(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、実施形態に係る情報処理装置および情報処理方法について詳細に説明する。ここでは、情報処理装置が複数の車載器から出力要求される情報を出力装置によって出力させるか否かを調停によって決定する出力処理装置である場合を例に挙げて説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。まず、
図1を参照して、実施形態に係る出力処理装置が行う出力処理方法について説明する。
図1は、実施形態に係る出力処理方法の説明図である。
【0015】
以下では、車両に設けられる複数の車載器が出力を要求する各情報をモードと称し、モードを出力する出力装置で出力中のモードを現モード、現モードの出力中に出力要求される他のモードを新モードと称する。
【0016】
実施形態に係る出力処理方法は、現モードの出力中に、新モードの出力要求が行われる場合に、出力処理装置が現モードの出力を継続させるか、現モードに替えて新モードを出力させるかを調停によって決定する方法である。
【0017】
本実施形態では、調停マトリクスにおける調停の勝敗結果に関する規則性を分析し、分析結果に基づいて、モードを出力させる優先度を示すパラメータを含む2以上のパラメータを各モードに割り当てる。
【0018】
そして、実施形態に係る出力処理方法は、現モードの出力中に、新モードの出力要求が行われる場合に、現モードの2以上のパラメータと、新モードの2以上のパラメータとに基づく調停を行う。これにより、実施形態に係る出力処理方法は、調停マトリクスを使用することなく、調停マトリクスどおりの調停の勝敗結果を導出することができる。
【0019】
したがって、実施形態に係る出力処理方法によれば、新たにモードが追加される場合、追加されるモードに、出力させる優先度を示す2以上のパラメータを割り当てることにより、出力処理装置の設計変更を行わずに、追加されるモードの調停を行うことができる。
【0020】
具体的には、調停マトリクスには、各モードに対してモードを出力させる優先度が一つずつ割り当てられ、現モードと新モードとの調停では、概ね優先度の高い方の勝ち、優先度が同一の場合には、新モードの勝ちという規則性がある。
【0021】
ただし、モードや状況によっては、現モードである場合には、上記の規則性どおりの勝敗結果とするが、新モードである場合には、現モードよりも優先度が低くても現モードに替えて、新モードを出力させる方がよいことがある。
【0022】
たとえば、スピーカからラジオの音声が流れているときに、ナビ装置から「この先右方向です」のような音声を割り込み出力させる一方、ナビ装置から何等かのメッセージが出力されているときにラジオへの切り換えが指示されたときに、ナビの音声を中断してラジオの音声を出力する等、後から割り込む側を優先させたい場合である。
【0023】
同様に、モードや状況によっては、新モードである場合には、上記の規則性どおりの勝敗結果とするが、現モードである場合には、新モードよりも優先度が低くても、現モードの出力を継続した方がよいことがある。
【0024】
たとえば、ディスプレイにナビ装置の地図画面が表示されているときに、通信端末装置から「メールの着信がありました」などのコーションを表示させる要求があった場合でも、コーション表示要求を却下して地図画面の表示を継続する等、先に出力装置を占拠している側を優先させたい場合である。
【0025】
このため、調停マトリクスには、一部、上記の規則性どおりの勝敗結果とならない部分がある。したがって、各モードに対してモードを出力させる優先度を一つずつ割り当てるだけでは、調停マトリクスどおりの勝敗結果を導出することができないことがある。
【0026】
例えば、仮に、現モードおよび新モードに関係なく、モードBに対して「2」、モードEに対して「5」という優先度が一つずつ割り当てられていた場合、モードEは、現モードであっても新モードであっても、モードBに勝つことができない。
【0027】
しかしながら、調停マトリクスで、現モードがモードEであり、新モードがモードBである場合に、優先度どおりにモードEが負け、現モードがモードBであり、新モードがモードEの場合に、優先度に反してモードEが勝つようになっていることがある。
【0028】
そこで、本実施形態に係る出力処理方法では、各モードに対して、出力させる優先度を示すパラメータを含む2以上のパラメータを割り当てる。例えば、
図1に示すように、モードEには、現モードでの優先度を示すパラメータとして「5」、新モードでの優先度を示すパラメータとして「1」を割り当てる。一方、モードBには、現モードでの優先度を示すパラメータとして「2」、新モードでの優先度を示すパラメータとして「2」を割り当てる。なお、ここでの優先度は、パラメータとなる数が小さい程、優先度が高いものとする。
【0029】
これにより、本実施形態に係る出力処理方法では、モードEの出力中に、モードBの出力要求が行われる場合、モードEの現モードでの優先度が「5」、モードBの新モードでの優先度が「2」であるため、新モードであるモードBの後勝ちとなる。その結果、出力途中のモードEに替えてモードBが出力される。
【0030】
また、実施形態に係る出力処理方法では、モードBの出力中に、モードEの出力要求が行われる場合、モードEの新モードでの優先度が「1」、モードBの現モードでの優先度が「2」であるため、新モードであるモードEの後勝ちとなる。その結果、出力途中のモードBに替えてモードEが出力される。
【0031】
このように、実施形態に係る出力処理方法は、各モードにそれぞれ割り当てられた優先度を含む2以上のパラメータを比較することによって、調停マトリクスを使用することなく、調停マトリクスどおりの調停の勝敗結果を導出することができる。
【0032】
したがって、実施形態に係る出力処理方法では、新たにモードが追加される場合、追加されるモードに、優先度を示すパラメータを含む2以上のパラメータを割り当てることにより、出力処理装置の設計変更なしに、追加されるモードの調停を行うことができる。なお、各モードに割り当てる現モードでの優先度および新モードでの優先度以外のパラメータについては、
図3を参照して後述する。
【0033】
次に、
図2を参照して、実施形態に係る出力処理装置について説明する。
図2は、実施形態に係る出力処理装置1の構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、出力処理装置1は、複数の車載器M1、M2〜Mn(nは、3以上の自然数)と、出力装置Nとに接続される。
【0034】
複数の車載器M1、M2〜Mnは、例えば、カーナビゲーション装置やオーディオ装置、テレビ装置、運転支援装置、車車間通信装置、車路間通信装置、交通情報受信装置などである。各車載器M1、M2〜Mnは、ユーザの操作、または、状況に応じてモードの出力要求を出力処理装置1へ出力する。
【0035】
オーディオ装置やテレビ装置は、例えば、ユーザに操作される場合に、操作に応じた画面や音声モードの出力要求等を出力処理装置1へ送信する。カーナビゲーション装置は、例えば、目的地が設定される場合に、目的地までの経路を示す画面のモードの出力要求を出力処理装置1へ送信し、経路の途中で分岐点に差し掛かった場合に、進行方向を案内する画面のモードの出力要求等を出力処理装置1へ送信する。
【0036】
また、車車間通信装置および車路間通信装置は、例えば、自車両の周辺を走行する他車両の状況を示す画面や音声モードの出力要求等を出力処理装置1へ送信する。また、交通情報受信装置は、自車両周辺の渋滞情報や事故の情報等を示す画面や音声のモードの出力要求等を出力処理装置1へ送信する。
【0037】
このとき、各車載器M1、M2〜Mnは、出力要求として、出力を要求するモードと、モードに割り当てられた出力の優先度を含む2以上のパラメータとを出力処理装置1へ送信する。ここで、
図3を参照し、車載器M1が出力要求として出力処理装置1へ送信する情報の一例について説明する。
【0038】
図3は、実施形態に係る車載器M1が出力要求として出力処理装置1へ送信する情報の一例を示す説明図である。
図3には、車載器M1が交通情報受信装置であり、渋滞情報を受信した場合に、出力処理装置1へ送信する情報の一例を示している。
【0039】
図3に示すように、車載器M1は、例えば、渋滞情報を受信すると、出力要求として渋滞情報のモードEと、モードEに割り当てられた現モードでの優先度「5」と、新モードでの優先度「1」と、待機ビット「1」とを含む情報を出力処理装置1へ送信する。なお、待機ビットについては、
図5を参照して後述する。
【0040】
このように、渋滞情報であるモードE等のような比較的早くユーザへ伝える必要があり、出力後に継続して出力させる必要性が低いモードに対しては、現モードでの優先度よりも新モードでの優先度が高くなるように、優先度のパラメータが割り当てられる。
【0041】
図2へ戻り、出力装置Nは、例えば、液晶ディスプレイ等の画像情報を出力する装置と、スピーカ等の音声情報を出力する装置とを含む。出力装置Nは、出力処理装置1から送信される画面や音声のモードを出力する。
【0042】
出力処理装置1は、通信部2と、制御部3と、記憶部4とを含む。通信部2は、車載器M1、M2〜Mnおよび出力装置Nとの間で情報の送受信を行う通信インターフェースである。通信部2は、車載器M1、M2〜Mnからモードの出力要求を受信して、制御部3へ出力する。
【0043】
記憶部4は、出力処理プログラム41、現モードでの優先度42、および保留モード情報43を記憶する。出力処理プログラム41は、制御部3が通信部2を介して車載器M1、M2〜Mnからモードの出力要求を受付けた場合に、出力装置Nによって出力させるモードを決定するために実行するプログラムである。
【0044】
現モードでの優先度42は、出力装置Nによって出力中のモードに割り当てられている現モードでの優先度である。保留モード情報43は、出力装置Nによる出力が保留中のモードである。なお、モードの出力保留については、
図5を参照して後述する。
【0045】
かかる記憶部4は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、HDD(Hard Disk Drive)、光ディスク等の記憶装置である。
【0046】
制御部3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。
【0047】
制御部3は、受付部31と調停部32とを備える。かかる受付部31および調停部32は、例えば、上記CPUが記憶部4に記憶されている出力処理プログラム41を読み出して実行することにより実現される。
【0048】
なお、受付部31および調停部32は、それぞれ一部または全部がASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。
【0049】
受付部31は、通信部2から入力される各モードの出力要求を受付け、調停部32へ出力する。調停部32は、出力装置Nがモードを出力中でない場合に、受付部31から出力要求が入力されると、出力要求に含まれる現モードでの優先度42を記憶部4に記憶させる。そして、調停部32は、出力要求に含まれるモードを通信部2を介して出力装置Nへ送信し、出力装置Nによってモードを出力させる。
【0050】
また、調停部32は、出力装置Nがモードを出力中である場合に、受付部31から他のモードの出力要求が入力されると、出力要求に含まれる新モードでの優先度と、記憶部4に記憶させた現モードでの優先度42とに基づく調停を行う。
【0051】
つまり、調停部32は、出力中のモードの現モードでの優先度42と、出力要求中のモードの新モードでの優先度とに基づいて、現モードの出力を継続させるか、現モードに替えて新モードを出力させるかの調停を行う。
【0052】
具体的には、調停部32は、出力中であるモードの現モードでの優先度42と、出力要求中であるモードの新モードでの優先度とを比較する。そして、調停部32は、出力中であるモードの現モードでの優先度42が、出力要求中であるモードの新モードでの優先度より高い場合、出力中のモードの勝ち(先勝ち)と決定し、出力途中のモードの出力を継続させる。
【0053】
また、調停部32は、出力中であるモードの現モードでの優先度42が、出力要求中であるモードの新モードでの優先度より低い場合、出力要求中のモードの勝ち(後勝ち)と決定し、出力中のモードに替えて出力要求中のモードを出力装置Nによって出力させる。
【0054】
このように、調停部32は、出力中のモードおよび出力要求中のモードにそれぞれ割り当てられた優先度を含む2以上のパラメータに基づき、競合する現モードおよび新モードの勝敗を調停によって決定する。
【0055】
これにより、出力処理装置1は、記憶部4に調停マトリクスが記憶されていなくても、調停マトリクスどおりの調停結果を導出することができるので、新たにモードが追加される場合に、モードを追加した調停マトリクスを記憶する等の設計変更が不要である。
【0056】
特に
図2において、複数の車載器が別々のユニットとして搭載されている場合、あるユニット(例えばM1)に新たなモードを追加したような場合や、新たなユニット(例えばMn+1。図示せず)を追加した場合でも、従来の方法のように、出力処理装置1に記憶されている調停マトリクスを変更(つまり出力処理装置1自体を設計変更)する必要がなく、機能の拡張・追加の自由度が大幅に向上する。
【0057】
この効果は、様々な製造者が製造した複数の車載器や、携帯通信端末や携帯オーディオプレイヤーなど、車載器以外の機器の出力要求を調停して出力する場合に特に顕著である。具体的には、調停を希望する車載器やアプリケーションソフトウェアの製造者は各自が製造する機器やアプリケーションソフトウェアが出力する各モードに、優先度を含む2以上のパラメータを割り当てておくだけでよく、出力処理装置1側では各モードに付随して出力された当該パラメータにしたがって各モードの調停を行えばよい。
【0058】
ここで、
図4を参照し、各モードに優先度を含む2以上のパラメータを割り当てることで、出力処理装置1が調停マトリクスどおりの調停結果を導出可能になる事例について説明する。
図4は、実施形態に係る調停マトリクスと、各モードに割り当てる2以上のパラメータとの対応関係を示す説明図である。
【0059】
図4には、1列目に現モードを列挙し、1行目に新モードを列挙している。また、
図4には、2列目に現モードでの優先度を列挙し、2行目に新モードでの優先度を列挙している。さらに、
図4には、3列目および3行目以降に、調停マトリクスに記載された各モード同士の調停の勝敗結果を記載している。
【0060】
図4に示すように、仮に、モードAに優先度「1」、モードBに優先度「2」、モードCに優先度「3」、モードDに優先度「4」、モードEに優先度「5」、モードFに優先度「6」というように、各モードに対して、優先度を一つずつ割り当てるとする。
【0061】
そうすると、調停部32は、
図4に太線枠で囲む部分以外の部分について、優先度が高い方の勝ち、優先度が同一の場合には後勝ちという規則性に基づく調停を行うことで、調停マトリクスどおりの勝敗結果を導出することができる。
【0062】
しかし、調停部32は、
図4に太線枠で囲む部分について、調停マトリクスどおりの勝敗結果を導出することができない。具体的には、調停部32は、モードEの優先度が「5」である場合、優先度が「5」よりも高いモードA、B、C、Dの何れかの出力中に、モードEの出力要求が行われると、勝敗結果が先勝ちとなり、調停マトリクスどおりの勝敗結果を導出することができない。
【0063】
そこで、本実施形態では、各モードに現モードでの優先度42と、新モードでの優先度を割り当てる。さらに、本実施形態では、調停マトリクスにおいて、優先度が高い方の勝ち、優先度が同一の場合には後勝ちという規則性に合わない勝敗結果となっているモードについては、割り当てる現モードでの優先度42と、新モードでの優先度とを異ならせる。
【0064】
図4に示す例では、モードEに対して、新モードでの優先度として、現モードでの優先度42の「5」とは異なる「1」を割り当てる。これにより、調停部32は、調停マトリクスどおりの勝敗結果を導出することができる。
【0065】
図2へ戻り、調停部32の動作説明を続ける。調停部32は、調停の結果、負けと決定した方のモードの出力を保留するか否かを、各モードに割り当てられた待機ビットに基づいて行い、保留すると判定したモードを保留モード情報43として記憶部4に記憶させる。
【0066】
ここで、
図5を参照し、各モードに割り当てられる待機ビットと、待機ビットに基づくモードの保留について説明する。
図5は、実施形態に係る調停マトリクスと、各モードに割り当てる待機ビットを含む2以上のパラメータとの対応関係を示す説明図である。
【0067】
なお、
図4および
図5は、異なる調停マトリクスに基づくものである。このため、
図4および
図5には、各モードに割り当てられる優先度、および調停の勝敗結果に異なる部分がある。
【0068】
図5には、1列目に現モードを列挙し、1行目に新モードを列挙し、2列目に現モードでの優先度を列挙し、2行目に新モードでの優先度を列挙している。また、
図5には、3列目および3行目に各ビットが調停の結果負けと決定された場合の待機ビットを列挙している。待機ビット「0」は、モードの出力を保留しないことを意味する。待機ビット「1」は、モードの出力を保留することを意味する。
【0069】
さらに、
図5には、4列目および4行目以降に、調停マトリクスに記載された各モード同士の調停の勝敗結果と合わせて、各調停の結果負けと判定されるモードの出力を保留するか否かの判定結果を記載している。判定結果の「キャンセル」は、各調停の結果負けと判定されるモードの出力を保留しないことを意味する。
【0070】
判定結果の「前待機」は、調停の結果負けと判定される現モードの出力を保留することを意味する。判定結果の「後待機」は、調停の結果負けと判定される新モードの出力を保留することを意味する。
【0071】
本実施形態では、自車両の走行安全性や快適性の観点から、比較的重要度の高いモードに対して、待機ビット「1」を割り当て、比較的重要度の低いモードに対して、待機ビット「0」を割り当てる。
【0072】
これにより、調停部32は、比較的重要度の高いモードを調停の結果負けと決定する場合、負けたモードを保留モード情報43として記憶部4に記憶させ、勝ったモードの出力が完了した場合に、保留モード情報43として記憶させたモードを出力させることができる。
【0073】
なお、各モードに対し、待機ビットに替えて、サブ優先度をさらに割り当てることによって、調停部32は、優先度が同じ競合するモードの調停結果の細分化と、調停の結果負けと決定した方のモードの出力を保留するか否かの決定とを行うことができる。
【0074】
ここで、
図6を参照し、各モードに割り当てられるサブ優先度と、サブ優先度に基づくモードの保留、および調停結果について説明する。
図6は、実施形態に係る調停マトリクスと、各モードに割り当てるサブ優先度を含む2以上のパラメータとの対応関係を示す説明図である。
【0075】
なお、
図4、
図5および
図6は、異なる調停マトリクスに基づくものである。このため、
図4、
図5、および
図6には、各モードに割り当てられる優先度、および調停の勝敗結果に異なる部分がある。
【0076】
図6には、1列目に現モードを列挙し、1行目に新モードを列挙し、2列目に現モードでの優先度を記載し、2行目に新モードでの優先度を記載している。また、
図6には、3列目に現モードでのサブ優先度を列挙し、3行目に新モードでのサブ優先度を列挙している。なお、ここでのサブ優先度は、パラメータとなる数が小さい程、サブ優先度が高いものとする。
【0077】
さらに、
図6には、4列目および4行目以降に、調停マトリクスに記載された各モード同士の調停の勝敗結果と合わせて、各調停の結果負けと判定されるモードの出力を保留するか否かの判定結果を記載している。
【0078】
なお、判定結果の「後待機」は、
図5に示す「後待機」と同一の意味である。また、判定結果の「前キャンセル」は、現モードが新モードに調停の結果負けと決定される場合に、現モードの出力を保留しないことを意味する。
【0079】
判定結果の「後キャンセル」は、新モードが現モードに調停の結果負けと判定される場合に、新モードの出力を保留しないことを意味する。本実施形態では、自車両の走行安全性や快適性の観点から、同一の優先度が割り当てられたモードのうち、重要度の高いモードほど高いサブ優先度を割り当てる。
【0080】
調停部32は、各モードにサブ優先度が割り当てられる場合の調停では、まず、現モードおよび新モードの優先度を比較する。そして、調停部32は、優先度が同一の場合、現モードおよび新モードのサブ優先度を比較し、サブ優先度が高い方のモードを勝ちと決定し、サブ優先度が同一の場合、新モードを勝ちと決定する。
【0081】
さらに、調停部32は、サブ優先度に基づく調停の結果、現モードの勝ち(先勝ち)と決定した場合、現モードおよび新モードのサブ優先度の差が2未満であれば、新モードの出力を保留する(後待機)。
【0082】
また、調停部32は、サブ優先度に基づく調停の結果、現モードの勝ち(先勝ち)と決定した場合、現モードおよび新モードのサブ優先度の差が2以上であれば、新モードの出力を保留しない(後キャンセル)。なお、調停部32は、サブ優先度に基づく調停の結果、新モードの勝ち(後勝ち)と決定した場合には、現モードの出力を保留しない(前キャンセル)。
【0083】
これにより、調停部32は、
図6に示す調停の勝敗結果を導出することができ、優先度が同じ競合するモードの調停結果の細分化と、調停の結果負けと決定した方のモードの出力を保留するか否かの決定とを行うことができる。
【0084】
次に、
図7を参照し、出力処理装置1の制御部3が実行する処理について説明する。
図7は、実施形態に係る出力処理装置1の制御部3が実行する処理を示すフローチャートである。制御部3は、自車両の電源がONとなっている期間に、
図7に示す処理を繰り返し実行する。
【0085】
具体的には、制御部3は、
図7に示すように、まず、モードの出力要求を受付けたか否かの判定を行う(ステップS101)。そして、制御部3は、出力要求を受付けていないと判定した場合(ステップS101,No)、処理を終了する。
【0086】
また、制御部3は、出力要求を受付けたと判定した場合(ステップS101,Yes)、現モードがあるか否かの判定を行う(ステップS102)。つまり、制御部3は、出力装置Nによって出力中のモードがあるか否かを判定する。
【0087】
そして、制御部3は、現モードがないと判定した場合(ステップS102,No)、処理をステップS109へ移す。また、制御部3は、現モードがあると判定した場合(ステップS102,Yes)、新モードのパラメータを取得する。具体的には、制御部3は、モードの出力途中に出力要求を受付けた他のモードの新モードでの優先度を取得する(ステップS103)。
【0088】
続いて、制御部3は、現モードおよび新モードのパラメータに基づき調停を行う(ステップS104)。具体的には、制御部3は、出力途中のモードの現モードでの優先度と、出力要求中の他のモードの新モードでの優先度とを比較する。
【0089】
そして、制御部3は、調停の結果、先勝ちか否か、つまり、出力途中のモードの現モードでの優先度が、出力要求中の他のモードの新モードでの優先度よりも高いか否かを判定する(ステップS105)。
【0090】
制御部3は、先勝ちでない、つまり、後勝ちと判定した場合(ステップS105,No)、処理をステップS109へ移す。ステップS109において、制御部3は、出力装置Nによって新モードを出力させる。
【0091】
具体的には、制御部3は、ステップS105でNoと判定した場合、出力途中のモードに替えて、出力要求中の他のモードを出力装置Nによって出力させる。なお、制御部3は、ステップS102でNoと判定した場合、出力中のモードがないため、出力要求中のモードを出力装置Nによって出力させる。
【0092】
続いて、制御部3は、新モードの出力によって出力が中断された現モードの待機フラグが「1」であるか否かを判定する(ステップS110)。そして、制御部3は、待機フラグが「1」であると判定した場合(ステップS110,Yes)、出力が中断された現モードの出力を新モードの出力が完了するまで保留して(ステップS111)、処理を終了する。なお、ここでは、図示を省略したが、制御部3は、新モードの出力完了後に、保留中の現モードを出力装置Nによって出力させる。
【0093】
また、制御部3は、現モードの待機フラグが「1」でないと判定した場合(ステップS110,No)、現モードの出力を保留せずに、処理を終了する。なお、制御部3は、ステップS109で新モードを出力させる場合に、出力途中の現モードがなければ、ステップS110で判定する現モードの待機フラグがないので、待機フラグが「1」でないと判定し(ステップS110,No)、処理を終了する。
【0094】
また、制御部3は、ステップS105で先勝ちと判定した場合(ステップS105,Yes)、出力途中の現モードの出力を継続させ(ステップS106)、新モードの待機フラグが「1」であるか否かを判定する(ステップS107)。そして、制御部3は、新モードの待機フラグが「1」でないと判定した場合(ステップS107,No)、処理を終了する。
【0095】
また、制御部3は、待機フラグが「1」であると判定した場合(ステップS107,Yes)、新モードの出力を現モードの出力が完了するまで保留して(ステップS108)、処理を終了する。なお、ここでは、図示を省略したが、制御部3は、現モードの出力完了後に、保留中の新モードを出力装置Nによって出力させる。
【0096】
なお、上記した実施形態では、調停部32が調停の結果、負けと決定した方のモードの出力を保留するか否かを、待機ビットまたはサブ優先度に基づいて決定する場合について説明したが、これは一例である。
【0097】
調停部32は、調停の結果、負けと決定した方のモードの出力を保留するか否かを、待機ビットまたはサブ優先度以外のパラメータに基づいて決定する構成であってもよい。例えば、調停部32は、各モードの出力開始から出力完了までの時間(以下、「出力時間」と記載する)が予め定められている場合、各モードの出力時間に基づいて、モードの出力を保留するか否かを決定する構成であってもよい。
【0098】
かかる構成とする場合、各モードに対して、予め出力時間の長さに応じたレベルを示すパラメータを割り当てる。例えば、出力時間が5秒未満のモードにレベル「1」、出力時間が5秒以上15秒未満のモードにレベル「2」、出力時間が15秒以上30秒未満のモードにレベル「3」、出力時間が30秒以上のモードにレベル「4」を割り当てる。
【0099】
なお、上記の例ではレベルを出力時間に応じて割り当てたが、メッセージの文字数に応じて割り当ててもよい。たとえば、文字数が10文字未満の場合はレベル「1」、文字数が10文字以上20文字未満の場合はレベル「2」、文字数が20文字以上40文字未満の場合はレベル「3」、文字数が40文字以上の場合はレベル「4」を割り当ててもよい。
【0100】
そして、調停部32は、優先度に基づく調停の結果、新モードの負けと決定した場合、新モードのレベルが現モードのレベルより所定値(例えば2)以上大きければ、新モードの出力を保留すると決定する。これにより、出力処理装置1は、例えば、出力時間が5秒(または文字数が10文字)の現モードに優先度で出力時間1分(または文字数が100文字)の新モードが負けて、出力されずに破棄されるといった事象の発生を防止することができる。
【0101】
一般に短いメッセージは、たとえば「メールを受信しました」とか「新しいニュースがあります」といったリアルタイム性を要求されるものが多い。一方、長いメッセージはたとえばメールやニュースの本文の読み上げなどの、リアルタイム性が要求されないものが多い。
【0102】
そこで短いメッセージの出力中に長いメッセージの出力要求があった場合は、当該長いメッセージを保留しておき、短いメッセージを出力し終わったあとに出力する。逆に長いメッセージを出力中に短いメッセージの出力要求があった場合は、長いメッセージを出力し終わった時点では当該短いメッセージもリアルタイム性が損なわれている可能性が高いので、短いメッセージは保留せず破棄する。
【0103】
なお、保留を決定する条件として、新モードのレベルと現モードの「レベルの差」が「所定値以上」としているため、たとえば、レベル3や4の長いメッセージの後に、続けてレベル3や4の長いメッセージが出力されるということが抑制される。
【0104】
上述したように、長いメッセージは一般にリアルタイム性が要求されないとはいえ、たとえばメールの読み上げの後に続けてニュースが読み上げられると、ユーザは「聴き疲れ」を起こしてしまい、有効に情報をうけとれないことがある。長いメッセージが連続しないようにすることで、ユーザにとって効果的な情報の提供が可能になる。
【0105】
上記の例では、新モードと現モードの「レベル差」に基づいて新モードの出力の保留の要否を決定したが、実施の形態はこれに限られない。たとえば現モードのレベルが2以下の場合は、新モードのレベルにかかわらず、新モードの出力を保留する。あるいは新モードのレベルが3以上の場合は現モードのレベルに係らず、新モードの出力を保留するとしてもよい。
【0106】
前者の場合、現モードが短いメッセージであれば、現モードのメッセージを出力し終わった後でも、新モードのメッセージのリアルタイム性はそれほど損なわれていないので、続けて新モードのメッセージを出力することができる。後者の場合、長いメッセージが連続する可能性はあるものの、すべての情報を確実に出力することができる。
【0107】
また、調停部32は、例えば、出力途中のモードの出力が完了するまでの残り時間または残り文字数に基づいて、モードの出力を保留するか否かを決定する構成であってもよい。かかる構成とする場合、出力処理装置1は、出力途中のモードの出力が完了するまでの残り時間を計時する計時部、または文字数を計数する計数部をさらに備える。
【0108】
そして、調停部32は、優先度に基づく調停の結果、新モードの負けと決定した場合、計時部によって計時される残り時間が所定時間(例えば、5秒)未満、または計数部によって計数される残り文字数が10文字以下であれば、新モードの出力を保留すると決定する。これにより、出力処理装置1は、例えば、あと1秒、またはあと1文字で出力が完了する現モードに、優先度で新モードが負けて、新モードが出力されずに破棄されるといった事象の発生を防止することができる。
【0109】
上述したように、実施形態に係る出力処理装置は、受付部と、調停部とを備える。受付部は、情報を出力させる優先度を示すパラメータを含む2以上のパラメータがそれぞれに割り当てられた情報の出力要求を受付ける。
【0110】
調停部は、第1の情報の出力途中に、受付部によって第2の情報の出力要求が受付けられる場合、第1の情報の出力を継続させるか、第1の情報に替えて第2の情報を出力させるかの調停をパラメータに基づいて行う。これにより、出力処理装置は、調停マトリクスを使用せずに調停を行うことができるので、新たに情報が追加される場合に、設計変更を行う必要がない。
【0111】
特に、様々な製造者が製造した複数の車載器や、携帯通信端末や携帯オーディオプレイヤーなど、車載器以外の機器の出力要求を調停して出力する場合に、機能追加・拡張に対する自由度が大幅に向上し、新機能に対応するための開発時間も大幅に削減できるという顕著な効果がある。
【0112】
また、2以上のパラメータには、情報が出力途中である場合の優先度を示す第1パラメータと、情報が出力要求中である場合の優先度を示す第2パラメータとが含まれる。そして、調停部は、第1の情報の第1パラメータと、第2の情報の第2パラメータとを比較して調停を行う。これにより、出力処理装置は、調停マトリクスを使用せずに、調停マトリクスどおりの調停結果を導出することができる。
【0113】
また、2以上のパラメータには、情報の出力の保留に関する第3パラメータが含まれる。そして、調停部は、第1の情報の出力を継続させる場合における第2の情報、および第1の情報に替えて第2の情報を出力させる場合における第1の情報について、出力を保留するか否かを第3パラメータに基づいて決定する。これにより、出力処理装置は、例えば、調停で負けた方の情報の重要度に応じて、情報の出力を保留したり、情報を破棄したりすることができる。
【0114】
また、第3パラメータは、情報の出力を保留するか否かを示すパラメータとすることができる。これにより、出力処理装置は、調停後に調停で負けた方の情報の第3パラメータを判別するだけで、調停後に調停で負けた方の情報の出力を保留するか否かを決定することができる。
【0115】
また、第3パラメータは、情報の出力時間の長さに応じたパラメータとすることができる。これにより、出力処理装置は、情報の出力を保留するか否かの決定を情報の出力時間の長さに応じて、より柔軟に行うことができる。
【0116】
実施形態に係る出力処理装置は、出力途中の情報の出力が完了するまでの残り時間を計時する計時部をさらに備えてもよい。かかる構成の場合、調停部は、第1の情報の出力を継続させる場合における第2の情報、および第1の情報に替えて第2の情報を出力させる場合における第1の情報について、出力を保留するか否かを計時部によって計時される残り時間に基づいて決定する。これにより、出力処理装置は、情報の出力を保留するか否かの決定を出力が完了するまでの残り時間に応じて、より柔軟に行うことができる。
【0117】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。