(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記自車位置が前記旋回走行経路における旋回内側に存在している場合に、前記操舵量制限部による操舵量の制限が有効となり、前記自車位置が前記旋回走行経路における旋回外側に存在している場合には、前記操舵量制限部による操舵量の制限が無効となる請求項2に記載の自動操舵システム。
前記操舵走行装置は、それぞれ独立して速度調整可能な左走行ユニットと右走行ユニットから構成され、前記操舵量は前記左走行ユニットと前記右走行ユニットとの速度差である請求項1から4のいずれか一項に記載の自動操舵システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1による作業車では、検出方位と目標方位とのずれが大きくなった場合、そのずれを解消するために大きな操舵角で操向制御が行われる。このため、操舵角を切り過ぎた場合には、逆方向に大きく切り戻す操向制御が行われることで、制御オーバーシュートが繰り返されて、スムーズな旋回走行ができない不都合が生じる。特に、車体が方向転換するような旋回走行の場合には、刻々と目標方位が変化するので、制御オーバーシュートの度合が大きくなる傾向があり、スムーズな旋回走行が困難となる。
このような実情に鑑み、制御オーバーシュートが抑制される自動操舵システムが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による、設定された走行経路に沿って作業地を自動走行する作業車の自動操舵システムは、中立位置を基準とする左方向への操舵量に基づいて左旋回を行い、前記中立位置を基準とする右方向への操舵量に基づいて右旋回を行う操舵走行装置と、自車位置を算出する自車位置算出部と、前記走行経路と前記自車位置とから位置ずれを算出する位置ずれ算出部と、車体の向きを示す車体方位を算出する車体方位算出部と、前記走行経路と前記車体方位とから方位ずれを算出する方位ずれ算出部と、前記位置ずれと前記方位ずれとに基づいて、前記位置ずれ及び前記方位ずれを解消するための前記操舵量を算出する操舵量算出部と、前記操舵量算出部によって算出される前記操舵量を、現状の操舵量に基づいて制限する操舵量制限部とを備え
、前記操舵量制限部は、前記操舵量算出部に対して左右方向の一方方向から前記中立位置を超えて左右方向の他方向に至る操舵量を禁止する。
【0006】
この構成によれば、位置ずれ及び方位ずれを解消するために算出される操舵量は、操舵量制限部によって制限されるので、それらのずれを一挙に解消するような大きな操舵量で操舵されることは回避される。このため、制御オーバーシュートが繰り返されることは抑制され、旋回走行がスムーズに行われる。
加えて、この構成では、逆方向操舵、つまり左操舵状態から右操舵状態への操舵変更、または右操舵状態から左操舵状態への操舵変更は禁止されるので、車体が大きく振れるような過度な操舵が抑制され、方位ずれの解消がスムーズとなる。
【0007】
【0008】
本発明による、設定された走行経路に沿って作業地を自動走行する作業車の自動操舵システムは、中立位置を基準とする左方向への操舵量に基づいて左旋回を行い、前記中立位置を基準とする右方向への操舵量に基づいて右旋回を行う操舵走行装置と、自車位置を算出する自車位置算出部と、前記走行経路と前記自車位置とから位置ずれを算出する位置ずれ算出部と、車体の向きを示す車体方位を算出する車体方位算出部と、前記走行経路と前記車体方位とから方位ずれを算出する方位ずれ算出部と、前記位置ずれと前記方位ずれとに基づいて、前記位置ずれ及び前記方位ずれを解消するための前記操舵量を算出する操舵量算出部と、前記操舵量算出部によって算出される前記操舵量を、現状の操舵量に基づいて制限する操舵量制限部と、を備え、前記操舵量制限部による操舵量の制限は、前記走行経路が旋回走行経路の場合に有効となる。
この構成によれば、位置ずれ及び方位ずれを解消するために算出される操舵量は、操舵量制限部によって制限されるので、それらのずれを一挙に解消するような大きな操舵量で操舵されることは回避される。このため、制御オーバーシュートが繰り返されることは抑制され、旋回走行がスムーズに行われる。
また、車体の方向転換を伴うような旋回走行経路に沿って走行している場合、目標となる方位である走行経路の延び方向は、走行にともなって刻々と変化する。このため、従来のように、単にその時点での方位ずれを解消するために算出された操舵量では、直進走行に比べて、制御オーバーシュートの度合が大きくなり、スムーズな走行が困難となる。このことから、本発
明では、前記操舵量制限部による操舵量の制限は、前記走行経路が旋回走行経路の場合に有効となるように構成され、旋回走行における過度な操舵を抑制している。
【0009】
さらに、旋回走行に関して、旋回内側に車体が存在している場合には、旋回走行経路が車体に接近するように延びているので、操舵制御における制御オーバーシュートが大きくなりやすい。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記自車位置が前記旋回走行経路における旋回内側に存在している場合に、前記操舵量制限部による操舵量の制限が有効となり、前記自車位置が前記旋回走行経路における旋回外側に存在している場合には、前記操舵量制限部による操舵量の制限が無効となる構成されている。このように、操舵量が制限される走行状態を限定することで、適正な旋回性が得られる。
【0010】
本発明による、設定された走行経路に沿って作業地を自動走行する作業車の自動操舵システムは、中立位置を基準とする左方向への操舵量に基づいて左旋回を行い、前記中立位置を基準とする右方向への操舵量に基づいて右旋回を行う操舵走行装置と、自車位置を算出する自車位置算出部と、前記走行経路と前記自車位置とから位置ずれを算出する位置ずれ算出部と、車体の向きを示す車体方位を算出する車体方位算出部と、前記走行経路と前記車体方位とから方位ずれを算出する方位ずれ算出部と、前記位置ずれと前記方位ずれとに基づいて、前記位置ずれ及び前記方位ずれを解消するための前記操舵量を算出する操舵量算出部と、前記操舵量算出部によって算出される前記操舵量を、現状の操舵量に基づいて制限する操舵量制限部と、を備え、前記操舵量制限部による操舵量の制限を解除する制限解除部が備えられ、前記制限解除部は、前記操舵量の制限を解除すると同時に、車速低減指令を出力する。
この構成によれば、位置ずれ及び方位ずれを解消するために算出される操舵量は、操舵量制限部によって制限されるので、それらのずれを一挙に解消するような大きな操舵量で操舵されることは回避される。このため、制御オーバーシュートが繰り返されることは抑制され、旋回走行がスムーズに行われる。
また、滑りやすい走行面や凸凹の走行面等を走行する場合には、車体の位置ずれや方位ずれが突発的に生じるので、操舵量を制限すると、そのような位置ずれや方位ずれに対処することができない。そのような場合は、緊急避難的に車速を低下させるのが安定な走行にとっては好ましい。このことから、本発
明では、前記操舵量制限部による操舵量の制限を解除する制限解除部が備えられ、前記制限解除部は、前記操舵量の制限を解除すると同時に、車速低減指令を出力する。
【0011】
作業車の操舵走行装置には、操舵輪を用いて、操舵輪の操舵角を制御することで車体を操舵する方式と、左右独立して速度調整が可能な走行ユニット(車輪またはクローラ)を用い、左走行ユニットと右走行ユニットとの速度差で車体を操舵する方式とがある。後者の方式では、急激な車体の向きを変える操舵が可能であるが、それ故に、操舵制御が過剰になる傾向がある。このことから、上述したような操舵量の制限は後者の方式に適している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の自動操舵システムを採用し、自動走行可能である作業機の一例として、普通型のコンバインを取り上げて説明する。なお、本明細書では、特に断りがない限り、「前」(
図2に示す矢印Fの方向)は車体前後方向(走行方向)における前方を意味し、「後」(
図2に示す矢印Bの方向)は車体前後方向(走行方向)における後方を意味する。また、左右方向または横方向は、車体前後方向に直交する車体横断方向(車体幅方向)を意味する。「上」(
図1に示す矢印Uの方向)及び「下」(
図1に示す矢印Dの方向)は、車体の鉛直方向(垂直方向)での位置関係であり、地上高さにおける関係を示す。
【0014】
図1に示すように、このコンバインは、走行車体10、クローラ式の走行装置11、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14、収穫部H、搬送装置16、穀粒排出装置18、自車位置検出モジュール80を備えている。
【0015】
走行装置11は、走行車体10(以下単に車体10と称する)の下部に備えられている。コンバインは、走行装置11によって自走可能に構成されている。この走行装置11は、左右一対のクローラ機構(走行ユニット)から構成された操舵走行装置である。左のクローラ機構(左走行ユニット)のクローラ速度と右のクローラ機構(右走行ユニット)のクローラ速度とは独立して調整可能であり、この速度差の調整により車体10の走行方向での向きが変更される。運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11の上側に備えられ、車体10の上部を構成している。運転部12は、コンバインを運転する運転者やコンバインの作業を監視する監視者が搭乗可能である。通常、運転者と監視者とは兼務される。なお、運転者と監視者とが別人の場合、監視者は、コンバインの機外からコンバインの作業を監視していても良い。
【0016】
穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の後下部に連結されている。また、自車位置検出モジュール80は、運転部12の前上部に取り付けられている。
【0017】
収穫部Hは、コンバインにおける前部に備えられている。そして、搬送装置16は、収穫部Hの後側に接続されている。また、収穫部Hは、切断機構15及びリール17を有している。切断機構15は、圃場の植立穀稈を刈り取る。また、リール17は、回転駆動しながら収穫対象の植立穀稈を掻き込む。この構成により、収穫部Hは、圃場の穀物(農作物の一種)を収穫する。そして、コンバインは、収穫部Hによって圃場の穀物を収穫しながら走行装置11によって走行する作業走行が可能である。
【0018】
切断機構15により刈り取られた刈取穀稈は、搬送装置16によって脱穀装置13へ搬送される。脱穀装置13において、刈取穀稈は脱穀処理される。脱穀処理により得られた穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0019】
運転部12には、通信端末2が配置されている。本実施形態において、通信端末2は、運転部12に固定されている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、通信端末2は、運転部12に対して着脱可能に構成されていても良い。また、コンバインの機外に持ち出されても良い。
【0020】
図2に示すように、このコンバインは、圃場において設定された走行経路に沿って自動走行する。このためには、自車位置が必要である。自車位置検出モジュール80には、衛星航法モジュール81と慣性航法モジュール82とが含まれている。衛星航法モジュール81は、人工衛星GSからのGNSS(global navigation satellite system)信号(GPS信号を含む)を受信して、自車位置を算出するための測位データを出力する。慣性航法モジュール82は、ジャイロ加速度センサ及び磁気方位センサを組み込んでおり、瞬時の走行方向を示す位置ベクトルを出力する。慣性航法モジュール82は、衛星航法モジュール81による自車位置算出を補完するために用いられる。慣性航法モジュール82は、衛星航法モジュール81とは別の場所に配置してもよい。
【0021】
このコンバインによって圃場での収穫作業を行う場合の手順は、以下に説明する通りである。
【0022】
まず、運転者兼監視者は、コンバインを手動で操作し、
図2に示すように、圃場内の外周部分において、圃場の境界線に沿って周回するように収穫走行を行う。これにより既刈地(既作業地)となった領域は、外周領域SAとして設定される。そして、外周領域SAの内側に未刈地(未作業地)のまま残された領域は、作業対象領域CAとして設定される。
図2は、外周領域SAと作業対象領域CAの一例を示している。
【0023】
また、このとき、外周領域SAの幅をある程度広く確保するために、運転者は、コンバインを3〜4周走行させる。この走行においては、コンバインが1周する毎に、コンバインの作業幅分だけ外周領域SAの幅が拡大する。最初の、3〜4周の走行が終わると、外周領域SAの幅は、コンバインの作業幅の3〜4倍程度の幅となる。
【0024】
外周領域SAは、作業対象領域CAにおいて収穫走行を行うときに、コンバインが方向転換するためのスペースとして利用される。また、外周領域SAは、収穫走行を一旦終えて、穀粒の排出場所へ移動する際や、燃料の補給場所へ移動する際等の移動用のスペースとしても利用される。
【0025】
なお、
図2に示す運搬車CVは、コンバインから排出された穀粒を収集し、運搬することができる。穀粒排出の際、コンバインは運搬車CVの近傍へ移動した後、穀粒排出装置18によって穀粒を運搬車CVへ排出する。
【0026】
外周領域SA及び作業対象領域CAが設定されると、
図3に示すように、作業対象領域CAにおける走行経路が算定される。算定された走行経路は、作業走行のパターンに基づいて順次設定され、設定された走行経路に沿って、コンバインが自動走行する。なお、このコンバインは、旋回走行のための旋回パターンとして、
図3に示すようなU字状の旋回走行経路に沿って方向転換するU旋回パターンと、
図4に示すような前後進を繰り返しながら方向転換するα旋回パターンと、
図5に示すような後進走行をともなってU旋回パターンよりも狭い領域でU旋回パターンと同様の方向転換をするスイッチバック旋回パターンとを有する。
図4のα旋回パターンでは、90°の切り返し旋回走行経路が示されている。この切り返し旋回走行では、その経路は、移行元走行経路L1から、前進走行経路ML1、後進走行経路ML2、前進走行経路ML3を経て、移行先走行経路L2に至る。
図5のスイッチバック旋回パターンでは直線往復走行での経路移行で用いられる180°の切り返し旋回走行が示されている。この切り返し旋回走行でも同様に、その経路は、移行元走行経路L1から、前進走行経路ML4、後進走行経路ML5、前進走行経路ML6を経て、移行先走行経路L2に至る。このような後進を含む旋回走行は、穀粒タンク14が満杯になって、作業対象領域CAの走行経路から離脱したコンバインが、運搬車CVに対して位置合わせする時などにも行われる。
【0027】
図6に、本発明による自動操舵システムを利用するコンバインの制御系が示されている。コンバインの制御系は、多数のECUと呼ばれる電子制御ユニットからなる制御ユニット5、及び、この制御ユニット5との間で車載LANなどの配線網を通じて信号通信(データ通信)を行う各種入出力機器から構成されている。
【0028】
報知デバイス62は、運転者等に作業走行状態や種々の警告を報知するためのデバイスであり、ブザー、ランプ、スピーカ、ディスプレイなどである。通信部66は、このコンバインの制御系が、通信端末2との間で、あるいは、遠隔地に設置されている管理コンピュータとの間でデータ交換するために用いられる。通信端末2には、圃場に立っている監視者、またはコンバイン乗り込んでいる運転者兼監視者が操作するタブレットコンピュータ、自宅や管理事務所に設置されているコンピュータなども含まれる。制御ユニット5は、この制御系の中核要素であり、複数のECUの集合体として示されている。自車位置検出モジュール80からの信号は、車載LANを通じて制御ユニット5に入力される。
【0029】
制御ユニット5は、入出力インタフェースとして、出力処理部503と入力処理部502とを備えている。出力処理部503は、機器ドライバ65を介して種々の動作機器70と接続している。動作機器70として、走行関係の機器である走行機器群71と作業関係の機器である作業機器群72とがある。走行機器群71には、例えば、操舵機器710、エンジン機器、変速機器、制動機器などが含まれている。作業機器群72には、収穫部H、脱穀装置13、搬送装置16、穀粒排出装置18における動力制御機器などが含まれている。
【0030】
入力処理部502には、走行状態センサ群63、作業状態センサ群64、走行操作ユニット90、などが接続されている。走行状態センサ群63には、エンジン回転数センサ、オーバーヒート検出センサ、ブレーキペダル位置検出センサ、変速位置検出センサ、操舵位置検出センサなどが含まれている。作業状態センサ群64には、収穫作業装置(収穫部H、脱穀装置13、搬送装置16、穀粒排出装置18)の駆動状態を検出するセンサ、穀稈や穀粒の状態を検出するセンサなどが含まれている。
【0031】
走行操作ユニット90は、運転者によって手動操作され、その操作信号が制御ユニット5に入力される操作具の総称である。走行操作ユニット90には、主変速操作具91、操舵操作具92、モード操作具93、自動開始操作具94、などが含まれている。手動走行モードでは、操舵操作具92を中立位置から左右に揺動操作することにより、左のクローラ機構のクローラ速度と右のクローラ機構のクローラ速度とが調整され、車体10の向きが変更される。モード操作具93は、自動運転が行われる自動走行モードと手動運転が行われる手動走行モードとを切り替えるための指令を制御ユニット5に与える機能を有する。自動開始操作具94は、自動走行を開始するための最終的な自動開始指令を制御ユニット5に与える機能を有する。なお、モード操作具93による操作とは無関係に、自動走行モードから手動走行モードへの移行が、ソフトウエアによって自動的に行われる場合もある。例えば、自動運転が不可能な状況が発生すると、制御ユニット5は、強制的に自動走行モードから手動走行モードへの移行を実行する。
【0032】
制御ユニット5には、報知部501、走行制御部51、作業制御部52、走行モード管理部53、走行経路設定部54、自車位置算出部55、車体方位算出部56、位置ずれ算出部57、方位ずれ算出部58、操舵量算出モジュール4が備えられている。報知部501は、制御ユニット5の各機能部からの指令等に基づいて報知データを生成し、報知デバイス62に与える。自車位置算出部55は、自車位置検出モジュール80から逐次送られてくる測位データに基づいて、予め設定されている車体10の特定箇所の地図座標(または圃場座標)である自車位置を算出する。車体方位算出部56は、自車位置算出部55で逐次算出される自車位置から、微小時間での走行軌跡を求めて車体10の走行方向での向きを示す車体方位を決定する。また、車体方位算出部56は、慣性航法モジュール82からの出力データに含まれている方位データに基づいて車体方位を決定することも可能である。
【0033】
走行制御部51は、エンジン制御機能、操舵制御機能、車速制御機能などを有し、走行機器群71に制御信号を与える。作業制御部52は、収穫作業装置(収穫部H、脱穀装置13、搬送装置16、穀粒排出装置18など)の動きを制御するために、作業機器群72に制御信号を与える。
【0034】
このコンバインは自動走行で収穫作業を行う自動運転と手動走行で収穫作業を行う手動運転との両方で走行可能である。このため、走行制御部51には、手動走行制御部511と自動走行制御部512とが含まれている。なお、自動運転を行う際には、自動走行モードが設定され、手動運転を行うためには手動走行モードが設定される。上述したように、走行モードの切り替えは、走行モード管理部53によって管理される。
【0035】
自動走行モードが設定されている場合、自動走行制御部512は、自動操舵及び停止を含む車速変更の制御信号を生成して、走行機器群71を制御する。自動操舵に関する制御信号は、走行経路設定部54によって設定された目標となる走行経路と、自車位置算出部55によって算出された自車位置との間の位置ずれ(方位ずれを含む)を解消するように生成される。車速変更に関する制御信号は、前もって設定された車速値に基づいて生成される。
【0036】
走行経路設定部54で用いられる走行経路は、走行経路設定部54が経路算出アルゴリズムによって自ら生成することもできるが、通信端末2や遠隔地の管理コンピュータ等で生成されたものをダウンロードしたものを用いることも可能である。
【0037】
手動走行モードが選択されている場合、運転者による操作に基づいて、手動走行制御部511が制御信号を生成し、走行機器群71を制御することで、手動運転が実現する。なお、走行経路設定部54によって算出された走行経路は、手動運転であっても、コンバインが当該走行経路に沿って走行するためのガイダンス目的で利用することができる。
【0038】
位置ずれ算出部57は、走行経路設定部54によって設定された走行経路と、自車位置算出部55によって算出された自車位置との間の距離である位置ずれを算出する。方位ずれ算出部58は、走行経路設定部54によって設定された走行経路の延び方向と、車体方位算出部56によって算出された車体方位との間の角度差を方位ずれとして算出する。なお、走行経路が旋回走行経路である場合、車体10から最も近い旋回走行経路上の点から引かれる接線の延び方向を仮想的な走行経路の延び方向とみなすことができる。
【0039】
操舵量算出モジュール4は、操舵量算出部41と、操舵量制限部42と、制限解除部43とを備えている。操舵量算出部41は、位置ずれ算出部57によって算出された位置ずれと、方位ずれ算出部58によって算出された方位ずれと、に基づいて、位置ずれ及び方位ずれを解消するための操舵量を算出する。操舵量制限部42は、操舵量算出部41によって算出される前記操舵量を、現状の操舵量に基づいて制限する。制限解除部43は、操舵量制限部42による操舵量の制限を解除する機能を有する。また、制限解除部43は、操舵量の制限を解除すると同時に、走行制御部51に対して車速を低減させる車速低減指令を出力する機能も有する。
【0040】
操舵量制限部42による操舵量の制限について説明するにあたって、ここで定義されている操舵量について
図7を用いて説明する。
まず、位置ずれは、車体10の基準点BP(車体中心、衛星測位用アンテナ位置など)から走行経路までの最短距離であり、
図7ではdで示されている。方位ずれは、基準点BPを通る車体前後方向線(
図7における一点鎖線)と走行経路とのなす角度であり、
図7では、θで示されている。
図7で太い矢印で示されているのが、クローラ方式の左走行ユニットと右走行ユニットとの間の速度差で作り出される操舵方向線であり、操舵量に対応する。例えば、左走行ユニットと右走行ユニットとが、操向輪であれば、操舵量は操舵角であり、操舵方向線は、操舵角によって規定される方向線である。
【0041】
操舵方向線が車体方位と一致している場合、その操舵量(操舵角)を中立操舵量:Snと称する。
図7では、白塗りの太い矢印が中立操舵量を示している操舵方向線である。操舵方向線が車体方位から左方向に傾いている場合、その操舵量(操舵角)は左旋回させる操舵量であり、左操舵量:SL()と称する。
図7では、斜線塗りの太い矢印が右操舵量を示している操舵方向線である。操舵方向線が車体方位から右方向に傾いている場合、その操舵量(操舵角)は右旋回させる操舵量であり、右操舵量:SR()と称する。操舵方向線が車体方位から左方向に傾いている場合、その操舵量(操舵角)は左旋回させる操舵量であり、左操舵量:SL()と称する。()内には、傾斜度(操舵角)を示す値が入る。例えば、SL(α)は、左にα°傾斜している操舵方向線(操舵角)を表し、SR(β)は、右にβ°傾斜している操舵方向線(操舵角)を表す。
【0042】
このような操舵量、SL(α)またはSR(β)またはSnは、位置ずれ:dと方位ずれ:θを入力パラメータとして導出される。つまり、この関係は、「G(d,θ)→SL(α)またはSR(β)またはSn」で示される。また、中立位置操舵量Snは、中立位置に対応する操舵量であり、いわゆる操舵角ゼロの状態を示している。
【0043】
この実施形態では、操舵量制限部42は、操舵量算出部41に対して左右方向の一方方向から中立位置(Sn)を超えて左右方向の他方向に至る操舵量を禁止する。例えば、現状の操舵量が、SL(α)とすれば、Snを超えてSR(β)となる操舵量への変更(逆方向操舵)が禁止される。つまり、SL(α)からSnまでの操舵量の変更に制限される。同様に、現状の操舵量が、SR(β)とすれば、Snを超えてSL(α)となる操舵量への変更(逆方向操舵)が禁止される。つまり、
図7で示されているように、SR(β)からSnまでの操舵量の変更に制限される。ここで、0°<α<=最大操舵量(最大操舵角)、0°<β<=最大操舵量(最大操舵角)である。
【0044】
この実施形態では、操舵量制限部42は、選択可能な3つの制限モードを有する。第1の制限モードは、自動走行中の走行経路が旋回走行経路の場合にのみ、操舵量の制限が有効となるモードである。第2の制限モードは、自動走行中の走行経路が旋回走行経路であり、かつ自車位置が旋回走行経路における旋回内側に存在している場合にのみ操舵量の制限が有効となるモードである。つまり自車位置が前記旋回走行経路における旋回外側に存在している場合や直進走行経路の走行では、操舵量の制限が無効となる。第3の制限モードは、自動走行中において全ての走行経路において、操舵量の制限が有効となるモードである。もちろん、手動走行においても操舵量の制限が有効となるモードを用意してもよい。
【0045】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、操舵量制限部42は、左右方向の一方方向から中立位置を超えて左右方向の他方向に至る操舵量を禁止している。これに代えて、現在操舵量に対して、所定値を超える操舵量を禁止するような構成を採用してもよい。さらには、現在操作量を入力パラメータとして、許可操舵量範囲が導出されるルックアップテーブルを備え、導出された許可操舵量範囲外となる操舵量は禁止されるような構成を採用してもよい。
【0046】
(2)上述した実施形態では、自車位置検出モジュール80として、衛星航法モジュール81と慣性航法モジュール82との組み合わせたものが用いられていたが、衛星航法モジュール81だけもよい。また、自車位置や車体方位を、カメラによる撮影画像に基づいて算出する方法を採用してもよい。
【0047】
(3)
図6で示された各機能部は、主に説明目的で区分けされている。実際には、各機能部は他の機能部と統合してもよいし、または複数の機能部に分けてもよい。さらに、制御ユニット5に構築されている機能部のうち、走行モード管理部53、走行経路設定部54、位置ずれ算出部57、方位ずれ算出部58、操舵量算出モジュール4のうちの全て、または一部が、制御ユニット5に接続可能な携帯型の通信端末2(タブレットコンピュータなど)に構築され、無線や車載LANを経由して制御ユニット5とデータ交換するような構成を採用してもよい。
【0048】
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。