特許第6976232号(P6976232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976232
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20211125BHJP
【FI】
   A47J27/00 109S
   A47J27/00 109P
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-153915(P2018-153915)
(22)【出願日】2018年8月20日
(65)【公開番号】特開2020-28317(P2020-28317A)
(43)【公開日】2020年2月27日
【審査請求日】2020年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大竹 彩斗
(72)【発明者】
【氏名】守岩 和秋
(72)【発明者】
【氏名】坂田 直也
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 法正
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−034442(JP,A)
【文献】 特開2006−075274(JP,A)
【文献】 特開2003−190009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00−27/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作を受け付ける操作手段と、
リセットがかかったらイニシャル処理を行うマイコンと、
前記マイコンにリセットがかかっても記憶内容を保持するように構成され、少なくとも前記マイコンがリセットした回数を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている情報を表示する表示手段と、
通電時にパルス波形を生成して前記マイコンに入力するタイムベース回路と、を備え、
前記マイコンは、
前記イニシャル処理を行う際にリセット回数をインクリメントして前記記憶手段に記憶し、
前記操作手段でリセット回数表示操作を受け付けたら、前記記憶手段に記憶されているリセット回数を前記表示手段に表示し、
前記パルス波形が入力されているか否かを前記記憶手段に記憶し、
前記イニシャル処理を行う際に、
リセット時に前記パルス波形が入力されていた場合は、通電時のリセットと判定し、通電時のリセット回数をインクリメントして前記記憶手段に記憶し、
リセット時に前記パルス波形が入力されていなかった場合は、停電時のリセットと判定し、停電時のリセット回数をインクリメントして前記記憶手段に記憶するものである
炊飯器。
【請求項2】
前記マイコンは、
前記操作手段でリセット回数表示操作を受け付けたら、前記記憶手段に記憶されている通電時のリセット回数と停電時のリセット回数とを分けて前記表示手段に表示するものである
請求項に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記パルス波形は、
商用電源の電源周波数に同期して生成される、あるいは電源周波数を整数倍または整数分の1倍して生成される
請求項またはに記載の炊飯器。
【請求項4】
外部の情報端末機器と通信可能な通信基板を備え、
前記マイコンは、
前記情報端末機器と前記通信基板との通信が成立したら、前記記憶手段に記録されているリセット回数を、前記通信基板を介して前記情報端末機器に送信し、前記情報端末機器に該リセット回数を表示させるものである
請求項1〜のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記マイコンは、
前記イニシャル処理を行う際にリセット回数をインクリメントした後、該リセット回数が基準値を超えたと判定した場合、
前記表示手段を用いて、処置を促す情報を表示させるものである
請求項1〜のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記マイコンは、
前記イニシャル処理を行う際にリセット回数をインクリメントした後、該リセット回数が基準値を超えたと判定した場合、
前記情報端末機器を用いて、処置を促す報知を行うものである
請求項に記載の炊飯器。
【請求項7】
報知手段を備え、
前記マイコンは、
前記イニシャル処理を行う際にリセット回数をインクリメントした後、該リセット回数が基準値を超えたと判定した場合、
前記報知手段を用いて、処置を促す報知を行うものである
請求項1〜のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項8】
前記マイコンは、
前記操作手段で消去操作を受け付けたら、前記記憶手段に記憶されているリセット回数を消去するものである
請求項1〜のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項9】
前記記憶手段は、
記憶内容の消去が可能な第1の記憶手段と、記憶内容の消去が不可能な第2の記憶手段とから構成されているものである
請求項1〜のいずれか一項に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックアップ機能を備えた炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バックアップ機能を備えた炊飯器がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の炊飯器は、制御基板に実装されたマイコンを備え、そのマイコンには、ユーザが過去炊飯した際に設定した炊飯条件などの履歴を記憶する記憶手段としてRAM(Random Access Memory)が設けられている。さらにこの炊飯器は、ユーザが電源コードと商用電源との接続を解除した際にも、RAMに記憶した情報を維持したり、現在時刻をカウントし続けたりするために、リチウム電池などを用いたバックアップ回路を備えている。この構成により、炊飯器が商用電源に常時接続されていなくても、ユーザが過去炊飯した際に設定した炊飯条件などの履歴を、メーカが確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4015932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、炊飯器を使用していて、「時計情報が狂っている」、「予約時間どおりに炊き上がらない」、「炊飯が(途中で止まって)できない」、「ご飯がおいしく炊けない」、などの不具合が生じた場合、市場から製造元などに対して不具合原因の調査依頼がある。しかしながら、特許文献1の炊飯器の構成では、上記のような不具合内容であった場合、それがマイコンがリセットして発生したものなのか、あるいは他の原因で発生したものなのか分からなかった。そのため、製造元などが不具合原因を調査するのが難しく、炊飯器の品質向上に役立てられないという課題があった。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、製造元などが不具合原因の調査を容易にすることができる炊飯器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る炊飯器は、操作を受け付ける操作手段と、リセットがかかったらイニシャル処理を行うマイコンと、前記マイコンにリセットがかかっても記憶内容を保持するように構成され、少なくとも前記マイコンがリセットした回数を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されている情報を表示する表示手段と、通電時にパルス波形を生成して前記マイコンに入力するタイムベース回路と、を備え、前記マイコンは、前記イニシャル処理を行う際にリセット回数をインクリメントして前記記憶手段に記憶し、前記操作手段でリセット回数表示操作を受け付けたら、前記記憶手段に記憶されているリセット回数を前記表示手段に表示し、前記パルス波形が入力されているか否かを前記記憶手段に記憶し、前記イニシャル処理を行う際に、リセット時に前記パルス波形が入力されていた場合は、通電時のリセットと判定し、通電時のリセット回数をインクリメントして前記記憶手段に記憶し、リセット時に前記パルス波形が入力されていなかった場合は、停電時のリセットと判定し、停電時のリセット回数をインクリメントして前記記憶手段に記憶するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る炊飯器によれば、イニシャル処理を行う際にリセット回数をインクリメントして記憶手段に記憶し、操作手段でリセット回数表示操作を受け付けたら、記憶手段に記憶されているリセット回数を表示手段に表示する。そうすることで、製造元などが不具合原因の調査を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の構成を示す縦断面の概略図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の機能構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る炊飯器を平面視した際の操作手段および表示手段を示した図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る炊飯器のマイコンがリセットした回数が表示手段に表示された図である。
図5】本発明の実施の形態2に係る炊飯器の機能構成を示すブロック図である。
図6】本発明の実施の形態2に係る炊飯器のマイコンがリセットした回数が表示手段に表示された図である。
図7】本発明の実施の形態3に係る炊飯器の機能構成を示すブロック図である。
図8】本発明の実施の形態3に係る炊飯器のマイコンがリセットした回数を情報端末機器に表示した図である。
図9】本発明の実施の形態1〜3に係る炊飯器のマイコンがリセットした回数および処置の表示を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器1の構成を示す縦断面の概略図である。図2は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器1の機能構成を示すブロック図である。図3は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器1を平面視した際の操作手段40および表示手段50を示した図である。
まず、図1図3を参照して、本実施の形態1に係る炊飯器1の全体構成およびマイコン動作について説明する。
【0012】
本実施の形態1に係る炊飯器1は、水および米を含む調理物を収容する内鍋10と、加熱手段20と、加熱基板21と、マイコン30と、操作手段40と、表示手段50と、マイコン30を実装する制御基板31とを有している。
【0013】
加熱手段20は、例えば加熱コイルからなり、水および米を含む調理物を収容する内鍋10を誘導加熱するものである。加熱基板21は、マイコン30からの制御指令信号をもとに加熱手段20の加熱制御を行うものである。加熱手段20が加熱コイルの場合、加熱基板21は、加熱手段20の通電制御を行うことで内鍋10を誘導加熱する。なお、加熱手段20はシーズヒータなどであってもよい。
【0014】
制御基板31に実装されたマイコン30は、あらかじめ記憶された各炊飯メニューに従って、予熱、炊飯、炊き上げ、および、むらしの各工程を経て炊飯処理を実行した後、続いて保温処理に移行するプログラムを組込んだROM(図示省略)が設けられている。また、このマイコン30には、ユーザが設定した炊飯条件などを記憶するRAM(図示省略)が設けられている。また、マイコン30には、マイコン30にリセットがかかっても記憶内容を保持する記憶手段32を有している。この記憶手段32は、例えば不揮発性メモリである。なお、本実施の形態1では、マイコン30が記憶手段32を有している構成としたが、それに限定されず、記憶手段32がマイコン30とは別体として設けられている構成でもよい。
【0015】
さらに、制御基板31内には、ユーザが炊飯器1の電源コード(図示省略)と商用電源との接続を解除した際に、マイコン30のRAMに記憶されている情報を維持するとともに、現在時刻をカウントし続けるためのリチウム電池などを用いたバックアップ回路33が設けられている。以下、電源コードと商用電源とを接続した状態を通電と表現し、電源コードと商用電源とを接続せず解除した状態を停電と表現する。なお、バックアップ回路33は、制御基板31内ではなく加熱基板21内に設けられていてもよい。
【0016】
操作手段40は、ユーザが適宜選択して押下することで米種および調理メニューなどの設定操作を受け付けるもので、例えばタクトスイッチまたは静電式スイッチである。操作手段40は、「白米」、「無洗米」、「玄米」などの米種を、「お米」キーで設定可能となっている。また、通常の調理よりも早い時間で炊き上げる「早炊き」を「早炊き選択」キーで設定可能となっている。また、通常の調理よりもじっくり時間をかけ、お米の甘みを熟成させる炊き方を「芳潤炊き」キーで設定可能となっている。その他、「おかゆ」、「炊込み」、「エコ炊飯」などの調理方法に関するメニューについては、「メニュー」キーで設定可能となっている。さらに、予約炊飯の設定は「予約」キーで、現在時刻および予約時間の設定は「時/分」キーで、炊飯の開始指示は「炊飯」キーで、保温加熱指示および各種設定の取消は「切/保温」キーでそれぞれ設定可能となっている。なお、本実施の形態1に係る炊飯器1は、これらのキー構成でないと成り立たないというわけではなく、上記以外のキー構成であってもよい。
【0017】
表示手段50は、例えば液晶パネルからなり、各種の表示情報を表示するものである。より具体的に、表示手段50は、ユーザによる選択操作および設定操作に応じて、米種および調理メニューなどの情報を切替えて表示するものである。また、表示手段50は、調理完了までに要する時間の目安となる目安時間および調理完了までの残り時間を表示するものである。
【0018】
次に、本実施の形態1に係る炊飯器1のマイコン30の動作について説明する。
前述のとおり、炊飯器1が停電状態である場合、バックアップ回路33からマイコン30に電源が供給されているため、時計情報の更新およびユーザが設定した炊飯条件などの履歴をRAMに記憶保持している状態である。
【0019】
一方、炊飯器1が通電状態である場合、マイコン30は、操作手段40の操作を待つ待機状態になる。そして、この待機状態で操作手段40のいずれかのキーが操作されると、マイコン30は、そのキーに応じた処理を実行する。
【0020】
また、炊飯器1が通電時であるか否かによらず、何らかの因子によってマイコン30にリセットがかかった場合、例えばユーザが設定した炊飯条件などの履歴が消失し、現在時刻の情報などが初期状態に戻る。
【0021】
ここで述べているリセットは、例えば炊飯器1が停電状態の場合にマイコン30を駆動するのに必要な電源がバックアップ回路33から供給できていない時、通電状態の場合にウォッチドッグタイマが作動した時、および、通電状態か停電状態かによらず外来ノイズなどにより誤動作が発生した時などに発生する。
【0022】
リセットが発生した際、マイコン30はイニシャル処理を行う。なお、イニシャル処理には、ポート処理の他、記憶手段32に対するデータの読み出しおよび書込みの処理も含まれる。マイコン30は、イニシャル処理の中でイニシャルカウンタの値、すなわちリセットが発生した回数をインクリメントし、そのイニシャルカウンタの値を記憶手段32に書込む。こうすることにより、マイコン30がリセットした回数をカウントできる。
【0023】
なお、前述のマイコン30を駆動するのに必要な電源の閾値は、イニシャル処理を適切に行える動作可能電圧よりも高い電圧として規定される。これにより、電源が当該閾値を下回った場合でも、マイコン30によりイニシャル処理が適切に行われる。
【0024】
次に、マイコン30がリセットした回数を表示手段50に表示する方法について説明する。なお、以下説明はあくまで一例であり、これにより本発明が限定されるものではない。
【0025】
まず、炊飯器1が通電状態のときに、マイコン30が操作手段40の操作を待つ待機状態のとき、ユーザが「お米」キーを5秒間以上長押しする。これにより、履歴を確認するモードへと移行する。次に、ユーザが「メニュー」キーを押すなどのリセット回数表示操作を行ったら、表示手段50には履歴の項目と、その内容が表示される。
【0026】
図4は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器1のマイコン30がリセットした回数が表示手段50に表示された図である。なお、図4において、表示手段50の時刻表示部の内、時桁で「01」、分桁で「03」と表示されている。これは、履歴項目の01番目に格納されている、マイコン30がリセットした回数について表示し、かつその回数が過去3回あったことを表している。なお、項目および内容を示すのに10進数である必要はなく、A〜Fまで拡大した16進数を用いてもよい。
【0027】
以上説明したように、本実施の形態1によれば、マイコン30がリセットしたかどうかを履歴に残すことで、「時計情報が狂っている」、「予約時間どおりに炊き上がらない」、「炊飯が(途中で止まって)できない」、「ご飯がおいしく炊けない」、などという、調査が難しそうな市場からの不具合報告だった場合でも、それがマイコン30がリセットして起きたものなのか、それとも他の原因で発生したものなのかの絞り込みに役立てることができ、調査の信頼性がより向上する。
【0028】
また、マイコン30がリセットした回数を記憶することで、例えば炊飯器1の生産日に対して時間が経過したことによるバックアップ電源の寿命でリセットが発生している可能性がある、または、時間があまり経過していないあるいは回数が少ないので外来ノイズなどによる誤動作でリセットが発生している可能性があるなど、原因の絞り込みを深く行うことができる。
【0029】
また、記憶手段32にリセット回数を書き込むことでマイコン30がリセットした回数を安定して保持することができる。
【0030】
また、記憶手段32に書き込まれているマイコン30がリセットした回数を、操作手段40を用いて表示手段50に表示することで、開発担当者のみならず、メーカの修理担当者も容易に正確なリセット回数の情報を得ることができる。そのため、関係者へスピーディーに情報を展開することができる。
【0031】
以上、本実施の形態1に係る炊飯器1は、操作を受け付ける操作手段40と、リセットがかかったらイニシャル処理を行うマイコン30と、マイコン30にリセットがかかっても記憶内容を保持するように構成されている。また、少なくともマイコン30がリセットした回数を記憶する記憶手段32と、記憶手段32に記憶されている情報を表示する表示手段50と、を備えている。また、マイコン30は、イニシャル処理を行う際にリセット回数をインクリメントして記憶手段32に記憶し、操作手段40でリセット回数表示操作を受け付けたら、記憶手段32に記憶されているリセット回数を表示手段50に表示するものである。
【0032】
本実施の形態1に係る炊飯器1によれば、イニシャル処理を行う際にリセット回数をインクリメントして記憶手段32に記憶し、操作手段40でリセット回数表示操作を受け付けたら、記憶手段32に記憶されているリセット回数を表示手段50に表示する。そうすることで、炊飯器1の不具合がマイコン30のリセットで発生したものなのか、あるいは他の原因で発生したものなのか分かるため、製造元などが不具合原因の調査を容易にすることができる。
【0033】
実施の形態2.
図5は、本発明の実施の形態2に係る炊飯器1の機能構成を示すブロック図である。図6は、本発明の実施の形態2に係る炊飯器1のマイコン30がリセットした回数が表示手段50に表示された図である。
【0034】
以下、本発明の実施の形態2について説明するが、本実施の形態2に係る炊飯器1は、実施の形態1における図1図3の例示と同様の構成を有するため、各構成部材については同一の符号を用いて説明は省略する。ただし、本実施の形態2においては、図5に示すように、炊飯器1にタイムベース回路60が追加されている。
【0035】
タイムベース回路60は、炊飯器1が通電時の場合、商用電源の電源周波数に同期するようにパルス波形を生成する、あるいは、電源周波数を整数倍または整数分の1倍してパルス波形を生成するものである。タイムベース回路60によって生成されたパルス波形は、マイコン30に入力され、炊飯器1の動作を指示する際の時間基準に使われる。例えば、商用電源が50Hzの場合、タイムベース回路60は20msあるいは10msごとなどの周期のパルス波形を生成し、商用電源が60Hzの場合、タイムベース回路60は16.7msあるいは8.3msごとなどの周期のパルス波形を生成する。
【0036】
次に、本実施の形態2に係る炊飯器1のマイコン30の動作について説明する。なお、炊飯器1が停電時の場合の動作は実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0037】
炊飯器1が通電時の場合、タイムベース回路60によって生成されたパルス波形がマイコン30に入力される。また、マイコン30は、パルス波形が連続で入力されているか否かを記憶手段32に記憶する。
【0038】
炊飯器1が何らかの因子によってマイコン30にリセットがかかり、マイコン30がイニシャル処理を行う際に、マイコン30は、マイコン30のリセットが、炊飯器1が通電時に発生したか否かを判定する。具体的には、マイコン30は、リセット時にパルス波形が入力されていた場合は、炊飯器1が通電時だった時のリセットと判定し、リセット時にパルス波形が入力されていなかった場合は、停電時だった時のリセットと判定する。そして、マイコン30は、通電時あるいは停電時に該当するリセット回数をインクリメントして記憶手段32に記憶する。
【0039】
例として、本実施の形態2では、実施の形態1と同様に操作手段40を用い、炊飯器1のマイコン30にリセットがかかった履歴を表示した時の表示手段50を図6に示す。ここでは、画素のON/OFFで表示を自在に作れるフルドット液晶を想定している。本実施の形態2では、表示手段50の中で、「通電時 5回」、「停電時 2回」と表示されるようになっている。なお、実施の形態1で説明したように、図4のようなセグメントのON/OFFをするセグメント型液晶の場合は、例えばはじめに、通電時にマイコン30がリセットした回数を表示する。その後、「メニュー」キーで次の項目へ送り、そこに停電時にマイコン30がリセットした回数を記憶してもよい。
【0040】
ここで、従来の炊飯器では、マイコンがリセットして不具合が発生したものだとしても、不具合の発生頻度が分からない。そのため、外来ノイズを受けたあるいはマイコンのウォッチドッグタイマが働いたなどで偶発的にリセットが発生したものなのか、またはバックアップ回路からの電源が低下したことなどで連続してリセットが発生したものなのかが分からなかった。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態2によれば、マイコン30のリセットが、炊飯器1が通電時に発生したか否かまで細分化して履歴に残すことで、原因の絞り込みをより深く行うことができる。なお、マイコン30のリセットが、炊飯器1が通電時に発生した場合、主に炊飯動作中に外来ノイズなどを受けてリセットが発生した、あるいはマイコン30が暴走してウォッチドッグタイマが働いたなどによってリセットが発生したと推定される。一方、マイコン30のリセットが、炊飯器1が停電時に発生した場合、主にバックアップ回路33の電源の寿命による低下でリセットが発生したと推定される。
【0042】
なお、炊飯器1が通電時か否かを判定できるものであれば、タイムベース回路60のみが本発明に限定されるものではない。例えば、マイコン30に供給される電源が、バックアップ電源がV2、通電時がV1(V1>V2)である場合、電源をモニタしておくことで、リセット時の電源がV1であったか否かで通電時だったかどうかを判定することができる。
【0043】
以上、本実施の形態2に係る炊飯器1は、通電時にパルス波形を生成してマイコン30に入力するタイムベース回路60を備え、マイコン30は、パルス波形が入力されているか否かを記憶手段32に記憶し、イニシャル処理を行う際に、リセット時にパルス波形が入力されていた場合は、通電時だった時のリセットと判定し、通電時のリセット回数をインクリメントして記憶手段32に記憶し、リセット時に前記パルス波形が入力されていなかった場合は、停電時だった時のリセットと判定し、停電時のリセット回数をインクリメントして記憶手段32に記憶するものである。
【0044】
本実施の形態2に係る炊飯器1によれば、マイコン30のリセットが通電時および停電時のどちらであったかを判定し、マイコン30がリセットした回数を、通電時と停電時とに分けて記憶手段32に記憶するため、原因の絞り込みをより深く行うことができる。
【0045】
実施の形態3.
図7は、本発明の実施の形態3に係る炊飯器1の機能構成を示すブロック図である。図8は、本発明の実施の形態3に係る炊飯器1のマイコン30がリセットした回数を情報端末機器80に表示した図である。
【0046】
以下、本発明の実施の形態3について説明するが、本実施の形態3に係る炊飯器1は、実施の形態1、2における図1図3図5の例示と同様の構成を有するため、各構成部材については同一の符号を用いて説明は省略する。ただし、本実施の形態3においては、図7に示すように、炊飯器1に通信基板70が追加されており、さらに外部の情報端末機器80を用いる。
【0047】
通信基板70は、外部の情報端末機器80との間で直接または通信ネットワークを介して情報の授受を行うものである。通信基板70は、無線LAN、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)など、任意の通信規格により情報端末機器80との通信を行う機能を有している。また、通信基板70は、炊飯器1内、例えば制御基板31近傍に設けられ、近距離無線通信を行う機能を有している。ここで、近距離無線通信とは、例えばNFC(Near Field Communication)であり、通信距離がおよそ10cm以下の短距離無線通信規格である。
【0048】
情報端末機器80は、例えば高機能携帯電話であるスマートフォンであり、炊飯器1で構成されているような、表示手段と、制御基板と、炊飯器1の通信基板70との通信を行う通信基板とを有している(いずれも図示は省略する)。
【0049】
なお、炊飯器1のマイコン30の動作、および、記憶手段32にマイコン30がリセットした回数を書込む方法に関しては、実施の形態1または2と同様なので説明は省略する。
【0050】
次に、マイコン30にリセットがかかった回数を情報端末機器80に表示する方法について、近距離無線通信を想定して説明する。なお、以下説明はあくまで一例であり、これにより本発明が限定されるものではない。
【0051】
まず、炊飯器1が通電中で、操作手段40により設定操作を受け付けている状態において、情報端末機器80を通信基板70が設けられている箇所へかざす。これにより通信が成立し、記憶手段32に書込まれたマイコン30がリセットした回数を、制御基板31から通信基板70を介して情報端末機器80に送信し、図8に示すように情報端末機器80にマイコン30がリセットした回数を表示させる。リセット回数は、あらかじめ情報端末機器80にダウンロードしておいた、メーカのアプリケーションの中で表示されるようにするが、通信後にアプリケーションを自動で起動しても、アプリケーション起動後に通信してもよい。どちらの場合でも、情報端末機器80にマイコン30がリセットした回数を表示することができる。
【0052】
以上、本実施の形態3に係る炊飯器1は、外部の情報端末機器80と通信可能な通信基板70を備えている。また、マイコン30は、情報端末機器80と通信基板70との通信が成立したら、記憶手段32に記録されているリセット回数を、通信基板70を介して情報端末機器80に送信し、情報端末機器80に該リセット回数を表示させるものである。
【0053】
本実施の形態3によれば、マイコン30がリセットした回数を情報端末機器80に送信し、情報端末機器80に表示させることで、メーカのみならず、ユーザも容易に炊飯器1の動作履歴を確認することができる。そのため、例えば修理等の処置を早く促すことができる。また、炊飯器1を操作せずに確認ができるため、ユーザが誤って炊飯器1の設定を変えてしまうおそれもない。
【0054】
また、ユーザの情報端末機器80が受信したマイコン30がリセットした回数を、メーカの公式なホームページなどへ転送できるシステムを構築すれば、メーカからより具体的な処置について情報を得ることができる。また、メーカも情報が集められることで、今後の品質改善をよりスピーディーに具体的に対応できる。
【0055】
なお、前述の実施の形態1〜3において、マイコン30は、操作手段40から所定の操作である消去操作が入力されると、記憶手段32に記憶してあるマイコン30がリセットした回数を消去する形態に具体化することも望ましい。この形態により、メーカが市場不良品の修理を完了した際にリセット回数を消去すれば、修理以降のリセット回数が間違いなく確認でき、修理の妥当性について確認することができ、品質改善に向けより有効な情報を得ることができる。
【0056】
また、前述の実施の形態1〜3において、記憶手段32が、記憶内容の消去が可能な第1の記憶手段と、記憶内容の消去が不可能な第2の記憶手段とに分けて構成された形態に具体化することも望ましい。具体的に、記憶手段32は、例えばEEPROMなどの不揮発性メモリであり、不揮発性メモリ内に2つのエリアを確保し、1つのエリアを、所定の操作で記憶内容が消去可能な第1の記憶手段とし、もう1つのエリアを、プロテクトをかけて記憶内容の消去が不可能な第2の記憶手段とする。そして、第1の記憶手段および第2の記憶手段のそれぞれにイニシャル処理を行った回数を記憶する。この形態により、例えば第1の記憶手段に記憶されている修理後のリセット回数および処置と、第2の記憶手段に記憶されている購入後に発生した累積リセット数との比較ができる。そのため、いつでも間違いなく炊飯器1のマイコン30のリセット発生数、および、修理の妥当性について確認することができ、品質改善に向け有効な情報を得ることができる。
【0057】
以上、本実施の形態1〜3によれば、記憶手段32に不揮発性メモリを用い、マイコン30がイニシャル処理を行った回数を記憶させる。そうすることで、市場からの不具合原因の調査が難しそうな場合でも、不具合がマイコン30のリセットで起きたものなのか、それとも他の原因で発生したものなのかの絞り込みに役立てることができ、品質改善に向け有効な情報を得ることができる。
【0058】
図9は、本発明の実施の形態1〜3に係る炊飯器1のマイコン30がリセットした回数および処置の表示を示す図である。
また、前述の実施の形態1〜3において、マイコン30がリセットした回数があらかじめ設定された基準値を超えてしまった場合に、図9に示すように表示手段50、情報端末機器80、報知手段(図示省略)などを用い、ユーザに処置等を文字または音などで促す形態に具体化することも望ましい。この形態により、メーカからユーザへ処置についてスピーディーに連絡を行うことができるため、ユーザの不満も軽減することができる。なお、報知手段は、例えばスピーカーまたは専用のモニタなどである。また、基準値は任意に変えることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 炊飯器、10 内鍋、20 加熱手段、21 加熱基板、30 マイコン、31 制御基板、32 記憶手段、33 バックアップ回路、40 操作手段、50 表示手段、60 タイムベース回路、70 通信基板、80 情報端末機器。
図1
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図9