特許第6976231号(P6976231)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976231
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】脱線防止装置
(51)【国際特許分類】
   E01B 5/18 20060101AFI20211125BHJP
【FI】
   E01B5/18
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-149200(P2018-149200)
(22)【出願日】2018年8月8日
(65)【公開番号】特開2020-23839(P2020-23839A)
(43)【公開日】2020年2月13日
【審査請求日】2020年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100089635
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 守
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】西宮 裕騎
(72)【発明者】
【氏名】楠田 将之
(72)【発明者】
【氏名】水谷 淳
【審査官】 彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−211010(JP,A)
【文献】 特開2016−079608(JP,A)
【文献】 特開2014−031707(JP,A)
【文献】 特開2008−024136(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3086802(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱線防止ガードの欠線部に配設される絶縁ガード材と、
該絶縁ガード材を支持する支持装置とを備え、
前記絶縁ガード材は、電気絶縁性を有する材料から成り、レールの絶縁継目板に対向して配設され、
前記支持装置はまくらぎに取り付けられることを特徴とする脱線防止装置。
【請求項2】
前記絶縁ガード材は、一体成形品、又は、複数の成形品を結合した複合材である請求項1に記載の脱線防止装置。
【請求項3】
前記一体成形品は、ガラス繊維補強樹脂から成る請求項2に記載の脱線防止装置。
【請求項4】
前記複合材は、ガラス繊維補強樹脂から成る一体成形品に、ガラス繊維ウレタン樹脂圧密材から成る一体成形品を結合した部材である請求項2に記載の脱線防止装置。
【請求項5】
前記絶縁ガード材は前記絶縁継目板より長く、該絶縁継目板の全範囲が前記絶縁ガード材に対向する請求項1〜4のいずれか1項に記載の脱線防止装置。
【請求項6】
前記支持装置は一対であって、各支持装置は、互いに隣接する2つのまくらぎに、それぞれ、取り付けられる請求項1〜5のいずれか1項に記載の脱線防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、脱線防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道の線路、すなわち、軌道は、路床の上の路盤上にまくらぎを並べ、該まくらぎの上にレールを敷設する構造を備える。そして、鉄道車両の車輪がレールから脱線することを防止するために、脱線防止ガードがレールに沿って設置されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−31707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の技術では、レールの絶縁継目部に対応して設置された脱線防止ガードの電気絶縁性を確保し、かつ、十分な強度を確保することが困難であった。
【0005】
図1は従来の脱線防止ガードがレールに沿って設置されている軌道を示す写真、図2は従来のレールの絶縁継目部に対応して設置された脱線防止ガードの構造を示す図である。なお、図1において、(a)は脱線防止ガードが設置されている曲線軌道の写真、(b)はレールに沿って設置されている脱線防止ガードの拡大写真であり、図2において、(a)は脱線防止ガードに欠線部を設けた構造を示す図、(b)は脱線防止ガードに絶縁材を巻き付けた構造を示す写真、(c)は脱線防止ガードの間に絶縁材を取り付けた構造を示す図である。
【0006】
図1(a)において矢印で示されるように、曲線軌道においては、通常、内軌側軌道、すなわち、カーブの内側にレール11に沿って脱線防止ガードとしてのガード材21が設置されている。なお、該ガード材21は、レール11と同様に鋼材から成る長尺の部材であって、レール11との間隔が所定の値に保持されるように、図1(b)において矢印で示されるようなホルダ18によってレール11に取り付けられている。
【0007】
そして、図2(a)に示されるように、例えば、信号機等が設置されている箇所のように、情報伝達のためにレール11に電気信号を流して電気回路を構成した軌道回路を区切る必要がある箇所では、電気絶縁性を有する絶縁継目板12を介して、隣接する2本のレール11が接続されている。これにより、隣接する2本のレール11同士が互いに電気的に絶縁され、軌道回路を区切ることができる。なお、レール11は、コンクリート等から成るまくらぎ15に締結され、絶縁継目板12を介して接続された2本のレール11の端11a近傍は、それぞれ、別個のまくらぎ15に締結されている。そのため、絶縁継目板12は、互いに隣接する2つのまくらぎ15に跨がるようになっている。
【0008】
また、ガード材21がホルダ18によってレール11に取り付けられているが、前記絶縁継目板12に対応する箇所においては、隣接する2本のガード材21の端21a同士が大きく離間され、ガード材21が存在しない欠線部21bが生じている。これにより、2本のレール11に対応するガード材21同士が互いに絶縁されるので、車輪がガード材21に接触しても、該ガード材21を経由して、絶縁継目板12を介して接続されたレール11同士が導通してしまうことがない。
【0009】
しかし、図2(a)に示されるような長い欠線部21bでは、長い距離に亘ってガード材21が存在しないので、脱線防止機能を果たすことができない。
【0010】
そこで、図2(b)に示されるように、隣接する2本のガード材21の間隔を短くするとともに、ガード材21の端21aの近傍に電気絶縁性材料から成る絶縁部材を巻き付けたり、図2(c)に示されるように、隣接する2本のガード材21の端21a同士の間の欠線部21bを短くし、該欠線部21bに電気絶縁性材料から成る絶縁部材41を介在させる方法も提案されている。この場合、2本のレール11に対応するガード材21の端21a同士が互いに絶縁されるとともに、ガード材21が存在しない欠線部21bの長さが短くなるので、脱線防止機能を果たすことができる。
【0011】
しかし、ガード材21をレール11に取り付けるホルダ18は、まくらぎ15同士の間に配設されているが、絶縁継目板12に対応する箇所には配設されていないので、欠線部21bが短いと、ガード材21の端21aから直近のホルダ18までの距離、すなわち、該ホルダ18からのガード材21の張り出し量Aが大きくなってしまう。そのため、絶縁継目板12に対応する箇所においては、ガード材21の強度が低下し、脱線防止機能を十分に果たすことができない。
【0012】
ここでは、前記従来の技術の問題点を解決して、脱線防止ガードにおけるレールの絶縁継目板に対応する箇所であっても、十分な強度を発揮して鉄道車両の脱線防止機能を確実に果たすことができるとともに、十分な電気絶縁性を備える脱線防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのために、脱線防止装置においては、脱線防止ガードの欠線部に配設される絶縁ガード材と、該絶縁ガード材を支持する支持装置とを備え、前記絶縁ガード材は、電気絶縁性を有する材料から成り、レールの絶縁継目板に対向して配設され、前記支持装置はまくらぎに取り付けられる。
【0014】
他の脱線防止装置においては、さらに、前記絶縁ガード材は、一体成形品、又は、複数の成形品を結合した複合材である。
【0015】
更に他の脱線防止装置においては、さらに、前記一体成形品は、ガラス繊維補強樹脂から成る。
【0016】
更に他の脱線防止装置においては、さらに、前記複合材は、ガラス繊維補強樹脂から成る一体成形品に、ガラス繊維ウレタン樹脂圧密材から成る一体成形品を結合した部材である。
【0017】
更に他の脱線防止装置においては、さらに、前記絶縁ガード材は前記絶縁継目板より長く、該絶縁継目板の全範囲が前記絶縁ガード材に対向する。
【0018】
更に他の脱線防止装置においては、さらに、前記支持装置は一対であって、各支持装置は、互いに隣接する2つのまくらぎに、それぞれ、取り付けられる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、脱線防止ガードにおけるレールの絶縁継目板に対応する箇所であっても、十分な強度を発揮して鉄道車両の脱線防止機能を確実に果たすことができるとともに、十分な電気絶縁性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来の脱線防止ガードがレールに沿って設置されている軌道を示す写真である。
図2】従来のレールの絶縁継目部に対応して設置された脱線防止ガードの構造を示す図である。
図3】本実施の形態におけるレールの絶縁継目部に対応して設置された脱線防止装置を示す平面図である。
図4】本実施の形態におけるレールの絶縁継目部に対応して設置された脱線防止装置の断面図であり図3におけるB−B矢視断面図である。
図5】本実施の形態における脱線防止装置を示す写真である。
図6】本実施の形態における脱線防止装置の支持部材を示す三面図である。
図7】本実施の形態における脱線防止装置の傾斜台を示す三面図である。
図8】本実施の形態における脱線防止装置の支持部材の変形例を示す三面図である。
図9】本実施の形態における脱線防止装置の絶縁ガード材を示す三面図である。
図10】本実施の形態における脱線防止装置の絶縁ガード材の変形例を示す三面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図3は本実施の形態におけるレールの絶縁継目部に対応して設置された脱線防止装置を示す平面図、図4は本実施の形態におけるレールの絶縁継目部に対応して設置された脱線防止装置の断面図であり図3におけるB−B矢視断面図、図5は本実施の形態における脱線防止装置を示す写真、図6は本実施の形態における脱線防止装置の支持部材を示す三面図、図7は本実施の形態における脱線防止装置の傾斜台を示す三面図、図8は本実施の形態における脱線防止装置の支持部材の変形例を示す三面図、図9は本実施の形態における脱線防止装置の絶縁ガード材を示す三面図、図10は本実施の形態における脱線防止装置の絶縁ガード材の変形例を示す三面図である。なお、図6〜8において、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は背面図であり、図9及び10において、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【0023】
本実施の形態においては、「背景技術」及び「発明が解決しようとする課題」の項における説明を援用し、レール11、絶縁継目板12、まくらぎ15、ガード材21等における各部の構造、動作及び効果であって、「背景技術」及び「発明が解決しようとする課題」の項において説明したものと同じものについては、図1及び2に示される符号と同じ符号を付与することによって、適宜、説明を省略する。
【0024】
また、本実施の形態において、レール11、絶縁継目板12、まくらぎ15、ガード材21等の各部及びその他の部材の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、レール11、絶縁継目板12、まくらぎ15、ガード材21等の各部及びその他の部材が図に示される姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0025】
「発明が解決しようとする課題」の項で説明したように、レール11の絶縁継目板12に対応する箇所においては、ガード材21が脱線防止機能を十分に果たすことが困難である。そこで、本実施の形態においては、図3及び4に示されるような脱線防止装置20を配設することによって、レール11の絶縁継目板12に対応する箇所であっても、十分な強度を発揮して脱線防止機能を確実に果たすことができるとともに、十分な電気絶縁性を発揮するようになっている。
【0026】
図3に示されるように、本実施の形態において、ガード材21は、絶縁継目板12に対応する位置には存在しない。具体的には、ガード材21は、ホルダ18によってレール11に取り付けられ、レール11と対向し、かつ、レール11と平行に延在しているが、絶縁継目板12と対向する範囲には存在せず、欠線部21bが生じている。レール11及びガード材21の延在方向に関し、欠線部21bの存在する範囲は、絶縁継目板12と対向する範囲以上となっている。そして、前記欠線部21bには、脱線防止装置20が備える絶縁ガード材22が配設されている。該絶縁ガード材22がガード材21と同様の脱線防止機能を発揮するので、欠線部21bが広範囲に亘っても、鉄道車両の車輪の脱線は、効果的に防止される。
【0027】
なお、前記欠線部21bの長さ(図3における左右方向の寸法)は、図2(a)に示される例における欠線部21bの長さよりも長くなっている。したがって、図2(a)に示されるような既存のガード材21の端21aの近傍を切除することによって、図3に示されるような広範囲に亘る欠線部21bを容易に得ることができる。また、欠線部21bを広範囲に亘るものとした結果、ガード材21の端21aから直近のホルダ18までの距離であるガード材21の張り出し量が小さくなり、ガード材21の強度が向上する。
【0028】
前記絶縁ガード材22は、図9に示されるように概略直方体状の形状を有する細長い部材であって、電気絶縁性を有する材料の一体成形品であり、鉄道車両の車輪が接触しても破損することのない強度を有する。なお、前記絶縁ガード材22の長さ(図9における左右方向の寸法)は、絶縁継目板12より長いことが望ましく、例えば、85〔cm〕程度である。また、前記絶縁ガード材22は、電気絶縁性及び曲げ変形強度を兼ね備えるガラス長繊維で補強された樹脂から成ることが望ましく、例えば、欧州規格による名称がFRFU(ガラス長繊維補強発泡ウレタン樹脂)であって、積水化学工業株式会社から商品名「FFU」として市販されている材料から成る一体成形品であることが望ましい。
【0029】
前記絶縁ガード材22は、平坦な前面22aと、該前面22aと平行な背面22bとを有し、前記前面22aから背面22bまで貫通するボルト収容孔22cが複数(図に示される例においては、2つ)形成されている。なお、前記背面22bの長手方向両端近傍であって、ボルト収容孔22cが形成されている部分には、前面22a寄りに凹入した被保持面22dが形成されている。また、前記ボルト収容孔22cの前面22a寄りの部分には、絶縁ガード材固定ボルト35のボルトヘッドを収容する孔であってボルト収容孔22cより大径のボルトヘッド収容孔22eが形成されている。
【0030】
そして、前記絶縁ガード材22は、図3及び4に示されるように、支持装置31によって支持され、絶縁継目板12が跨がるように配設された互いに隣接する2つのまくらぎ15に取り付けられ、前面22aがレール11及び絶縁継目板12と対向するような姿勢で、ガード材21の欠線部21bに配設される。具体的には、絶縁ガード材22は、左右両側のガード材21とほぼ一直線となるように、かつ、前面22aが、左右両側のガード材21においてレール11と対向する面とほぼ面一となるように配設される。また、絶縁ガード材22の左右両端(長手方向両端)は、左右両側のガード材21の端21aに接近してはいるが、離れている。そして、絶縁継目板12は、その長手方向の全範囲が絶縁ガード材22と対向する。
【0031】
また、前記支持装置31は、絶縁ガード材22を支持する支持部材32と、該支持部材32とまくらぎ15との間に介在する傾斜台33と、前記絶縁ガード材22と支持部材32との間に介在するシム34と、前記絶縁ガード材22を、シム34を介して支持部材32に固定する絶縁ガード材固定ボルト35と、前記支持部材32を、傾斜台33を介してまくらぎ15に固定する支持装置固定ボルト36とを含んでいる。なお、コンクリート等から成る前記まくらぎ15には、前記支持装置固定ボルト36が螺入される雌ねじとして機能するインサート15aが打設されている。該インサート15aは、後施工によって既存のまくらぎ15に打設することができる。
【0032】
前記支持部材32は、鋼等の金属から成る部材であり、図6に示されるように、平板状の下板32aと、該下板32aの上面に垂直に立設された縦板32bと、該縦板32bの背面と下板32aの上面とを斜めに結ぶように取り付けられた一対の斜交い板32dと、前記縦板32bの正面に対して垂直に取り付けられ、前方に延在する支え板32eとを有する。そして、下板32a及び縦板32bには、支持装置固定ボルト36及び絶縁ガード材固定ボルト35が通過する貫通孔であるボルト通過孔32cが形成されている。
【0033】
また、前記傾斜台33は、鋼等の金属から成る部材であり、図7に示されるように、概略くさび状の板部材であって、平坦な上面33aと、該上面33aに対して傾斜する下面33bとを有し、前記上面33aから下面33bまで貫通する貫通孔であって、支持装置固定ボルト36が通過するボルト通過孔33cが形成されている。
【0034】
そして、絶縁継目板12が跨がるように配設された互いに隣接する2つのまくらぎ15の各々に、支持部材32が、傾斜台33を介して、支持装置固定ボルト36によって固定される。前記傾斜台33の下面33bの傾斜角度を調整することによって、図4に示されるように、まくらぎ15の表面が傾斜していても、支持部材32の下板32aを水平にすることができる。また、絶縁ガード材22は、各支持部材32の支え板32eの上に載置された状態で、シム34を介して、絶縁ガード材固定ボルト35によって各支持部材32の縦板32bに固定される。絶縁ガード材22が支え板32eによって下から支持されているので、絶縁ガード材固定ボルト35による固定作業を容易に行うことができる。
【0035】
なお、該絶縁ガード材固定ボルト35のボルトヘッドがボルトヘッド収容孔22eに収容されるので、前記絶縁ガード材固定ボルト35は、絶縁ガード材22の前面22aから凹入した状態となり、車輪の絶縁ガード材固定ボルト35への接触が確実に防止される。また、支え板32eの先端も絶縁ガード材22の前面22aから凹入した状態となっているので、車輪の支え板32eへの接触が確実に防止される。さらに、シム34の厚さ及び/又は枚数を調整することによって、絶縁ガード材22の前面22aの位置を調整して、該前面22aを、左右両側のガード材21においてレール11と対向する面とほぼ面一にすることができる。
【0036】
また、前記支持部材32は、必ずしも、図6に示される例に限定されるものでなく、図8に示されるようなものであってもよい。図8に示される例では、支え板32eが省略されているが、その他の点の構成は、図6に示される例と同様である。
【0037】
さらに、前記絶縁ガード材22は、必ずしも、図9に示される例に限定されるものでなく、図10に示されるようなものであってもよい。図10に示される例において、絶縁ガード材22は、複数の素材部、例えば、第1素材部22Aと第2素材部22Bとを組み合わせた複合材である。前記絶縁ガード材22の大部分は第1素材部22Aから成り、前面22a近傍の薄板状の部分が第2素材部22Bから成り、前記第1素材部22Aと第2素材部22Bとは接着によって一体的に結合されている。
【0038】
前記第1素材部22Aは、電気絶縁性及び曲げ変形強度を兼ね備えるガラス長繊維で補強された樹脂から成ることが望ましく、例えば、欧州規格による名称がFRFUであって、積水化学工業株式会社から商品名「FFU」として市販されている材料から成る一体成形品であることが望ましい。また、前記第2素材部22Bは、電気絶縁性及び強度を兼ね備え、さらに、車輪の接触による局所的なせん断変形に対する強度が第1素材部22Aよりも高いガラス短繊維補強樹脂から成る一体成形品であることが望ましく、例えば、ウレタン樹脂とガラス短繊維を高密度に圧密したガラス繊維ウレタン樹脂圧密材であって、積水化学工業株式会社から商品名「KFFU」として市販されている材料から成る一体成形品であることが望ましい。「KFFU」は「FFU」との接着性にも優れている。
【0039】
このように、図10に示される絶縁ガード材22では、レール11及び絶縁継目板12と対向する面である前面22aが、圧縮強度が第1素材部22Aよりも高い第2素材部22Bによって構成されているので、鉄道車両の車輪が接触しても破損することがない。
【0040】
このように、本実施の形態において、脱線防止装置20は、ガード材21の欠線部21bに配設される絶縁ガード材22と、絶縁ガード材22を支持する支持装置31とを備え、絶縁ガード材22は、電気絶縁性を有する材料から成り、レール11の絶縁継目板12に対向して配設され、支持装置31はまくらぎ15に取り付けられる。
【0041】
これにより、ガード材21におけるレール11の絶縁継目板12に対応する箇所であっても、十分な強度を発揮して鉄道車両の車輪の脱線を確実に防止することができ、かつ、十分な電気絶縁性を得ることができる。
【0042】
また、絶縁ガード材22は、一体成形品、又は、複数の成形品を結合した複合材である。したがって、簡素な構成でありながら、十分な強度を発揮して鉄道車両の車輪の脱線を確実に防止することができる。
【0043】
さらに、一体成形品は、ガラス繊維補強樹脂から成る。したがって、製造が容易で、かつ、十分な強度を得ることができる。
【0044】
さらに、複合材は、ガラス繊維補強樹脂から成る一体成形品に、ガラス繊維ウレタン樹脂圧密材から成る一体成形品を結合した部材である。したがって、強度が高く、鉄道車両の車輪が接触しても破損することがない。
【0045】
さらに、絶縁ガード材22は絶縁継目板12より長く、絶縁継目板12の全範囲が絶縁ガード材22に対向する。したがって、鉄道車両の車輪が絶縁ガード材22に接触しても、絶縁継目板12を介して接続されたレール11同士が導通してしまうことがない。
【0046】
さらに、支持装置31は一対であって、各支持装置31は、互いに隣接する2つのまくらぎ15に、それぞれ、取り付けられる。したがって、長い絶縁ガード材22であっても、確実に支持することができる。
【0047】
なお、本明細書の開示は、好適で例示的な実施の形態に関する特徴を述べたものである。ここに添付された特許請求の範囲内及びその趣旨内における種々の他の実施の形態、修正及び変形は、当業者であれば、本明細書の開示を総覧することにより、当然に考え付くことである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本開示は、脱線防止装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
11 レール
12 絶縁継目板
15 まくらぎ
20 脱線防止装置
21 ガード材
21b 欠線部
22 絶縁ガード材
31 支持装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10