特許第6976258号(P6976258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6976258変圧器巻線のターン間故障を検出するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976258
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】変圧器巻線のターン間故障を検出するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H02H 7/045 20060101AFI20211125BHJP
   G01R 31/72 20200101ALI20211125BHJP
【FI】
   H02H7/045 E
   G01R31/72
【請求項の数】20
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-541136(P2018-541136)
(86)(22)【出願日】2017年2月9日
(65)【公表番号】特表2019-506831(P2019-506831A)
(43)【公表日】2019年3月7日
(86)【国際出願番号】US2017017140
(87)【国際公開番号】WO2017139445
(87)【国際公開日】20170817
【審査請求日】2020年2月4日
(31)【優先権主張番号】15/040,549
(32)【優先日】2016年2月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チーイン
(72)【発明者】
【氏名】ダス,サラシジ
(72)【発明者】
【氏名】シドゥ,タルロチャン
(72)【発明者】
【氏名】ダダシュ・ザデー,モハンマド・レザ
【審査官】 大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0007943(US,A1)
【文献】 特開平02−193524(JP,A)
【文献】 特開2012−129527(JP,A)
【文献】 特開昭57−211932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 7/045
G01R 31/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器(310)と、
前記変圧器(310)の一次巻線電流を監視することに基づいて第1の電流測定値を提供するように構成された第1の電流監視要素(125、305、405)と、
前記変圧器(310)の二次巻線電流を監視することに基づいて第2の電流測定値を提供するように構成された第2の電流監視要素(130、315、420)と、
前記第1の電流測定値および前記第2の電流測定値の各々を受信し、前記第1の電流測定値および前記第2の電流測定値を使用して、
定常状態の差動電流値を決定することと、
定常状態の電圧値を決定することと、
前記定常状態の差動電流値を前記定常状態の電圧値で割ることによって1つまたは複数の補償係数を決定することと、
前記定常状態の電圧値に前記1つまたは複数の補償係数を乗算することによって磁化電流振幅指標を決定することと、
前記定常状態の差動電流値と前記磁化電流振幅指標を組み込んだ修正値とを組み合わせることによって補償差動電流値を決定することと、
前記補償差動電流値を閾値と比較することと、
前記補償差動電流値が前記閾値を超える場合に前記変圧器(310)のターン間故障の発生を示すことと、
警報を送信すること、または保護リレーを動作させることの少なくとも1つを含む是正動作を実行することと
を含む手順を実行することによって、前記変圧器(310)の前記ターン間故障を検出するように構成された故障検出器(120)と
を備える、システム(100、300、400)。
【請求項2】
前記修正値が、前記磁化電流振幅指標に等しい、請求項1に記載のシステム(100、300、400)。
【請求項3】
前記定常状態の差動電流値と前記修正値とを組み合わせることが、前記修正値を前記定常状態の差動電流値から減算することを含む、請求項2に記載のシステム(100、300、400)。
【請求項4】
前記磁化電流振幅指標の振幅が、前記変圧器(310)の動作電圧の振幅に正比例する、請求項3に記載のシステム(100、300、400)。
【請求項5】
前記補償差動電流値が所定の期間前記閾値を超える場合に、前記変圧器(310)の前記ターン間故障の前記発生が示される、請求項4に記載のシステム(100、300、400)。
【請求項6】
前記所定の期間を示すユーザ入力を受け入れるように構成されたユーザインターフェースをさらに備える、請求項5に記載のシステム(100、300、400)。
【請求項7】
前記変圧器(310)が、多相変圧器(410)であり、前記一次巻線電流および前記二次巻線電流の各々が、前記多相変圧器(410)の複数の巻線のうちの第1の対の巻線に対応する、請求項1に記載のシステム(100、300、400)。
【請求項8】
前記故障検出器(120)が、前記多相変圧器(410)の前記複数の巻線のいずれか1つに存在する場合に前記ターン間故障を検出する、請求項7に記載のシステム(100、300、400)。
【請求項9】
前記変圧器(310)が、少なくとも二組の巻線を有する三相変圧器(410)であり、前記故障検出器(120)が、前記三相変圧器(410)の各相に前記手順を実行する、請求項1に記載のシステム(100、300、400)。
【請求項10】
多相変圧器(410)と、
前記多相変圧器(410)の複数の一次巻線電流の各々を監視することに基づいて一組の一次電流測定値、および前記多相変圧器(410)の複数の二次巻線電流の各々を監視することに基づいて一組の二次電流測定値を提供するように構成された電流監視システムと、
前記一組の一次電流測定値および前記一組の二次電流測定値を受信し、前記一組の一次電流測定値および前記一組の二次電流測定値を使用して、
前記多相変圧器(410)の各相の定常状態の差動電流値を決定することと、
前記多相変圧器(410)の各相の定常状態の圧値を決定することと、
前記多相変圧器(410)の各相の前記定常状態の差動電流値を前記定常状態の圧値で割ることによって1つまたは複数の補償係数を決定することと、
それぞれの定常状態の電圧値に1つまたは複数の補償係数を乗算することによって前記多相変圧器(410)の各相の磁化電流振幅指標を決定することと、
それぞれの定常状態の差動電流値と各々がそれぞれの磁化電流振幅指標を組み込んだそれぞれの修正値とを組み合わせることによって前記多相変圧器(410)の各相の補償差動電流値を決定することと、
前記多相変圧器(410)の各相の前記補償差動電流値を前記多相変圧器(410)の各相の閾値と比較することと、
前記補償差動電流値の少なくとも1つが前記閾値を超える場合に前記多相変圧器(410)のターン間故障の発生を示すことと、
警報を送信すること、または保護リレーを動作させることの少なくとも1つを含む是正動作を実行することと
を含む手順を実行することによって、前記多相変圧器(410)の前記ターン間故障を検出するように構成された故障検出器(120)と
を備える、システム(100、300、400)。
【請求項11】
前記それぞれの修正値が、前記それぞれの磁化電流振幅指標に等しい、請求項10に記載のシステム(100、300、400)。
【請求項12】
前記それぞれの定常状態の差動電流値と前記それぞれの修正値とを組み合わせることが、前記それぞれの修正値を前記それぞれの定常状態の差動電流値から減算することを含む、請求項11に記載のシステム(100、300、400)。
【請求項13】
前記それぞれの磁化電流振幅指標の振幅が、前記多相変圧器(410)のそれぞれの相動作電圧の振幅に正比例する、請求項12に記載のシステム(100、300、400)。
【請求項14】
前記補償差動電流値の前記少なくとも1つが所定の期間前記閾値を超える場合に、前記多相変圧器(410)の前記ターン間故障の前記発生が示される、請求項13に記載のシステム(100、300、400)。
【請求項15】
前記所定の期間を示すユーザ入力を受け入れるように構成されたユーザインターフェースをさらに備える、請求項14に記載のシステム(100、300、400)。
【請求項16】
前記多相変圧器(410)が、三相変圧器(410)である、請求項10に記載のシステム(100、300、400)。
【請求項17】
前記故障検出器(120)が、前記三相変圧器(410)の前記複数の巻線のいずれか1つに存在する場合に前記ターン間故障を検出する、請求項16に記載のシステム(100、300、400)。
【請求項18】
変圧器(310)の一次巻線電流を監視することに基づいて故障検出器(120)の第1の電流測定値を受信することと、
変圧器(310)の二次巻線電流を監視することに基づいて前記故障検出器(120)の第2の電流測定値を受信することと、
前記第1の電流測定値および前記第2の電流測定値を使用して定常状態の差動電流値および定常状態の電圧値を決定することと、
前記定常状態の差動電流値を前記定常状態の電圧値で割ることによって1つまたは複数の補償係数を決定することと、
前記定常状態の電圧値に前記1つまたは複数の補償係数を乗算することによって磁化電流振幅指標を決定することと、
前記定常状態の差動電流値と前記磁化電流振幅指標を組み込んだ修正値とを組み合わせることによって補償差動電流値を決定することと、
前記補償差動電流値を閾値と比較することと、
前記補償差動電流値が前記閾値を超える場合に前記変圧器(310)ターン間故障の発生を示すことと、
警報を送信すること、または保護リレーを動作させることの少なくとも1つを含む是正動作を実行することと
を含む、方法。
【請求項19】
前記修正値が、前記磁化電流振幅指標に等しい、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記定常状態の差動電流値と前記修正値とを組み合わせることが、前記修正値を前記定常状態の差動電流値から減算することを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、巻線故障検出器に関し、より具体的には、ターン間巻線故障検出器のシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
巻線コイルは、インダクタや変圧器などの幅広い製品に組み込まれている。より具体的には、送電システムでは、様々な構成要素、例えば、電力変圧器または分路リアクトルは、1つまたは複数の巻線コイルを含むことができる。使用時には、様々なタイプの故障がこれらの巻線に発生する可能性がある。これらの故障のいくつか、例えば、電力変圧器の出力端子間の短絡は、電力変圧器の一次巻線または二次巻線の数ターンの間の内部短絡のような他の故障より容易に検出可能である。数ターンの間の内部短絡は、必ずしも電力変圧器によって電力変圧器に結合される送電線に提供される電流の量に大きな変化をもたらすとは限らない。しかし、時宜を得た是正措置がとられなければ、このような故障は、最終的には、送電線を通る送電に深刻な影響を及ぼす可能性のある重大な故障に発展する場合がある。
【0003】
典型的には様々なタイプの巻線における著しい電流変化を検出するように構成される従来の故障検出装置は、そのような巻線における小さなターン間故障を効果的に検出することができないことがある。より具体的には、従来の故障検出装置は、ターン間故障を示す低振幅差動電流の変化を検出するのに十分な感度が不十分である可能性がある。その結果、他の技術を使用してターン間故障を検出することを対象としたいくつかの解決策が提案されている。例えば、1つの従来の解決策は、一般に、差動原理を組み込んだ逆相に基づくアルゴリズムを使用することによる電力変圧器の故障検出に関連し、別の従来の解決策は、一般に、方向比較原理を組み込んだ逆相に基づくアルゴリズムを使用することによる電力変圧器の故障検出に関連する。故障検出のために逆相差動電流を使用するこのような従来の解決策は、検出プロセスの感度および信頼性に影響を与える可能性のある様々なシステムの不均衡状態によって影響を受ける可能性がある。さらに、故障が検出された場合であっても、多相変圧器システムにおける特定の相に関する故障の正確な位置は識別できないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2474832A2号明細書
【発明の概要】
【0005】
本開示の実施形態は、一般に、巻線のターン間故障を検出するためのシステムおよび方法に関する。
【0006】
本開示の一実施形態による第1の例示的なシステムは、変圧器と、第1の電流監視要素と、第2の電流監視要素と、故障検出器とを含むことができる。第1の電流監視要素は、変圧器の一次巻線電流を監視することに基づいて第1の電流測定値を提供するように構成することができる。第2の電流監視要素は、変圧器の二次巻線電流を監視することに基づいて第2の電流測定値を提供するように構成することができる。故障検出器は、第1の電流測定値および第2の電流測定値の各々を受信し、第1の電流測定値および第2の電流測定値を使用して、定常状態の差動電流値を決定することと、定常状態の電圧値を決定することと、定常状態の差動電流値を定常状態の電圧値で割ることによって1つまたは複数の補償係数を決定することと、定常状態の電圧値に1つまたは複数の補償係数を乗算することによって磁化電流振幅指標を決定することと、定常状態の差動電流値と磁化電流振幅指標を組み込んだ修正値とを組み合わせることによって補償差動電流値を決定することと、補償差動電流値を閾値と比較することと、補償差動電流値が閾値を超える場合に変圧器のターン間故障の発生を示すことと、警報を送信すること、または保護リレーを動作させることの少なくとも1つを含む是正動作を実行することとを含むことができる手順を実行することによって、変圧器のターン間故障を検出するように構成することができる。
【0007】
本開示の一実施形態による第2の例示的なシステムは、多相変圧器と、電流監視システムと、故障検出器とを含むことができる。電流監視システムは、多相変圧器の複数の一次巻線電流の各々を監視することに基づいて一組の一次電流測定値、および多相変圧器の複数の二次巻線電流の各々を監視することに基づいて一組の二次電流測定値を提供するように構成することができる。故障検出器は、一組の一次電流測定値および一組の二次電流測定値を受信し、一組の一次電流測定値および一組の二次電流測定値を使用して、多相変圧器の各相の定常状態の差動電流値を決定することと、多相変圧器の各相の定常状態の差動電圧値を決定することと、多相変圧器の各相の定常状態の差動電流値を定常状態の差動電圧値で割ることによって1つまたは複数の補償係数を決定することと、それぞれの定常状態の電圧値に1つまたは複数の補償係数を乗算することによって多相変圧器の各相の磁化電流振幅指標を決定することと、それぞれの定常状態の差動電流値と各々がそれぞれの磁化電流振幅指標を組み込んだそれぞれの修正値とを組み合わせることによって多相変圧器の各相の補償差動電流値を決定することと、多相変圧器の各相の補償差動電流値を多相変圧器の各相の閾値と比較することと、補償差動電流値の少なくとも1つが閾値を超える場合に変圧器のターン間故障の発生を示すことと、警報を送信すること、または保護リレーを動作させることの少なくとも1つを含む是正動作を実行することとを含むことができる手順を実行することによって、多相変圧器のターン間故障を検出するように構成することができる。
【0008】
本開示の一実施形態による例示的な方法は、変圧器の一次巻線電流を監視することに基づいて故障検出器の第1の電流測定値を受信することと、変圧器の二次巻線電流を監視することに基づいて故障検出器の第2の電流測定値を受信することと、第1の電流測定値および第2の電流測定値を使用して定常状態の差動電流値および定常状態の電圧値を決定することと、定常状態の差動電流値を定常状態の電圧値で割ることによって1つまたは複数の補償係数を決定することと、定常状態の電圧値に1つまたは複数の補償係数を乗算することによって磁化電流振幅指標を決定することと、定常状態の差動電流値と磁化電流振幅指標を組み込んだ修正値とを組み合わせることによって補償差動電流値を決定することと、補償差動電流値を閾値と比較することと、補償差動電流値が閾値を超える場合に変圧器のターン間故障の発生を示すことと、警報を送信すること、または保護リレーを動作させることの少なくとも1つを含む是正動作を実行することとを含むことができる。
【0009】
本開示の他の実施形態および態様は、添付の図面と関連付けられた以下の説明から明らかになるであろう。
【0010】
一般的な用語で本開示を説明し、ここで添付の図面を参照するが、図面は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の例示的な実施形態による、三相分路リアクトルの1つまたは複数のターン間故障を検出するように構成されたターン間故障検出器を含むことができる例示的な三相電力線システムを示す図である。
図2】位相角情報に基づいて、図1に示す三相分路リアクトルの1つまたは複数のターン間故障を検出することに関連する例示的な位相図である。
図3】本開示の別の例示的な実施形態による、単相変圧器のターン間故障を検出するように構成されたターン間故障検出器システムを含むことができる例示的な送電システムを示す図である。
図4】本開示の別の例示的な実施形態による、三相変圧器のターン間故障を検出するように構成されたターン間故障検出器システムを含むことができる例示的な送電システムを示す図である。
図5図3に示す単相変圧器および図4に示す三相変圧器の各々に適用可能な例示的な等価回路図である。
図6】本開示の例示的な実施形態による、例示的なターン間故障検出器を示す図である。
図7A】本開示の例示的な実施形態による、三相分路リアクトルの1つまたは複数の巻線の故障を検出するためにターン間故障検出器を使用する例示的な方法のフローチャートである。
図7B】本開示の例示的な実施形態による、三相分路リアクトルの1つまたは複数の巻線の故障を検出するためにターン間故障検出器を使用する例示的な方法のフローチャートである。
図8A】本開示の別の例示的な実施形態による、変圧器の1つまたは複数の巻線のターン間故障を検出するためにターン間故障検出器を使用する例示的な方法のフローチャートである。
図8B】本開示の別の例示的な実施形態による、変圧器の1つまたは複数の巻線のターン間故障を検出するためにターン間故障検出器を使用する例示的な方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本開示の例示的な実施形態を示す添付の図面を参照しながら、本開示についてより完全に説明する。しかし、本開示は、多くの異なる形式で具現化することができ、本明細書に記載された例示的な実施形態に限定されるものと解釈してはならない。むしろ、本開示が適用可能な法的要件を満たすように、これらの実施形態が提供される。全体を通して、類似する符号は、類似する要素を指す。本明細書では、便宜上のためだけで特定の単語および用語を用いており、そのような単語および用語は、当業者によって様々な形態および等価物で一般的に理解される様々な目的および行為を指すものとして解釈すべきであることを理解されたい。例えば、本明細書で使用する「線」という単語は、一般に、電気導体、例えば、ワイヤまたは電力ケーブルを指すことを理解されたい。さらに、本明細書で使用する「例」という単語は、本質的に非排他的であり、非限定的であることが意図されている。より具体的には、本明細書で使用する「例示的」という単語は、いくつかの例のうちの1つを示し、記載している特定の例を不当に強調し、優先的に扱うものではないことを理解されたい。
【0013】
一般的な概要に関して、本明細書に記載のシステムおよび方法の特定の実施形態は、コイル巻線の1つまたは複数のターン間故障を検出するために使用することができる故障検出器を対象とする。知られているように、コイル巻線は、広範囲の製品に普遍的に組み込まれている。しかし、簡潔さのために、本開示による様々な実施形態および態様を説明するために、ここでは2つの製品、具体的には三相分路リアクトルおよび電力変圧器のみを使用する。
【0014】
最初に図1を参照すると、本開示の例示的な実施形態による、三相分路リアクトル155の1つまたは複数のターン間故障を検出するように構成されたターン間故障検出器120を含むことができる例示的な三相電力線システム100が示されている。三相電力線システム100は、当技術分野で知られているように三相構成で3つの電力線101、102、および103を介して電力を伝搬するために使用することができる。3つの電力線101、102、および103の各々は、当技術分野で知られている方法で展開される三相分路リアクトル155に結合することができる。三相分路リアクトル155は、ノード118を介してグランドに集合的に結合される3つの巻線を含むことができる。三相分路リアクトル155の3つの巻線の第1の巻線114は、第1の電流監視要素125および第1の絶縁スイッチ140を介して電力線101に結合される。第1の絶縁スイッチ140は、ターン間故障が第1の巻線114で検出されたときに第1の巻線114を電力線101から絶縁するために、制御線113を介してターン間故障検出器120によって制御することができる。三相分路リアクトル155の3つの巻線の第2の巻線116は、第2の電流監視要素130および第2の絶縁スイッチ145を介して電力線102に結合される。第2の絶縁スイッチ145は、ターン間故障が第2の巻線116で検出されたときに第2の巻線116を電力線102から絶縁するために、制御線113を介して(または図示しない個別の制御線を介して)ターン間故障検出器120によって制御することができる。三相分路リアクトル155の3つの巻線の第3の巻線117は、第3の電流監視要素135および第3の絶縁スイッチ150を介して電力線103に結合される。第3の絶縁スイッチ150は、ターン間故障が第3の巻線117で検出されたときに第3の巻線117を電力線103から絶縁するために、制御線113を介して(または図示しない個別の制御線を介して)ターン間故障検出器120によって制御することができる。3つの任意のスイッチ140、145、および150(各々は、例えば、リレーの形態で実施することができる)の2つ以上は、1つまたは複数のターン間故障が3つの巻線114、116、および117の1つまたは複数で検出されたときにターン間故障検出器120によって動作することができることを理解されたい。さらに、3つの絶縁スイッチを使用する代わりに、3つの巻線114、116、および117の1つまたは複数で1つまたは複数のターン間故障を検出したときに、他の保護要素および構成を使用して是正措置を講じることができる。
【0015】
第1の電流監視要素125は、電力線101を監視し、三相電力が三相電力線システム100を介して伝送されているときに電力線101から三相分路リアクトル155の第1の巻線114に経路指定される第1の相電流の縮小版である電流測定値を出力するために使用することができる。電流監視要素125の電流測定出力は、線109を介してターン間故障検出器120に結合される。第2の電流監視要素130は、同様に、電力線102を監視し、三相電力が三相電力線システム100を介して伝送されているときに電力線102から三相分路リアクトル155の第2の巻線116に経路指定される第2の相電流の縮小版である電流測定値を出力するために使用することができる。電流監視要素130の電流測定出力は、線111を介してターン間故障検出器120に結合される。第3の電流監視要素135もまた、同様に、電力線103を監視し、三相電力が三相電力線システム100を介して伝送されているときに電力線103から三相分路リアクトル155の第3の巻線117に経路指定される第3の相電流の縮小版である電流測定値を出力するために使用することができる。電流監視要素135の電流測定出力は、線112を介してターン間故障検出器120に結合される。
【0016】
三相分路リアクトル155をさらに参照すると、本開示による例示的な実施形態では、3つの巻線114、116、および117は、単一のエンクロージャ内に集合的に収容することができる。さらに、3つの巻線114、116、および117は、例えば、Δ構成またはY構成などの様々な構成で設けることができる。開示による別の例示的な実施形態では、3つの巻線114、116、および117の各々は、3つの個別のエンクロージャに収容することができる。開示によるさらに別の例示的な実施形態では、3つの巻線114、116、および117の2つ以上は、3つの巻線114、116、および117の残りが収容される第1のエンクロージャとは異なる第2のエンクロージャに収容することができる。開示によるさらに別の例示的な実施形態では、3つの巻線114、116、および117に加えて、1つまたは複数の追加の巻線を設けることができる。例えば、第4の巻線を、ノード118とグランドとの間に結合することができる。ターン間故障検出器120は、本開示によるこれらの様々な巻線の1つまたは複数の、1つまたは複数のターン間故障を検出するために使用され得る。
【0017】
ここで、三相電力線システム100の他の監視要素に移ると、第1の電圧監視要素105は、電力線101を監視し、三相電力が三相電力線システム100を介して伝送されるときに電力線101に存在する第1の相電圧の縮小版である電圧測定値を出力するために使用することができる。電圧監視要素105の電圧測定出力は、線106を介してターン間故障検出器120に結合される。第2の電圧監視要素110は、電力線102を監視し、三相電力が三相電力線システム100を介して伝送されるときに電力線102に存在する第2の相電圧の縮小版である電圧測定値を出力するために使用することができる。電圧監視要素110の電圧測定出力は、線107を介してターン間故障検出器120に結合される。第3の電圧監視要素115は、電力線103を監視し、三相電力が三相電力線システム100を介して伝送されるときに電力線103に存在する第3の相電圧の縮小版である電圧測定値を出力するために使用することができる。電圧監視要素115の電圧測定出力は、線108を介してターン間故障検出器120に結合される。
【0018】
ターン間故障検出器120は、以下に別の図を使用してより詳細に説明する様々な要素を含む。動作可能なように、ターン間故障検出器120は、差動保護アルゴリズムを使用して三相分路リアクトル155の1つまたは複数の巻線の1つまたは複数のターン間故障を検出する手順を実行するように構成される。1つの例示的な実施態様では、手順は、電圧監視要素105、110、および115によって提供される電圧測定値、ならびに電流監視要素125、130、および135によって提供される電流測定値を使用して電圧に基づくパラメータと電流に基づくパラメータとの間の差分値を計算することを含む。電圧に基づくパラメータは、正規化された負の電圧の不均衡を示し、電流に基づくパラメータは、正規化された負の電流の不均衡を示す。手順はさらに、差分値がゼロに等しくない場合には、三相分路リアクトル155の第1の巻線114、第2の巻線116、または第3の巻線117の少なくとも1つのターン間故障の発生を示すことをさらに含む。差分値は、定常状態の条件下ではほぼゼロであり、ターン間故障は、3つの巻線114、116、および117に存在しない。ゼロからの小さな偏差は、三相電力線システム100の通常の動作条件下に存在し得る小さなシステム不均衡に起因する可能性がある。いくつかの例示的な実施態様では、ターン間故障の発生は、差分値が閾値を超えるときにのみ示すことができる。
【0019】
重要なのは、従来のターン間故障システムとは対照的に、ターン間故障検出器120は、例えば、三相電力線システム100の3つの相のうちの対象物の様々な相の中の特定の故障した相を識別するために使用することができる。また、ターン間故障検出器120は、巻線のインピーダンス情報(例えば、3つの巻線114、116、および117のいずれかに関連するインピーダンス情報)を必要とせずに、かつ三相分路リアクトル155の中立巻線(図示せず)を通って流れる電流に関連する情報を必要とせずに様々なタイプの巻線のターン間故障を識別するために使用することができる。
【0020】
さらに、ターン間故障検出器120は、例えば、通常のシステム不平衡、非常システム周波数、非常システム電圧下で、負荷スイッチング中、高調波の存在下、および三相分路リアクトル155の外部の故障の存在下で、三相電力線システム100の様々な動作条件下で満足できるレベルの性能を提供することができる。しかし、1つの例示的な実施態様では、ターン間故障検出器120は、電流監視要素125、130、および135の1つまたは複数が電流飽和状態、電流突入状態、またはオフライン状態の1つまたは複数を経験するときに、差動保護アルゴリズムを使用することを回避するように構成される。
【0021】
三相分路リアクトル155の1つまたは複数の巻線の1つまたは複数のターン間故障を検出するためにターン間故障検出器120によって使用される差動保護アルゴリズムに関連する詳細は、本開示による数学的方程式に基づく以下の説明を参照してさらに理解することができる。
【0022】
=V/Z;I=V/Z;I=V/Z; 式(1)
Neg_Unbal_Normalized=(V/V)x100% 式(2)
Neg_Unbal_Normalized=(I/I)x100% 式(3)
Neg_Unbal_Normalized=(I+a+a I)/(I+a I+a)x100%=[V/Z+a(V/Z)+a(V/Z)]/[V/Z+a(V/Z)+a(V/Z)]x100% 式(4)
式中、V、V、およびVは、それぞれ電圧監視要素105、110、および115よってターン間故障検出器120に提供される相電圧測定値であり、I−、I、およびIは、電流監視要素125、130、および135によってターン間故障検出器120に提供される相電流測定値であり、Z−、Z、およびZは、三相分路リアクトル155の3つの巻線114、116、および117の位相インピーダンスであり、VおよびVは、それぞれ逆相および正相電圧であり、IおよびIは、それぞれ逆相および正相電流である。演算子「a」は、120度の角度の単位ベクトルとして定義され、「a」=1∠120度と表現することができる。
【0023】
三相分路リアクトル155の3つの巻線114、116、および117は、典型的には、互いに同一であり、対称的な配置を有する。したがって、三相電力線システム100が定常状態で動作しているとき、Z=Z=Z=Zとなる。したがって、式(1)〜(4)から、次のことが理解できる:
Neg_Unbal_Normalized=[V/Z+a(V/Z)+a(V/Z)]/[V/Z−+a(V/Z)+a(V/Z)]x100%=(V+a+a V)/(V+a V+a)x100%=(V/V)x100%=VNeg_Unbal_Normalized 式(5)
式中、VNeg_Unbal_NormalizedおよびINeg_Unbal_Normalizedは、パーセンテージ形式で表された単位のない複素数である。
【0024】
ここで、差分値は、次のように変数「Diff」の形式で定義することができる:
Diff=VNeg_Unbal_Normalized−INeg_Unbal_Normalized 式(6)
定常状態動作中はZ=Z=Z=Zであるため、
Diffsteady=0またはDiffsteady≒0 式(7)
ターン間故障が三相分路リアクトル155の3つの巻線114、116、および117の1つに存在する場合、ターン間故障を有する巻線のインピーダンスが変化し、それにより次のようになる:
Neg_Unbal_Normalized−INeg_Unbal_Normalized=Diff 式(8)
差分パラメータ(Diff)の絶対値は、ターン間故障検出器120によって使用され、故障状態を示すことができる。1つの例示的な実施態様では、故障状態は、差分パラメータ(Diff)の絶対値が閾値パーセンテージ値「c」を超えたときに示すことができる。閾値パーセンテージ値「c」は、ターン間故障検出器120のオペレータによって設定され得る設定可能な閾値とすることができる。
【0025】
故障状態=abs(Diff−Diffsteady)>c 式(9)
故障状態はまた、電圧V、V、およびVの各々に関連する相のベクトル表現を調べることによって示すことができる。1つの例示的な実施形態では、これは、∠(Diff−Diffsteady)という表現を使用して実行することができる。∠(Diff−Diffsteady)が180°±Dの範囲にあるときは、故障した「相A」を示すことができ、∠(Diff−Diffsteady)が−60°±Dの範囲にあるときは、故障した「相B」を示すことができ、∠(Diff−Diffsteady)が+60度±Dの範囲にあるときは、故障した「相C」を示すことができ、式中、「D」は、20°〜60°の範囲で設定することができる限界角度である。
【0026】
図2は、位相角情報に基づいて、三相分路リアクトル155の1つまたは複数のターン間故障を検出することに関連する例示的な位相図200を示す。「相A」に対応する180度±Dの範囲は、矢印205によって示され、「相B」に対応する−60度±Dの範囲は、矢印210によって示され、「相C」に対応する+60度±Dの範囲は、矢印215によって示される。ターン間故障検出器120は、例示的な位相図200に示す3つの範囲を用いることによって、3つの相A、B、およびCのうちの特定の相における故障を示すように構成することができる。
【0027】
図3は、本開示の別の例示的な実施形態による、単相変圧器310の一次および二次巻線のターン間故障を検出するように構成されたターン間故障検出器システム120を含むことができる例示的な送電システム300を示す。第1の電流監視要素305を使用して、線306を介して単相変圧器310の一次巻線に流れる一次電流「I」を監視することができる。第1の電流監視要素305は、線301を介してターン間故障検出器120に一次電流の縮小版を提供する。第2の電流監視要素315を使用して、単相変圧器310の二次巻線から線307に流出する二次電流「I」を監視することができる。第2の電流監視要素315は、線302を介してターン間故障検出器120に二次電流の縮小版を提供する。追加の監視要素(図示せず)を送電システム300の様々なノードの電圧を監視するために使用し、例えば、ターン間故障検出器120に単相変圧器310の一次巻線および二次巻線に関連する1つまたは複数の定常状態の電圧値または差動電圧値を提供することができる。
【0028】
この例示的な実施形態では、ターン間故障検出器120は、様々な監視要素を介して得られた電流値および電圧値を使用して様々な定常状態の差動電流および様々な定常状態の電圧値を決定することを含む手順を実行するように構成される。定常状態の差動電流の各々は、典型的には、単相変圧器310の端子に存在する少なくとも1つの定常状態の電圧に依存する定常状態の磁化電流成分を含む。
【0029】
本開示によれば、従来の実施態様とは対照的に、(1つまたは複数の修正値の形式で)1つまたは複数の補償係数を様々な定常状態の差動電流値と組み合わせて、定常状態の磁化電流成分を補償し、かつ定常状態の差動電流値の測定誤差を補償する。1つの例示的な実施態様では、磁化電流成分値に等しい修正値を使用することができる。修正値は、定常状態の差動電流値から減算して補償を行うことができる。
【0030】
次に、補償された定常状態の差動電流値は、例えば、補償された定常状態の差動電流値を基準閾値と比較することなどによってターン間故障を検出するために使用することができる。比較は、例えば、オペレータによって予め設定することができる予め設定可能な期間にわたって実行されてもよい。
【0031】
ターン間故障を検出すると、ターン間故障検出器120は、是正措置を実行することができる。例えば、ターン間故障検出器120は、単相変圧器310の一次巻線を電力線導体306から絶縁するために、(線303を介して)第1の制御信号を第1の遮断器320に提供することができる。別の例として、ターン間故障検出器120は、単相変圧器310の二次巻線を電力線導体307から絶縁するために、(線304を介して)第2の制御信号を第2の遮断器325に提供することができる。ターン間故障検出器120はまた、線412を介して故障指標信号を、例えば、監視ステーションに位置するコンピュータ、監視ステーションに位置する表示装置、またはターン間故障検出器120にまたはその近傍に位置する警報(光、ブザー、サイレンなど)などの故障監視ユニット(図示せず)に提供することができる。
【0032】
図4は、本開示の別の例示的な実施形態による、三相変圧器410のターン間故障を検出するように構成されたターン間故障検出器システム120を含むことができる送電システム400を示す。この他の例示的な実施形態では、三相変圧器410は、単に説明の便宜上のために、「Δ」配置で相互接続された3つの一次巻線、および「Y」配置で相互接続された3つの二次巻線を有して示されている。しかし、本開示に従って以下に提供される説明は、3つの三相変圧器410に関連する様々な他の構成および相互接続に等しく適用可能であることを理解されたい。
【0033】
第1の電流監視要素405は、線401を介して三相変圧器410の第1の一次巻線に流れる相「A」の一次電流「IAP」を監視するために使用することができる。第1の電流監視要素405は、線404を介して一次電流「IAP」の縮小版「Iap」をターン間故障検出器120に提供する。第2の電流監視要素420は、線402を介して三相変圧器410の第2の一次巻線に流れる相「B」の一次電流「IBP」を監視するために使用することができる。第2の電流監視要素420は、線406を介して一次電流「IBP」の縮小版「Ibp」をターン間故障検出器120に提供する。第3の電流監視要素435は、線403を介して三相変圧器410の第3の一次巻線に流れる相「C」の一次電流「ICP」を監視するために使用することができる。第3の電流監視要素435は、線407を介して一次電流「ICP」の縮小版「Icp」をターン間故障検出器120に提供する。
【0034】
第4の電流監視要素415は、三相変圧器410の第1の二次巻線によって線413に提供される相「A」の二次電流「IAS」を監視するために使用することができる。第4の電流監視要素415は、「IAS」の縮小版である第1の二次電流測定値「Ias」をターン間故障検出器120に提供する。第5の電流監視要素430は、三相変圧器410の第2の二次巻線によって線414に提供される相「B」の二次電流「IBS」を監視するために使用することができる。第5の電流監視要素430は、「IBS」の縮小版である第2の二次電流測定値「Ibs」をターン間故障検出器120に提供する。第6の電流監視要素445は、三相変圧器410の第3の二次巻線によって線416に提供される相「C」の二次電流「ICS」を監視するために使用することができる。第6の電流監視要素445は、「ICS」の縮小版である第3の二次電流測定値「Ics」をターン間故障検出器120に提供する。この例示的な実施形態では、3つの二次電流測定値(「Ias」、「Ibs」、および「Ics」)は、線408、線409、および線411を含む線構成を介してターン間故障検出器120に結合される。
【0035】
追加の監視要素(図示せず)を送電システム300の様々なノードの電圧を監視するために使用し、例えば、ターン間故障検出器120に三相変圧器410の3つの一次巻線および3つの二次巻線の1つまたは複数に関連する1つまたは複数の定常状態の電圧値または差動電圧値を提供することができる。
【0036】
ターン間故障検出器120は、上述の様々な監視要素を介して得られた電流値および電圧値を使用して様々な定常状態の差動電流および様々な定常状態の電圧値を決定することを含む手順を実行するように構成される。この手順は、図3に示す送電システム300を参照して上述した手順、さらに本開示による数学的方程式に基づく以下の説明を考慮して理解することができる。
【0037】
Idiff_A_compensated=Idiff_A−KA*VRA 式(10)
Idiff_B_compensated=Idiff_B−KA*VRB 式(11)
Idiff_C_compensated=Idiff_C−KA*VRC 式(12)
式中、VRA、VRB、およびVRCは、三相変圧器410の出力側の相A、相B、および相Cの電圧である。しかし、代替の実施態様では、三相変圧器410の入力側の相A、相B、および相Cの電圧を代わりに使用することができる。KA、KB、およびKCは、Idiff_A_compensated、Idiff_B_compensated、およびIdiff_C_compensatedの各々をゼロにするために、三相変圧器410の定常状態動作中に使用される係数である。Idiff_A_compensated、Idiff_B_compensated、およびIdiff_C_compensatedの各々の1つまたは複数は、ターン間故障がそれぞれの巻線の1つまたは複数に存在する場合、ゼロより大きい値に増加する。係数KA、KB、およびKCは、以下のように定義することができる:
KA=Idiff_A_steady/VRA steady 式(13)
KB=Idiff_A_steady/VRB steady 式(14)
KC=Idiff_A_steady/VRC steady 式(15)
Idiff_A_compensated、Idiff_B_compensated、およびIdiff_C_compensatedの各々の絶対値は、三相変圧器410のそれぞれの相の故障状態を示すためにターン間故障検出器120によって使用することができる。1つの例示的な実施態様では、Idiff_A_compensatedの絶対値が閾値パーセンテージ値「a」を超える(または等しい)場合、故障状態を相Aで示すことができ、Idiff_B_compensatedの絶対値が閾値パーセンテージ値「b」を超える(または等しい)場合、故障状態を相Bで示すことができ、Idiff_C_compensatedの絶対値が閾値パーセンテージ値「c」を超える(または等しい)場合、故障状態を相Cで示すことができる。つまり、abs(Idiff_A_compensated)≧「a」の場合、相Aのターン間故障状態を示すことができ、abs(Idiff_B_compensated)≧「b」の場合、相Bのターン間故障状態を示すことができ、abs(Idiff_C_compensated)≧「c」の場合、相Cのターン間故障状態を示すことができる。閾値パーセンテージ値「a」、「b」、および「c」は、例えば、ターン間故障検出器120のオペレータによって設定され得る設定可能な閾値とすることができる。
【0038】
三相変圧器410のターン間故障を検出すると、ターン間故障検出器120は、是正措置を実行することができる。例えば、ターン間故障検出器120は、一次巻線の1つまたは複数をそれぞれの1つまたは複数の入力線から絶縁するために、かつ/または二次巻線の1つまたは複数をそれぞれの1つまたは複数の出力線から絶縁するために、(線412を介して)制御信号を1つまたは複数の保護要素(図示せず)に提供することができる。いくつかの例示的な実施態様では、ターン間故障検出器120は、線412を介して故障指標信号を、例えば、監視ステーションに位置するコンピュータ、監視ステーションに位置する表示装置、またはターン間故障検出器120にまたはその近傍に位置する警報(光、ブザー、サイレンなど)などの故障監視ユニット(図示せず)に提供することができる。
【0039】
図5は、図3に示す単相変圧器310の例示的な等価回路図を示す。損失が単相変圧器310に発生しなかった場合、入力電流Iは、出力電流I(典型的には、180°の位相差を有する)に等しい。しかし、実用的には、電流損失が単相変圧器310に発生する。この電流損失は、等価回路図に示されている磁化電流Iに起因し得る。ターン間故障検出器120は、この磁化電流Iを本開示に従って考慮することによってターン間故障検出を実行する。
【0040】
図6は、本開示によるターン間故障検出器120に含むことができるいくつかの例示的な要素を示す。説明の目的のために、図6に示すターン間故障検出器120は、図4に示され、三相変圧器410に関して上述した例示的な実施形態を実施するために使用され得る様々な要素を含む。したがって、入力線および出力線は、図4に示されたものと同じ参照番号によって示される。しかし、例えば、図3に示す単相変圧器310の実施形態を実施する場合のような他の実施態様では、ターン間故障検出器120に含まれる様々な要素の数(例えば、入力インターフェースの数など)は、異なることがある。さらに、図示されていない通信ポートおよびユーザ入力/出力インターフェースなどのいくつかの要素は、本開示によるターン間故障検出器120に組み込むことができる。
【0041】
この例示的な実施態様では、ターン間故障検出器120は、それぞれ線404、406、407、408、409および411に結合される6つの入力電流インターフェース605、625、645、620、640および660を含むことができる。例えば電圧入力インターフェース(図示せず)のような他の入力インターフェースは、ターン間故障検出器120に様々な種類の電圧測定入力を提供するために使用することができる。ターン間故障検出器120はまた、制御信号、故障指標信号、または警報信号などの出力信号を送信するために、(線412に結合されて示される出力インターフェース665のような)1つまたは複数の出力インターフェースを含むことができる。
【0042】
ターン間故障検出器120はさらに、1つまたは複数のアナログ−デジタル変換器およびデジタル−アナログ変換器を含むことができる。例えば、アナログ−デジタル変換器615を使用して、アナログ形式の入力インターフェースの1つによって提供される電流測定値を、プロセッサ650によって処理され得るデジタル電流測定値に変換することができる。逆に、デジタル−アナログ変換器635を使用して、プロセッサ650によってデジタル−アナログ変換器635に提供され得る様々なタイプのデジタル情報を、出力インターフェース665を介してターン間故障検出器120から送信されるアナログ出力信号に変換することができる。リレー655のような1つまたは複数のリレーは、ターン間故障が三相変圧器410で検出された場合、(例えば、送電システム400に関連する特定の電流信号のような)様々なタイプの信号をスイッチングするために使用することができる。
【0043】
プロセッサ650などの1つまたは複数のプロセッサは、メモリ630と相互作用するように構成することができる。プロセッサ650は、適切なハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの組合せを使用して実施し、動作させることができる。ソフトウェアまたはファームウェアの実施態様は、説明した様々な機能を実行するように任意の適切なプログラミング言語で書かれたコンピュータ実行可能命令または機械実行可能命令を含むことができる。一実施形態では、機能ブロック言語に関連する命令は、メモリ630に記憶することができ、かつプロセッサ650によって実行することができる。
【0044】
メモリ630は、プロセッサ650によってロードおよび実行可能なプログラム命令を記憶するために、ならびにこれらのプログラムの実行中に生成されたデータを記憶するために使用することができる。ターン間故障検出器120の構成およびタイプに応じて、メモリ630は、揮発性(ランダムアクセスメモリ(RAM)など)および/または不揮発性(リードオンリメモリ(ROM)、フラッシュメモリなど)であってもよい。一部の実施形態では、メモリデバイスはまた、限定はしないが、磁気記憶装置、光ディスク、および/またはテープ記憶装置を含む付加的なリムーバブル記憶装置(図示せず)および/または非リムーバブル記憶装置(図示せず)を含むことができる。ディスクドライブおよびそれらの関連するコンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、および他のデータの不揮発性記憶装置を提供する。一部の実施態様では、メモリ630は、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、またはROMなどの複数の異なるタイプのメモリを含むことができる。
【0045】
メモリ630、リムーバブル記憶装置、および非リムーバブル記憶装置は、すべて非一時的コンピュータ可読記憶媒体の例である。このような非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュールまたは他のデータなどの情報を記憶するための任意の方法または技術で実現することができる。存在することができる非一時的コンピュータ記憶媒体のさらなるタイプは、限定はしないが、プログラマブルランダムアクセスメモリ(PRAM)、SRAM、DRAM、ROM、電気的に消去可能なプログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD−ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)または他の光学的記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置または他の磁気記憶装置、あるいは所望の情報を記憶するために使用することができ、かつプロセッサ650によってアクセスすることができる他の任意の媒体を含む。上記のいずれかの組合せもまた、非一時的コンピュータ可読媒体の範囲内に含まれるべきである。
【0046】
メモリ630の内容に移ると、メモリ630は、限定はしないが、オペレーティングシステム(OS)ならびに本明細書に開示される特徴および態様を実施するための1つまたは複数のアプリケーションプログラムまたはサービスを含むことができる。そのようなアプリケーションまたはサービスは、ターン間故障検出モジュール(図示せず)を含むことができる。一実施形態では、ターン間故障検出モジュールは、構成可能な制御ブロック言語で提供され、かつ不揮発性メモリに記憶されるソフトウェアによって実施することができる。プロセッサ650によって実行されると、ターン間故障検出モジュールは、本開示で説明する様々な機能および特徴を実施する。
【0047】
図7Aおよび図7Bは、本開示の例示的な実施形態による、三相分路リアクトルの1つまたは複数の巻線の故障を検出するためにターン間故障検出を使用する方法の例示的なフローチャートを示す。図1に示す三相電力線システム100は、ここでは、この例示的なフローチャートに示す様々な動作を説明するために便宜的にのみ使用される。
【0048】
ブロック705において、三相分路リアクトルの第1の巻線を通って流れる第1の相電流を監視することに基づく第1の相電流測定値が受信される。この動作は、第1の電流監視要素125から線109を介して第1の相電流測定値を受信するターン間故障検出器120に対応することができる。
【0049】
ブロック710において、三相分路リアクトルの第2の巻線を通って流れる第2の相電流を監視することに基づく第2の相電流測定値が受信される。この動作は、第2の電流監視要素130から線111を介して第2の相電流測定値を受信するターン間故障検出器120に対応することができる。
【0050】
ブロック715において、三相分路リアクトルの第3の巻線を通って流れる第3の相電流を監視することに基づく第3の相電流測定値が受信される。この動作は、第3の電流監視要素135から線112を介して第3の相電流測定値を受信するターン間故障検出器120に対応することができる。
【0051】
ブロック720において、三相電力線システムの第1の電力線導体に存在する第1の相電圧を監視することに基づく第1の相電圧測定値が受信される。この動作は、第1の電圧監視要素105から線106を介して第1の相電圧測定値を受信するターン間故障検出器120に対応することができる。
【0052】
ブロック725において、三相電力線システムの第2の電力線導体に存在する第2の相電圧を監視することに基づく第2の相電圧測定値が受信される。この動作は、第2の電圧監視要素110から線107を介して第2の相電圧測定値を受信するターン間故障検出器120に対応することができる。
【0053】
ブロック730において、三相電力線システムの第3の電力線導体に存在する第3の相電圧を監視することに基づく第3の相電圧測定値が受信される。この動作は、第3の電圧監視要素115から線108を介して第3の相電圧測定値を受信するターン間故障検出器120に対応することができる。
【0054】
ブロック735において、ターン間故障検出器は、第1の相電流測定値、第2の相電流測定値、第3の相電流測定値、第1の相電圧測定値、第2の相電圧測定値、および第3の相電圧測定値の各々を使用して、三相分路リアクトルの第1の巻線、第2の巻線、または第3の巻線の少なくとも1つのターン間故障を検出する。検出は、電圧に基づくパラメータと電流に基づくパラメータとの間の差分値を計算することによって実行され、電圧に基づくパラメータは、正規化された負の電圧の不均衡を示し、電流に基づくパラメータは、正規化された負の電流の不均衡を示す。
【0055】
ブロック740において、ターン間故障検出器は、差分値がゼロに等しくない場合に、三相分路リアクトルの第1の巻線、第2の巻線、または第3の巻線の少なくとも1つのターン間故障を示す。
【0056】
図8Aおよび図8Bは、本開示の例示的な実施形態による、変圧器の1つまたは複数の巻線のターン間故障を検出するためにターン間故障検出を使用する方法の例示的なフローチャートを示す。図3に示す送電システム300は、この例示的なフローチャートに示す様々な動作を説明するために便宜的にのみ使用される。しかし、方法は、図4に示す三相変圧器410のような多相変圧器の1つまたは複数の巻線のターン間故障を検出するために適切に適用することができることを理解されたい。
【0057】
ブロック805において、変圧器の一次巻線を監視することに基づく第1の電流測定値が受信される。この動作は、第1の電流監視要素305から線301を介して第1の電流測定値を受信するターン間故障検出器120に対応することができる。
【0058】
ブロック810において、変圧器の二次巻線を監視することに基づく第2の電流測定値が受信される。この動作は、第2の電流監視要素315から線302を介して第2の電流測定値を受信するターン間故障検出器120に対応することができる。ブロック815において、第1の電流測定値および第2の電流測定値の各々は、定常状態の差動電流値および定常状態の電圧値を決定するために使用される。ブロック820において、1つまたは複数の補償係数が、定常状態の差動電流値を定常状態の電圧値で割ることによって決定される。ブロック825において、磁化電流振幅指標が、定常状態の電圧値に補償係数を乗算することによって決定される。ブロック830において、補償差動電流値が、定常状態の差動電流値と磁化電流振幅指標を組み込んだ修正値とを組み合わせることによって決定される。ブロック835において、補償差動電流値が、閾値と比較される。ブロック840において、補償差動電流値が閾値を超える場合に、変圧器のターン間故障の発生が示される。ブロック845において、警報を送信すること、または保護リレーを動作させることの少なくとも1つを含む是正動作が実行される。例えば、ターン間故障検出器120は、第1の保護要素320および/または第2の保護要素325を作動させることができる。
【0059】
要約すると、ターン間故障を検出するための本明細書に開示されるシステムおよび方法は、添付の特許請求の範囲に具現化される変圧器のみに限定されず、1つまたは複数の巻線を組み込む様々な他の対象物にも等しく適用可能である。例えば、三相分路リアクトルに関連し得るいくつかの例示的なシステムおよび方法を、以下に示す。
【0060】
本開示の実施形態による第1の例示的なシステムは、第1の電力線導体と、第2の電力線導体と、第3の電力線導体と、三相分路リアクトルと、第1の電流監視要素と、第2の電流監視要素と、第3の電流監視要素と、第1の電圧監視要素と、第2の電圧監視要素と、第3の電圧監視要素と、故障検出器とを含むことができる三相電力線システムである。第1の電力線導体は、第1の相で電力を転送することができ、第2の電力線導体は、第2の相で電力を転送することができ、第3の電力線導体は、第3の相で電力を転送することができる。三相分路リアクトルは、三相電力線システムに結合することができる。第1の電流監視要素は、三相分路リアクトルの第1の巻線を通って流れる第1の相電流を監視することに基づいて第1の電流測定値を提供するように構成することができる。第2の電流監視要素は、三相分路リアクトルの第2の巻線を通って流れる第2の相電流を監視することに基づいて第2の電流測定値を提供するように構成することができる。第3の電流監視要素は、三相分路リアクトルの第3の巻線を通って流れる第3の相電流を監視することに基づいて第3の電流測定値を提供するように構成することができる。第1の電圧監視要素は、第1の電力線導体に存在する第1の相電圧を監視することに基づいて第1の電圧測定値を提供するように構成することができる。第2の電圧監視要素は、第2の電力線導体に存在する第2の相電圧を監視することに基づいて第2の電圧測定値を提供するように構成することができる。第3の電圧監視要素は、第3の電力線導体に存在する第3の相電圧を監視することに基づいて第3の電圧測定値を提供するように構成することができる。故障検出器は、第1の相電流測定値、第2の相電流測定値、第3の相電流測定値、第1の相電圧測定値、第2の相電圧測定値、および第3の相電圧測定値の各々を受信および使用して、手順を実行することによって三相分路リアクトルの第1の巻線、第2の巻線、または第3の巻線の少なくとも1つのターン間故障を検出するように構成することができる。手順は、電圧に基づくパラメータと電流に基づくパラメータとの間の差分値を計算することを含むことができ、電圧に基づくパラメータは、正規化された負の電圧の不均衡を示し、電流に基づくパラメータは、正規化された負の電流の不均衡を示し、さらに、差分値がゼロに等しくない場合に、三相分路リアクトルの第1の巻線、第2の巻線、または第3の巻線の少なくとも1つのターン間故障の発生を示すことを含むことができる。
【0061】
電圧に基づくパラメータは、逆相電圧値を正相電圧値と比較することによって少なくとも部分的に導出された第1の正規化された値とすることができ、電流に基づくパラメータは、逆相電流値を正相電流値と比較することによって少なくとも部分的に導出された第2の正規化された値とすることができる。逆相電圧値および正相電圧値の各々は、三相電力線システムに存在する相電圧のベクトル表現で表すことができる。第1の正規化された値は、第1のパーセンテージとして示すことができ、第2の正規化された値は、第2のパーセンテージとして示すことができる。第1の正規化された値は、ターン間故障が三相分路リアクトルに存在しない場合に、第2の正規化された値に等しくすることができる。故障検出器はさらに、ターン間故障の発生時に是正動作を実行するように構成することができ、是正措置は、保護リレーを動作させることを含む。是正措置は、設定可能な閾値を超える差分値に基づいて実行することができる。差分値は、絶対数値または角度値の少なくとも1つとして定義することができ、設定可能な閾値は、それに応じて、絶対数値または角度値の少なくとも1つに基づくことができる。差分値は、角度値として定義することができ、三相分路リアクトルの第1の巻線、第2の巻線、または第3の巻線の特定の巻線のターン間故障の識別は、角度値に基づいて決定することができる。第1の巻線は、角度値が約(180度±許容値)に実質的に等しいときに識別することができ、第2の巻線は、角度値が約(−60度±許容値)に実質的に等しいときに識別することができ、第3の巻線は、角度値が約(+60度±許容値)に実質的に等しいときに識別することができる。
【0062】
本開示の一実施形態による第2の例示的なシステムは、第1の入力インターフェースと、第2の入力インターフェースと、第3の入力インターフェースと、第4の入力インターフェースと、第5の入力インターフェースと、第6の入力インターフェースと、少なくとも1つのプロセッサとを含むことができるターン間故障検出器である。第1の入力インターフェースは、三相分路リアクトルの第1の巻線を通って流れる第1の相電流を監視することに基づく第1の相電流測定値を受信するように構成することができ、第1の巻線は、三相電力線システムの第1の電力線導体に結合される。第2の入力インターフェースは、三相分路リアクトルの第2の巻線を通って流れる第2の相電流を監視することに基づく第2の相電流測定値を受信するように構成することができ、第2の巻線は、三相電力線システムの第2の電力線導体に結合される。第3の入力インターフェースは、三相分路リアクトルの第3の巻線を通って流れる第3の相電流を監視することに基づく第3の相電流測定値を受信するように構成することができ、第3の巻線は、三相電力線システムの第3の電力線導体に結合される。第4の入力インターフェースは、三相電力線システムの第1の電力線導体に存在する第1の相電圧を監視することに基づく第1の相電圧測定値を受信するように構成することができる。第5の入力インターフェースは、三相電力線システムの第2の電力線導体に存在する第2の相電圧を監視することに基づく第2の相電圧測定値を受信するように構成することができる。第6の入力インターフェースは、三相電力線システムの第3の電力線導体に存在する第3の相電圧を監視することに基づく第3の相電圧測定値を受信するように構成することができる。プロセッサは、第1の相電流測定値、第2の相電流測定値、第3の相電流測定値、第1の相電圧測定値、第2の相電圧測定値、および第3の相電圧測定値の各々を使用して、電圧に基づくパラメータと電流に基づくパラメータとの間の差分値を計算することを含むことができる手順を実行することによって三相分路リアクトルの第1の巻線、第2の巻線、または第3の巻線の少なくとも1つのターン間故障を検出するように構成することができ、電圧に基づくパラメータは、正規化された負の電圧の不均衡を示し、電流に基づくパラメータは、正規化された負の電流の不均衡を示し、さらに、差分値がゼロに等しくない場合に、三相分路リアクトルの第1の巻線、第2の巻線、または第3の巻線の少なくとも1つのターン間故障を示すことを含むことができる。
【0063】
電圧に基づくパラメータは、逆相電圧値を正相電圧値と比較することによって少なくとも部分的に導出された第1の正規化された値とすることができ、電流に基づくパラメータは、逆相電流値を正相電流値と比較することによって少なくとも部分的に導出された第2の正規化された値とすることができる。逆相電圧値および正相電圧値の各々は、三相電力線システムに存在する相電圧のベクトル表現で表すことができ、第1の正規化された値は、第1のパーセンテージとして示すことができ、第2の正規化された値は、第2のパーセンテージとして示すことができる。第1の正規化された値は、ターン間故障が三相分路リアクトルに存在しない場合に、第2の正規化された値に等しくすることができる。差分値は、絶対数値または角度値の少なくとも1つとして定義することができ、三相分路リアクトルの第1の巻線、第2の巻線、または第3の巻線の特定の巻線のターン間故障の識別は、絶対数値または角度値の少なくとも1つに基づいて決定することができる。第1の巻線は、角度値が約(180度±許容値)に実質的に等しいときに識別することができ、第2の巻線は、角度値が約(−60度±許容値)に実質的に等しいときに識別することができ、第3の巻線は、角度値が約(+60度±許容値)に実質的に等しいときに識別することができる。
【0064】
本開示のさらに別の例示的な実施形態による例示的な方法は、三相電力線システムに結合された三相分路リアクトルのターン間故障を検出するための方法である。方法は、三相分路リアクトルの第1の巻線を通って流れる第1の相電流を監視することに基づく第1の相電流測定値を受信すること、三相分路リアクトルの第2の巻線を通って流れる第2の相電流を監視することに基づく第2の相電流測定値を受信すること、三相分路リアクトルの第3の巻線を通って流れる第3の相電流を監視することに基づく第3の相電流測定値を受信すること、三相電力線システムの第1の電力線導体に存在する第1の相電圧を監視することに基づく第1の相電圧測定値を受信すること、三相電力線システムの第2の電力線導体に存在する第2の相電圧を監視することに基づく第2の相電圧測定値を受信すること、三相電力線システムの第3の電力線導体に存在する第3の相電圧を監視することに基づく第3の相電圧測定値を受信すること、ならびに第1の相電流測定値、第2の相電流測定値、第3の相電流測定値、第1の相電圧測定値、第2の相電圧測定値、および第3の相電圧測定値の各々を使用して、電圧に基づくパラメータと電流に基づくパラメータとの間の差分値を計算することによって三相分路リアクトルの第1の巻線、第2の巻線、または第3の巻線の少なくとも1つのターン間故障を検出することなどの動作を含むことができ、電圧に基づくパラメータは、正規化された負の電圧の不均衡を示し、電流に基づくパラメータは、正規化された負の電流の不均衡を示す。差分値がゼロに等しくない場合に、三相分路リアクトルの第1の巻線、第2の巻線、または第3の巻線の少なくとも1つのターン間故障を示すことができる。
【0065】
電圧に基づくパラメータは、逆相電圧値を正相電圧値と比較することによって少なくとも部分的に導出された第1の正規化された値とすることができ、電流に基づくパラメータは、逆相電流値を正相電流値と比較することによって少なくとも部分的に導出された第2の正規化された値とすることができる。差分値は、絶対数値または角度値の少なくとも1つとして定義することができ、三相分路リアクトルの第1の巻線、第2の巻線、または第3の巻線の特定の巻線のターン間故障の識別は、絶対数値または角度値の少なくとも1つに基づいて決定することができる。第1の巻線は、角度値が約(180度±許容値)に実質的に等しいときに識別することができ、第2の巻線は、角度値が約(−60度±許容値)に実質的に等しいときに識別することができ、第3の巻線は、角度値が約(+60度±許容値)に実質的に等しいときに識別することができる。
【0066】
これらの説明に関して本明細書に述べた例示的な説明についての多くの変形例および他の実施形態は、上記の説明および関連する図面に提示した教示の利点を有することが考えられよう。このように、本開示は多くの形態で実施することができ、上述した例示的な実施形態に限定されるものではないことが理解されよう。したがって、本開示は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、変形例および他の実施形態が添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されていると理解すべきである。本明細書では特定の用語を用いているが、それらは限定のためではなく、包括的および説明的な意味で用いている。
【符号の説明】
【0067】
100 三相電力線システム
101 電力線
102 電力線
103 電力線
105 第1の電圧監視要素
106 線
107 線
108 線
109 線
110 第2の電圧監視要素
111 線
112 線
113 制御線
114 第1の巻線
115 第3の電圧監視要素
116 第2の巻線
117 第3の巻線
118 ノード
120 ターン間故障検出器、ターン間故障検出器システム
125 第1の電流監視要素
130 第2の電流監視要素
135 第3の電流監視要素
140 第1の絶縁スイッチ
145 第2の絶縁スイッチ
150 第3の絶縁スイッチ
155 三相分路リアクトル
200 位相図
300 送電システム
305 第1の電流監視要素
310 単層変圧器
315 第2の電流監視要素
320 第1の保護要素、第1の遮断器
325 第2の保護要素、第2の遮断器
400 送電システム
401 線
402 線
403 線
404 線
405 第1の電流監視要素
406 線
407 線
408 線
409 線
410 三相変圧器
411 線
412 線
413 線
414 線
415 第4の電流監視要素
416 線
420 第2の電流監視要素
430 第5の電流監視要素
435 第3の電流監視要素
445 第6の電流監視要素
500 等価回路図
605 入力電流インターフェース
610 フィルタ
615 アナログ−デジタル変換器
620 入力電流インターフェース
625 入力電流インターフェース
630 メモリ
635 デジタル−アナログ変換器
640 入力電流インターフェース
645 入力電流インターフェース
650 プロセッサ
655 リレー
660 入力電流インターフェース
665 出力インターフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B