(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ボルテージレギュレータは、基準電圧源と誤差増幅回路と分圧抵抗と出力トランジスタとを備えている。
【0003】
誤差増幅回路は、分圧抵抗が出力する帰還電圧と基準電圧源の基準電圧とを比較して、出力電圧が一定になるように出力トランジスタのゲートを制御する。出力電圧が一定に保たれている状態であれば、帰還電圧と基準電圧はほぼ等しい電圧になっている。即ち、誤差増幅回路の反転入力端子と非反転入力端子の電圧はほぼ等しい。
【0004】
誤差増幅回路は、反転入力端子と非反転入力端子の入力電圧が長い時間互いに異なった電圧になると、バイアス温度不安定性によって差動入力トランジスタの閾値電圧が変動し、入力オフセット電圧が発生するなど性能が劣化する。
【0005】
図3に、従来の誤差増幅回路300の回路図を示す。誤差増幅回路300は、PMOSトランジスタ301〜303と、NMOSトランジスタ304〜305と、スイッチSW1〜8とを備える。誤差増幅回路300は、省電力モード時に、スイッチSW1をオンしてバイアス電圧Vbiasを停止し、PMOSトランジスタ301をオフすることによって、動作電流を停止、即ち動作を停止する。また、スイッチSW2及びSW3をオフして入力端子INP及びINNと入力トランジスタであるPMOSトランジスタ302及び303を切り離す。同時に、スイッチSW4〜8をオンして、PMOSトランジスタ302及び303のゲート端子を接地し、NMOSトランジスタ304及び305の全ての端子を接地する。誤差増幅回路300は、このような回路構成をとることによって、省電力モード時に各トランジスタの各端子を同じ電圧にするので、バイアス温度不安定性に起因する性能劣化を防止している(例えば、特許文献1参照)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
<第一の実施形態>
図1は、本発明の第一の実施形態のボルテージレギュレータ100の回路図である。
【0014】
本実施形態のボルテージレギュレータ100は、誤差増幅回路10と、出力回路20と、負荷の地絡を検出する地絡検出回路30と、負荷の天絡を検出する天絡検出回路40と、AND回路51と、OR回路52と、電流源53と、スイッチSW11〜14と、電源端子1と、接地端子2と、入力端子3と、出力端子4と、を備えている。
【0015】
誤差増幅回路10は、差動入力対であるNMOSトランジスタ11及び12と、PMOSトランジスタ13及び14と、電流源15と、を備えている。出力回路20は、出力トランジスタであるPMOSトランジスタ21を備えている。地絡検出回路30は、PMOSトランジスタ31と、電流源32及び34と、NMOSトランジスタ33と、を備えている。天絡検出回路40は、ダイオード41と、PMOSトランジスタ42と、電流源43及び44と、NMOSトランジスタ45と、NOT回路46と、を備えている。
【0016】
誤差増幅回路10は、入力端子3に入力される基準電圧Vrefと出力端子4の出力電圧Voutが等しくなるようにPMOSトランジスタ21のゲート端子を制御する。地絡検出回路30は、入力されるボルテージレギュレータ100の出力端子の電圧Voutに基づいて、NMOSトランジスタ33のドレイン端子から地絡検出信号GFを出力し、NMOSトランジスタ33のゲート端子から地絡非検出信号GFXを出力する。天絡検出回路40は、入力されるボルテージレギュレータ100の出力端子の電圧Voutに基づいて、NOT回路46の出力端子から天絡検出信号SFを出力し、NOT回路46の入力端子から天絡非検出信号SFXを出力する。スイッチSW11〜14は、制御端子にロウレベルの信号が入力されるとオフ(開)し、制御端子にハイレベルの信号が入力されるとオン(閉)する。
【0017】
次に第一の実施形態のボルテージレギュレータ100の接続について説明する。
誤差増幅回路10は、第一の入力端子であるNMOSトランジスタ11のゲート端子にスイッチSW12を介して入力端子3が接続され、第二の入力端子であるNMOSトランジスタ12のゲート端子にスイッチSW11を介して出力端子4が接続され、出力端子であるNMOSトランジスタ11のドレイン端子がPMOSトランジスタ21のゲート端子に接続される。PMOSトランジスタ21は、ソース端子に電源端子1が接続され、ドレイン端子が出力端子4に接続される。地絡検出回路30は、入力端子に出力端子4が接続され、地絡検出信号GFを出力する第一の出力端子がOR回路52の一方の入力端子に接続され、地絡非検出信号GFXを出力する第二の出力端子がAND回路51の一方の入力端子に接続される。天絡検出回路40は、入力端子に出力端子4が接続され、天絡検出信号SFを出力する第一の出力端子がOR回路52の他方の入力端子に接続され、天絡非検出信号SFXを出力する第二の出力端子がAND回路51の他方の入力端子に接続される。AND回路51は、出力端子から短絡非検出信号FDXを出力する。OR回路52は、出力端子から短絡検出信号FDを出力する。
【0018】
スイッチSW11及びスイッチSW12の制御端子は、AND回路51の出力端子が接続される。スイッチSW13は、誤差増幅回路10の第一の入力端子と第二の入力端子の間に接続され、制御端子にOR回路52の出力端子が接続される。
【0019】
電流源53は、スイッチSW14を介してPMOSトランジスタ21のゲート端子と接地端子2の間に接続される。スイッチSW14の制御端子は、地絡検出回路30の出力端子が接続される。電流源53とスイッチSW14は、地絡ではない地絡検出状態から復帰するための起動回路を構成する。
【0020】
上記のように構成されたボルテージレギュレータ100の動作について説明する。
【0021】
ボルテージレギュレータ100は、電源端子1に電源電圧Vddが印加されている通常時には、誤差増幅回路10が出力電圧Voutと入力電圧Vrefを比較し、それらが等しくなるようにPMOSトランジスタ21のゲート電圧を制御することで、出力端子4に一定の出力電圧Voutを出力する。このとき、スイッチSW11とスイッチSW12はオンして、スイッチSW13とスイッチSW14はオフしている。
【0022】
次に、ボルテージレギュレータ100の出力端子4が負荷短絡により地絡した場合の動作について説明する。
【0023】
出力端子4の出力電圧Voutは、地絡により接地端子2の電圧レベルに低下していく。
【0024】
地絡検出回路30は、以下のように動作して出力端子4の地絡を検出する。
【0025】
入力端子の電圧が低下して、即ちゲート端子が接地されたPMOSトランジスタ31のソース端子の電圧が低下して、PMOSトランジスタ31がオン出来なくなると、NMOSトランジスタ33は電流源32によってオフする。従って、地絡検出回路30は、電流源34によってハイレベルの地絡検出信号GFを出力し、電流源32によってロウレベルの地絡非検出信号GFXを出力する。
【0026】
また、天絡検出回路40は、入力端子の電圧が低くなると、PMOSトランジスタ42がオフして、電流源43によってNMOSトランジスタ45がオフするので、電流源44とNOT回路46によってロウレベルの天絡検出信号SFを出力し、電流源44によってハイレベルの天絡非検出信号SFXを出力する。
【0027】
AND回路51は、ロウレベルの地絡非検出信号GFXが入力されるので、出力端子からロウレベルの短絡非検出信号FDXを出力する。OR回路52は、ハイレベルの地絡検出信号GFが入力されるので、出力端子からハイレベルの短絡検出信号FDを出力する。
【0028】
ロウレベルの短絡非検出信号FDXによってスイッチSW11とスイッチSW12はオフする。従って、NMOSトランジスタ11のゲート端子は入力端子3と切り離され、NMOSトランジスタ12のゲート端子は出力端子4から切り離される。ハイレベルの短絡検出信号FDによってスイッチSW13はオンする。従って、NMOSトランジスタ11のゲート端子とNMOSトランジスタ12のゲート端子は短絡される。また、ハイレベルの地絡検出信号GFによってスイッチSW14はオンする。従って、PMOSトランジスタ21のゲート端子は、電流源53を介して接地端子2に接続される。
【0029】
誤差増幅回路10の差動入力対であるNMOSトランジスタ11のゲート端子とNMOSトランジスタ12のゲート端子は、上述のように制御されることによって、出力端子4が地絡状態であっても常に等しい電圧が印加されるので、バイアス温度不安定性に起因する性能劣化を防止することが可能となる。
【0030】
なお、出力端子4が地絡状態になると、PMOSトランジスタ21のドレイン電流は過電流状態になるが、図示しない過電流保護回路によってPMOSトランジスタ21のゲート端子が所望のドレイン電流になるように制御される。このとき、電流源53は、過電流保護回路の制御に悪影響を与えない程度に、PMOSトランジスタ21のゲート端子を接地端子2へプルダウンしている。
【0031】
次に、ボルテージレギュレータ100の起動時の動作について説明する。
【0032】
ボルテージレギュレータ100は、電源端子1に電源電圧Vddが印加されると起動するが、この時の出力電圧Voutは、出力端子4が負荷短絡により地絡した場合と同じく、接地端子2の電圧とほぼ等しい。従って、地絡検出回路30は、入力端子が接地端子2の電圧になっているので、地絡モードと判定する。
【0033】
地絡検出回路30及び天絡検出回路40は、上述の地絡状態と同様の地絡検出信号GF、地絡非検出信号GFX、天絡検出信号SF、及び天絡非検出信号SFXを出力する。そして、AND回路51及びOR回路52も、同様の短絡非検出信号FDX及び短絡検出信号FDを出力する。
【0034】
そして、スイッチSW11、スイッチSW12、スイッチSW13、及びスイッチSW14も同様に制御され、PMOSトランジスタ21のゲート端子は、電流源53によって接地端子2にプルダウンされる。即ち、PMOSトランジスタ21は、オン状態になるので、出力端子4の電圧は徐々に上昇する。
【0035】
出力端子4の電圧が徐々に上昇して、従って地絡検出回路30の入力端子の電圧が徐々に上昇して、PMOSトランジスタ31がオンすると、NMOSトランジスタ33がオンして、ロウレベルの地絡検出信号GFを出力し、ハイレベルの地絡非検出信号GFXを出力する。このとき、天絡検出回路40は、天絡を検出していない。従って、短絡非検出信号FDがロウレベル、短絡検出信号FDXがハイレベルになるので、スイッチSW11とスイッチSW12はオンして、スイッチSW13とスイッチSW14はオフして、ボルテージレギュレータ100は通常の動作状態になる、即ち起動する。
【0036】
このようにして、本実施形態のボルテージレギュレータ100は、起動時の動作を損ねることなく、負荷短絡などによって出力端子4が地絡した時に、誤差増幅回路10の入力差動対であるMOSトランジスタのゲートを同電位にすることで、バイアス温度不安定性に起因する性能劣化を防止することが可能となる。
【0037】
また、ボルテージレギュレータ100の出力端子4が負荷短絡などにより天絡した場合の動作についても、上述の地絡の場合とほぼ同様なので、説明は省略する。
【0038】
<第二の実施形態>
図2を参照して、第二の実施形態のボルテージレギュレータ200について説明する。
【0039】
本実施形態のボルテージレギュレータ200は、第1の実施形態のボルテージレギュレータ100から、誤差増幅回路10と出力回路20が誤差増幅回路10bと出力回路20bに入れ替わり、スイッチSW14と電流源53が削除され、スイッチSW15、16と電流源54、55が追加された構成となっている。
【0040】
その他の構成については、
図1のボルテージレギュレータ200と同一であるため、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0041】
誤差増幅回路10bは、差動入力対であるPMOSトランジスタ11b及び12bと、電流源13b、14b、15bと、PMOSトランジスタ16及び17と、ゲート端子にバイアス電圧Vbが印加されたカスコードトランジスタであるNMOSトランジスタ18及び19と、を備えている。出力回路20bは、ソース接地増幅回路であるNMOSトランジスタ22及び抵抗23と、出力トランジスタであるPMOSトランジスタ21と、スイッチSW17を備えている。
【0042】
以下、本実施形態のボルテージレギュレータ200の動作につき、第1の実施形態のボルテージレギュレータ100との相違点に着目して説明する。
【0043】
ボルテージレギュレータ100の出力端子4が負荷短絡により地絡すると、地絡検出回路30は、出力端子4の地絡を検出して、ハイレベルの地絡検出信号GFとロウレベルの地絡非検出信号GFXを出力する。また、天絡検出回路40は、ロウレベルの天絡検出信号SFとハイレベルの天絡非検出信号SFXを出力する。そして、AND回路51はロウレベルの短絡非検出信号FDXを出力し、OR回路52はハイレベルの短絡検出信号FDを出力する。
【0044】
従って、第一の実施形態と同様に、スイッチSW11とスイッチSW12はオフして、スイッチSW13はオンするので、誤差増幅回路10bの入力差動ついであるMOSトランジスタのゲート端子は、常に等しい電圧が印加されるので、バイアス温度不安定性に起因する性能劣化を防止することが可能となる。
【0045】
第二の実施形態では、スイッチSW15がオンして、スイッチSW16がオフする。スイッチSW15がオンことで、誤差増幅回路10bは、出力端子からNMOSトランジスタ22のゲートにハイレベルの信号を出力する。従って、出力回路20bは、NMOSトランジスタ22がオンして、PMOSトランジスタ21がオンするので、起動時の動作を損ねることはない。
【0046】
次に、ボルテージレギュレータ200の出力端子4が負荷短絡により電源端子1の電圧よりも高い電圧の外部の電源に天絡した場合の動作について説明する。
【0047】
天絡検出回路40は、以下のように動作して出力端子4の天絡を検出する。
ボルテージレギュレータ200の出力端子4の出力電圧Voutは、天絡により電源端子1の電圧よりも高い電圧レベルに上昇していく。PMOSトランジスタ42の閾値をVTP42、ダイオード41の順方向電圧をVFとしたとき、出力電圧Voutが(Vdd+VTP42+VF)以上の電圧になると、PMOSトランジスタ42はオンする。NMOSトランジスタ45は、PMOSトランジスタ42に流れる電流が定電流源41の電流値以上になり、ゲート電圧が閾値以上になるとオンする。従って、天絡検出回路40は、ハイレベルの天絡検出信号SFを出力し、ロウレベルの天絡非検出信号SFXを出力する。
【0048】
その結果、地絡検出時と同様に、スイッチSW11とスイッチSW12はオフして、スイッチSW13はオンするので、その効果も同様である。また、この時スイッチSW15はオフ、スイッチSW16はオンするので、誤差増幅回路10bは、出力端子からロウレベルの信号を出力する。従って、出力回路20bは、NMOSトランジスタがオフして、PMOSトランジスタがオフする。更に、スイッチSW17はオフするので、出力端子4から電源端子1への逆流電流を防止することが出来る。
【0049】
したがって、第一の実施形態と同様、本実施形態のボルテージレギュレータ200においても、誤差増幅回路10bの入力差動対であるMOSトランジスタのゲートを同電位にすることで、バイアス温度不安定性に起因する性能劣化を防止することが可能となる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0051】
例えば、第二の実施形態において出力端子4に備えた逆流防止機能は、第一の実施形態に適用しても良いし、不要であれば削除しても良い。
【0052】
また例えば、天絡検出回路40は、電源電圧Vddよりも高い電圧を検出する回路構成としたが、所望の電圧値で検出するように構成しても良い。
【0053】
また例えば、誤差増幅回路10の入力差動対であるMOSトランジスタのゲートは、スイッチSW11とスイッチSW12がオフした時にフローティングにならないように、電流源でプルダウンするようにしても良い。
【0054】
また例えば、地絡検出回路30と天絡検出回路40は、電源電圧Vdd、基準電圧Vref、出力端子4に接続される外部電源電圧の大小関係で、どちらか一方のみを備えるようにしても良い。
【0055】
また例えば、誤差増幅回路10の入力端子は、出力端子4が接続されると説明したが、出力端子4に出力電圧Voutを分圧する分圧回路を備えた、分圧回路の出力端子が接続されるようにしても良い。