(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のコリメータ板セットが、放射線の放射方向から見ると、前記検出器の各検出素子が前記接合層に重なる第1の領域と前記空気層に重なる第2の領域とを有するように、前記検出器に対して位置決めされる、請求項2に記載のコリメータモジュール。
前記コリメータ板セットの第1のコリメータ板が、放射線の放射方向から見ると、互いに隣り合う2つの検出素子のうちの一方の検出素子を横切るように位置決めされるとともに、前記コリメータ板セットの第2のコリメータ板が、放射線の放射方向から見ると、前記2つの検出素子のうちの他方の検出素子を横切るように位置決めされる、請求項1に記載のコリメータモジュール。
前記第1のコリメータ板が、放射線の放射方向から見ると、前記一方の検出素子の前記チャンネル方向における中心位置を横切るように位置決めされ、前記第2のコリメータ板が、放射線の放射方向から見ると、前記他方の検出素子の前記チャンネル方向における中心位置を横切るように位置決めされる、請求項4に記載のコリメータモジュール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コリメータは、一般的に、複数のコリメータモジュールを有している。以下に、コリメータモジュールの一例について説明する。
【0007】
図1は、コリメータモジュール11の一部分の概略断面図である。
コリメータモジュール11は、チャンネル方向CHに並ぶ複数のコリメータ板21を有している。また、ここでは、説明の便宜上、3枚のコリメータ板21が示されている。また、コリメータ板21の上下には、コリメータモジュール11自体の剛性を高めるために、補強板22および23を備えている。補強板22および23は、それぞれ、コリメータ板21を受け入れるための溝22aおよび23aを有している。コリメータモジュール11の下には、X線検出器240が示されている。X線検出器240は、チャンネル方向CHに間隔P1で並ぶ複数の検出素子241を有している。
図1では、X線管(図示せず)から放射されたX線は、補強板22の側からコリメータモジュール11に入射する。各コリメータ板21は、X線の放射方向に沿うように設けられている。
【0008】
尚、上記のように、各コリメータ板21はX線の放射方向に沿うように設けられているので、これらのコリメータ板21は厳密には平行ではない。しかし、本願で使用されている図面では、説明の便宜上、コリメータ板は互いに平行に図示されている。また、
図1では、コリメータ板21のX線放射方向における中心位置を基準にして、隣り合うコリメータ板21の間隔を符号「P0」で示してある。
【0009】
X線はコリメータモジュール11を通過して、検出素子241に到達する。したがって、被検体を通過したX線を検出することができる。
【0010】
ところで、X線CT装置は、被検体を撮影する場合、ガントリの回転部を回転させる必要がある。したがって、回転部の回転により生じる遠心力がコリメータ板21に作用し、コリメータ板21を変形させる原因となる。コリメータ板21の変形が大きいと、アーチファクトの原因となるので、コリメータ板21は、遠心力が作用してもできるだけ変形しにくいように、できるだけ剛性を有していることが望ましい。
【0011】
一方、近年、X線CT装置は、高解像度の画像を得るために、検出器の画素サイズを小さくすることが進められている。そこで、検出器の画素サイズを小さくするために、検出素子241のチャンネル方向CHにおける間隔P1を、
図1に示す間隔の半分にすることを考えてみる。
【0012】
図2は、検出素子の間隔を約半分にした場合のコリメータモジュールを示す図である。
図2の上側には、
図1に示すX線検出器240およびコリメータモジュール11が示されている。一方、
図2の下側には、
図2の上側に示す検出素子241の間隔P1の半分の間隔P3(=P1/2)で並ぶ複数の検出素子24を有するX線検出器240と、このX線検出器240に対して位置決めされたコリメータモジュール12とを示している。
【0013】
図2の下側に示されているコリメータモジュール12は、複数のコリメータ板211を有している。コリメータ板211は、コリメータ板21と同一構造を有している。しかし、コリメータモジュール12では、検出素子24の間隔P3が検出素子241の間隔P1の半分に設定されていることに伴い、コリメータ板211は、コリメータ板21の間隔P0の半分の間隔P2でチャンネル方向CHに並べられている。
【0014】
したがって、
図2のコリメータモジュール12のコリメータ板211は、コリメータ板21と同じ幅wを有しているが、コリメータ板21の間隔P0の半分の間隔P2で並んでいる。このため、コリメータ板211により遮蔽されるX線の割合が、コリメータ板21により遮蔽されるX線の割合よりも大きくなってしまい、その結果、コリメータモジュール12を使用すると、X線の利用効率が低下するという問題がある。
【0015】
したがって、検出素子の間隔を狭める(検出素子のサイズを小さくする)場合には、X線の利用効率の低下を抑制するために、コリメータ板211を薄くする必要がある(
図3参照)。
【0016】
図3は、コリメータ板を薄くした例を示す図である。
図3の上側には、
図2の上側と同じコリメータモジュール11が示されている。一方、
図3の下側には、
図2に示すコリメータ板211よりも薄いコリメータ板212を有するコリメータモジュール13が示されている。
【0017】
図3の下側に示すコリメータモジュール13のコリメータ板212は、
図3の上側に示すコリメータ板21の厚さwよりも薄い厚さw0を有するように形成されている。したがって、X線の利用効率の低下を抑制することができる。しかし、コリメータ板を薄くすると、コリメータ板の剛性が低くなる。したがって、ガントリの回転部を回転させると、コリメータ板212に作用する遠心力によりコリメータ板212が変形しやすくなるという問題がある。
【0018】
また、コリメータモジュールを組み立てる場合、組立治具を用いてコリメータ板を位置決めする必要がある。しかし、コリメータ板を薄くすると、コリメータ板が変形しやすいので、コリメータ板を所望の位置に位置決めすることが難しくなるという問題もある。
【0019】
一方、特許文献1には、コリメータ板505の平坦度を確保するために、コリメータ板505それぞれの間に発泡材509を充填することが開示されている(引用文献1の段落[0046]参照)。しかし、発泡材509は周辺の温度環境に依存して熱膨張する。発泡材509が熱膨張してしまうと、発泡材の熱膨張分がチャンネル方向に累積し、コリメータ板505の位置ずれが大きくなるという問題がある。
【0020】
したがって、コリメータ板を変形しにくくするとともに、コリメータ板の位置ずれを低減することが可能な技術が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1の観点は、所定方向に並ぶ複数のコリメータ板セットを含むコリメータモジュールであって、
各コリメータ板セットが、
第1のコリメータ板と、
第2のコリメータ板と、
前記第1のコリメータ板と前記第2のコリメータ板との間に設けられ、前記第1のコリメータ板と前記第2のコリメータ板とを接合する接合層とを含み、
前記複数のコリメータ板セットが、前記複数のコリメータ板セットのうちの互いに隣り合う2つのコリメータ板セットの間に空気層が介在するように、前記所定方向に並べられている、コリメータモジュールである。
【0022】
また、本発明の第2の観点は、検出器の放射線入射側に設けられる複数のコリメータモジュールを有する放射線検出装置であって、
各コリメータモジュールが、所定方向に並ぶ複数のコリメータ板セットを有し、
各コリメータ板セットが、
第1のコリメータ板と、
第2のコリメータ板と、
前記第1のコリメータ板と前記第2のコリメータ板との間に設けられ、前記第1のコリメータ板と前記第2のコリメータ板とを接合する接合層とを含み、
前記複数のコリメータ板セットが、前記複数のコリメータ板セットのうちの互いに隣り合う2つのコリメータ板セットの間に空気層が介在するように前記所定方向に並べられている、放射線検出装置である。
【0023】
また、本発明の第3の観点は、複数のコリメータ板セットを含むコリメータモジュールの製造方法であって、
前記複数のコリメータ板セットを製造することであって、
各コリメータ板セットが、第1のコリメータ板と、第2のコリメータ板と、前記第1のコリメータ板と前記第2のコリメータ板との間に設けられ、前記第1のコリメータ板と前記第2のコリメータ板とを接合する接合層とを含む、複数のコリメータ板セットを製造することと、
前記複数のコリメータ板セットをブラケットのスロットに挿入することであって、前記複数のコリメータ板セットのうちの互いに隣り合う2つのコリメータ板セットの間に空気層が介在するように、前記複数のコリメータ板セットをブラケットのスロットに挿入することと
を含む、コリメータモジュールの製造方法である。
【発明の効果】
【0024】
第1のコリメータ板と第2のコリメータ板は接合層で接合されている。したがって、接合層と第1および第2のコリメータ板とが互いに協力し合って、全体として剛性が高められたコリメータ板セットを実現することができる。このため、第1および第2のコリメータ板を変形しにくくすることができる。
【0025】
また、隣り合うコリメータ板セットの間には空気層が介在している。したがって、隣り合うコリメータ板セットは非接触に保持されているので、コリメータ板セットの接合層が熱膨張しても、コリメータ板セットの位置ずれがコリメータ板セットの配列方向に累積してしまうことが防止できる。したがって、コリメータ板の位置ずれを小さくすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0028】
図4は、本形態におけるX線CT装置の外観図である。
X線CT装置100は、ガントリ(gantry)50、テーブル(table)70、及び操作コンソール(console)80を備えている。
【0029】
ガントリ50及びテーブル70はスキャンルームR1に設置されており、操作コンソール80は操作ルームR2に設置されている。
【0030】
図5は、本形態におけるX線CT装置100のブロック図である。
操作コンソール80は、入力装置81、表示装置82、記憶装置83、処理装置84などを有している。
【0031】
入力装置81は、オペレータからの指示や情報の入力を受け付けたり、各種の操作を行うためのキーボード(keyboard)およびポインティングデバイス(pointing device)などを含んでいる。表示装置82は、画像などの視覚情報を表示するものであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどである。
【0032】
記憶装置83は、プログラム(program)やデータなどを記憶する。記憶装置83は、HDD(Hard Disk Drive:ハードディスクドライブ)や、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の半導体メモリ(Memory)などである。また、記憶装置83は、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)などの可搬性の記憶媒体を含んでいてもよい。
【0033】
処理装置84は、ガントリ50により取得された被検体74のデータ(data)に基づいて画像再構成処理を行ったり、その他の各種の演算を行うものであり、プロセッサを使用して構成することができる。
【0034】
テーブル70は、クレードル(cradle)71、クレードル支持台72、および駆動装置73を有している。クレードル71は撮影対象である被検体74を支持するものである。クレードル支持台72は、クレードル71をy方向およびz方向に移動可能に支持するものである。駆動装置73は、クレードル71およびクレードル支持台72を駆動するものである。
次に、ガントリ50について説明する。
【0035】
ガントリ50は、被検体74が移動可能な空間を形成するための開口部51を有している。
また、ガントリ50は、X線管52、アパーチャ(aperture)53、X線検出装置54、データ収集部(data acquisition system)55、回転部56、高電圧電源57、アパーチャ駆動装置58、回転部駆動装置59、GT(Gantry Table)制御部60などを有している。
【0036】
X線管52、アパーチャ53、X線検出装置54、およびデータ収集部55は、回転部56に搭載されている。
【0037】
X線管52及びX線検出装置54は、ガントリ50の開口部51を挟んで互いに対向して配置されている。
【0038】
アパーチャ53は、X線管52と開口部51との間に配置されている。アパーチャ53は、X線管52のX線焦点からX線検出装置54に向けて放射されるX線をファンビーム(fan beam)やコーンビーム(cone beam)に成形する。
【0039】
X線検出装置54は、被検体74を透過したX線を検出する。データ収集装置(DAS;Data Acquisition System)55は、検出されたX線をX線投影データに変換して収集する。尚、X線検出装置54については後で詳述する。
【0040】
高電圧電源57は、X線管52に高電圧及び電流を供給する。
アパーチャ駆動装置58はアパーチャ53を駆動しその開口を変形させる。
回転部駆動装置59は回転部56を回転駆動する。
GT制御部60は、ガントリ50内の各装置・各部、および駆動装置73等を制御する。
【0041】
回転部駆動装置59が回転部56を回転させると、X線管52及びX線検出装置54は、被検体74の周りを回転する。X線管52から放射されアパーチャ53で成形されたファンビーム或いはコーンビームのX線52aは、被検体74を透過し、X線検出装置54の検出面に到達する。このファンビーム或いはコーンビームのX線52aのxy平面における広がり方向をチャンネル方向、z方向における広がり方向もしくはz方向そのものをスライス方向という。また、X線管52からX線が放射される方向をX線放射方向とする。
次に、X線検出装置54について説明する。
【0042】
図6は、X線検出装置54の構成を示す図である。
図6の上側には、X線検出装置54の上面図が示されており、
図6の下側には、X線検出装置54をスライス方向SLから見たときの図(側面図)が示されている。
【0043】
図6に示すように、X線検出装置54は、フレーム(frame)541と、このフレーム541に取り付けられたX線検出器542およびコリメータ装置543とを備えている。
【0044】
X線検出器542は、チャンネル方向CHに並べて配列された複数の検出器モジュール542aを有している。検出器モジュール542aは、チャンネル方向CH及びスライス方向SLにマトリクス(matrix)状に並ぶ複数の検出素子を有している。これらの検出素子はX線を検出する。
【0045】
コリメータ装置543は、X線検出器542に対してX線入射側に設けられていおり、散乱X線を除去するものである。コリメータ装置543は、チャンネル方向CHに配列された複数のコリメータモジュール1を有しており、各コリメータモジュール1が、X線検出器542に対してX線入射側に設けられている。
以下に、コリメータモジュール1の構成について説明する。
【0046】
図7〜
図10は、コリメータモジュール1の構成の説明図である。
図7はコリメータモジュール1の斜視図、
図8はコリメータモジュール1のVIII−VIII断面図、
図9は、コリメータモジュール1の上面図、側面図、および正面図、
図10は、コリメータモジュール1の分解斜視図である。
図9のコリメータモジュール1の上面図では、コリメータモジュール1の内部の部品を示すために、符号9の部材は一部のみが図示されている。なお、ここで示す各図は、各構成の主要部のみを示している。また、各図は、各構成の特徴を誇張して示しており、実際の構成、寸法、数とは異なることに留意されたい。
【0047】
コリメータモジュール1は、
図10に示すように、複数のコリメータ板セット2と、一対(2個)のブラケット6および7と、4本の上側固定ロッド(rod)8A〜8Dと、4本の下側固定ロッド8E〜8Hと、1枚の上側補強板9と、1枚の下側補強板10とを有している。
先ず、コリメータ板セット2について
図11〜
図15を参照しながら説明する。
【0048】
図11はコリメータ板セット2の斜視図、
図12はコリメータ板セット2の側面図および下面図、
図13はコリメータ板セット2の分解斜視図である。
コリメータ板セット2は、2つのコリメータ板3および4と接合層5とを有している。
【0049】
図14および
図15は、コリメータ板3および4の説明図である。
【0050】
図14はコリメータ板3および4の斜視図、
図15はコリメータ板3および4の側面図である。
コリメータ板3および4は散乱X線を除去するためのものである。コリメータ板3および4は、X線遮蔽性すなわちX線高吸収性を有する材料、例えば、タングステン(tungsten)やモリブデン(molybdenum)等を用いて製造されている。コリメータ板3および4は、製造・加工時の誤差を除き、いずれも同じ材料、同じ形状を有している。
【0051】
コリメータ板3は、第1の面S1と、第1の面S1とは反対方向を向く第
2の面S2とを有している。第1の面S1は接合層5(
図13参照)に接合される面であり、第2の面S2は接合層5が接合されない面である。第1の面S1および第2の面S2は略直方形状を有している。
【0052】
また、コリメータ板3は、第1の面S1(および第2の面S2)の長辺に沿って延在する上側エッジE1及び下側エッジE2と、第1の面S1(および第2の面S2)の短辺に沿って延在する前側エッジE3及び後側エッジE4とを有している。
【0053】
コリメータ板3の上側エッジE1には、4つのノッチNa〜Ndが形成されている。4つのノッチNa〜Ndは、上側エッジE1の長手方向における中央を挟んでほぼ左右対称な位置に形成されている。また、コリメータ板3の下側エッジE2には、4つのノッチNe〜Nhが形成されている。4つのノッチNe〜Nhは、下側エッジE2の長手方向における中央を挟んでほぼ左右対称な位置に形成されている。ノッチNe〜Nhの形状は、例えば円弧形であるが、矩形やくさび形(Vの字形)等であってもよい。
【0054】
コリメータ板3の板厚は、例えば数十μmの値とすることができる。ノッチNa〜Nhの各々の幅は、例えば300μm〜500μmの範囲内の値とすることができる。
【0055】
コリメータ板3は上記のように構成されている。尚、もう一方のコリメータ板4は、接合層5が接合される第1の面S1と、接合層5が接合されない第2の面S2との位置関係が逆であることを除いて、コリメータ板3と同一構造を有している。
【0056】
次に、接合層5について、
図13を参照しながら説明する。接合層5は、コリメータ板3が接着される接着面5aと、コリメータ板4が接着される接着面5bとを有している。接合層5は、コリメータ板3と4との間に設けられ、コリメータ板3および4を接合するものである。
【0057】
コリメータ板セット2は、上記のように構成された、コリメータ板3と、コリメータ板4と、接合層5とを有している。
【0058】
コリメータモジュール1は、上記のように構成された複数のコリメータ板セット2を有している。複数のコリメータ板セット2は、
図8〜
図10に示すように、チャンネル方向CHに並ぶように配列されており、更に、互いに隣り合うコリメータ板セット2の間には空気層20(
図8参照)を介在させている。
【0059】
これらコリメータ板セット2は、ブラケット6および7によって保持される。次に、ブラケット6および7について説明する。尚、ブラケット6および7については、
図7〜
図10(主に
図10)を参照しながら説明する。
【0060】
一対のブラケット6および7は、剛性が高く軽量で加工しやすい材料、例えばアルミニウム(aluminum)合金等により構成されている。一対のブラケット6および7は、スライス方向SLにおいてほぼ左右対称な形状を有している。一対のブラケット6および7は略直方形の部材である。
【0061】
ブラケット6の、コリメータ板セット2に対向する面6aには、コリメータモジュール1に備えられるコリメータ板セット2の数と同数のスロット6bが形成されている。複数のスロット6bの各々は、対応するコリメータ板セット2の前端部2aを受け入れることができるように形成されている。尚、ブラケット6の上側の面には、コリメータモジュール1をフレーム541(
図6参照)に対して位置決めするための位置決めピン(不図示)が設けられている。
【0062】
一方、ブラケット7は、ブラケット6に対してスライス方向SLにおいて左右対称の形状を有している。ブラケット7の、コリメータ板セット2に対向する面7aには、コリメータモジュール1に備えられるコリメータ板セット2の数と同数のスロット7bが形成されている。複数のスロット7bの各々は、対応するコリメータ板セット2の後端部2bを受け入れることができるように形成されている。尚、ブラケット7の上側の面には、ブラケット6と同様に、コリメータモジュール1をフレーム541に対して位置決めするための位置決めピン(不図示)が設けられている。
ブラケット6および7は上記のように構成されている。
【0063】
ブラケット6および7は、互いに隣り合うコリメータ板セット2の間に空気層20が介在するように、複数のコリメータ板セット2を保持する。
【0064】
ブラケット6および7に設けられた位置決めピンをX線検出装置54のフレーム541に形成された穴(不図示)に差し込むことにより、コリメータモジュール1をフレーム541に対して位置決めすることができる。
【0065】
次に、上側固定ロッド8A〜8D及び下側固定ロッド8E〜8Hについて説明する。上側固定ロッド8A〜8D及び下側固定ロッド8E〜8Hについては、主に
図10を参照しながら説明する。
【0066】
上側固定ロッド8A〜8D及び下側固定ロッド8E〜8Hは、複数のコリメータ板セット2を固定するために使用されるロッドである。
【0067】
上側固定ロッド8A〜8D及び下側固定ロッド8E〜8Hは、X線透過性で剛性が比較的高い材料、例えば炭素(カーボン)により構成されている。上側固定ロッド8A〜8D及び下側固定ロッド8E〜8Hは、チャンネル方向CHに延在する棒形状を有している。これら上側固定ロッド8A〜8D及び下側固定ロッド8E〜8Hの軸断面は、例えば円であるが、矩形、多角形、楕円等であってもよい。上側固定ロッド8A、8B、8C、および8Dは、それぞれ、各コリメータ板セット2のノッチNa、Nb、Nc、およびNdに受け入れられ、接着剤で複数のコリメータ板セット2の各々の上端部2cに固定される。また、下側固定ロッド8E、8F、8G、および8Hは、それぞれ、各コリメータ板セット2のノッチNe、Nf、Ng、およびNhに受け入れられ、接着剤で複数のコリメータ板セット2の各々の下端部2dに固定される。これら上側固定ロッド8A〜8D及び下側固定ロッド8E〜8Hのチャンネル方向CHの長さは、ブラケット6および7のチャンネル方向CHの幅とほぼ同じ長さである。また、これら上側固定ロッド8A〜8D及び下側固定ロッド8E〜8Hの軸断面の幅は、ノッチ3nの幅よりも若干小さい幅となるように形成されている。
【0068】
次に、上側補強板9及び下側補強板10について説明する。尚、上側補強板9及び下側補強板10については、
図7〜
図10(特に
図8および
図10)を参照しながら説明する。
【0069】
上側補強板9及び下側補強板10は、コリメータモジュールの剛性を高めるためのものである。上側補強板9及び下側補強板10は、X線透過性を有し剛性が比較的高い材料、例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP;Carbon-Fiber-Reinforced Plastic)などの炭素樹脂(カーボン樹脂)により構成されている。上側補強板9及び下側補強板10は、ほぼあるいは実施的に直方形状を有している。
【0070】
上側補強板9は、
図8に示すように、上面91および下面92を有している。下面92は、複数のコリメータ板セット2の各々の上端部2cを覆う面である。下面92には複数の溝92aが形成されている。下面92に形成される溝92aの数は、コリメータモジュール1に設けられているコリメータ板セット2の数と同数とすることができる。複数の溝92aの各々は、複数のコリメータ板セット2のうちの対応するコリメータ板セット2の上端部2cが挿入される溝である。複数の溝92aはチャンネル方向CHに並ぶように形成されている。また、各溝92aは、チャンネル方向CHに幅を有しスライス方向SLに伸びるように形成されている。溝92aのチャンネル方向CHの幅は、コリメータ板セット2の厚さより若干広い幅であり、例えば数百μmの範囲内の値に設定することができる。
【0071】
下側補強板10は、上面101および下面102を有している。上面101は、複数のコリメータ板セット2の各々の下端部2dを覆う面である。上面101には複数の溝101aが形成されている。上面101に形成される溝101aの数は、コリメータモジュール1に設けられているコリメータ板セット2の数と同数とすることができる。複数の溝101aの各々は、複数のコリメータ板セット2のうちの対応するコリメータ板セット2の下端部2dが挿入される溝である。複数の溝101aはチャンネル方向CHに並ぶように形成されている。また、各溝101aは、チャンネル方向CHに幅を有しスライス方向SLに伸びるように形成されている。溝101aのチャンネル方向CHの幅は、コリメータ板セット2の厚さより若干広い幅であり、溝92aと同様に、例えば数百μmの範囲内の値に設定することができる。
【0072】
上側補強板9は、複数の溝92aに複数のコリメータ板セット2の上端部2cが挿入された状態で、複数のコリメータ板セット2及び一対のブラケット6および7に対して接着剤で固定されている。下側補強板10も同様に、複数の溝101aに複数のコリメータ板セット2の下端部2dが挿入された状態で、複数のコリメータ板セット2及び一対のブラケット6および7に対して接着剤で固定されている。
【0073】
コリメータモジュール1は、上記のように構成された複数のコリメータ板セット2、ブラケット6および7、上側固定ロッド8A〜8Dおよび下側固定ロッド8E〜8H、並びに上側補強板9および下側補強板10を有している。
【0074】
次に、コリメータモジュール1の製造方法の一例について、
図16を参照しながら説明する。
【0075】
図16は、コリメータモジュール1の製造方法の一例のフロー図である。以下、ステップST1〜ST5の各々ついて順に説明する。
【0076】
ステップST1では、複数のコリメータ板セット2を製造する。以下にコリメータ板セット2の製造方法の一例について、
図17〜
図23を参照しながら説明する。
【0077】
図17は、コリメータ板セット2の製造方法の一例のフロー図である。
ステップST11では、コリメータ板3および4(
図14および
図15参照)を用意する。
【0078】
ステップST12では、コリメータ板3の第1の面S1に接着シート500を接着する(
図18および
図19参照)。
【0079】
図18は、コリメータ板3と、コリメータ板3に接着された接着シート500とを示す斜視図、
図19は、
図18に示すコリメータ板3および接着シート500の側面図および下面図である。
【0080】
接着シート500としては、例えば、接着層を有するエポキシ樹脂接着シートを使用することができる。このようなエポキシ樹脂接着シートとしては、例えば、接着層に熱発泡性のフィラーが添加されたシートであって、加熱により発泡して体積が膨張するように設計されたシートを使用することができる。本形態では、接着シート500として、上記の加熱により体積が膨張するように設計されたシートを使用する例について説明するが、このシートに限定されることはなく、コリメータ板3および4を接合できる様々なシートを使用することができる。コリメータ板3に接着シート500を接着した後、ステップST13に進む。
【0081】
ステップST13では、接着シート500が接着されたコリメータ板3に対して、コリメータ板4を位置決めする(
図20および
図21参照)。
【0082】
図20は、接着シート500が接着されたコリメータ板3と、コリメータ板3に対して位置決めされたコリメータ板4とを示す斜視図、
図21は、
図20に示すコリメータ板等の側面図および下面図である。
【0083】
ステップST13では、コリメータ板4の第1の面S1を接着シート500に向けた状態で、コリメータ板4の第1の面S1と接着シート500との間に所定の隙間Gが保持されるように、コリメータ板3に対して、コリメータ板4を位置決めする。コリメータ板4は、図示しない位置決め治具を使用することによって、コリメータ板3に対して位置決めすることができる。
【0084】
コリメータ板4と接着シート500との間の隙間Gの値は、後述するステップST14における加熱処理により接着シート500がどれだけ膨張するかを考慮して設定される。隙間Gは、例えば、数百μmとすることができる。コリメータ板4を位置決めした後、ステップST14に進む。
【0085】
ステップST14では、接着シート500を加熱する。
図22は、接着シート500の加熱後のコリメータ板3および4を示す斜視図、
図23は、
図22に示すコリメータ板等の側面図および下面図である。
【0086】
接着シート500を加熱すると、接着シート500が隙間Gを埋めるように膨張し、コリメータ板4に接着する。したがって、コリメータ板3および4を接合することができる。
【0087】
このようにして、
図17のフローが終了し、コリメータ板セット2を製造することができる。尚、膨張した後のシート500が、コリメータ板3および4を接合する接合層5となる。
図16に戻って説明を続ける。
【0088】
コリメータモジュール1の製造に必要な数のコリメータ板セット2が準備できたら、ステップST2に進む。
【0089】
ステップST2では、複数のコリメータ板セット2をブラケット6および7のスロット6bおよび7b(
図10参照)に挿入する。
図24に、ブラケット6および7と、ブラケット6および7のスロット6bおよび7bに挿入された複数のコリメータ板セット2とを概略的に示す。複数のコリメータ板セット2をブラケット6および7のスロット6bおよび7bに挿入することにより、隣り合うコリメータ板セット2の間に空気層を介在させることができる。
次に、ステップST3に進む。
【0090】
ステップST3では、コリメータ板セット2の位置合わせを行う。この位置合わせは、コリメータ板セット2をチャンネル方向CHに精度よく位置合わせするために行われる。この位置合わせには、特開2015−108587号公報(例えば、段落[0052]−[0066])に開示されているコリメータモジュールの製造用治具を使用することができる。コリメータ板セット2の位置合わせを行った後、ステップST4に進む。
【0091】
ステップST4では、上側固定ロッド8A〜8DをノッチNa〜Ndに挿入し(
図25参照)、上側固定ロッド8A〜8Dとコリメータ板セット2とを接着剤で接着する。また、下側固定ロッド8E〜8HをノッチNe〜Nhに挿入し、下側固定ロッド8E〜8Hとコリメータ板セット2とを接着剤で接着する。更に、コリメータ板セット2とブラケット6および7とを接着する。
次に、ステップST5に進む。
【0092】
ステップST5では、コリメータ板セット2の上側に上側補強板9を接着し、コリメータ板セット2の下側に下側補強板10を接着する。
このようにして、コリメータモジュール1を製造することができる。
【0093】
上記のように、本形態のコリメータモジュール1では、接合層5でコリメータ板3および4を接合している。したがって、高精細化に対応して検出素子の間隔を狭くした場合(検出素子のサイズを小さくした)場合であっても、X線の利用効率を維持しつつコリメータ板3および4を変形しにくくすることができるという効果が得られる。以下に、この効果が得られる理由について、接合層5の無いコリメータモジュールと比較しながら説明する。
【0094】
図26は、接合層5を有するコリメータモジュール1の効果の説明図である。
【0095】
尚、
図26の下側に、本形態の接合層5を有するコリメータモジュール1が示されている。また、
図26の上側には、比較例として、接合層5の無いコリメータモジュール13が示されている。
図26の上側に示すコリメータモジュール13は、先に説明した
図3に示すコリメータモジュール13である。
【0096】
先ず、接合層5の無い比較例のコリメータモジュール13について簡単に説明する。
図3を参照しながら先に説明したように、比較例のコリメータモジュール13では、X線の利用効率を高めるために板厚の薄いコリメータ板212が使用されている。したがって、コリメータ板212の剛性が低くなってしまい、コリメータ板212が変形しやすいという問題がある。
【0097】
一方、本形態のコリメータモジュール1は、2枚のコリメータ板3および4が接合層5で接合されたコリメータ板セット2を備えている。このコリメータ板3および4は、コリメータ板212と同じ厚さw0である。しかし、コリメータ板セット2では、接合層5がコリメータ板3および4を接合しているので、接合層5とコリメータ板3および4とが互いに協力し合って、全体として剛性が高められたコリメータ板セット2を実現することができる。したがって、本形態のコリメータモジュール1で使用されているコリメータ板3および4は、比較例のコリメータモジュール13で使用されているコリメータ板212と同じ厚さであるにもかかわらず、コリメータ板3および4の剛性を高めることができるので、X線利用効率の低下を抑制しつつコリメータ板3および4を変形しにくくすることができる。
【0098】
また、本形態のコリメータモジュール1は、隣り合う2つのコリメータ板セット2の間に、接合層5ではなく空気層20を介在させている。空気層20を介在させることにより、接合層5が熱膨張しても、コリメータ板3および4のチャンネル方向CHにおける位置ずれを低減することができるという効果がある。以下に、この効果が得られる理由について説明する。尚、この効果を説明するにあたっては、先ず、空気層20を介在させていないコリメータモジュールについて説明し、空気層20を介在させていないコリメータモジュールの問題点を明確にする。そして、この問題点を明確にした上で、空気層20を介在させる効果について説明する。
【0099】
図27は、空気層20を介在させていないコリメータモジュール14の断面図である。
図27のコリメータモジュール14は、隣り合う2つのコリメータ板セット2の間が空気層20ではなく接合層15で充填されている。したがって、
図27のコリメータモジュール14は、互いに隣り合うコリメータ板セット2が接合層15で接合されている。
【0100】
図28は、
図27に示すコリメータモジュール14の問題点の説明図である。
図28の上側は、接合層5および15が熱膨張する前のコリメータモジュール14の断面図、
図28の下側は、接合層5および15が熱膨張した後のコリメータモジュール14の断面図である。
【0101】
尚、
図28では、コリメータ板セット2どうしを区別するため、コリメータ板セットには符号「2」の代わりに、符号「2A」、「2B」、および「2C」が付されている。
【0102】
コリメータモジュール14の接合層5および15は周辺の温度環境に依存して熱膨張する。したがって、コリメータ板セット2Bに着目すると、コリメータ板セット2Bのコリメータ板3には、接合層5の熱膨張によりd1だけ位置ずれが生じる。
【0103】
次に、コリメータ板セット2Aに着目する。コリメータ板セット2Aは、接合層15を介してコリメータ板セット2Bに隣接している。したがって、コリメータ板セット2Bの接合層5の熱膨張は、接合層15を介してコリメータ板セット2Aのコリメータ板3の位置ずれを引き起こす。このため、コリメータ板セット2Aのコリメータ板3は、コリメータ板セット2Aの接合層5の熱膨張だけでなく、コリメータ板セット2Bの接合層5の熱膨張によっても、位置ずれを起こす。この結果、コリメータ板セット2Aのコリメータ板3の位置ずれd2は、コリメータ板セット2Bのコリメータ板3の位置ずれd1よりも大きくなる。
【0104】
同様の理由から、コリメータ板セット2Cのコリメータ板4の位置ずれd20は、コリメータ板セット2Bのコリメータ板4の位置ずれd10よりも大きくなる。
【0105】
したがって、コリメータ板セット2の間に接合層15を設けると、コリメータ板セット2の接合層5の熱膨張は、接合層15を介して隣のコリメータ板セット2の位置ずれを引き起こす。このため、コリメータ板3(又は4)の位置ずれがチャンネル方向CHに累積してしまい、コリメータ板3(又は4)のチャンネル方向CHにおける位置ずれが大きくなるという恐れがある。
【0106】
そこで、このようなコリメータ板3および4の位置ずれが大きくなることを抑制するために、本形態のコリメータモジュール1では、隣り合うコリメータ板セット2の間に空気層20(
図26参照)を介在させている。
【0107】
コリメータ板セット2の間に空気層20を介在させておくと、コリメータ板セット2の接合層5が熱膨張しても、熱膨張した接合層5が隣のコリメータ板セット2のコリメータ板の位置ずれを引き起こさないようにすることができる。したがって、コリメータ板セット3および4の位置ずれがチャンネル方向CHに累積してしまうという恐れを低減することができるので、コリメータ板3および4のチャンネル方向CHの位置ずれを小さくすることができる。また、コリメータ板3および4のチャンネル方向CHにおける位置ずれを小さくすることができるので、X線検出器542のチャンネル方向における検出むらを軽減することも可能となる。
【0108】
次に、コリメータモジュール1のコリメータ板セット2とX線検出器542(
図6参照)が有する検出素子との位置関係について検討する(
図29参照)。
【0109】
図29は、コリメータモジュール1のコリメータ板セット2とX線検出器542(
図6参照)が有する検出素子24との位置関係を概略的に示す図である。
【0110】
図29の上側は、コリメータ板セット2と検出素子24とをスライス方向SLから見た断面図、
図29の下側は、コリメータ板セット2と検出素子24とをX線放射方向XRから見た上面図である。
【0111】
尚、上面図においては、コリメータ板セット2と検出素子24との位置関係が明確になるように、補強板は図示省略し、コリメータ板セット2を細い線で示し、検出素子24を太い線で示してある。また、実際には検出素子24は2次元的に配列されているが、ここでは、説明の便宜上、特定のチャンネル方向CHに並ぶ検出素子24のみを示してある。更に、コリメータ板セット2どうしを区別するため、コリメータ板セットには符号「2」の代わりに、符号「2A」、「2B」、および「2C」が付されている。また、チャンネル方向CHに並ぶ検出素子24を区別するために、符号24の代わりに、「24a」、「24b」、「24c」、「24d」、「24e」、および「24f」が付されている。
【0112】
検出素子24(24a〜24f)は、チャンネル方向CHに間隔P3で並んでいる。一方、コリメータ板セット2A、2B、および2Cは、チャンネル方向CHに間隔P4で並ぶように位置決めされている。間隔P4は、間隔P3の2倍、即ち、P4=2・P3を満たすように設定されている。
【0113】
X線放射方向XRからコリメータモジュール1を見ると、検出素子24a、24c、および24eは、それぞれ、コリメータ板セット2A、2B、および2Cに重なっているが、その隣の検出素子24b、24d、および24fは空気層20に重なっている。したがって、
図29では、チャンネル方向CHに並ぶ検出素子24a〜24fについて考えると、コリメータ板セット2A、2B、又は2Cに重なる検出素子と、空気層20に重なる検出素子とが交互に現れる。コリメータ板セット2A、2B、および2Cの接合層5のX線吸収特性が空気層20のX線吸収特性に十分に近い場合には、検出素子24a〜24fに到達するX線量は実質的に同じと考えることができる。しかし、接合層5のX線吸収特性と空気層20のX線吸収特性との違いが大きい場合は、検出素子24a〜24fで検出されるX線量のばらつきが大きくなってしまうという問題がある。そこで、以下に、この問題に対処する方法について、
図30を参照しながら説明する。
【0114】
図30は、検出素子24で検出されるX線量のばらつきを小さくする方法の一例の説明図である。
図30のコリメータモジュール1は、
図29のコリメータモジュール1と比較すると、コリメータ板セット2(2A〜2C)が、X線検出器542の検出素子24(24a〜24f)に対して、チャンネル方向CHに、Δd(検出素子の間隔P3の半分)だけずれるように位置決めされている点が異なっている。
【0115】
したがって、コリメータ板セット2A、2B、および2Cは、X線放射方向XRから見ると、一つの検出素子と重なっているわけではなく、チャンネル方向CHに隣接する2つの検出素子の各々に対して部分的に重なっている。
【0116】
例えば、コリメータ板セット2Bに着目すると、このコリメータ板セット2Bは、チャンネル方向CHに隣接する2つの検出素子24cおよび24dの各々に対して部分的に重なっている。
図31は、コリメータ板セット2B並びに検出素子24cおよび24dをX線放射方向XRから見た拡大図である。
【0117】
図31に示すように、コリメータ板セット2Bの一方のコリメータ板3は、X線放射方向XRから見ると、隣接する2つの検出素子24cおよび24dのうちの一方の検出素子24cをチャンネル方向CHに2分割するように位置決めされている。具体的には、コリメータ板3は、X線放射方向XRから見ると、検出素子24cのチャンネル方向CHにおける中心位置m1を横切るように位置決めされている。また、コリメータ板セット2Bの他方のコリメータ板4は、X線放射方向XRから見ると、他方の検出素子24dをチャンネル方向CHに2分割するように位置決めされている。具体的には、コリメータ板4は、X線放射方向XRから見ると、検出素子24dのチャンネル方向CHにおける中心位置m2を横切るように位置決めされている。したがって、検出素子24cは、X線放射方向XRから見ると、コリメータ板セット2Bの接合層5に重なる領域r1と、空気層20に重なる領域r2とを含んでいる。また、検出素子24cに隣接する検出素子24dも、X線放射方向XRから見ると、コリメータ板セット2Bの接合層5に重なる領域r1と、空気層20に重なる領域r2とを含んでいる。
【0118】
次に、
図30に戻って、コリメータ板セット2Bに隣接するコリメータ板セット2Aに着目してみる。このコリメータ板セット2Aは、チャンネル方向CHに隣接する2つの検出素子24aおよび24bの各々に対して部分的に重なっている。したがって、検出素子24aは、X線放射方向XRから見ると、コリメータ板セット2Aの接合層5に重なる領域r1と、空気層20に重なる領域r2とを含んでいる。また、検出素子24aに隣接する検出素子24bも、X線放射方向XRから見ると、コリメータ板セット2Aの接合層5に重なる領域r1と、空気層20に重なる領域r2とを含んでいる。
【0119】
したがって、複数のコリメータ板セット2A〜2Cは、X線放射方向から見ると、検出素子24a〜24fの各々が、接合層5に重なる第1の領域r1と、空気層20に重なる第2の領域r2とを有するように、X線検出器542に対して位置決めされている。
【0120】
このような構成により、各検出素子24は、X線放射方向XRに関して、略半分の領域r1は接合層5に重なり、残りの略半分の領域r2は空気層20に重なるようにすることができる。したがって、どの検出素子24であっても、接合層5を通過したX線と空気層20を通過したX線との両方のX線を検出するので、検出素子24間で検出されるX線量のばらつきを低減することができ、チャンネル方向CHにおけるX線量の検出むらを低減することができる。
【0121】
尚、
図29および
図30では、コリメータ板3および4は、X線放射方向XRから見ると、各検出素子のチャンネル方向CHにおける中心位置を横切るように位置決めされている。しかし、検出素子のチャンネル方向CHにおける検出むらを低減できるのであれば、コリメータ板3又は4を、各検出素子のチャンネル方向CHにおける中心位置からずれた位置を横切るように位置決めしてもよい。
【0122】
尚、本形態では、コリメータ板セット2は接合層5を有している。この接合層5は、コリメータ板3および4を接合できるのであれば、様々な材料で形成することができる。しかし、接合層5の密度が高いと、X線が吸収されやすくなるので、X線の利用効率が悪くなる。したがって、接合層5は、接合層5の密度ができるだけ低くなるような材料で形成されることが望ましい。低密度の接合層5を実現する一例としては、例えば、本形態で説明したように、接着シート500を使用することができる。接着シート500をコリメータ板3に接着させた後に、コリメータ板3に対してコリメータ板4を位置決めし、コリメータ板3および4を加熱すると、接着シート500は加熱により発泡するので、コリメータ板3と4との間に発泡層を形成することができる。本形態では、この発泡層がコリメータ板3および4を接合する接合層5として使用されている。発泡層は気泡を含むので、低密度の接合層5を実現することができ、X線の利用効率を高めることが可能となる。
【0123】
また、本形態では、接着シート500を加熱して膨張させることによりコリメータ板3および4を接合している。しかし、別の方法でコリメータ板3および4を接合してもよい。例えば、所定の材料を含むシート状のベース層を用意し、このベース層の片側の面とコリメータ板3とを接着剤で接着するとともに、ベース層の反対側の面とコリメータ板4とを接着剤で接着することにより、コリメータ板3および4を接合してもよい。この場合、ベース層とコリメータ板3および4との間に存在する接着層と、ベース層とを合わせたものが、接合層5を構成する。ベース層としては、例えば発泡材で形成された発泡層を使用することができる。
【0124】
尚、本発明は、上記の形態に限定されることはなく、種々の追加、変更等が可能である。
【0125】
例えば、本形態では、各コリメータ板セット2のコリメータ板3および4にノッチNa〜NdおよびNe〜Nhを設け、このノッチNa〜Ndに上側固定ロッド8A〜8Dを挿入して接着剤で固定するとともに、ノッチNe〜Nhに下側固定ロッド8E〜8Hを挿入して接着剤で固定している。しかし、コリメータ板3および4にノッチNa〜NdおよびNe〜Nhを設けずに、上側固定ロッド8A〜8Dをコリメータ板3および4の上側エッジE1に固定するとともに、下側固定ロッド8E〜8Hをコリメータ板3および4の下側エッジE2に固定してもよい。この場合、上側補強板9に上側固定ロッド8A〜8Dを受け入れるノッチを形成するとともに、下側補強板10に下側固定ロッド8E〜8Hを受け入れるノッチを形成し、上側補強板9および下側補強板10でコリメータ板セット2を挟むことができる。または、上側補強板9および下側補強板10にノッチを形成せずに、ノッチが形成されていない上側補強板9および下側補強板10でコリメータ板セット2を挟むようにしてもよい。
【0126】
また、本形態では、4本の上側固定ロッド8A〜8Dが使用されているが、コリメータ板セット2の位置合せ精度を十分に保持することができ、コリメータモジュールに十分な剛性を持たせることができるのであれば、上側固定ロッドの数は4本より多くてもよいし、4本より少なくてもよい。同様に、下側固定ロッドの数も、4本より多くてもよいし、4本より少なくてもよい。
【0127】
また、本形態では、コリメータモジュール1は、上側補強板9及び下側補強板10を有している。しかし、コリメータモジュール1が十分な剛性を保持することができるのであれば、上側補強板9及び下側補強板10のうちの少なくとも一方の補強板を備えずにコリメータモジュール1を構成してもよい。
【0128】
また、本形態では、上側固定ロッド8A〜8D及び下側固定ロッド8E〜8Hは、コリメータ板セット2の配列方向であるチャンネル方向CHに延在するように固定されているが、チャンネル方向CHに対して斜め方向に延在するように固定されていてもよい。
【0129】
また、本形態では、上側補強板9には複数のコリメータ板セット2の上端部2cが挿入される複数の溝92aが形成されており、下側補強板10には複数のコリメータ板セット2の下端部2dが挿入される複数の溝101aが形成されている。しかし、上側補強板9及び下側補強板10の少なくとも一方の補強板として、溝の形成されていない平坦な補強板を用いてもよい。
【0130】
また、本形態では、ブラケット6の面6aには、コリメータ板セット2の前端部2aを受け入れるためのスロット6bが形成されており、ブラケット7の面7aには、コリメータ板セット2の後端部2bを受け入れるためのスロット7bが形成されている。しかし、複数のコリメータ板セット2を保持できるのであれば、一対のブラケット6および7として、スロットが形成されていないブラケットを用いてもよい。
【0131】
尚、本形態では、チャンネル方向に並ぶコリメータ板セット2を有するコリメータモジュール1について説明されている。しかし、本発明は、コリメータ板セット2がチャンネル方向に並べられたコリメータモジュールに限定されることはなく、チャンネル方向とは別の方向に並べられたコリメータ板セットを有するコリメータモジュールにも適用することができる。したがって、本発明は、例えば、スライス方向に並べられたコリメータ板セットを有するコリメータにも適用することができる。
【0132】
尚、本形態では、コリメータモジュール1が、X線CT装置100に適用される例について説明されている。しかし、本発明のコリメータモジュール1は、X線CT装置以外の、コリメータモジュール1が必要な放射線断層撮影装置(例えば、胸部などを撮影するためのX線一般撮影装置や、乳房を撮影するためのマンモグラフィ撮影装置、血管を造影撮影するための血管造影撮影装置、PET−CT装置やSPECT−CT装置)にも適用することができる。また、本発明のコリメータモジュール1は、医用分野の放射線断層撮影装置だけでなく、医用分野とは異なる分野で使用される放射線撮影装置(例えば、産業用X線装置)にも適用することができる。