特許第6976172号(P6976172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6976172多結晶シリコン薄膜トランジスタ及びその製造方法、表示装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976172
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】多結晶シリコン薄膜トランジスタ及びその製造方法、表示装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20211125BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   H01L29/78 616L
   H01L29/78 627G
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 627C
   H01L29/78 618F
   H01L29/78 616V
【請求項の数】17
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-545308(P2017-545308)
(86)(22)【出願日】2016年7月25日
(65)【公表番号】特表2019-522346(P2019-522346A)
(43)【公表日】2019年8月8日
(86)【国際出願番号】CN2016091533
(87)【国際公開番号】WO2018018356
(87)【国際公開日】20180201
【審査請求日】2019年3月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジエン・ミン
(72)【発明者】
【氏名】シャオロン・リ
(72)【発明者】
【氏名】タオ・ガオ
(72)【発明者】
【氏名】リャンジエン・リ
(72)【発明者】
【氏名】ゼンイン・シュ
【審査官】 綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−318120(JP,A)
【文献】 特開2005−079299(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0294869(US,A1)
【文献】 韓国登録特許第10−0646962(KR,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0147875(US,A1)
【文献】 特開2008−010860(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0077207(US,A1)
【文献】 特開2014−060399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜トランジスタの多結晶シリコン活性層に対応するパターンを有し、前記多結晶シリコン活性層における、ソース電極とドレイン電極の接触領域に対応する第1領域と、前記多結晶シリコン活性層における、チャネル領域に対応する第2領域とを備えるアモルファスシリコン層をベース基板に形成するステップと、
前記第1領域及び前記第2領域の両方の、前記ベース基板から離れた側に第1ドーパント層を形成するステップと、
前記第1領域の、前記ベース基板から離れた側に第2ドーパント層を形成するステップと、
前記アモルファスシリコン層を結晶させることで、前記多結晶シリコン活性層を形成するステップと、を含み、
前記アモルファスシリコン層を結晶させるステップにおいて、前記多結晶シリコン活性層は、前記第2領域において前記第1ドーパント層の第1ドーパントがドープされ、前記第1領域において前記第1ドーパント層の前記第1ドーパント及び前記第2ドーパント層の第2ドーパントがドープされ、
前記第1ドーパント及び前記第2ドーパントは、p型ドーパント及びn型ドーパントから選択された異なる類型のドーパントであり、
前記アモルファスシリコン層と前記第1ドーパント層を形成するステップが、
前記ベース基板にアモルファスシリコン材料層を堆積させるステップと、
前記アモルファスシリコン材料層の、前記ベース基板から離れた側に第1ドーパント材料層を形成するステップと、
前記第1ドーパント材料層の、前記アモルファスシリコン材料層から離れた側にフォトレジスト層を形成するステップと、
ハーフトーンマスクプレートまたはグレイトーンマスクプレートを用いてフォトレジスト層を露光し、露光された前記フォトレジスト層を現像することで、前記第1領域に対応し部分的に露光される第1部分と、前記第2領域に対応し実質的に露光されていない第2部分と、前記第1部分と前記第2部分の外部に位置し完全に露光され且つフォトレジスト材料が除去される第3部分とを有するフォトレジストパターンを得るステップと、
前記第3部分における前記アモルファスシリコン材料層と前記第1ドーパント層を除去することで、前記薄膜トランジスタの活性層に対応するパターンを有する前記アモルファスシリコン層を形成するステップと、
前記第1部分におけるフォトレジスト層を除去するとともに、前記第2部分におけるフォトレジスト層を保持することで、前記第1部分における第1ドーパント層を露出させるステップと、を含む、
多結晶シリコン薄膜トランジスタを製造する方法。
【請求項2】
エキシマレーザアニーリングを使用して前記結晶させるステップを実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
90%〜98%のオーバーラップ率で前記エキシマレーザアニーリングを実行する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1ドーパント層は、前記第2領域と直接接触するように形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1部分におけるアモルファスシリコン層の、前記ベース基板から離れた側と、前記第2部分におけるフォトレジスト層の、前記アモルファスシリコン層から離れた側に第2ドーパント層を形成するステップと、
前記第2部分におけるフォトレジスト層を除去することで、前記第2部分における第1ドーパント層を露出させるステップと、をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
剥離溶剤を用いて、剥離方法により前記第2部分におけるフォトレジスト層を除去する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記アモルファスシリコン層を結晶させるステップの前に、前記アモルファスシリコン層を脱水素処理するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記アモルファスシリコン層を形成するステップの前に前記ベース基板にバッファ層を形成し、前記アモルファスシリコン層は前記バッファ層の、前記ベース基板から離れた側に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記バッファ層は1000Å〜4000Åの範囲の厚さを有する、請求項記載の方法。
【請求項10】
前記バッファ層を形成するステップの前に前記ベース基板に補助アモルファスシリコン層を形成するステップであって、前記バッファ層は前記補助アモルファスシリコン層の、前記ベース基板から離れた側に形成されるステップをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記アモルファスシリコン層を結晶させるステップの前に、前記補助アモルファスシリコン層を脱水素処理するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記補助アモルファスシリコン層は10nm〜60nmの範囲の厚さを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記多結晶シリコン活性層の、前記ベース基板から離れた側にゲート絶縁層を形成するステップと、
前記ゲート絶縁層の、前記多結晶シリコン活性層から離れた側にゲート電極層を形成するステップと、
前記第1領域に対応する前記ゲート絶縁層の領域にソースビアホールとドレインビアホールを形成し、前記ソースビアホールと前記ドレインビアホールが延伸して前記ゲート絶縁層を通り抜け、前記多結晶シリコン活性層の前記第1領域を露出するステップと、
前記ゲート絶縁層の、前記ベース基板から離れた側にソース電極とドレイン電極を形成し、前記ソース電極が延伸して前記ソースビアホールを通り抜けて前記多結晶シリコン活性層と接触し、前記ドレイン電極が延伸して前記ドレインビアホールを通り抜けて前記多結晶シリコン活性層と接触するステップと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1ドーパント層と前記第2ドーパント層は原子層の堆積により前記ベース基板に堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記アモルファスシリコン層は30nm〜60nmの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第1ドーパント層は1×1011atom/cm〜1×1013atom/cmの範囲の第1ドーパント濃度を有する請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第2ドーパント層は1×1014atom/cm〜1×1016atom/cmの範囲の第2ドーパント濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多結晶シリコン薄膜トランジスタ、当該多結晶シリコン薄膜トランジスタを製造する方法、ならびに当該多結晶シリコン薄膜トランジスタを含む表示装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
多結晶シリコンはアモルファスシリコンよりもさらに高いモビリティと安定性を有する。低温多結晶シリコン(LTPS)薄膜トランジスタは表示分野において幅広い応用範囲を有する。従来のLTPS薄膜トランジスタにおいて、チャネル領域には第1類型の第1ドーパントがドープされ、ソース電極とドレイン電極の接触領域には第2類型の第2ドーパントがドープされる。第1ドーパントと第2ドーパントはp型ドーパントとn型ドーパントから選択された異なる類型のドーパントである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、薄膜トランジスタの多結晶シリコン活性層に対応するパターンを有し、多結晶シリコン活性層における、ソース電極とドレイン電極の接触領域に対応する第1領域と、多結晶シリコン活性層におけるチャネル領域に対応する第2領域とを備えるアモルファスシリコン層をベース基板に形成するステップと、第2領域の、ベース基板から離れた一方に第1ドーパント層を形成するステップと、第1領域の、ベース基板から離れた一方に第2ドーパント層を形成するステップと、アモルファスシリコン層、第1ドーパント層、第2ドーパント層を結晶させることで、多結晶シリコン活性層を形成するステップと、を含み、アモルファスシリコン層を結晶させるステップにおいて、当該多結晶シリコン活性層は第2領域において第1ドーパント層のドーパントがドープされ、第1領域において第2ドーパント層のドーパントがドープされる、多結晶シリコン薄膜トランジスタを製造する方法を提供する。
【0004】
任意で、エキシマレーザアニーリングを用いて結晶ステップを実行する。
【0005】
任意で、約90%〜約98%のオーバーラップ率でエキシマレーザアニーリングを実行する。
【0006】
任意で、第1ドーパント層は第2領域と直接接触するように形成される。
【0007】
任意で、第2ドーパント層は第1領域と直接接触するように形成される。
【0008】
任意で、第1ドーパント層は、第1領域と第2領域両者の、ベース基板から離れた一方に形成され、第1領域における多結晶シリコン活性層には第1ドーパント層のドーパントと第2ドーパント層のドーパント両者がドープされる。
【0009】
任意で、同一のマスクプレートを用いてアモルファスシリコン層と第1ドーパント層を形成する。
【0010】
任意で、同一のマスクプレートを用いてアモルファスシリコン層と第1ドーパント層を形成するステップは、ベース基板にアモルファスシリコン材料層を堆積させるステップと、アモルファスシリコン材料層の、ベース基板から離れた一方に第1ドーパント材料層を形成するステップと、第1ドーパント材料層の、アモルファスシリコン材料層から離れた一方にフォトレジスト層を形成するステップと、ハーフトーンマスクプレートまたはグレイトーンマスクプレートを用いてフォトレジスト層を露光し、露光されたフォトレジスト層を現像することで、第1領域に対応し部分的に露光される第1部分と、第2領域に対応し実質的に露光されていない第2部分と、第1部分と第2部分の外部に位置し完全に露光され且つフォトレジスト材料が除去される第3部分とを有するフォトレジストパターンを得るステップと、第3部分におけるアモルファスシリコン材料層と第1ドーパント層を除去することで、薄膜トランジスタの活性層に対応するパターンを有するアモルファスシリコン層を形成するステップと、第1部分におけるフォトレジスト層を除去するとともに、第2部分におけるフォトレジスト層を保持することで、第1部分におけるアモルファスシリコン層を露出させるステップと、を含む。
【0011】
任意で、前記方法には、第1部分におけるアモルファスシリコン層の、ベース基板から離れた一方と、第2部分におけるフォトレジスト層の、アモルファスシリコン層から離れた一方に第2ドーパント層を形成するステップと、第2部分におけるフォトレジスト層を除去することで、第2部分における第1ドーパント層を露出させるステップと、をさらに含む。
【0012】
任意で、剥離溶剤を用いて、剥離方法により第2部分におけるフォトレジスト層を除去する。
【0013】
任意で、前記方法には、アモルファスシリコン層、第1ドーパント層、第2ドーパント層を結晶させるステップの前に、アモルファスシリコン層を脱水素処理するステップをさらに含む。
【0014】
任意で、前記方法には、アモルファスシリコン層を形成するステップの前にベース基板にバッファ層を形成し、アモルファスシリコン層はバッファ層の、ベース基板から離れた一方に形成されることをさらに含む。
【0015】
任意で、バッファ層は約1000Å〜約4000Åの範囲の厚さを有する。
【0016】
任意で、前記方法には、バッファ層を形成するステップの前にベース基板に補助アモルファスシリコン層を形成し、バッファ層は補助アモルファスシリコン層の、ベース基板から離れた一方に形成されることをさらに含む。
【0017】
任意で、前記方法には、アモルファスシリコン層、第1ドーパント層、第2ドーパント層を結晶させるステップの前に、補助アモルファスシリコン層を脱水素処理するステップをさらに含む。
【0018】
任意で、補助アモルファスシリコン層は約10nm〜約60nmの範囲の厚さを有する。
【0019】
任意で、前記方法には、多結晶シリコン活性層の、ベース基板から離れた一方にゲート絶縁層を形成するステップと、ゲート絶縁層の、多結晶シリコン活性層から離れた一方にゲート電極層を形成するステップと、第1領域に対応する領域にソースビアホールとドレインビアホールを形成し、ソースビアホールとドレインビアホールが延伸してゲート絶縁層を通り抜け、多結晶シリコン活性層の第1領域を露出するステップと、ゲート絶縁層の、ベース基板から離れた一方にソース電極とドレイン電極を形成し、ソース電極が延伸してソースビアホールを通り抜けて多結晶シリコン活性層と接触し、ドレイン電極が延伸してドレインビアホールを通り抜けて多結晶シリコン活性層と接触するステップと、をさらに含む。
【0020】
任意で、第1ドーパント層と第2ドーパント層は原子層の堆積によりベース基板に堆積される。
【0021】
任意で、アモルファスシリコン層は約30nm〜約60nmの範囲の厚さを有する。
【0022】
任意で、第1ドーパント層には第1導電型の第1ドーパントが含まれ、第2ドーパント層には第2導電型の第2ドーパントが含まれ、第1ドーパントと第2ドーパントはp型ドーパントとn型ドーパントから選択された異なる類型のドーパントである。
【0023】
任意で、第1ドーパント層には第1ドーパントが含まれ、第2ドーパント層には第2ドーパントが含まれ、第1ドーパントと第2ドーパントはp型ドーパントとn型ドーパントから選択された同一の類型のドーパントである。
【0024】
任意で、第1ドーパント層は約1×1011atom/cm〜約1×1013atom/cmの範囲の第1ドーパント濃度を有する。
【0025】
任意で、第2ドーパント層は約1×1014atom/cm〜約1×1016atom/cmの範囲の第2ドーパント濃度を有する。
【0026】
また、本発明は、本文に記載の方法により製造された多結晶シリコン薄膜トランジスタを提供する。
【0027】
また、本発明は、本文に記載の薄膜トランジスタまたは本文に記載の方法により製造された薄膜トランジスタを含む表示装置を提供する。
【0028】
以下の図面は各公開された実施例に基づく、説明のための例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1A】薄膜トランジスタの断面図であり、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図1B】薄膜トランジスタの断面図であり、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図1C】薄膜トランジスタの断面図であり、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図1D】薄膜トランジスタの断面図であり、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図1E】薄膜トランジスタの断面図であり、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図1F】薄膜トランジスタの断面図であり、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図1G】薄膜トランジスタの断面図であり、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図1H】薄膜トランジスタの断面図であり、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図1I】薄膜トランジスタの断面図であり、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図1J】薄膜トランジスタの断面図であり、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図1K】薄膜トランジスタの断面図であり、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図1L】薄膜トランジスタの断面図であり、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図1M】薄膜トランジスタの断面図であり、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図1N】薄膜トランジスタの断面図であり、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図1O】薄膜トランジスタの断面図であり、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図2A】薄膜トランジスタの透視図で、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図2B】薄膜トランジスタの透視図で、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図2C】薄膜トランジスタの透視図で、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図2D】薄膜トランジスタの透視図で、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図2E】薄膜トランジスタの透視図で、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図2F】薄膜トランジスタの透視図で、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図2G】薄膜トランジスタの透視図で、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図2H】薄膜トランジスタの透視図で、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図2I】薄膜トランジスタの透視図で、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図2J】薄膜トランジスタの透視図で、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図2K】薄膜トランジスタの透視図で、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図2L】薄膜トランジスタの透視図で、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図2M】薄膜トランジスタの透視図で、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図2N】薄膜トランジスタの透視図で、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図2O】薄膜トランジスタの透視図で、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。
図3】一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下の実施例を参照して本開示をより具体的に説明する。注意すべき点は、以下の一部の実施例の記載は、説明、解説を目的としたものに過ぎず、全てを網羅するため、または、開示されたそのままの形態に本発明を限定するものではないという点である。
【0031】
従来の薄膜LTPSトランジスタを製造する際、イオン注入技術は、ドーパントを多結晶シリコン活性層にドープするためのものである。低い操作温度の範囲内でのイオン注入技術により製造された従来のLTPS薄膜トランジスタは比較的大きいリーク電流を有する。満足なドーパント拡散を実現するために、一般的には高い操作温度範囲(例えば、600℃よりも高い)においてイオン注入を実行する。しかし、高温イオン注入技術により、ベース基板における熱損傷を招く。この問題は、例えばポリイミド基板のようなフレキシブル基板にとって特に目立つ問題である。
【0032】
従って、本開示は、新型のLTPS薄膜トランジスタ及びその製造方法を提供し、従来技術の制限と欠点による1つまたは複数の課題を実質的に解決している。また、本開示は多結晶シリコン薄膜トランジスタを製造する方法を提供する。一部の実施例において、前記方法には、薄膜トランジスタの多結晶シリコン活性層に対応するパターンを有し、多結晶シリコン活性層における、ソース電極とドレイン電極の接触領域に対応する第1領域と、多結晶シリコン活性層におけるチャネル領域に対応する第2領域とを備えるアモルファスシリコン層をベース基板に形成するステップと、第2領域の、ベース基板から離れた一方に第1ドーパント層を形成するステップと、第1領域の、ベース基板から離れた一方に第2ドーパント層を形成するステップと、アモルファスシリコン層、第1ドーパント層、第2ドーパント層を結晶させることで、多結晶シリコン活性層を形成するステップと、を含み、アモルファスシリコン層を結晶させるステップにおいて、当該多結晶シリコン活性層は第2領域において第1ドーパント層のドーパント(例えば、第1ドーパント)がドープされ、第1領域において第2ドーパント層のドーパント(例えば、第2ドーパント)がドープされる。任意で、第1ドーパント層は第2領域と直接接触するように形成される。任意で、第2ドーパント層は第1領域と直接接触するように形成される。任意で、第1ドーパント層は、第1領域と第2領域両者の、ベース基板から離れた一方に形成され、第1領域における多結晶シリコン活性層には第1ドーパント層のドーパントと第2ドーパント層のドーパント両者がドープされる。任意で、第1ドーパント層が、第1領域と第2領域両者の、ベース基板から離れた一方に形成される時に、第2ドーパント層は第1領域に対応する領域における第1ドーパント層と直接接触するように形成される。任意で、第1ドーパントと第2ドーパントはp型ドーパントとn型ドーパントから選択された異なる類型のドーパントである。任意で、第1ドーパントと第2ドーパントは同一の類型のドーパントである。任意で、第1ドーパントと第2ドーパントは同一のドーパントであり、且つ第1ドーパント層の第1ドーパント濃度は第2ドーパント層の第2ドーパント濃度と異なる(例えば、ライトドーピング領域とヘヴィドーピング領域)。本文で定義した通り、「チャネル領域」という用語は、薄膜トランジスタの、ソース電極接触領域とドレイン電極接触領域との間の領域を指す。
【0033】
図1A〜1Oは薄膜トランジスタの断面図であって、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。図2A〜2Oは薄膜トランジスタの透視図で、一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示す。図1A、2Aを参照すると、本実施例の方法には、ベース基板にアモルファスシリコン層aSiを形成するステップを含む。一部の実施例において、アモルファスシリコン層の厚さは約30nm〜約60nmの範囲内であり、例えば、約30nm〜約35nm、約35nm〜約40nm、約40nm〜約45nm、約45nm〜約50nm、約50nm〜約55nm、または者約55nm〜約60nmである。
【0034】
各種の適切な材料をベース基板の製造に用いることができる。ベース基板の製造に適した例としての材料にはガラス、石英、ポリイミド、ポリエステルなどを含むが、これらには限定されない。任意で、ベース基板はフレキシブルベース基板(例えば、ポリイミドベース基板)である。任意で、ベース基板は相対的なインフレキシブルベース基板(例えば、ガラスベース基板)である。
【0035】
一部の実施例において、アモルファスシリコン層aSiを形成する前に、前記方法には、一切の後続ステップの前にベース基板の表面から汚染物を除去するプリクリーニングステップをさらに含む。
【0036】
一部の実施例において、アモルファスシリコン層aSiを形成する前に、前記方法には、ベース基板にバッファ層(図示しない)を形成するステップをさらに含む。任意で、バッファ層はベース基板とアモルファスシリコン層aSiとの間に位置し、例えば、アモルファスシリコン層aSiの、ベース基板に近い一方に位置する。各種の適切な材料をバッファ層の製造に用いることができる。バッファ層の製造に適した例としての材料には、酸化シリコン(SiO)、窒化ケイ素(SiN)またはその組合せを含むが、これらには限定されない。任意で、バッファ層の厚さは約1000Å〜約4000Åの範囲内であり、例えば、約1000Å〜約3000Å、約2000Å〜約4000Å、または約2000Å〜約3000Åである。
【0037】
一部の実施例において、バッファ層を形成する前に、前記方法には、ベース基板に補助アモルファスシリコン層(図示しない)を形成するステップをさらに含む。任意で、補助アモルファスシリコン層はバッファ層とベース基板との間に位置し、例えば、バッファ層の、ベース基板に近い一方に位置する。一部の実施例において、補助アモルファスシリコン層の厚さは約10nm〜約60nmの範囲内であり、例えば、約10nm〜約20nm、約20nm〜約30nm、約30nm〜約40nm、約40nm〜約50nm、または約50nm〜約60nmである。補助アモルファスシリコン層はアモルファスシリコン層aSiの結晶ステップ(例えば、エキシマレーザアニーリングステップ)で放出された熱を吸収し、且つ当該結晶ステップにおいてベース基板が損傷を受けることを防止する。
【0038】
一部の実施例において、前記方法には、補助アモルファスシリコン層を脱水素処理するステップをさらに含む。任意で、補助アモルファスシリコン層にバッファ層を形成する前に、補助アモルファスシリコン層を脱水素処理するステップを実行する。任意で、補助アモルファスシリコン層にバッファ層を形成した後、アモルファスシリコン層を形成する前に、補助アモルファスシリコン層を脱水素処理するステップを実行する。脱水素処理の目的は補助アモルファスシリコン層における水素含量を低減させるかまたは除去することであり、結晶ステップでの水素爆発を防止する。任意で、前記方法には、ベース基板に補助アモルファスシリコン層を形成するステップと、補助アモルファスシリコン層の、ベース基板から離れた一方にバッファ層を形成するステップと、補助アモルファスシリコン層とバッファ層を脱水素処理するステップと、バッファ層の、補助アモルファスシリコン層から離れた一方にアモルファスシリコン層を形成するステップと、を順に含む。
【0039】
一部の実施例において、前記方法にはアモルファスシリコン層aSiを脱水素処理するステップをさらに含む。同様に、脱水素処理の目的はアモルファスシリコン層における水素含量を低減させるかまたは除去することであり、結晶ステップでの水素爆発を防止する。
【0040】
一部の実施例において、熱アニール方法を用いて脱水素ステップを実行する。ベース基板を製造するための材料を含む各種要素に基づいて熱アニール工程の温度を確定することができる。例えば、フレキシブルベース基板に適した熱アニール温度との比較において、ガラスベース基板を使用した時の熱アニール温度は相対的により高い。任意で、窒素ガスを周囲雰囲気とするチャンバーにおいて熱アニールを実行する。任意で、熱アニール温度は400℃よりも低く、例えば、約300℃〜約400℃の範囲である。
【0041】
一部の実施例において、ベース基板は、相対的なインフレキシブルベース基板(例えばガラスベース)である。任意で、前記方法には、ベース基板にアモルファスシリコン層aSiを形成し、アモルファスシリコン層aSiを脱水素処理するステップをさらに含む。任意で、前記方法には、ベース基板にバッファ層を形成し、バッファ層の、ベース基板から離れた一方にアモルファスシリコン層aSiを形成し、アモルファスシリコン層aSiを脱水素処理するステップをさらに含む。
【0042】
一部の実施例において、ベース基板は例えばポリイミドベース基板のフレキシブルベース基板である。任意で、前記方法には、ガラス基板にフレキシブルベース基板(例えばポリイミドベース基板)を形成するステップと、フレキシブルベース基板に補助アモルファスシリコン層を形成するステップと、補助アモルファスシリコン層の、フレキシブルベース基板から離れた一方にバッファ層を形成する(例えば、バッファ層には、積層した酸化シリコンと窒化ケイ素の2層のような、酸化シリコンと窒化ケイ素の組み合わせが含まれる)ステップと、補助アモルファスシリコン層を脱水素処理するステップと、バッファ層の、補助アモルファスシリコン層から離れた一方にアモルファスシリコン層を形成するステップと、を含む。任意で、バッファ層を形成するステップの前に補助アモルファスシリコン層を脱水素処理するステップを実行する。任意で、バッファ層を形成したステップの後、補助アモルファスシリコン層を脱水素処理するステップを実行する。
【0043】
図1B、2Bを参照すると、一部の実施例における方法には、アモルファスシリコン層aSiの、ベース基板から離れた一方に、第1導電型を有し、第1ドーパントを含む第1ドーパント層CD(例えば、チャネルドーピング(CD)層)を形成するステップをさらに含む。ある実施において、第1ドーパントはP型ドーパントであり、例えば、元素周期表のIIIA族元素、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)が含まれる。一部の実施例において、第1ドーパントはN型ドーパントであり、例えば、元素周期表のVA族元素、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)とビスマス(Bi)が含まれる。
【0044】
一部の実施例において、薄膜トランジスタはN型薄膜トランジスタであり、第1ドーパントはP型ドーパントである。一部の実施例において、薄膜トランジスタはN型薄膜トランジスタであり、第1ドーパントはN型ドーパントである。一部の実施例において、薄膜トランジスタはN型薄膜トランジスタであり、第1ドーパントにはホウ素が含まれる。一部の実施例において、薄膜トランジスタはN型薄膜トランジスタであり、第1ドーパントにはリンとヒ素のいずれか1つまたは両方が含まれる。一部の実施例において、薄膜トランジスタはP型薄膜トランジスタであり、第1ドーパントにはリンとヒ素のいずれか1つまたは両方が含まれる。
【0045】
各種の適切な方法を第1ドーパント層CDの製造に用いることができる。各種の適切な方法の例にはプラズマ化学気相堆積法(PECVD)と原子層堆積(ALD)が含まれるが、これらには限限定されない。任意で、原子層堆積法を用いて第1ドーパント層CDを形成する。各種の適切なドーピング濃度を第1ドーパント層の形成に用いることができる。任意で、ドーピング濃度は約1×1011atom/cm〜約1×1013atom/cmの範囲内であり、例えば、約1×1011atom/cm〜約1×1012atom/cm、または約1×1012atom/cm〜約1×1013atom/cmである。任意で、第1ドーパント層CDは実質的に単層の原子層である。
【0046】
図1C、2Cを参照すると、一部の実施例の方法には、第1ドーパント層CDの、アモルファスシリコン層aSiから離れた一方にフォトレジスト層PRを形成するステップをさらに含む。任意で、フォトレジスト層PRの厚さは約1μm〜2.5μmの範囲内である。
【0047】
図1D、2Dを参照すると、一部の実施例の方法には、ハーフトーンマスクプレートまたはグレイトーンマスクプレートを用いてフォトレジスト層PRを露光し、露光されたフォトレジスト層を現像することで、第1部分、第2部分、第3部分を有するフォトレジストパターンを得るステップをさらに含み、第1部分は薄膜トランジスタのソース電極とドレイン電極に対応し、第2部分は薄膜トランジスタの活性層に対応し、第3部分は第1部分と第2部分の外部に位置し、フォトレジスト材料は第3部分にて除去される(例えば図2Eを参照)。第1部分は部分的に露光され、第2部分は実質的に露光されておらず、第3部分は完全に露光される。
【0048】
第3部分においてフォトレジスト材料を除去した後、前記方法は、第3部分におけるアモルファスシリコン層aSiと第1ドーパント層CDを除去することで、薄膜トランジスタの活性層に対応するアモルファスシリコン層パターンを形成するというステップをさらに含んでも良い(例えば図2Fを参照)。
【0049】
図1Eを参照すると、一部の実施例は(例えば、アッシングにより)第1部分におけるフォトレジスト層PRを除去するとともに、第2部分におけるフォトレジスト層PRを保持することで、図1F、2Gで示すように、第1部分におけるアモルファスシリコン層aSi(と残りの第1ドーパント層CD)を露出させるステップをさらに含む。
【0050】
図1G、2Hを参照すると、一部の実施例における方法には、第1部分におけるアモルファスシリコン層aSi(と残りの第1ドーパント層CD)の、ベース基板から離れた一方と、第2部分における残りのフォトレジスト層の、アモルファスシリコン層aSiから離れた一方に、第2導電型を有し且つ第2ドーパントを含む第2ドーパント層SDD(例えば、ソース−ドレインドーピング(SDD)層)を形成するステップをさらに含む。一部の実施例において、薄膜トランジスタはN型薄膜トランジスタであり、第2ドーパントはN型ドーパントである(例えば、元素周期表のVA族元素、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)を含む)。一部の実施例において、薄膜トランジスタはP型薄膜トランジスタであり、第1ドーパントはP型ドーパントである(例えば、元素周期表のIIIA族元素、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)を含む)。
【0051】
一部の実施例において、薄膜トランジスタはN型薄膜トランジスタであり、第2ドーパントにはリンとヒ素のいずれか1つまたは両方が含まれる。任意で、第2ドーパント層には酸化リン、窒化リンまたはリン酸窒化物が含まれる。任意で、第2ドーパント層には酸化ヒ素、窒化ヒ素、ヒ素酸窒化物を含む。一部の実施例において、薄膜トランジスタはP型薄膜トランジスタであり、第2ドーパントにはホウ素を含む。任意で、第2ドーパント層には、酸化ホウ素、窒化ホウ素、ホウ素酸窒化物を含む。
【0052】
各種の適切な方法を第2ドーパント層CDの製造に用いることができる。各種の適切な方法の例にはプラズマ化学気相堆積法(PECVD)と原子層堆積(ALD)を含むが、これらには限定されない。任意で、原子層堆積法を用いて第2ドーパント層SDDを形成する。各種の適切なドーピング濃度を第2ドーパント層の形成に用いることができる。任意で、ドーピング濃度は約1×1014atom/cm〜約1×1016atom/cmの範囲内であり、例えば、約1×1014atom/cm〜約1×1015atom/cm、または約1×1015atom/cm〜約1×1016atom/cm)である。任意で、第2ドーパント層SDDは実質的に単層の原子層である。
【0053】
図1H、2Iを参照すると、一部の実施例は第2部分におけるフォトレジスト層PRを除去することで、第2部分における第1ドーパント層CDを露出させるステップをさらに含む。第2部分におけるフォトレジスト層PRの除去とともに、第2部分における第2ドーパント層SDDも除去される。各種の適切な方法を第2部分におけるフォトレジスト層PRの除去に用いることができる。一部の実施例において、第2部分におけるフォトレジスト層PRを剥離することで、第2部分におけるフォトレジスト層PRを除去するステップを実行する。任意で、アッシングによりフォトレジスト層PRを剥離する。任意で、剥離方法によりフォトレジスト層PRを剥離する。例えば、フォトレジスト層PRは溶剤(例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)の有機溶剤)で剥離することができる。任意で、例えば約60℃の温度で剥離を実行することができる。剥離の後、例えば、エチルアルコールを用いて基板を洗い、基板を乾かす。図1H、2Iで示すように、第2部分におけるフォトレジスト層PRを除去した後、基板には、アモルファスシリコン層aSiの、ベース基板から離れた一方上の第2部分における第1ドーパント層CDと、アモルファスシリコン層aSi(と残りの第1ドーパント層CD)の、ベース基板から離れた一方上の、第1部分における第2ドーパント層SDDと、を含む。
【0054】
図1I、2Jを参照すると、一部の実施例における方法には、アモルファスシリコン層aSiを結晶させる(これにより、多結晶シリコン活性層を形成する)ステップをさらに含む。あらゆる適切な結晶方法を用いて結晶ステップを実行することができる。一部の実施例において、下記方法(エキシマレーザアニーリング(ELA)、固相結晶化(SPC)、逐次横方向結晶化(SLS)、金属誘起結晶化(MIC)、金属誘起横方向結晶化(MILC))を含むグループから方法を選択して結晶ステップを実行することができる。任意で、エキシマレーザアニーリングを用いて結晶ステップを実行する(図1I、2Jで示す通り)。
【0055】
一部の実施例において、結晶ステップは低温で実行し、例えば、フレキシブルベース基板(例えば、ポリイミド基板)が安定性を十分に保持できる温度範囲内で実行される。任意で、ある温度範囲内で結晶ステップを実行することで、ベース基板の温度は400℃よりも低く、例えば、約300℃〜約400℃の間、または約200℃〜約300℃の間、またはより低く保持される。
【0056】
一部の実施例において、エキシマレーザアニーリングを用いて結晶ステップを実行する。エキシマレーザアニーリングは低温で多結晶半導体層を製造する方法である。エキシマレーザは高エネルギーレーザビームをアモルファスシリコン層に出射することにより、数十ナノ秒の時間にアモルファスシリコン層を結晶させる。エネルギーは実質的にアモルファスシリコン層に吸収され、アモルファスシリコン材料の相転移に消耗される。アモルファスシリコンは非常に短い時間(例えば、約15ns〜約50nsのレーザパルス時間)で融解して結晶する。エキシマレーザアニーリングの熱的効果は極めて局所的なものであり、例えば約20nmの深さ内に制限することができ、局所的にアモルファスシリコン層を約1000℃まで加熱して(例えば、加熱はアモルファスシリコン層内に制限される)、アモルファスシリコンを多結晶形式に転化する。ベース基板に伝達された熱は高度に規制され、例えば、熱はベース基板へ放熱されることはなく、ベース基板は全く損傷しない。適切なレーザ波長とパワーを選択することにより、前記方法は下層のベース基板に影響を与えずに、アモルファスシリコン層を融解して結晶させることに応用できる。
【0057】
任意で、エキシマレーザはXeClレーザ(例えば、308nmの波長)、ArFレーザ、KrFレーザとXeFレーザのうちの1つであり、即ち、XeCl、ArF、KrFまたはXeF分子を用いてエキシマレーザアニーリングを実行する。任意で、エキシマレーザアニーリング工程は約100Hz〜約400Hzの範囲内のレーザパルス周波数(例えば、約100Hz〜約200Hz、約200Hz〜約300Hz、または約300Hz〜約400Hz)で実行される。任意で、エキシマレーザアニーリング工程は約90%〜約98%(例えば、約90%〜93%、約93%〜約96%、約96%〜約98%)のオーバーラップ率で実行される。任意で、エキシマレーザアニーリング工程は100nsよりも小さい(例えば、約15ns〜約50ns、約50ns〜約75ns、または約75ns〜約95ns)レーザパルス幅で実行される。任意で、エキシマレーザアニーリング工程は約100mJ/cm〜約600mJ/cm(例えば、約100mJ/cm〜約300mJ/cm、約300mJ/cm〜約450mJ/cm、または約450mJ/cm〜約600mJ/cm)のレーザエネルギー密度で実行される。
【0058】
結晶工程(例えばエキシマレーザアニーリング工程)期間に、第1ドーパント層CDにおける第1ドーパントはアモルファスシリコン層aSiの第2部分に拡散し、且つ第2ドーパント層SDDにおける第2ドーパントはアモルファスシリコン層aSiの第1部分に拡散する。また、アモルファスシリコン層aSiは融解し、多結晶シリコンとして結晶する。
【0059】
図1Jを参照すると、多結晶シリコン活性層LTPSは、第1ドーパント層のドーパントがドープされた第2領域2と、第2ドーパント層のドーパントがドープされた第1領域1と、を含むように形成される。第1領域には、ソース電極に対応する領域1aと、ドレイン電極に対応する領域1bと、を含む。
【0060】
図1K、2Kを参照すると、一部の実施例の方法には、多結晶シリコン活性層LTPSの、ベース基板から離れた一方にゲート絶縁層GIを形成するステップをさらに含む。あらゆる適切なゲート絶縁材とあらゆる適切な製造方法をゲート絶縁層GIの製造に用いることができる。例えば、ゲート絶縁材はプラズマ化学気相堆積(PECVD)技術によりベース基板に堆積することができる。ゲート絶縁材に適した例には、酸化シリコン(SiO)、窒化ケイ素(SiN、例えばSi)、オキシ窒化ケイ素(SiO)が含まれるが、これらには限定されない。任意で、ゲート絶縁層GIは単層構造を有してもよく、または2つもしくはより多くのサブレイヤー積層構造を含んでもよい(例えば、酸化シリコンサブレイヤーと窒化ケイ素サブレイヤーの積層構造を含む)。任意で、ゲート絶縁層は約80nm〜約150nmの範囲の厚さを有する。
【0061】
図1L、2Lを参照すると、一部の実施例の方法にはゲート絶縁層GIの、多結晶シリコン活性層LTPSから離れた一方にゲート電極層GLを形成するステップをさらに含む。あらゆる適切なゲート電極材とあらゆる適切な製造方法をゲート電極層GLの製造に用いることができる。例えば、ゲート電極材は(例えば、スパッタリングまたは気相堆積により)ベース基板に堆積され、(例えば、ウェットエッチング技術のようなリソグラフィーにより)パターン化されることで、ゲート電極層GLを形成する。ゲート電極材に適した例には、アルミニウム、クロム、タングステン、チタン、タンタル、モリブデン、銅及びこれらを含む合金あるいは積層を含むが、これらには限定されない。任意で、ゲート電極層は単層構造を有してもよく、または2つもしくはより多くのサブレイヤー積層構造を含んでもよい。任意で、ゲート電極層は約150nm〜約300nmの範囲の厚さを有する。
【0062】
図1M、2Mを参照すると、一部の実施例の方法には、ゲート電極層GLの、ゲート絶縁層GIから離れた一方に層間絶縁膜層ILDを形成するステップをさらに含む。あらゆる適切な層間絶縁膜材料とあらゆる適切な製造方法を層間絶縁膜層ILDの製造に用いることができる。例えば、層間絶縁膜材料はプラズマ化学気相堆積(PECVD)技術により、ベース基板に堆積することができる。層間絶縁膜材料に適した例には、酸化シリコン(SiO)、窒化ケイ素(SiN、例えばSi)、オキシ窒化ケイ素(SiO)を含むが、これらには限定されない。任意で、層間絶縁膜層は単層構造を有してもよく、または2つもしくはより多くのサブレイヤー積層構造(例えば、酸化シリコンサブレイヤーと窒化ケイ素サブレイヤーの積層構造)を含んでもよい。任意で、層間絶縁膜層ILDは約200nm〜約500nmの範囲の厚さを有する。
【0063】
図1N、2Nを参照すると、一部の実施例の方法には、多結晶シリコン活性層LTPSの第1領域(例えば、図1Jにおける領域1aと領域1b)に対応する領域に、ソースビアホールSVとドレインビアホールDVを形成するステップをさらに含む。ソースビアホールとドレインビアホールは延伸して層間絶縁膜層ILDとゲート絶縁層GIを通り抜けて、多結晶シリコン活性層LTPSの第1領域1(例えば、図1Jにおける領域1aと領域1b)を露出する。
【0064】
図1O、2Oを参照すると、一部の実施例の方法には、層間絶縁膜層ILDの、多結晶シリコン活性層LTPSから離れた一方にソース電極Sとドレイン電極Dを形成し、ソース電極Sは延伸してソースビアホールSVを通り抜けて、多結晶シリコン活性層LTPSと接触し、ドレイン電極Dは延伸してドレインビアホールDVを通り抜けて、多結晶シリコン活性層LTPSと接触することをさらに含む。あらゆる適切なソース電極とドレイン電極材及びあらゆる適切な製造方法をソース電極Sとドレイン電極Dの製造に用いることができる。例えば、ソース電極とドレイン電極材は(例えば、スパッタリングまたは気相堆積により)ベース基板に堆積され、(例えば、ウェットエッチング技術のようなリソグラフィーにより)パターン化されることで、ソース電極Sとドレイン電極Dを形成する。ソース電極とドレイン電極材に適した例には、アルミニウム、クロム、タングステン、チタン、タンタル、モリブデン、銅及びこれらを含む合金あるいは積層を含むが、これらには限定されない。任意で、ソース電極とドレイン電極は単層構造を有してもよく、または2つもしくはより多くのサブレイヤー積層構造を含んでもよい。
【0065】
図3は一部の実施例における薄膜トランジスタの製造工程を示すフローチャートである。図3を参照すると、本実施例において薄膜トランジスタを製造する方法には、フレキシブルベース基板に補助アモルファスシリコン層を形成することと、補助アモルファスシリコン層の、フレキシブルベース基板から離れた一方にバッファ層を形成することと、補助アモルファスシリコン層を脱水素処理することと、バッファ層の、補助アモルファスシリコン層から離れた一方にアモルファスシリコン層を形成することと、アモルファスシリコン層を脱水素処理することと、アモルファスシリコン層の、ベース基板から離れた一方に第1ドーパント層を形成することと、第1ドーパント層の、アモルファスシリコン層から離れた一方にフォトレジスト層を形成することと、ハーフトーンマスクプレートまたはグレイトーンマスクプレートを用いてフォトレジスト層を露光し、露光されたフォトレジスト層を現像することで、第1部分、第2部分と第3部分を有するフォトレジストパターンを得、第1部分は薄膜トランジスタのソース電極とドレイン電極に対応し、第2部分は薄膜トランジスタの活性層に対応し、第3部分は第1部分と第2部分の外部に位置し、第1部分は部分的に露光され、第2部分は実質的に露光されておらず、第3部分は完全に露光されるということと、第3部分においてフォトレジスト材料を除去することと、第3部分におけるアモルファスシリコン層と第1ドーパント層を除去することで、薄膜トランジスタの活性層に対応するアモルファスシリコン層パターンを形成することと、第1部分におけるフォトレジスト層を除去するとともに、第2部分におけるフォトレジスト層を保持することで、第1部分におけるアモルファスシリコン層を露出させることと、第1部分におけるアモルファスシリコン層の、ベース基板から離れた一方と、第2部分におけるフォトレジスト層の、アモルファスシリコン層から離れた一方に第2ドーパント層を形成することと、第2部分におけるフォトレジスト層を除去することで、第2部分における第1ドーパント層を露出させることと、アモルファスシリコン層を結晶させることで、第1領域と第2領域を有する多結晶シリコン活性層を形成し、第1領域には第2ドーパント層のドーパントがドープされ、薄膜トランジスタのソース電極とドレイン電極に対応し、第2領域には第1ドーパント層のドーパントがドープされ、薄膜トランジスタのチャネル領域に対応することと、多結晶シリコン活性層の、ベース基板から離れた一方にゲート絶縁層を形成することと、ゲート絶縁層の、多結晶シリコン活性層から離れた一方にゲート電極層を形成することと、ゲート電極層の、ゲート絶縁層から離れた一方に層間絶縁膜層を形成することと、多結晶シリコン活性層の第1領域に対応する領域にソースビアホールとドレインビアホールを形成し、ソースビアホールとドレインビアホールは延伸して層間絶縁膜層とゲート絶縁層を通り抜けて、多結晶シリコン活性層の第1領域を露出することと、ソースビアホールとドレインビアホールにソース電極とドレイン電極を形成するということを含む。
【0066】
一部の実施例において、前記方法には、ソース電極と多結晶シリコン活性層の間、ドレイン電極と多結晶シリコン活性層との間に1つまたは複数の層(例えば、オーミック接触層)を形成するステップをさらに含む。任意で、前記方法には、ソース電極と多結晶シリコン活性層の間にオーミック接触層を形成するステップをさらに含む。任意で、前記方法には、ドレイン電極と多結晶シリコン活性層との間にオーミック接触層を形成するステップをさらに含む。
【0067】
また、本開示は薄膜トランジスタを提供する。一部の実施例において、当該薄膜トランジスタは、ベース基板上の多結晶シリコン活性層、多結晶シリコン活性層の、ベース基板から離れた一方上のゲート絶縁層、ゲート絶縁層の、多結晶シリコン活性層から離れた一方上のゲート電極層、及びゲート絶縁層の、多結晶シリコン活性層から離れた一方上のソース電極とドレイン電極を含み、ソース電極とドレイン電極は延伸してゲート絶縁層を通り向けて、多結晶シリコン活性層と接触する。多結晶シリコン活性層は、チャネル領域及びソース電極とドレイン電極の接触領域を含む。多結晶シリコン活性層はソース電極とドレイン電極の接触領域において、ソース電極とドレイン電極に接触する。チャネル領域には第1導電性を有する第1ドーパントがドープされ、ソース電極とドレイン電極の接触領域には第2導電性を有する第2ドーパントがドープされる。
【0068】
一部の実施例において、ソース電極とドレイン電極はソース電極とドレイン電極の接触領域と直接接触する。一部の実施例において、ソース電極とドレイン電極は1つまたは複数の層(例えば、オーミック接触層)によりソース電極とドレイン電極の接触領域と接触する。任意で、薄膜トランジスタは、ソース電極と多結晶シリコン活性層との間に位置するオーミック接触層をさらに含む。任意で、薄膜トランジスタは、ドレイン電極と多結晶シリコン活性層との間に位置するオーミック接触層をさらに含む。
【0069】
また、本開示は本文に記載の方法により製造された薄膜トランジスタを提供する。
【0070】
また、本開示は、本文に記載の薄膜トランジスタまたは本文に記載の方法により製造された薄膜トランジスタを備えるアレイ基板を提供する。
【0071】
また、本開示は本文に記載のアレイ基板を有する表示装置を提供する。適切な表示装置の例には、電子ペーパー、携帯電話、タブレット型コンピューター、テレビ、モニター、ノート型パソコン、デジタルフォトフレーム、GPSなどを含むが、これらには限定されない。
【0072】
説明と例示を目的として本発明実施例の上記記載を提供したが、これは全てを網羅しているわけではなく、また、正確な形式又は開示される例示としての実施例に本発明を限定するものでもない。従って、上記記載は説明を目的としたものであると理解すべきであり、限定を目的としたものとして理解すべきではない。明らかに、多くの修正と変形は当業者にとって自明である。各実施例を選択、記述したのは、本発明の原理と最も好ましい形態での実際の応用の解釈に便宜を図るためであり、これにより当業者は本発明の各実施例と適応される特定の用途と予見で実行される各変形を理解することができる。別途説明がなければ、本発明の範囲は添付の請求項およびすべての技術用語の最も広く合理的な範囲内での意味の同等物で限定される。従って、「発明」、「本発明」などの用語は請求項の範囲を必然的に具体的な実施例に限定するのではなく、本発明の例示としての実施例の引用は本発明に対する限定を意味せず、このような限定が推断されることも意図としていない。本発明は添付の請求項の思想と範囲で限定される。このほか、これらの請求項は「第1」、「第2」などの、名詞または要素を修飾する語を使用する場合があるが、具体的な数が示されていなければ、これらの用語は名づけの方法として理解すべきであり、この名づけの方法によって修飾される要素に対する数量の限定と理解すべきではない。記載されたあらゆる利点と効果が本発明の全ての実施例に適用されるとは限らない。請求項で限定されている本発明の範囲を離脱しない状況において、当業者は記載の実施例を変更することができる。このほか、当該要素または構成要素が請求項に明確に記載されているか否かに関わらず、本開示における要素と構成要素を公衆に捧げる意図はない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図1K
図1L
図1M
図1N
図1O
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図2L
図2M
図2N
図2O
図3