特許第6976142号(P6976142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6976142車両運動制御装置、その方法、そのプログラム、及びそのシステム、並びに、目標軌道生成装置、その方法、そのプログラム、及びそのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976142
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】車両運動制御装置、その方法、そのプログラム、及びそのシステム、並びに、目標軌道生成装置、その方法、そのプログラム、及びそのシステム
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20211125BHJP
【FI】
   B62D6/00
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-216646(P2017-216646)
(22)【出願日】2017年11月9日
(65)【公開番号】特開2019-85048(P2019-85048A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 絢也
(72)【発明者】
【氏名】前田 健太
(72)【発明者】
【氏名】今村 政道
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−236512(JP,A)
【文献】 特開2017−165156(JP,A)
【文献】 特開2017−074806(JP,A)
【文献】 特開平01−141174(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/110732(WO,A1)
【文献】 特開2013−148948(JP,A)
【文献】 特開2017−056779(JP,A)
【文献】 特開2008−285066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車線変更時に車両に発生する横加速度を自動制御可能な車両において、
車線変更時に移動する横方向と同一方向の横加速度が発生するフェーズを車線変更一次操舵側、車線変更時に移動する横方向とは逆方向の横加速度が発生するフェーズを車線変更二次操舵側としたとき、
車線変更一次操舵時において、発生する最大横加速度絶対値が所定時間一定となるよう、かつ、車線変更二次操舵時に発生する最大横加速度絶対値が、車線変更一次操舵時に発生する最大横加速度絶対値以上となるよう、前記車両の横運動制御を行うことを特徴とする車両運動制御装置。
【請求項2】
前記車線変更一次操舵時において、発生する最大横加速度絶対値が一定となる時間を、発生する最大横加速度絶対値が大きくなるほど短くすることを特徴とする請求項1に記載の車両運動制御装置。
【請求項3】
前記車線変更二次操舵時に発生する最大横加速度絶対値は、前記車線変更一次操舵時に発生する最大横加速度絶対値の2倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の車両運動制御装置。
【請求項4】
前記車線変更時の操舵開始から前記車線変更二次操舵時に発生する横加速度絶対値が最大となる区間において、
前記車両の速度が一定もしくは減少するよう、前記車両の横運動制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両運動制御装置。
【請求項5】
前記車線変更一次操舵時において、走行路面における車両の旋回限界を推定することを特徴とする請求項1に記載の車両運動制御装置。
【請求項6】
車線変更時に車両に発生する横加速度を自動制御可能な車両において、
車線変更時に移動する横方向と同一方向の横加速度が発生するフェーズを車線変更一次操舵側、車線変更時に移動する横方向とは逆方向の横加速度が発生するフェーズを車線変更二次操舵側としたとき、
車線変更一次操舵時において、発生する最大横加速度絶対値が所定時間一定となるよう、かつ、車線変更二次操舵時に発生する最大操舵角絶対値が、車線変更一次操舵時に発生する最大操舵角絶対値以上となるよう、前記車両の操舵制御を行うことを特徴とする車両運動制御装置。
【請求項7】
車線変更時に車両に発生する横加速度を自動制御可能な車両において、
車線変更時に移動する横方向と同一方向の横加速度が発生するフェーズを車線変更一次操舵側、車線変更時に移動する横方向とは逆方向の横加速度が発生するフェーズを車線変更二次操舵側としたとき、
車線変更一次操舵時において、発生する最大横加速度絶対値が所定時間一定となるよう、かつ、
前記車両の速度が一定、かつ、
車線変更二次操舵時の走行軌道の曲率最大値が、車線変更一次操舵時の走行軌道の曲率最大値以上となるよう、前記車両の走行軌道制御を行うことを特徴とする車両運動制御装置。
【請求項8】
車線変更時に車両に発生する横加速度を自動制御可能な車両において、
車線変更時に移動する横方向と同一方向の横加速度が発生するフェーズを車線変更一次操舵側、車線変更時に移動する横方向とは逆方向の横加速度が発生するフェーズを車線変更二次操舵側としたとき、
車線変更一次操舵時において、発生する最大横加速度絶対値が所定時間一定となるよう、かつ、車線変更二次操舵時に発生する最大横加速度絶対値が、車線変更一次操舵時に発生する最大横加速度絶対値以上となるよう、前記車両の横運動制御を行うことを特徴とする車両運動制御方法。
【請求項9】
車線変更時に車両に発生する横加速度を自動制御可能な車両において、
車線変更時に移動する横方向と同一方向の横加速度が発生するフェーズを車線変更一次操舵側、車線変更時に移動する横方向とは逆方向の横加速度が発生するフェーズを車線変更二次操舵側としたとき、
車線変更一次操舵時において、発生する最大横加速度絶対値が所定時間一定となるよう、かつ、車線変更二次操舵時に発生する最大横加速度絶対値が、車線変更一次操舵時に発生する最大横加速度絶対値以上となるよう、前記車両の横運動制御を行うことを特徴とする車両運動制御プログラム。
【請求項10】
車線変更時に車両に発生する横加速度を自動制御する車両運動制御演算部、車両を走行させるための目標軌道を取得する目標軌道取得部、および、車両の運動状態を取得する車両運動状態取得部を備え、
車線変更時に移動する横方向と同一方向の横加速度が発生するフェーズを車線変更一次操舵側、車線変更時に移動する横方向とは逆方向の横加速度が発生するフェーズを車線変更二次操舵側としたとき、
車線変更一次操舵時において、発生する最大横加速度絶対値が所定時間一定となるよう、かつ、車線変更二次操舵時に発生する最大横加速度絶対値が、車線変更一次操舵時に発生する最大横加速度絶対値以上となるよう、前記車両の横運動制御を行うことを特徴とする車両運動制御システム。
【請求項11】
車線変更時に車両に発生する横加速度を自動制御可能な車両において、
車線変更時に移動する横方向と同一方向の横加速度が発生するフェーズを車線変更一次操舵側、車線変更時に移動する横方向とは逆方向の横加速度が発生するフェーズを車線変更二次操舵側としたとき、
車線変更一次操舵時において、発生する最大横加速度絶対値が所定時間一定となる、かつ、車線変更二次操舵時に発生する最大横加速度絶対値が、車線変更一次操舵時に発生する最大横加速度絶対値以上となる目標軌道を生成することを特徴とする目標軌道生成装置。
【請求項12】
前記車両の速度が一定、かつ、
車線変更二次操舵時の走行軌道の曲率最大値が、車線変更一次操舵時の走行軌道の曲率最大値以上となる目標軌道を生成することを特徴とする請求項11に記載の目標軌道生成装置。
【請求項13】
車線変更時に車両に発生する横加速度を自動制御可能な車両において、
車線変更時に移動する横方向と同一方向の横加速度が発生するフェーズを車線変更一次操舵側、車線変更時に移動する横方向とは逆方向の横加速度が発生するフェーズを車線変更二次操舵側としたとき、
車線変更一次操舵時において、発生する最大横加速度絶対値が所定時間一定となる、かつ、車線変更二次操舵時に発生する最大横加速度絶対値が、車線変更一次操舵時に発生する最大横加速度絶対値以上となる目標軌道を生成することを特徴とする目標軌道生成方法。
【請求項14】
車線変更時に車両に発生する横加速度を自動制御可能な車両において、
車線変更時に移動する横方向と同一方向の横加速度が発生するフェーズを車線変更一次操舵側、車線変更時に移動する横方向とは逆方向の横加速度が発生するフェーズを車線変更二次操舵側としたとき、
車線変更一次操舵時において、発生する最大横加速度絶対値が所定時間一定となる、かつ、車線変更二次操舵時に発生する最大横加速度絶対値が、車線変更一次操舵時に発生する最大横加速度絶対値以上となる目標軌道を生成することを特徴とする目標軌道生成プログラム。
【請求項15】
車線変更時に車両を走行させるための目標軌道を作成する軌道演算部、および、車両に発生する横加速度を自動制御する走行制御演算部を備え、
車線変更時に移動する横方向と同一方向の横加速度が発生するフェーズを車線変更一次操舵側、車線変更時に移動する横方向とは逆方向の横加速度が発生するフェーズを車線変更二次操舵側としたとき、
車線変更一次操舵時において、発生する最大横加速度絶対値が所定時間一定となる、かつ、車線変更二次操舵時に発生する最大横加速度絶対値が、車線変更一次操舵時に発生する最大横加速度絶対値以上となる目標軌道を生成することを特徴とする目標軌道生成システム。
【請求項16】
前記車線変更一次操舵時から前記車線変更二次操舵時に移行する時に発生する最大横加加速度絶対値が、前記車線変更時の操舵開始から前記車線変更一次操舵時において最大横加速度絶対値が発生するまでに発生する最大横加加速度絶対値以上となるよう、前記車両の横運動制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両運動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の走行を制御する車両運動制御装置、その方法、そのプログラム、及びそのシステム、並びに、車両が走行する目標軌道を生成する目標軌道生成装置、その方法、そのプログラム、及びそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車におけるADAS(先進運転支援システム)及び自動運転関連技術の開発が、近年、急速に進められている。運転操作の一部を自動化する機能として、アダプティブクルーズコントロール、レーンキープアシストシステム、緊急自動ブレーキ等が実用化に至っている。また、自動化の高まりとともに、隣接車線への自動車線変更システムが提案されている。
【0003】
前述の自動車線変更システムのための技術として、例えば特許文献1では、カメラで撮影した画像に基づいて隣接車線の区画線の位置を検出する検出装置が開示されている。
【0004】
また、例えば特許文献2では、車線変更時の急な操舵を伴う操舵制御を抑制する方法として、最大横加速度が所定の基準横加速度よりも大きい場合、最大横加速度が基準横加速度よりも小さくなるよう実走行軌跡を変形させる方法が開示されている。
【0005】
また、前述の自動車線変更システムに直接関連するものではないが、道路形状に沿った自動運転等において車両の加減速と横運動を関連付けた制御技術として、特許文献3では、操舵により発生する横加加速度(横加速度の時間変化ないし変化率)に基づく加減速の制御方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−148948号公報
【特許文献2】特開2017−56779号公報
【特許文献3】特開2008−285066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に所載のように予め設定された基準横加速度以下となるような条件であっても、車両に発生可能な横加速度は路面状況や車両等によって異なり、車線変更時に移動する横方向と同一方向の横加速度発生フェーズで発生した横加速度による挙動の乱れが発生する可能性がある。また、それを回避するために基準横加速度を過度に小さな値に設定した場合、車線変更に要する走行領域を広く確保する必要があり、車線変更が実施できないケースが頻発する可能性がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、自動車線変更時の車両の不安定挙動の発生を抑えながら、走行状況に適合するようにした車両運動制御装置、その方法、そのプログラム、及びそのシステム、並びに、目標軌道生成装置、その方法、そのプログラム、及びそのシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両運動制御装置等は、車線変更時に車両に発生する横加速度を自動制御可能な車両において、車線変更時に移動する横方向と同一方向の横加速度が発生するフェーズを車線変更一次操舵側、車線変更時に移動する横方向とは逆方向の横加速度が発生するフェーズを車線変更二次操舵側としたとき、車線変更二次操舵時に発生する最大横加速度絶対値が、車線変更一次操舵時に発生する最大横加速度絶対値以上となるよう、前記車両の横運動制御を行うことを特徴とする。
【0010】
また、車線変更二次操舵時の走行軌道の曲率最大値が、車線変更一次操舵時の走行軌道の曲率最大値以上となるよう、車線変更時の目標軌道を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば一次操舵側で発生する横加速度を抑制しながら、一次操舵中の車両の旋回応答性に基づいて、旋回限界を推定でき、前記旋回限界範囲内で二次操舵側の横加速度を発生させることで、一次操舵側での車両挙動の乱れを抑制しながら、過度に横加速度を抑制することなく車線変更することができ、乗員の快適性を向上する効果も期待できる。
【0012】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車線変更の概念図である。
図2】車線変更における横加速度を示した図である。
図3】前方注視点と車両位置の関係を示した図である。
図4】本発明に係る車両運動制御装置の第1実施形態を搭載した車両の概念図である。
図5】本発明に係る車両運動制御装置の第1実施形態の構成図である。
図6】本発明に係る車両運動制御装置の第1実施形態の制御フローチャート図である。
図7】本発明に係る車両運動制御装置の第2実施形態の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
[実施形態の概要説明]
具体的な実施形態の説明に先立ち、本発明の理解が容易になるよう、まず、図1図3を用いて、車線変更における横加速度について説明する。なお、本例では、車両の重心点を原点とし、車両の前後方向をx、それに直角な方向(車両の横(左右)方向)をyとした場合、x方向の加速度を前後加速度、y方向の加速度を横加速度とする。また、前後加速度は、車両前方向を正、すなわち車両が前方向に対して進行している際、その速度を増加させる前後加速度を正とする。また、横加速度は、車両が前方向に対して進行している際、左回り(反時計回り)旋回時に発生する横加速度を正とし、逆方向を負とする。また、左回りの旋回半径を正とし、その逆数を車両走行曲率とする。同様に、目標軌道に関しても、左回りの旋回半径を正とし、その逆数を目標軌道曲率とする。また、左回り(反時計回り)方向の操舵角を正とする。
【0016】
図1は、sideA、sideB間の距離(横方向の距離)deltaY内で距離(前後方向の距離)deltaXまでに初期速度V0から時刻t=0にて車線変更を開始し、時刻t=T4にて車線変更を終了する車両の概念図である。
【0017】
図2は、車線変更時に当該車両に発生させる横加速度の概念図である。
【0018】
本説明では、車線変更を以下4つの区間(P1〜P4)に分け、それぞれの区間の終了時刻をT1,T2,T3,T4とする。
P1:切込み開始(操舵開始)区間
P2:切込み後保持区間
P3:切返し区間
P4:切返し終了(操舵終了)区間
【0019】
また、切込み時に発生させる横加速度ピーク値(最大値)をGytgt、切返し時に発生させる横加速度ピーク値(最大値)をGytgtに係数kを積算して符合を反転させた-kGytgtとする。ここでP1〜P4における横加速度Gyは、例えば以下の式(1)〜(4)で与えることができる。
【数1】
【0020】
この時、t=0,T1,T2,T3,T4における横移動速度Vyを0,Vy1,Vy2,Vy3,Vy4、横移動量Yを0,Y1,Y2,Y3,Y4とすると、P1〜P4における横移動速度Vy、横移動量Yはそれぞれ以下の式(5)〜(12)で与えられる。
【数2】
【0021】
ここで前記のVy1,Vy2,Vy3,Vy4,Y1,Y2,Y3,Y4はそれぞれ以下の式(13)〜(20)で与えられる。
【数3】
【0022】
ここでT1からT2までの時間をΔT2とすると、T1,T2,T3,T4は、ω1,ΔT23,ω4を用いて以下の式(21)〜(24)で与えられる。
【数4】
【0023】
車線変更の最終的な目標横移動距離をYtgtとし、T4で車線変更が完了しているとすると、Vy4,Y4はそれぞれ以下の式(25)、(26)で与えられる。
【数5】
【0024】
前記の式(18)〜(26)の関係から、以下の2つの方程式(27)、(28)が得られる。
【数6】
【0025】
一次操舵側(車線変更時に当該車両は移動する横方向と同一方向の横加速度が発生するフェーズ)の横加速度ピーク値Gytgt、目標横移動距離Ytgtが予め与えられるとすると、式(27)、(28)における未知数は以下の5つとなり、これら未知数のうち3つを設定すると、残り2つは一意に決定されることになる。
ω1:切込み開始時の横加速度変化を決定
ΔT2:切込みから切返しまでの保持時間を決定
ω3:切返しの横加速度変化を決定
ω4:切返し終了し、直進状態に戻すまでの横加速度変化を決定
k:切返し時の横加速度ピークを決定
【0026】
たとえばω1,ΔT23に関しては設定定数とし、kが1以上となるよう各定数を設定し、ω4およびkを算出する。これにより、車線変更における目標横加速度Gyが作成できる。また、ΔT2に関しては、車両の横移動量に基づいて決定してもよい。
【0027】
図3に示すように、予め設定される前方注視時間Tpvを用い、自車両からLpv (= Tpv・V0)の位置に前方注視点を設置すると、時刻T2における前方注視点と初期車線からの距離YpvT2は、時刻T2における自車両の横移動量Y2およびヨー角θ2による移動距離Yθ2から、以下の式(29)で与えられる。
【数7】
【0028】
なお、Yθ2は以下の式(30)で与えられる。
【数8】
【0029】
初期車線から目標車線までの距離(目標横移動量Ytgt)でYpvT2を正規化した値をNYpvT2とすると、NYpvT2は初期車線から目標車線までの間において、前方注視点がどの割合に位置しているかを意味している。ΔT2の設定方法として、例えばYpvT2が目標横移動量Ytgtの所定割合(以下αYtgt)に達するまでの時間と考え、ΔT2そのものを事前に設定するのではなく、目標横移動量Ytgtの所定割合αYtgtを設定し、YpvT2がその割合に達するまでの時間とすることで、車線幅(車線変更幅)が変わった場合であっても、少ない定数設定で車線変更時の横加速度を設定できる。
【0030】
なお、本説明は、本発明における横加速度制御の作成方法の一例を示すものであり、本発明の横加速度制御が本方法にのみ限定されるものではない。
【0031】
このような加速度(横加速度、もしくは、前後加速度および横加速度)制御を行うことにより、自動走行制御による車線変更時の車両の不安定挙動の発生を抑制でき、乗員の快適性を向上させることができる。
【0032】
[第1実施形態]
以下、図4図6を用いて、本発明の第1実施形態による車両運動制御装置の構成及び動作について説明する。
【0033】
最初に、図4を用いて、本発明の第1実施形態による車両運動制御装置を搭載した車両および当該車両運動制御装置の構成について説明する。
【0034】
図4は、本発明の第1実施形態による車両運動制御装置を搭載した車両の構成図を示したものである。
【0035】
本実施形態の車両運動制御装置1は車両20に搭載されるものであり、車両運動状態情報を取得するセンサ(加速度センサ2、ジャイロセンサ3、車輪速センサ8)、ドライバ操作情報を取得するセンサ(操舵角センサ5、ブレーキペダルセンサ17、アクセルペダルセンサ18)および自車両走行路情報を取得するセンサ(コース形状取得センサ6、自車両位置検出センサ9、外界情報検出センサ19)から得られる各種情報に基づいて、加速度制御に必要な演算を行い、その演算結果に基づいて、車両に発生する前後加速度および/もしくは横加速度を制御可能なアクチュエータ(ブレーキアクチュエータ11、駆動アクチュエータ13、舵角制御アクチュエータ16)の駆動制御を行う各制御ユニット(ブレーキ制御ユニット10、駆動トルク制御ユニット12、舵角制御ユニット15)に通信ライン14を通じて制御指令値を送信する。
【0036】
ここで、前記車両運動状態情報を取得するセンサとして、車両速度、前後加速度、横加速度、ヨーレイトを取得できるセンサ、もしくは手段であればよく、上記センサ構成に限定するものではない。例えばグローバルポジショニングシステム(GPS)により得られる位置情報を微分することで、車両速度を取得してもよい。また、カメラのような画像取得センサを用いて車両のヨーレイト、前後加速度、横加速度を取得してもよい。また、前記車両運動制御装置1が直接センサの入力を持たなくともよい。例えば別な制御ユニット(例えばブレーキ制御ユニット10)から通信ライン14を通じて必要な情報を取得してもよい。
【0037】
ドライバ操作情報を取得するセンサとして、ドライバによるステアリングホイール4の操作量、図示していないブレーキペダルおよびアクセルペダルの操作量を取得できればよく、上述の車両運動状態情報の取得同様、前記車両運動制御装置1が直接センサの入力を持たなくともよい。例えば別な制御ユニット(例えばブレーキ制御ユニット10)から通信ライン14を通じて必要な情報を取得してもよい。
【0038】
自車両走行路情報を取得するセンサとして、グローバルポジショニングシステム(GPS)を自車両位置検出センサ9として用い、外界情報検出センサ19として、カメラやレーダ等、自車両周辺の障害物を検出して走行可能な領域を検出可能なセンサを用い、コース形状取得センサ6として、ナビゲーションシステムのような自車両の走行経路情報を取得できるものを利用できる。ここで、自車両走行路情報を取得するセンサとして、自車両の進行方向におけるコース形状および走行可能領域が取得できる手段であればよく、これらセンサに限定するものではない。例えばデータセンタや路上に設置された道路情報を送信する機器との通信により自車両前方のコース形状を取得する方法であってもよいし、カメラのような撮像手段により自車両前方もしくは周囲、またはその両方の画像を取得し、自車両前方のコース形状を取得する方法であってもよい。また、これら手段のいずれか、もしくはその組み合わせにより、自車両進行方向のコース形状を演算するユニットから通信ライン14を通じて取得する方法であってもよい。
【0039】
前記車両20に発生する前後加速度を制御可能な加減速アクチュエータ(ブレーキアクチュエータ11、駆動アクチュエータ13)は、タイヤ7と路面間に発生する力を制御することで当該車両20に発生する前後加速度を制御可能なアクチュエータであり、例えば、燃焼状態を制御することでタイヤ7にかかる制駆動トルクを制御し、車両20の前後加速度を制御可能な燃焼エンジン、もしくは電流を制御することでタイヤ7にかかる制駆動トルクを制御し、車両20の前後加速度を制御可能な電動モータ、もしくは動力を各車輪に伝達する際の変速比を変えることで車両20の前後加速度を制御可能な変速機、もしくは各車輪のブレーキパッドにブレーキディスクを押しつけることで車両20に前後加速度を発生させる摩擦ブレーキといった、前後加速度を制御可能な加減速アクチュエータを適用することができる。
【0040】
また、車両運動制御装置1は、記憶領域、演算処理能力、および信号の入出力手段等を有する演算装置を備えており、前記車両運動状態情報、前記ドライバ操作情報、前記自車両走行路情報により得られた各種情報から車両20に発生させる前後加速度指令値を演算し、前記前後加速度指令値となる前後加速度を発生し得る前記加減速アクチュエータを前後加速度発生手段として、前記加減速アクチュエータ(ブレーキアクチュエータ11、駆動アクチュエータ13)の駆動制御器(ブレーキ制御ユニット10、駆動トルク制御ユニット12)へ前記前後加速度指令値を送る。また、前記車両運動状態情報、前記ドライバ操作情報、前記自車両走行路情報により得られた各種情報から車両20に発生させる横運動指令値を演算し、前記横運動を発生し得る舵角制御アクチュエータ16を旋回運動発生手段として、前記舵角制御アクチュエータ16の駆動制御器(舵角制御ユニット15)へ前記横運動指令値としての舵角指令値を送る(詳細は後述)。
【0041】
ここで、車両運動制御装置1から送る信号は前後加速度そのものではなく、前記加減速アクチュエータによって前記前後加速度指令値を実現し得る信号であればよい。同様に、車両運動制御装置1から送る信号は舵角そのものではなく、前記舵角制御アクチュエータ16により、舵角指令値を実現し得る信号であればよい。
【0042】
例えば、前記加減速アクチュエータが燃焼エンジンである場合、前記前後加速度指令値を実現し得る制駆動トルク指令値を駆動トルク制御ユニット12へ送る。また、駆動トルク制御ユニット12を介さず、前後加速度指令値を実現する燃焼エンジンの駆動信号を、燃焼エンジンの制御アクチュエータに直接送ってもよい。また、油圧によりブレーキパッドをブレーキディスクに押し付ける油圧式摩擦ブレーキを用いる場合、前後加速度指令値を実現する油圧指令値をブレーキ制御ユニット10へ送る。また、ブレーキ制御ユニット10を介さず、前後加速度指令値を実現する油圧式摩擦ブレーキ駆動アクチュエータの駆動信号を油圧式摩擦ブレーキ駆動アクチュエータに直接送ってもよい。
【0043】
また、前後加速度指令値を実現する際に、前後加速度指令値に応じて駆動制御を行う前記加減速アクチュエータを変更してもよい。
【0044】
例えば、前記燃焼エンジンと油圧式摩擦ブレーキを前記加減速アクチュエータとして持つ場合、前記前後加速度指令値が前記燃焼エンジンの制駆動トルク制御により実現できる範囲であれば、前記燃焼エンジンを駆動制御し、前記前後加速度指令値が前記燃焼エンジンの制駆動トルク制御で実現できない範囲の負の値である場合、前記燃焼エンジンと合わせて油圧式摩擦ブレーキを駆動制御する。また、前記電動モータと前記燃焼エンジンを前記加減速アクチュエータとして持つ場合、前記前後加速度の時間変化が大きい場合は前記電動モータを駆動制御し、前記前後加速度の時間変化が小さい場合は前記燃焼エンジンを駆動制御するようにしてもよい。また、通常時は前記前後加速度指令値を電動モータにより駆動制御し、バッテリーの状態等により電動モータにより前後加速度指令を実現できない場合、他の加減速アクチュエータ(燃焼エンジン、油圧式摩擦ブレーキ等)を駆動制御するようにしてもよい。
【0045】
また、通信ライン14として、信号によって異なる通信ラインおよび通信プロトコルを用いてもよい。例えば大容量のデータをやり取りする必要のある自車両走行路情報を取得するセンサとの通信にイーサネットを用い、各アクチュエータとの通信にはController Area Network(CAN)を用いる構成であってもよい。
【0046】
図5は、本発明の第1実施形態による車両運動制御装置1の構成図を示したものである。
【0047】
図示するように、車両運動制御装置1は、目標軌道取得部1a、車両運動状態取得部1b、車両運動制御演算部1c、および制御指令送信部1dからなる。
【0048】
目標軌道取得部1aでは、前記自車両走行路情報、および車両運動状態情報から車両20を走行させるための目標軌道および走行可能領域を取得する。ここで、目標軌道の作成方法としては、自車両が走行するコース形状および障害物情報から目標軌道を作成する方法であってもよいし、データセンタとの通信により、自車両が走行可能な領域を取得し、その領域に基づいて作成する方法であってもよい。
【0049】
車両運動状態取得部1bでは、前記車両運動状態情報から車両20の運動状態(走行速度、旋回状態、ドライバ操作量等)を取得する。
【0050】
車両運動制御演算部1cでは、前記目標軌道取得部1aおよび車両運動状態取得部1bにより得られた情報に基づいて、前記速度制御による前後加速度指令値、もしくは前記速度制御による前後加速度指令値と前記舵角制御による舵角指令値の両方を演算し、その演算結果を制御指令送信部1dに送る。
【0051】
制御指令送信部1dでは、前記車両運動制御演算部1cにより作成された前後加速度指令値、もしくは前後加速度指令値と舵角指令値の両方に基づいて、前記前後加速度および/もしくはタイヤ実舵角を制御可能なアクチュエータ(ブレーキアクチュエータ11、駆動アクチュエータ13、舵角制御アクチュエータ16)の駆動制御を行う各制御ユニット(ブレーキ制御ユニット10、駆動トルク制御ユニット12、舵角制御ユニット15)に制御指令値を送る。
【0052】
図6は、第1実施形態の前記車両運動制御装置1における制御フローチャートを示したものである。
【0053】
S000では、上述のように目標軌道、走行可能範囲、車速制御範囲、車両運動状態を取得する。ここで、目標軌道は、図1、2に示すように、車線変更可能な領域(deltaX、deltaY)、車速制御範囲、および目標横移動距離Ytgtを与える方法であってもよいし、所定進行距離位置における目標横位置を与える方法であってもよい。
【0054】
S050では、一次操舵期間において、車両運動状態から当該車両20の旋回限界を推定する。例えば、車線変更開始時の操舵入力に対する(走行路面における)車両の旋回応答性が、予め設定された条件下での応答性(例えば乾燥路面における同入力に対する応答)よりも悪い場合、応答性の低下度合いに応じて旋回限界を低く設定する。
【0055】
S100では、目標軌道、車速制御範囲、車両運動状態から前後加速度を演算する。例えば車両速度が車速制御範囲を超えて高い場合、車速制御範囲に収まるよう負の前後加速度指令値を演算する。
【0056】
S200では、目標軌道、車両運動状態、旋回限界から横加速度を演算する。横加速度の演算は、例えば上述の図1図3で示した方法により行われる。具体的には、一次操舵側(車線変更時に移動する横方向と同一方向の横加速度発生フェーズ)に発生する最大横加速度(絶対値)に対し、二次操舵側(車線変更時に移動する方向と逆の横方向の横加速度発生フェーズ)に発生する最大横加速度(絶対値)が、同等以上となるよう、横加速度を演算(制御)する。なお、ここで、例えば車線幅(車線変更幅)が同等であるとすると、一次操舵期間において、発生する横加速度が一定となる時間(図2のP2:切込み後保持区間)は、発生する横加速度が大きくなるほど短くなる。ただし、この発生する横加速度が一定となる時間と、発生する横加速度との関係は、車線幅(車線変更幅)に応じて変わる。
【0057】
ここで、Gtgtの他、設定定数の初期値としては、予め設定される値であってもよいし、乗員の嗜好に応じて変更される値であってもよい。
【0058】
S300では、横運動に基づいた前後加速度を演算する。この横運動に基づいた前後加速度の演算方法としては、例えば上記特許文献3に示す横加加速度に基づいた前後加速度制御が挙げられる。
【0059】
S400では、車両運動状態、演算された横加速度、前後加速度に基づいて、車両20の走行軌道、車速の推定を行う。例えば、この車線変更(横運動)制御区間、特に、車線変更時の操舵開始から二次操舵時に発生する横加速度(絶対値)が最大となる(ピークとなる)区間(図2のP3:切返し区間までの区間)において、車速が一定もしくは減少するよう、車速の推定を行う。
【0060】
S500では、推定された走行軌道、車速が制御可能範囲内か否か、および横加速度が旋回限界範囲内か否かを判定する。ここで、制御範囲外と判定された場合、S600に進み、制御範囲内と判定された場合、S700へと進む。
【0061】
S600では、前後加速度、横加速度の補正を行う。例えば、横加速度の補正においては、式(1)〜(28)に示した各種設定変数を変更することで、S400にて走行軌道を変化させる。また、上記特許文献3に示す横加加速度に基づいた前後加速度制御の制御ゲインを変更することで、S400にて走行軌道および車速を変化させる。その後、再び、S500にて、走行軌道、車速が制御可能範囲内か否か、および横加速度が旋回限界範囲内か否かを判定する。ここで、二次操舵側の最大横加速度(絶対値)は一次操舵側の最大横加速度(絶対値)以上、かつ旋回限界範囲内の値となるよう、各設定定数は設定されるが、一次操舵側と二次操舵側の横加速度差が過大となり、乗員の乗り心地が悪化しないよう、旋回限界範囲内であっても二次操舵側の最大横加速度(絶対値)は一次操舵側の最大横加速度(絶対値)の2倍以下の値とするのが良い。
【0062】
S700では、前記前後加速度指令値、横加速度指令値に基づいて、各アクチュエータの制御指令値を演算して送信する。例えば、燃焼エンジンを用いて前後加速度を制御し、電動パワーステアリングを用いてヨーモーメント(横加速度)を制御する場合、前記前後加速度を車両に発生させる制駆動トルク指令値を燃焼エンジンの制御コントローラに送り、前記横加速度を車両に発生させる舵角指令値を電動パワーステアリングの制御コントローラに送る。
【0063】
ここで、横加速度指令値に基づいて舵角指令値を作成する方法について述べたが、車線変更時の車両速度と横移動量から、舵角指令値を直接作成する方法であってもよい。例えば、予め作成された車両速度と横移動量の関係のマップを用い、一次操舵側の最大操舵角絶対値に対して二次操舵側の最大操舵角絶対値が同等以上となるよう、車両20の操舵角を制御する方法であってもよい。
【0064】
以上のように、本第1実施形態では、一次操舵側で発生する横加速度を抑制しながら、一次操舵中(車線変更開始側)の車両20の旋回応答性に基づいて、旋回限界を推定し、前記旋回限界範囲内で二次操舵側の横加速度を発生させることで、一次操舵側での車両挙動の乱れを抑制しながら、過度に横加速度を抑制することなく車線変更することができる。また、二次操舵側では乗員が横加速度発生下での状態となっており、直進状態から横運動に遷移する一次操舵側に対し、二次操舵側の横加速度が多少大きな値となっても、乗員の快適性を著しく損なうことはないと考えられる。
【0065】
[第2実施形態]
次に、図7を用いて、本発明の第2実施形態による車両運動制御装置(目標軌道生成装置)の構成及び動作について説明する。
【0066】
図7は、本発明の第2実施形態による車両運動制御装置(目標軌道生成装置)1Aの構成図を示したものである。なお、図7に示す例では、車両運動制御装置(目標軌道生成装置)1Aは車両20の外部に備えられているが、上記第1実施形態と同様、車両20内に配備してもよい。
【0067】
本実施形態では、車両運動制御装置1Aは、記憶領域、演算処理能力、および信号の入出力手段等を有する複数の演算装置を備えており、主に、軌道演算部1Aa、および走行制御演算部1Abを備える。
【0068】
軌道演算部1Aaでは、前記コース形状、前記外界情報、前記自車両位置情報、および前記車両運動状態情報から、車両20の目標軌道および目標車速を作成する。
【0069】
走行制御演算部1Abでは、前記目標軌道、目標車速および前記車両運動状態情報から、車両20に発生させる横運動指令値、もしくは横運動指令値と前後加速度指令値の両方を演算し、前記前後加速度指令値となる前後加速度を発生し得る前記加減速アクチュエータを前後加速度発生手段として、前記加減速アクチュエータ(ブレーキアクチュエータ11、駆動アクチュエータ13)の駆動制御器(ブレーキ制御ユニット10、駆動トルク制御ユニット12)へ前記前後加速度指令値を送り、車両20に発生させる前記横運動指令値を発生し得る舵角制御アクチュエータ16を旋回運動発生手段として、前記舵角制御アクチュエータ16の駆動制御器(舵角制御ユニット15)へ前記横運動指令値としての舵角指令値を送る。
【0070】
詳しくは、前記軌道演算部1Aaは、前記コース形状、前記外界情報、前記自車両位置情報、および前記車両運動状態情報から目標軌道および目標車速を作成する際、二次操舵側で車両20に発生する最大横加速度絶対値が一次操舵側で車両20に発生する最大横加速度絶対値以上となるよう(図2参照)、目標軌道および目標車速を作成する。ここで、例えば、目標車速が略一定であれば、二次操舵側の目標軌道(走行軌道)の曲率最大値が一次操舵側の目標軌道(走行軌道)の曲率最大値以上となる(言い換えれば、一次操舵側における走行軌道の曲率最大値に対し、二次操舵側における走行軌道の曲率最大値が、同等以上となる)よう、車線変更時の目標軌道が作成される。
【0071】
前記走行制御演算部1Abは、前記したように、軌道演算部1Aaで作成された目標軌道および目標車速を実現するために、車両20に発生させる横運動指令値、もしくは横運動指令値と前後加速度指令値の両方を演算し、前記前後加速度指令値となる前後加速度を発生し得る前記加減速アクチュエータを前後加速度発生手段として、前記加減速アクチュエータ(ブレーキアクチュエータ11、駆動アクチュエータ13)の駆動制御器(ブレーキ制御ユニット10、駆動トルク制御ユニット12)へ前記前後加速度指令値を送り、車両20に発生させる前記横運動指令値を発生し得る舵角制御アクチュエータ16を旋回運動発生手段として、前記舵角制御アクチュエータ16の駆動制御器(舵角制御ユニット15)へ前記横運動指令値としての舵角指令値を送る。
【0072】
以上のように、本第2実施形態では、車両運動制御装置(目標軌道生成装置)1Aにて目標軌道を生成する際に、二次操舵側で車両20に発生する最大横加速度絶対値が一次操舵側で車両20に発生する最大横加速度絶対値以上となるよう、目標軌道および目標車速を作成することで、走行可能範囲内を走行可能、かつ、車両20に発生する横加速度が二次操舵側で車両20に発生する最大横加速度絶対値が一次操舵側で車両20に発生する最大横加速度絶対値以上となるよう制御できる。そのため、上記第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、走行制御演算部1Ab側の演算負荷を低減でき、また、軌道演算装置(軌道演算部1Aa)を他の走行制御演算装置(走行制御演算部1Ab)と組み合わせた制御も実現できる。
【0073】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形形態が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0074】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0075】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 : 車両運動制御装置(第1実施形態)
1A: 車両運動制御装置(目標軌道生成装置)(第2実施形態)
1a: 目標軌道取得部
1b: 車両運動状態取得部
1c: 車両運動制御演算部
1d: 制御指令送信部
2 : 加速度センサ
3 : ジャイロセンサ
4 : ステアリングホイール
5 : 操舵角センサ
6 : コース形状取得センサ
7 : タイヤ
8 : 車輪速センサ
9 : 自車両位置検出センサ
10 : ブレーキ制御ユニット
11 : ブレーキアクチュエータ
12 : 駆動トルク制御ユニット
13 : 駆動アクチュエータ
14 : 通信ライン
15 : 舵角制御ユニット
16 : 舵角制御アクチュエータ
17 : ブレーキペダルセンサ
18 : アクセルペダルセンサ
19 : 外界情報検出センサ
20 : 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7