【文献】
Front. Immunol. 7:79, pp1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アフィニティークロマトグラフィーが、少なくとも1つのFc領域を含む抗体または融合ポリペプチドを分離するためのアフィニティークロマトグラフィーである、請求項4または5に記載の使用。
1つのFc領域の少なくとも1つのC1q結合部分を含む親抗体または親融合ポリペプチドの修飾抗体または修飾融合ポリペプチドのライブラリーを、該親抗体または親融合ポリペプチドと比べてC1qに対する結合親和性が変化している該修飾抗体または修飾融合ポリペプチドについてスクリーニングするための使用である、請求項4〜8のいずれか一項に記載の使用。
前記抗体が、融合ポリペプチドの単一特異性抗体もしくは単一特異性抗体断片、または融合ポリペプチドの二重特異性抗体もしくは二重特異性抗体断片、または融合ポリペプチドの三重特異性抗体もしくは三重特異性抗体断片、または融合ポリペプチドの四重特異性抗体もしくは四重特異性抗体断片である、請求項4〜10のいずれか一項に記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0047】
発明の態様の詳細な説明
本発明は、少なくとも一部、補体C1q亜成分サブユニットを配列A-B-Cにおいて含む一本鎖組換えC1qが、改善された特性を有するという知見に基づく。例えば、それは、抗体およびFc領域を含むポリペプチドの解析および分離のために、アフィニティークロマトグラフィーリガンドとして使用することができる。
【0048】
当業者に公知のように、組換えDNA技術の使用により、核酸および/またはポリペプチドの多数の誘導体の作製が可能である。そのような誘導体は、例えば、置換、改変、交換、欠失、または挿入によって、1つの個々の位置またはいくつかの位置において修飾することができる。修飾または誘導体化は、例えば、部位特異的変異誘発によって実施することができる。そのような修飾は、当業者が容易に実施することができる(例えば、Sambrook, J., et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, USA (1999);Hames, B.D. and Higgins, S.J., Nucleic acid hybridization - a practical approach, IRL Press, Oxford, England (1985)を参照されたい)。組換え技術の使用により、当業者は、様々な宿主細胞を異種核酸で形質転換することが可能である。異なる細胞の転写および翻訳、すなわち発現の機構は、同じ要素を使用するが、異なる種に属する細胞は、とりわけ、異なるいわゆるコドン使用頻度を有する場合がある。それによって、(アミノ酸配列に関して)同一のポリペプチドが、異なる核酸によってコードされる場合がある。また、遺伝子コードの縮重のために、異なる核酸が同じポリペプチドをコードする場合がある。
【0049】
組換え技術の使用により、様々な宿主細胞の異種核酸での形質転換が可能である。異なる細胞の転写および翻訳、すなわち発現の機構は、同じ要素を使用するが、異なる種に属する細胞は、とりわけ、異なるいわゆるコドン使用頻度を有する場合がある。それによって、(アミノ酸配列に関して)同一のポリペプチドが、異なる核酸によってコードされる場合がある。また、遺伝子コードの縮重のために、異なる核酸が同じポリペプチドをコードする場合がある。
【0050】
本発明の範囲内で、トランスフェクト細胞は、当技術分野において公知の実質的に任意の種類のトランスフェクション法で得られてもよい。例えば、核酸は、エレクトロポレーションまたはマイクロインジェクションによって細胞中に導入されてもよい。あるいは、FuGENE 6(Roche Diagnostics GmbH, Germany)、X-tremeGENE(Roche Diagnostics GmbH, Germany)、およびLipofectAmine(Invitrogen Corp., USA)などのリポフェクション試薬が使用されてもよい。さらに代替的に、核酸は、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、またはアデノ関連ウイルスに基づく適切なウイルスベクター系によって細胞中に導入されてもよい(Singer, O., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101 (2004) 5313-5314)。
【0051】
I.定義
本発明を実施するために有用な方法および技法は、当業者に公知であり、例えば、Thielens, N.M., et al., J. Immunol. 151 (1993) 6583-6592;Ausubel, F.M., ed., Current Protocols in Molecular Biology, Volumes I〜III (1997)、およびSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)に記載されている。当業者に公知のように、組換えDNA技術の使用により、核酸および/またはポリペプチドの多数の誘導体の作製が可能である。そのような誘導体は、例えば、置換、改変、交換、欠失、または挿入によって、1つの個々の位置またはいくつかの位置において修飾することができる。修飾または誘導体化は、例えば、部位特異的変異誘発によって実施することができる。そのような修飾は、当業者が容易に実施することができる(例えば、Sambrook, J., et al., Molecular Cloning: A laboratory manual (1999) Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, USAを参照されたい)。組換え技術の使用により、当業者は、様々な宿主細胞を1つまたは複数の異種核酸で形質転換することが可能である。異なる細胞の転写および翻訳、すなわち発現の機構は、同じ要素を使用するが、異なる種に属する細胞は、とりわけ、異なるいわゆるコドン使用頻度を有する場合がある。それによって、(アミノ酸配列に関して)同一のポリペプチドが、異なる核酸によってコードされる場合がある。また、遺伝子コードの縮重のために、異なる核酸が同じポリペプチドをコードする場合がある。
【0052】
本明細書において使用される場合、重鎖および軽鎖のすべての定常領域およびドメインのアミノ酸位置は、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)に記載され、本明細書において「Kabatによる番号付与」と呼ばれるKabat番号付与システムによって、番号が付与されている。具体的には、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)のKabat番号付与システム(647〜660ページを参照されたい)が、κおよびλアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLについて使用され、Kabat EU指標番号付与システム(661〜723ページを参照されたい)が、定常重鎖ドメイン(この場合「Kabat EU指標による番号付与」を参照することによって本明細書においてさらに明確にされる、CH1、ヒンジ、CH2、およびCH3)について使用される。
【0053】
本明細書においておよび添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかに別段の指図をしない限り、複数の言及を含むことに注意しなければならない。したがって、例えば、「細胞」への言及は、複数のそのような細胞および当業者に公知のその等価物を含む、などである。同様に、「1つの(a)」(または「1つの(an)」)、「1つまたは複数の」、および「少なくとも1つの」という用語は、本明細書において互換的に使用され得る。「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「有する」という用語が互換的に使用され得ることもまた、注意するべきである。
【0054】
「約」という用語は、その後に続く数値の+/-20%の範囲を意味する。1つの態様において、約という用語は、その後に続く数値の+/-10%の範囲を意味する。1つの態様において、約という用語は、その後に続く数値の+/-5%の範囲を意味する。
【0055】
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合性相互作用の総和の強さを意味する。別段の定めが無い限り、本明細書において使用される場合、「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体および抗原)の間の1:1相互作用を反映する、内因性結合親和性を意味する。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(k
d)によって表すことができる。親和性は、本明細書において説明する方法を含む、当技術分野において公知の一般的な方法によって測定することができる。
【0056】
「改変」という用語は、修飾された抗体または融合ポリペプチドを得るための、1つのFc領域の少なくとも1つのFcRn結合部分を含む親抗体または融合ポリペプチドの1つまたは複数のアミノ酸残基の置換、付加、または欠失を意味する。
【0057】
「アミノ酸置換」という用語は、少なくとも1つの既存のアミノ酸残基を別の異なるアミノ酸残基(置換アミノ酸残基)で置換することを意味する。置換アミノ酸残基は、「天然に存在するアミノ酸残基」であってよく、アラニン(3文字記号:ala、1文字記号:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、トレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)、およびバリン(val、V)からなる群より選択されてよい。
【0058】
「アミノ酸挿入」という用語は、アミノ酸配列中の所定の位置に少なくとも1つのアミノ酸残基を組み入れることを意味する。1つの態様において、挿入は、1つまたは2つのアミノ酸残基の挿入である。挿入されるアミノ酸残基は、任意の天然に存在するアミノ酸残基または天然に存在しないアミノ酸残基であることができる。
【0059】
「アミノ酸欠失」という用語は、アミノ酸配列中の所定の位置において少なくとも1つのアミノ酸残基を取り除くことを意味する。
【0060】
「抗体」という用語は、最も広い意味で本明細書において使用され、限定されるわけではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、およびFcRn結合特性を示す限りにおいて抗体断片を含む、様々な抗体構造体を包含する。
【0061】
「緩衝物質」という用語は、溶液中に存在する場合、例えば、酸性物質または塩基性物質の添加または放出によって溶液のpH値のレベルを変更できる物質を意味する。
【0062】
C1q(補体C1q亜成分)は、3つの異なる遺伝子(C1QA、C1QB、およびC1QC)によってコードされる3つのポリペプチド鎖(A、B、およびC)からアセンブルされる。各鎖は、N末端コラーゲン様配列およびC末端球状gC1qモジュールを含み、ジスルフィド架橋が、AおよびB鎖、ならびに2つのC鎖のN末端を連結している。各A-B二量体は、C鎖と会合し、球状ドメインが伸びる2つのジスルフィド連結ヘテロ三量体コラーゲン様ストークから構成される基本サブユニットを結果としてもたらす。3サブユニットの会合は、ストークが、強い非共有結合性相互作用を通してそれらのN末端半分でまとまっており、次いで6つの個々のステムを形成するように分かれて、それぞれが球状頭部で終わる、6つの花のブーケの典型的な形状を有する完全長タンパク質を結果としてもたらす(Frachet, P., et al. in "Autoimmunity - Pathogenesis, Clinical Aspects and Therapy of Specific Autoimmune Diseases", ed. by K. Chatzidionysiou, INTECH open source publishing, 2015, DOI: 10.5772/60519を参照されたい)。
【0063】
「Clq結合」という用語は、その抗原に結合した抗体に対するClqの結合を意味する。抗体のその抗原への結合は、本明細書において報告される方法およびアッセイ法内で、非限定的にインビボおよびインビトロである。
【0064】
1つの態様において、Clq結合は、(i)マルチウェルプレート(例えば、96ウェルELISAプレート)を一晩、4℃で、0.007〜25.0 mg/mLに及ぶ濃度のPBS中の抗体でコーティングする工程、(ii)プレートを洗浄する工程、(iii)残った反応性表面残基を0.5×PBS/0.025% Tween 20/0.1%ゼラチンでブロッキングする工程、(iv)マルチウェルプレートを1時間、37℃で、(a)3%のプールしたヒト血清、(b)間に洗浄を含んで、ウサギ抗ヒトClq、および(c)HRPにコンジュゲートされたブタ抗ウサギIgG抗体とインキュベートする工程、(v)約30分間、1 mg/mL 2,2'-アジノ-ビス3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸とインキュベートする工程、vi)100μLの2%シュウ酸を添加する工程、ならびに(vii)マイクロプレートリーダーにおいて405 nmで吸光度を測定する工程を含む方法において測定される。
【0065】
抗体のC1q結合は、本明細書において、高い結合力の結合を結果としてもたらす多価相互作用を意味する。
【0066】
「CH2ドメイン」という用語は、おおよそEU位置231番からEU位置340番(KabatによるEU番号付与システム)まで伸びる、抗体重鎖ポリペプチドの部分を意味する。1つの態様において、CH2ドメインは、
のアミノ酸配列を有する。
【0067】
「CH3ドメイン」という用語は、おおよそEU位置341番からEU位置446番まで伸びる、抗体重鎖ポリペプチドの部分を意味する。1つの態様において、CH3ドメインは、
のアミノ酸配列を有する。
【0068】
抗体の「クラス」という用語は、その重鎖が有する定常ドメインまたは定常領域のタイプを意味する。抗体には5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらの内のいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1、およびIgA
2にさらに分類され得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、α、δ、ε、γ、およびμとそれぞれ呼ばれる。
【0069】
本明細書において使用される場合の「含む」という用語は、「からなる」という用語を明白に含む。
【0070】
「補体活性化」という用語は、古典的補体経路の開始を意味する。この開始は、補体成分Clqの抗体-抗原複合体への結合に起因する。Clqは、古典的補体カスケードにおける最初のタンパク質である。これは、補体成分C3を切断してC3bおよびC3aにする活性C3転換酵素の形成を結果としてもたらす、一連の反応に関与している。C3bは、膜C5に結合して、いわゆるC5bを結果としてもたらし、これが、補体活性化の後期の事象(C5b、C6、C7、C8、およびC9の膜攻撃複合体(MAC)へのアセンブリ)を誘発する。最終的に、補体カスケードは、細胞溶解を引き起こす、細胞壁における孔の形成を結果としてもたらす(補体依存性細胞障害性、CDCとしても知られる)。
【0071】
「補体依存性細胞障害性(CDC)」という用語は、補体の存在下で、本明細書において報告される抗体によって誘導される細胞の溶解を意味する。CDCは、1つの態様において、補体の存在下で、本明細書において報告される抗体でのCD19発現ヒト内皮細胞の処理によって測定される。細胞は、1つの態様において、カルセインで標識される。CDCは、抗体が、30μg/mlの濃度で標的細胞の20%またはそれ以上の溶解を誘導する場合に見出される。補体因子C1qへの結合は、ELISAにおいて測定することができる。そのようなアッセイ法において、原則的には、ELISAプレートを、濃度範囲の抗体でコーティングし、それに、精製されたヒトC1qまたはヒト血清を添加する。C1q結合を、C1qに対する抗体、およびその後のペルオキシダーゼ標識コンジュゲートによって検出する。結合(最大結合Bmax)の検出を、ペルオキシダーゼの基質ABTS(登録商標)(2,2'-アジノ-ジ-[3-エチルベンズチアゾリン-6-スルホナート(6)])について405 nmでの光学濃度(OD405)として測定する。
【0072】
「に由来する」という用語は、それぞれのアミノ酸配列が、同じアミノ酸配列を含むか、またはアミノ酸配列変更を含有するか、または親アミノ酸配列の短縮されたバリアントもしくは融合されたバリアントであることを意味する。
【0073】
「エフェクター機能」とは、抗体クラスと共に変動する、抗体のFc領域に帰するそれらの生物学的活性を意味する。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合および補体依存性細胞障害性(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞障害性(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;ならびにB細胞活性化が含まれる。
【0074】
Fc受容体結合依存性エフェクター機能は、抗体のFc領域と、造血細胞上の特化された細胞表面受容体であるFc受容体(FcR)との相互作用によって媒介され得る。Fc受容体は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、免疫複合体の食作用による抗原コーティングされた病原体の除去、ならびに、抗体依存性細胞媒介性細胞障害性(ADCC)を介した、対応する抗体でコーティングされた赤血球および様々な他の細胞性標的(例えば、腫瘍細胞)の溶解の両方を媒介することが示されている(例えば、Van de Winkel, J.G. and Anderson, C.L., J. Leukoc. Biol. 49 (1991) 511-524を参照されたい)。FcRは、免疫グロブリンアイソタイプに対するそれらの特異性によって定義され、IgG抗体に対するFc受容体は、FcγRと呼ばれる。Fc受容体結合は、例えば、Ravetch, J.V. and Kinet, J.P., Annu. Rev. Immunol. 9 (1991) 457-492;Capel, P.J., et al., Immunomethods 4 (1994) 25-34;de Haas, M., et al., J. Lab. Clin. Med. 126 (1995) 330-341;およびGessner, J.E., et al., Ann. Hematol. 76 (1998) 231-248に記載されている。
【0075】
IgG抗体のFc領域に対する受容体(FcγR)の架橋は、食作用、抗体依存性細胞性細胞障害性、および炎症性媒介物質の放出、ならびに、免疫複合体クリアランス、および抗体産生の調節を含む、多種多様のエフェクター機能を誘発する。ヒトにおいて、以下である3つのクラスのFcγRが特徴決定されている。
‐ FcγRI(CD64)は、単量体IgGに高親和性で結合し、マクロファージ、単球、好中球、および好酸球上に発現している。アミノ酸残基E233〜G236、P238、D265、N297、A327、およびP329(KabatのEU指標による番号付与)のうちの少なくとも1つでのFc領域IgGにおける修飾は、FcγRIに対する結合を減少させる。IgG1中およびIgG4中に置換された、位置233〜236のIgG2残基は、FcγRIに対する結合を10
3倍減少させ、抗体感作赤血球に対するヒト単球応答を除去した(Armour, K.L., et al., Eur. J. Immunol. 29 (1999) 2613-2624)。
‐ FcγRII(CD32)は、中程度から低い親和性で複合型IgGに結合し、広く発現している。この受容体は、FcγRIIAおよびFcγRIIBの2つのサブタイプに分けることができる。FcγRIIAは、死滅に関与する多くの細胞(例えば、マクロファージ、単球、好中球)上で見出され、死滅プロセスを活性化することができるように見える。FcγRIIBは、阻害性プロセスにおいて役割を果たすように見え、B細胞、マクロファージ上、ならびに肥満細胞および好酸球上で見出される。B細胞上では、さらなる免疫グロブリン産生、および、例えばIgEクラスへのアイソタイプスイッチングを抑制するために機能するように見える。マクロファージ上で、FcγRIIBは、FcγRIIAを通して媒介されるような食作用を阻害するように働く。好酸球および肥満細胞上で、B型は、その別々の受容体へのIgE結合を通したこれらの細胞の活性化を抑制するように手助けする場合がある。FcγRIIAに対する結合の減少が、例えば、アミノ酸残基E233〜G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、R292、およびK414(KabatのEU指標による番号付与)のうちの少なくとも1つに変異を有するIgG Fc領域を含む抗体について見出されている。
‐ FcγRIII(CD16)は、中程度から低い親和性でIgGに結合し、2つのタイプとして存在する。FcγRIIIAは、NK細胞、マクロファージ、好酸球、ならびにいくつかの単球およびT細胞上で見出され、ADCCを媒介する。FcγRIIIBは、好中球上に高発現している。FcγRIIIAに対する結合の減少が、例えば、アミノ酸残基E233〜G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、S239、E269、E293、Y296、V303、A327、K338、およびD376(KabatのEU指標による番号付与)のうちの少なくとも1つに変異を有するIgG Fc領域を含む抗体について見出されている。
【0076】
Fc受容体に対するヒトIgG1上の結合部位のマッピング、上述の変異部位、ならびにFcγRIおよびFcγRIIAに対する結合を測定するための方法は、Shields, R.L., et al. J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604に記載されている。
【0077】
本明細書における「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部分を含有する、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するように使用される。この用語は、ネイティブ配列Fc領域およびバリアントFc領域を含む。1つの態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、重鎖のCys226またはPro230から、カルボキシル末端まで伸びる。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在する場合もあれば存在しない場合もある。
【0078】
「ヒト由来のFc領域」という用語は、ヒンジ領域の少なくとも一部、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含有する、ヒト由来の免疫グロブリン重鎖のC末端領域を意味する。1つの態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、重鎖のCys226またはPro230から、カルボキシル末端まで伸びる。1つの態様において、Fc領域は、SEQ ID NO: 22のアミノ酸配列を有する。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在する場合もあれば存在しない場合もある。
【0079】
本明細書において報告される方法で使用される抗体は、Fc領域、1つの態様において、ヒト起源に由来するFc領域を含む。1つの態様において、Fc領域は、ヒト定常領域のすべての部分を含む。抗体のFc領域は、補体活性化、C1q結合、C3活性化、およびFc受容体結合に直接関与している。補体系に対する抗体の影響は、ある特定の条件に依存しているが、C1qへの結合は、Fc領域中の定義された結合部位によって引き起こされる。そのような結合部位は、最先端技術において公知であり、例えば、Lukas, T.J., et al., J. Immunol. 127 (1981) 2555-2560;Brunhouse, R., and Cebra, J.J., Mol. Immunol. 16 (1979) 907-917;Burton, D.R., et al., Nature 288 (1980) 338-344;Thommesen, J.E., et al., Mol. Immunol. 37 (2000) 995-1004;Idusogie, E.E., et al., J. Immunol. 164 (2000) 4178-4184;Hezareh, M., et al., J. Virol. 75 (2001) 12161-12168;Morgan, A., et al., Immunology 86 (1995) 319-324;およびEP 0 307 434によって記載されている。そのような結合部位は、例えば、L234、L235、D270、N297、E318、K320、K322、P331、およびP329(KabatのEU指標による番号付与)である。サブクラスIgG1、IgG2、およびIgG3の抗体が通常、補体活性化、C1q結合、およびC3活性化を示すのに対して、IgG4は、補体系を活性化せず、C1qに結合せず、かつC3を活性化しない。「抗体のFc領域」は、当業者に周知の用語であり、抗体のパパイン切断を基礎として定義される。1つの態様において、Fc領域はヒトFc領域である。1つの態様において、Fc領域は、変異S228Pおよび/またはL235E(KabatのEU指標による番号付与)を含むヒトIgG4サブクラスのものである。1つの態様において、Fc領域は、変異L234AおよびL235A(KabatのEU指標による番号付与)を含むヒトIgG1サブクラスのものである。
【0080】
「完全長抗体」という用語は、天然の抗体構造に実質的に同様の構造を有するか、または本明細書において定義するFc領域を含む重鎖を有する抗体を意味する。
【0081】
「ヒンジ領域」という用語は、CH1ドメインとCH2ドメインを連結する、例えばKabatのEU番号システムによれば216位あたりから230位あたりまでの、抗体重鎖ポリペプチド部分を意味する。通常、ヒンジ領域は、アミノ酸配列が同一である2つのポリペプチドからなる二量体分子である。一般に、ヒンジ領域は約25個のアミノ酸残基を含み、可撓性であるため、抗原結合領域が独立に動くことが可能である。ヒンジ領域は、3つのドメイン:上部ヒンジドメイン、中央部ヒンジドメイン、下部ヒンジドメインに細分することができる(Roux, et al., J. Immunol. 161 (1998) 4083)。
【0082】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」という用語は同義的に使用され、外来性核酸が導入された細胞を、そのような細胞の子孫を含めて意味する。宿主細胞には、「形質転換体」および「形質転換細胞」が含まれ、初代形質転換細胞およびそれに由来する子孫が継代の回数に関わらず含まれる。子孫の核酸内容は親細胞と完全に同一でなくてもよく、変異を含んでもよい。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングまたは選択されたのと同じ機能または生物活性を有する変異子孫は、本明細書に含まれる。
【0083】
「ヒト化」抗体とは、非ヒト超可変領域(HVR)に由来するアミノ酸残基およびフレームワーク領域(FR)に由来するアミノ酸残基を含むキメラ抗体を意味する。特定の態様において、ヒト化抗体は、HVR(例えばCDR)のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト抗体のものに相当し、FRのすべてまたは実質的にすべてがヒト抗体のものに相当する、少なくとも1つ、および典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含む。ヒト化抗体は、ヒト抗体に由来する抗体定常領域についての少なくとも1つの部分を任意で含んでよい。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化型」とは、ヒト化を受けた抗体を意味する。
【0084】
本明細書において使用される「超可変領域」または「HVR」という用語は、配列(「相補性決定領域」もしくは「CDR」)が超可変性であり、かつ/または構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成し、かつ/または抗原接触残基(「抗原接触部」)を含有する、アミノ酸残基ストレッチを含む抗体可変ドメインの領域のそれぞれを意味する。一般に、抗体は、6個のHVR;VH中の3個(H1、H2、H3)、およびVL中の3個(L1、L2、L3)を含む。
【0085】
HVRは、
(a)アミノ酸残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、91〜96(L3)、26〜32(H1)、53〜55(H2)、および96〜101(H3)に存在する超可変ループ(Chothia, C. and Lesk, A.M., J. Mol. Biol. 196 (1987) 901-917);
(b)アミノ酸残基24〜34(L1)、50〜56(L2)、89〜97(L3)、31〜35b(H1)、50〜65(H2)、および95〜102(H3)に存在するCDR(Kabat, E.A. et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991), NIH Publication 91-3242.);
(c)アミノ酸残基27c〜36(L1)、46〜55(L2)、89〜96(L3)、30〜35b(H1)、47〜58(H2)、および93〜101(H3)に存在する抗原接触部(MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996));ならびに
(d)アミノ酸残基46〜56(L2)、47〜56(L2)、48〜56(L2)、49〜56(L2)、26〜35(H1)、26〜35b(H1)、49〜65(H2)、93〜102(H3)、および94〜102(H3)を含む、(a)、(b)、および/または(c)の組合せ
を含む。
【0086】
別段の定めが無い限り、本明細書において、可変ドメイン中のHVR残基および他の残基(例えばFR残基)は上記のKabat et al.に従って番号を付与する。
【0087】
「個体」または「対象」は哺乳動物である。哺乳動物には、飼い慣らされた動物(例えば、雌ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類、例えばサル)、ウサギ、およびげっ歯動物(例えば、マウス、ハムスター、およびラット)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。特定の態様において、個体または対象はヒトである。
【0088】
「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体集団から得られた抗体を意味する。すなわち、この集団を構成する個々の抗体は、存在し得るバリアント抗体を除いて、同一であり、かつ/または同じエピトープに結合する。例えば、天然に存在する変異を含むか、またはモノクローナル抗体調製物を作製する間に発生するこのようなバリアントは通常、少量で存在する。様々な決定基(エピトープ)を対象とする様々な抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、1つの抗原上の単一の決定基を対象とする。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られたものであるという抗体の特徴を示し、いずれかの特定の方法による抗体の作製を必要とするとして構成されるべきではない。例えば、本発明に従って使用するためのモノクローナル抗体は、限定されるわけではないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部分を含むトランスジェニック動物を使用する方法を含む、様々な技術によって作製することができ、モノクローナル抗体を作製するためのこのような方法および他の例示的な方法は、本明細書において説明される。
【0089】
「ネイティブ抗体」とは、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を意味する。例えば、ネイティブIgG抗体は、ジスルフィド結合されている2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に向かって、各重鎖は、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)とそれに続く3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を有する。同様に、N末端からC末端に向かって、各軽鎖は、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)とそれに続く軽鎖定常(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプの内の1つに割り当てることができる。
【0090】
「天然に存在しないアミノ酸残基」という用語は、ポリペプチド鎖中の隣接したアミノ酸残基に共有結合することができる、上記に挙げた天然に存在するアミノ酸残基以外のアミノ酸残基を意味する。天然に存在しないアミノ酸残基の例は、ノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリンである。さらなる例は、Ellman, et al., Meth. Enzym. 202 (1991) 301-336に挙げられている。天然に存在しないアミノ酸残基を合成するための例示的な方法は、例えば、Noren, et al., Science 244 (1989) 182およびEllman et al.、前記において報告されている。
【0091】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」とは、配列を整列させ、かつ必要な場合にはギャップを導入して、最大の配列同一性パーセントを実現した後の、かつ、いかなる保存的置換も配列同一性の一部分とみなさない、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアライメントは、当技術分野の技能の範囲内である様々な方法において、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなど公的に利用可能なコンピューターソフトウェアを用いて、実現することができる。当業者は、比較される配列の全長に渡って最大限のアライメントを実現するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメーターを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的のためには、配列比較コンピュータープログラムALIGN-2を用いて、アミノ酸配列同一性%の値を得る。配列比較コンピュータープログラムALIGN-2は、Genentech, Inc.の著作物であり、ソースコードはユーザー向け文書と共にU.S. Copyright Office, Washington D.C., 20559に提出され、米国著作権登録番号(U.S. Copyright Registration No.)TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech, Inc., South San Francisco, Californiaから公的に入手可能であり、またはソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティング・システムにおける使用向けにコンパイルされるべきである。配列比較パラメーターはすべて、ALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。
【0092】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較のために使用される状況において、所与のアミノ酸配列Bに対する、それとの、またはそれに比較した、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bに対する、それとの、またはそれ比較してある特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、または含む所与のアミノ酸配列Aと表現することもできる)は、次のとおりに算出される。
100×比X/Y
上式で、Xは、配列アラインメントプログラムALIGN-2によって、そのプログラムによるAおよびBのアラインメントにおいて同一のマッチとして採点されたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性%と等しくならないが認識されると考えられる。別段の記載が特に無い限り、本明細書において使用されるアミノ酸配列同一性%の値はすべて、すぐ前の節で説明したようにして、ALIGN-2コンピュータープログラムを用いて得られる。
【0093】
「薬学的製剤」という用語は、その中に含まれる有効成分の生物活性が有効になるのを可能にするような形態で存在し、かつその製剤が投与されると考えられる対象に対して許容されないほど毒性である追加成分を含まない、調製物を意味する。
【0094】
「薬学的に許容される担体」とは、対象にとって非毒性である、薬学的製剤中の有効成分以外の成分を意味する。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定化剤、または保存剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0095】
本明細書において使用される場合、「治療(treatment)」(およびその文法的変形、例えば「治療する(treat)」または「治療すること(treating)」)とは、治療される個体の自然経過を変化させようとする臨床的介入を意味し、予防のため、または臨床的病状の過程のいずれかに実施され得る。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の軽減、疾患の直接的または間接的な任意の病理学的転帰の減少、転移の予防、疾患の進行速度の低下、疾患状態の改善または緩和、および寛解または予後改善が含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、本発明の抗体は、疾患の発症を遅らせるため、または疾患の進行を遅くするために使用される。
【0096】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体が抗原に結合するのに関与している抗体重鎖または抗体軽鎖のドメインを意味する。一般に、ネイティブ抗体の重鎖および軽鎖(それぞれVHおよびVL)の可変ドメインは、4つの保存されているフレームワーク領域(FR)および3つの超可変領域(HVR)を各ドメインが含む、類似した構造を有する。(例えば、Kindt, T.J., et al., Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., N.Y. (2007), page 91を参照されたい)。1つのVHドメインまたはVLドメインは、抗原結合特異性を与えるのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、その抗原に結合する抗体に由来するVHドメインまたはVLドメインを用いて、相補的なVLドメインまたはVHドメインのライブラリーをそれぞれスクリーニングして、単離することができる。(例えば、Portolano, S., et al., J. Immunol. 150 (1993) 880-887; Clackson, T., et al., Nature 352 (1991) 624-628を参照されたい。)
【0097】
「バリアント」、「修飾抗体」、および「修飾融合ポリペプチド」という用語は、親分子のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有する分子を意味する。典型的には、このような分子は、1つまたは複数の改変、挿入、または欠失を有する。1つの態様において、修飾抗体または修飾融合ポリペプチドは、天然に存在しないFc領域についての少なくとも1つの部分を含むアミノ酸配列を含む。このような分子の、親抗体または親融合ポリペプチドとの配列同一性は、100%未満である。1つの態様において、バリアント抗体またはバリアント融合ポリペプチドは、親抗体または親融合ポリペプチドのアミノ酸配列とのアミノ酸配列同一性が約75%〜100%未満、特に約80%〜100%未満、特に約85%〜100%未満、特に約90%〜100%未満、および特に約95%〜100%未満であるアミノ酸配列を有する。1つの態様において、親抗体または親融合ポリペプチドとバリアント抗体またはバリアント融合ポリペプチドとは、1つの(単一の)、2つの、または3つのアミノ酸残基が異なる。
【0098】
II.組成物および方法
典型的には、治療薬として使用されることが意図される非ヒト抗体を、ヒト化して、親の非ヒト抗体の特異性および親和性を保持しつつ、ヒトに対する免疫原性を減少させる。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDR(またはその一部分)が非ヒト抗体に由来し、かつFR(またはその一部分)がヒト抗体配列に由来する、1つまたは複数の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は、任意で、ヒト定常領域の少なくとも一部分または完全長ヒト定常領域も含むことになる。いくつかの態様において、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性または親和性を回復させるためまたは改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換されている。
【0099】
抗体は、Fcγ受容体またはFcRnなどのある特定のFc受容体に対する、および補体系、すなわちC1qに対する、2つの結合部位を含有する。1つの結合部位は、各重鎖Fc領域中にある。C1qに対するFc領域の結合は、補体依存性細胞障害性(CDC)を媒介し、ここで、C1qは、セリンプロテアーゼC1rおよびC1sと複合体を形成して、C1複合体を形成する。
【0100】
C1qの三次元構造は、抗体結合領域を含む6個の球状頭部を含む、チューリップの束の様である(例えば、Perkins et al., Biochem. J. 228 (1985) 13-26;Poon et al., J. Mol. Biol. 168 (1983) 563-577;Reid et al., Biochem. Soc. Trans. 11 (1983) 1-12;Weiss et al., J. Mol. Biol. 189 (1986) 573-581を参照されたい)。より詳細には、C1qは、それぞれ6個のAサブユニット、6個のBサブユニット、および6個のCサブユニットの、18個のサブユニットを含む。Aサブユニット、Bサブユニット、およびCサブユニットの各三量体が、Fc領域結合部位を形成する。したがって、完全にアセンブルしたC1qは、6個のFc領域に結合することができる。
【0101】
異なるIgGサブクラスは、C1qに対して異なる親和性を有し、例えば、IgG1およびIgG3は、強いC1q結合を示すのに対し、IgG2およびIgG4は、補体への結合が不十分である。それによって、IgG1およびIgG3は、強いCDCを示し、IgG2は、弱いCDCを示し、かつIgG4は、いかなるCDCも示さない。
【0102】
C1qに対するFc領域の結合には、ヒンジ領域およびCH2ドメイン中の残基が関与している。これらの領域は、IgG1/IgG3において、IgG2/IgG4と比べて異なるアミノ酸配列を有する。例えば、残基233〜236(KabatのEU指標による番号付与)の交換は、CDCに大いに影響を及ぼした(例えば、Armour, K.L., Eur. J. Immunol. 29 (1999) 2613-2624;およびShields et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604を参照されたい)。さらなる変異誘発研究により、ヒトIgG上のC1q結合部位は、アミノ酸残基D270、K322、K326、P329、およびP331、ならびにE333を包含することが特定された(Idusogie et al., J. Immunol. 164 (2000) 4178-4184;Idusogie et al., J. Immunol. 166 (2001) 2571-2575)。
【0103】
抗体Fc領域は、さらに、アミノ酸残基N297に保存されたN結合型グリコシル化部位を有する。このグリコシル化は、効率的なC1q-Fc領域相互作用のために必要とされる。N297炭水化物の組成における修飾またはその除去は、結合に影響を及ぼす(例えば、Umana et al., Nat. Biotechnol. 17 (1999) 176-180;Davies et al., Biotechnol. Bioeng. 74 (2001) 288-294;Mimura et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 45539-45547;Radaev et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 16478-16483;Shields et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604;Shields et al., J. Biol. Chem. 277 (2002) 26733-26740;Simmons et al., J. Immunol. Meth. 263 (2002) 133-147を参照されたい)。
【0104】
C1qに対する単量体IgGの親和性は、かなり弱いため(約10
-4 Mの親和性)、補体活性化のためには、単一の抗体Fc領域よりも多くが必要とされる(例えば、Sledge et al., J. Biol. Chem. 248 (1973) 2818-2813;Hughes-Jones et al., Mol. Immunol. 16 (1979) 697-701を参照されたい)。多価C1qの結合は、免疫グロブリン分子の抗原に基づく会合によって増大され、したがって補体が活性化される(約10
-8 Mの親和性)(例えば、Burton et al., Mol. Immunol. 22 (1990) 161-206を参照されたい)。
【0105】
公知の方法の組合せは、C1qアフィニティークロマトグラフィーのものに匹敵する解析結果を達成することができるが、複雑さおよび労力の増大という犠牲を払う。
【0106】
IgG-C1q相互作用のSPR解析により、ある試料の予想されたまたは異常な結合特性を示す定性的結果が提供されるが、異常な結合の原因についての手がかりも、異常な結合を有する抗体の量の定量的推定も与えられない。質量分析法もまた、IgG分子の乱された完全性の定性的情報を与えるにすぎない。一方、C1qアフィニティークロマトグラフィーにより、適切な生理的条件下で、試料において見出される様々なピークの分離を微調整するように必要とされる場合に調整することができるイオン強度勾配で、試料を解析することが可能になる。様々なピークを、そのそれぞれの曲線下面積によって定量することができ、各ピークに対応する溶出物は、例えば、官能性の決定、再クロマトグラフィー、または質量分析解析のための二次的解析を受けることができる。
【0107】
さらに、現在公知の多様な疾患、およびまた将来明らかになると考えられる疾患を処置するための治療レジメンを提供するために、目的に合わせて作製された(tailor made)抗体ならびにFc領域含有ポリペプチドが必要である。
【0108】
抗体またはFc部分含有融合ポリペプチドのC1q結合の特徴を目的に合わせて作製するために、Fc領域媒介性エフェクター機能に関与する残基を修飾し、結果として生じる修飾された抗体および融合ポリペプチドを試験しなければならない。必要とされる特徴が満たされていない場合、同じプロセスが再び実施される。
【0109】
1つの態様において、Fc領域は、C1qへの結合を媒介する完全長抗体重鎖の画分である。画分は、重鎖定常領域中の様々な相互作用残基に関連する1つまたは2つのセグメント(特にヒンジおよびCH2ドメイン)を含むことができる。
【0110】
したがって、単純なクロマトグラフィー法に基づいて修飾抗体の特徴的な特性の変化を予測し、かつ修飾抗体の特徴の変化を解析するのにインビボ研究を必要としない方法を提供することは、有利であると考えられる。
【0111】
クロマトグラフィーリガンドとして本明細書において報告される融合ポリペプチドを用いて、密接に関連した抗体種、すなわち、単一のまたは限定された数のアミノ酸残基が異なり、それがC1qとの相互作用に影響を及ぼす抗体種を、分離し、単離し、かつそのインビボ特性に関して特徴決定することが現在可能であることが判明している。
【0112】
したがって、本明細書において報告される方法を用いて、1つの親抗体の異なるバリアントを分離すること、およびこれらのバリアント間の特定の比を決定することが可能である。これは、現在公知の方法では可能ではなく、それは、これらが修飾体の和を提供するだけであり、個々の種を提供しないためである(すなわち、親ならびにバリアント1およびバリアント2およびバリアント1/2の混合物について、質量分析法は、バリアント1を含む分子、すなわち単一の変種を含むバリアント(1)およびまた第2の変種も含むバリアント(1/2)の合計を提供する)。
【0113】
所与の条件について、野生型IgG1抗体は、本明細書において提供される実施例に概略が述べられているような条件下で、約25〜28分の保持時間を有することが判明している。
【0114】
親の無修飾Fc領域を有する抗体と比べて、C1q結合が減少した修飾Fc領域を有する抗体はより短い保持時間を有するのに対し、C1q結合が増強した修飾Fc領域を有する抗体はより長い保持時間を有する。
【0115】
本明細書において報告される1つの局面は、式I:
TAG-X1-C1qA-X2-C1qB-X3-C1qC-X4 (式I)
の融合ポリペプチドであり、
式中、
X1は、第1のペプチド性リンカーを表し、
X2は、第2のペプチド性リンカーを表し、
X3は、第3のペプチド性リンカーを表し、
X4は、第4のペプチド性リンカーを表し、
X1、X2、X3、X4は互いに独立して、存在するかまたは存在しないかのいずれかであり、
TAGはアミノ酸配列タグであり、
TAGは、存在してもよいかまたは存在しなくてもよく、
C1qAはSEQ ID NO: 01の断片であり、
C1qBはSEQ ID NO: 03の断片であり、
C1qCはSEQ ID NO: 05の断片であり、かつ
-はペプチド結合を表す。
【0116】
C1q鎖A(C1QA、補体C1q亜成分サブユニットA)は、SEQ ID NO: 01のアミノ酸配列を有する(UniProtKB - P02745 (C1QA_HUMAN))。
【0117】
C1q鎖B(C1QB、補体C1q亜成分サブユニットB)は、SEQ ID NO: 03のアミノ酸配列を有する(UniProtKB - P02746 (C1QB_HUMAN))。
【0118】
C1q鎖C(C1QC、補体C1q亜成分サブユニットC)は、SEQ ID NO: 05のアミノ酸配列を有する(UniProtKB - P02747 (C1QC_HUMAN))。
【0119】
C1qは、18本のポリペプチド鎖:6本のA鎖、6本のB鎖、および6本のC鎖から構成されている。A鎖、B鎖、およびC鎖は、ヒトゲノムにおいて染色体1上にA-C-Bの順序で配置されている。それとは対照的に、サブユニットは、本明細書において報告される融合ポリペプチド中で、A-B-Cの順序の配置である。
【0120】
補体C1q亜成分サブユニットのそれぞれは、コラーゲン様ドメインおよびC1qドメインを含む。サブユニットAおよびBのコラーゲン様ドメインの残基4(SEQ ID NO: 01および03の残基4)の間で、ジスルフィド結合が形成される。2個のCサブユニットのコラーゲン様ドメインの残基4(SEQ ID NO: 05の残基4)の間でも、ジスルフィド結合が形成される。
【0121】
本明細書において報告される融合ポリペプチドにおいて、上述のシステイン残基をもはや含まない3個のサブユニットの断片が融合した場合、天然に存在するジスルフィド結合ももはや形成され得ない。
【0122】
本明細書において報告される1つの局面は、式I:
TAG-X1-C1qA-X2-C1qB-X3-C1qC-X4 (式I)
の固定化された融合ポリペプチドの、アフィニティークロマトグラフィーリガンドとしての使用であり、
式中、
X1は、第1のペプチド性リンカーを表し、
X2は、第2のペプチド性リンカーを表し、
X3は、第3のペプチド性リンカーを表し、
X4は、第4のペプチド性リンカーを表し、
X1、X2、X3、X4は互いに独立して、存在するかまたは存在しないかのいずれかであり、
TAGはアミノ酸配列タグであり、
TAGは、存在してもよいかまたは存在しなくてもよく、
C1qAはSEQ ID NO: 01の断片であり、
C1qBはSEQ ID NO: 03の断片であり、
C1qCはSEQ ID NO: 05の断片であり、かつ
-はペプチド結合を表す。
【0123】
本明細書において報告される1つの局面は、式I:
TAG-X1-C1qA-X2-C1qB-X3-C1qC-X4 (式I)
の固定化された融合ポリペプチドの、抗体糖型(glycoform)の分離のためのアフィニティークロマトグラフィーリガンドとしての使用であり、
式中、
X1は、第1のペプチド性リンカーを表し、
X2は、第2のペプチド性リンカーを表し、
X3は、第3のペプチド性リンカーを表し、
X4は、第4のペプチド性リンカーを表し、
X1、X2、X3、X4は互いに独立して、存在するかまたは存在しないかのいずれかであり、
TAGはアミノ酸配列タグであり、
TAGは、存在してもよいかまたは存在しなくてもよく、
C1qAはSEQ ID NO: 01の断片であり、
C1qBはSEQ ID NO: 03の断片であり、
C1qCはSEQ ID NO: 05の断片であり、かつ
-はペプチド結合を表す。
【0124】
抗体の糖型の和は、「グリコプロファイル」または「グリコシル化プロファイル」として表される。これらの用語は、グリコシル化ポリペプチドのグリカンの特性を意味する。これらの特性は、グリコシル化部位、またはグリコシル化部位の占有率、または、ポリペプチドのグリカンおよび/もしくは非糖部分の同一性、構造、組成、もしくは量、または特定の糖型の同一性および量である。
【0125】
本明細書において使用される場合、「グリカン」とは糖である。グリカンは、糖残基の単量体または重合体であることができるが、典型的には少なくとも3個の糖を含有し、かつ直鎖状または分枝状であることができる。グリカンは、天然の糖残基(例えば、グルコース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルノイラミン酸、ガラクトース、マンノース、フコース、ヘキソース、アラビノース、リボース、キシロースなど)、および/または修飾された糖(例えば、2'-フルオロリボース、2'-デオキシリボース、ホスホマンノース、6'-スルホN-アセチルグルコサミンなど)を含み得る。「グリカン」という用語は、糖残基のホモポリマーおよびヘテロポリマーを含む。「グリカン」という用語はまた、グリココンジュゲートの(例えば、糖タンパク質、糖脂質、プロテオグリカンなどの)グリカン成分も包含する。用語はまた、グリココンジュゲートから切断されているか、または別の方法で放出されているグリカンを含む、遊離のグリカンも包含する。
【0126】
本明細書において使用される場合、「糖タンパク質調製物」という用語は、個々の糖タンパク質分子のセットを意味し、そのそれぞれは、特定のアミノ酸配列(そのアミノ酸配列は少なくとも1つのグリコシル化部位を含む)および少なくとも1つのグリコシル化部位に共有結合した少なくとも1つのグリカンを有するポリペプチドを含む。糖タンパク質調製物内の特定の糖タンパク質の個々の分子は、典型的に、同一のアミノ酸配列を有するが、少なくとも1つのグリコシル化部位の占有率が異なっていてもよく、かつ/またはグリコシル化部位のうちの少なくとも1つに連結されたグリカンの同一性が異なっていてもよい。すなわち、糖タンパク質調製物は、特定の糖タンパク質の単一の糖型のみを含有してもよいが、より典型的には、複数の糖型を含有する。同じ糖タンパク質の異なる調製物は、存在する糖型の同一性が異なっていてもよく(例えば、1つの調製物中に存在する糖型が、別の調製物中には存在しなくてもよい)、かつ/または異なる糖型の相対量が異なっていてもよい。
【0127】
「糖型」という用語は、糖タンパク質の特定の型を意味するように本明細書において使用される。すなわち、糖タンパク質が、異なるグリカンまたはグリカンのセットに連結される潜在能力を有する特定のポリペプチドを含む場合は、糖タンパク質のそれぞれの異なるバージョン(すなわち、ポリペプチドが特定のグリカンまたはグリカンのセットに連結されている)は、「糖型」と呼ばれる。したがって、「糖型」という用語は、特定のタイプおよび分布の多糖類がそれに結合したポリペプチドのタイプを意味する。例えば、2つのポリペプチドは、それらが、同じ数、種類、および配列の単糖類を有するグリカンを含む、すなわち同じ「グリコシル化プロファイル」を有する場合、同じ糖型のものであると考えられる。
【0128】
また、マトリックスおよびマトリックス結合クロマトグラフィー用官能基を含むアフィニティークロマトグラフィーカラムであって、該マトリックス結合クロマトグラフィー用官能基が、式I:
TAG-X1-C1qA-X2-C1qB-X3-C1qC-X4 (式I)
の融合ポリペプチドを含む、アフィニティークロマトグラフィーカラムが報告され、
式中、
X1は、第1のペプチド性リンカーを表し、
X2は、第2のペプチド性リンカーを表し、
X3は、第3のペプチド性リンカーを表し、
X4は、第4のペプチド性リンカーを表し、
X1、X2、X3、X4は互いに独立して、存在するかまたは存在しないかのいずれかであり、
TAGはアミノ酸配列タグであり、
TAGは、存在してもよいかまたは存在しなくてもよく、
C1qAはSEQ ID NO: 01の断片であり、
C1qBはSEQ ID NO: 03の断片であり、
C1qCはSEQ ID NO: 05の断片であり、かつ
-はペプチド結合を表す。
【0129】
そのようなカラムを用いて、カラム上でC1qと相互作用することができる抗体、特に完全長の4鎖抗体を、特異的に保持することが可能である。Fab断片および非抗体タンパク質は、カラムに結合しない(
図16および17を参照されたい)。
【0130】
本明細書において報告される1つの局面は、抗体と参照抗体の保持時間の比を決定することによる抗体の相対的C1q結合の決定のための、本明細書において報告されるアフィニティークロマトグラフィーカラムの使用である。1つの態様において、参照抗体は、完全長ヒトIgG1抗体である。
【0131】
本明細書において報告される1つの局面は、1つのFc領域の少なくとも1つのC1q結合断片を含む抗体または融合ポリペプチドを分離するための、本明細書において報告されるアフィニティークロマトグラフィーカラムの使用である。
【0132】
本明細書においてまた、1つのFc領域の少なくとも1つのC1q結合断片を含む抗体または融合ポリペプチドを分離するための方法も報告される。
【0133】
1つの態様において、分離は、精製、作製、および解析より選択される。
【0134】
本明細書において報告される1つの局面は、IgG1またはIgG3サブクラスの抗体の、IgG2またはIgG4サブクラスの抗体からの分離のための、本明細書において報告されるアフィニティークロマトグラフィーカラムの使用である。
【0135】
本明細書において報告される1つの局面は、IgG1サブクラスの抗体の、IgG3および/またはIgG2および/またはIgG4サブクラスの抗体からの分離のための、本明細書において報告されるアフィニティークロマトグラフィーカラムの使用である。
【0136】
一般に、本明細書において報告される方法の開始点は、C1qに対する結合を特徴とする親抗体または親融合ポリペプチドである。
【0137】
本明細書において報告される1つの局面は、1つのFc領域の少なくとも1つのC1q結合部分を含む親抗体または親融合ポリペプチドの修飾抗体または修飾融合ポリペプチドのライブラリーを、親抗体または親融合ポリペプチドと比べてC1qに対する結合親和性が変化している該修飾抗体または修飾融合ポリペプチドについてスクリーニングするための、本明細書において報告されるアフィニティークロマトグラフィーカラムの使用である。
【0138】
本明細書において、1つのFc領域の少なくとも1つのC1q結合部分を含む親抗体または親融合ポリペプチドの修飾抗体または修飾融合ポリペプチドのライブラリーを、親抗体または親融合ポリペプチドと比べてC1qに対する結合親和性が変化している該修飾抗体または修飾融合ポリペプチドについてスクリーニングするための方法が報告され、該方法は、以下の段階:
(a)ライブラリーの個々のメンバーおよび親抗体または親融合ポリペプチドを、本明細書において報告されるC1qアフィニティークロマトグラフィーカラムにアプライする段階;
(b)ライブラリーの個々のメンバーを、イオン強度勾配で回収する段階、および個々の保持時間を測定する段階;ならびに
(c)親抗体または親融合ポリペプチドと比べてC1qに対する結合親和性が変化しているそれらの抗体または融合ポリペプチドを選択する段階
を含む。
【0139】
本明細書において、1つのFc領域の少なくとも1つのC1q結合部分を含む抗体または融合ポリペプチドを、ポリペプチドの混合物から精製するための方法が報告され、該方法は、混合物を、本明細書において報告されるC1qアフィニティーカラムにアプライする段階、ならびに、1つのFc領域の少なくとも1つのC1q結合部分を含む抗体または融合ポリペプチドを、イオン強度勾配で溶出させる段階、およびそれによって、抗体または融合ポリペプチドを精製する段階を含む。1つの態様において、Fc領域のC1q結合部分は、ヒトFc領域、またはマウスFc領域、またはカニクイザルFc領域、またはウサギFc領域、またはハムスターFc領域のものである。
【0140】
本明細書において報告される1つの局面は、1つのFc領域の少なくとも1つのC1q結合部分(例えば、IgG1などの免疫グロブリンの定常ドメイン)を含みC1qに対する結合の変化を示す抗体または融合ポリペプチドを同定するための、本明細書において報告されるアフィニティークロマトグラフィーカラムの使用である。
【0141】
本明細書において、1つのFc領域の少なくとも1つのC1q結合部分(例えば、IgG1などの免疫グロブリンの定常ドメイン)を含みC1qに対する結合の変化を示す抗体または融合ポリペプチドを同定するための方法が提供される。
【0142】
そのような修飾された抗体または融合ポリペプチドは、親抗体もしくは親融合ポリペプチドと比べるか、または参照抗体もしくは参照融合タンパク質と比べた場合に、C1qに対して増大したかまたは減少したかいずれかの結合を示し、したがって、それぞれ、増大したかまたは減少したCDC惹起特性を有する。
【0143】
C1qに対する親和性が増大した(すなわち、C1qアフィニティークロマトグラフィーカラム上での保持時間が親抗体または参照抗体と比べて増大した)Fc領域バリアントは、C1qに対する親和性が低下したものと比べて、より高いCDC惹起特性を有することが予測される。C1qに対する親和性が増大したFc領域バリアントは、投与される抗体または融合ポリペプチドのCDCが望ましい場合、哺乳動物、特にヒトを処置する方法において応用される。C1qに対する親和性が低下したFc領域バリアントは、インビボの画像診断などの、投与される抗体または融合ポリペプチドのCDCの減少が望ましい場合、哺乳動物、特にヒトを処置する方法において応用される。
【0144】
1つの態様において、本明細書において報告される抗体または融合ポリペプチドは、少なくとも1つの結合部位(例えば、少なくとも1つの抗原結合部位、または少なくとも1つの受容体結合部位、または少なくとも1つのリガンド結合部位)を含む。1つの態様において、本明細書において報告される抗体または融合ポリペプチドは、少なくとも2つの結合部位(例えば、少なくとも2つの抗原結合部位、もしくは少なくとも2つの受容体結合部位、もしくは少なくとも2つのリガンド結合部位、または少なくとも1つの抗原結合部位および少なくとも1つの受容体結合部位、もしくは少なくとも1つの抗原結合部位および少なくとも1つのリガンド結合部位、もしくは少なくとも1つの受容体結合部位および少なくとも1つのリガンド結合部位)を含む。1つの態様において、本明細書において報告される抗体または融合ポリペプチドは、3つの結合部位(例えば、少なくとも3つの抗原結合部位、もしくは少なくとも3つの受容体結合部位、もしくは少なくとも3つのリガンド結合部位、または前述の少なくとも3種類の結合部位の任意の組合せ)を含む。1つの態様において、本明細書において報告される抗体または融合ポリペプチドは、4つの結合部位を含む。
【0145】
本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、Fc領域の少なくとも1つの部分は、ヒト由来のFc領域についての少なくとも1つの部分である。本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、C1qは、ヒトC1q、カニクイザルC1q、マウスC1q、ラットC1q、ヒツジC1q、イヌC1q、およびウサギC1qより選択される。
【0146】
1つの態様において、Fc領域についての少なくとも1つの部分は、ヒト由来のCH2ドメインの少なくともアミノ酸残基282〜340を含む(SEQ ID NO: 16、Kabatによる番号付与)。1つの態様において、Fc領域についての少なくとも1つの部分は、CH2ドメイン全体(KabatのEU番号付与によれば、ヒト由来抗体重鎖ポリペプチドFc領域のアミノ酸残基231〜340あたり)を含む。1つの態様において、Fc領域についての少なくとも1つの部分は、少なくとも1つのCH2ドメイン、およびヒンジ領域(EU番号付与によれば、ヒト由来抗体重鎖ポリペプチドFc領域のアミノ酸残基216〜230あたり)またはCH3ドメイン(EU番号付与によれば、ヒト由来抗体重鎖ポリペプチドFc領域のアミノ酸残基341〜446あたり; SEQ ID NO: 17)の内の少なくとも1つを含む。1つの態様において、Fc領域についての少なくとも1つの部分は、ヒト由来の抗体重鎖のCH2およびCH3ドメインを含む。1つの態様において、Fc領域についての少なくとも1つの部分は、ヒト由来の抗体重鎖Fc領域のヒンジ、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む。ヒト由来のFc領域またはヒト由来部分のFc領域のC1q結合部分は、IgG1(SEQ ID NO: 18)またはIgG3(SEQ ID NO: 20)などの異なるアイソタイプに由来してよい。1つの態様において、ヒトアイソタイプはIgG1である。
【0147】
親抗体のFc領域または親融合ポリペプチドに含まれるFc領域は、異なる免疫グロブリン分子および/または異なる免疫グロブリンアイソタイプに由来することができる。例えば、親抗体または親融合ポリペプチドは、IgG1アイソタイプ免疫グロブリンに由来するCH2ドメインおよびIgG3アイソタイプ免疫グロブリンに由来するヒンジ領域を含んでよい。また、例えば、親抗体または親融合ポリペプチドは、IgG1免疫グロブリンサブタイプに一部が由来しIgG3免疫グロブリンサブタイプに一部が由来するヒンジ領域を、これらがヒト由来である限りにおいて、含むこともできる。例えば、親抗体または親融合ポリペプチドは、IgG1免疫グロブリンアイソタイプに一部が由来しIgG4免疫グロブリンアイソタイプに一部が由来するキメラヒンジ領域を含むことができる。
【0148】
親抗体または親融合ポリペプチドは、少なくとも1つのFc領域またはその1つのC1q結合部分を含む。1つの態様において、親抗体または親ポリペプチドは、少なくとも1つの結合ドメイン(1つの態様において、抗原結合ドメイン、受容体結合ドメイン、またはリガンド結合ドメインより選択される)をさらに含む。1つの態様において、親抗体または親融合ポリペプチドは、少なくとも1つの結合ドメインおよび少なくとも1つのFc領域または1つのそのC1q結合部分を含む。1つの態様において、親抗体または親融合ポリペプチドは、2つの結合ドメインおよび2つのFc領域または2つのそのC1q結合部分を含む。
【0149】
1つの態様において、本明細書において報告される親抗体または親融合ポリペプチドは、生物学的効果をもたらす標的(1つの態様において、細胞表面受容体に結合できるリガンドまたはリガンドに結合できる細胞表面受容体)に特異的に結合し、少なくとも1つのFc領域またはそのC1q結合部分と共に細胞への負または正のシグナルの伝達を媒介する、少なくとも1つの結合ドメインを含む。1つの態様において、親抗体または親融合ポリペプチドは、減少または除去の標的とされる抗原(1つの態様において、細胞表面抗原または可溶性抗原)に特異的な少なくとも1つの結合ドメインおよび少なくとも1つのFc領域または1つのそのC1q結合部分を含む。
【0150】
標的に特異的に結合する抗体は、適切な抗原(例えば 、精製された抗原、そのような抗原を含む細胞もしくは細胞抽出物、またはそのような抗原をコードするDNA)および任意でアジュバントを皮下または腹腔内に複数回注射することによって、哺乳動物において産生させることができる。
【0151】
1つの態様において、抗体はモノクローナル抗体である。
【0152】
1つの態様において、融合ポリペプチドは、C1q結合部分に機能的に連結された抗体断片(例えば、scFv分子、ミニボディ、四価のミニボディ、またはダイアボディ)を含む。1つの態様において、C1q結合部分は、完全抗体重鎖Fc領域である。
【0153】
1つの態様において、親抗体は二重特異性抗体であるか、または親融合ポリペプチドは、二重特異性抗体または二重特異性抗体断片を含む。
【0154】
1つの態様において、親抗体はキメラ抗体である。
【0155】
1つの態様において、親融合ポリペプチドは、1つのFc領域の少なくとも1つのC1q結合部分を含む。1つの態様において、親融合ポリペプチドは、1つまたは複数の結合ドメインを含み、さらにはこれらのドメインは1つの結合部位をそれぞれ含む。親融合ポリペプチドは、二重特異性(1つの結合部位が第1の標的に特異的に結合し、第2の結合部位が第2の標的に特異的に結合する)または多価(2つの結合部位が同じ標的に特異的に結合する)であることができる。
【0156】
一般に、結合ドメインは、1つのFc領域の少なくとも1つのC1q結合部分のC末端またはN末端に融合される。
【0157】
「固相」とは、非流動性物質を意味し、ポリマー、金属(常磁性粒子、強磁性粒子)、ガラス、およびセラミックなどの材料から作製された粒子(微粒子およびビーズを含む);シリカ、アルミナ、およびポリマーゲルなどのゲル物質;ポリマー、金属、ガラス、および/またはセラミック製であり得るキャピラリー;ゼオライトおよび他の多孔性物質;電極;マイクロタイタープレート;ソリッドストリップ;ならびにキュベット、チューブ、または他の分光計用試料容器が含まれる。「固相」が、ある分子と化学的に相互作用すると意図される少なくとも1つの部分をその表面に含むという点で、アッセイ法の固相構成要素は、不活性な固体表面と区別される。固相は、チップ、チューブ、ストリップ、キュベット、もしくはマイクロタイタープレートなどの静止構成要素であってよく、またはビーズおよび微粒子などの非静止構成要素であってよい。微粒子もまた、ホモジニアスなアッセイ形式のための固体支持体として使用され得る。タンパク質および他の物質の非共有結合または共有結合の両方を可能にする様々な微粒子が、使用され得る。このような粒子には、ポリスチレンおよびポリ(メチルメタクリラート)などのポリマー粒子;金ナノ粒子および金コロイドなどの金粒子;ならびにシリカ、ガラス、および金属酸化物粒子などのセラミック粒子が含まれる。例えば、参照により本明細書に組み入れられるMartin, C.R., et al., Analytical Chemistry-News & Features, May 1 (1998) 322A-327Aを参照されたい。1つの態様において、固体支持体はセファロースである。1つの態様において、固相は磁気ビーズである。
【0158】
1つの態様において、本明細書において報告される融合ポリペプチドのコンジュゲーションは、抗体のアミノ酸骨格のN末端基および/もしくはε-アミノ基(リジン)、異なるリシンのε-アミノ基、カルボキシ官能基、スルフヒドリル官能基、ヒドロキシル官能基、および/もしくはフェノール官能基、ならびに/または抗体の炭水化物構造の糖アルコール基を介した化学的結合によって実施される。
【0159】
1つの態様において、本明細書において報告される融合ポリペプチドは、特異的結合対を介して固相にコンジュゲートされている。1つの態様において、融合ポリペプチドはビオチンにコンジュゲートされ、固体支持体に固定化されたアビジンまたはストレプトアビジンを介して、固体支持体への固定化が行われる。
【0160】
1つの態様において、固相は磁気ビーズである。
【0161】
1つの態様において、特異的結合対(第1の構成要素/第2の構成要素)は、ストレプトアビジンまたはアビジン/ビオチン、抗体/抗原(例えば、Hermanson, G.T., et al., Bioconjugate Techniques, Academic Press (1996)を参照されたい)、レクチン/多糖、ステロイド/ステロイド結合タンパク質、ホルモン/ホルモン受容体、酵素/基質、IgG/プロテインAおよび/またはプロテインGなどより選択される。
【0162】
本明細書において報告される使用および方法における、本明細書において報告されるC1qアフィニティーカラムに結合した抗体の回収は、直線勾配溶離による。1つの態様において、直線勾配は、イオン強度勾配または導電率勾配である。
【0163】
原則的には、本明細書において報告される方法において、任意の緩衝物質を使用することができる。
【0164】
以下の例示的データは、以下の表による溶離液A(20 mM HEPES緩衝液、pH 7.4)および溶離液B(500 mM NaClを加えた20 mM HEPES緩衝液、pH 7.4)の直線塩勾配(イオン強度/導電率勾配)を用いて、C1qアフィニティークロマトグラフィーカラム(長さ:50 mm;直径:5 mm;総容積:1 ml;1 mg融合タンパク質/mlの固相)で測定した。
【0166】
上記で概略が述べられた溶出法を用いて、本明細書において報告されるC1qアフィニティークロマトグラフィーカラムで得られた様々なIgGサブクラスの抗体の保持時間を、以下の表に示す(
図1も参照されたい)。
【0168】
図8から、IgG1またはIgG4クラスの抗体を用いたカラムローディングと、検出されたピーク面積との間の直線関係が理解され得る。
図9に、同じC1qカラム上であるが異なるローディングを用いて得られたクロマトグラムのオーバーレイを示す。直線性は、1 mlのカラム材料当たりにコンジュゲート/固定化された3 mgの本明細書において報告される融合タンパク質を用いて、1 mlのカラム材料当たり1000μgのローディングまで観察することができる(
図10を参照されたい)。この直線性は、1 mlのカラム材料/固相当たりに固定化された、1 mg/ml〜6 mg/mlの間の融合タンパク質で観察することができる(
図11を参照されたい)。したがって、1つの態様において、本明細書において報告される融合ポリペプチドを用いたアフィニティークロマトグラフィーは、最高1000μg/1〜6 mg融合ポリペプチド/1 ml固相までのローディング能力を有する。
【0169】
カラムの性能は、ローディング溶液の濃度とは無関係であることが判明している。
図12から、ローディング溶液の濃度とは無関係に、同じピーク面積が得られることが理解され得る。すなわち、試料濃度は、得られるシグナルに影響を及ぼさない。
【0170】
1つの態様において、C1qアフィニティークロマトグラフィーカラムに結合した物質は、直線イオン強度勾配または直線導電率勾配によって溶出され、ここで、カラムは、第1の溶液で、平衡化され、かつ解析/分離/精製されるべき物質を含む溶液のアプライ後に洗浄され、該第1の溶液と、イオン強度または導電率が増大した第2の溶液との直線的に変化する混合物をアプライすることによって、物質が溶出される。
【0171】
勾配の傾きに応じて、様々な保持時間を調整することができる(
図13を参照されたい)。
【0172】
1つの態様において、第1の溶液および第2の溶液は、緩衝液である(すなわち、第1の溶液および第2の溶液は、緩衝物質を含む)。
【0173】
1つの態様において、例えば、リン酸またはその塩、酢酸またはその塩、クエン酸またはその塩、モルホリン、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)またはその塩、ヒスチジンまたはその塩、グリシンまたはその塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)またはその塩、(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)またはその塩などの、薬学的に許容される緩衝物質が使用される。
【0174】
1つの態様において、緩衝物質は、モルホリン、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)またはその塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)またはその塩、(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)またはその塩より選択される。
【0175】
1つの態様において、緩衝物質は、10 mM〜500 mMの濃度を有する。1つの態様において、緩衝物質は、10 mM〜300 mMの濃度を有する。1つの態様において、緩衝物質は、10 mM〜250 mMの濃度を有する。1つの態様において、緩衝物質は、10 mM〜200 mMの濃度を有する。1つの態様において、緩衝物質は、10 mM〜150 mMの濃度を有する。1つの態様において、緩衝物質は、10 mM〜100 mMの濃度を有する。1つの態様において、緩衝物質は、15 mM〜50 mMの濃度を有する。1つの態様において、緩衝物質は、約20 mMの濃度を有する。1つの態様において、緩衝物質は、100 mM〜150 mMの濃度を有する。
【0176】
1つの態様において、第1の溶液中の緩衝物質および第2の溶液中の緩衝物質は、同じ緩衝物質である。
【0177】
1つの態様において、第1の溶液中の緩衝物質および第2の溶液中の緩衝物質は、異なる緩衝物質である。
【0178】
1つの態様において、第1の溶液中の緩衝物質および第2の溶液中の緩衝物質は、同じ濃度を有する。
【0179】
緩衝塩の対イオンは、保持時間に対して軽微な影響しか有さない(
図15を参照されたい)。
【0180】
1つの態様において、第1および/または第2の溶液は、追加的な塩を含む。1つの態様において、追加的な塩は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、クエン酸ナトリウム、またはクエン酸カリウムより選択される。1つの態様において、緩衝液は、50 mM〜1000 mMの追加的な塩を含む。1つの態様において、溶液は、50 mM〜750 mMの追加的な塩を含む。1つの態様において、溶液は、50 mM〜500 mMの追加的な塩を含む。1つの態様において、溶液は、50 mM〜750 mMの追加的な塩を含む。1つの態様において、緩衝液は、約50 mM〜約300 mMの追加的な塩を含む。
【0181】
1つの態様において、第1および/または第2の溶液は、塩化ナトリウムを含む。1つの態様において、第1および/または第2の溶液は、約50 mM〜約750 mMの塩化ナトリウムを含む。
【0182】
1つの態様において、第1の溶液および第2の溶液は、塩化ナトリウムを含む。1つの態様において、第1の溶液は、約0 mM〜約15 mMの塩化ナトリウムを含み、かつ第2の溶液は、約100 mM〜約1000 mMの塩化ナトリウム、好ましくは約100 mM〜約500 mMの塩化ナトリウムを含む。
【0183】
1つの例示的な好ましい第1の溶液は、pH7.4に調整された20 mM HEPESを含む。
【0184】
1つの例示的な好ましい第2の溶液は、pH7.4に調整された20 mM HEPESおよび500 mM NaClを含む。
【0185】
C1q結合はpH依存性であるため、第1および第2の溶液のpHは、溶出プロファイル、すなわち保持時間およびピーク形状に影響を及ぼす(
図14を参照されたい)。
【0186】
マトリックスに結合したアフィニティークロマトグラフィーリガンドとして本明細書において報告される融合ポリペプチドを有するアフィニティークロマトグラフィー材料を、抗体の個々の糖型の解析/分離のために使用することができる。
【0187】
例えば、以下の表において、脱グリコシル化型における、G(0)型として、およびG(2)としての、同じIgG1サブクラスの抗EGFR抗体の保持時間の差を示す。それぞれのクロマトグラムを、
図2に示す。
【0189】
例えば、以下の表において、脱ガラクトシル化型における、完全シアリル化型における、および完全ガラクトシル化型における、同じIgG1サブクラスの抗CD20抗体の保持時間の差を示す。それぞれのクロマトグラムを、
図3に示す。
【0191】
例えば、以下の表において、CHO作製型、Man3-GlcNac-NANA/NGNA上が完全シアリル化、およびMan6-GlcNac-NANA/NGNA上が完全シアリル化における、同じIgG1抗体の保持時間の差を示す。それぞれのクロマトグラムを、
図4に示す。
【0193】
アフィニティークロマトグラフィーリガンドとして融合ポリペプチドを用いて、様々なアロタイプの密接に関連した抗体も解析できることを示すために、抗体の対であるブリアキヌマブ(Ozespa(商標))およびウステキヌマブ(Stelara(商標))を、モデル系として使用した。ブリアキヌマブおよびウステキヌマブは両方とも、完全ヒトモノクローナルIgG1抗体である。それらは、インターロイキン12(IL-12)およびインターロイキン23(IL-23)の同じヒトp40サブユニットに結合し(Gandhi, M., et al., Semin. Cutan. Med. Surg. 29 (2010) 48-52)、対応するマウスIL-12およびIL-23には交差反応しない(Luo, J., et al., J. Mol. Biol. 402 (2010) 797-812;Traczewski, P. and Rudnicka, L., BioDrugs. 26 (2012) 9-20)。ブリアキヌマブおよびウステキヌマブは、それぞれ、VH5およびVκ1D生殖系列ファミリーの可変重鎖および軽鎖ドメインを有するIgG1κ抗体、ならびに、VH3およびVλ1生殖系列ファミリーの可変重鎖および軽鎖ドメインを有するIgG1λ抗体である。ブリアキヌマブおよびウステキヌマブは、異なる可変ドメインに加えて、定常ドメイン中のいくつかのアロタイプ特異的アミノ酸において差を示す。
【0194】
以下の表において、抗IgG1参照抗体、ブリアキヌマブ、およびウステキヌマブについての保持時間の差を示す。それぞれのクロマトグラムを、
図5に示す。
【0196】
一般に、本明細書において報告される方法および使用における保持時間は、イオン強度/導電率勾配の険しさおよび使用される塩濃度に依存している。野生型抗体を参照として使用して、より弱い結合が、より短い保持時間(=より早い溶出)によって示されるのに対し、より強い結合は、より長い保持時間(=より遅い溶出)によって示される。
【0197】
1つの態様において、融合ポリペプチドは、モノビオチン標識されている。
【0198】
本明細書において報告される融合ポリペプチドをアフィニティーリガンドとして含むクロマトグラフィー材料は、抗体断片の単離/分離のために使用することができ、したがって、従来のプロテインAアフィニティークロマトグラフィーに対する代替手段を提供する。さらに、本明細書において報告されるクロマトグラフィー材料を使用することによって、分離を、従来のプロテインAアフィニティークロマトグラフィーと比べてより生理的な条件で、例えばpH値で行うことができる。
【0199】
本明細書において報告される融合ポリペプチドをリガンドとして含むクロマトグラフィー材料を、例えばグリコシル化などの修飾を含む抗体種の、測定/分離/濃縮のために使用することができる。本明細書において報告される融合ポリペプチドをリガンドとして含むクロマトグラフィー材料を、ある特定の抗体種の濃縮のために、選択された勾配(開始/終了のイオン強度/導電率)に応じて使用することができる。
【0200】
本明細書において報告される融合ポリペプチドを含むクロマトグラフィー材料を、アミノ酸修飾物の単離のために使用することができる。本明細書において報告される融合ポリペプチドをリガンドとして含むクロマトグラフィー材料を、ホール-ホール二量体および半抗体などの二重特異性抗体誤対合物の単離/分離のために使用することができる。
【0201】
図7に、ブランクカラム上、すなわちマトリックス/固相のみを含むが、それにコンジュゲートされたいかなるアフィニティーリガンドも含まないカラム上での、およびC1qカラム上、すなわちブランクカラムと同じマトリックスを含むが、この時、本発明によるC1q融合ポリペプチドがアフィニティーリガンドとしてそれにコンジュゲートされているカラム上での、IgG1サブクラスの抗体(25μgロード)の例示的なクロマトグラムのオーバーレイを示す。C1qアフィニティーカラムを用いて、抗体の保持を行えることが理解され得る。
【0202】
図18に概略が述べられているように、本明細書において報告される融合タンパク質を、さらなる解析のため、抗体Fab断片を酵素的切断後にFc領域から分離するために使用することができる。
【0203】
1.抗体断片
特定の態様において、本明細書において報告される方法で使用される抗体は抗体断片である。抗体断片には、Fab断片、Fab'断片、Fab'-SH断片、F(ab')
2断片、Fv断片、およびscFv断片、ならびに後述する他の断片が含まれるが、それらに限定されるわけではない特定の抗体断片の概要については、Hudson, P.J. et al., Nat. Med. 9 (2003) 129-134を参照されたい。scFv断片の概要については、例えば、Plueckthun, A., In: The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, Vol. 113, Rosenburg and Moore (eds.), Springer-Verlag, New York (1994), pp. 269-315を参照されたい。また、WO93/16185ならびにUS5,571,894およびUS5,587,458も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、インビボ半減期が長くなっているFab断片およびF(ab')
2断片の考察については、US5,869,046を参照されたい。
【0204】
抗体断片は、本明細書において説明するように、インタクト抗体のタンパク質分解消化ならびに組換え宿主細胞(例えば、大腸菌(E. coli)またはファージ)による作製を非限定的に含む様々な技術によって作製することができる。
【0205】
2.キメラ抗体およびヒト化抗体
特定の態様において、本明細書において報告される方法で使用される抗体は、キメラ抗体である。いくつかのキメラ抗体が、例えば、US4,816,567;およびMorrison, S.L., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81 (1984) 6851-6855において説明されている。1つの例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはヒト以外の霊長類、例えばサルに由来する可変領域)およびヒト定常領域を含む。別の例において、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のものから変更された、「クラススイッチされた」抗体である。キメラ抗体には、その抗原結合断片が含まれる。
【0206】
特定の態様において、キメラ抗体はヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体をヒト化して、非ヒト親抗体の特異性および親和性を保持しつつ、ヒトに対する免疫原性を低下させる。通常、ヒト化抗体は、HVR、例えばCDR(またはその一部分)が非ヒト抗体に由来し、FR(またはその一部分)がヒト抗体配列に由来する、1つまたは複数の可変ドメインを含む。また、ヒト化抗体は、ヒト定常領域についての少なくとも1つの部分も任意で含む。いくつかの態様において、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性または親和性を回復させるためまたは向上させるために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基の由来元である抗体)に由来する対応する残基で置換されている。
【0207】
ヒト化抗体およびそれらを作製する方法は、例えば、Almagro, J.C. and Fransson, J., Front. Biosci. 13 (2008) 1619-1633において概説されており、例えば、Riechmann, I., et al., Nature 332 (1988) 323-329; Queen, C., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989) 10029-10033; US5,821,337、US7,527,791、US6,982,321、およびUS7,087,409; Kashmiri, S.V., et al., Methods 36 (2005) 25-34(SDR(a-CDR)グラフティングを説明); Padlan, E.A., Mol. Immunol. 28 (1991) 489-498(「リサーフェシング」を説明); Dall'Acqua, W.F., et al., Methods 36 (2005) 43-60(「FRシャッフリング」を説明);ならびにOsbourn, J., et al., Methods 36 (2005) 61-68およびKlimka, A., et al., Br. J. Cancer 83 (2000) 252-260(FRシャッフリングに取り組む「導かれた選択」アプローチを説明)においてさらに説明されている。
【0208】
ヒト化のために使用され得るヒトフレームワーク領域には、「ベストフィット」法(例えば、Sims, M.J., et al., J. Immunol. 151 (1993) 2296-2308を参照されたい)を用いて選択されたフレームワーク領域;特定のサブグループの軽鎖可変領域または重鎖可変領域のヒト抗体コンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter, P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992) 4285-4289;およびPresta, L.G., et al., J. Immunol. 151 (1993) 2623-2632を参照されたい);ヒト成熟(体細胞性に変異した)フレームワーク領域またはヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro, J.C. and Fransson, J., Front. Biosci. 13 (2008) 1619-1633を参照されたい);およびFRライブラリーをスクリーニングして得られたフレームワーク領域(例えば、Baca, M., et al., J. Biol. Chem. 272 (1997) 10678-10684およびRosok, M.J., et al., J. Biol. Chem. 271 (1996) 22611-22618を参照されたい)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0209】
3.ヒト抗体
特定の態様において、本明細書において報告される方法で使用される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当技術分野において公知の様々な技術を用いて作製することができる。ヒト抗体は、van Dijk, M.A. and van de Winkel, J.G., Curr. Opin. Pharmacol. 5 (2001) 368-374およびLonberg, N., Curr. Opin. Immunol. 20 (2008) 450-459において一般的に説明されている。
【0210】
ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してインタクトヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクト抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって、調製することができる。典型的には、このような動物は、内在性の免疫グロブリン遺伝子座を置換するか、または染色体外に存在するか、もしくは動物の染色体中にランダムに組み込まれる、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部分を含む。このようなトランスジェニックマウスにおいて、通常、内在性の免疫グロブリン遺伝子座は不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg, N., Nat. Biotech. 23 (2005) 1117-1125を参照されたい。また、例えば、XENOMOUSE(商標)技術を説明するUS6,075,181およびUS6,150,584;HUMAB(登録商標)技術を説明するUS5,770,429;K-M MOUSE(登録商標)技術を説明するUS7,041,870、ならびにVELOCIMOUSE(登録商標)技術を説明するUS2007/0061900も参照されたい。このような動物によって産生されるインタクト抗体に由来するヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と結合させることによって、さらに修飾することができる。
【0211】
ヒト抗体はまた、ハイブリドーマに基づく方法によって作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体を作製するためのヒト骨髄腫細胞株およびマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株は説明されている。(例えば、Kozbor, D., J. Immunol. 133 (1984) 3001-3005; Brodeur, B.R., et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York (1987), pp. 51-63;およびBoerner, P., et al., J. Immunol. 147 (1991) 86-95を参照されたい)。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術によって作製したヒト抗体が、Li, J., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103 (2006) 3557-3562において説明されている。その他の方法には、例えば、US7,189,826(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の作製を説明)およびNi, J., Xiandai Mianyixue 26 (2006) 265-268(ヒト-ヒトハイブリドーマを説明)において説明されているものが含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)は、Vollmers, H.P. and Brandlein, S., Histology and Histopathology 20 (2005) 927-937およびVollmers, H.P. and Brandlein, S., Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology 27 (2005) 185-191においても説明されている。
【0212】
ヒト抗体はまた、ヒト由来ファージディスプレイライブラリーより選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって作製することもできる。次いで、このような可変ドメイン配列を、所望のヒト定常ドメインと結合させてよい。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するための技術を以下に説明する。
【0213】
4.ライブラリー由来の抗体
本明細書において報告される方法で使用される抗体は、所望の1種類または複数種類の活性を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって、単離することができる。例えば、ファージディスプレイライブラリーを作製し、所望の結合特徴を有する抗体についてそのようなライブラリーをスクリーニングするための様々な方法が、当技術分野において公知である。このような方法は、例えば、Hoogenboom, H.R., et al., Methods in Molecular Biology 178 (2002) 1-37において概説されており、例えば、McCafferty, J., et al., Nature 348 (1990) 552-554; Clackson, T., et al., Nature 352 (1991) 624-628; Marks, J.D., et al., J. Mol. Biol. 222 (1992) 581-597; Marks, J.D. and Bradbury, A., Methods in Molecular Biology 248 (2003) 161-175; Sidhu, S.S., et al., J. Mol. Biol. 338 (2004) 299-310; Lee, C.V., et al., J. Mol. Biol. 340 (2004) 1073-1093; Fellouse, F.A., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101 (2004) 12467-12472;およびLee, C.V., et al., J. Immunol. Methods 284 (2004) 119-132においてさらに説明されている。
【0214】
いくつかのファージディスプレイ法では、VH遺伝子のレパートリーおよびVL遺伝子のレパートリーをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別々にクローニングし、ファージライブラリーにおいて無作為に組み換え、次いで、Winter, G., et al., Ann. Rev. Immunol. 12 (1994) 433-455で説明されているようにして、抗原結合ファージについてそれらをスクリーニングすることができる。典型的には、ファージは、単鎖Fv(scFv)断片またはFab断片のいずれかとして抗体断片を提示する。免疫化された供給源に由来するライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なしに、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。あるいは、Griffiths, A.D., et al., EMBO J. 12 (1993) 725-734によって説明されているように、未処置のレパートリーを(例えばヒトから)クローニングして、まったく免疫化せずに、広範な非自己抗原およびまた自己抗原に対する単一の抗体供給源を提供することもできる。最後に、Hoogenboom, H.R. and Winter, G., J. Mol. Biol. 227 (1992) 381-388によって説明されているように、幹細胞由来の再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、かつランダム配列を含むPCRプライマーを用いて可変性に富むCDR3領域をコードし、インビトロでの再配列を達成することによって、未処置のライブラリーを合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリーを説明している特許公報には、例えば、US5,750,373、US2005/0079574、US2005/0119455、US2005/0266000、US2007/0117126、US2007/0160598、US2007/0237764、US2007/0292936、およびUS2009/0002360が含まれる。
【0215】
ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体または抗体断片は、本明細書においてヒト抗体またはヒト抗体断片とみなされる。
【0216】
5.多重特異性抗体
特定の態様において、本明細書において報告される方法で使用される抗体は、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。特定の態様において、二重特異性抗体は、同じ抗原の2つの異なるエピトープに結合し得る。また、二重特異性抗体は、抗原を発現する細胞に細胞障害性物質を局在させるのにも使用され得る。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片として調製することができる。
【0217】
多重特異性抗体を作製するための技術には、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え同時発現(Milstein, C. and Cuello, A.C., Nature 305 (1983) 537-540、WO93/08829、およびTraunecker, A., et al., EMBO J. 10 (1991) 3655-3659を参照されたい)および「ノブインホール(knob-in-hole)」操作(例えばUS5,731,168を参照されたい)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。また、抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するための静電気的操縦(electrostatic steering)効果を操作すること(WO2009/089004);2つまたはそれ以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、US4,676,980およびBrennan, M., et al., Science 229 (1985) 81-83を参照されたい);二重特異性抗体を作製するためのロイシンジッパーを用いること(例えば、Kostelny, S.A., et al., J. Immunol. 148 (1992) 1547-1553を参照されたい);二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術を用いること(例えば、Holliger, P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 (1993) 6444-6448を参照されたい);および単鎖Fv(sFv)二量体を用いること(例えば、Gruber, M., et al., J. Immunol. 152 (1994) 5368-5374を参照されたい);ならびに例えばTutt, A., et al., J. Immunol. 147 (1991) 60-69で説明されているようにして、三重特異性抗体を調製することによって、多重特異性抗体を作製することもできる。
【0218】
「オクトパス抗体」を含む、3つまたはそれ以上の機能的抗原結合部位を有する操作された抗体もまた、本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576を参照されたい)。
【0219】
また、本明細書の抗体または断片には、異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用性Fab」または「DAF」が含まれる(例えば、US2008/0069820を参照されたい)。
【0220】
本明細書の抗体または断片にはまた、WO2009/080251、WO2009/080252、WO2009/080253、WO2009/080254、WO2010/112193、WO2010/115589、WO2010/136172、WO2010/145792、およびWO2010/145793において説明されている多重特異性抗体も含まれる。
【0221】
6.抗体バリアント
特定の態様において、抗体のアミノ酸配列バリアントが企図されかつ解析される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって、調製することができる。このような修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、ならびに/または残基中への挿入、および/もしくは残基の置換が含まれる。最終構築物が所望の特徴、例えば、抗原結合を示すことを条件として、欠失、挿入、および置換の任意の組合せを行って、最終構築物を得てもよい。
【0222】
(a)置換バリアント、挿入バリアント、および欠失バリアント
特定の態様において、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが、本明細書において報告される方法で使用される。対象となる置換変異誘発部位には、HVRおよびFRが含まれる。例示的な変更は、表1の「例示的置換」という項目の下に提供し、アミノ酸側鎖のクラスに関してさらに後述する。保存的置換は、表1の「好ましい置換」という項目の下に示す。アミノ酸置換を関心対象の抗体に導入し、その作製物を所望の活性、例えば、保持された/向上した抗原結合、低下した免疫原性、または改善したADCCもしくはCDCについてスクリーニングすることができる。
【0224】
アミノ酸は、側鎖の共通特性に基づいてグループ分けされ得る:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性で親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の向きに影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0225】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0226】
置換バリアントの1つのタイプは、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つまたは複数の超可変領域(HVR)残基の置換を含む。一般に、その後の研究のために選択される得られたバリアントは、親抗体を基準としていくつかの生物学的特性の変化(例えば改善)(例えば、増大した親和性、低下した免疫原性)を有し、かつ/または親抗体のいくつかの生物学的特性を実質的に保持する。例示的な置換バリアントは、例えば、本明細書において説明するもののようなファージディスプレイに基づく親和性成熟技術を用いて簡便に作製することができる、親和性成熟抗体である。簡単に説明すると、1つまたは複数のHVR残基を変異させ、バリアント抗体をファージ上に提示させ、特定の生物学的活性(例えば結合親和性)についてスクリーニングする。
【0227】
例えば、抗体親和性を向上させるために、HVR中に改変(例えば置換)がなされてよい。このような改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で変異を経験するコドンにコードされる残基(例えば、Chowdhury, P.S., Methods Mol. Biol. 207 (2008) 179-196を参照されたい)、および/またはSDR(a-CDR)中になされてよく、得られたバリアントVHまたはバリアントVLを結合親和性について試験する。二次ライブラリーを構築し、それから再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboom, H.R., et al., in Methods in Molecular Biology 178 (2002) 1-37において説明されている。親和性成熟のいくつかの態様において、様々な方法(例えば、誤りがちなPCR、チェーンシャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指定変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選択された可変遺伝子中に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリーが作製される。次いで、ライブラリーをスクリーニングして、所望の親和性を有する任意の抗体バリアントを同定する。多様性を導入するための別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、同時に4〜6個の残基)がランダム化される、HVRを対象とするアプローチを伴う。抗原結合に関与しているHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデリングを用いて、特異的に同定することができる。特に、CDR-H3およびCDR-L3がしばしば標的とされる。
【0228】
特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、このような改変によって、抗体が抗原に結合する能力が実質的に低下しない限り、1つまたは複数のHVR内に存在してよい。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的改変(例えば、本明細書において提供される保存的置換)がHVR中になされてよい。このような改変は、HVR「ホットスポット」またはSDRの外側でもよい。上記で提供したバリアントVH配列およびバリアントVL配列の特定の態様において、各HVRは、未改変であるか、または1個、2個、もしくは3個以下のアミノ酸置換を含むかのいずれかである。
【0229】
変異誘発の標的とされ得る抗体の残基または領域を同定するために有用な方法は、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれ、Cunningham, B.C. and Wells, J.A., Science 244 (1989) 1081-1085によって説明されている。この方法では、残基または標的残基群(例えば、arg、asp、his、lys、およびgluなどの荷電残基)を同定し、中性アミノ酸または負電荷を持つアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置換して、抗体と抗原の相互作用が影響を受けるかどうか判定する。最初の置換に対して機能的感受性を示すアミノ酸位置に、さらに置換を導入してよい。代替的にまたはさらに、抗原-抗体複合体の結晶構造から、抗体と抗原の接触点を同定する。このような接触残基および隣接残基を、置換の候補として標的とするか、または除去してよい。バリアントをスクリーニングして、それらが所望の特性を有するかどうかを判定してよい。
【0230】
アミノ酸配列挿入には、長さが残基1個から100個またはそれ以上の残基を含むポリペプチドまで及ぶアミノ末端融合および/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入バリアントには、(例えばADEPTのための)酵素または抗体の血清半減期を長くするポリペプチドへの、抗体のN末端またはC末端への融合が含まれる。
【0231】
(b)グリコシル化バリアント
特定の態様において、本明細書において報告される方法で使用される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を大きくするか、または小さくするように改変される。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つまたは複数のグリコシル化部位が作製されるかまたは取り除かれるようにアミノ酸配列を改変することによって、簡便に達成することができる。
【0232】
前記抗体がFc領域を含む場合、それに結合する炭水化物を改変してよい。典型的には、哺乳動物細胞によって産生されるネイティブ抗体は、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN結合によって通常結合している分枝状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright, A. and Morrison, S.L., TIBTECH 15 (1997) 26-32を参照されたい。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「ステム」中のGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。いくつかの態様において、いくつかの特性が改善した抗体バリアントを作製するために、本発明の抗体中のオリゴ糖に修飾を加えてよい。
【0233】
1つの態様において、Fc領域に(直接的にまたは間接的に)結合されたフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体バリアントが使用される。例えば、このような抗体中のフコースの量は、1%〜80%、1%〜65%、5%〜65%、または20%〜40%であってよい。フコースの量は、例えばWO2008/077546において説明されているように、MALDI-TOF質量分析法によって測定して、Asn297に結合した糖構造物(glycostructure)すべて(例えば、複合体構造物、ハイブリッド構造物、および高マンノース構造物)の合計に対するAsn297における糖鎖内のフコースの平均量を算出することによって決定される。Asn297は、Fc領域中の297位あたり(Fc領域残基のEU番号付与)に位置するアスパラギン残基を意味する;しかしながら、Asn297は、抗体の軽微な配列変種が原因で、297位からアミノ酸±約3個だけ上流または下流に、すなわち、294位と300位の間に位置してもよい。このようなフコシル化バリアントは、ADCC機能が向上している場合がある。例えば、US2003/0157108; US2004/0093621を参照されたい。「脱フコシル化された」または「フコースを欠く」抗体バリアントに関連した刊行物の例には、US2003/0157108;WO2000/61739;WO2001/29246;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;WO2003/085119;WO2003/084570;WO2005/035586;WO2005/035778;WO2005/053742;WO2002/031140;Okazaki, A., et al., J. Mol. Biol. 336 (2004) 1239-1249;Yamane-Ohnuki, N., et al., Biotech. Bioeng. 87 (2004) 614-622が含まれる。脱フコシル化抗体を産生できる細胞株の例には、タンパク質フコシル化に欠陥があるLec13 CHO細胞(Ripka, J., et al., Arch. Biochem. Biophys. 249 (1986) 533-545;US2003/0157108;およびWO2004/056312、特に実施例11)およびノックアウト細胞株、例えば、α-1,6-フコシル基転移酵素遺伝子FUT8ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki, N., et al., Biotech. Bioeng. 87 (2004) 614-622; Kanda, Y., et al., Biotechnol. Bioeng. 94 (2006) 680-688;およびWO2003/085107を参照されたい)が含まれる。
【0234】
本明細書において報告される方法で使用することができる抗体バリアントは、分岐したオリゴ糖と共にさらに提供され、例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐型オリゴ糖は、GlcNAcによって分岐している。このような抗体バリアントは、フコシル化が減少し、かつ/またはADCC機能が向上している場合がある。このような抗体バリアントの例は、例えば、WO2003/011878;US6,602,684;およびUS2005/0123546において説明されている。Fc領域に結合したオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントもまた、本明細書において報告される方法で使用することができる。このような抗体バリアントは、CDC機能が向上している場合がある。このような抗体バリアントは、例えば、WO1997/30087;WO1998/58964;およびWO1999/22764において説明されている。
【0235】
(c)Fc領域バリアント
特定の態様において、1つまたは複数のアミノ酸修飾を、本明細書において報告される方法で使用される抗体のFc領域中に導入し、それによってFc領域バリアントを作製することができる。Fc領域バリアントは、1つまたは複数のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFc領域)を含み得る。
【0236】
特定の態様において、抗体バリアントは、すべてではないがいくつかのエフェクター機能を有し、このことにより、この抗体バリアントは、インビボでの抗体の半減期が重要ではあるが、ある種のエフェクター機能(補体およびADCCなど)が不必要または有害である用途に対する望ましい候補となり、本明細書において報告される方法で使用される。インビトロおよび/またはインビボの細胞障害性アッセイ法を行って、CDC活性および/またはADCC活性の減少/喪失を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイ法を行って、抗体はFcγR結合を欠く(したがって、ADCC活性を欠く可能性が高い)がFcRn結合能を保持していることを確実にすることができる。ADCCを媒介する主な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcR発現は、Ravetch, J.V. and Kinet, J.P., Annu. Rev. Immunol. 9 (1991) 457-492の464頁の表3に要約されている。関心対象の分子のADCC活性を評価するためのインビトロのアッセイ法の非限定的な例は、US5,500,362(例えば、Hellstrom, I., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83 (1986) 7059-7063;およびHellstrom, I., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82 (1985) 1499-1502を参照されたい);US5,821,337(Bruggemann, M., et al., J. Exp. Med. 166 (1987) 1351-1361を参照されたい)において説明されている。あるいは、非放射性アッセイ方法を使用してもよい(例えば、フローサイトメトリー用のACTI(商標)非放射性細胞障害性アッセイ法(CellTechnology, Inc. Mountain View, CA);およびCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞障害性アッセイ法(Promega, Madison, WI)を参照されたい)。このようなアッセイ法に有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。代替的にまたはさらに、関心対象の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes, R., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95 (1998) 652-656で開示されているもののような動物モデルにおいて評価してもよい。また、C1q結合アッセイ法を実施して、抗体はC1qに結合することができず、したがって、CDC活性を欠くことを確認することもできる。例えば、WO2006/029879およびWO2005/100402におけるC1qおよびC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイ法を実施してもよい(例えば、Gazzano-Santoro, H., et al., J. Immunol. Methods 202 (1996) 163-171; Cragg, M.S., et al., Blood 101 (2003) 1045-1052;およびCragg, M.S. and M.J. Glennie, Blood 103 (2004) 2738-2743を参照されたい)。FcRn結合およびインビボのクリアランス/半減期の測定はまた、当技術分野において公知の方法を用いて実施することもできる(例えば、Petkova, S.B., et al., Int. Immunol. 18 (2006) 1759-1769を参照されたい)。
【0237】
エフェクター機能が低下している抗体には、Fc領域残基238番、265番、269番、270番、297番、327番、および329番の内の1つまたは複数が置換されたものが含まれる(US6,737,056)。このようなFc変異体には、残基265番および297番がアラニンに置換された、いわゆる「DANA」Fc変異体を含む、アミノ酸265位、269位、270位、297位、および327位の内の2つまたはそれ以上における置換を有するFc変異体が含まれる(US7,332,581)。
【0238】
FcRへの結合が改善されているかまたは減弱しているいくつかの抗体バリアントが説明されている。(例えば、US6,737,056;WO2004/056312、およびShields, R.L., et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604を参照されたい)。
【0239】
特定の態様において、抗体バリアントは、ADCCを向上させる1つまたは複数のアミノ酸置換、例えばFc領域の298位、333位、および/または334位(残基のEU番号付与)の位置における置換を有するFc領域を含む。
【0240】
例えば、US6,194,551、WO99/51642、およびIdusogie, E.E., et al., J. Immunol. 164 (2000) 4178-4184において説明されているように、いくつかの態様において、C1q結合および/または補体依存性細胞障害性(CDC)の変化(すなわち、向上または減弱のいずれか)をもたらす改変が、Fc領域中に施される。
【0241】
胎児への母親のIgGの移行に関与する、半減期が長くなり新生児型Fc受容体(FcRn)への結合が向上した抗体(Guyer, R.L., et al., J. Immunol. 117 (1976) 587-593およびKim, J.K., et al., J. Immunol. 24 (1994) 2429-2434)は、US2005/0014934において説明されている。これらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を向上させる1つまたは複数の置換をその中に有するFc領域を含む。このようなFcバリアントには、Fc領域残基:238番、252番、253番、254番、256番、265番、272番、286番、303番、305番、307番、311番、312番、317番、340番、356番、360番、362番、376番、378番、380番、382番、413番、424番、または434番の内の1つまたは複数における置換、例えば、Fc領域残基434番の置換を有するものが含まれる(US7,371,826)。
【0242】
Fc領域バリアントの他の例に関しては、Duncan, A.R. and Winter, G., Nature 322 (1988) 738-740;US5,648,260;US5,624,821;およびWO94/29351も参照されたい。
【0243】
(d)システインで操作された抗体バリアント
特定の態様において、システインで操作された抗体、例えば、抗体の1つまたは複数の残基がシステイン残基で置換されている「チオMAb」を作製することが望ましい場合がある。特定の態様において、置換される残基は、抗体の接近可能な部位に存在する。それらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基が、その結果、抗体の接近可能な部位に位置づけられ、本明細書においてさらに説明するように、薬物部分またはリンカー-薬物部分などの他の部分に抗体をコンジュゲートさせて免疫コンジュゲートを作製するために使用され得る。特定の態様において、次の残基の任意の1つまたは複数をシステインで置換してよい:軽鎖のV205(Kabatの番号付与);重鎖のA118(EU番号付与);および重鎖Fc領域のS400(EU番号付与)。システインで操作された抗体は、例えば、US7,521,541において説明されているようにして作製することができる。
【0244】
(e)抗体誘導体
特定の態様において、本明細書において報告される方法で使用される抗体は、当技術分野において公知であり、容易に入手可能である付加的な非タンパク性部分を含むようにさらに修飾され得る。抗体の誘導体化に適した部分には、水溶性ポリマーが含まれるがそれに限定されるわけではない。水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダム共重合体のいずれか)、およびデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、プロリルプロピレン(prolylpropylene)オキシド/エチレンオキシド共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中で安定であるため、製造の際に有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量のものでよく、分枝状または非分枝状でよい。抗体に結合されるポリマーの数は変動してよく、複数のポリマーが結合される場合、それらは同じ分子または異なる分子でよい。通常、誘導体化のために使用されるポリマーの数および/またはタイプは、限定されるわけではないが、改善しようとする抗体の特定の特性または機能、その抗体誘導体が所定の条件下で治療法において使用されるかどうかなどを含む考慮すべき事柄に基づいて決定することができる。
【0245】
別の態様において、抗体と放射線への曝露によって選択的に加熱され得る非タンパク性部分とのコンジュゲートが本明細書において報告される方法で使用することができる。1つの態様において、非タンパク性部分はカーボンナノチューブである(Kam, N.W., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102 (2005) 11600-11605)。放射線は、任意の波長のものでよく、普通の細胞には害を与えないが、抗体-非タンパク性部分の近位にある細胞が死滅する温度まで非タンパク性部分を加熱する波長が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0246】
III.組換え方法および組成物
モノクローナル抗体を作製するための方法は、KohlerおよびMilstein(Nature 256 (1975) 495-497)によって最初に報告されている。その後、抗体をコードする核酸(DNA)を安定に導入することによる、骨髄腫細胞を用いた組換え抗体の作製が報告されている(Oi, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80 (1983) 6351-6355を参照されたい)。
【0247】
抗体のコード核酸(完全抗体または可変ドメインいずれかについて)は、従来の手順を用いて抗体産生細胞から単離し配列決定することができる。単離後、コード核酸を1つまたは複数の発現ベクター中に配置することができる。可変ドメインのコード核酸のみが単離されている場合、発現ベクターは、重鎖定常領域および/または軽鎖定常領域をそれぞれコードする核酸も含む(例えば、US5,658,570を参照されたい)。発現ベクターは、さもなければ抗体を分泌しない原核宿主細胞(大腸菌)または真核宿主細胞(CHO、HEK、BHK、SP2/0)中にトランスフェクトされ得る。
【0248】
コード核酸が、ファージディスプレイライブラリー、酵母ディスプレイライブラリー、または一般に細胞表面ディスプレイライブラリーなどのディスプレイライブラリーに由来する場合、発現ベクター中にそれを直接クローニングすることができる。
【0249】
抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号において説明されているようにして、組換え方法および組成物を用いて作製することができる。
【0250】
抗体を組換え作製する場合、例えば前述したような抗体をコードする核酸は、単離され、宿主細胞におけるその後のクローニングおよび/または発現のために、1つまたは複数のベクター中に挿入される。このような核酸は、従来の手順を用いて(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)、容易に単離および配列決定され得る。
【0251】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に適した宿主細胞には、本明細書において説明する原核細胞または真核細胞が含まれる。例えば、抗体は、グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合には特に、細菌において産生させることができる。細菌における抗体断片および抗体ポリペプチドの発現については、例えば、US5,648,237、US5,789,199、およびUS5,840,523を参照されたい。(大腸菌における抗体断片の発現を説明するCharlton, K.A., In: Methods in Molecular Biology, Vol. 248, Lo, B.K.C. (ed.), Humana Press, Totowa, NJ (2003), pp. 245-254)も参照されたい)。発現後、抗体は、可溶性画分中の細菌細胞ペーストから単離することができ、さらに精製することができる。
【0252】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物も、抗体をコードするベクターのための適切なクローニング宿主または発現宿主であり、これらには、グリコシル化経路が「ヒト化」されており、その結果、部分的または全面的にヒトグリコシル化パターンを有する抗体を産生する真菌株および酵母株が含まれる。Gerngross, T.U., Nat. Biotech. 22 (2004) 1409-1414;およびLi, H., et al., Nat. Biotech. 24 (2006) 210-215を参照されたい。
【0253】
グリコシル化抗体の発現のために適した宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)にも由来する。無脊椎動物細胞の例には、植物細胞および昆虫細胞が含まれる。昆虫細胞と組み合わせて、特にスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために使用され得る多数のバキュロウイルス株が同定されている。
【0254】
植物細胞培養物もまた、宿主として使用することができる。例えば、US5,959,177、US6,040,498、US6,420,548、US7,125,978、およびUS6,417,429(トランスジェニック植物において抗体を産生させるためのPLANTIBODIES(商標)技術を説明している)を参照されたい。
【0255】
脊椎動物細胞もまた、宿主として使用され得る。例えば、懸濁液中で増殖するように順応させた哺乳動物細胞株が、有用である場合がある。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7);ヒト胚性腎臓株(例えばGraham, F.L., et al., J. Gen Virol. 36 (1977) 59-74で説明されている293または293細胞);仔ハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather, J.P., Biol. Reprod. 23 (1980) 243-252で説明されているTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸部癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝臓細胞(HepG2);マウス乳房腫瘍(MMT060562);例えば、Mather, J.P., et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383 (1982) 44-68で説明されている、TRI細胞;MRC5細胞;およびFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR
- CHO細胞(Urlaub, G., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77 (1980) 4216-4220)を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ならびにY0、NS0、およびSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。抗体産生に適したいくつかの哺乳動物宿主細胞株の概要については、例えば、Yazaki, P. and Wu, A.M., Methods in Molecular Biology, Vol. 248, Lo, B.K.C. (ed.), Humana Press, Totowa, NJ (2004), pp. 255-268を参照されたい。
【0256】
IV.免疫コンジュゲート
本発明の方法において、1種類または複数種類の細胞障害性物質、例えば、化学療法剤もしくは化学療法薬、増殖抑制剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、もしくは動物に由来するタンパク毒素、酵素的に活性な毒素、またはそれらの断片)、または放射性同位元素にコンジュゲートされた抗体を含む、免疫コンジュゲートも使用することができる。
【0257】
1つの態様において、免疫コンジュゲートは、抗体が1種類または複数種類の薬物にコンジュゲートされている抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である。これらの薬物には、マイタンシノイド(US5,208,020、US5,416,064、およびEP0425235 B1を参照されたい);アウリスタチン、例えば、モノメチルアウリスタチン薬物部分DEおよびDF(MMAEおよびMMAF)(US5,635,483、US5,780,588、およびUS7,498,298を参照されたい);ドラスタチン;カリケアミシンまたはその誘導体(US5,712,374、US5,714,586、US5,739,116、US5,767,285、US5,770,701、US5,770,710、US5,773,001、およびUS5,877,296;Hinman, L.M., et al., Cancer Res. 53 (1993) 3336-3342;ならびにLode, H.N., et al., Cancer Res. 58 (1998) 2925-2928を参照されたい);アントラサイクリン、例えば、ダウノマイシンまたはドキソルビシン(Kratz, F., et al., Curr. Med. Chem. 13 (2006) 477-523;Jeffrey, S.C., et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 16 (2006) 358-362; Torgov, M.Y., et al., Bioconjug. Chem. 16 (2005) 717-721;Nagy, A., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97 (2000) 829-834;Dubowchik, G.M., et al., Bioorg. & Med. Chem. Letters 12 (2002) 1529-1532;King, H.D., et al., J. Med. Chem. 45 (2002) 4336-4343;および米国特許第6,630,579号を参照されたい);メトトレキサート;ビンデシン;タキサン、例えば、ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、およびオルタタキセル;トリコテセン;ならびにCC1065が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0258】
別の態様において、免疫コンジュゲートは、限定されるわけではないが、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、αサルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、アメリカヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サポナリア・オフィシナリス(Saponaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセンを含む、酵素的に活性な毒素またはその断片にコンジュゲートされた、本明細書において説明する抗体を含む。
【0259】
別の態様において、免疫コンジュゲートは、放射性原子にコンジュゲートされて放射性コンジュゲートを形成した、本明細書において説明する抗体を含む。様々な放射性同位元素が、放射性コンジュゲートの作製のために利用可能である。例には、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212、およびLuの放射性同位元素が含まれる。放射性コンジュゲートが検出に使用される場合、放射性コンジュゲートは、シンチグラフィー調査のための放射性原子、例えば、TC
99mもしくはI
123、または核磁気共鳴(NMR)画像法(磁気共鳴画像法、MRIとしても公知)のためのスピン標識、例えば、やはりヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、もしくは鉄を含んでよい。
【0260】
抗体および細胞障害性物質のコンジュゲートは、様々な二官能性タンパク質結合剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えばアジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えばスベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えばビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えばビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアナート(例えばトルエン2,6-ジイソシアナート)、および置換基が2つの活性なフッ素化合物(例えば1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を用いて作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta, E.S., et al., Science 238 (1987) 1098-1104で説明されているようにして調製することができる。炭素14で標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、抗体に放射性ヌクレオチドを結合させるための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。リンカーは、細胞における細胞障害性薬物の放出を容易にする「切断可能なリンカー」であってよい。例えば、酸に不安定なリンカー、ペプチダーゼ感受性のリンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィドを含むリンカーが使用され得る(Chari, R.V., et al., Cancer Res. 52 (1992) 127-131;US5,208,020)。
【0261】
本明細書における免疫コンジュゲートまたはADCは、(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aから)市販されているBMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、およびスルホ-SMPB、およびSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾアート)を非限定的に含む架橋剤試薬を用いて調製されたこのようなコンジュゲートを明確に企図するが、それらに限定されるわけではない。
【0262】
以下の実施例、図面、および配列は、本発明の理解を助けるために提供され、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲において説明される。本発明の精神から逸脱することなく、説明される手順に改変を加え得ることが理解される。
【実施例】
【0263】
方法
エレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI-MS)
N-グリカナーゼplus(Roche)0.5μLおよびリン酸ナトリウム緩衝液(0.1M、pH7.1)を添加することによってタンパク質アリコート(50μg)を脱グリコシル化して、最終試料体積115μLを得た。この混合物を37℃で18時間インキュベートした。その後、還元および変性のために、4M塩酸グアニジン(Pierce)に溶かした0.5M TCEP(Pierce)60μLおよび8M塩酸グアニジン50μLを添加した。この混合物を37℃で30分間インキュベートした。サイズ排除クロマトグラフィー(セファロースG-25、無勾配、2%ギ酸を含む40%アセトニトリル)によって試料を脱塩した。ナノESI供給源(TriVersa NanoMate、Advion)を装備されたQ-TOF機器(maXis、Bruker)を用いて、ESI質量スペクトル(+ve)を記録した。MSパラメーター設定は次のとおりであった:移動:ファンネルRF、400Vpp;ISCIDエネルギー、0eV;多重極RF、400Vpp;四重極:イオンエネルギー、4.0eV;低質量、600m/z;供給源:乾燥ガス、8L/分;乾燥ガスの温度、160℃;コリジョンセル:衝突エネルギー、10eV;衝突RF:2000Vpp;イオンクーラー:イオンクーラーRF、300Vpp;移動時間:120μ秒;プレパルス蓄積、10μ秒;スキャン範囲m/z600〜2000。データを評価するために、施設内で開発したソフトウェア(MassAnalyzer)を使用した。
【0264】
FcRn表面プラズモン共鳴(SPR)解析
FcRnに対する野生型抗体および変異体の結合特性を、BIAcore T100機器(BIAcore AB, Uppsala, Sweden)を用いて表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって解析した。この方式は、分子相互作用の研究のために十分に確立されている。これにより、リガンド/分析物結合を連続的にリアルタイムでモニタリングし、したがって、様々なアッセイ法設定において動態パラメーターを測定することが可能になる。SPR技術は、金でコーティングされたバイオセンサーチップの表面近くでの屈折率の測定に基づいている。屈折率の変化から、固定化されたリガンドと溶液中に注入された分析物の相互作用によって引き起こされる表面の質量変化が示唆される。分子が、表面の固定化されたリガンドに結合する場合、質量は増加し、解離する場合は質量が減少する。本アッセイ法においては、400応答単位(RU)のレベルまで、アミンカップリングによってFcRn受容体をBIAcore CM5バイオセンサーチップ(GE Healthcare Bioscience, Uppsala, Sweden)上に固定化した。アッセイ法は、PBS、0.05% Tween20 pH6.0(GE Healthcare Bioscience)をランニング緩衝液および希釈用緩衝液として用いて室温で実施した。200nMのネイティブ抗体試料または酸化抗体試料を室温、流速50μL/分で注入した。結合時間は180秒であった。解離相は360秒に及んだ。HBS-P、pH8.0を短時間注入することにより、チップ表面の再生を達成した。注入後180秒および注入後300秒における生物学的応答シグナルの高さを比較することによって、SPRデータの評価を行った。対応するパラメーターは、RU最大レベル(注入後180秒)および後期の安定性(注入終了後300秒)である。
【0265】
実施例1
一本鎖C1q融合ポリペプチドの発現
ヘキサヒスチジン(hexahis)タグ付加ポリペプチドを含有する清澄化された上清を、4℃でNi-NTAアフィニティークロマトグラフィー樹脂(Qiagen, Hanbrechtikon, Switzerland)上にロードした。pH 7.4で300 mM NaClを含む、および20 mMイミダゾールを含有する20 mMリン酸ナトリウム緩衝液でのそれぞれの洗浄段階の後、AKTA Explorer 100クロマトグラフィーシステム(GE Healthcare Life Sciences, Uppsala, Sweden)上で、100 mM、それぞれ300 mMイミダゾールを含有する同じ緩衝液でのバッチ溶出を用いて、3 ml/分の流速でポリペプチドを溶出させた。画分を、変性かつ還元条件下でCE-SDS (LabChip GX, Caliper)にしたがってプールし、Amicon Ultra-15(Merck Millipore)を用いて濃縮して、pH 7.4に調整した500 mM NaClを含有する50 mMリン酸ナトリウム緩衝液に対して透析した。精製したポリペプチドを、Nanodrop分光光度計(Nanodrop Technologies, Wilmington, DE)を用いて定量し、CE-SDS(LabChip GX, Caliper)によって解析して、-80℃で保存した。
【0266】
実施例2
C1qアフィニティーカラムの調製
pH 7.2に調整し、3 ml PBS中に1錠のCompleteプロテアーゼインヒビター(cOmplete ULTRA Tablets, Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)を加えた、125 mM NaClおよび0.02% Tweenを含む2 mM MOPS緩衝液中のAvi Tagを有する一本鎖C1q融合ポリペプチドを、Avidity社のビオチン標識キットを用いて、製造業者の取扱い説明書に従って(Bulk BIRA, Avidity LLC, Denver, CO, USA)ビオチン標識した。ビオチン標識反応は、室温で一晩行った。リガーゼを分離するために、Ni-セファロースクロマトグラフィー(上記を参照されたい)を繰り返した。修飾ポリペプチドを、500 mM NaClを含む50 mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.2に対して4℃で一晩透析して、イミダゾールを除去した。
【0267】
1グラムのストレプトアビジンセファロース(GE Healthcare)を、ビオチン標識して透析したポリペプチド(標準的な解析的適用については、3 mgのC1qを選択した)に添加し、振盪しながら2時間インキュベートした。受容体誘導体化セファロースを、1 ml Tricorn 5/50カラム(GE Healthcare)に充填した。
【0268】
実施例3
C1qアフィニティーカラムを用いたクロマトグラフィー
受容体誘導体化セファロースを、1 ml Tricorn 5/50カラム(GE Healthcare)に充填し、次いで、C1qカラムを、20 mM HEPES、pH 7.4で平衡化した。
【0269】
条件:
カラム寸法: 50 mm×5 mm
ベッド高: 50 mm
ローディング: 30μgタンパク質/試料
流量: 0.5 ml/分
平衡化緩衝液: 20 mM HEPES、pH 7.4
溶出緩衝液: 20 mM HEPES、500 mM NaCl、pH 7.4
溶出: 10 CVの平衡化緩衝液、30 CVで40%溶出緩衝液まで、5 CVで100%溶出緩衝液まで
【0270】
30μgの分析物(抗体またはFc領域を含む融合ポリペプチド)を含有する試料を、pH 5.5に調整して、HPLC-System 10 ADVP(Shimadzu, Duisburg, Germany)またはUltimate 3000(Thermo Fisher Scientific, Dreieich, Germany)を用いてC1qカラムにアプライした。次いで、50 mmのカラム床の高さを有するカラムを、5〜10カラム体積の平衡化緩衝液(20 mM HEPES、pH 7.4)で洗浄した。アフィニティー結合した分析物を、30カラム体積以内に20 mM HEPES、500 mM NaCl、pH 7.4(溶出緩衝液)への塩勾配で溶出させた。完全な溶出のために、塩濃度を、最高100%溶出緩衝液まで、勾配において増加させた。実験は、室温で実施した。溶出プロファイルを、280 nmでの吸光度の連続的な測定によって得た。分析物のピークが試料注入後に検出器に到達するのにかかる時間Xを、保持時間と呼んだ。
【0271】
実施例4
C1qを用いたSPRアッセイ法
野生型抗体および変異体のC1qに対する結合特性を、BIAcore T200機器(BIAcore AB, Uppsala, Sweden)を用いて表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって解析した。
【0272】
このシステムは、分子相互作用の研究のために十分に確立されている。これにより、リガンド/分析物結合の連続的なリアルタイムモニタリング、およびしたがって、様々なアッセイ法設定における動態パラメーターの測定が可能になる。SPR技術は、金でコーティングされたバイオセンサーチップの表面近くでの屈折率の測定に基づいている。屈折率の変化から、固定化されたリガンドと溶液中の注入された分析物との相互作用によって引き起こされる表面上の質量変化が示される。分子が、表面上の固定化されたリガンドに結合する場合、質量は増加し、解離する場合は質量が減少する。本アッセイ法においては、C1q分子を、Biotin CAPture試薬を介してBIAcoreバイオセンサーチップ(GE Healthcare Bioscience, Uppsala, Sweden)上に固定化した。C1qは、6000応答単位(RU)のレベルまでカップリングされた。アッセイ法は、PBS、0.05% Tween20 pH 6.0(GE Healthcare Bioscience)をランニング緩衝液および希釈緩衝液として用いて室温で実施した。
【0273】
試料を、50μL/分の流速で、室温で注入した。結合時間は、100秒であり、解離相は、240秒かかった。再生を、Biotin Capture Kitの供給業者の再生キットによって行った。SPRデータの評価を、注入後100秒での生物学的応答シグナルの高さの比較によって行った。対応するパラメーターは、RUレベル(注入後100秒)である。
【0274】
試料として、wt-IgG1抗体(500 nM)および抗イディオタイプFab-複合型抗体を使用した。それぞれのセンサーグラムを
図6に示す。本明細書において使用されたC1qリガンドを用いてFab-複合IgGの結合が可能となることが理解され得る。