特許第6976164号(P6976164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976164
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】透光性カバー及び照明器具
(51)【国際特許分類】
   F21V 3/06 20180101AFI20211125BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20211125BHJP
【FI】
   F21V3/06 110
   F21V3/00 310
   F21V3/00 320
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-251565(P2017-251565)
(22)【出願日】2017年12月27日
(65)【公開番号】特開2019-117744(P2019-117744A)
(43)【公開日】2019年7月18日
【審査請求日】2020年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 哲
【審査官】 山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−123259(JP,A)
【文献】 特開2017−026948(JP,A)
【文献】 特開2006−301018(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/020793(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0077680(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 3/04
F21V 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具本体が有する光源を覆うように取り付けられる透光性カバーであって、
前記光源から発せられた光を透過する透過部を備え、
前記透過部は、複数の樹脂層が一体的に前記光源の光照射方向に積層されて形成されており、前記複数の樹脂層は、前記光源側の樹脂層である第1樹脂層と、前記光源とは反対側の樹脂層である第2樹脂層とを含み、
前記第1樹脂層はポリカーボネイト樹脂で形成され、前記第2樹脂層はアクリル樹脂で形成され、
前記第1樹脂層の熱膨張係数は前記第2樹脂層の熱膨張係数よりも小さく、
波長550nmの光に関して前記第1樹脂層の光透過率が前記第2樹脂層の光透過率よりも小さく、かつ、波長400nmの光に関して前記第1樹脂層の光透過率が前記第2樹脂層の光透過率よりも大きく、
前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層の夫々の光透過率は、波長が大きくなるにしたがって略0から急峻に立ち上がった後に漸増するように変化し、
略0から急峻に立ち上がるときの波長の値及び急峻に立ち上がっている状態から漸増するように変化するときの波長の値は、ともに前記第1樹脂層が前記第2樹脂層よりも小さくなっており、
前記第2樹脂層における光透過率が急峻に立ち上がっているときの波長に対する光透過率の変化率が、前記第1樹脂層における光透過率が急峻に立ち上がっているときの波長に対する光透過率の変化率よりも大きくなっている
透光性カバー。
【請求項2】
前記第2樹脂層のアクリル樹脂には、透光性を有するゴムが添加されている、
請求項1に記載の透光性カバー。
【請求項3】
前記第2樹脂層のアクリル樹脂には、トリアジン系紫外線吸収剤が添加されている、
請求項1又は2に記載の透光性カバー。
【請求項4】
前記透過部の肉厚は、0.5mm以上2mm以下であり、
前記第1樹脂層の肉厚は、前記第2樹脂層の肉厚よりも厚い、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の透光性カバー。
【請求項5】
前記第1樹脂層は、UL94規格の難燃性試験においてV−0となる肉厚以上の肉厚である、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の透光性カバー。
【請求項6】
波長550nmの光に関して、前記第1樹脂層の光透過率は50%以上であり、前記第2樹脂層の光透過率が80%以上である、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の透光性カバー。
【請求項7】
前記透過部は、前記第1樹脂層が前記器具本体から露出しない形状を有する、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の透光性カバー。
【請求項8】
前記第2樹脂層における前記第1樹脂層側とは反対側の表面には、撥水性或いは撥油性のコート層が被覆されており、
前記コート層の肉厚が2μm以上15μm以下である、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の透光性カバー。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載の透光性カバーと、
前記光源と、
前記器具本体と、を備える、
照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、透光性カバー及び照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ポリカーボネイト樹脂などの単一の樹脂材料によって形成された透光性カバーを有する照明器具が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−162447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、単一の樹脂材料から形成された透光性カバーであると、その樹脂材料の特性によっては、工場内などの特殊環境下あるいは屋外環境での長期的な使用は困難な場合があった。
【0005】
このため、本開示の目的は、工場内などの特殊環境下あるいは屋外環境での長期的な使用を実現することのできる透光性カバー及び照明器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る透光性カバーは、器具本体が有する光源を覆うように取り付けられる透光性カバーであって、光源から発せられた光を透過する透過部を備える。透過部は、複数の樹脂層が一体的に光源の光照射方向に積層されて形成されており、複数の樹脂層は、光源側の樹脂層である第1樹脂層と、光源とは反対側の樹脂層である第2樹脂層とを含む。第1樹脂層はポリカーボネイト樹脂で形成され、前記第2樹脂層はアクリル樹脂で形成されている。第1樹脂層の熱膨張係数は、第2樹脂層の熱膨張係数よりも小さい。そして、波長550nmの光に関して第1樹脂層の光透過率が第2樹脂層の光透過率よりも小さく、かつ、波長400nmの光に関して第1樹脂層の光透過率が第2樹脂層の光透過率よりも大きい。
【0007】
本開示の他態様に係る照明器具は、上記の透光性カバーと、光源と、器具本体とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、工場内などの特殊環境下あるいは屋外環境での長期的な使用を実現することのできる透光性カバー及び照明器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の照明器具の概略構成を示す斜視図である。
図2】第1実施形態の照明器具の概略構成を示す分解斜視図である。
図3】第1実施形態の照明器具の概略構成を示す断面図である。
図4図3におけるIV−IV線を含む切断面から見た透過部の断面図である。
図5】第1樹脂層および第2樹脂層における波長と光透過率との関係の一例を示すグラフである。
図6】第2実施形態の照明器具の概略構成を示す分解斜視図である。
図7】第2実施形態の照明器具の概略構成を示す断面図である。
図8】コート層を有する透過部の概略構成を示す断面図である。
図9】透光性のない樹脂材料によって係合部を形成した場合のカバー部材の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0011】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係る照明器具について説明する。図1は、第1実施形態に係る照明器具の概略構成を示す斜視図である。図2は、図1の照明器具の分解斜視図である。図3は、図1の照明器具の断面図である。
【0012】
図1図3に示すように、照明器具1は、器具本体2と、光源ユニット3とを備える。
【0013】
器具本体2は、図示しない吊ボルトによって天井に取り付けられ、光源ユニット3を着脱自在に保持する構造体である。具体的には、器具本体2は、板金に曲げ加工を施すことで長尺の扁平な箱状に形成されている。器具本体2における天井とは反対側には、光源ユニット3を収容するための矩形の収容凹部21が器具本体2の全長にわたって設けられている。また、器具本体2の長手方向における両端部には、エンドキャップ4がそれぞれ取り付けられている。
【0014】
光源ユニット3は、図2及び図3に示すように、複数(図2では2個)のLED基板32と、取付部材33と、カバー部材34とを備える。
【0015】
LED基板32は、長尺な矩形板状に形成されたプリント基板321を備え、プリント基板321の下面には複数の光源322が長手方向に沿って実装されている。光源322は、白色LED(Light Emitting Diode)である。白色LEDは、異なる二つの波長域に発光ピーク強度を有し、うち一つの発光ピーク強度が500nm以下の波長域にある白色LEDである。具体的には、白色LEDとしては、例えば、第1の発光ピーク強度が440nm以上465nm以下の波長域にあり、第2の発光ピーク強度が500nm以上640nm以下の波長域にあるLEDが挙げられる。
【0016】
また、各LED基板32において隣接するLED基板32に対向する端部には、電源供給用のコネクタ(図示省略)がそれぞれ実装されている。各LED基板32のコネクタ同士は電気的に接続されている。これにより、1つのLED基板32に対して、図示しない電源装置を電気的に接続すれば、各LED基板32に電力を供給することができる。
【0017】
取付部材33は、LED基板32が取り付けられる長尺な板金部材である。具体的には、取付部材33は、板金に曲げ加工を施すことで断面視略U字状に形成されている。取付部材33は、長尺且つ矩形板状に形成された底面部331と、底面部331の幅方向における両端から立設する一対の側面部332とを有している。底面部331には、その一部を切り起こすことで形成された係止爪334が備えられており、この係止爪334によってLED基板32が取付部材33に固定されている。また、一対の側面部332の先端部333は、図3に示すように、外側に向けて弧状に曲げられている。
【0018】
カバー部材34は、光源322を覆うように器具本体2に取り付けられる長尺な開放型の透光性カバーである。カバー部材34は、透過部35と、一対の係合部36とを一体的に備えている。カバー部材34は、全長にわたって概ね同じ断面形状となっている。
【0019】
透過部35は、光源322を覆って、当該光源322から発せられた光を透過する部分である。透過部35は、LED基板32側が開口する長尺状に形成され、幅方向において両端から中央に行くほど外方への突出量が大きくなる凸レンズ形状となっている。このように透過部35の形状を凸レンズ形状とすることで、例えば平坦状の透過部35と比べても各方向への配光量をほぼ均等にすることができる。
【0020】
図4は、図3におけるIV−IV線を含む切断面から見た透過部35の断面図である。
【0021】
図4に示すように、透過部35は、複数の樹脂層が一体的に光源322の光照射方向に積層されることで形成されている。本実施形態では、透過部35は、二層の樹脂層から形成されている。具体的には、透過部35は、光源322側の樹脂層である第1樹脂層351と、光源322とは反対側の樹脂層である第2樹脂層352とが、例えば多色成形によって一体成形されることで形成された多色成形体である。
【0022】
第1樹脂層351と、第2樹脂層352とをそれぞれなす樹脂材料は、いずれも透光性を有しており、第1樹脂層351の方が第2樹脂層352よりも熱膨張係数が小さくなる樹脂材料が選定されている。例えば、第1樹脂層351は、ポリカーボネイト樹脂で形成されている。また、第2樹脂層352は、ポリカーボネイト樹脂よりも熱膨張係数が大きいアクリル樹脂で形成されている。第1樹脂層351を形成するポリカーボネイト樹脂の熱膨張係数は、例えば、汎用される乳白色の材料で6.5(×10-5/℃)である。他方、第2樹脂層352を形成するアクリル樹脂は、例えば、耐衝撃性の材料で1.2(×10-4/℃)である。
【0023】
透過部35の肉厚Tは、0.5mm以上2mm以下であり、第1樹脂層351の肉厚T1は、第2樹脂層352の肉厚T2よりも厚い。そして、第1樹脂層351の肉厚T1は、UL94規格の難燃性試験においてV−0となる肉厚以上である。ポリカーボネイトの場合、UL94規格の難燃性試験においてV−0となる肉厚は0.8mm程度である。このため、ポリカーボネイト樹脂からなる第1樹脂層351の肉厚T1を0.8mm以上とするのが好適である。この場合、アクリル樹脂からなる第2樹脂層352の肉厚T2は、透過部35を多色成形で形成する場合であると0.1mm以上となる。
【0024】
また、波長550nmの光に関して第1樹脂層351の光透過率は、第2樹脂層352の光透過率よりも小さく、かつ、波長400nmの光に関して第1樹脂層351の光透過率は第2樹脂層352の光透過率よりも大きいことが好ましい。
【0025】
図5は、第1樹脂層351および第2樹脂層352における波長と光透過率との関係の一例を示すグラフである。図5に示すように、第1樹脂層351では、約370nm辺りで光透過率が略0から急峻に立ち上がり、波長400nmで光透過率が約50%となり、約420nm以上では漸増するように変化する。これに対し、第2樹脂層352では、波長が約400nm辺りで光透過率が略0から急峻に立ち上がり、波長が約430nm以上では漸増するように変化する。400nm以下は太陽光に含まれる紫外線の波長域である。そのため、400nm以下の波長域では光透過率が略0である第2樹脂層352によって、紫外線が第1樹脂層351に入射するのが防止される。その結果、照明器具1が屋外で長期間使用されても、ポリカーボネイト樹脂からなる第1樹脂層351が強度劣化や外観変色するのを抑制できる。したがって、カバー部材34の耐太陽光性を向上させることができる。
【0026】
ここで、第2樹脂層352を形成するアクリル樹脂には、トリアジン系紫外線吸収剤が添加されているのが好ましい。これにより、第2樹脂層352において太陽光に含まれる紫外線を効果的に吸収することができる。
【0027】
また、第2樹脂層352のアクリル樹脂には、透光性を有するゴムが添加されているのが好ましい。これにより、外部からの衝撃などによるカバー部材34の破損や割れを抑制できる。
【0028】
さらに、波長550nmの光に関して、第1樹脂層351の光透過率は50%以上であり、第2樹脂層の光透過率が80%以上であることが好ましい。このように第1樹脂層351の光透過率を比較的低く設定することで、第1樹脂層351の光拡散効果によって、外部から発光するLED素子が粒状に見えにくくなり、照明器具1の外観が向上する。
【0029】
再び図3を参照すると、一対の係合部36は、透過部35の光源322側の面(内面)から突出している。一対の係合部36は、それぞれ取付部材33の底面部331および側面部332に係合し、取付部材33を保持している。具体的には、係合部36は、透過部35の内面から上方に突出した脚部361と、脚部361の内側面から、水平方向に突出した台座部362とを備えている。
【0030】
脚部361は、透過部35の内面から上方に突出しており、その先端部が光源322の光軸C側に向けて曲げられている。この脚部361の先端部に対して、取付部材33における側面部332の先端部333が係止される。また、この状態では、取付部材33の底面部331が台座部362に載置されている。これにより、取付部材33と、カバー部材34とが組み付けられる。
【0031】
係合部36は、第1樹脂層351をなす樹脂材料によって形成されていてもよいし、他の樹脂材料または金属材料によって形成されていてもよい。係合部36を樹脂材料で形成する場合には、係合部36を透過部35とともに多色成形によって一体的に形成してもよい。また、第1樹脂層351をなす樹脂材料とは異なる樹脂材料で係合部36を形成する場合には、非透光性の樹脂材料で係合部36を形成してもよい。
【0032】
カバー部材34と取付部材33とは組み付けられた状態で、器具本体2の収容凹部21に取り付けられている。具体的には、カバー部材34の脚部361と、取付部材33の側面部332とが、器具本体2の収容凹部21内に配置されることになり、取付部材33の底面部331上の光源322が器具本体2の下方を向く。この状態で、カバー部材34の透過部35が、収容凹部21の開口を覆うとともに、光源322の下方を覆うことになる。器具本体2に対して、カバー部材34と、取付部材33とが取り付けられると、器具本体2の長手方向における両端部に、エンドキャップ4がそれぞれ取り付けられることで、器具本体2とカバー部材34と取付部材33とが固定され、照明器具1が組み立てられる。
【0033】
次に、本実施形態の照明器具1の動作について説明する。
【0034】
光源322は、電源装置から電力が供給されると発光する。光源322から照射された光は、カバー部材34を透過して、カバー部材34の透過部35から出射して、照明器具1の下方を照らす。このとき、光源322は発熱しているために、カバー部材34の透過部35を加熱する。これにより透過部35は熱膨張する。ここで、透過部35をなす第1樹脂層351の方が第2樹脂層352よりも光源322側に配置されているので、光源322が発した熱の影響は、第1樹脂層351の方が大きい。しかしながら、上述したように、第1樹脂層351の熱膨張係数の方が、第2樹脂層352の熱膨張係数よりも小さいので、第1樹脂層351と第2樹脂層352とのそれぞれの熱変形量を均一化することができる。したがって、第1樹脂層351と第2樹脂層352とが熱によって剥離することを抑制することができ、カバー部材34を長期的に使用することができる。
【0035】
以上のように、本実施形態によれば、光源322を有する器具本体2に、光源322を覆うように取り付けられるカバー部材34は、光源322を覆って、当該光源322から発せられた光を透過する透過部35を備えている。透過部35は、複数の樹脂層が一体的に前記光源の光照射方向に積層されて形成されている。複数の樹脂層は、光源322側の樹脂層である第1樹脂層351と、光源322とは反対側の樹脂層である第2樹脂層352とを含む。第1樹脂層351はポリカーボネイト樹脂で形成され、第2樹脂層352はアクリル樹脂で形成される。第1樹脂層351の熱膨張係数は、第2樹脂層352の熱膨張係数よりも小さい。そして、波長550nmの光に関して第1樹脂層351の光透過率が第2樹脂層352の光透過率よりも小さく、かつ、波長400nmの光に関して第1樹脂層351の光透過率が第2樹脂層352の光透過率よりも大きい。
【0036】
このように、複数の樹脂層が光照射方向に積層されて、一体化されているので、複数の樹脂材料の特性を活かしたカバー部材34を実現することができる。具体的には、光源322側の第1樹脂層351を、割れにくく燃えにくい特性を有するポリカーボネイト樹脂で形成しておくことで、カバー部材34自体の強度や、燃えにくさを確保することができる。そして、この第1樹脂層351に足りない特性は、当該第1樹脂層351における光源322とは反対側の表面に積層される第2樹脂層352により実現する。第2樹脂層352を、耐太陽光性、耐薬品性、耐水性を有するアクリル樹脂材料で形成する。これにより、第2樹脂層352が障壁となって、太陽光、薬品または水が第1樹脂層351に到達しにくくなる。つまり、カバー部材34自体の耐太陽光性、耐薬品性、耐水性を確保することができる。特に、波長550nmの光に関して第1樹脂層351の光透過率が第2樹脂層352の光透過率よりも小さく、かつ、波長400nmの光に関して第1樹脂層351の光透過率が第2樹脂層352の光透過率よりも大きいことで、カバー部材34の耐太陽光性を向上させることができる。
【0037】
そして、第1樹脂層351の熱膨張係数の方が、第2樹脂層352の熱膨張係数よりも小さいので、第1樹脂層351と第2樹脂層352とのそれぞれの熱変形量を均一化することができる。したがって、第1樹脂層351と第2樹脂層352とが熱によって剥離することを抑制することができ、カバー部材34を長期的に安定して使用することができる。
【0038】
これらのことによって、工場内などの特殊環境下あるいは屋外環境での長期的な使用を実現することのできる透光性カバー及び照明器具を提供することができる。
【0039】
また、第2樹脂層352を形成するアクリル樹脂に、透光性を有するゴムが添加されていれば、アクリル樹脂製の第2樹脂層352をより割れにくくすることができる。
【0040】
また、第2樹脂層352のアクリル樹脂にトリアジン系紫外線吸収剤が添加されていれば、紫外線の吸収によって第1樹脂層351への紫外線入射を効果的に抑制でき、耐太陽光性をより向上させることができる。
【0041】
また、透過部35の肉厚は、0.5mm以上2mm以下であり、第1樹脂層351の肉厚は、第2樹脂層352の肉厚よりも厚い。このように、透過部35の肉厚が0.5mm以上2mm以下であれば、透光性カバーとしての機能を十分に発揮できるだけの肉厚を確保することができる。また、第1樹脂層351の肉厚が第2樹脂層352の肉厚よりも厚いので、第1樹脂層351の特性である燃えにくさを優先的に発揮することができる。
【0042】
また、第1樹脂層351は、UL94規格の難燃性試験においてV−0となる肉厚以上の肉厚である。このように、第1樹脂層351の肉厚がUL94規格の難燃性試験においてV−0となる肉厚以上であるので、第1樹脂層351がUL94規格の難燃性試験におけるV−0の基準を満たすことができる。
【0043】
また、透過部35は、複数の樹脂材料により多色成形されて形成された多色成形体である。このように、透過部35が多色成形体であるので、第1樹脂層351と第2樹脂層352とを強固に密着させることができる。密着性が強まっていると、両者の熱変形量の差の影響を受けて剥離しやすいが、上述の通り第1樹脂層351と第2樹脂層352とのそれぞれの熱変形量を均一化しているので、多色成形体であっても剥離を十分に抑制することができ、長期的に安定して使用することができる。
【0044】
さらに、波長550nmの光に関して、第1樹脂層351の光透過率は50%以上であり、第2樹脂層352の光透過率が80%以上である。このように第1樹脂層351の光透過率を比較的低く設定することで、第1樹脂層351の光拡散効果によって、外部から発光するLED素子が粒状に見えにくくなり、照明器具1の外観が向上する。
【0045】
(第2実施形態)
第1実施形態では、カバー部材34が開放型である場合を例示して説明した。この第2実施形態では、カバー部材34が密閉型である場合を例示して説明する。
【0046】
図6は、本実施形態に係る照明器具の概略構成を示す分解斜視図である。図7は、図6における照明器具の概略構成を示す断面図である。なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の部分においては、同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0047】
図6及び図7に示すように、照明器具1Aに備わる光源ユニット3Aは、長尺なカバー部材34Aと、カバー部材34Aの両端部に取り付けられる一対のエンド部材7とが設けられている。光源ユニット3Aは、カバー部材34Aの両端部にそれぞれエンド部材7が取り付けられた状態で、器具本体2の収容凹部21に一部が収容されている。
【0048】
カバー部材34Aの内方には、LED基板32と、取付部材33と、台座38とが収容されている。台座38は、断面視略U字状の板金であり、その下端部に取付部材33が取り付けられている。
【0049】
また、カバー部材34Aは、全体として透光性を有する筒状体であり、断面視略U字状の係合部36aと、係合部36aの下端部から連続して、下方に向けて膨らんだ形状を有する透過部35aとを備えている。係合部36aは、器具本体2の収容凹部21内に収容されており、透過部35aは収容凹部21からはみ出て露出されている。
【0050】
そして、カバー部材34Aにおいては、第1樹脂層351aと、第2樹脂層352aとが径方向に積層されることで、一体的に形成されている。具体的には、カバー部材34Aは、第1樹脂層351aをなす樹脂材料と、第2樹脂層352aをなす樹脂材料とによって多色成形された多色成形体である。これにより、第1樹脂層351aと、第2樹脂層352aとが、光源322の光照射方向に積層されている。そして、第1樹脂層351aにおいては、全周にわたって第2樹脂層352aが積層されている。このため、第1樹脂層351aは、器具本体2から露出しないことになる。
【0051】
以上のように、本実施形態によれば、透過部35aは、第1樹脂層351aが器具本体2から露出しない形状を有している。
【0052】
このように、第1樹脂層351が全体として露出していないので、第1樹脂層351が太陽光や雨水などの周辺環境に晒されることを抑制でき、第1樹脂層351をより長期にわたって安定化することができる。
【0053】
(その他の実施形態)
以上、実施形態に係る照明器具について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。なお、以下の説明において、上記第1及び第2実施形態と同一の部分については同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0054】
例えば、上記第1及び第2実施形態では、照明器具1に備わるカバー部材34,34Aが透光性カバーである場合を例示して説明した。しかしながら、透光性カバーは照明器具とは別体で流通させることも可能である。この場合、単一の樹脂材料からなるカバー部材を有する、既設の照明器具に対して、多層の樹脂層を有するカバー部材34,34Aを後付けで組み付けることができる。
【0055】
また、上記第1及び第2実施形態では、二層の樹脂層からなる透過部35,35aを例示して説明した。しかしながら、三層以上の樹脂層からなる透過部であってもよい。この場合、隣接する2つの樹脂層のうち、光源側の樹脂層である第1樹脂層の熱膨張係数の方を、光源とは反対側の樹脂層である第2樹脂層の熱膨張係数よりも小さくする必要がある。特に、照明器具の周辺環境からの影響は、透過部の表層にある樹脂層が最も受けるので、最も光源から離れた樹脂層を第2樹脂層とし、当該第2樹脂層に光源側で隣接する樹脂層を第1樹脂層とすることが望まれる。
【0056】
また、周辺環境からの影響を更に抑制すべく、光源から最も離れた樹脂層である第2樹脂層に対して、例えば、撥水性或いは撥油性のコート層を被膜することが挙げられる。
【0057】
図8は、コート層を有する透過部の概略構成を示す断面図である。具体的には、図8図4に対応している。
【0058】
図8に示すように、透過部35bは、第2樹脂層352が光源322から最も離れた樹脂層である。この第2樹脂層352における光源322とは反対側の表面には、撥水性或いは撥油性のコート層39が被膜されている。コート層39としては、例えば、アクリル樹脂にシリコンを添加したシリコンコート層、フッ素コートなどが挙げられる。コート層39の肉厚T3は、2μm以上15μm以下である。
【0059】
このようなコート層39が第2樹脂層352に被膜されているので、雨又は油などをコート層39で遮ることができる。したがって、透過部35bをより長期的に安定化することができる。
【0060】
また、コート層39の肉厚T3が2μm以上15μm以下であるので、多色成形を用いなくとも、コート層39を被膜することができる。これにより、簡単にコート層39を形成することができる。
【0061】
また、第2実施形態では、カバー部材34Aの全体が透光性を有する場合を例示した。しかし、器具本体2内に収容されている係合部においては、透光性は必要ではないので、係合部だけを透光性のない樹脂材料によって形成してもよい。
【0062】
図9は、透光性のない樹脂材料によって係合部を形成した場合のカバー部材34Cの概略構成を示す断面図である。
【0063】
図9に示すように、カバー部材34Cの透過部35cは、第1樹脂層351cと、第2樹脂層352cとの二層の樹脂層によって一体成形されている。また、カバー部材34Bの係合部36cは、透光性のない樹脂材料によって形成されている。つまり、カバー部材34Cは、第1樹脂層351cをなす樹脂材料と、第2樹脂層352cをなす樹脂材料と、係合部36cをなす樹脂材料とによって多色成形されている。
【0064】
また、上記第1及び第2実施形態では、カバー部材34,34Aにおける透過部35,35aと係合部36,36aとが、多色成形によって一体成形されている場合を例示した。しかしながら、予め別体の透過部と係合部とを組み立てることで一体化してもよい。透過部と係合部との一体化の手法としては、溶着、接着、締結などの周知の組み立て手法を用いることができる。また、係合部が透過部と別体であれば、透過部と係合部とを個別に形成することができるので、係合部の材料選別の自由度を高めることができる。
【符号の説明】
【0065】
1,1A 照明器具、2 器具本体、32 LED基板、33 取付部材、34,34A,34B,34C カバー部材(透光性カバー)、35,35a,35b,35c 透過部、39 コート層、322 光源、331 底面部、332 側面部、333 先端部、334 係止爪、351,351a,351c 第1樹脂層、352,352a,352c 第2樹脂層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9