特許第6976260号(P6976260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976260
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】変性ポリオレフィン系樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08F 255/00 20060101AFI20211125BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20211125BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20211125BHJP
   C09D 151/06 20060101ALI20211125BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20211125BHJP
   C09D 11/102 20140101ALI20211125BHJP
   C09D 11/033 20140101ALI20211125BHJP
【FI】
   C08F255/00
   C08L51/06
   C08K5/05
   C09D151/06
   C09D7/20
   C09D11/102
   C09D11/033
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-542598(P2018-542598)
(86)(22)【出願日】2017年9月26日
(86)【国際出願番号】JP2017034749
(87)【国際公開番号】WO2018062182
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2020年7月29日
(31)【優先権主張番号】特願2016-189931(P2016-189931)
(32)【優先日】2016年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神埜 勝
(72)【発明者】
【氏名】矢田 実
(72)【発明者】
【氏名】高本 直輔
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−192352(JP,A)
【文献】 特開平10−140073(JP,A)
【文献】 特開2000−239602(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/035708(WO,A1)
【文献】 特開2007−091997(JP,A)
【文献】 特開昭61−031473(JP,A)
【文献】 特開平04−296376(JP,A)
【文献】 特開平07−010940(JP,A)
【文献】 特表平07−503257(JP,A)
【文献】 特開2005−025153(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/18863(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/148576(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/031883(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 251/00 − 283/00
C08F 283/02 − 289/00
C08F 291/00 − 297/08
C09D 1/00 − 10/00
C09D 101/00 − 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール類を50重量%以上含む分散媒、及び、
下記樹脂(B)に対して下記重合体(A)がグラフトしている変性ポリオレフィン系樹脂を含む、樹脂分散体
重合体(A):α,β−不飽和カルボン酸に由来する構成単位及びα,β−不飽和カルボン酸の誘導体に由来する構成単位からなる群より選択される1種以上の構成単位を含み、かつ水酸基価が10mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である重合体
樹脂(B):ポリオレフィン樹脂又はその変性物
【請求項2】
塩素化樹脂である、請求項1に記載の樹脂分散体
【請求項3】
樹脂(B)が塩素化ポリオレフィン樹脂である、請求項2に記載の樹脂分散体
【請求項4】
前記重合体(A)のガラス転移温度(Tg)が、−10℃以上60℃以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂分散体
【請求項5】
前記重合体(A)が、α,β−不飽和カルボン酸エステルに由来する構成単位を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂分散体
【請求項6】
重合体(A)の含有率が、30重量%以上90重量%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂分散体
【請求項7】
重量平均分子量が、10,000以上200,000以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂分散体
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂分散体を含む、接着剤用組成物。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂分散体を含む、塗料用組成物。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂分散体を含む、グラビア印刷用インキ組成物。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂分散体を含む、フレキソ印刷用インキ組成物。
【請求項12】
請求項10に記載のグラビア印刷用インキ組成物が使用された、グラビア印刷物。
【請求項13】
請求項11に記載のフレキソ印刷用インキ組成物が使用された、フレキソ印刷物。
【請求項14】
請求項10に記載のグラビア印刷用インキ組成物を使用することを含む、グラビア印刷方法。
【請求項15】
請求項11に記載のフレキソ印刷用インキ組成物を使用することを含む、フレキソ印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ポリオレフィン系樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン等のポリオレフィン基材は、優れた性能を持ち安価であるため、食品包装材等の各種フィルムに広く用いられている。その際、表面保護や美観の改善を目的として、ポリオレフィン基材の表面に印刷や塗装が施される。
【0003】
しかしながら、ポリオレフィン基材は非極性基材であり、表面自由エネルギーが低く、更には結晶性を有するため、インキや塗料が付着しにくいという問題がある。そのため、印刷・塗装等の際に、塩素化ポリオレフィン樹脂をインキや塗料に添加することで、ポリオレフィン基材への付着性を向上させる手法が広く用いられている。
【0004】
近年、環境保全や安全性への関心の高まり及び法規制の強化などに伴い、これらインキや塗料等に用いられる溶剤が、従来使用されてきたトルエン等の芳香族溶剤から、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤へと転換されてきている。しかし、近年さらに脱ケトン溶剤の動きが加速しており、インキや塗料等に用いられる溶剤としてはエステル系溶剤又はアルコール系溶剤が主体となりつつある。中でもメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールに代表されるアルコール系溶剤は、安全性が高いうえに安価であることから、新興国を中心に使用が望まれている。
【0005】
一方、これらの溶剤に対する塩素化ポリオレフィン樹脂の溶解性を高めるために種々の方法が試みられている。
特許文献1には、酸化処理塩素化ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸系単量体をグラフト反応させて得られるグラフト共重合体が、トルエン等の芳香族系溶剤を使用しない印刷インキ用樹脂組成物の成分として用いられることが記載されている。また、特許文献2には、塩素化ポリオレフィン樹脂を酸化させたのち、ポリエステルポリオールと有機ジイソシアネートとを反応させ、更に有機ジアミンを反応させて得られる樹脂が、酢酸エチルにも均一に溶解することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−317137号公報
【特許文献2】特開平11−323236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
塩素化ポリオレフィン樹脂はエステル系溶剤やアルコール系溶剤といった高極性の溶剤に溶解しがたいという課題がある。
特許文献1、2の樹脂は、エステル系溶剤に、シクロヘキサンやメチルシクロヘキサンといった極性の低い脂環式炭化水素溶剤を併用して、ポリオレフィン基材に対する接着性を確保しているが、より極性の高いアルコール系溶剤への親和性が依然低く、改善の余地があった。
【0008】
そこで本発明は、極性基材のみならず、ポリオレフィン基材等の非極性基材への付着性に優れ、且つアルコール系溶剤中での安定性に優れる変性ポリオレフィン系樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究した結果、水酸基価が所定の範囲にある重合体が樹脂に対してグラフトしている変性ポリオレフィン系樹脂が、上記課題を解決できることを見出した。 すなわち、本発明は、以下を提供する。
【0010】
[1] 下記樹脂(B)に対して下記重合体(A)がグラフトしている変性ポリオレフィン系樹脂。
重合体(A):α,β−不飽和カルボン酸に由来する構成単位及びα,β−不飽和カルボン酸の誘導体に由来する構成単位からなる群より選択される1種以上の構成単位を含み、かつ水酸基価が10mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である重合体
樹脂(B):ポリオレフィン樹脂又はその変性物
[2] 塩素化樹脂である、[1]に記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
[3] 樹脂(B)が塩素化ポリオレフィン樹脂である、[2]に記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
[4] 前記重合体(A)のガラス転移温度(Tg)が、−10℃以上60℃以下である、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
[5] 前記重合体(A)が、α,β−不飽和カルボン酸エステルに由来する構成単位を含む、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
[6] 重合体(A)の含有率が、30重量%以上90重量%以下である、[1]〜[5]のいずれか1つに記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
[7] 重量平均分子量が、10,000以上200,000以下である、[1]〜[6]のいずれか1つに記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
[8] アルコール類を50重量%以上含む分散媒及び[1]〜[7]のいずれか1つに記載の変性ポリオレフィン系樹脂を含む、樹脂分散体。
[9] [1]〜[7]のいずれか1つに記載の変性ポリオレフィン系樹脂又は[8]に記載の樹脂分散体を含む、接着剤用組成物。
[10] [1]〜[7]のいずれか1つに記載の変性ポリオレフィン系樹脂又は[8]に記載の樹脂分散体を含む、塗料用組成物。
[11] [1]〜[7]のいずれか1つに記載の変性ポリオレフィン系樹脂又は[8]に記載の樹脂分散体を含む、グラビア印刷用インキ組成物。
[12] [1]〜[7]のいずれか1つに記載の変性ポリオレフィン系樹脂又は[8]に記載の樹脂分散体を含む、フレキソ印刷用インキ組成物。
[13] [11]に記載のグラビア印刷用インキ組成物が使用された、グラビア印刷物。
[14] [12]に記載のフレキソ印刷用インキ組成物が使用された、フレキソ印刷物。
[15] [11]に記載のグラビア印刷用インキ組成物を使用することを含む、グラビア印刷方法。
[16] [12]に記載のフレキソ印刷用インキ組成物を使用することを含む、フレキソ印刷方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリオレフィン基材等の非極性基材への付着性に優れ、且つアルコール系溶剤中での安定性に優れる変性ポリオレフィン系樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.本発明の変性ポリオレフィン系樹脂
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、下記樹脂(B)に対して下記重合体(A)がグラフトしている変性樹脂である。なお、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂を、変性ポリオレフィン系樹脂(C)又は単に樹脂(C)ということがある。
【0013】
1−1.重合体(A)
重合体(A)は、α,β−不飽和カルボン酸に由来する構成単位及びα,β−不飽和カルボン酸の誘導体に由来する構成単位からなる群より選択される1種以上の構成単位を含み、かつ水酸基価が10mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である。
【0014】
重合体(A)の水酸基価は、10mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である。水酸基価が10mgKOH/g未満だと、得られる変性ポリオレフィン系樹脂の極性が低下し、アルコール類への分散性が損なわれ、ポリオレフィン系基材等への付着性が低下する。水酸基価が200mgKOH/gを超えると、得られる変性ポリオレフィン系樹脂は極性が過度に上昇し、他樹脂との相溶性が悪くなり、ポリオレフィン系基材等への付着性が低下するほか、粘度が上昇して操作性が悪くなる。
【0015】
重合体(A)の水酸基価X(mgKOH/g)は、重合体(A)がn種(nは1以上の整数)の単量体単位U〜Uにより構成され、単量体単位U〜Uのホモポリマーにおける水酸基価をそれぞれX〜X(mgKOH/g)とし、重合体(A)における単量体単位U〜Uの重量割合をそれぞれY〜Yとする(ただし、単量体単位U〜Uの重量割合の合計を1とする。)と、下記の式から算出される。
=X+X+・・・X
実施例における重合体(A)の水酸基価も、上記方法により算出された値である。
【0016】
単量体単位のホモポリマーにおける水酸基価は、単量体単位における水酸基価の値と同値である。水酸基価は、単量体単位1g中の水酸基量(mol)を、水酸化カリウムの重量に換算することで求められる。例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチルの場合、単量体単位中の水酸基価は以下の式で計算できる。
1(アクリル酸2−ヒドロキシエチルの重量:g)/116(アクリル酸2−ヒドロキシエチルの分子量:g/mol)×(56.11×10)(1mol当たりのKOHの重量:mg/mol)=484(mgKOH/g)
【0017】
重合体(A)における単量体単位U〜Uの重量割合は、通常、単量体単位U〜Uの仕込み重量割合に一致する。ただし、単量体単位U〜Uの仕込み重量割合の合計を1とする。
【0018】
重合体(A)は、α,β−不飽和カルボン酸に由来する構成単位及びα,β−不飽和カルボン酸の誘導体に由来する構成単位からなる群より選択される1種以上の構成単位を含む。
【0019】
α,β−不飽和カルボン酸としては、特に限定されず、例えば、水酸基を有さないα,β−不飽和カルボン酸(例、(メタ)アクリル酸)、水酸基を有するα,β−不飽和カルボン酸が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸である。
【0020】
α,β−不飽和カルボン酸の誘導体としては、特に限定されず、水酸基を有さないα,β−不飽和カルボン酸の誘導体であっても、水酸基を有するα,β−不飽和カルボン酸の誘導体であってもよい。α,β−不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば、水酸基を有していてもよいα,β−不飽和カルボン酸エステル、水酸基を有していてもよいα,β−不飽和ニトリル(例、(メタ)アクリロニトリル)、水酸基を有していてもよいα,β−不飽和アミド(例、(メタ)アクリルアミド)が挙げられ、具体的には、例えば、上記例示されたα,β−不飽和カルボン酸から誘導された、エステル、ニトリル、アミドが挙げられる。
【0021】
水酸基を有さないα,β−不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば、水酸基を有さないα,β−不飽和カルボン酸エステルが挙げられ、さらに具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸エステル:メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0022】
水酸基を有するα,β−不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば、水酸基を有するα,β−不飽和カルボン酸エステルが挙げられ、さらに具体的には、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート:2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート;
ヒドロキシシクロアルキル(メタ)アクリレート:(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート;
2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート;
2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレートグリセロールモノ(メタ)アクリレート;
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート;
ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート;
ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0023】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「メタクリル酸又はアクリル酸」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、「メタクリレート又はアクリレート」を意味し、「(メタ)アクリルアミド」とは、「メタクリルアミド又はアクリルアミド」を意味し、「(メタ)アクリロニトリル」とは、「メタクリロニトリル又はアクリロニトリル」を意味する。また、重合体(A)における水酸基には、カルボキシル基中の水酸基は含まないものとする。
【0024】
重合体(A)は、水酸基を有するα,β−不飽和カルボン酸に由来する構成単位及び水酸基を有するα,β−不飽和カルボン酸の誘導体に由来する構成単位からなる群(以下、群(OH)ともいう。)より選択される1種以上を含むことが好ましく、重合体(A)は、水酸基を有さないα,β−不飽和カルボン酸に由来する構成単位及び水酸基を有さないα,β−不飽和カルボン酸誘導体に由来する構成単位からなる群(以下、群(H)ともいう。)より選択される1種以上をさらに含むことがより好ましい。以下、ある単量体「A」に由来する構成単位を、単に「A」単位ともいう。
【0025】
群(OH)より選択される1種以上としては、水酸基を有するα,β−不飽和カルボン酸エステル単位が好ましく、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート単位がより好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート単位及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート単位より選択される1種以上がさらに好ましい。
【0026】
水酸基を有さないα,β−不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0027】
水酸基を有さないα,β‐不飽和カルボン酸の誘導体としては、水酸基を有さないα,β-不飽和カルボン酸エステルが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリルアミドから選択される1種以上がより好ましく、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、及び2−メトキシエチル(メタ)アクリレートより選択される1種以上がさらに好ましい。
【0028】
群(H)より選択される1種以上としては、
(メタ)アクリル酸単位、メチル(メタ)アクリレート単位、エチル(メタ)アクリレート単位、n−プロピル(メタ)アクリレート単位、イソプロピル(メタ)アクリレート単位、n−ブチル(メタ)アクリレート単位、イソブチル(メタ)アクリレート単位、tert−ブチル(メタ)アクリレート単位、ドデシル(メタ)アクリレート単位、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート単位、ステアリル(メタ)アクリレート単位、イソボルニル(メタ)アクリレート単位、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート単位、シクロヘキシル(メタ)アクリレート単位、ベンジル(メタ)アクリレート単位、フェノキシエチル(メタ)アクリレート単位、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート単位、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート単位、アダマンチル(メタ)アクリレート単位、及び(メタ)アクリルアミド単位より選択される1種以上が好ましく、
(メタ)アクリル酸単位、メチル(メタ)アクリレート単位、エチル(メタ)アクリレート単位、n−ブチル(メタ)アクリレート単位、tert−ブチル(メタ)アクリレート単位、ステアリル(メタ)アクリレート単位、イソボルニル(メタ)アクリレート単位、シクロヘキシル(メタ)アクリレート単位、アダマンチル(メタ)アクリレート単位、及び2−メトキシエチル(メタ)アクリレート単位より選択される1種以上がより好ましい。
【0029】
重合体(A)は、群(OH)に含まれる構成単位を、1種単独で含んでいてもよく、2種以上の組み合わせで含んでいてもよい。
【0030】
また、重合体(A)は、群(H)に含まれる構成単位を、1種単独で含んでいてもよく、2種以上の組み合わせで含んでいてもよい。
【0031】
重合体(A)における、群(OH)に含まれる構成単位の含有量は、重合体(A)に含まれる全構造単位の重量に対して、好ましくは3重量%以上であり、より好ましくは10重量%以上である。上限は、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下である。
【0032】
重合体(A)における、群(H)に含まれる構成単位の含有量は、重合体(A)に含まれる全構成単位の重量に対して、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは60重量%以上である。上限は、好ましくは97重量%以下であり、より好ましくは90重量%以下である。
【0033】
重合体(A)は、α,β−不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体と共重合可能な単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。重合体(A)は、α,β−不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体と共重合可能な単量体に由来する単位を、1種単独で含んでいてもよく、2種以上の組み合わせで含んでいてもよい。
【0034】
α,β−不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体と共重合可能な単量体としては、特に限定はされないが、例えば、スチレン系単量体(例、スチレン、ヒドロキシスチレン)、ビニルエステル(例、酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル)、及びN−ビニルピロリドンが挙げられ、N−ビニルピロリドンが好ましい。
【0035】
重合体(A)のガラス転移温度(Tg(℃))は、−10℃以上60℃以下であることが好ましい。重合体(A)のTgが−10℃以上であると、変性ポリオレフィン系樹脂(C)をインキ、塗料等の用途に用いる場合に十分な塗膜強度を発現することができ、基材との付着性が十分に発揮され得る。また、インキとして用いる際に、印刷中のブロッキングを抑制することができる。重合体(A)のTgが60℃以下であると、樹脂組成物をインキ、塗料等の用途に用いる場合に塗膜が固くなりすぎることを抑制し、塗膜が適度な柔軟性を発揮することができる。
【0036】
ガラス転移温度は、FOX式を用いて、重合体(A)を構成する各単量体をホモポリマーとした場合の各ガラス転移温度(Tg)の値及び重合体(A)における各単量体の重量割合を用いて下記FOX式により算出すればよい。各ホモポリマーのTgとしては、ポリマーハンドブック(Wiley−Interscience Publication、4th Edition, 1999)及び製品データに掲載されているTgを用いても良い。
【0037】
<FOX式> 1/Tg=W/Tg+W/Tg+W/Tg+・・・W/Tg
【0038】
上記式は、重合体(A)がn種の単量体により構成される場合の式である。Tgは、重合体(A)を構成する単量体1のホモポリマーのガラス転移温度であり、Wは、単量体1のホモポリマーの重量分率である。Tgは、重合体(A)を構成する単量体2のホモポリマーのガラス転移温度であり、Wは、単量体2のホモポリマーの重量分率である。Tgは、重合体(A)を構成する単量体3のホモポリマーのガラス転移温度であり、Wは、単量体3のホモポリマーの重量分率である。Tgは、重合体(A)を構成する単量体nのホモポリマーのガラス転移温度であり、Wは、単量体nのホモポリマーの重量分率である。実施例における重合体(A)のガラス転移温度も、上記FOX式を用いて算出された値である。
【0039】
1−2.樹脂(B)
樹脂(B)は、ポリオレフィン樹脂又はポリオレフィン樹脂の変性物である。
【0040】
<ポリオレフィン樹脂>
樹脂(B)としてのポリオレフィン樹脂は、オレフィンの重合体である。樹脂(B)としてのポリオレフィン樹脂としては、好ましくは重合触媒としてチーグラー・ナッタ触媒又はメタロセン触媒を用いて製造したポリオレフィン樹脂であり、より好ましくは、重合触媒としてチーグラー・ナッタ触媒又はメタロセン触媒を用いて製造された、ポリプロピレン、又は、プロピレン及びα−オレフィン(例、エチレン、ブテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ヘプテン)を共重合して得られたポリオレフィン樹脂である。なお、ポリプロピレン並びにプロピレン及びα−オレフィンをランダム共重合して得られたポリオレフィン樹脂を、プロピレン系ランダム共重合体ということがある。プロピレン系ランダム重合体として、例えば、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合物、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体が挙げられる。ポリオレフィン樹脂は、更に好ましくは、重合触媒としてメタロセン触媒を用いて製造されたプロピレン系ランダム重合体であり、特に好ましくは、重合触媒としてメタロセン触媒を用いて製造された、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、又はエチレン−プロピレン−ブテン共重合体である。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、複数の樹脂を混合して用いてもよい。
【0041】
前述のメタロセン触媒としては、公知のものが使用できる。メタロセン触媒として、具体的には例えば、以下に述べる成分(1)及び(2)、さらに必要に応じて(3)を組み合わせて得られる触媒が挙げられ、以下に述べる成分(1)及び(2)、さらに必要に応じて(3)を組み合わせて得られる触媒が好ましい。
・成分(1);共役五員環配位子を少なくとも一個有する周期律表4〜6族の遷移金属化合物であるメタロセン錯体。
・成分(2);イオン交換性層状ケイ酸塩。
・成分(3);有機アルミニウム化合物。
【0042】
メタロセン触媒を用いて合成したポリオレフィン樹脂は、分子量分布が狭い、ランダム共重合性に優れ組成分布が狭い、共重合しうるコモノマーの範囲が広いといった特徴があるので、樹脂(B)として好ましい。
【0043】
樹脂(B)としてのポリオレフィン樹脂の構造は、特に限定されず、通常の高分子化合物が取り得るアイソタクチック構造、アタクチック構造、シンジオタクチック構造等のいずれであってもよいが、ポリオレフィン基材への付着性、特に低温乾燥での付着性を考慮すると、メタロセン触媒を用いて重合されたアイソタクチック構造のポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0044】
樹脂(B)としてのポリオレフィン樹脂の成分組成は、特に限定されるものではないが、プロピレン成分が好ましくは60モル%以上、より好ましくは、70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上であることが好ましい。樹脂(B)としてのポリオレフィン樹脂の成分組成が、プロピレン成分が60モル%以上である場合、プロピレン基材に対する付着性(接着性)がより良好となる。
【0045】
<ポリオレフィン樹脂の変性物>
また樹脂(B)は、ポリオレフィン樹脂の変性物であってもよい。ポリオレフィン樹脂の変性物における、ポリオレフィン樹脂の例及び好ましい例は、上記項目<ポリオレフィン樹脂>において既に説明したとおりである。
変性の種類は特に限定されず、例えば、塩素化;エポキシ化;ヒドロキシル化;無水カルボン酸化;カルボン酸化等の公知の変性が挙げられる。ポリオレフィン樹脂の変性物は、ポリオレフィン樹脂を公知の方法を用いて変性することにより得ることができる。樹脂(B)としてのポリオレフィン樹脂の変性物は、塩素化ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂の塩素化方法については、後述する。
【0046】
<樹脂(B)の重量平均分子量>
樹脂(B)の重量平均分子量は、10,000以上であることが好ましい。重量平均分子量が10,000以上であると、樹脂の凝集力が十分であり基材への付着性に優れる。樹脂(B)の重量平均分子量の上限は200,000以下が好ましい。重量平均分子量が200,000以下であると、塗料・インキ中に含まれる他樹脂との相溶性が良好であり、基材への付着性が良好である。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン検量線から求めればよい。
【0047】
<樹脂(B)に含まれる任意成分>
樹脂(B)は、安定剤を含んでいてもよい。安定剤としてはエポキシ化合物が例示される。エポキシ化合物は、特に限定されないが、塩素化などの変性を行った樹脂と相溶することができるエポキシ化合物が好ましい。エポキシ化合物としては、エポキシ等量が100から500程度で、一分子あたり1個以上のエポキシ基を有する化合物が例示され得、そのようなエポキシ化合物としては、例えば、天然の不飽和基を有する植物油を、過酢酸などの過酸でエポキシ化して得られるエポキシ化植物油(エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油など);オレイン酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸等の、不飽和脂肪酸をエポキシ化したエポキシ化脂肪酸エステル類;エポキシ化テトラヒドロフタレートなどのエポキシ化脂環化合物;ビスフェノールA又は多価アルコールとエピクロルヒドリンとを縮合して得られる、例えば、ビスフェノールAグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のエーテル類;及び、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェノールポリエチレンオキサイドグリシジルエーテル等に代表される、モノエポキシ化合物類;が挙げられる。安定剤は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。安定剤を添加する場合の添加量は、ポリオレフィン樹脂又はその変性物に対し1〜20重量%(固形分換算)であることが好ましい。
【0048】
1−3.変性ポリオレフィン系樹脂
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂においては、樹脂(B)に重合体(A)がグラフトしている。
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂(C)を得る方法としては、例えば、樹脂(B)に、重合体(A)をグラフト共重合によって導入する方法を挙げることができる。
重合体(A)を樹脂(B)にグラフト共重合により導入する方法としては、例えば、樹脂(B)に、α,β−不飽和カルボン酸及びα,β−不飽和カルボン酸の誘導体からなる群より選択される1種以上並びに必要に応じてα,β−不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体と共重合可能な単量体を、グラフト共重合させる方法が挙げられる。
【0049】
グラフト共重合の際の条件は特に限定はなく、溶融法、溶液法などの公知の方法に従って行えばよい。溶融法による場合、操作が簡単である上、短時間で反応できるという利点がある。溶液法による場合、副反応が少なく均一なグラフト重合物を得ることができる。
【0050】
溶融法による場合には、ラジカル反応開始剤の存在下で樹脂(B)を加熱融解(加熱溶融)して反応させる。加熱融解の温度は、融点以上であればよく、融点以上300℃以下であることが好ましい。加熱融解の際には、バンバリーミキサー、ニーダー、押し出し機などの機器を使用することができる。
【0051】
溶液法による場合には、樹脂(B)を有機溶剤に溶解させた後、ラジカル反応開始剤の存在下に加熱撹拌して反応させる。有機溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤を用いることが好ましい。反応の際の温度は、100〜180℃であることが好ましい。
【0052】
溶融法及び溶液法の際用いるラジカル反応開始剤としては、特に限定されないが、例えば、有機過酸化物系化合物又はアゾニトリル類が挙げられる。有機過酸化物系化合物としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエートなどが挙げられ、ラジカル重合を行う温度に応じて適切な半減期温度を有するものを選択すればよい。
【0053】
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂(C)における重合体(A)の含有率は、好ましくは30重量%以上であり、より好ましくは50重量%以上であり、更に好ましくは70重量%以上である。上限は、好ましくは90重量%以下である。
変性ポリオレフィン系樹脂(C)における重合体(A)の含有率とは、変性ポリオレフィン系樹脂(C)に対する、重合体(A)部分の重量比率を意味する。
変性ポリオレフィン系樹脂(C)に対する重合体(A)部分の重量比率(%)は、変性ポリオレフィン系樹脂(C)を製造するに際して、樹脂(B)にグラフト重合させる全単量体の配合率(%)と通常一致する(ただし、樹脂(B)の配合重量及び樹脂(B)にグラフト重合させる全単量体の配合重量の合計を100%とする。)。
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂(C)が、塩素化樹脂である場合、重合体(A)の含有率は、塩素化樹脂である変性ポリオレフィン系樹脂(C)に対する、塩素を除く重合体(A)部分の重量比率(%)を意味する。
例えば、樹脂(B)が塩素化変性ポリオリフィン樹脂である場合には、変性ポリオレフィン系樹脂(C)に対する重合体(A)部分の重量比率(含有率)は、変性ポリオレフィン系樹脂(C)を製造するに際して、樹脂(B)にグラフト重合させる全単量体(重合体(A)を構成するための全単量体)の配合率(%)と通常一致する(ただし、樹脂(B)の配合重量及び樹脂(B)にグラフト重合させる全単量体の配合重量の合計を100%とする。)。
また、例えば、樹脂(B)がポリオレフィン樹脂であり、樹脂(B)にグラフト重合を行って重合体(A)が樹脂(B)にグラフトしているグラフト化樹脂を製造し、該グラフト化樹脂を塩素化して、塩素化樹脂である変性ポリオレフィン系樹脂(C)を得ている場合には、変性ポリオレフィン系樹脂(C)に対する重合体(A)部分の重量比率(%)は、塩素化樹脂である変性ポリオレフィン系樹脂(C)100重量部を製造するに際して使用された、樹脂(B)にグラフト重合させる全単量体(重合体(A)を構成するための全単量体)の重量部の数値に通常一致する。
【0054】
また本発明の変性ポリオレフィン系樹脂(C)は、塩素化樹脂であってもよく、塩素化樹脂であることが好ましい。本発明の変性ポリオレフィン系樹脂(C)が、塩素化樹脂である場合、変性ポリオレフィン系樹脂(C)は、その製造の何れかの段階において塩素化されていればよく、例えば、ポリオレフィン樹脂が塩素化されても、ポリオレフィン樹脂に重合体(A)をグラフトした後に得られる樹脂が塩素化されてもよい。
したがって、塩素化樹脂を得る方法としては、例えば、重合体(A)を樹脂(B)にグラフトした後に塩素化する方法、ポリオレフィン樹脂を塩素化して樹脂(B)としての塩素化ポリオレフィン樹脂を得た後に、重合体(A)を樹脂(B)にグラフトする方法が挙げられる。
【0055】
塩素化の方法としては、公知の方法を用いることができる。塩素化の方法としては、特に限定されないが、例えば樹脂をクロロホルムなどの塩素系溶媒に溶解した後に塩素ガスを吹き込み、塩素を導入する方法等を挙げることができる。さらに具体的には、塩素化は、樹脂を水、四塩化炭素、又はクロロホルム等の媒体に分散又は溶解し、触媒の存在下又は紫外線の照射下において加圧又は常圧下に50〜140℃の温度範囲で塩素ガスを吹き込むことにより行うことができる。
【0056】
塩素化樹脂の製造の際に塩素系溶媒が使用された場合、使用された塩素系溶媒は、通常、減圧などにより留去され得、あるいは別の有機溶剤で置換され得る。
【0057】
ポリオレフィン樹脂を塩素化して樹脂(B)としての塩素化ポリオレフィン樹脂を得る場合、樹脂(B)としての塩素化ポリオレフィン樹脂の塩素含有率は好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは15重量%以上である。塩素含有率が10重量%以上であると、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類への分散性に優れる。樹脂(B)としての塩素化ポリオレフィン樹脂における塩素含有率の上限は、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは45重量%以下である。塩素含有率が50重量%以下であると、ポリオレフィン系基材への付着性に優れる。
【0058】
なお、樹脂の塩素含有率は、JIS−K7229に基づいて測定することができる。
【0059】
変性ポリオレフィン系樹脂が、塩素化樹脂である場合、変性ポリオレフィン系樹脂の塩素含有率は好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは15重量%以上である。変性ポリオレフィン系樹脂における塩素含有率の上限は、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは45重量%以下である。変性ポリオレフィン系樹脂の塩素含有率が本範囲にあることで、変性ポリオレフィン系樹脂(C)の極性が増し、また変性ポリオレフィン系樹脂が、塩素原子同士の立体反発のため直鎖構造を示し易くなると推測され、そのため高極性溶媒であるアルコール類への分散性に優れると推測される。
【0060】
2.変性ポリオレフィン系樹脂を含む変性ポリオレフィン系樹脂組成物
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、他の任意の成分と共に、変性ポリオレフィン系樹脂組成物を構成してよい。例えば、変性ポリオレフィン系樹脂組成物は、変性ポリオレフィン系樹脂及び分散媒を含む、樹脂分散体の形態であってもよい。なお、本明細書において、「分散媒」には、変性ポリオレフィン系樹脂を溶解し得る溶媒が含まれる。
【0061】
<樹脂分散体>
分散媒は、好ましくはアルコール類(例、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、2−エチル−ヘキサノール等の脂肪族アルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールモノエーテル類等)を含み、より好ましくは低級アルコールを含み、さらに好ましくは炭素原子数1以上4以下のアルコール(例、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール)を含み、特に好ましくは、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、及びイソブチルアルコールから選ばれる1種以上を含む。
【0062】
分散媒中におけるアルコール類の含有率は、分散媒全重量に対し50重量%以上100重量%以下であることが好ましい。これにより、変性ポリオレフィン系樹脂が分散媒中に良好に分散している樹脂分散体が得られる。
【0063】
樹脂分散体は、分散媒として、アルコール類以外の媒体を含んでいてもよい。アルコール類以外の分散媒としては、例えば、インキ及び/又は塗料に通常用いられる溶剤が挙げられ、例えばトルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤;エチレングリコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグリコール系溶剤;水等が挙げられる。これらの中でも、エステル系溶剤及び水から選ばれる1種以上が好ましく、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、及び水から選ばれる1種以上がより好ましい。アルコール類以外の分散媒の量は、分散媒全重量に対し0重量%以上50重量%以下であることが好ましい。
【0064】
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂(C)は、塩素化などにより変性されていても、アルコール類を含む分散媒への分散性(或いは、溶解性及び/又は相溶性)に優れるため、変性ポリオレフィン系樹脂(C)を、アルコール類を含む分散媒に分散させることにより、変性ポリオレフィン系樹脂が安定して分散している樹脂分散体を形成し得る。
【0065】
樹脂分散体における変性ポリオレフィン系樹脂(C)の分散媒に対する重量比率は、樹脂(C)/分散媒=5/95〜70/30であることが好ましく、15/85〜50/50であることがより好ましい。
樹脂(C)/分散媒の重量比率が70/30以下であると、樹脂の凝集が抑制され、良好な分散状態となる。重量比率が5/95以上であると、付着成分が適量となり十分な付着性が発現する。
【0066】
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂(C)又は変性ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂分散体は、インキ用組成物、塗料用組成物、及び接着剤用組成物の成分として有用であり、好ましくはグラビア印刷用インキ組成物又はフレキソ印刷用インキ組成物の成分として有用である。
【0067】
インキ用組成物、塗料用組成物、及び接着剤用組成物は、変性ポリオレフィン系樹脂又は樹脂分散体の他に、必要に応じて、インキが通常含む成分、塗料が通常含む成分、接着剤が通常含む成分をそれぞれ含んでいてもよい。
【0068】
グラビア印刷用インキ組成物又はフレキソ印刷用インキ組成物は、各印刷法により各種の被印刷体に印刷することができる。被印刷体としてはポリオレフィンフィルムやポリエステルフィルム、ナイロンフィルム等の樹脂フィルム及び紙等が例示される。グラビア印刷又はフレキソ印刷は常法に従って行えばよい。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、「部」は特に断りのない限り「重量部」を表す。
【0070】
<製造例1>ポリオレフィン樹脂
メタロセン触媒を重合触媒として製造したプロピレン系ランダム共重合体(プロピレン単位含有量:96重量%、エチレン単位含有量4重量%)をバレル温度350℃に設定した二軸押出機に供給して熱減成を行い、ポリオレフィン樹脂である、160℃における溶融粘度が約4000mPa・s、分子量10,000のポリプロピレン系樹脂(B1)を得た。
【0071】
<製造例2>塩素化ポリオレフィン樹脂
製造例1で得られたポリプロピレン系樹脂(B1)100重量部を、グラスライニングされた反応釜に投入した。これにクロロホルムを加え、2kg/cmの圧力下、紫外線を照射しながら塩素ガス及び酸素ガスを吹き込み、塩素含有率が32wt%となるまで塩素化した。反応終了後、安定剤としてエポキシ化合物(エポサイザーW−100EL、大日本インキ化学工業(株)製)を6重量部添加し、スクリューシャフト部に脱溶剤用吸引部を備えたベント付き押出機に供給して、脱溶剤し、固形化し、塩素化ポリオレフィン樹脂である、重量平均分子量11,000の塩素化ポリプロピレン系樹脂(B2)を得た。
【0072】
<製造例3>ポリオレフィン樹脂
メタロセン触媒を重合触媒として製造したプロピレン系ランダム共重合体(プロピレン単位含有量:85重量%、エチレン単位含有量15重量%)をバレル温度320℃に設定した二軸押出機に供給して熱減成を行い、ポリオレフィン樹脂である、160℃における溶融粘度が約3200mPa・s、分子量35,000のポリプロピレン系樹脂(B3)を得た。
【0073】
<製造例4>塩素化ポリオレフィン樹脂
製造例3で得られたポリプロピレン系樹脂(B3)100重量部を、グラスライニングされた反応釜に投入した。これにクロロホルムを加え、2kg/cmの圧力下、紫外線を照射しながら塩素ガス及び酸素ガスを吹き込み、塩素含有率が40wt%となるまで塩素化した。反応終了後、安定剤としてエポキシ化合物(エポサイザーW−100EL、大日本インキ化学工業(株)製)を6重量部添加し、スクリューシャフト部に脱溶剤用吸引部を備えたベント付き押出機に供給して、脱溶剤し、固形化し、塩素化ポリオレフィン樹脂である、重量平均分子量36,000の塩素化ポリプロピレン系樹脂(B4)を得た。
【0074】
<製造例5>ポリオレフィン樹脂
メタロセン触媒を重合触媒として製造したプロピレン系ランダム共重合体(プロピレン単位含有量:96重量%、ブテン単位含有量4重量%)をバレル温度360℃に設定した二軸押出機に供給して熱減成を行い、ポリオレフィン樹脂である、160℃における溶融粘度が約4200mPa・s、分子量71,000のポリプロピレン系樹脂(B5)を得た。
【0075】
<製造例6>塩素化ポリオレフィン樹脂
製造例5で得られたポリプロピレン系樹脂(B5)100重量部を、グラスライニングされた反応釜に投入した。これにクロロホルムを加え、2kg/cmの圧力下、紫外線を照射しながら塩素ガス及び酸素ガスを吹き込み、塩素含有率が26wt%となるまで塩素化した。反応終了後、安定剤としてエポキシ化合物(エポサイザーW−100EL、大日本インキ化学工業(株)製)を6重量部添加し、スクリューシャフト部に脱溶剤用吸引部を備えたベント付き押出機に供給して、脱溶剤し、固形化し、塩素化ポリオレフィン樹脂である、重量平均分子量74,000の塩素化ポリプロピレン系樹脂(B6)を得た。
【0076】
(実施例1)
ポリプロピレン系樹脂(B1)100重量部を酢酸プロピル880重量部に溶解し、エポキシ化合物(エポサイザーW−131、DIC(株)製)5重量部を加えた。これに窒素雰囲気中、85℃で、パーオキシエステル系過酸化物(パーブチルO、日本油脂(株)製)5.5重量部を加えた後、重合体(A)として表1記載の配合(メタクリル酸16重量部、メチルメタクリレート20重量部、シクロヘキシルメタクリレート64重量部、n−ブチルメタクリレート100重量部、2−メトキシエチルアクリレート140重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート60重量部)を添加し、85℃にて6時間以上反応を行った後、冷却し、変性ポリオレフィン系樹脂である、表2記載の重量平均分子量14,000の変性ポリプロピレン系樹脂(C1)の溶液を得た。
得られた変性ポリプロピレン系樹脂(C1)含む溶液100重量部から溶剤を留去し、固形分60wt%に調整した。これに、撹拌下、70℃で、エタノール200重量部を添加した後冷却することで、変性ポリプロピレン系樹脂(C1)を含有する樹脂分散体(1)を得た。樹脂分散体(1)固形分を除いた分散媒中における、エタノールの含有率は、75重量%である。また、変性ポリプロピレン系樹脂(C1)の分散媒に対する重量比率(樹脂(C1)/分散媒)は、30重量%である。
【0077】
(実施例2)
実施例1で得られた変性ポリプロピレン系樹脂(C1)固形分100重量部を、グラスライニングされた反応釜に投入した。これにクロロホルムを加え、2kg/cmの圧力下、紫外線を照射しながら塩素ガス及び酸素ガスを吹き込み、ポリプロピレン系樹脂(B1)が、塩素含有率が32wt%となるまで塩素化した。反応終了後、安定剤としてエポキシ化合物(エポサイザーW−100EL、大日本インキ化学工業(株)製)を6重量部添加し、スクリューシャフト部に脱溶剤用吸引部を備えたベント付き押出機に供給して、脱溶剤し、固形化し、変性ポリオレフィン系樹脂である、表2記載の重量平均分子量18,000の変性ポリプロピレン系樹脂(C2)の固形物を得た。樹脂(C2)100重量部を製造するにあたり使用された、重合体(A)を構成するための単量体の合計は、73.1重量部である。
得られた固形物60重量部を、70℃のエタノール200重量部に添加し、撹拌しながら溶解させた後冷却し、変性ポリプロピレン系樹脂(C2)を含有する樹脂分散体(2)を得た。
【0078】
(実施例3)
ポリプロピレン系樹脂(B1)の代わりに塩素化ポリプロピレン系樹脂(B2)を用いた以外は実施例1と同様にして、変性ポリオレフィン系樹脂である、表2記載の重量平均分子量23,000の変性ポリプロピレン系樹脂(C3)の溶液、及び変性ポリプロピレン系樹脂(C3)を含有する樹脂分散体(3)を得た。
【0079】
(実施例4)
ポリプロピレン系樹脂(B1)の代わりにポリプロピレン系樹脂(B3)を使用し、重合体(A)として表1記載の配合に変更した以外は実施例1と同様にして、変性ポリオレフィン系樹脂である、表2記載の変性ポリプロピレン系樹脂(C4)の溶液、及び変性ポリプロピレン系樹脂(C4)を含有する樹脂分散体(4)を得た。
【0080】
(実施例5)
変性ポリプロピレン系樹脂(C1)の代わりに変性ポリプロピレン系樹脂(C4)を使用した以外は実施例2と同様にして、変性ポリオレフィン系樹脂である、表2記載の変性ポリプロピレン系樹脂(C5)、及び変性ポリプロピレン系樹脂(C5)を含有する樹脂分散体(5)を得た。
【0081】
(実施例6)
ポリプロピレン系樹脂(B1)の代わりに塩素化ポリプロピレン系樹脂(B4)を使用し、重合体(A)として表1記載の配合に変更した以外は実施例1と同様にして、変性ポリオレフィン系樹脂である、表2記載の変性ポリプロピレン系樹脂(C6)の溶液、及び変性ポリプロピレン系樹脂(C6)を含有する樹脂分散体(6)を得た。
【0082】
(実施例7)
ポリプロピレン系樹脂(B1)の代わりにポリプロピレン系樹脂(B5)を使用し、重合体(A)として表1記載の配合に変更した以外は実施例1と同様にして、変性ポリオレフィン系樹脂である、表2記載の変性ポリプロピレン系樹脂(C7)の溶液、及び変性ポリプロピレン系樹脂(C7)を含有する樹脂分散体(7)を得た。
【0083】
(実施例8)
ポリプロピレン系樹脂(B1)の代わりに、ポリプロピレン系樹脂(B5)を使用し、重合体(A)として表1記載の配合に変更及び重量比(B/A)として表1記載の配合に変更した以外は実施例1と同様にして、変性ポリオレフィン系樹脂である、変性ポリプロピレン系樹脂(C7’)を得た。
変性ポリプロピレン系樹脂(C1)の代わりに変性ポリプロピレン系樹脂(C7’)を使用した以外は実施例2と同様にして、変性ポリオレフィン系樹脂である、表2記載の変性ポリプロピレン系樹脂(C8)、及び変性ポリプロピレン系樹脂(C8)を含有する樹脂分散体(8)を得た。
樹脂(C8)100重量部を製造するにあたり使用された、重合体(A)を構成するための単量体の合計は、67.1重量部である。
【0084】
(実施例9)
ポリプロピレン系樹脂(B1)の代わりに塩素化ポリプロピレン系樹脂(B6)を使用し、重合体(A)として表1記載の配合に変更した以外は、実施例1と同様にして、変性ポリオレフィン系樹脂である、表2記載の変性ポリプロピレン系樹脂(C9)の溶液、及び変性ポリプロピレン系樹脂(C9)を含有する樹脂分散体(9)を得た。
【0085】
(実施例10)
ポリプロピレン系樹脂(B1)の代わりに塩素化ポリプロピレン系樹脂(B6)を使用し、重合体(A)として表1記載の配合に変更及び重量比(B/A)として表1記載の配合に変更した以外は実施例1と同様にして、変性ポリオレフィン系樹脂である、表2記載の変性ポリプロピレン系樹脂(C10)の溶液、及び変性ポリプロピレン系樹脂(C10)を含有する樹脂分散体(10)を得た。
【0086】
(実施例11)
ポリプロピレン系樹脂(B1)の代わりに塩素化ポリプロピレン系樹脂(B6)を使用し、重合体(A)として表1記載の配合に変更及び重量比(B/A)として表1記載の配合に変更した以外は、実施例1と同様にして、変性ポリオレフィン系樹脂である、表2記載の変性ポリプロピレン系樹脂(C11)の溶液、及び変性ポリプロピレン系樹脂(C11)を含有する樹脂分散体(11)を得た。
【0087】
(比較例1)
重合体(A)として、表1記載の配合に変更した以外は、実施例3と同様にして、変性ポリオレフィン系樹脂である、表2記載の変性ポリプロピレン系樹脂(C12)の溶液、及び変性ポリプロピレン系樹脂(C12)を含有する樹脂分散体(12)を得た。
【0088】
(比較例2)
重合体(A)として、表1記載の配合に変更した以外は、実施例6と同様にして、変性ポリオレフィン系樹脂である、表2記載の変性ポリプロピレン系樹脂(C13)の溶液、及び変性ポリプロピレン系樹脂(C13)を含有する樹脂分散体(13)を得た。
【0089】
(比較例3)
ポリプロピレン系樹脂(B1)の代わりに塩素化ポリプロピレン系樹脂(B6)を使用し、重合体(A)として表1記載の配合に変更及び重量比(B/A)として表1記載の配合に変更した以外は、実施例1と同様にして、変性ポリオレフィン系樹脂である表2記載の変性ポリプロピレン系樹脂(C14)の溶液、及び変性ポリプロピレン系樹脂(C14)を含有する樹脂分散体(14)を得た。
【0090】
<評価>
実施例及び比較例で得られた変性ポリプロピレン系樹脂及び樹脂分散体について、下記の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0091】
<重量平均分子量(Mw)>
GPC 東ソー製を用い、下記の条件に従い測定した。
カラム:TSK−gel G−6000 H×L、G−5000 H×L、G−4000 H×L、G−3000 H×L、 G−2000 H×L(東ソー株式会社製)
溶離液:THF
流速:1.0mL/分
ポンプオーブン及びカラムオーブン温度:40℃
注入量:100μL
分子量標準物質:ポリスチレン(「Easical PS−1],Agilent Technologyより供給)
【0092】
<ガラス転移温度(Tg)>
ポリマーハンドブック及び製品データに掲載の各不飽和カルボン酸単量体及び各不飽和カルボン酸エステル単量体におけるホモポリマーのガラス転移温度(Tg)の値を用い、各不飽和カルボン酸単量体及び各不飽和カルボン酸エステル単量体の重量割合から上記FOX式を用いて算出した。
【0093】
<重合体(A)の水酸基価(mgKOH/g)>
判明している各α,β−不飽和カルボン酸及び各不飽和カルボン酸エステルの水酸基価、及び重合体(A)中の各α,β−不飽和カルボン酸及び各不飽和カルボン酸エステルの重量割合から、上述の方法従い算出した。
【0094】
<塩素含有率の測定>
JIS−K7229に基づいて測定した。
【0095】
<樹脂分散体の安定性>
樹脂分散体150gを250ml容ガラス容器に入れ、室温にて一週間静置後、目視にて樹脂分散体の安定性を評価した。
最良:色味の変化及び沈殿物がなく、安定性に優れる。
良:色味の変化が若干認められるが、実用の範囲内である。
不良:色味の変化又は沈殿物の生成があり、保存性に劣る。
【0096】
<インキ付着試験>
[塗膜試験片の作製]
印刷インキ用ウレタン樹脂(サンプレンIB−974 日立化成工業(株)製 40wt%)32重量部、二酸化チタン(石原産業(株)製 ルチル型)30重量部、酢酸エチル25重量部、及びイソプロピルアルコール13重量部を、サンドミルで1時間混練して、インキを調製した。このインキ100重量部に対して、実施例及び比較例で得られた樹脂分散体を10重量部加え、良く撹拌し、インキ組成物を得た。
続いて、コーティングロッド#5にてOPPフィルム(二軸延伸ポリプロピレンフィルム)(製品名:FOS 60μm品、フタムラ化学)のコロナ処理面に、バー塗工しインキ組成物の塗膜を形成した後、ドライヤーで温風乾燥させ、塗膜試験片を得た。
【0097】
[密着性試験]
得られた塗膜試験片は、塗工直後(塗工から0〜1時間後)及び塗工半日後(塗工から10〜12時間後)に、塗膜上に、セロハン粘着テープ(ニチバン社製、24mm幅)を密着させて密着面から180°方向に勢いよく引き剥がし、試験箇所の塗膜状態を目視にて観察した。
最良:塗膜の剥がれがない。
良:塗膜の浮き上がり・剥がれが一部にみられるが、実用上問題無い。
不良:塗膜の浮き上がり・剥がれがみられ、実用に適さない。
【0098】
【表1】
【0099】
[表1の脚注]
P:プロピレン、E:エチレン、B:ブテン
MAA:メタクリル酸
MMA:メチルメタクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
BMA:n−ブチルメタクリレート
2−MTA:2−メトキシエチルアクリレート
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
【0100】
【表2】
【0101】
表2から、重合体(A)の水酸基価が10mgKOH/gに満たない比較例1及び2の樹脂分散体及び重合体(A)の水酸基価が200mgKOH/gを超える比較例3の樹脂分散体と比較して、重合体(A)の水酸基価が10mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である実施例1〜11の樹脂分散体は安定性に優れており、また非極性基材であるポリプロピレンに対する付着性が良好であることが分かる。