【文献】
R.I. Ogie,Assessing the vulnerability of hydrological infrastructure to flood damage in coastal cities of developing nations,Computers, Environment and Urban Systems,2017年11月21日,Vol.68,pp.97-109
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
降雨予測に基づいて、河川の管理対象区域に設けられた水路における水位、流量を予測するシミュレーション装置であって、前記シミュレーション装置に設けられた検討用シミュレーションモデル生成部は、入力部を介する前記管理対象区域の雨水流出シミュレーション実行のための空間的詳細度を含めた指令信号を受信するとともに、要素モデル記憶部に記憶された前記管理対象区域を複数の小領域に分割した地表面要素モデルと、水路要素モデルのエッジ部とノード部とを用いて要素モデル接続関係記憶部に記憶されたデータからモデル水路網を生成し、前記モデル水路網で前記指令信号に含まれた降雨量が少量と予測される複数の小領域の水路において、前記指令信号で示される所定地点のノード部を基点として上流側の水路について統合化処理した統合化処理モデル水路網と、降雨量が集中すると予測される前記統合化処理モデル水路網以外の地域に相当する非統合化処理モデル水路網とを組み合わせて検討用シミュレーションモデルを生成するとともに、演算部は予測観測データ記憶部からデータを入力して前記検討用シミュレーションモデルの前記統合化処理モデル水路網の各エッジ部とノード部における第一流下値を算出し、流下能力判定部は、前記上流側の水路の各エッジ部とノード部の許容流下値と、前記第一流下値とを比較して、許容流下値>第一流下値と判定した場合に解析用シミュレーションモデル設定部は判定された前記検討用シミュレーションモデルを解析用シミュレーションモデルと設定するとともに、前記解析用シミュレーションモデルをシミュレーションモデル記憶部に格納し、演算部は前記解析用シミュレーションモデルを用いて前記予測観測データ記憶部からのデータを入力し、演算結果の各エッジ部とノード部における第二流下値を外部に出力するシミュレーション装置。
降雨予測に基づいて、河川の管理対象区域に設けられた水路における水位、流量を予測するシミュレーション装置であって、前記シミュレーション装置に設けられた検討用シミュレーションモデル生成部は、入力部を介する河川の管理対象区域の管理者が生成した前記管理対象区域の雨水流出シミュレーション実行のための空間的詳細度を含めた指令信号を受信するとともに、要素モデル記憶部に記憶された前記管理対象区域を複数の小領域に分割した地表面要素モデルと、水路要素モデルのエッジ部とノード部とを用いて要素モデル接続関係記憶部に記憶されたデータからモデル水路網を生成し、前記モデル水路網で前記指令信号に含まれた降雨量が少量と予測される複数の小領域の水路において、前記指令信号で示される所定地点のノード部を基点として上流側の水路について統合化処理した統合化処理モデル水路網と、降雨量が集中すると予測される前記統合化処理モデル水路網以外の地域に相当する非統合化処理モデル水路網とを組み合わせて検討用シミュレーションモデルを生成するとともに、演算部は予測観測データ記憶部からデータを入力して前記統合化処理モデル水路網の前記各エッジ部とノード部における予測流下値を算出し、流下能力統合対象判定部は、安全率記憶部に記憶されたエッジ毎の安全率を入力するとともに前記予測流下値に乗算して最大流下値とし、エッジ毎の許容流下値≦最大流下値の場合にエッジ部の氾濫リスクが高いと判定、エッジ毎の許容流下値>最大流下値の場合には前記指令信号が正しいと判定するとともに、解析用シミュレーションモデル設定部は判定された前記検討用シミュレーションモデルを解析用シミュレーションモデルと設定し、前記演算部は前記予測観測データ記憶部からデータを用いた演算結果を外部に出力するとともに、氾濫リスクが高いと判定の場合には、前記検討用シミュレーションモデル生成部は該当するエッジ部を含まない統合化処理モデル水路網と、前記統合化処理モデル水路網以外の非統合化処理モデル水路網とを組み合わせた検討用シミュレーションモデルを生成し、前記流下能力統合対象判定部によって前記検討用シミュレーションモデルが解析用シミュレーションモデルと判定後、演算部の演算結果と、前記解析用シミュレーションモデルの水路網を外部に出力するとともに、前記解析用シミュレーションモデルは、シミュレーションモデル記憶部に格納されるシミュレーション装置。
前記統合化処理モデル水路網は、前記所定地点のノード部を基点として下流側の水路について統合化処理したものとする請求項1または請求項3に記載のシミュレーション装置。
水路に設置された機器を管理する水路監視制御部と、シミュレーション装置とが設けられた雨水監視システムであって、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のシミュレーション装置を用いた雨水監視システム。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1による雨水監視システムを示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1によるシミュレーション装置を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態1による要素モデル記憶部を示す図である。
【
図4】実施の形態1による地表面要素モデルを示す図である。
【
図5】実施の形態1によるモデル水路網を示す図である。
【
図6】実施の形態1によるモデル水路網の領域を示す図である。
【
図7】実施の形態1による要素モデル接続関係記憶部の内容を示す図である。
【
図8】実施の形態1による要素モデル接続関係記憶部の内容を示す図である。
【
図9】実施の形態1による統合化処理モデル水路網を示す図である。
【
図10】実施の形態1による検討用シミュレーションモデルの水路網を示す図である。
【
図11】実施の形態1によるシミュレーション装置の構成要素間の信号授受を示す図である。
【
図12】実施の形態1によるシミュレーション装置の動作フローを示す図である。
【
図13】実施の形態1によるシミュレーション装置の動作フローを示す図である。
【
図14】実施の形態1によるシミュレーション装置の動作フローを示す図である。
【
図15】実施の形態2によるシミュレーション装置の構成要素間の信号授受を示す図である。
【
図16】実施の形態2によるシミュレーション装置の分割地表面の最大流下量を示す図である。
【
図17】実施の形態2によるシミュレーション装置の氾濫リスクを示す図である。
【
図18】実施の形態2によるシミュレーション装置の統合対象判定部の判定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、実施の形態1を図に基づいて説明する。
図1は実施の形態1によるシミュレーション装置100を備えた雨水監視システム1000を示すブロック図であり、中央監視制御部1001、水路監視制御部1002、水路設置機器1003が設けられている。
水路設置機器1003は、各水路A、B、C、Nの流量、水位などを計測する計測器1004、1005、1006、1007を備える。
図2は、
図1に示したシミュレーション装置100を示すブロック図である。シミュレーション装置100は河川管理者等による外部からの信号を入力する入力部1、シミュレーション結果等の信号を出力する出力部7と、細分化された管理対象区域を管理者の指令に基づき統合化した統合化処理モデル水路網を用いた検討用シミュレーションモデルを生成する検討用シミュレーションモデル生成部2、モデル各部分での流下能力を判定する流下能力判定部3、検討用シミュレーションモデルを解析用シミュレーションモデルと設定する解析用シミュレーションモデル設定部4、演算部5、表示部6、地表面要素モデル210と水路要素モデル220とよりなる要素モデルを記憶する要素モデル記憶部21、この要素モデルのエッジ部240とノード部230との接続関係を記憶する要素モデル接続関係記憶部25、解析用シミュレーションモデルを記憶するシミュレーションモデル記憶部26、降雨予測データ、河川等に設置されたセンサ等から得られる水位、流量データを記憶する予測観測データ記憶部27、演算部5の出力を記憶する演算結果記憶部28とが設けられている。
【0011】
次に、主要な構成要素の機能について説明する。要素モデル記憶部21は、
図3に例示するように地表面要素モデル210と、水路要素モデル220を格納している。地表面要素モデル210は
図4に示すように、管理対象区域の地表面を複数(
図4では20区域)の小区域に分割している。尚、この
図4では、20区域の内の代表として、4区域の分割地表面要素モデル210A、210B、210C、210Dのみを符号付きで示している。これらの分割地表面要素モデル210A〜210Dは、例えば○○市のA区の1丁目〜4丁目に該当するものであり、それぞれ分割地表面モデル番号、地理情報、流下能力等に関するパラメータを有している。
【0012】
図5は、水路要素モデルの接続関係を示すモデル水路網211である。
図5に示すように下水道網と河川網からなるモデル水路網211は、分流、分岐を含まない水路に分割された水路要素モデルエッジ部240B、240C、240Y(以下、エッジ部と略す)と、モデル水路網211の分岐点、分流端点である水路要素モデルノード部230C、230B、230Y、230Z(以下、ノード部と略す)とによって表されている。この各エッジ部、ノード部は、その地点における適切な流下容量を備えている。この
図5では後述する統合化モデル生成例の対象とする統合化対象区域T1のみにエッジ部240B、240C、240Y、ノード部230C、230B、230Y、230Zと詳細符号を記入し、非統合化区域は○○市の他の区に該当するノード部に符号A〜Lを記入している。
図5に示した統合化対象区域T1の、ノード部230Yには前記エッジ部240Bと240Cが接続され、ノード部230Bにはエッジ部240B、ノード部230Cにはエッジ部240Cが接続され、前記ノード部230Yの下流側にエッジ部240Yを介してノード部230Zが設けられている。
尚、各エッジ部240C、240B、240Yはそれぞれにエッジ部番号、地理情報、流下能力等に関するパラメータを有し、また各ノード部230C、230B、230Y、230Zはそれぞれにノード部番号を有している。
【0013】
図6は、地表面要素モデル210において、統合化対象区域T1の分割地表面要素モデルと各エッジ部およびノード部とが接続されていることを示す模式図である。また、この
図6は後に詳述するように、河川管理者が例えばノード部230Yの上流側に関して統合化処理を行うよう指令した場合であって、ノード部230Yにはエッジ部240Bに接続のノード部230Bが、エッジ部240Cに接続のノード部230Cが、分割地表面要素モデル210Aおよび210Dがつながることを示している。尚、ノード部は一つ以上の分割地表面要素モデルと対応し、分割地表面要素モデルは一つのノード部とのみ対応する。
【0014】
要素モデル接続関係記憶部25は、
図7に示す各分割地表面要素モデル部と各ノード部との接続関係、および
図8に示す各エッジ部の上流、下流で接続されるノード部との関連を記憶している。尚、この
図7、
図8は
図6に記載した領域のみの接続関係を示すものであり、
図5に示した水路網の各ノード部、各エッジ部のすべてにわたる接続関係が要素モデル接続関係記憶部25に記憶されている。
【0015】
検討用シミュレーションモデル生成部2は、演算に用いるシミュレーションモデルを生成する為に、入力された降雨量、雨水流出量(空間的詳細度)などに応じて地域毎に選択するものである。ここで、シミュレーションモデルの空間的詳細度とは、シミュレーションモデルを構成する要素モデルのうち、統合化処理を行う地域の要素モデルあるいは統合化処理を行わない地域の要素モデルを、河川管理者からの入力をもとに選択することである。そして、この検討用シミュレーションモデル生成部2は、まず要素モデル記憶部21に記憶されている地表面要素モデル210と水路要素モデル220を、要素モデル接続関係記憶部25に記憶されている接続関係を基に接続して、
図5に示したようなモデル水路網を生成する。次に、検討用シミュレーションモデル生成部2からの入力を基にして、モデル水路網の統合化対象区域T1を
図9に示す統合化処理モデル水路網で変換して、
図10に示すような検討用シミュレーションモデルの水路網の生成を行うものである。そして、各エッジ部、ノード部における第一流下値を算出後、その結果を流下能力判定部3に出力する。尚、
図9では分割地表面要素モデル210A〜210Dを210Gとし、この地表面要素モデル210Gから各ノードに降水が流れる通路を240Mとしている。また、
図6に示す230B、230C、230Yを統合して230Sとし、240Yを統合して240Nとしている。
【0016】
流下能力判定部3は、地表面要素モデル210とエッジ部240の流下能力を判定するものである。ここで、地表面要素モデル210の流下能力とは、地表面要素モデル210への降水がノード部230へ流出する量と時間を表したものである。また、エッジ部240の流下能力とはエッジ部240の上流端に流入した雨水が下流端に流出する量と時間、および最大流出可能量を表すものである。具体的には検討用シミュレーションモデル生成部2が出力する第一流下値と各エッジ部、ノード部の許容流下値とを比較して解析用シミュレーションモデルと判定する。
【0017】
解析用シミュレーションモデル設定部4は、流下能力判定部3が許容流下値>第一流下値と判定した検討用シミュレーションモデルを解析用シミュレーションモデルと設定する。
【0018】
シミュレーションモデル記憶部26は、解析用シミュレーションモデル設定部4で設定した解析用シミュレーションモデルを記憶する。
【0019】
演算部5は、設定された解析用シミュレーションモデルに、予測観測データ記憶部27に記憶された降雨予測や水路の水位などを入力することにより、水路の水位、流量などの流下値を演算する。演算手法としては流出解析手法、水理解析手法などを用いる。この演算結果は演算結果記憶部28に記憶される。
【0020】
表示部6には、演算部5の演算結果の図表、値等が表示されるとともに、各構成要素の出力が任意に表示可能とする。
【0021】
出力部7は、演算部5の演算結果を外部へ出力するものである。
【0022】
次に、この実施の形態1によるシミュレーション装置100の動作を、構成要素間の信号の授受を示す
図11と
図12、
図13、
図14に示すフローチャートに基づいて説明する。尚、STとはステップの略である。
ST1.気象庁等が発信する局所的降雨発生予測に基づき、下水道、河川の管理者が管理対象区域全般にわたり雨水流出シミュレーション解析を行う場合、管理対象区域を複数の小領域に分割した地表面要素モデルに対応して接続される各領域のノード部、エッジ部について、降雨量が少量と予測される区域T1において、管理者が指定する所定の地点のノード部230Yを基点として、上流の区域を統合化処理した統合化処理モデルと、降雨量が集中すると予測される非統合化処理モデルとを組み合わせた雨水流出のシミュレーション指令信号が入力部1に入力される。
ST2.前記指令信号は入力部1を介して検討用シミュレーションモデル生成部2に送信され、該検討用シミュレーションモデル生成部2は、予測観測データ記憶部27、要素モデル記憶部21、要素モデル接続関係記憶部25から記憶データを入力するとともに、管理者が指定する所定の地点を基点230Yとして降雨量が少量と予測される区域で、前記基点230Yのノード部から上流側の区域について、前記要素モデル記憶部21の地表面要素モデル210、水路要素モデル220内のエッジ部240、ノード部230のデータと、要素モデル接続関係記憶部25のデータを用いて、地表面要素モデル210に接続されるノード部とエッジ部とを統合化処理した統合化処理モデルと、非統合化処理のモデルとを組み合わせた空間的詳細度を備えた検討用シミュレーションモデルを作成する。尚、上記では降雨量が少量と予測区域の所定の地点の基点230Yから上流側の区域についてモデル作成をしたが、下流側であってもよい。
ST3.検討用シミュレーションモデル生成部2は、予測観測データを用い、演算部5を介して検討用シミュレーションモデルの各ノード部、エッジ部における第一流下値を算出する。この第一流下値を入力する流下能力判定部3は、基点より上流側の各エッジ部、ノード部の許容流下値との比較を行い、許容流下値>第一流下値と判定した場合に、検討用シミュレーションモデルを解析用シミュレーションモデルと判定する。すなわち、検討用シミュレーションモデルの各ノード部、エッジ部の接続関係が、流下能力と整合性が取れていることを確認する。また、許容流下値<第一流下値と判定した場合には、その旨を出力部7を介して外部に出力し、管理者に知らせる。
ST4.解析用シミュレーションモデル設定部4は、流下能力判定部3が整合性有と判定したモデルを、当該時の解析用シミュレーションモデルと設定する。
ST5.シミュレーションモデル記憶部26は、上記解析用シミュレーションモデルを記憶する。
ST6.演算部5は、上記解析用シミュレーションモデルを用いて、予測観測データ記憶部27から降雨予測や水路などに設置されたセンサ等から得た水路の水位、流量などを入力して、水路の各ノード部、エッジ部の水位、流量を、流出解析法などの手法を用いて演算して、この結果を第二流下値とする。
ST7.演算結果記憶部28は、ST6の演算結果の第二流下値を記憶する。
ST8.表示部6には、図、表などで表示された演算結果が表示される。
ST9.出力部7は、演算結果の第二流下値を外部に出力する。
【0023】
尚、ST3における流下能力の整合性が取れている場合には、ST6における演算は省略してもよい。その場合、ST6の演算部5は第一流下値をもって演算結果とし、外部に出力するよう発信する。
【0024】
以上のように、この実施の形態1では、複数の小領域に分割された管理対象区域内の地表面要素モデルに、時刻毎の降雨量や水路の水位、流量データを用い、気象予測に従い河川管理者が指定する降雨量が少量と予測される区域内の所定の地点を基点として、地表面要素モデルに接続されるノード部、エッジ部を含む水路を統合化したモデルを生成し、非統合化区域モデルと組み合わせて雨水流出のシミュレーションを行うので、演算部の負荷低減が図れ、その結果演算速度が向上し、局所的な集中豪雨など急変する降雨予測に対応した演算結果を提供可能なシミュレーション装置が得られ、また、
図1に示すようにこのシミュレーション装置100を用いた雨水監視システム1000は、局所的な集中豪雨など急変する降雨予測に対応可能なシミュレーションを迅速に行うので、その結果が水路監視制御部1002によって水路設置機器である図示省略したバルブや堰等が制御されるので、急変する気象状況に対応可能な雨水監視システムを提供できる。
また、急変する気象状態に応じた安全な河川管理を維持する目的で、管理者がタイムリーにシミュレーション指令信号を発信したような場合においても、演算部5に過大な負荷を与えることなく、迅速にシミュレーション結果を算出可能である。
【0025】
実施の形態2.
次に、実施の形態2を図に基づいて説明する。実施の形態1では、解析モデルの空間的詳細度を河川管理者が指定するものであった。従って、管理者が指定する空間的詳細度、つまり降雨量の少量の区域、多量の区域の指定が、気象条件に必ずしも対応した正確なものでない場合がある。この実施の形態2では、実施の形態1で示したシミュレーション装置100に新たな機能を追加設置して、指定された空間的詳細度をチェックし、水路の各エッジ部、ノード部に氾濫発生の恐れのない空間的詳細度を備えた解析用シミュレーションモデルによって演算するシミュレーション装置とすることにある。
【0026】
追加機能は、安全率1以上を記憶する安全率記憶部29と、実施の形態1の流下能力判定部3に代替して、流下能力統合対象判定部3Aを設けたものである。これらの追加機能を含めたシミュレーション装置100の動作説明を行う。尚、
図15は、構成要素間の信号の授受を示し、
図16は分割地表面要素モデル210A〜210D区域のエッジ部、ノード部の最大流下量を示し、
図17は氾濫リスクを判定する方法を示す図であり、
図18は統合対象判定部の判定を示す図である。
【0027】
実施の形態2の動作は、分割地表面要素モデル210A〜210Dの区域に関するエッジ部、ノード部について、実施の形態1で示した動作ステップを参照して説明する。
ST1.実施の形態1と同様。
ST2.実施の形態1と同様。
ST3.演算部5は予測観測データを入力し、前記検討用シミュレーションモデルについて、例えば
図16に示すように分割地表面要素モデル210A〜210Dの予測流下量の最大値Q
maxを算出する。
図16では分割地表面要素モデル210Cと210BのQ
max,T210C、Q
max−T210Bを代表的に示している。エッジ部240Cには分割地表面要素モデル210CのQ
max−T210Cが流入し、この流入値をQ
max−IN,T210Cとすると、Q
max−IN,T240C=Q
max−IN210Cである。エッジ部240Bでも同様に、Q
max−IN,T240Bが流入する。エッジ部240YにはQ
max−IN,T240Y=Q
max−IN,T240C+Q
max−IN,T240B+Q
max−T210D+Q
max−T210Aが流入することを算出する。
ST4.流下能力統合対象判定部3Aは、安全率記憶部29に記憶されたエッジ部毎の安全率S
240Yを入力し、
図17に示すように、例えばエッジ部240Yの氾濫リスクは、上記最大流入値Q
max−IN,T240Yと安全率S
240Yとの積であるS
240Y・Q
max−IN,T240Yと、エッジ部240Yの許容流下量Q
max−p240Yとを比較して、Q
max−p240Y>S
240Y・Q
max−IN240Yの場合には、エッジ部240Yの氾濫リスクが低いと判定する。また、S
240Y・Q
max−IN240Y≧Q
max−p240Yの場合は氾濫リスクが高いと判定する。他のエッジ部についても同様の判定を行う。
図18は、統合処理を行う要素モデルを判定する方法を模式的に示している。
図18の左側部の図に示すように、ノード部230Y(管理者の指定する基点)より上流部の全てのエッジ部の氾濫リスクが低い場合、ノード部230Yの上流部のすべての要素モデルを
図9に示したように統合化する。
図18の中央部の図のように1箇所でも氾濫リスクを有するエッジ部がある場合、該当するエッジ部は選択しない。
ST5.解析用シミュレーションモデル設定部4は、ST4で氾濫リスクが低いと判定された場合は、ST2で生成された検討用シミュレーションモデルを解析用シミュレーションモデルと設定する。一方、氾濫リスクが高い場合は、該当するエッジ部を非統合化処理モデル水路網とし、すなわち該当するエッジ部は降雨量が集中する地域の非統合化領域におくことにして、前記検討用シミュレーションモデル部で新たな検討用シミュレーションモデルを生成し、このモデルを解析用シミュレーションモデルに設定する。
ST6.実施の形態のST5と同様。
ST7.演算部5は、実施の形態のST6と同様の演算を行い、第二流下値を算出する。
ST8.演算結果記憶部28は、ST7の演算結果を記憶する。
ST9.実施の形態のST8と同様。
ST10.出力部7は、ST7の演算結果および解析用シミュレーションモデルの水路網を外部に出力するとともに、解析用シミュレーションモデルを記憶部に格納する。
【0028】
以上のように、実施の形態2のシミュレーション装置では、管理者が指令する空間的詳細度すなわち降雨量が少量と予測される区域の所定の地点を基点として、水路の要素モデルを統合化したシミュレーションモデルの、各エッジ部における氾濫リスクをチェックし、指令信号の妥当性を検討し、氾濫リスクがある場合には、該当のエッジ部を選択外とした解析用シミュレーションモデルで演算するとともに、その演算結果と使用した解析用シミュレーションモデルに用いた水路網を外部(管理者)に出力するので、より正確なシミュレーションを行えるとともに、管理者の予測に対して、その良否の情報も提供可能となる。また、このシミュレーション装置を用いた雨水監視システムでも上記と同様の効果を奏する。
【0029】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。