(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照し、本発明の実施の形態に係る送受信モジュールについて詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により、本発明が限定されるものではない。また、以下では、電気的な接続と物理的な接続とを区別せずに、単に「接続」と称して説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る送受信モジュールの構成例を示すブロック図である。実施の形態1に係る送受信モジュール50は、レーダ装置におけるフロントエンド部を一体化してモジュール化したものである。フロントエンド部とは、ユーザ又は外部から装置の処理部を見たときに、最も前面に位置する部位である。レーダ装置の場合、フロントエンド部は、低周波信号にダウンコンバートする前の高周波信号を処理する部位を指して呼ぶことが一般的である。
【0012】
図1において、実施の形態1に係る送受信モジュール50は、第1の増幅器である高出力増幅器(High Power Amplifire:以下「HPA」と呼ぶ)1と、第1の切替部である第1のスイッチ3aと、第2の切替部である第2のスイッチ3bとを備える。また、送受信モジュール50は、終端器であるダミー抵抗4と、第2の増幅器である低雑音増幅器(Low Noise Amplifire:以下「LNA」と呼ぶ)5とを備える。送受信モジュール50を収容する筐体18には、送受信端子7と、送信信号入力端子12aと、受信信号出力端子12bとが設けられている。また、筐体18には、第1のバイアス印加端子である端子13aと、第2のバイアス印加端子である端子13bと、第3のバイアス印加端子である端子13cとが設けられている。
【0013】
HPA1は、高周波信号を増幅する送信系の増幅器である。第1のスイッチ3aは、HPA1の出力を受信して送受信端子7に伝送する。或いは、第1のスイッチ3aは、送受信端子7に入力された受信信号を受信して第2のスイッチ3bに伝送する。
【0014】
HPA1の入力側は送信信号入力端子12aに接続される。送信信号入力端子12aの先には、図示しない励振器がある。励振器は、レーダ信号の基となる高周波信号を生成する。
【0015】
第1のスイッチ3aは、第1端子3a1、第2端子3a2及び第3端子3a3を有する。第1のスイッチ3aの第2端子3a2は、HPA1の出力側に接続される。第1のスイッチ3aの第1端子3a1は、送受信端子7に接続される。送受信端子7の先には、図示しない送信アンテナ及び受信アンテナがある。第1のスイッチ3aの接点が第2端子3a2に接続されているとき、HPA1から送られたレーダ信号は、送受信端子7を介して送信アンテナに伝送される。送信アンテナは、レーダ信号を空間に放射する。受信アンテナは、レーダ信号による目標物体(以下「物標」と呼ぶ)からの反射信号を受信する。
【0016】
第2のスイッチ3bは、第1端子3b1、第2端子3b2及び第3端子3b3を有する。第2のスイッチ3bの第1端子3b1は、第1のスイッチ3aの第3端子3a3に接続される。第2のスイッチ3bの第2端子3b2は、ダミー抵抗4の一端に接続される。第2のスイッチ3bの第3端子3b3は、LNA5の入力側に接続される。
【0017】
第1のスイッチ3aの接点が第3端子3a3に接続されているとき、第2のスイッチ3bは、第1のスイッチ3aから出力される受信信号を受信する。
【0018】
第1のスイッチ3aの接点が第3端子3a3に接続され、且つ、第2のスイッチ3bの接点が第2端子3b2に接続されているとき、受信信号は、第1のスイッチ3a及び第2のスイッチ3bを介してダミー抵抗4に伝送される。
【0019】
ダミー抵抗4の他端は接地される。ダミー抵抗4は、第2のスイッチ3bから伝送された信号を終端する終端器として機能する。ダミー抵抗4は、送受信モジュール50の送信時の信号をLNA5の側には伝送させずにLNA5を保護するときに使用される。
【0020】
また、第1のスイッチ3aの接点が第3端子3a3に接続され、且つ、第2のスイッチ3bの接点が第3端子3b3に接続されているとき、受信信号は、第1のスイッチ3a及び第2のスイッチ3bを介してLNA5に伝送される。
【0021】
LNA5は、受信系の増幅器である。LNA5の出力側は受信信号出力端子12bに接続される。受信信号出力端子12bの先には、図示しない受信回路がある。受信回路は、LNA5から送られてきた受信信号を処理に適した周波数帯にダウンコンバートして信号処理を行う。レーダ装置が物標検出用のレーダである場合、受信回路は、受信信号に基づいて、物標までの距離、物標の相対速度及び物標の方位を算出する。レーダ装置が合成開口レーダである場合、受信回路は、受信信号に基づいて、観測対象エリアの画像を生成する。
【0022】
第1のスイッチ3a、第2のスイッチ3b及びLNA5には、動作電圧であるバイアス電圧が付与される。第1のスイッチ3aへのバイアス電圧は、第1のバイアスライン6aによって付与される。第1のバイアスライン6aは端子13aに接続されている。端子13aに印加されたバイアス電圧は、第1のスイッチ3aに付与される。
【0023】
第2のスイッチ3bへのバイアス電圧は、第2のバイアスライン6bによって付与される。第2のバイアスライン6bは端子13bに接続されている。端子13bに印加されたバイアス電圧は、第2のスイッチ3bに付与される。
【0024】
LNA5へのバイアス電圧は、第3のバイアスライン6cによって付与される。第3のバイアスライン6cは端子13cに接続されている。端子13cに印加されたバイアス電圧は、LNA5に付与される。
【0025】
第1の接地ライン15a、及び第2の接地ライン15bは、送受信モジュール50の内部において接地される。
【0026】
第1のバイアスライン6aと第1の接地ライン15aとの間には、フィルタ要素であるコンデンサ10aが接続されている。第2のバイアスライン6bと第1の接地ライン15aとの間には、フィルタ要素であるコンデンサ10bが接続されている。第2のバイアスライン6bと第2の接地ライン15bとの間には、フィルタ要素であるコンデンサ10cが接続されている。第3のバイアスライン6cと第2の接地ライン15bとの間には、フィルタ要素であるコンデンサ10dが接続されている。
【0027】
コンデンサ10aは、第1のキャパシタンス要素を構成する。コンデンサ10b,10cは、第2のキャパシタンス要素を構成する。コンデンサ10dは、第1のキャパシタンス要素を構成する。コンデンサ10a〜10d、並びに、第1の接地ライン15a及び第2の接地ライン15bを設ける理由については後述する。
【0028】
次に、実施の形態1に係る送受信モジュール50の要部の動作について、
図1及び
図2の図面を参照して説明する。
図2は、NFの悪化の説明に供する
図1との比較図である。
図2では、
図1に示す実施の形態1の構成において、コンデンサ10a〜10dと、第1の接地ライン15a及び第2の接地ライン15bとが除かれている。
【0029】
図2には、第1の閉ループ20と、第2の閉ループ21と、第3の閉ループ22とが太線で示されている。第1の閉ループ20は、第1のバイアスライン6aと、筐体18と、第2のバイアスライン6bとによって、送受信モジュール50の内部に形成される閉回路である。第2の閉ループ21は、第2のバイアスライン6bと、筐体18と、第3のバイアスライン6cとによって、送受信モジュール50の内部に形成される閉回路である。第3の閉ループ22は、第1のバイアスライン6aと、筐体18と、第3のバイアスライン6cとによって、送受信モジュール50の内部に形成される閉回路である。
【0030】
LNA5で発生したノイズは、第3のバイアスライン6cを伝送して漏れ出すことがある。このノイズは、第2の閉ループ21によって、第2のスイッチ3bに伝わり、LNA5の入力側に戻る。このため、第2の閉ループ21によって、送受信モジュール50のNFが悪化することがある。
【0031】
他の閉ループにおいても同様である。例えば、第3の閉ループ22では、LNA5で発生したノイズが、第1のスイッチ3aに伝わり、第2のスイッチ3bを介して、LNA5の入力側に戻る。このため、第3の閉ループ22によって、送受信モジュール50のNFが悪化することがある。
【0032】
また、第1の閉ループ20では、第2の閉ループ21を通じて伝送されたLNA5のノイズが、第2のスイッチ3bを経由して第1のスイッチ3aに伝わり、LNA5の入力側に戻る。このため、第1の閉ループ20によって、送受信モジュール50のNFが悪化することがある。
【0033】
これに対し、実施の形態1では、前述の通り、第1のバイアスライン6aと第1の接地ライン15aとの間にコンデンサ10aを備え、第2のバイアスライン6bと第1の接地ライン15aとの間にコンデンサ10bを備えている。また、第2のバイアスライン6bと第2の接地ライン15bとの間にコンデンサ10cを備え、第2のバイアスライン6bと第3の接地ライン15cとの間にコンデンサ10dを備えている。このため、LNA5で発生したノイズが第1の閉ループ20、第2の閉ループ21及び第3の閉ループ22に伝送されたとしても、当該ノイズは、コンデンサ10a〜10dのうちの少なくとも1つでアースラインに吸収される。これにより、LNA5の入力側に戻ろうとするノイズを抑制でき、NFの悪化を抑制することができる。
【0034】
以上説明したように、実施の形態1に係る送受信モジュールによれば、第1のスイッチ3aにバイアス電圧を付与する第1のバイアスライン6aと第1の接地ライン15aとの間にコンデンサ10aが接続され、第2のスイッチ3bにバイアス電圧を付与する第2のバイアスライン6bと第1の接地ライン15aとの間にコンデンサ10bが接続される。また、第2のバイアスライン6bと第2の接地ライン15bとの間にコンデンサ10cが接続され、LNA5にバイアス電圧を付与する第3のバイアスライン6cと第2の接地ライン15bとの間にコンデンサ10dが接続される。これにより、LNA5で発生し、LNA5の入力側に戻ろうとするノイズを抑制できる。従って、送受信モジュール50を小型化しても、NFの悪化を抑制することができる。
【0035】
なお、
図1では、コンデンサ10aの一端を第1のバイアスライン6aに接続し、コンデンサ10aの他端を第1の接地ライン15aを介して接地する接続構成を例示したが、この接続構成に限定されない。コンデンサ10aの他端は、第1の接地ライン15aを用いずに、直接、接地される構成であってもよい。コンデンサ10b〜10dについても同様であり、第1の接地ライン15a及び第2の接地ライン15bを用いずに、直接、接地される構成であってもよい。
【0036】
また、
図1では、フィルタ要素としてキャパシタンス要素を有するコンデンサを例示したが、この構成に限定されない。フィルタ要素は、キャパシタンス要素を含むチップ部品で構成してもよいし、基板上のパターンで構成してもよい。
【0037】
また、
図1では、紙面の左側から、第1のバイアスライン6a、第2のバイアスライン6b及び第3のバイアスライン6cの順に配置される例を示したが、この配置例に限定されない。例えば、信号の入出力の方向を変更した場合、小型化の追求のために多層基板を用いる場合などにおいては、バイアスラインの配線の順序が
図1とは異なる場合がある。これらの場合、第1のバイアスライン6aに2つのコンデンサが接続されることもあり得る。
【0038】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2に係る送受信モジュールの構成例を示すブロック図である。
図3に示す送受信モジュール50Aでは、
図1に示す実施の形態1に係る送受信モジュール50において、第1のスイッチ3aがサーキュレータ2及び検波器9に変更されている。その他の構成については、実施の形態1の構成と同一又は同等であり、同一又は同等の構成部には同一の符号を付して重複する説明は割愛する。
【0039】
サーキュレータ2は、方向性のある切替器である。サーキュレータ2は、HPA1の出力を受信して、検波器9に伝送する。また、サーキュレータ2は、検波器9の出力を受信して第2のスイッチ3bに伝送する。
【0040】
検波器9は、サーキュレータ2から送られてきた信号を送受信端子7に伝え、送受信端子7から送られてきた信号をサーキュレータ2に伝えることができる、双方向の伝送機能を有する機器である。従って、サーキュレータ2を介して伝送されたレーダ信号は、送受信端子7を介して図示しない送信アンテナに伝送される。また、送受信端子7を介して受信した受信信号は、サーキュレータ2及び第2のスイッチ3bを介してLNA5に伝送される。
【0041】
図3に示す実施の形態2の構成においても、
図2に示される第1の閉ループ20、第2の閉ループ21及び第3の閉ループ22が形成される。このため、第1の閉ループ20、第2の閉ループ21及び第3の閉ループ22のうちの少なくとも1つによって伝送されるLNA5のノイズによって、送受信モジュール50AのNFが悪化することの懸念がある。
【0042】
しかしながら、LNA5で発生し、第1の閉ループ20、第2の閉ループ21又は第3の閉ループ22で伝送されたノイズは、コンデンサ10a〜10dのうちの少なくとも1つでアースラインに吸収される。これにより、LNA5で発生し、LNA5の入力側に戻ろうとするノイズを抑制することができる。従って、送受信モジュール50Aを小型化しても、NFの悪化を抑制することができる。
【0043】
実施の形態3.
図4は、実施の形態3に係る送受信モジュールの構成例を示すブロック図である。
図4に示す送受信モジュール50Bでは、
図3に示す実施の形態2に係る送受信モジュール50Aにおいて、検波器9がスイッチ3cに変更され、送受信端子7が送信端子7a及び受信端子7bに変更されている。その他の構成については、実施の形態2の構成と同一又は同等であり、同一又は同等の構成部には同一の符号を付して重複する説明は割愛する。
【0044】
スイッチ3cの第1端子3c1はサーキュレータ2に接続され、スイッチ3cの第2端子3c2は送信端子7aに接続され、スイッチ3cの第3端子3c3は受信端子7bに接続される。
【0045】
スイッチ3cの接点が第2端子3c2に接続されているとき、サーキュレータ2を介して伝送されたレーダ信号は、送信端子7aを介して図示しない送信アンテナに伝送される。送信アンテナは、レーダ信号を空間に放射する。
【0046】
スイッチ3cの接点が第3端子3c3に接続されているとき、受信端子7bを介して受信した受信信号は、サーキュレータ2及び第2のスイッチ3bを介してLNA5に伝送される。
【0047】
図4に示す実施の形態3の構成においても、
図2に示される第1の閉ループ20、第2の閉ループ21及び第3の閉ループ22が形成される。このため、第1の閉ループ20、第2の閉ループ21及び第3の閉ループ22のうちの少なくとも1つによって伝送されるLNA5のノイズによって、送受信モジュール50BのNFが悪化することの懸念がある。
【0048】
しかしながら、LNA5で発生し、第1の閉ループ20、第2の閉ループ21又は第3の閉ループ22で伝送されたノイズは、コンデンサ10a〜10dのうちの少なくとも1つでアースラインに吸収される。これにより、LNA5で発生し、LNA5の入力側に戻ろうとするノイズを抑制することができる。従って、送受信モジュール50Bを小型化しても、NFの悪化を抑制することができる。
【0049】
なお、以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。