(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、様々な幅の板材に容易に適応させることができるピンチロール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係るピンチロール装置は、板材の搬送用のピンチロールと、ピンチロールを板材に押し付ける第一の力を発生させる押付部と、押付部に対して着脱可能であり、ピンチロールを保持して押付部からピンチロールに第一の力を伝達する保持部と、を備える。
【0006】
ピンチロールによって板材を適切な荷重分布で加圧するためには、板材の幅に応じてピンチロールの長さを変更する必要がある。既設のピンチロールを、当該ピンチロールよりも長い又は短いピンチロールに交換するためには、押付部側における配置変更も必要となる。このため、ピンチロールの交換作業が煩雑となる。これに対し、本ピンチロール装置によれば、ピンチロールと押付部との間に保持部が介在するので、押付部側の配置変更を行うことなく、様々な長さのピンチロールを押付部に取り付けることが可能となる。また、保持部とピンチロールとを一ユニット(以下、「ロールユニット」という。)とし、ロールユニット単位でピンチロールの交換を行うことで、ピンチロールの長さを容易に変更することができる。したがって、様々な幅の板材に容易に適応させることができる。
【0007】
ピンチロール装置は、ピンチロールに曲げモーメントを加えるベンダを更に備え、ベンダは保持部に設けられていてもよい。この場合、ベンダからピンチロールに作用する力は、ロールユニットにおける内力(ロールユニット外には影響しない力)となる。このため、第一の力に実質的な影響を及ぼすことなくピンチロールに曲げモーメントを加えることができる。
【0008】
保持部は、押付部に着脱可能な梁状の本体と、トラニオン軸を介して本体に保持され、ピンチロールの両端部を回転自在に保持する第一軸受部及び第二軸受部と、を有していてもよい。この場合、ベンダによる曲げモーメントが作用した状態においても、ピンチロールのスムーズな回転を維持することができる。
【0009】
ベンダは、第一軸受部及び第二軸受部とは異なる位置にて、ピンチロールを回転自在に保持する第三軸受部及び第四軸受部と、トラニオン軸を介して第三軸受部に曲げモーメントの発生用の第二の力を加える第一ベンド駆動部と、トラニオン軸を介して第四軸受部に曲げモーメントの発生用の第三の力を加える第二ベンド駆動部と、を有していてもよい。この場合、ピンチロールのスムーズな回転を維持しつつ、ピンチロールに曲げモーメントを発生させることができる。
【0010】
ピンチロール装置は、ピンチロールの軸線方向と、第一の力の方向とに交差する軸線まわりに回転可能となるように保持部に設けられたローラと、第一の力の方向におけるローラの移動を許容しつつ、軸線方向におけるローラの移動を規制するスラスト拘束部と、を更に備えていてもよい。この場合、加圧方向(第一の力の方向)において保持部に作用する摩擦力を低減し、押付部からピンチロールに伝わる力を高精度に調節することができる。
【0011】
ピンチロール装置は、ピンチロールの軸線方向における当該ピンチロールの移動を規制しつつ、当該ピンチロールにトルクを伝達するトルク伝達部を更に備えていてもよい。この場合、加圧方向における摩擦力を生じさせることなくピンチロールの移動を規制することができる。したがって、押付部からピンチロールに伝わる力をより高精度に調節することができる。
【0012】
ピンチロール装置は、上記ピンチロールである第一ピンチロールと、上記保持部であって第一ピンチロールを保持する第一保持部とを有する第一ロールユニットと、上記ピンチロールであって第一ピンチロールとの間に板材を挟む第二ピンチロールと、上記保持部であって第二ピンチロールを保持する第二保持部とを有し、第一ロールユニットの上方に位置する第二ロールユニットと、を備え、第一ピンチロールの軸線方向における当該第一ピンチロールの移動を規制しつつ、当該第一ピンチロールにトルクを伝達する第一トルク伝達部と、第二ピンチロールの軸線方向における当該第二ピンチロールの移動を許容しつつ、当該第二ピンチロールにトルクを伝達する第二トルク伝達部と、第二ピンチロールの軸線方向と、第一の力の方向とに交差する軸線まわりに回転可能となるように第二保持部に設けられたローラと、第一の力の方向におけるローラの移動を許容しつつ、第二ピンチロールの軸線方向におけるローラの移動を規制するスラスト拘束部と、を更に備えていてもよい。
【0013】
上側の第二ロールユニットに対しては、軸線方向における第二ピンチロールの移動を許容しつつ、当該第二ピンチロールにトルクを伝達する第二トルク伝達部と、加圧方向における第二ピンチロールの移動を許容しつつ軸線方向における第二ピンチロールの移動を規制するローラ及びスラスト拘束部とが採用されているので、第二ピンチロールの昇降により、ピンチロール同士の間隔を容易に変更することができる。このため、装置の使い易さが向上する。下側の第一ロールユニットに対しては、軸線方向における第一ピンチロールの移動を規制しつつ当該第一ピンチロールにトルクを伝達する第一トルク伝達部が採用されているので、ローラ及びスラスト拘束部を有しない簡素な構造にて第一ピンチロールの移動を規制することができる。このため、下方に流れたスケール等の堆積を抑制し、メンテナンスのし易さを向上させることができる。したがって、使い易さとメンテナンスのし易さとの両立を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、様々な幅の板材に容易に適応させることができるピンチロール装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
〔ピンチロール装置〕
図1及び
図2に示すピンチロール装置1は、金属等の板材の製造・処理ラインにおいて、製造・処理対象の板材に張力を付与しながら通板するための装置である。製造ラインの具体例としては、ホットストリップミル、コールドストリップミル、又はストリップ鋳造のラインが挙げられる。処理ラインの具体例としては、連続焼鈍、表面処理、スリッタ、又は自動プレス等のラインが挙げられる。
【0018】
ピンチロール装置1は、板材2の搬送用のピンチロールと、ピンチロールを板材2に押し付ける第一の力を発生させる押付部と、押付部に対して着脱可能であり、ピンチロールを保持して押付部からピンチロールに第一の力を伝達する保持部とを備える。例えばピンチロール装置1は、ロールユニット200,300と、押付部100と、ベンダ400,500と、トルク伝達部30,40と、ローラ10と、スラスト拘束部20とを備える。
【0019】
ロールユニット200(第一ロールユニット)は、ピンチロール210(第一ピンチロール)と、ピンチロール210を保持する保持部220(第一保持部)とを有する。ロールユニット300(第二ロールユニット)は、ピンチロール210との間に板材2を挟むピンチロール310(第二ピンチロール)と、ピンチロール310を保持する保持部320(第二保持部)とを有する。一例として、板材2は水平に配置される。ピンチロール210,310は互いに平行に配置され、ピンチロール210が板材2の下面に接し、ピンチロール310が板材2の上面に接する。以下における「前後左右」は、ピンチロール210,310の一端側(例えば
図2の左側)を「左」とし、ピンチロール210,310の他端側を「右」とした方向を意味する。
【0020】
押付部100は、ピンチロール210を板材2の下面に押し付ける上向きの力(第一の力)を保持部220に加え、当該力を保持部220がピンチロール210に伝える。また、押付部100は、ピンチロール310を板材2の上面に押し付ける下向きの力(第一の力)を保持部320に加え、当該力を保持部320がピンチロール310に伝える。
【0021】
ベンダ400(第一ベンダ)は、保持部220に設けられており、ピンチロール210に曲げモーメントを加える。ベンダ500(第二ベンダ)は、保持部320に設けられており、ピンチロール310に曲げモーメントを加える。
【0022】
トルク伝達部30(第一トルク伝達部)は、例えば電動モータ等の動力源からピンチロール210に回転トルクを伝達する。トルク伝達部40(第二トルク伝達部)は、例えば電動モータ等の動力源からピンチロール310に回転トルクを伝達する。
【0023】
ローラ10及びスラスト拘束部20は、ピンチロール210の軸線方向に沿った当該ピンチロール210の移動を規制する。以下、押付部100、ロールユニット200,300、ベンダ400,500、トルク伝達部30,40、ローラ10及びスラスト拘束部20の構成を具体的に例示する。
【0024】
(押付部)
押付部100は、スタンド110と、圧下装置120A,120Bと、支持部140A,140Bとを有する。スタンド110は、ロールユニット200,300を保持する。スタンド110は、ハウジング111A,111Bと、二つの上セパレータ113と、下セパレータ114とを有する。
【0025】
ハウジング111Aは、ロールユニット200,300の左側部分を包囲する。ハウジング111Aは、ロールユニット200,300に下方及び前後方向から対向するU字状の下ハウジング115と、ロールユニット200,300に上方から対向するキャップ116とを有する。キャップ116は、下ハウジング115の前側上端部及び後側上端部の間に架け渡され、下ハウジング115に着脱自在に取り付けられる。ハウジング111Bは、ハウジング111Aと同様に構成され、ロールユニット200,300の右側部分を包囲する。
【0026】
二つの上セパレータ113及び下セパレータ114は、それぞれ左右方向に延び、ハウジング111Aとハウジング111Bとを接続する。二つの上セパレータ113は、ロールユニット300の前後にそれぞれ配置され、左右方向に延びて下ハウジング115の上部同士を接続する。下セパレータ114はロールユニット200の下に配置され、下ハウジング115の下部同士を接続する。
【0027】
圧下装置120A,120Bは、例えば油圧シリンダであり、ロールユニット300の保持部320に下向きの力を加える。圧下装置120Aは、ハウジング111Aのキャップ116の上に取り付けられている。圧下装置120Aは、キャップ116を貫通して下方に突出したロッド121と、ロッド121の下端部に設けられた着脱用ブラケット122とを有する。着脱用ブラケット122は、保持部320の左側部分に取り付けられる取付プレート123と、取付プレート123の上に設けられロッド121の下端部に接続される継手部124とを有する。圧下装置120Aは、ロッド121を下側に押すことによって、保持部320の左側部分に下向きの力を加える。
【0028】
圧下装置120Bは、ハウジング111Bのキャップ116の上に取り付けられている。圧下装置120Bは、圧下装置120Aと同様に、キャップ116を貫通して下方に突出したロッド121と、ロッド121の下端部に設けられた着脱用ブラケット122とを有する。圧下装置120Bは、ロッド121を下側に押すことによって、保持部320の右側部分に下向きの力を加える。
【0029】
支持部140A,140Bは、ロールユニット200を支持する。支持部140A,140Bは、圧下装置120A,120Bがロールユニット300の保持部320に下向きの力を加えるのに応じ、ロールユニット200の保持部220に上向きの反力を加える。支持部140Aは、ハウジング111Aの下ハウジング115の底部上に取り付けられており、保持部220の左側部分を支持する。支持部140Bは、ハウジング111Bの下ハウジング115の底部上に取り付けられており、保持部220の右側部分を支持する。支持部140A,140Bは、上記反力を計測するためのロードセル141を有してもよい。
【0030】
(ロールユニット)
上述したように、ロールユニット200は、ピンチロール210と保持部220とを有する。ピンチロール210は、左右方向に延びたロール本体211と、ロール本体211の左端から更に左に延びたロールネック212Aと、ロール本体211の右端から更に右に延びたロールネック212Bとを有する。
【0031】
保持部220は、本体230と、軸受部260A,260Bと、保持用ブラケット240A,240Bとを有する。本体230は、左右に延びた梁状体であり、ハウジング111A,111B内において支持部140A,140B上に配置可能(押付部100に着脱可能)である。本体230は、クロスビーム231と、二つの側壁232とを有する。
【0032】
クロスビーム231は、左右方向に延びており、片面(以下、「対向面231a」という。)を上にして支持部140A,140B上に配置される。二つの側壁232は、クロスビーム231の前側の縁及び後側の縁にそれぞれ設けられている。それぞれの側壁232は、対向面231aから上方に突出し、左右方向に延びている。
【0033】
軸受部260A,260Bは、ピンチロール210の両端部を回転自在に保持する。例えば、軸受部260A(第一軸受部)はピンチロール210の左側のロールネック212Aを回転自在に保持し、軸受部260B(第二軸受部)はピンチロール210の右側のロールネック212Bを回転自在に保持する。
図3に示すように、軸受部260Aは、ロールネック212Aの外周に装着されたリング状の軸受262と、軸受262を収容した軸受箱261とを有する。軸受262の具体例としては、ボールベアリング又は滑り軸受等が挙げられる。軸受部260Bは、軸受部260Aと同様に、軸受262及び軸受箱261を有する。軸受部260Bの軸受262は、ロールネック212Bの外周に装着されている。
【0034】
保持用ブラケット240A,240Bは、本体230の左側部分及び右側部分にそれぞれ配置され、軸受部260A,260Bをそれぞれ保持する。保持用ブラケット240A,240Bは、対向面231aの上に配置された状態で本体230に固定されている。保持用ブラケット240Aは、前後に並んでそれぞれ上方に突出した二つの側部241を有する。前側の側部241は軸受箱261の前面に対向し、後側の側部241は軸受箱261の後面に対向している。前側の側部241には、後方に突出したトラニオン軸242が設けられており、後側の側部241には前方に突出したトラニオン軸242が設けられている。各トラニオン軸242の先端部は軸受箱261に挿入されている。これにより、保持用ブラケット240Aは、トラニオン軸242の中心軸線Ax4まわりに回転可能な状態で軸受部260Aの軸受箱261を保持している。すなわち、軸受部260Aは、トラニオン軸242を介して本体230に保持されている。
【0035】
保持用ブラケット240Bは、保持用ブラケット240Aと同様に二つの側部241を有しており、各側部241に設けられたトラニオン軸242が軸受部260Bの軸受箱261に挿入されている。これにより、保持用ブラケット240Bは、トラニオン軸242の中心軸線Ax4まわりに回転可能な状態で軸受部260Bの軸受箱261を保持している。すなわち、軸受部260Bは、トラニオン軸242を介して本体230に保持されている。
【0036】
図1及び
図2に戻り、ロールユニット300は、上述のとおりピンチロール310及び保持部320を有する。ピンチロール310は、ピンチロール210と同様に、左右方向に延びたロール本体311と、左側のロールネック312Aと、右側のロールネック312Bとを有する。
【0037】
保持部320は、本体330と、軸受部360A,360Bと、保持用ブラケット340A,340Bとを有する。本体330は、左右に延びた梁状体であり、ハウジング111A,111B内において圧下装置120A,120Bのロッド121に着脱可能(押付部100に着脱可能)である。本体330は、クロスビーム331及び二つの側壁332を有する。
【0038】
クロスビーム331は、左右方向に延びており、片面(以下、「対向面331a」という。)を下にして圧下装置120A,120Bの着脱用ブラケット122の下に配置される。クロスビーム331の左側部分及び右側部分は、例えばボルト締結等、非破壊で取り外し可能な固定方法によって取付プレート123に固定されている。二つの側壁332は、クロスビーム331の前側の縁及び後側の縁にそれぞれ設けられている。それぞれの側壁332は、対向面331aから下方に突出し、左右方向に延びている。
【0039】
軸受部360A,360Bは、ピンチロール310の両端部を回転自在に保持する。例えば、軸受部360A(第一軸受部)はピンチロール310の左側のロールネック312Aを回転自在に保持し、軸受部360B(第二軸受部)はピンチロール310の右側のロールネック312Bを回転自在に保持する。
図3に示すように、軸受部360Aは、ロールネック312Aの外周に装着されるリング状の軸受362と、軸受362を収容する軸受箱361とを有する。軸受部360Bは、軸受部360Aと同様に、軸受362及び軸受箱361を有する。軸受部360Bの軸受362は、ロールネック312Bの外周に装着されている。
【0040】
保持用ブラケット340A,340Bは、本体330の左側部分及び右側部分にそれぞれ固定され、軸受部360A,360Bをそれぞれ保持する。保持用ブラケット340A,340Bは、対向面331aの下に配置された状態で本体330に固定されている。保持用ブラケット340Aは、前後に並んでそれぞれ下方に突出した二つの側部341を有する。前側の側部341は軸受箱361の前面に対向し、後側の側部341は軸受箱361の後面に対向している。前側の側部341には、後方に突出したトラニオン軸342が設けられており、後側の側部341には前方に突出したトラニオン軸342が設けられている。各トラニオン軸342の先端部は軸受箱361に挿入されている。これにより、保持用ブラケット340Aは、トラニオン軸342の中心軸線Ax5まわりに回転可能な状態で軸受箱361を保持している。すなわち、軸受部360Aは、トラニオン軸342を介して本体330に保持されている。
【0041】
保持用ブラケット340Bは、保持用ブラケット340Aと同様に二つの側部341を有しており、各側部341に設けられたトラニオン軸342が軸受部360Bの軸受箱261に挿入されている。これにより、保持用ブラケット340Bは、トラニオン軸342の中心軸線Ax5まわりに回転可能な状態で軸受部360Bの軸受箱361を保持している。すなわち、軸受部360Bは、トラニオン軸342を介して本体330に保持されている。
【0042】
(ベンダ)
図2に戻り、ベンダ400は、軸受部410A,410Bと、ベンド駆動部430A,430Bとを有する。軸受部410A,410Bは、軸受部260A,260Bとは異なる位置にて、ピンチロール210を回転自在に保持する。
図4に示すように、軸受部410A(第三軸受部)は、軸受部260Aよりも左側においてロールネック212Aの外周に装着されたリング状の軸受412と、軸受412を収容した軸受箱411とを有する。軸受部410B(第四軸受部)は、軸受部410Aと同様に、軸受412及び軸受箱411を有する。軸受部410Bの軸受412は、軸受部260Bよりも右側においてロールネック212Bの外周に装着されている。
【0043】
ベンド駆動部430A(第一ベンド駆動部)は、本体230の左側部分に設けられており、トラニオン軸433,442を介して軸受部410Aに曲げモーメントの発生用の力(第二の力)を加える。例えばベンド駆動部430Aは、加圧シリンダ431と、伝達ブラケット440と、保持ブラケット450とを有する。加圧シリンダ431は、例えば油圧シリンダであり、本体230の下に配置されている。加圧シリンダ431は、クロスビーム231を貫通して上方に突出したロッド432を有しており、ロッド432に対して上向き又は下向きの力を加える。加圧シリンダ431の外周面には、前後に突出した二つのトラニオン軸433が設けられている。
【0044】
保持ブラケット450は、本体230の左側部分に固定され、トラニオン軸433を介して加圧シリンダ431を保持する。保持ブラケット450は、クロスビーム231の下面(以下、「取付面231b」という。)の下に配置された状態で本体230に固定されている。保持ブラケット450は、前後に並んでそれぞれ下方に突出した二つの側部451を有する。前側の側部451は加圧シリンダ431の前面に対向し、後側の側部451は加圧シリンダ431の後面に対向している。前側の側部451及び後側の側部451には、加圧シリンダ431から前後に突出した二つのトラニオン軸433がそれぞれ挿入されている。これにより、加圧シリンダ431は、トラニオン軸433の中心軸線Ax6まわりに回転可能な状態で保持ブラケット450に保持されている。
【0045】
伝達ブラケット440は、ロッド432の上端に設けられており、トラニオン軸442を介してロッド432から軸受部410Aに力を伝達する。伝達ブラケット440は、前後に並んでそれぞれ上方に突出した二つの側部441を有する。前側の側部441は軸受箱411の前面に対向し、後側の側部441は軸受箱411の後面に対向している。前側の側部441には後方に突出したトラニオン軸442が設けられており、後側の側部441には前方に突出したトラニオン軸442が設けられている。各トラニオン軸442の先端部は軸受箱411に挿入されている。これにより、伝達ブラケット440は、トラニオン軸442の中心軸線Ax7まわりに回転可能な状態で軸受部410Aの軸受箱411に接続されている。
【0046】
ベンド駆動部430B(第二ベンド駆動部)は、本体230の右側部分に設けられており、トラニオン軸433,442を介して軸受部410Bに曲げモーメントの発生用の力(第三の力)を加える。例えばベンド駆動部430Bは、ベンド駆動部430Aと同様に、加圧シリンダ431と、伝達ブラケット440と、保持ブラケット450とを有する。ベンド駆動部430Bの伝達ブラケット440に設けられた各トラニオン軸442の先端部は、軸受部410Bの軸受箱411に挿入されている。これにより、ベンド駆動部430Bの伝達ブラケット440は、トラニオン軸442の中心軸線Ax7まわりに回転可能な状態で軸受部410Bの軸受箱411に接続されている。
【0047】
ベンダ500は、ベンダ400と同様に、軸受部510A,510Bと、ベンド駆動部530A,530Bとを有する。軸受部510A,510Bは、軸受部360A,360Bとは異なる位置にて、ピンチロール310を回転自在に保持する。軸受部510A(4)は、軸受部360Aよりも左側においてロールネック312Aの外周に装着されたリング状の軸受512と、軸受512を収容した軸受箱511とを有する。軸受部510B(第四軸受部)は、軸受部510Aと同様に、軸受512及び軸受箱511を有する。軸受部510Bの軸受512は、軸受部360Bよりも右側においてロールネック312Bの外周に装着されている。
【0048】
ベンド駆動部530A(第一ベンド駆動部)は、本体330の左側部分に設けられており、トラニオン軸533,542を介して軸受部510Aに曲げモーメントの発生用の力(第二の力)を加える。例えばベンド駆動部530Aは、加圧シリンダ531と、伝達ブラケット540と、保持ブラケット550とを有する。加圧シリンダ531は、例えば油圧シリンダであり、本体330の上に配置されている。加圧シリンダ531は、クロスビーム331を貫通して下方に突出したロッド532を有しており、ロッド532に対して上向き又は下向きの力を加える。加圧シリンダ531の外周面には、前後に突出した二つのトラニオン軸533が設けられている。
【0049】
保持ブラケット550は、本体330の左側部分に固定され、トラニオン軸533を介して加圧シリンダ531を保持する。保持ブラケット550は、クロスビーム331の上面(以下、「取付面331b」という。)の上に配置された状態で本体330に固定されている。保持ブラケット550は、前後に並んでそれぞれ下方に突出した二つの側部551を有する。前側の側部551は加圧シリンダ531の前面に対向し、後側の側部551は加圧シリンダ531の後面に対向している。前側の側部551及び後側の側部551には、加圧シリンダ531から前後に突出した二つのトラニオン軸533がそれぞれ挿入されている。これにより、加圧シリンダ531は、トラニオン軸533の中心軸線Ax8まわりに回転可能な状態で保持ブラケット550に保持されている。
【0050】
伝達ブラケット540は、ロッド532の下端に設けられており、トラニオン軸542を介してロッド532から軸受部510Aに力を伝達する。伝達ブラケット540は、前後に並んでそれぞれ下方に突出した二つの側部541を有する。前側の側部541は軸受箱511の前面に対向し、後側の側部541は軸受箱511の後面に対向している。前側の側部541には後方に突出したトラニオン軸542が設けられており、後側の側部541には前方に突出したトラニオン軸542が設けられている。各トラニオン軸542の先端部は軸受箱511に挿入されている。これにより、伝達ブラケット540は、トラニオン軸542の中心軸線Ax9まわりに回転可能な状態で軸受部510Aの軸受箱511に接続されている。
【0051】
ベンド駆動部530B(第二ベンド駆動部)は、本体330の右側部分に設けられており、トラニオン軸533,542を介して軸受部510Bに曲げモーメントの発生用の力(第三の力)を加える。例えばベンド駆動部530Bは、ベンド駆動部530Aと同様に、加圧シリンダ531と、伝達ブラケット540と、保持ブラケット550とを有する。ベンド駆動部530Bの伝達ブラケット540に設けられた各トラニオン軸542の先端部は、軸受部510Bの軸受箱511に挿入されている。これにより、ベンド駆動部530Bの伝達ブラケット540は、トラニオン軸542の中心軸線Ax9まわりに回転可能な状態で軸受部510Bの軸受箱511に接続されている。
【0052】
(トルク伝達部)
図2に戻り、トルク伝達部30は、ピンチロール210の軸線方向(ピンチロール210の中心軸線Ax1に沿う方向)における当該ピンチロール210の移動を規制しつつ、当該ピンチロール210にトルクを伝達する。例えばトルク伝達部30は、スピンドル31とジョイント32とを有する。スピンドル31は、例えば電動モータ等の動力源に接続されており、動力源からピンチロール210の端部(例えばロールネック212B)の近傍までトルクを伝達する。ジョイント32は、例えばユニバーサルジョイントであり、スピンドル31により伝達されたトルクを中心軸線Ax1まわりのトルクとしてピンチロール210に伝える。ジョイント32は、軸線方向におけるピンチロール210の移動を規制するように、ロールネック212Bに接続されている。ジョイント32は、例えばボルト締結等、非破壊で取り外し可能な固定方法によってロールネック212Bに接続されている。
【0053】
トルク伝達部40は、ピンチロール310の軸線方向(ピンチロール310の中心軸線Ax2に沿う方向)における当該ピンチロール310の移動を許容しつつ、当該ピンチロール310にトルクを伝達する。例えばトルク伝達部40は、スピンドル41とジョイント42とを有する。 スピンドル41は、例えば電動モータ等の動力源に接続されており、動力源からピンチロール310の端部(例えばロールネック312B)の近傍までトルクを伝達する。ジョイント42は、例えばユニバーサルジョイントであり、スピンドル41により伝達されたトルクを中心軸線Ax2まわりのトルクとしてピンチロール310に伝える。ジョイント42は、軸線方向におけるピンチロール310の移動を許容するようにロールネック312Bに接続されている。軸線方向におけるピンチロール310の移動を許容する接続構造の具体例としては、軸線方向に沿ってスライド可能なカップリング構造が挙げられる。ジョイント42は、例えばボルト締結等、非破壊で取り外し可能な固定方法によってロールネック312Bに接続されている。
【0054】
(ローラ及びスラスト駆動部)
ローラ10は、ピンチロール310の軸線方向と、上下方向(第一の力の方向)とに交差する軸線まわりに回転可能となるように保持部320に設けられている。スラスト拘束部20は、上下方向におけるローラ10の移動を許容しつつ、ピンチロール310の軸線方向におけるローラ10の移動を規制する。例えばピンチロール装置1は、二つのローラ10と、二つのスラスト拘束部20とを備える。二つのローラ10は、本体330の前後にそれぞれ設けられている。各ローラ10は左右方向においてピンチロール310の中央位置(例えば軸受部360A,360B間を二等分する位置)に配置されている。各ローラ10は、前後方向に沿う軸線Ax3まわりに回転可能な状態で本体330の側壁332に保持されている。
【0055】
図5に示すように、二つのスラスト拘束部20は、前後の上セパレータ113にそれぞれ設けられている。各スラスト拘束部20は、側壁332に対向して上下方向に延びたガイド溝21を有する。前側のスラスト拘束部20のガイド溝21は前側のローラ10を収容し、後側のスラスト拘束部20のガイド溝21は後側のローラ10を収容している。これにより、ガイド溝21に沿った上下方向においてはローラ10の移動が規制され、ガイド溝21に交差する左右方向においてはローラ10の移動が規制されている。
【0056】
〔ピンチロールの交換手順〕
以上のように構成されたピンチロール装置1によれば、ピンチロール210,310を以下の手順により交換することが可能である。まず、ジョイント32をロールネック212Bから取り外し、ジョイント42をロールネック312Bから取り外す。次に、圧下装置120A,120Bの着脱用ブラケット122を本体330から取り外す。次に、ハウジング111A,111Bのキャップ116を取り外し、ロールユニット200及びロールユニット300を下ハウジング115から上方に取り出す。
【0057】
次に、別のロールユニット200をハウジング111A,111Bの下ハウジング115に上方から挿入し、本体230を支持部140A,140B上に設置する。次に、別のロールユニット300をハウジング111A,111Bの下ハウジング115に上方から挿入し、ピンチロール310をロールユニット200のピンチロール210上に設置する。この際に、本体330の前後のローラ10を前後のスラスト拘束部20のガイド溝21にそれぞれ嵌め込む。次に、ハウジング111A,111Bのキャップを取り付ける。次に、圧下装置120A,120Bの着脱用ブラケット122を本体330に取り付ける。次に、ジョイント32をロールネック212Bに取り付け、ジョイント42をロールネック312Bに取り付ける。以上でピンチロール210,310の交換が完了する。
【0058】
〔本実施形態の効果〕
以上に説明したように、ピンチロール装置1は、板材2の搬送用のピンチロール210,310と、ピンチロール210,310を板材2に押し付ける第一の力を発生させる押付部100と、押付部100に対して着脱可能であり、ピンチロール210,310を保持して押付部100からピンチロール210,310に第一の力を伝達する保持部220,320と、を備える。
【0059】
ピンチロール210,310によって板材2を適切な荷重分布で加圧するためには、板材2の幅に応じてピンチロール210,310の長さを変更する必要がある。既設のピンチロール210,310を、当該ピンチロール210,310よりも長い又は短いピンチロール210,310に交換するためには、押付部100側における配置変更も必要となる。このため、ピンチロール210,310の交換作業が煩雑となる。これに対し、本ピンチロール装置1によれば、ピンチロール210,310と押付部100との間に保持部220,320が介在するので、押付部100側の配置変更を行うことなく、様々な長さのピンチロール210,310を押付部100に取り付けることが可能となる。また、保持部220,320とピンチロール210,310とを一ユニット(以下、「ロールユニット200,300」という。)とし、ロールユニット200,300単位でピンチロールの交換を行うことで、ピンチロール210,310の長さを容易に変更することができる。したがって、様々な幅の板材2に容易に適応させることができる。
【0060】
ピンチロール装置1は、ピンチロール210,310に曲げモーメントを加えるベンダ400,500を更に備え、ベンダ400,500は保持部220,320に設けられていてもよい。この場合、ベンダ400,500からピンチロール210,310に作用する力は、ロールユニット200,300における内力(ロールユニット200,300外には影響しない力)となる。このため、第一の力に実質的な影響を及ぼすことなくピンチロール210,310に曲げモーメントを加えることができる。
【0061】
保持部220,320は、押付部100に着脱可能な梁状の本体230,330と、トラニオン軸242,342を介して本体230,330に保持され、ピンチロール210,310の両端部を回転自在に保持する第一軸受部260A,360A及び第二軸受部260B,360Bと、を有していてもよい。この場合、ベンダ400,500による曲げモーメントが作用した状態においても、ピンチロール210,310のスムーズな回転を維持することができる。
【0062】
ベンダ400,500は、第一軸受部260A,360A及び第二軸受部260B,360Bとは異なる位置にて、ピンチロール210,310を回転自在に保持する第三軸受部410A,510A及び第四軸受部410B,510Bと、トラニオン軸433,442,533,542を介して第三軸受部410A,510Aに曲げモーメントの発生用の第二の力を加える第一ベンド駆動部430A,530Aと、トラニオン軸433,442,533,542を介して第四軸受部410B,510Bに曲げモーメントの発生用の第三の力を加える第二ベンド駆動部430B,530Bと、を有していてもよい。この場合、ピンチロール210,310のスムーズな回転を維持しつつ、ピンチロール210,310に曲げモーメントを発生させることができる。
【0063】
ピンチロール装置1は、ピンチロール210,310の軸線方向と、第一の力の方向とに交差する軸線Ax3まわりに回転可能となるように保持部220,320に設けられたローラ10と、第一の力の方向におけるローラ10の移動を許容しつつ、軸線方向におけるローラ10の移動を規制するスラスト拘束部20と、を更に備えていてもよい。この場合、加圧方向(第一の力の方向)において保持部220,320に作用する摩擦力を低減し、押付部からピンチロール210,310に伝わる力を高精度に調節することができる。
【0064】
ピンチロール装置1は、ピンチロール210,310の軸線方向における当該ピンチロール210,310の移動を規制しつつ、当該ピンチロール210,310にトルクを伝達するトルク伝達部30,40を更に備えていてもよい。この場合、加圧方向における摩擦力を生じさせることなくピンチロール210,310の移動を規制することができる。したがって、押付部100からピンチロール210,310に伝わる力をより高精度に調節することができる。
【0065】
ピンチロール装置1は、第一ピンチロール210と、第一ピンチロール210を保持する第一保持部220とを有する第一ロールユニット200と、第一ピンチロール210との間に板材2を挟む第二ピンチロール310と、第二ピンチロール310を保持する第二保持部320とを有し、第一ロールユニット200の上方に位置する第二ロールユニット300と、を備え、第一ピンチロール210の軸線方向における当該第一ピンチロール210の移動を規制しつつ、当該第一ピンチロール210にトルクを伝達する第一トルク伝達部30と、第二ピンチロール310の軸線方向における当該第二ピンチロール310の移動を許容しつつ、当該第二ピンチロール310にトルクを伝達する第二トルク伝達部40と、第二ピンチロール310の軸線方向と、第一の力の方向とに交差する軸線Ax3まわりに回転可能となるように第二保持部330に設けられたローラ10と、第一の力の方向におけるローラ10の移動を許容しつつ、第二ピンチロール310の軸線方向におけるローラ10の移動を規制するスラスト拘束部20と、を更に備えていてもよい。
【0066】
上側の第二ロールユニット300に対しては、軸線方向における第二ピンチロール310の移動を許容しつつ、当該第二ピンチロール310にトルクを伝達する第二トルク伝達部40と、加圧方向における第二ピンチロール310の移動を許容しつつ軸線方向における第二ピンチロール310の移動を規制するローラ10及びスラスト拘束部20とが採用されているので、第二ピンチロール310の昇降により、ピンチロール210,310同士の間隔を容易に変更することができる。このため、ピンチロール装置1の使い易さが向上する。下側の第一ロールユニット200に対しては、軸線方向における第一ピンチロール210の移動を規制しつつ当該第一ピンチロール210にトルクを伝達する第一トルク伝達部30が採用されているので、ローラ10及びスラスト拘束部20を有しない簡素な構造にて第一ピンチロール210の移動を規制することができる。このため、下方に流れたスケール等の堆積を抑制し、メンテナンスのし易さを向上させることができる。したがって、使い易さとメンテナンスのし易さとの両立を図ることができる。
【0067】
ローラ10は、ピンチロール310の軸線方向において、ピンチロール310の中央位置(例えば軸受部360A,360B間を二等分する位置)に配置されていてもよい。
この場合、ローラ10とスラスト拘束部20との間の摩擦に起因するピンチロール310の傾動を抑制することができる。
【0068】
以上、実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、ローラ10及びスラスト拘束部20による移動規制構造を下側のロールユニット200に適用してもよい。また、トルク伝達部40による移動規制構造を上側のロールユニット300に適用してもよい。この場合、ローラ10及びスラスト拘束部20を省略可能である。