に画像データを書込む機能を有している。
【0042】
DRAMコントローラ904は、バス調停機能とダイレクトメモリアクセス(DMA)機能とを有し、各ブロックからの書込み/読出し要求に応じて排他処理を行ってDRAM905にアクセスする。DRAM905は高速アクセスが重要視されるためDDR SDRAMを用いられることが一般的な外部メモリである。ファームウェアを格納するROM906は、ROMコントローラ907により制御される。記録装置1の起動時には、ROM906からファームウェアが読出されてDRAM905上に展開され、CPU908はファームウェアの実行処理・割込処理・各ブロックのレジスタの設定等を実行する。
【0043】
図3に示すように、CPU908はASIC901に内蔵されている場合が一般的であるが、単品部品として存在しても構わない。また、CPU908から各ブロックはバス909により接続されている。バス909はアドレスバスとデータバスから構成されており、各ブロックに存在する各種レジスタに設定する。
【0044】
画像処理部910は、DRAM905上に展開された画像データの色変換や記録ヘッド11のノズル配置に合わせた画像データの配置変換等の処理を実行する。モータ制御部911は、モータドライバ912を制御して、搬送ローラ801を駆動する駆動源としてのモータ914を駆動制御する。エンコーダ制御部913は、LFエンコーダ803からのエンコーダ信号(LF_ENC)から速度情報及び位置情報を算出・保持し、CPU908が速度情報と位置情報に基づいた演算を行ってモータ制御部911に加速、減速、停止といった制御を実行する。
【0045】
この制御はPID制御を用いたフィードバック制御であり、入力値の制御を出力値と目標値の偏差、その微分、積分の3つ要素によって行う制御である。
【0046】
また、ラッチトリガ生成部915はラッチトリガの生成を行うブロックであり、具体的な構成に関しては図4を参照して説明する。記録ヘッド制御部916はDRAM905に展開された画像データを読出して図9を参照して説明したようなコマンド化したデータ形式に変換し、かつ、ラッチトリガ生成部915から出力されるラッチトリガによって記録ヘッド11にデータ転送を行う。
【0047】
図4図3に示したラッチトリガ生成部の詳細な内部構成を示すブロック図である。
【0048】
図4において、外部ラッチトリガ生成部1001は、エンコーダ制御部913の位置情報から記録解像度まで逓倍化を行った外部ラッチトリガ(ELTRG)を生成する。内部ラッチトリガ生成部1003は、ハードウェアタイマからなり、予め設定された周期に基づいて内部ラッチトリガ(ILTRG)を生成する。内部ラッチトリガ(ILTRG)の周期はCPU908によって設定される。ラッチトリガ切替部1005は、外部ラッチトリガ(ELTRG)及び内部ラッチトリガ(ILTRG)のどちらか一方を選択する。
【0049】
ウィンドウ状態設定部1006はこれら2つのラッチトリガの切替位置を設定し、その切替位置の情報に基づいてエンコーダ制御部913からの位置情報と比較してラッチトリガ切替部1005に切替え信号(SW)を出力する。ラッチトリガ切替部1005は、2つのラッチトリガ信号を切替え選択後の出力状態を示す合成ラッチトリガ(CBTRG)を出力する。
【0050】
発明が解決しようとする課題の項で説明したように記録媒体を給送する際のレジ取り時には、搬送ローラ801は正転・逆転・停止といった駆動を行って記録媒体の位置を調整するため、外部ラッチトリガ(ELTRG)の周期は不定となる。このため、内部ラッチトリガ(ILTRG)に切替える必要がある。
【0051】
図5は外部ラッチトリガと内部ラッチトリガの切替えをウィンドウ設定より行う制御を示したタイミングチャートである。なお、図5において、左側からスタートして右側へと時間が進む。
【0052】
図5において、外部ラッチトリガ(ELTRG)を示す縦線はトリガ信号を模式的に図示したものであってトリガ間隔を示したものではない。また、外部ラッチトリガ(ELTRG)は、そのウィンドウを示す信号である外部ラッチトリガ生成ウィンドウ(ELTRG_GW)のレベルがハイレベルの場合は有効状態であり、ローレベルの場合は無効状態を示している。
【0053】
外部ラッチトリガ生成ウィンドウ(ELTRG_GW)は外部ラッチトリガ生成部1001に対して外部ラッチトリガ(ELTRG)の生成期間を設定する。そのウィンドウの有効/無効の箇所を指定する位置情報は、エンコーダ制御部913が出力する位置情報である。外部ラッチトリガ(ELTRG)は記録時に用いるラッチトリガであるため、記録開始前にそのウィンドウを有効にしてトリガ生成を開始する。また、記録終了後にそのウィンドウを無効にすることによって外部ラッチトリガ(ELTRG)生成を停止する。記録以外の期間で外部ラッチトリガ(ELTRG)の生成しない理由は、記録媒体のレジ取り時等には、搬送ローラ801の正転・逆転・停止などの動作となり、エンコーダ信号(LF_ENC)の周期が不定となりラッチトリガとして使用できないことがある。
【0054】
内部ラッチトリガ(ILTRG)は内部ラッチトリガ生成部1003で生成した内部信号である。そのタイミング周期はハードウェアのタイマによって実現する。また、内部ラッチトリガ(ILTRG)の周期は記録ヘッドの信頼性を持続させるための処理を行う最大周期よりも短く、データ転送時間よりも長い周期を有している。これにより、レジ取り等で内部ラッチトリガ(ILTRG)の周期で記録ヘッドを駆動している際にも信頼性を確保できる。
【0055】
外部ラッチトリガマスクウィンドウ(ELTRG_MK)は、外部ラッチトリガ(ELTRG)の出力選択を設定するためのウィンドウである。そのウィンドウを示す信号のレベルがハイの場合、外部ラッチトリガ(ELTRG)はマスクされる。これに対して、その信号のレベルがローの場合、外部ラッチトリガ(ELTRG)マスクされずに、その外部ラッチトリガ信号が選択されて出力される。
【0056】
図5に示すように印刷中は、外部ラッチトリガマスクウィンドウ(ELTRG_MK)はローレベルであるためマスクされずに外部ラッチトリガ(ELTRG)が選択される。また、内部ラッチトリガマスクウィンドウ(ILTRG_MK)は、内部ラッチトリガ(ILTRG)に対してウィンドウを設定してマスクする。合成ラッチトリガ(CBTRG)は上記の2つのラッチトリガの切替え選択後のラッチトリガの状態を示しており、図4に示したラッチトリガ切替部1005から出力されるラッチトリガ信号である。
【0057】
ここで、内部ラッチトリガ(ILTRG)から外部ラッチトリガ(ELTRG)への切替えを上記2つのウィンドウの設定によってタイミングを取って実行する方法について説明する。
【0058】
前述のように、内部ラッチトリガ(ILTRG)から外部ラッチトリガ(ELTRG)への切替えが直ちになされた場合、図11を参照して指摘したように、シリアルデータ転送が中断されてしまい、コマンドが実行されないという課題があった。この課題を解決するため、この実施例では、内部ラッチトリガ(ILTRG)から外部ラッチトリガ(ELTRG)の切替えを行う際に、内部ラッチトリガ(ILTRG)を所定回数分だけマスクするようにウィンドウを設定する。このようなマスクを行うことにより、内部ラッチトリガ(ILTRG)から外部ラッチトリガ(ELTRG)への切替えの際に、内部ラッチトリガ(ILTRG)をマスクによる無効期間を設けて合成ラッチトリガ(CBTRG)を生成する。
【0059】
しかしながら、このようなマスクによる無効期間が長く、ラッチトリガの間隔が空き過ぎてしまうと、記録ヘッドへのシリアルデータ転送は実行できるものの、そのデータ転送間隔が間延びしてしまう。そのため、画像の記録前の準備動作として記録ヘッドの信頼性を確保するための処理を行うのに必要な周期でデータ転送を行う必要がある。
【0060】
なお、発明が解決しようとする課題の項で説明したように従来の記録装置では、CPUによるファームウェアによって切替えを行うことが一般的であった。しかしながら、リアルタイムOSのタスクの処理による実行順序の入替えや遅延時間が一定でなかった。
【0061】
これに対して、この実施例では、ウィンドウによるラッチトリガの切替えはASIC内のハードウェア回路によって実現する。これにより、記録媒体が所定の場所に到達したら直ちにマスク、またはマスク解除を実施することで2つのラッチトリガの切替えをファームウェアを介在させることなく、シームレスに切替えることが可能となる。
【0062】
また、フルライン記録ヘッドを搭載する記録装置では、記録媒体の給送から記録開始に遷移する際にもその記録ヘッドの信頼性を維持するための処理を継続する必要がある。さらに、フルライン記録ヘッドに転送するデータは、複数のデータをコマンド化したシリアルデータとするために、2つのラッチトリガの切替え時において前述のようにコマンドデータの転送中断や遅延を許容できない。またさらに、ラッチトリガの間隔は約100μsecという単位であるために、内部ラッチトリガ(ILTRG)から外部ラッチトリガ(ELTRG)への変更をシームレスに行うためには、ハードウェアのよる切替えを行う構成が必要である。この構成によれば、ラッチトリガの周期に相当する約100μsecの単位での切替えタイミングの調整でさえも、CPUによるファームウェアを介在させることなく実行できる。特に、非常に高精度の信頼性制御が求められているフルライン記録ヘッドには最適な構成である。
【0063】
なお、この実施例では、印刷終了して外部ラッチトリガ(ELTRG)から内部ラッチトリガ(ILTRG)に切替えを行う際にも、2つのラッチトリガが重ならないように空白期間を設ける。この空白期間の設定は内部ラッチトリガ(ILTRG)のカウントでなく、記録装置のASICのシステムクロックを用いたカウンタによって空白時間を生成する。
【0064】
このような制御を行うには、次の理由がある。即ち、記録開始時には、外部ラッチトリガ(ELTRG)から内部ラッチトリガ(ILTRG)に切替えには、記録ヘッド11の温度調整等の信頼性制御を実行する時間を確保するため、2つのラッチトリガをできるだけシームレスに切替えたいという前提がある。これに対して、1ページ分の印刷が終了して次のページの開始する際には、記録媒体の給送に時間を要するので、再度、温度調整を実行する時間的な余裕がある。そのため、外部ラッチトリガ(ELTRG)から内部ラッチトリガ(ILTRG)に切替える際は、回路構成が簡単なシステムクロックによるタイマ設定で、その切替制御を行うのである。
【0065】
以上のように内部ラッチトリガ(ILTRG)から外部ラッチトリガ(ELTRG)に切替わる際に、内部ラッチトリガ(ILTRG)を所定回数分だけマスクする。これにより、2つのラッチトリガの切替え時にも合成ラッチトリガ(CBTRG)の状態が示すように記録ヘッドへのシリアルデータの転送時間を確保しつつ、その記録ヘッドの信頼性を確保するための制御をシームレスに継続することができる。
【0066】
また、搬送ローラの速度(VF)からは搬送ローラの速度状態(加速、等速、減速、停止)が分かり、記録ヘッド11の状態(HSTA)は、「信頼性制御」、「印刷」の状態で表している。
【0067】
記録ヘッドの信頼性制御、例えば、サブヒータ加熱・予備吐出動作等は、記録開始前から実行して印刷中、また、ページ間の記録媒体の給送中にも継続する必要がある。なぜなら、信頼性制御の実行を停止すると、印刷中の記録画像の品位低下や次の記録開始で記録画像の品位が低下する可能性があるからである。しかしながら、搬送ローラの速度(VF)の状態が示すように、印刷中において搬送ローラ801は一定速度で回転している。これに対して、記録媒体のレジ取り時には、搬送ローラ801の回転は正転・停止・逆転などを繰り返すため、前述のように、エンコーダ信号LF_ENCの周期は不定となり、外部ラッチトリガ(ELTRG)だけでは周期の確保ができない期間がある。
【0068】
図6は内部ラッチトリガから外部ラッチトリガの切替タイミングを示した図である。
【0069】
図6は、前述のように内部ラッチトリガ(ILTRG)から外部ラッチトリガ(ELTRG)の切替えを行う際に内部ラッチトリガ(ILTRG)を所定回数分だけマスクすることにより無効期間を設けることを表している。
【0070】
さらに、図6から分かるように、この実施例では、その切替えの際に発生する最後の内部ラッチトリガ(ILTRG)に基づいて実行するシリアルデータ転送が転送中で有るか否か監視(モニタ)するようにしても良い。このモニタによりシリアルデータが転送中であったと判断された場合には、シリアルデータの転送完了を優先させて外部ラッチトリガ(ELTRG)を一時的にマスクする。このモニタ機能により、ラッチトリガの切替え時のシリアルデータ転送をモニタすることで、その転送時間を確保できる。この実施例では内部ラッチトリガ(ILTRG)から外部ラッチトリガ(ELTRG)へ切替える際に、内部ラッチトリガ(ILTRG)を所定回数分だけマスクする。このため、搬送ローラ801の速度変動がよほど大きくならない限り、このモニタ機能は用いられない。
【0071】
図7はラッチトリガの切替を伴う記録制御処理を示すフローチャートである。以下の処理は、フルライン記録ヘッドを搭載する記録装置が印刷開始命令を受信後、開始される。
【0072】
まず、ステップS101では外部ラッチトリガ生成ウィンドウ(ELTRG_GW)、外部ラッチトリガマスクウィンドウ(ELTRG_MK)、内部ラッチトリガマスクウィンドウ(ILTRG_MK)を設定する。具体的には、ウィンドウ状態設定部1006のウィンドウ設定レジスタにウィンドウの有効・無効位置を示す位置情報を設定することで行う。
【0073】
次に、印刷開始命令の受信に応じて、ステップS102では、内部ラッチトリガマスクウィンドウ(ILTRG_MK)の設定情報に基づいて合成ラッチトリガ(CBTRG)に内部ラッチトリガ(ILTRG)を出力する。さらに、ステップS103では、記録媒体の給送動作を開始し、ステップS104では、搬送ローラを正転・逆転・停止等の駆動制御を行って、レジ取り動作を開始する。
【0074】
そして、ステップS105ではレジ取りが完了したか否かを調べる。ここで、レジ取りが完了でないと判断された場合、処理はステップS104に戻り、レジ取りが完了したと判断された場合には、処理はステップS106に進む。なお、ステップS103〜S104による印刷前のレジ取り動作中には、前述のように記録ヘッド11の信頼性制御、例えば、サブヒータ加熱・予備吐出動作等を行うために合成ラッチトリガ(CBTRG)としては内部ラッチトリガ(ILTRG)を選択する。
【0075】
ステップS106では、内部ラッチトリガ(ILTRG)を所定回数、マスクして無効期間を設ける。
【0076】
ステップS107では、外部ラッチトリガ生成ウィンドウ(ELTRG_GW)の設定情報に基づいて、合成ラッチトリガ(CBTRG)に外部ラッチトリガ(ELTRG)を出力する(外部ラッチトリガモード)。そして、ステップS108では、画像データに基づいて記録ヘッド11を駆動して印刷を行う。さらに、ステップS109では、印刷を完了したか否かを調べる。ここで、印刷完了ではないと判断した場合、処理はステップS108に戻り、印刷動作を継続するが、印刷完了と判断された場合、処理はステップS110に進む。
【0077】
ステップS110では、記録装置のシステムクロックを用いたカウンタによって生成した空白期間の後、ステップS111では、内部ラッチトリガ(ILTRG)に切替える(内部ラッチトリガモード)。ステップS112では、次ページの印刷があるか否かを調べる。ここで、次ページの印刷があると判断された場合、処理はステップS101にステップS101に戻り、各ウィンドウの設定を行って印刷を継続する。これに対して、次ページの印刷がないと判断された場合には、処理は終了する。
【0078】
以上説明した制御をまとめると次のようになる。
【0079】
印刷時に記録媒体を給送する際に実行するレジ取り動作時は、LFエンコーダから生成する外部ラッチトリガが不定で周期が確保できないために内部ラッチトリガを用いる。そして、レジ取り動作が終了後に印刷動作に移行する。その動作の移行に伴って内部ラッチトリガから外部ラッチトリガに切替えるが、その切替えの際に所定回数の内部ラッチトリガをマスクすることにより無効期間を設けて記録ヘッドに対してデータ転送時間を確保する。さらに、データ転送中で有るか否かを判断して2つのラッチトリガの切替え時にもデータ転送時間を確保する。
【0080】
また、内部ラッチトリガの周期は記録ヘッドの信頼性制御を継続するために必要な最大周期よりも短く、データ転送時間よりも長い周期を有する。その理由はレジ取り等で内部ラッチトリガ周期により記録ヘッドを駆動している際においても、記録ヘッドの信頼性を確保するためである。また、データ転送時間に対して時間的なマージンの確保を行うためである。
【0081】
従って以上説明した実施例に従えば、レジ取り動作から印刷動作に移行する際に発生するラッチトリガの切替え時に、その記録ヘッドの駆動データの転送時間を確保することができる。これによって、例えば、予備吐出・温度調整などの記録ヘッドの信頼性を確保するための制御をシームレスに継続することが可能になる。
【0082】
なお、以上説明した実施例ではフルライン記録ヘッドを搭載した単機能の記録装置を例に挙げて説明したが、本発明はこれによって限定されるものではない。例えば、ファクシミリ機能や画像読取装置(スキャナ機能)を有した多機能プリンタ装置(MFP)にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
801 搬送ローラ、802 ロータリースケーラ、803 LFエンコーダ、
804 記録ヘッド、805 フィードローラ、901 ASIC、
902 ホストPC、903 IF制御部、904 DRAMコントローラ、
905 DRAM、906 ROM、907 ROMコントーラ、908 CPU、
909 バス、910 画像処理部、911 モータ制御部、912 モータドライバ、
913 エンコーダ制御部、914 エンコーダ、915 ラッチトリガ生成部、
916 記録ヘッド制御部、1001 外部ラッチトリガ生成部、
1003 内部ラッチトリガ生成部、1005 ラッチトリガ切替部、
1006 ウィンドウ状態設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11