(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の前記経腸栄養剤用チューブセットと、請求項3に記載の前記経腸栄養剤用ポンプ装置本体部とが組み合わされて一体化されて構成される経腸栄養剤用ポンプ装置であって、
前記経腸栄養剤用チューブセットの前記中間部チューブが、前記チューブポンプのローターを巻いて取り付けられ、
前記下流側閉塞検知部チューブが前記下流側閉塞検知部に装着され、
前記下流側閉塞検知部チューブの前記光遮断部が、経腸栄養剤供給前及び非閉塞時には、前記下流側閉塞検知部の発光部の光を遮断しない高さに、閉塞時には、前記下流側閉塞検知部の発光部の光を遮断する高さに設定され、
て構成されていることを特徴とする経腸栄養剤用ポンプ装置。
前記上流側チューブ、前記中間部チューブ、前記下流側チューブ、及び前記下流側閉塞検知部チューブ又は前記下流側閉塞検知部チューブ及び前記上流側閉塞検知部チューブがポリ塩化ビニルで構成され、少なくとも前記中間部チューブが透明品となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の経腸栄養剤用チューブセット。
前記空液検知部が、前記発光・受光部の発光部への供給電力に応じた明るさの切り替えにより、前記中間部チューブ内を流れる経腸栄養剤の種類の識別、経腸栄養剤と気泡又は空気との識別が可能であるとともに、光の反射により透明体と空気又は気泡との識別が可能に構成されていることを特徴とする請求項5記載の経腸栄養剤用ポンプ装置本体部。
前記ケーシング上面のパネル上に位置する前記チューブポンプに対して進退移動可能に構成され、前記中間部チューブを押圧する機能を有するチューブ押さえを備えていることを特徴とする請求項3、4、5、8のいずれかの項に記載の経腸栄養剤用ポンプ装置本体部。
前記ケーシング上面のパネルの一端側に、電源ボタン、ディジタル表示部、プライミングボタン、供給速度調節ボタン、警報音発生部、動作状況表示ランプのうち、少なくとも一つを含む操作部を備えていることを特徴とする請求項3、4、5、8、9のいずれかの項に記載の経腸栄養剤用ポンプ装置本体部。
【背景技術】
【0002】
胃瘻により栄養剤を摂取する必要がある患者の場合、栄養剤としては、通常パック等に封入された高濃度・高粘度の経腸栄養剤のほか、透明体の経腸栄養剤なども用いられる。また、水分の補給も必要である。これらの経腸栄養剤や水分は、医療機関では、高機能の輸液装置を使用し胃瘻用カテーテルを介して患者の胃腸に投与される。経腸栄養剤は、通常1日に3回投与されるので、入院治療の場合には、患者にとって時間的な問題は少ないが、経済的負担は大きい。医療機関において、通院により経腸栄養剤を投与する場合には、患者にとって時間的にも、経済的にも大きな負担となる。高機能の輸液装置については、例えば、下記の特許文献1に開示されている。
【0003】
胃瘻を要する患者であっても、自宅など医療機関外で経腸栄養剤を投与するケースが少なくない。例えば、在宅看護で経腸栄養剤を投与する場合、特に装置を用いない場合には、パック詰めされた経腸栄養剤を使用し、手でパックを押し潰すようにして、チューブやカテーテルを介して胃腸に経腸栄養剤を送り込むような方法が採られる。その他、注射器を利用する方法もある。しかし、これらの方法は、大きな労力と多大な時間とを必要とすることに加えて、投与速度など安定した安全な投与が難しい。このため、患者にとっても、介護者にとっても大きな負担となる。
【0004】
在宅介護などで経腸栄養剤を投与する装置として、手動式のポンプ装置が市販され利用されている。この装置の場合には、専用のチューブを本体にセットすることにより、栄養剤と患者との間をチューブで接続し、ハンドルを回すことによって、栄養剤が胃腸に注入されるようになっている。
【0005】
[発明が解決しようとする課題]
上記特許文献1に開示されているような高機能の輸液装置については、医療機関以外の施設や一般の家庭で採用することは、経済的な面、技術的な面、スペースの面からも困難である。また、医療機関への通院による経腸栄養剤の投与については、患者にとって、時間的にも、経済的にも大きな負担になるという課題があった。
手軽に利用できる装置として、上記の手回し式のポンプ装置があるが、1日にほぼ3回の経腸栄養剤の投与毎に使用することは、体調が十分ではない患者にとっては楽なことではなく、介護者に対する負担も少なくない。また、一定の供給速度で経腸栄養剤の投与を行うことも容易ではない。さらに、手回し式のような手動式のポンプ装置を用いない場合には、一定の速度で経腸栄養剤の投与を行うことが難しいことに加えて、患者にとっても、介護者にとっても、時間的、体力的に大きな負担を強いられるという課題があった。特に、高濃度・高粘度の経腸栄養剤の投与の場合には、一層困難を伴うという課題があった。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、医療機関以外の施設、一般の家庭などで、高濃度・高粘度の経腸栄養剤の場合であっても、安全に、簡単に使用でき、装置の価格が安く、胃瘻に要するコストも低く、患者や介護者にも優しい経腸栄養剤用チューブセット、経腸栄養剤用ポンプ装置本体部、及び経腸栄養剤用ポンプ装置を提供することを目的としている。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る経腸栄養剤用チューブセット(1)は、経腸栄養剤用ポンプ装置本体部に装着される経腸栄養剤用チューブセットであって、
経腸栄養剤の供給側である上流側チューブと、
中間部チューブと、
被投与者側の下流側チューブと、を備え、
前記中間部チューブと前記下流側チューブとの間が下流側閉塞検知部チューブによって接続され、
前記下流側閉塞検知部チューブが、両端部と、これら端部間に位置する支持部と、薄肉部と、及び前記支持部に対し前記薄肉部の径方向反対側外面に位置する光遮断部とを備え、
前記下流側チューブ又はさらにその下流側の閉塞時に、前記薄肉部が前記支持部側とは反対方向に変形するように構成されている、
ことを特徴としている。
【0009】
上記経腸栄養剤用チューブセット(1)によれば、特に高濃度・高粘度の経腸栄養剤の投与時に、チューブポンプの特に下流側で生じる経腸栄養剤の流れの停止によるチューブ内の閉塞、チューブの折れ曲がりによる閉塞などを確実かつ容易に検知することができる。
また、前記下流側閉塞検知部チューブを主要部とする経腸栄養剤用チューブセットを、安価なポリ塩化ビニルで構成することができる。そのために、通常、1日に3回の経腸栄養剤の投与毎に未使用のチューブセットを用いる場合であっても、使用者に対する経済的負担を大きく軽減することができる。
さらに、ポリ塩化ビニルで構成された前記経腸栄養剤用チューブセットは、破損等が起こりにくく、取り扱いも容易である。したがって、一般の家庭における使用にも極めて好適である。
【0010】
また、本発明に係る経腸栄養剤用チューブセット(2)は、上記経腸栄養剤用チューブセット(1)において、
さらに、前記上流側チューブと前記中間部チューブとの間が上流側閉塞検知部チューブによって接続され、
前記上流側閉塞検知部チューブが、両端部と、これら端部間に位置する支持部と、薄肉部と、及び前記支持部に対し前記薄肉部の径方向反対側外面に位置する光遮断部とを備え、
前記上流側チューブ又はさらにその上流側の閉塞時に、前記薄肉部が前記支持部側に変形するように構成されている、
ことを特徴としている。
【0011】
上記経腸栄養剤用チューブセット(2)によれば、上記経腸栄養剤用チューブセット(1)によって得られる効果に加えて、チューブポンプの上流側で生じる経腸栄養剤の流れの停止によるチューブ内の閉塞、チューブの折れ曲がりによる閉塞などについても、確実かつ容易に検知することができる。
【0012】
また、本発明に係る経腸栄養剤用ポンプ装置本体部(1)は、ケーシング上面のパネル上に、チューブポンプ、及び下流側閉塞検知部を備え、
前記下流側閉塞検知部が、発光部と、受光部とを備えている、
ことを特徴としている。
【0013】
上記経腸栄養剤用ポンプ装置本体部(1)によれば、下流側閉塞検知部が、発光部と受光部とを含んで構成されており、高価な磁気センサーや超音波センサーではなく、安価な光センサーで構成されている。また、チューブポンプなど汎用の安価な部品を使用して経腸栄養剤用ポンプ装置本体部を構成することができる。そのため、使用者に対し、高性能な経腸栄養剤用ポンプ装置本体部を低価格で供することができ、使用者に対する経済的負担を大きく軽減することができる。
【0014】
また、本発明に係る経腸栄養剤用ポンプ装置本体部(2)は、上記経腸栄養剤用ポンプ装置本体部(1)において、
さらに、前記ケーシング上面のパネル上に、上流側閉塞検知部を備え、
前記上流側閉塞検知部が、発光部と、受光部とを備えている、
ことを特徴としている。
上記経腸栄養剤用ポンプ装置本体部(2)によれば、上記経腸栄養剤用ポンプ装置本体部(1)によって得られる効果に加えて、上流側に設けられた上流側閉塞検知部が、発光部と受光部とを含んで構成されており、高価な磁気センサーや超音波センサーではなく、安価な光センサーで構成されている。そのため、使用者に対し、高性能な経腸栄養剤用ポンプ装置本体部を低価格で供することができ、使用者に対する経済的負担を大きく軽減することができる。
【0015】
また、本発明に係る経腸栄養剤用ポンプ装置本体部(3)は、上記経腸栄養剤用ポンプ装置本体部(1)又は(2)において、
さらに、前記ケーシング上記面のパネル上に、空液検知部を備え、
前記空液検知部が、前記チューブポンプと前記下流側閉塞検知部との間に配置され、発光・受光部と、受光部とを備えている、
ことを特徴としている。
上記経腸栄養剤用ポンプ装置本体部(3)によれば、チューブポンプと下流側閉塞検知部との間に空液検知部を備えているので、空液検知部により、高濃度・高粘度の経腸栄養剤、透明体の経腸栄養剤など、様々なタイプの経腸栄養剤や水について、投与中、投与の終了などの状態を確実に検知することができる。
【0016】
また、本発明に係る経腸栄養剤用ポンプ装置(1)は、上記経腸栄養剤用チューブセット(1)と、上記経腸栄養剤用ポンプ装置本体部(1)とが組み合わされて一体化されて構成される経腸栄養剤用ポンプ装置であって、
前記経腸栄養剤用チューブセットの前記中間部チューブが、前記チューブポンプのローターを巻いて取り付けられ、
前記下流側閉塞検知部チューブが前記下流側閉塞検知部に装着され、
前記下流側閉塞検知部チューブの前記光遮断部が、経腸栄養剤供給前及び非閉塞時には、前記下流側閉塞検知部の発光部の光を遮断しない高さに、閉塞時には、前記下流側閉塞検知部の発光部の光を遮断する高さに設定され、
て構成されていることを特徴としている。
【0017】
上記経腸栄養剤用ポンプ装置(1)によれば、前記チューブポンプの特に下流側における経腸栄養剤のチューブ内での閉塞、チューブの折れ曲がり等による経腸栄養剤の供給の停止を確実に検知することができる。
【0018】
さらに、前述のように、安価な経腸栄養剤用チューブセットと経腸栄養剤用ポンプ装置本体部との組合せであるので、利用者に対し、経済的に少ない負担で装置を提供できるとともに、電力を動力源とするポンプによる投与であるために、時間的、体力的負担を大きく軽減することができる。
また、電気機械的ポンプ装置であるため、経腸栄養剤の投与速度の調節が容易であるとともに、所定の安定した速度で経腸栄養剤を投与することができる。このほか、経腸栄養剤用ポンプ装置本体部に対する経腸栄養剤用チューブセットの着脱も極めて容易である。
このように、本発明に係る経腸栄養剤用ポンプ装置は、利用者にとって、取り扱いが容易で、安心、安全かつ経済性に優れた装置ということができる。
【0019】
また、本発明に係る経腸栄養剤用チューブセット(3)は、上記経腸栄養剤用チューブセット(1)又は(2)において、前記上流側チューブ、前記中間部チューブ、前記下流側チューブ、及び前記下流側閉塞検知部チューブ又は前記下流側閉塞検知部チューブ及び前記上流側閉塞検知部チューブがポリ塩化ビニルで構成され、少なくとも前記中間部チューブが透明品となっていることを特徴としている。
上記経腸栄養剤用チューブセット(3)によれば、チューブ全体が様々な製品に用いられているポリ塩化ビニルで構成されており、材料コストを極めて低く抑えることができる。特に、本発明にとって、重要な要素であり、本発明特有の形状である上流側閉塞検知部チューブ、及び前記下流側閉塞検知部チューブも、加工性、伸縮性などに優れるポリ塩化ビニルを材料として、金型による成形が可能であるため、低いコストで製造することができる。そのため、経腸栄養剤の投与毎に未使用の経腸栄養剤用チューブセットを利用しなければならない利用者に対し、安価な経腸栄養剤用チューブセットを提供することができる。また、ポリ塩化ビニルは、柔軟性に優れ、耐水性、通常の耐薬品性などにも優れているので、取り扱いが容易という利点も有している。
【0020】
また、本発明に係る経腸栄養剤用ポンプ装置本体部(4)は、上記経腸栄養剤用ポンプ装置本体部(3)において、前記空液検知部が、前記発光・受光部の発光部への供給電力に応じた明るさの切り替えにより、前記中間部チューブ内を流れる経腸栄養剤の種類の識別、経腸栄養剤と気泡又は空気との識別が可能であるとともに、光の反射により透明体と空気又は気泡との識別が可能に構成されていることを特徴としている。
上記経腸栄養剤用ポンプ装置本体部(4)によれば、経腸栄養剤の種類の識別、経腸栄養剤の投与中と投与終了を正確に把握できる。特に、経腸栄養剤が透明体の場合であっても、投与中と投与終了を確実に検知することができる。そのために、様々な経腸栄養剤を、それぞれの経腸栄養剤に求められる所定の速度で投与することができる。また、胃瘻患者の胃腸に対し、過剰な空気が送り込まれることを未然に防止することが可能であり、安全性に優れている。
【0021】
また、本発明に係る経腸栄養剤用ポンプ装置本体部(5)は、上記経腸栄養剤用ポンプ装置本体部(1)〜(4)のいずれかにおいて、前記ケーシング上面のパネル上に位置する前記チューブポンプに対して進退移動可能に構成され、前記中間部チューブを押圧する機能を有するチューブ押さえを備えていることを特徴としている。
上記経腸栄養剤用ポンプ装置本体部(5)によれば、前記チューブ押さえにより、中間部チューブをチューブポンプに対し密着する程度まで押し当てることができるので、中間部チューブ内の経腸栄養剤を確実に移送することができる。そのため、チューブポンプの回転数を基に、経腸栄養剤の投与速度、投与量などを求めることもできる。
【0022】
また、本発明に係る経腸栄養剤用ポンプ装置本体部(6)は、上記経腸栄養剤用ポンプ装置本体部(1)〜(5)のいずれかにおいて、前記ケーシング上面のパネルの一端側に、電源ボタン、ディジタル表示部、プライミングボタン、供給速度調節ボタン、警報音発生部、動作状況表示ランプのうち、少なくとも一つを含む操作部を備えていることを特徴としている。
上記経腸栄養剤用ポンプ装置本体部(6)によれば、本体部上面の一端側に操作部が設けられているので、経腸栄養剤の投与の条件の設定、投与状況の把握、異常時の対応などが容易である。そのため、容易に、安心、安全に使用することができ、在宅看護にも適した汎用性のある優れた製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態に係る経腸栄養剤用チューブセット、経腸栄養剤用ポンプ装置本体部(以下、経腸栄養剤用ポンプ装置本体部と表記する)、及び経腸栄養剤用ポンプ装置を図面に基づいて説明する。
なお、本発明の実施の形態に係る経腸栄養剤用ポンプ装置は、高濃度・高粘度の経腸栄養剤のほか、透明状の栄養剤、水などの投与にも用いられるが、これらも含めて経腸栄養剤と表記することがある。
【0025】
図1は、実施の形態に係る経腸栄養剤用ポンプ装置1の構成を示す斜視図であり、経腸栄養剤用ポンプ装置1は、経腸栄養剤用チューブセット10と、経腸栄養剤用ポンプ装置本体部20とが組み合わされ、一体化されて構成されている。
【0026】
図2は、経腸栄養剤用ポンプ装置1に用いられる経腸栄養剤用チューブセット10の構成を示す平面図である。
経腸栄養剤用チューブセット10は、上流側チューブ11、上流側閉塞検知部チューブ12、ローラー部チューブ(中間部チューブ)13、下流側閉塞検知部チューブ14、及び下流側チューブ15を含んで構成され、その中を経腸栄養剤が流れるようになっている。
また、上流側チューブ11の端部に経腸栄養剤と接続される上流側コネクタ16、下流側チューブ15の端部に被投与者(胃瘻患者)側のカテーテルと接続される下流側コネクタ17が設けられている。
ただし、上流側コネクタ16、下流側コネクタ17については、上流側チューブ11、下流側チューブ15に接合されているのではなく、それぞれ接続される側のコネクタに合わせて、上流側チューブ11、下流側チューブ15に対し、適宜接続して使用できるように構成されている。
【0027】
上流側閉塞検知部チューブ12、下流側閉塞検知部チューブ14の2つの閉塞検知部チューブ、特に下流側閉塞検知部チューブ14が、本発明を特徴付ける重要な役割を果たしている。
上流側チューブ11と上流側閉塞検知部チューブ12、上流側閉塞検知部チューブ12とローラー部チューブ13、ローラー部チューブ13と下流側閉塞検知部チューブ14、下流側閉塞検知部チューブ14と下流側チューブ15、はそれぞれ接着剤により接続されている。
特に、上流側閉塞検知部チューブ12、下流側閉塞検知部チューブ14に対しては、両端部に接続されるチューブ側が挿入され、接着剤により経腸栄養剤の液漏れがないように接着されている(
図4、
図5参照)。
また、ローラー部チューブ13は、後に
図6〜
図8を参照して説明するように、空液検知部25において、経腸栄養剤の種類、投与中、投与完了などの検知を容易に行うことができるように、透明であることが好ましい。
【0028】
上流側閉塞検知部チューブ12は、通常の使用では変形しない端部12a、12aと、支持部12cと、光遮断部12eと、上流側の閉塞時に収縮変形する薄肉部12eとを含んで構成されている。
また、下流側閉塞検知部チューブ14は、通常の使用では変形しない端部14a、14aと、支持部14cと、光遮断部14eと、下流側の閉塞時に膨張変形する薄肉部14dとを含んで構成されている。
なお、
図4、
図5には、光遮断部12e、14eの形状が板状の四角形の例が示されているが、光遮断部は光を遮断できればよいので、角柱状、三角形状など他の形状であってもよい。
【0029】
上流側閉塞検知部チューブ12、及び下流側閉塞検知部チューブ14は、チューブセット10の一部として使用されるもので、チューブセット10は、通常経腸栄養剤投与毎に未使用のものが使用され、使用後のものは廃棄される。したがって、チューブセット10、特にチューブセット10の主要な構成要素である上流側閉塞検知部チューブ12、下流側閉塞検知部チューブ14には、材料コスト及び製造コストが安く、安価なことが要求される。
【0030】
上流側閉塞検知部チューブ12、及び下流側閉塞検知部チューブ14に用いられる材料としては、例えば、強度、柔軟性、加工性などに優れるとともに、大量に利用されている安価なポリ塩化ビニルが好適である。ポリ塩化ビニルを素材として、上流側閉塞検知部チューブ12、下流側閉塞検知部チューブ14に加工する方法としては、いくつかの方法があるが、大量に生産する必要がある点から、金型を用いる成形方法が適している。金型は、上流側閉塞検知部チューブ12、下流側閉塞検知部チューブ14に対してひとつの型でよく、原材料としてのポリ塩化ビニルと金型成形との組合せにより、上流側閉塞検知部チューブ12、下流側閉塞検知部チューブ14を安価に、大量に生産することができる。
【0031】
チューブセット10を構成するその他の部分である、上流側チューブ11、ローラー部チューブ13、及び下流側チューブ15については、汎用のポリ塩化ビニルチューブを用いることができる。また、上流側コネクタ16、下流側コネクタ17についても、輸液用、経腸栄養剤投与用として、通常使用されているコネクタを使用することができる。
このように、実施の形態に係るチューブセット10は、安価に大量に生産することができるので、胃瘻患者にとって、容易に利用することができるとともに、後述するように、上流側、下流側のチューブ内の閉塞を確実に検知できるという優れた特長を備えている。
【0032】
なお、チューブセット10については、上流側閉塞検知部チューブ12及び下流側閉塞検知部チューブ14の両者を含む例を示したが、チューブの閉塞は下流側でより確実に検知することができる。したがって、上流側閉塞検知部チューブ12は備えていなくてもよいが、上流側閉塞検知部チューブ12及び下流側閉塞検知部チューブ14の両者を備えることがより好ましい。
【0033】
図3は、経腸栄養剤用ポンプ装置本体部20の主要部の構成を示す平面図であり、経腸栄養剤用ポンプ装置本体部20のケーシング30上面のパネル21には、上流側閉塞検知部22、下流側閉塞検知部24、空液検知部25、ローラー部チューブ13内の経腸栄養剤をポンプ移送するためのチューブポンプ23のローター23a、ローター23aに回転自在に取り付けられたローラー23b、ローラー23bに対して、ローラー部チューブ13を押圧するためのチューブ押さえ26が配設されている。
【0034】
経腸栄養剤用ポンプ装置本体部20のケーシング30内には、チューブポンプ23の駆動部であり、ローター23aを回転させるモーターのほか、モーターの回転、経腸栄養剤の投与量、発光部の電圧・電流、光センサーの受光、チューブ内の閉塞の検知、警報の発生などに必要な機器とその制御部、電源部など(いずれも図示せず)が装備されている。これらの機器、制御系は、実施の形態に係る経腸栄養剤用ポンプ装置の動作が実行されるように、汎用の機器、集積回路などを組み合わせることによって構成することができる。
【0035】
図3には、チューブポンプ23について、本体部内に配置された駆動部により回転するローター23aと、ローター23aの中心に対し120°の間隔で配置された3個のローラー23bで構成された例が示されている。また、チューブ押さえ26は、ローラー部チューブ13がチューブポンプ23に巻きつけられた後、チューブポンプ23に向けて移動させることにより、ローラー23bとチューブ押さえ26との間でローラー部チューブ13を押圧することができるようになっている。
チューブポンプ23については、上記のタイプのものではなく、チューブ内の液体をポンプ移送できるものであれば、いずれのタイプのものを用いてもよい。
【0036】
チューブ押さえ26は、バネを利用して押圧する方法でもよく、その手段は特に限定されるものではない。
図1には、押圧板26を挟む形状の「コ」の字形のレバー26aと押圧板26bと連結バー26cとの間の3つの回転支点で構成されたチューブ押さえ26が示されている。このチューブ押さえ26は、レバー26aを操作することにより、押圧板26bがチューブポンプ23側に前後に移動するようになっており、押圧板26bにより、ローラー23bに対してローラー部チューブ13を押圧することができるようになっている。なお、押圧板26bのチューブポンプ23側には、チューブ内を流れる経腸栄養剤が確実にポンプ移送されるように、ローラー部チューブ13が押し潰された状態でチューブポンプ23のローラー23bに密着する程度の径を有するほぼ半円形の凹部26dが形成されている。
【0037】
経腸栄養剤用ポンプ装置本体部20上面のパネル21に設けられている上流側閉塞検知部22には、経腸栄養剤用チューブセット10の上流側閉塞検知部チューブ12が装着され、下流側閉塞検知部24には、下流側閉塞検知部チューブ14が装着される。上流側閉塞検知部22には、上流側閉塞検知部チューブ12を挟み、一方側に発光部22a、他方側に受光部22bが設けられ、下流側閉塞検知部24には、下流側閉塞検知部チューブ14を挟み、一方側に発光部24a、他方側に受光部24bが設けられており、受光部22b、24bは、いずれも光センサーで構成されている。
【0038】
さらに、経腸栄養剤用ポンプ装置本体部20には、チューブセット10のローラー部チューブ13内の内容物を検知するための空液検知部25が設けられており、空液検知部25は、ローラー部チューブ13を挟み、一方側の発光・受光部25a、他方側の受光部25bで構成されている。また、発光・受光部25aは、発光部25aaと受光部25abとで構成され、発光・受光部25aの受光部25ab及び受光部25bは、いずれも光センサーで構成されている。
上流側閉塞検知部22の発光部22a、下流側閉塞検知部24の発光部24a、空液検知部25の発光部25aaの発光部は、白熱電球やハロゲン電球でもよいが、装置構成、寿命、メンテナンスなどの観点からLEDが好適である。
【0039】
経腸栄養剤用チューブセット10のうち、ローラー部チューブ13が経腸栄養剤用ポンプ装置本体部20のチューブポンプ23のローター23aに巻かれるようにセットされるとともに、空液検知部25の発光部25aと受光部25bとの間にセットされ、チューブセット10の上流側閉塞検知部チューブ12、下流側閉塞検知部チューブ14が、それぞれ経腸栄養剤用ポンプ装置本体部20の上流側閉塞検知部22、下流側閉塞検知部24に嵌め込まれる。さらに、ローラー部チューブ13が、経腸栄養剤用ポンプ装置本体部20のチューブ押さえ26により押圧される状態とされて、経腸栄養剤用チューブセット10と経腸栄養剤用ポンプ装置本体部20とが一体化される。このように組み合わされたものが、
図1に示した経腸栄養剤用ポンプ装置1である。
【0040】
経腸栄養剤用ポンプ装置本体部20にチューブセット10を装着し固定する場合には、経腸栄養剤用ポンプ装置本体部20の上流側閉塞検知部22の両端部に設けられているチューブ保持部22d、22eに対し、チューブセット10の上流側閉塞検知部チューブ12の両端部12a、12aを嵌め込む。さらに、下流側閉塞検知部24の両端部に設けられているチューブ保持部24d、24eに対し、チューブセット10の下流側閉塞検知部チューブ14の両端部14a、14aを嵌め込む。
さらに、ローラー部チューブ13を、空液検知部25に位置するようにセットする。
【0041】
経腸栄養剤を投与する際には、チューブセット10の上流側コネクタ16に経腸栄養剤が入ったパックなどを取り付け、チューブセット10の下流側コネクタ17と胃瘻患者側のカテーテルとを接続する。その後、経腸栄養剤をチューブ内に流し込み空気を追い出し経腸栄養剤を流し込むプライミングを行った後、チューブポンプ23のローター23aを所定の速度で回転させて、所定の供給速度で経腸栄養剤の投与を行う。
【0042】
経腸栄養剤の投与は、安全、確実でトラブルが生じないことが求められる。特に、高濃度・高粘度の経腸栄養剤の場合には、ローラー部チューブ13より上流側、下流側、又はチューブポンプ23のローター23aの上流側、下流側の両方のチューブ内で詰まりが生じることがある。また、上流側チューブ11、下流側チューブ15などの部分でチューブが折れ曲がり、経腸栄養剤が供給されなくなることもある。経腸栄養剤用ポンプ装置1には、このような詰まりを確実に把握し、対処できることが求められる。
【0043】
チューブポンプ23について、
図3を参照し、ローター23a、ローラー23bを用いるローラータイプの例を説明したが、チューブポンプ23については、ローラーポンプに限定されない。チューブ内の経腸栄養剤を送ることができるポンプであれば、その他のタイプのポンプを用いることもできる。
【0044】
図4は、実施の形態に係る経腸栄養剤用チューブセット10の上流側閉塞検知部チューブ12の構成及び動作を説明するための横断面図及び縦断面図であり、(a)は正常時又は非閉塞時(以下、正常時と表記する)、(b)は閉塞時の状態を示す図である。
【0045】
また、
図5は、実施の形態に係る経腸栄養剤用チューブセット10の下流側閉塞検知部チューブ14の構成及び動作を説明するための横断面図及び縦断面図であり、(a)は正常時、(b)は閉塞時の状態を示す図である。なお、上流側閉塞検知部チューブ12、下流側閉塞検知部チューブ14の外観は
図1及び
図2に示されている。
【0046】
図4、
図5には、上流側閉塞検知部チューブ12、下流側閉塞検知部チューブ14が、それぞれ経腸栄養剤用ポンプ装置本体部20の上流側閉塞検知部22、下流側閉塞検知部24にセットされた状態における発光部22a、24aからの光線Lが表示されている。
【0047】
図2、
図4に示したように、上流側閉塞検知部チューブ12は、両端部が上流側チューブ11、ローラー部チューブ13との接続部を兼ねた端部12a、12aとなっており、その間の一部が閉塞時にも変形しない支持部12cによって支持されている。また、端部12a、12a間は、
図4(a)に示したように、支持部12cを除き、横断面がほぼ円形の薄肉チューブとなっている。この薄肉部12dには、支持部12cに対し径方向の反対側の外面に光遮断部12eが設けられている。
【0048】
正常時には、光線Lは光遮断部12eによって遮られている。上流側で経腸栄養剤の供給に閉塞が生じた場合に、経腸栄養剤用ポンプ装置本体部20のチューブポンプ23の動作が続くと、閉塞部とチューブポンプ23のローラー23bと間のチューブ内が負圧となる。そのため、
図4(b)に示すように、上流側閉塞検知部チューブ12の薄肉部12dが支持部12c側にくっつくように変形し、経腸栄養剤が流れない状態となる。
【0049】
すなわち、
図4(b)に示したように、長さ方向である側面から見ると、上流側閉塞検知部チューブ12の変形性を有する薄肉部12dの両端部12a、12a間に凹部が形成された状態となり、径方向の他方側である支持部12c側にくっつくように変形する。それに伴い、光遮断部12eが支持部12c側に引き寄せられ、上流側閉塞検知部22の発光部22aからの光線Lが、受光部22bによって検知されるようになる。それによって、チューブポンプ23の上流側で閉塞が生じたことを検知することができる。
【0050】
図2、
図5に示したように、下流側閉塞検知部チューブ14は、両端部がローラー部チューブ13と下流側チューブ15との接続部を兼ねた端部14a、14aとなっており、その間の一部が閉塞時にも変形しない支持部14cによって支持されている。また、端部14a、14a間は、
図5(a)に示したように、支持部14cを除き、横断面が、支持部14c方向の径が小さいほぼ楕円状の薄肉のチューブとなっており、横方から見ると、端部14a、14a間の薄肉部14dに凹部が形成された形状となっている。この薄肉部14dには、支持部14cに対し径方向反対側の外面に光遮断部14eが設けられている。
【0051】
正常時には、光線Lは光遮断部14eによって遮られない状態となっている。下流側で経腸栄養剤の供給に閉塞が生じた場合に、経腸栄養剤用ポンプ装置本体部20のチューブポンプ23の動作が続くと、閉塞部とチューブポンプ23のローラー23bとの間のチューブ内の圧力が高くなる。そのため、
図5(b)に示したように、下流側閉塞検知部チューブ14の薄肉部14dが支持部14cの反対側に広がるように変形し、断面がほぼ円形の状態まで膨張する。
【0052】
すなわち、
図5(b)に示したように、下流側の閉塞時には、下流側閉塞検知部チューブ14の変形性を有する薄肉部14dが、横断面がほぼ円形の状態になるまで変形する。それに伴い、光遮断部14eが支持部14c側に対し離れる方向に移動し、下流側閉塞検知部24の発光部24aからの光線Lが、光遮断部14eによって遮断され、受光部24bによって検知されないようになる。この光遮断によって、チューブポンプ23の上流側で閉塞が生じたことを検知することができる。
【0053】
図4、
図5に示した実施の形態では、上流側閉塞検知部チューブ12の光遮断部12e、下流側閉塞検知部チューブ14の光遮断部14eを、それぞれ上流側閉塞検知部12、下流側閉塞検知部24に対し、下向きに装着する例を示したが、別の実施の形態では、これら光遮断部12e、光遮断部14eをそれぞれ上向きに装着するようにしてもよい。
その場合には、光遮断部12e、14eの高さに合わせて、上流側閉塞検知部22の発光部22aと受光部22bの高さ、下流側閉塞検知部24の発光部24aと受光部24bの高さを設定する。
【0054】
空液検知部25(
図1、
図3)には空液センサーが設けられており、空液センサーは、
図6〜
図8に示したように、ローラー部チューブ13を挟み、一方側の発光・受光部25a、他方側の受光部25bによって構成されている。発光・受光部25aの発光部25aaからの光線はローラー部チューブ13の側面に照射され、向かい側の受光部25bでは、ローラー部チューブ13を透過した光を受光し、発光・受光部25aの受光部25abは、ローラー部チューブ13の内容物に反射された光を受光することができるようになっている。
【0055】
図1に示した例では、空液検知部25を、チューブポンプ23のローター23aと下流側閉塞検知部24との間に位置させた例を示したが、空液検知部25は、上流側閉塞検知部22とチューブポンプ23のローター23aとの間に位置させてもよく、上流側、下流側の両者に配置してもよい。
【0056】
この空液検知部25は、チューブ内の内容物の種類を識別するとともに、その存否を確認する機能を備えている。すなわち、空液検知部25は、チューブ内を流れる内容物が、つぶの多い系統の経腸栄養剤(つぶつぶ系)か、ヨーグルトのような粘性の高い系統の経腸栄養剤(ヨーグルト系)か、透明体の経腸栄養剤か、水かなど、透明体を含む経腸栄養剤の投与中か投与の終了か、空気かを判別することができるようになっている。
【0057】
図6は、つぶつぶ系の経腸栄養剤が流れている状態か否かを検知する場合を示している。つぶつぶ系の経腸栄養剤がローラー部チューブ13内を流れている場合、光がローラー部チューブ13内を透過しやすいので、発光部の電流又は電圧(以下、電力と表記する)を低く設定することにより、
図6(a)に示したように、光が透過しないようにしてローラー部チューブ13内の経腸栄養剤の有無を確認する。つぶつぶ系の経腸栄養剤の供給が終わると、ローラー部チューブ13の内側には多少のつぶ状の小さな塊が付着して残っている(
図6(b))が、光は透過するようになるので、経腸栄養剤の投与が終了したことを検知することができる。以下、この検知を「空液センシング1」と表記する。
【0058】
図7は、ヨーグルト系のような粘性の高い経腸栄養剤が流れている状態か否かを検知する場合を示している。ヨーグルト系の経腸栄養剤の場合には、経腸栄養剤の投与が終わり、経腸栄養剤がローラー部チューブ13内を流れなくなった状態でも、ローラー部チューブ13の内面に経腸栄養剤の薄膜が残る傾向がある(
図7(b))。その場合には、光がローラー部チューブ13内を透過しにくいので、経腸栄養剤の有無を確認できない場合がある。したがって、ヨーグルト系のような粘性の高い経腸栄養剤については、経腸栄養剤がローラー部チューブ13内を流れている場合には光が透過することがなく、投与終了時には、ローラー部チューブ13内を光が透過する程度まで、発光部の電力を高く設定し、発光部の光度を強くすることにより、経腸栄養剤の投与が終了したか否かを検知することができるようにする。以下、この検知を「空液センシング2」と表記する。
【0059】
上記のように、空液検知部25では、経腸栄養剤がつぶつぶ系の場合(空液センシング1)と、高粘度のヨーグルト系の場合(空液センシング2)とでは、異なる電力を選択しなければならない。そのために、経腸栄養剤などの内容物が、はじめに空液検知部25に到達した際、すなわち、プライミング時に、発光部の電力を変化させて透過光を受光することにより、つぶつぶ系かヨーグルト系かを判断し、空液センシング1の場合の電力と、空液センシング2の場合の電力の選択を行う。
【0060】
図8は、水のような透明体の有無を検知する場合を示している。ローラー部チューブ13内に透明体が存在する場合には、光が透明体を透過するので、透過光により内容物の有無を検知することはできない。しかし、透明体の場合には、適切な光の入射角の設定により、光が透明体に反射するので、その反射光を利用する。すなわち、透明体がローラー部チューブ13内に存在する場合には、発光・受光部25aの発光部25aaからの光の反射光を受光部25abによって検知することができる。ローラー部チューブ13内に透明体が存在しない場合、すなわち、空の場合には、光の反射がないので、発光部25aaと同じ側に位置する受光部25abでは光を検知することができない。
【0061】
このように、ローラー部チューブ13に対して同じ側に位置する発光・受光部25aの発光部25aaと受光部25abとの組合せによって、ローラー部チューブ13内に透明体が存在するか否かを検知することができる。以下、この検知を「空液センシング3」と表記する。空液センシング3の場合には、発光部25aaの電力が、空液センシング1のレベルであっても、空液センシング2のレベルであっても、ローラー部チューブ13内の透明体の有無を検知することができる。
【0062】
空液検知部25では、プライミング時に、経腸栄養剤がつぶつぶ系か、ヨーグルト系か、透明体系かを識別する。その後、センシング1又はセンシング2の電力により、センシング1、センシング2、又はセンシング3を実行する。投与が終了した場合には、経腸栄養剤がつぶつぶ系であればセンシング1、経腸栄養剤がヨーグルト系であればセンシング2、内容物が透明体であれば、センシング3により検知することができる。
【0063】
経腸栄養剤又は水などの透明体が検知されなくなった場合には、空気が供給されていると判断することができる。患者の胃腸に空気が送り込まれることは防止されなければならないので、空液センシング1〜3におけるローラー部チューブ13内が空の状態であるか否かの検知は、経腸栄養剤の投与において重要な役割を担っている。
なお、空液検知部25により、ローラー部チューブ13内に経腸栄養剤、水などの透明体が検出されなくなった場合には、経腸栄養剤用ポンプ装置本体部20に設けられている警報音発生手段により警報音を発生させるとともに、操作者にポンプ装置の動作を停止させるようにする。ただし、停止する動作が自動で実行されるように構成してもよい。
【0064】
上記のように、空液検知部25は、経腸栄養剤の供給状態を検知することができるので、設けられていることがより好ましい。ただし、使用者の観察等によって判別できる機能を含むので、装置として必ずしも必要ではなく、省いても差し支えない。
【0065】
図9は、本発明の実施の形態に係る経腸栄養剤用ポンプ装置本体部20の操作パネルの構成の一例を示す平面図である。
操作パネル27には、電源スイッチボタン27a、ディジタル表示部27b、チューブポンプ23による供給速度調節ボタン27c、27d、プライミングボタン27e、停止/消音ボタン27f、タイマーボタン27g、図示していない警報音発生部などが設けられる。
また、それぞれのボタンには、動作状況を示すランプ表示部27hが設けられている。ディジタル表示部27bには、経腸栄養剤の投与の経過時間、投与量、上流側での閉塞、下流側での閉塞などの異常が生じた際に、異常の種別を示すエラーナンバーなどが表示される。そのほか、経腸栄養剤の投与が終わり、空液検知部25で空の状態が検知された場合の経過時間、送り込まれた空気の推定量なども表示させることができる。
【0066】
上記したように、本発明の実施の形態に係る経腸栄養剤用チューブセット、経腸栄養剤用ポンプ装置本体部、及び経腸栄養剤用ポンプ装置によれば、水や透明体の経腸栄養剤はもとより、高濃度・高粘度の経腸栄養剤であっても、チューブ内における経腸栄養剤の閉塞などのトラブルを確実に検知し対処できる。
また、経腸栄養剤用チューブセット、及び経腸栄養剤用ポンプ装置本体部を低いコストで製造可能なため、低価格で提供することができ、経済性に優れ、需要者による採用を容易に促進することができる。さらに、経腸栄養剤用チューブセット、経腸栄養剤用ポンプ装置の使い方が容易であり、経腸栄養剤の投与速度の調整や安定した速度での投与が可能であるので、在宅での看護にも極めて好適である。