特許第6976141号(P6976141)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニチカトレーディング株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6976141-衣服及び衣服内温度調節システム 図000002
  • 特許6976141-衣服及び衣服内温度調節システム 図000003
  • 特許6976141-衣服及び衣服内温度調節システム 図000004
  • 特許6976141-衣服及び衣服内温度調節システム 図000005
  • 特許6976141-衣服及び衣服内温度調節システム 図000006
  • 特許6976141-衣服及び衣服内温度調節システム 図000007
  • 特許6976141-衣服及び衣服内温度調節システム 図000008
  • 特許6976141-衣服及び衣服内温度調節システム 図000009
  • 特許6976141-衣服及び衣服内温度調節システム 図000010
  • 特許6976141-衣服及び衣服内温度調節システム 図000011
  • 特許6976141-衣服及び衣服内温度調節システム 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976141
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】衣服及び衣服内温度調節システム
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/005 20060101AFI20211125BHJP
   A41D 27/28 20060101ALI20211125BHJP
   A41D 27/00 20060101ALI20211125BHJP
   A41D 13/002 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   A41D13/005
   A41D27/28 E
   A41D27/00 Z
   A41D13/002 105
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-213441(P2017-213441)
(22)【出願日】2017年11月6日
(65)【公開番号】特開2019-77974(P2019-77974A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2020年7月6日
(31)【優先権主張番号】特願2017-205888(P2017-205888)
(32)【優先日】2017年10月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592197315
【氏名又は名称】ユニチカトレーディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】樋口 眞矢
(72)【発明者】
【氏名】米田 泰和
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭43−027163(JP,B1)
【文献】 登録実用新案第3035862(JP,U)
【文献】 特開平11−323626(JP,A)
【文献】 特開2005−273042(JP,A)
【文献】 特開2017−025454(JP,A)
【文献】 米国特許第04914752(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/005
A41D 27/28
A41D 27/00
A41D 13/002
A41D 1/00
A61F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気を冷風と熱風とに分離する圧縮空気分離装置から供給される冷風又は熱風によって内部の温度を調節するように構成され、
前記圧縮空気分離装置を外側から挿入可能な第1開口部を有する衣服本体と、
前記衣服本体の内側であって、前記第1開口部を覆う位置に設けられた裏地とを備え、
前記裏地の外周端部のうち、第1部分は前記衣服本体に縫い付けられており、第2部分は前記衣服本体に縫い付けられておらず、
前記第2部分と前記衣服本体とによって第2開口部が形成されており、
前記圧縮空気分離装置から供給される冷風又は熱風は、前記第2開口部を通流
前記第2開口部は、前記衣服が人に着用された場合に前記人の身体と対向する位置に形成されている、衣服。
【請求項2】
前記裏地の通気度は、JIS L1096(フラジール法)に規定された方法に準拠して測定した場合に、10cc/cm2/s以下である、請求項1に記載の衣服。
【請求項3】
前記第2開口部は、前記衣服が人に着用された場合に前記人の脇に対向する位置に形成されている、請求項1又は請求項2に記載の衣服。
【請求項4】
前記第1開口部は、前記衣服が人に着用された場合に前記人の背中に対向する位置に形成されており、
前記第2開口部は、前記衣服が前記人に着用された場合に前記人の胸に対向する位置に形成されている、請求項1又は請求項2に記載の衣服。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の衣服と、
前記衣服内に冷風又は熱風を導入する圧縮空気分離装置とを備える、衣服内温度調節システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服及び衣服内温度調節システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許第6039020号(特許文献1)は、脇下部分に開口部が形成されたシャツを開示する。このシャツにおいては、開口部に携帯送風装置の送風ホースを導通することが可能である。このシャツによれば、携帯送風装置によって生成される風をシャツの内部に導入することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6039020号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されているシャツにおいて、携帯送風装置によって生成される風の温度は、周囲の温度と同等である。したがって、たとえば周囲の温度が極めて高温である場合には、シャツ内に導入される風の温度も高温なので、シャツの着用者の不快感を十分に低減することができない可能性がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、着用者にとってより快適な衣服及び衣服内温度調節システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある局面に従う衣服は、圧縮空気を冷風と熱風とに分離する圧縮空気分離装置から供給される冷風又は熱風によって内部の温度を調節するように構成されている。
【0007】
この衣服においては、圧縮空気分離装置から供給される冷風(周囲よりも低温)又は熱風(周囲よりも高温)が、衣服の内部に導入される。したがって、この衣服によれば、周囲の温度が着用者にとって不快な温度であったとしても、衣服内部の温度を適切に調節することができるため、着用者の不快感を十分に解消することができる。
【0008】
好ましくは、上記衣服は、衣服本体と、裏地とを備える。衣服本体は、圧縮空気分離装置を外側から挿入可能な第1開口部を有する。裏地は、衣服本体の内側であって、第1開口部を覆う位置に設けられている。裏地の外周端部のうち、第1部分は衣服本体に縫い付けられており、第2部分は衣服本体に縫い付けられていない。第2部分と衣服本体とによって第2開口部が形成されている。圧縮空気分離装置から供給される冷風又は熱風は、第2開口部を通流する。
【0009】
この衣服においては、圧縮空気分離装置から供給される冷風又は熱風が、衣服本体と裏地との間の空間を通流し、その後、第2開口部を通流する。したがって、この衣服によれば、衣服本体と裏地との間の空間だけでなく、第2開口部を介してつながる他の空間の温度も調節することができる。その結果、この衣服によれば、衣服内の広範囲において温度調節が行なわれるため、着用者の不快感を十分に解消することができる。
【0010】
好ましくは、裏地の通気度は、JIS L1096(フラジール法)に規定された方法に準拠して測定した場合に、10cc/cm2/s以下である。
【0011】
この衣服においては、裏地の通気度が10cc/cm2/s以下であるため、圧縮空気分離装置から供給される冷風又は熱風が裏地から漏れにくい。したがって、この衣服によれば、圧縮空気分離装置から供給される冷風又は熱風を十分に第2開口部に導くことができる。
【0012】
好ましくは、第2開口部は、衣服が人に着用された場合に人の脇に対向する位置に形成されている。
【0013】
脇の温度を調節することによって、人の全身の体温を調節できることが知られている。この衣服においては、第2開口部が着用者の脇に対向するため、第2開口部を通流する冷風又は熱風が着用者の脇に当たりやすい。したがって、この衣服によれば、冷風又は熱風を着用者の脇に十分に当てることによって、着用者の全身の体温を効率的に調節することができる。
【0014】
好ましくは、第1開口部は、衣服が人に着用された場合に人の背中に対向する位置に形成されている。そして、第2開口部は、衣服が人に着用された場合に人の胸に対向する位置に形成されている。
【0015】
この衣服においては、第1開口部が着用者の背中側に設けられ第2開口部が着用者の胸側に設けられるため、圧縮空気分離装置から供給される冷風又は熱風が着用者の背中側から胸側に導かれる。したがって、この衣服によれば、着用者の背中側及び胸側の両方について温度調節することができる。
【0016】
また、本発明の別の局面に従う衣服内温度調節システムは、上記衣服と、圧縮空気分離装置とを備える。圧縮空気分離装置は、第1開口部に外側から挿入されている。
【0017】
この衣服内温度調節システムにおいては、圧縮空気分離装置によって、衣服内に冷風又は熱風が導入される。したがって、この衣服内温度調節システムによれば、衣服内に導入された冷風又は熱風によって、衣服内の温度を調節することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に従う衣服及び衣服内温度調節システムによれば、衣服内において快適な温度を維持することができ、その結果、着用者の体温調節を容易に行なうことができる。すなわち、本発明によれば、着用者にとってより快適な衣服及び衣服内温度調節システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態1に従う作業着が適用される作業者冷却システムを作業者が使用している状態を示す図である。
図2】圧縮空気分離装置の構成を示す図である。
図3】作業着の外側(背中側)を示す図である。
図4】作業着の内側を示す図である。
図5】比較例における衣服内の温度変化を示す図である。
図6】実施の形態1に従う作業着内の温度変化を示す図である。
図7】実施の形態2における作業着の内側を示す図である。
図8】実施の形態2に従う作業着内の温度変化を示す図である。
図9】変形例に従う作業着内の温度変化を示す図である。
図10】変形例における作業着の内側を示す図である。
図11】裏地が取り外された作業着内の温度変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0021】
[1.実施の形態1]
(1−1.作業者冷却システムの概要)
図1は、本実施の形態1に従う作業着100が適用される作業者冷却システム10を作業者が使用している状態を示す図である。作業者冷却システム10は、たとえば、高温環境下において使用される。図1に示されるように、作業者冷却システム10は、作業着100と、圧縮空気分離装置200とを含んでいる。
【0022】
作業着100の背中側には、開口部130が形成されている。開口部130には、圧縮空気分離装置200の一部が挿入されている。圧縮空気分離装置200は、ホース216を介して圧縮空気の供給源(不図示)に接続されている。圧縮空気分離装置200は、供給された圧縮空気を冷風と熱風とに分離し、冷風を作業着100内に供給する。圧縮空気分離装置200は、たとえばボルテックスチューブで構成される。圧縮空気分離装置200の一例であるボルテックスチューブの原理については、たとえば、特開2014−168527号公報に開示されている。
【0023】
このように、作業者冷却システム10によれば、作業着100内に周囲よりも低温の冷風が導入されるため、作業着100内の温度を低下させることができる。
【0024】
(1−2.圧縮空気分離装置の構成)
図2は、圧縮空気分離装置200の構成を示す図である。圧縮空気分離装置200は、圧縮空気分離装置本体210と、ノズル220とを含んでいる。圧縮空気分離装置本体210は、たとえば金属及び樹脂等で構成されており、冷風噴出口212と、熱風噴出口214と、ホース216とを含んでいる。
【0025】
ノズル220は、金属又は樹脂で構成されており、冷風噴出口212に接続されている。ノズル220は中空であり、ノズル220の先端には長方形の開口が形成されている。ノズル220においては、冷風噴出口212に接続されている基部よりも先端の方が幅広になっている。
【0026】
上述のように、ホース216を介して圧縮空気分離装置本体210に供給された圧縮空気は、冷風と熱風とに分離される。熱風は熱風噴出口214から排出され、冷風は冷風噴出口212を介してノズル220から排出される。ノズル220の先端が幅広となっているため、冷風は、ノズル220から扇状に排出される。なお、ノズル220の形状は、特にこのような形状には限定されず、適宜変更することができる。
【0027】
(1−3.作業着の構成)
図3は、作業着100の外側(背中側)を示す図である。図3に示されるように、作業着100の外側(背中側)には、開口部130が形成されている。開口部130には、たとえば、圧縮空気分離装置200の冷風噴出口212及びノズル220が挿入される。
【0028】
また、作業着100の外側(背中側)には、保持部140,142が形成されている。保持部140,142は、先端が開口部130に挿入された圧縮空気分離装置200を保持するための部材である。
【0029】
保持部140,142の各々は、複数の面ファスナーで構成されている。各面ファスナーの素材は、たとえばナイロンやポリエステル等の化学繊維である。各面ファスナーは、フックとループとを含んでいる。たとえば、保持部140は、ループ140Aと、フック140Bとを含んでいる。また、保持部142は、ループ142Aと、フック142Bとを含んでいる。フック140B,142Bを折り返することによって、フック140B,142Bは、ループ140A,142Aにそれぞれ取り付けられる。保持部140,142に含まれる各フックをループに取り付けることによって、先端が開口部130に挿入された圧縮空気分離装置200は、作業着100に保持される(図1参照)。
【0030】
図4は、作業着100の内側を示す図である。図4に示されるように、作業着100は、作業着本体110と、裏地120とを含んでいる。
【0031】
作業着本体110及び裏地120の通気度は、JIS L1096(フラジール法)に規定された方法に準拠して測定した場合に、10cc/cm2/s以下、好ましくは7cc/cm2/s以下である。通気度が該条件を満たすことによって、開口部130から導入された冷風が作業着本体110及び裏地120から漏れ出すことが抑制される。その結果、作業着100内部が快適な温度に維持され、着用者の体温調節が容易になる。
【0032】
作業着本体110及び裏地120の素材には、上記通気度の条件を満たす素材が採用されるものであり、特に限定するものではない。たとえば、綿、麻、羊毛、カシミア、絹などの天然繊維、ビスコースレーヨン、ハイウェットモジュラスレーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセルなどの再生繊維、ジアセテート、トリアセテートなどの半合成繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、カチオン可染ポリエステル、ポリ乳酸などのポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11などのポリアミド繊維、及びポリアクリロニトリル、モダクリル(登録商標:カネカロン)などのアクリル繊維が使用できる。本発明では、これらの繊維を単独で又は混合して使用することができる。
【0033】
作業着本体110及び裏地120の形態は、特に限定されず、たとえば、織物、編物、不織布などが採用できる。織物組織及び編物組織についても特に限定されず、織物組織としては、例えば、平織、綾織、朱子織などの三原組織及びその変化組織、経二重織、緯二重織等の片二重組織及び経緯二重織などが採用できる。一方、編物組織としては、よこ編組織の場合、平編(天竺、鹿の子編、裏毛編、添え糸編(ベア天竺など)、ジャガード編など)、ゴム編(スムース編、インターロック編、ミラノリブ、シングルピケ、ダブルピケ、リップル、片畔編、片袋編、ポンチローマなど)、パール編などが例示できる。たて編組織の場合は、シングルデンビー編、シングルアトラス編、シングルコード編、ダブルデンビー編、ダブルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、クインズコード編、サテン編、裏毛編、ジャガード編などが例示できる。編物の層数としては、単層でもよいし2層以上の多層でもよい。
【0034】
図4に示されるように、裏地120は、作業着本体110の内側であって、主に着用者の背中を覆う位置に設けられている。裏地120は、開口部130を覆う位置に設けられている。開口部130は、裏地120の縦方向の中間部分より下方の部分によって覆われている。裏地120の外周端部のうち、領域P3,P4以外の領域は、作業着本体110に縫い付けられている。一方、領域P3,P4は、作業着本体110に縫い付けられていない。
【0035】
領域P3,P4は、作業着100が人に着用された場合に、肩、背中及び脇に対向する領域である。領域P3,P4が作業着本体110に縫い付けられていないため、領域P3,P4と作業着本体110とによって、開口部150,152がそれぞれ形成されている。
【0036】
開口部130から導入された冷風(圧縮空気分離装置200から供給された冷風)は、まず、作業着本体110と裏地120との間の空間を通流する。作業着100の着用者の背中は、作業着本体110と裏地120との間を通流する冷風により熱が奪われることによって冷やされる。
【0037】
上述のように作業着本体110及び裏地120の通気度は低く抑えられているため、作業着本体110と裏地120との間の空間を通流する冷風は、十分に開口部150,152に導かれる。すなわち、開口部130から導入された冷風は、開口部150,152を通流する。
【0038】
脇の温度を調節することによって、人の全身の体温を調節できることが知られている。作業着100においては、開口部150,152の各々が着用者の脇に対向するため、開口部150,152を通流する冷風が着用者の脇に当たりやすい。したがって、作業着100によれば、冷風を着用者の脇に十分に当てることによって、着用者の全身の体温を調節することができる。
【0039】
なお、裏地120の外周端部のうち、領域P1は、作業着本体110に連続的に縫い付けられている。これは、開口部130から上方に向けて導入された冷風が上方(着用者の首回り)から抜け出すのを抑制するためである。一方、領域P2は、作業着本体110に所定間隔おきで縫い付けられている。これは、領域P2が作業着本体110に連続的に縫い付けられると、開口部130から導入された冷風によって裏地120が膨らみすぎる場合があるためである。開口部130から導入された冷風の一部を領域P2から逃がすことで、裏地120が膨らみすぎる事態が抑制される。
【0040】
(1−4.作業着内の温度変化)
図5は、比較例における衣服内の温度変化を示す図である。比較例は、従来の電動ファン付きウェアであり、作業着に取り付けられたファンが作業着内に風を導入するものである。なお、温度変化の測定を行なった環境の温度は、26℃であった。
【0041】
図5において、横軸は時間(秒)を示し、縦軸は温度(℃)を示す。破線は前身の温度変化を示し、実線は後身の温度変化を示す。図5からも分かるように、比較例においては、時間が経過しても、前身及び後身の両方において、ほとんど温度が下がらなかった。
【0042】
図6は、本実施の形態1に従う作業着100内の温度変化を示す図である。この実験において、作業着100は、比較例と同様の電動ファン付きウェアを改造することにより作成されている。すなわち、比較例の電動ファン付きウェアに、開口部130を設けるとともに、裏地120を取り付けること等によって、作業着100が作成されている。なお、裏地120の通気度は、1cc/cm2/s以下であった。また、温度変化の測定を行なった環境の温度は、26℃であった。
【0043】
図6において、横軸は時間(秒)を示し、縦軸は温度(℃)を示す。破線は前身の温度変化を示し、実線は後身の温度変化を示す。図6に示されるように、作業着100においては、ある程度の時間が経過すると、前身及び後身の温度が大きく下がっている。このことからも、作業着100は、従来の電動ファン付きウェアと比較して、内部の温度を効果的に調整可能なことが分かる。
【0044】
(1−5.特徴)
以上のように、本実施の形態1に従う作業着100は、圧縮空気分離装置200から供給される冷風(周囲より低温)によって内部の温度を調節するように構成されている。すなわち、作業着100においては、開口部130を介して作業着100内部に挿入された圧縮空気分離装置200が作業着100内部に冷風を供給する。したがって、作業着100によれば、周囲が高温であったとしても、周囲よりも低温の冷風を作業着100内に導入することができ、作業着100内の温度を適切に低下させることができるため、作業者(着用者)の不快感を十分に解消することができる。
【0045】
また、本実施の形態1に従う作業着100においては、裏地120の外周端部のうち、領域P3,P4以外の領域(領域P1,P2等)は作業着本体110に縫い付けられており、領域P3,P4は作業着本体110に縫い付けられていない。すなわち、作業着100においては、圧縮空気分離装置200から供給される冷風(周囲より低温)が、作業着本体110と裏地120との間の空間を通流し、その後、開口部150,152を通流する。したがって、作業着100によれば、作業着本体110と裏地120との間の空間だけでなく、開口部150,152を介してつながる他の空間(たとえば、着用者の脇の近傍)の温度も調節することができる。その結果、作業着100によれば、内部を快適な温度に維持することができ、着用者の体温調節を容易にすることができる。
【0046】
なお、作業着100は、本発明の「衣服」の一例であり、作業着本体110は、「衣服本体」の一例であり、裏地120は、「裏地」の一例である。開口部130は、「第1開口部」の一例であり、開口部150,152は、「第2開口部」の一例である。作業者冷却システム10は、本発明の「衣服内温度調節システム」の一例である。
【0047】
[2.実施の形態2]
上記実施の形態1において、開口部150,152(第2開口部)は、着用者の肩、背中及び脇に対向する位置に設けられた。しかしながら、第2開口部が設けられる位置は、これに限定されない。本実施の形態2において、第2開口部は、着用者の胸に対向する位置に設けられる。以下、実施の形態1と異なる部分を中心に説明し、実施の形態1と同様の部分については説明を繰り返さない。
【0048】
図7は、本実施の形態2における作業着100Aの内側を示す図である。図7に示されるように、裏地120Aは、作業着本体110の内側であって、主に着用者の背中、肩及び胸を覆う位置に設けられている。裏地120Aの外周端部のうち、領域P10,P12以外の領域は、作業着本体110に縫い付けられている。一方、領域P10,P12は、作業着本体110に縫い付けられていない。
【0049】
領域P10,P12は、作業着100Aが人に着用された場合に、胸に対向する領域である。領域P10,P12が作業着本体110に縫い付けられていないため、領域P10,P12と作業着本体110とによって、開口部150A,152Aがそれぞれ形成されている。
【0050】
開口部130から導入された冷風は、まず、作業着本体110と裏地120Aとの間の空間を通流する。着用者の背中、肩及び胸は、作業着本体110と裏地120Aとの間を通流する冷風により熱が奪われることによって冷やされる。
【0051】
その後、冷風は、開口部150A,152Aを通流し、着用者の胸に当たる。すなわち、作業着100Aにおいては、圧縮空気分離装置200から供給される冷風が着用者の背中側から胸側に導かれる。したがって、作業着100Aによれば、着用者の背中側及び胸側の両方について温度調節することができる。
【0052】
図8は、本実施の形態2に従う作業着100A内の温度変化を示す図である。なお、この実験において用いられた作業着100Aの裏地120Aの通気度は、1cc/cm2/s以下であった。図8において、横軸は時間(秒)を示し、縦軸は温度(℃)を示す。破線は前身の温度変化を示し、実線は後身の温度変化を示す。図8に示されるように、作業着100Aにおいては、ある程度の時間が経過すると、前身及び後身の温度が大きく下がっている。また、図6(実施の形態1)と比較すると、前身及び後身の温度差が小さい。すなわち、作業着100Aにおいては、実施の形態1に従う作業着100よりも、開口部130から導入された冷風が開口部150A,152Aを介して前身側に効果的に導かれていることが分かる。
【0053】
なお、作業着100Aは、本発明の「衣服」の一例であり、裏地120Aは、「裏地」の一例であり、開口部150A,152Aは、「第2開口部」の一例である。
【0054】
[3.変形例]
以上、実施の形態1,2について説明したが、本発明は、上記実施の形態1,2に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。以下、変形例について説明する。但し、以下の変形例は適宜組合せ可能である。
【0055】
(3−1)
上記実施の形態1,2においては、開口部130に冷風噴出口212及びノズル220が挿入された。しかしながら、たとえば、作業着100,100A及び圧縮空気分離装置200を低温環境下で使用する場合には、熱風噴出口214が開口部130に挿入されてもよい。この場合には、熱風が作業着100,100A内部に導入され、作業着100,100A内の温度を上昇させることができる。
【0056】
図9は、変形例に従う作業着100A内の温度変化を示す図である。なお、この実験において用いられた作業着100Aの裏地120Aの通気度は、1cc/cm2/s以下であった。図9において、横軸は時間(秒)を示し、縦軸は温度(℃)を示す。破線は前身の温度変化を示し、実線は後身の温度変化を示す。図9に示されるように、作業着100Aにおいては、ある程度の時間が経過すると、前身及び後身の温度が大きく上がっている。すなわち、熱風噴出口214を開口部130に挿入することによって、作業着100A内の温度が十分に上昇することが確認された。
【0057】
(3−2)
上記実施の形態1,2においては、開口部130が作業着100,100Aの背中側に設けられた。しかしながら、開口部130の位置は、これに限定されない。開口部130は、たとえば、作業着100,100Aの胸側に設けられてもよい。この場合には、たとえば実施の形態2における開口部150A,152Aは、作業着100Aの背中側に設けられる。
【0058】
(3−3)
上記実施の形態1においては、開口部150,152が作業着100の着用者の肩、背中及び脇に対向する位置に設けられ、上記実施の形態2においては、開口部150A,152Aが作業着100Aの着用者の胸に対向する位置に設けられた。しかしながら、開口部150等の開口部が設けられる位置は、これに限定されない。たとえば、作業着の着用者の肩、背中及び脇に対向する位置、並びに作業着の着用者の胸に対向する位置の両方に開口部が設けられてもよい。
【0059】
(3−4)
上記実施の形態1,2においては、本発明が作業着に適用された。しかしながら、本発明が適用される衣服は、作業着に限定されない。たとえば、本発明は、防護服や防寒着等の衣服にも適用することができる。
【0060】
(3−5)
上記実施の形態1,2においては、圧縮空気分離装置本体210にノズル220が装着された。しかしながら、圧縮空気分離装置本体210には、必ずしもノズル220が装着される必要はない。たとえば、圧縮空気分離装置本体210の冷風噴出口212が、開口部130に直接挿入されてもよい。
【0061】
(3−6)
上記実施の形態1においては、開口部150,152は、作業着100の着用者の肩、背中及び脇に対向する位置に設けられた。しかしながら、開口部150,152の位置は、これに限定されない。たとえば、作業着100の着用者の肩及び背中に対向する位置においては、裏地120が作業着本体110に縫い付けられ、着用者の脇に対向する位置にのみ開口部が形成されるようにしてもよい。
【0062】
(3−7)
たとえば、上記実施の形態1において、裏地120は、外周端部のみが作業着本体110に縫い付けられた。しかしながら、裏地120のうち、作業着本体110に縫い付けられる領域は、外周端部に限定されない。
【0063】
図10は、変形例における作業着100Bの内側を示す図である。図10に示されるように、裏地120Bは、たとえば、上部A1においてV字型に作業着本体110に縫い付けられてもよい。これにより、開口部130から導入された冷風は、真上には向かわず、作業着100Bの着用者の脇側により向かいやすくなる。なお、裏地120のうち、作業着本体110に縫い付けられる領域が外周端部に限定されないのは、上記実施の形態2についても同様である。
【0064】
(3−8)
上記実施の形態1,2においては、作業着100,100Aの内側に裏地120,120Aがそれぞれ設けられた。しかしながら、裏地120,120Aは、必ずしも必要ではない。作業着100,100Aは、裏地120,120Aがそれぞれ設けられていなくても、開口部130から冷風又は熱風が導入されることによって、作業着100,100A内の温度を調節可能である。
【0065】
たとえば、作業着100から裏地120が取り除かれると、作業着100は、作業着本体110のみから構成されることとなる。この場合には、圧縮空気分離装置200の冷風噴出口212及びノズル220、又は、熱風噴出口214が開口部130に挿入され、圧縮空気分離装置200から噴出された冷風又は熱風は、作業着内に導入される。これによって、作業着内の温度調節が可能となる。なお、上記実施の形態1,2と同様、圧縮空気分離装置200は、作業着の背面において、保持部140,142によって保持される。
【0066】
図11は、裏地120が取り外された作業着100内の温度変化を示す図である。ここでは、開口部130に、圧縮空気分離装置200の冷風噴出口212及びノズル220が挿入されている。図11において、横軸は時間(秒)を示し、縦軸は温度(℃)を示す。破線は前身の温度変化を示し、実線は後身の温度変化を示す。図11に示されるように、この作業着においては、前身の温度もある程度下がっている一方、後身の温度が大幅に下がっている。したがって、この作業着によれば、前身においてもある程度温度を調節することができ、後身においては大幅に温度を調節することができる。
【符号の説明】
【0067】
10 作業者冷却システム、100,100A,100B 作業着、110 作業着本体、120,120A,120B 裏地、130,150,150A,152,152A 開口部、140,142 保持部、140A,142A ループ、140B,142B フック、200 圧縮空気分離装置、210 圧縮空気分離装置本体、212 冷風噴出口、214 熱風噴出口、216 ホース、220 ノズル、A1 上部、P1,P2,P3,P4,P10,P12,P14 領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11