(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976210
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】封止タグ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G09F 3/03 20060101AFI20211125BHJP
G09F 3/02 20060101ALI20211125BHJP
G09F 3/04 20060101ALI20211125BHJP
E02D 29/14 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
G09F3/03 D
G09F3/02 A
G09F3/04 Z
E02D29/14 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-63826(P2018-63826)
(22)【出願日】2018年3月29日
(65)【公開番号】特開2019-174687(P2019-174687A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】トッパン・フォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】前田 英俊
【審査官】
金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−070054(JP,A)
【文献】
特開2008−015473(JP,A)
【文献】
特開平08−083047(JP,A)
【文献】
米国特許第5842811(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 1/00 − 5/04
E02D 29/14
B32B 27/00 − 27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホール蓋とアスファルトとに跨って付着される封止タグであって、
コーキング剤からなる基材から構成され、
前記基材は、前記アスファルトに対向する領域では当該アスファルトの表面に存在する凹部にその一部が入り込んでいる封止タグ。
【請求項2】
請求項1に記載の封止タグにおいて、
前記基材のうち、少なくとも前記マンホール蓋と前記アスファルトとの境界部分に対向する領域に、前記基材の当該領域が破壊された場合に発色する発色層を有する、封止タグ。
【請求項3】
請求項2に記載の封止タグの製造方法であって、
マンホール蓋とアスファルトとに亘ってコーキング剤を塗布する工程と、
前記塗布されたコーキング剤上に前記発色層を積層する工程と、
前記発色層を覆うようにコーキング剤を塗布する工程とを有する、封止タグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホール蓋を不正に開けにくくする封止タグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開封部分を具備する被着体にラベルを貼着しておき、第三者が被着体を不正に開封できないようにする技術が利用されている。また近年では、そのようなラベルにおいて、被着体から剥離した場合にその形跡を残すことで、第三者による不正な剥離を検出できるものも考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、昨今、世界各地では爆破等のテロ事件が発生しており、特に大きなイベントの開催時や要人が来日する際等においては、テロ事件の未然防止が要求される。このようなテロ事件の未然防止の1つとして、マンホール内の安全性の確保が挙げられる。マンホール内に爆弾等が仕掛けられた場合、無差別に多くの死傷者が出ることが予想されるため、マンホール蓋を不正に開けられなくしておくことが、マンホール内の安全性の確保の面から好ましい。
【0004】
そこで、上述したようなラベルをマンホール蓋とその周囲に跨って貼着していくことで、マンホール蓋を不正に開けられなくすることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案公報第3045757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マンホールは一般的に、道路に敷設されているが、道路はアスファルトで舗装されている場合が多く、上記のようにしてマンホール内の安全性を確保するためには、マンホール蓋とその周囲のアスファルトとに跨ってラベルを貼着することになる。
【0007】
しかしながら、アスファルトは、その表面にいくつもの凹部が不規則に存在するため、マンホール蓋とその周囲のアスファルトとに跨ってラベルを貼着したとしても、ラベルのうちアスファルトに貼着された部分が容易に剥がれてしまうという問題点がある。
【0008】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、マンホール蓋とアスファルトとに跨って付着された場合に容易に剥がれてしまうことを回避できる封止タグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、
マンホール蓋とアスファルトとに跨って付着される封止タグであって、
コーキング剤からなる基材から構成され、
前記基材は、前記アスファルトに対向する領域では当該アスファルトの表面に存在する凹部にその一部が入り込んでいる。
【0010】
上記のように構成された本発明においては、コーキング剤からなる基材から構成されており、マンホール蓋とアスファルトとに跨って付着された状態において、基材自体が、アスファルトに対向する領域にてアスファルトの表面に存在する凹部にその一部が入り込んでいるので、アスファルトに対向する領域がアスファルトから容易に剥がれてしまうことが回避されることになる。
【0011】
また、基材のうち、少なくともマンホール蓋とアスファルトとの境界部分に対向する領域に、基材のその領域が破壊された場合に発色する発色層を有するものであれば、マンホール蓋とアスファルトとの境界部分に対向する領域を破壊してマンホール蓋を開けようとした場合に発色層が発色することとなり、マンホール蓋を開けようとした痕跡が残ることになる。
【0012】
また、上述した封止タグは、
マンホール蓋とアスファルトとに亘ってコーキング剤を塗布する工程と、
前記塗布されたコーキング剤上に前記発色層を積層する工程と、
前記発色層を覆うようにコーキング剤を塗布する工程とによって製造することが考えられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コーキング剤からなる基材から構成され、基材が、アスファルトに対向する領域ではアスファルトの表面に存在する凹部にその一部が入り込んでいるため、マンホール蓋とアスファルトとに跨って付着された場合に容易に剥がれてしまうことを回避できる。
【0014】
また、基材のうち、少なくともマンホール蓋とアスファルトとの境界部分に対向する領域に、基材のその領域が破壊された場合に発色する発色層を有するものにおいては、マンホール蓋とアスファルトとの境界部分に対向する領域を破壊してマンホール蓋を開けようとした場合に発色層が発色することとなり、マンホール蓋を開けようとした痕跡を残すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の封止タグの実施の一形態を示す図であり、(a)は使用状態を示す図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は表面図である。
【
図2】
図1に示した封止タグの製造方法を説明するための図である。
【
図3】
図1に示した封止タグの発色層による作用を説明するための図である。
【
図4】
図1に示した封止タグのマンホール蓋及びアスファルトからの剥離方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の封止タグの実施の一形態を示す図であり、(a)は使用状態を示す図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は表面図である。
【0018】
本形態は
図1に示すように、マンホール蓋2の外周のうち所定の領域において、マンホール蓋3とその周囲のアスファルト2とに跨って付着された封止タグ1であって、コーキング剤からなる基材10内に発色層30及び表示部材20が内包されて構成されている。
【0019】
基材10を構成するコーキング剤としては、変形シリコーン系のMS(Modified Silicone)ポリマーからなるものが耐候性に優れていることから好ましく、硬化媒体を加えた場合に常温で大気中の水と反応して弾性体となる液状ポリマーを使用することができる。そのようなコーキング剤としては、例えば株式会社カネカ製のカネカMSポリマーが挙げられる。また、基材10を構成するコーキング剤としては、変形シリコーン系のMS(Modified Silicone)ポリマーからなるものに限らず、ポリウレタン系のものであってもよい。
【0020】
発色層30は、基材10よりも一回り小さな外形を有することで、封止タグ1がマンホール蓋3とその周囲のアスファルト2とに跨って付着された場合にマンホール蓋3とアスファルト2との境界部分に対向する領域に配置された状態となっている。
【0021】
発色層30としては、破壊された場合に発色する周知のものを使用することができる。例えば、ただ単に顔料からなるシート状のものであって、基材10が破壊された場合にその破壊された部分から顔料が外部に滲み出るものや、大気に触れることで発色するインクを用いたもの等が考えられる。また、マイクロカプセル内に顔料等を収容したものであってもよく、その場合、マイクロカプセルが破壊されることで顔料等が外部に滲み出ることによって発色することになる。さらに、発色剤が収容されたマイクロカプセルと顕色剤との混合体からなるものであってもよく、その場合、マイクロカプセルが破壊されることで発色剤が顕色剤と混ざり合って発色することになる。
【0022】
表示部材20は、発色層30上に重なって積層されており、封止タグ1がマンホール蓋3とアスファルト2とに跨って付着された年月日等を記入可能に構成されたシート状のものである。
【0023】
上記のように構成された封止タグ1は、マンホール蓋3とその周囲のアスファルト2とに跨って付着されているが、
図1(b)に示すように、アスファルト2に対向する領域においては、アスファルト2の表面に存在する凹部2aに基材10の一部が入り込んでいる。
【0024】
以下に、上記のように構成された封止タグ1の製造方法について説明する。
【0025】
図2は、
図1に示した封止タグ1の製造方法を説明するための図である。
【0026】
図1に示した封止タグ1を製造する場合は、まず、マンホール蓋3とその周囲のアスファルト2とのうち、封止タグ1を付着させる領域に、基材10の外形を有する枠部材4を配置し、その枠部材4内にコーキング剤10aを塗布する(
図2(a))。これにより、マンホール蓋3とその周囲のアスファルト2とに亘ってコーキング剤10aを塗布することになる。その際、アスファルト2の表面には、いくつもの凹部2aが不規則に存在しているが、コーキング剤10aが液状であることで凹部2aに入り込んだ状態となる。
【0027】
次に、コーキング剤10a上に発色層30及び表示部材20を順次積層する(
図2(b),(c))。
【0028】
次に、発色層30及び表示部材20を覆うようにコーキング剤10bを塗布し、コーキング剤10aとコーキング剤10bとを接合させることで、発色層30及び表示部材20を内包した基材10を形成する(
図2(d))。
【0029】
その後、枠部材4を取り去り、
図1に示した封止タグ1を完成させる。なお、枠部材4としては、塗布したコーキング剤10a,10bが、封止タグ1を付着させる領域外に流れ出ないようにするために十分な高さを有するものであればよく、テープ等を用いてもよい。
【0030】
このように、本形態の封止タグ1は、マンホール蓋3とアスファルト2とに跨って付着される前に予め製造されるものではなく、封止タグ1を付着する現場で製造されるものである。
【0031】
以下に、上記のようにして製造された封止タグ1の作用について説明する。
【0032】
上記のようにして製造された封止タグ1においては、コーキング剤10a,10bからなる基材10から構成されており、マンホール蓋3とアスファルト2とに跨って付着された状態において、基材10自体が、アスファルト2に対向する領域にてアスファルト2の表面に存在する凹部2aにその一部が入り込んでいるので、アスファルト2に対向する領域がアスファルト2から容易に剥がれてしまうことが回避されることになる。
【0033】
図3は、
図1に示した封止タグ1の発色層30による作用を説明するための図である。
【0034】
図1に示したようにしてマンホール蓋3とその周囲のアスファルト2とに跨って封止タグ1が付着された状態において、
図3(a)に示すように、マンホール蓋3を開けようとして封止タグ1のうちマンホール蓋3とアスファルト2との境界部分に対向する領域を、カッターナイフ等の刃5によって切断することで破壊すると、基材10に内包された発色層30が破壊することで発色し、それにより、
図3(b)に示すように、発色領域31が外部から視認可能に現れることになる。そのため、この発色領域31によって、マンホール蓋3を開けようとした痕跡を視認可能な状態で残すことができる。
【0035】
図4は、
図1に示した封止タグ1のマンホール蓋3及びアスファルト2からの剥離方法を説明するための図である。
【0036】
上記のようにしてマンホール蓋3とアスファルト2とに跨って付着された封止タグ1を剥離する場合は、
図4(a)に示すように、基材10のマンホール蓋3及びアスファルト2に対する付着面と、マンホール蓋3またはアスファルト2の表面との境界にカッターナイフ等の刃5を入り込ませ、
図4(b)に示すように、基材10をマンホール蓋3またはアスファルト2の表面からそぎ剥がすことで、封止タグ1をマンホール蓋3及びアスファルト2からの剥離することができる。
【0037】
なお、本形態においては、発色層30が、基材10よりも一回り小さな外形を有することで、封止タグ1がマンホール蓋3とその周囲のアスファルト2とに跨って付着された場合にマンホール蓋3とアスファルト2との境界部分に対向する領域に配置された状態となっているが、発色層30は、基材10のうち、少なくともマンホール蓋3とアスファルト2との境界部分に対向する領域に配置されていればよい。また、表示部材20は、発色層30の一部のみに重なるように配置されていてもよく、発色層30と並んで配置されていてもよい。
【0038】
また、
図1に示した封止タグ1を構成する基材10のうち、発色層30及び表示部材20の図中上側のみを、発色層30及び表示部材20が積層された状態で封止タグ用部材として製造しておき、その後、マンホール蓋3とその周囲のアスファルト2とに亘ってコーキング剤10aを塗布し、そのコーキング剤10a上にその封止タグ用部材を積層し、マンホール蓋3とその周囲のアスファルト2とに亘って塗布されたコーキング剤10aを封止タグ用部材の基材10に接合させて一体化して封止タグ1を製造してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 封止タグ
2 アスファルト
2a 凹部
3 マンホール蓋
4 枠部材
5 刃
10 基材
10a,10b コーキング剤
20 表示部材
30 発色層
31 発色領域