特許第6976343号(P6976343)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6976343治療用タンパク質の不均質性を低減するための連続的方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976343
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】治療用タンパク質の不均質性を低減するための連続的方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/16 20060101AFI20211125BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20211125BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20211125BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20211125BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   C07K1/16
   C07K16/18
   C07K14/47
   C12P21/02 C
   A61K39/395 K
   A61K39/395 X
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-541899(P2019-541899)
(86)(22)【出願日】2017年10月16日
(65)【公表番号】特表2019-533724(P2019-533724A)
(43)【公表日】2019年11月21日
(86)【国際出願番号】IB2017056395
(87)【国際公開番号】WO2018073717
(87)【国際公開日】20180426
【審査請求日】2020年7月20日
(31)【優先権主張番号】201621035458
(32)【優先日】2016年10月17日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】519139365
【氏名又は名称】エンゼン・バイオサイエンシズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ENZENE BIOSCIENCES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ガドギル,ヒマンシュ
(72)【発明者】
【氏名】バネルジー,アビル
(72)【発明者】
【氏名】ヂャガ,ゴパル
(72)【発明者】
【氏名】パンクハニア,アシュヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ロンデ,ハルシタ
(72)【発明者】
【氏名】ラーオ,ディーピカー
【審査官】 山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−163096(JP,A)
【文献】 特表2016−510981(JP,A)
【文献】 Thomas Muller-Spath et al.,Biotechnology and Bioengineering,2008年08月15日,Vol. 100, No. 6,p. 1166-1177
【文献】 T. Muller-Spath et al.,Biotechnology and Bioengineering,2010年11月01日,Vol. 107, No. 4,p. 652-662
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12P
A61K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用タンパク質の不均質性を低減させるための連続的方法であって、単一マルチカラムクロマトグラフィーシステムにおいて該治療用タンパク質の一つ以上の塩基性アイソフォームを減少させることを含み、
ここで、前記単一マルチカラムクロマトグラフィーシステムが少なくとも2つのクロマトグラフィーカラムを含み、前記単一マルチカラムクロマトグラフィーシステムが、セファロースに固定化されたカルボキシペプチダーゼBを含むカラムを含む、方法。
【請求項2】
治療用タンパク質の不均質性を低減させるための連続的方法であって、
(a)第1のカラム、第2のカラム、第3のカラムおよび第4のカラムを含むマルチカラムクロマトグラフィーシステムを提供する工程、
(b)治療用タンパク質を含む細胞培養採取物を、セファロースに固定化されたカルボキシペプチダーゼBを含む前記第1のカラムに供給し、それによって該治療用タンパク質の不均質性を低減させる工程、
(c)前記第1のカラムからのフロースルーを前記第2のカラムへ供給し、それによって該第1のカラムの該フロースルー中の前記治療用タンパク質を捕捉する工程、
(d)前記治療用タンパク質を含む前記第2のカラムからの溶出液を前記第3のカラムに供給して該治療用タンパク質を精製する工程、および
(e)前記治療用タンパク質を含む前記第3のカラムからのフロースルーを前記第4のカラムに供給して該治療用タンパク質を洗練する工程、を含む方法。
【請求項3】
前記第2のカラムからの前記治療用タンパク質を含む前記溶出液を収集すること、およびウイルスを不活性化するために前記治療用タンパク質を含む前記溶出液を低pHに保持することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記第3のカラムに供給する前に、前記第2のカラムからの前記治療用タンパク質を含む前記溶出液をpHおよび導電率の調整に付すことをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記第4のカラムに供給する前に、前記第3のカラムからの前記治療用タンパク質を含む前記フロースルーをpHおよび導電率の調整に付することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1、第2、第3および第4のカラムが直列または並列に順次に接続されている、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のカラムが、前記治療用タンパク質の塩基性アイソフォームの割合を減少させることによって前記治療用タンパク質の不均質性を低減させる、請求項2〜6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のカラムがアフィニティークロマトグラフィーカラムである、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記第3のカラムおよび第4のカラムのそれぞれが、アニオン交換クロマトグラフィーカラム、カチオン交換クロマトグラフィーカラム、疎水性相互作用クロマトグラフィーカラム、およびマルチモーダルクロマトグラフィーカラムからなる群より選択される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記治療用タンパク質が、抗体、抗体フラグメント、モノクローナル抗体、酵素、遺伝子操作タンパク質、免疫原性タンパク質、タンパク質フラグメント、免疫グロブリン、または任意のそれらの組み合わせから選択される、請求項1〜9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記治療用タンパク質が、パニツムマブ、オマリズマブ、アバゴボマブ、アブシキシマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブ、アラシズマブ、アレムツズマブ、アリロクマブ、アルツモマブ、アマツキシマブ、アマツキシマブ、アナツモマブ、アンルキンズマブ、アポリズマブ、アルシツモマブ、アチヌマブ、トシリズマブ、バシリジマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベバシズマブ、ベシレソマブ、ベズロトクスマブ、ビシロマブ、ブリナツモマブ、カナキヌマブ、セルトリズマブ、セツキシマブ、シクスツムマブ、ダクリズマブ、デノスマブ、エクリズマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ、エプラツズマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、フィギツムマブ、ゴリムマブ、イブリツモマブ、チウキセタン、イゴボマブ、イムガツズマブ、インフリキシマブ、イノリモマブ、イノツズマブ、ラベツズマブ、レブリキズマブ、モキセツモマブ、ナタリズマブ、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オレゴボマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、ペルツズマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、リツキシマブ、セクキヌマブ、トシリズマブ、トシツモマブ、トラロキヌマブ、ツコツズマブ、トラスツズマブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ザルツムマブ、ザツキシマブ、酵素、タンパク質、免疫原性または抗原性のタンパク質またはタンパク質フラグメント、アルグルコシダーゼアルファ、ラロニダーゼ、アバタセプト、ガルスルファーゼ、ルトロピンアルファ、抗血友病因子、アガルシダーゼベータ、インターフェロンベータ−1a、ダルベポエチンアルファ、テネクテプラーゼ、エタネルセプト、血液凝固第IX因子、卵胞刺激ホルモン、インターフェロンベータ−1a、イミグルセラーゼ、ドルナーゼアルファ、エポエチンアルファ、インスリンまたはインスリン類似体、メカセルミン、第VIII因子、第VIIa因子、抗トロンビンIII、プロテインC、ヒトアルブミン、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、インターロイキン11、ラロニダーゼ、イデュルスルファーゼ、ガルスルファーゼ、α−1−プロテイナーゼ阻害剤、ラクターゼ、アデノシンデアミナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、甲状腺刺激ホルモンアルファ、酸性β−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ノイラミニダーゼ、ヘキソサミニダーゼAおよびヘキソサミニダーゼB、からなる群より選択される、請求項1〜10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記洗練された治療用タンパク質を医薬組成物に処方することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記マルチカラムクロマトグラフィーシステムが連続モードで操作される、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、治療用タンパク質のバイオ製造の技術分野に関する。特に、本開示は、不均質性が低減された治療用タンパク質を製造するための連続的方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景の説明は、本発明を理解するのに有用であり得る情報を含む。本明細書に提供されるいかなる情報も先行技術であるとは、または現在特許請求されている発明に関連するとは、あるいは、具体的にまたは暗黙的に参照されるいかなる刊行物も先行技術であるとは認められない。
【0003】
治療用タンパク質の重要性の検証はバイオ医薬品産業における新たな革命をもたらした。しかしながら、治療用タンパク質の製造では、製品において高収率および高品質を達成するために必要とされる単離および精製プロセスを大きく妨げるそれらの帯電アイソフォームが一般的に観察される。
【0004】
カルボキシペプチダーゼ酵素は、それがC末端ペプチド結合の加水分解を触媒するので、モノクローナル抗体のような均質形態の治療用タンパク質の調製に一般に使用されている。カルボキシペプチダーゼBは、アルギニンおよびリジンなどの塩基性アミノ酸に優先的に作用するカルボキシペプチダーゼである。
【0005】
治療用タンパク質における不均質性の量を減らすための様々な方法が先行技術において開示されている。例えば、特許文献1(米国特許第5126250号明細書)は、精製前に、ほとんどの不均質抗体を実質的に均質な一つの形態に変換することによって、抗体産生細胞からの分泌抗体の不均質性を低減させる方法を開示している。
【0006】
特許文献2(国際公開第20120147053号)は、細胞培養によって得られた抗体における不均質性を低減させる方法を開示している。
【0007】
特許文献3(米国特許第9062337号明細書)は、ペプチドのC末端残基を切断するために、ペプチジルグリシンアルファアミド化性モノオキシゲナーゼ酵素を利用することを開示している。
【0008】
種々の先行技術文献は、治療用タンパク質の精製および製造のために酵素を固定化することも開示している。ChemuruらのBiopolymers 2014年3月;102(2):206〜221は、アガロースビーズ上に固定化されたカルボキシペプチダーゼBを使用してAβペプチドのlys残基を除去することを開示している。
【0009】
KudryavtsevaらのPharm Chem J(1995)29:70は、プロインスリンをインスリンに変換するために、修飾シリカ上にトリプシンおよびカルボキシペプチダーゼBを固定化することを開示している。安原および大橋のAppl Biochem Biotechnol(1994)44:151は、ペプチドのC末端残基を除去するためのセファロース上へのカルボキシペプチダーゼBの固定化を開示している。
【0010】
特許文献4(米国特許第9657056号明細書)は、灌流バイオリアクターからの液体培地をMCCS1に移して4つのカラムのうち最初の3つのカラムで捕捉し、これらからの溶出液を、ウイルス不活化のために4番目のカラムに装填しインキュベートする、治療用タンパク質原薬の製造のための統合連続プロセスを開示している。組換え治療用タンパク質を含むMCCS1の溶出液は、第2のマルチカラムクロマトグラフィーシステム(MCCS2)に連続的に供給され、MCCS2を用いて組換え治療用タンパク質を精製および洗練(polishing)する。
【0011】
C末端残基からの不均質性の除去は、通常、培地中のバイオリアクターに直接カルボキシペプチダーゼを添加することによって、またはクロマトグラフィー工程の直後に、流加培養で行われる。しかしながら、酵素の添加は、インキュベーション時間、温度、pHなどに関して多くの最適化工程を必要とする。さらに、酵素の高コストはプロセス全体のコストの増大をもたらす。
【0012】
連続的バイオ処理は、定常運転、小さな装置サイズ、高い体積生産性、合理化されたプロセスフロー、低いサイクルタイムおよび減少された資本コストのような種々の利点のために最近大きな関心を集めている。
【0013】
治療用タンパク質の不均質性を低減させるための先行技術において多数のアプローチが開示されているが、不均質性が低減された治療用タンパク質を製造するための連続的な方法は記載されていない。先行技術は、精製前にタンパク質中の不均質性の低減を可能にする方法を提供することにも失敗している。
【0014】
本発明は、他のものと同様に既存の必要性を満たし、そして一般的に先行技術に見られる欠陥を克服する。
【0015】
本明細書における全ての刊行物は、あたかも各々の刊行物または特許出願が具体的かつ個別に参照により組み込まれることが示されるのと同程度に参照により組み込まれる。組み込まれた参考文献中の用語の定義または使用が本明細書中に提供されるその用語の定義と矛盾するかまたはそれに反する場合、本明細書中に提供されるその用語の定義が適用され、参照中のその用語の定義は適用されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5126250号明細書
【特許文献2】国際公開第20120147053号
【特許文献3】米国特許第9062337号明細書
【特許文献4】米国特許第9657056号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本開示の目的は、不均質性が低減された治療用タンパク質の連続生産を可能にするバイオ製造方法を提供することである。
【0018】
本開示の別の目的は、精製工程の前に治療用タンパク質の不均質性を低減することを可能にする連続的方法を提供することである。
【0019】
本開示の別の目的は、治療用タンパク質産生の全収率を犠牲にすることなく治療用タンパク質の不均質性を低減するための連続的方法を提供することである。
【0020】
本開示のさらに別の目的は、不均質性が低減された治療用タンパク質を連続的に製造するために使用することができる非常に適応性があり経済的なバイオ製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明の概要
本開示の局面は、不均質性が低減された治療用タンパク質の連続生産を可能にするバイオ製造方法に関する。本明細書に開示される前記バイオ製造方法は、治療用タンパク質の不均質性を低減し、該治療用タンパク質を捕捉してウイルスを不活性化し、該治療用タンパク質を精製し、精製した該治療用タンパク質を洗練するという単位操作を行うマルチカラムクロマトグラフィーシステムを利用する。
【0022】
一つの局面において、本開示は、単一マルチカラムクロマトグラフィーシステムにおいて治療用タンパク質の一つ以上の塩基性アイソフォームを減少させることを含む、治療用タンパク質の不均質性を低減させるための連続的な方法を提供する。
【0023】
一つの実施形態において、前記マルチカラムクロマトグラフィーシステムは少なくとも2つのクロマトグラフィーカラムを含むことができる。
【0024】
一つの実施形態において、前記マルチカラムクロマトグラフィーシステムは、セファロースに固定化されたカルボキシペプチダーゼBを含むカラムを含むことができる。
【0025】
もう一つ局面において、本開示は、治療用タンパク質の不均質性を低減するための連続的方法を提供し、該方法は以下の工程を含むことができる。
(a)第1のカラム、第2のカラム、第3のカラムおよび第4のカラムを含むマルチカラムクロマトグラフィーシステムを提供する工程。
(b)治療用タンパク質を含む細胞培養採取物を、セファロースに固定化されたカルボキシペプチダーゼBを含む前記第1のカラムに供給し、それによって該治療用タンパク質の不均質性を低減させる工程。
(c)前記第1のカラムからのフロースルーを前記第2のカラムへ供給し、それによって該第1のカラムの該フロースルー中の前記治療用タンパク質を捕捉する工程。
(d)前記治療用タンパク質を含む前記第2のカラムからの溶出液を前記第3のカラムに供給して該治療用タンパク質を精製する工程。
(e)前記治療用タンパク質を含む前記第3のカラムからのフロースルーを前記第4のカラムに供給して該治療用タンパク質を洗練する工程。
【0026】
一つの実施形態において、前記第2のカラムからの治療用タンパク質を含む溶出液を収集し、ウイルス不活化のために低pHのリザーバーに保持することができる。ウイルス不活化後、前記第2のカラムからの前記溶出液を、前記第3のカラムに供給される前に、pHおよび導電率の調整に付することができる。
【0027】
一つの実施形態において、前記第3のカラムからの治療用タンパク質を含むフロースルーを、該フロースルーが前記第4のカラムに供給される前に、pHおよび導電率の調整に付することができる。
【0028】
一つの実施形態において、前記マルチカラムクロマトグラフィーシステムの前記第1、第2、第3および第4のカラムは、直列または並列に順次に接続することができる。
【0029】
一つの実施形態において、前記第1のカラムは、前記治療用タンパク質の塩基性アイソフォームの割合を減らすことによって治療用タンパク質の不均質性を減らす。
【0030】
一つの実施形態において、前記第2のカラムはアフィニティークロマトグラフィーカラムであり得る。
【0031】
一つの実施形態において、前記第3のカラムおよび第4のカラムのそれぞれは、アニオン交換クロマトグラフィカラム、カチオン交換クロマトグラフィカラム、疎水性相互作用クロマトグラフィカラムおよびマルチモーダルクロマトグラフィカラムからなる群より選択することができる。
【0032】
一つの実施形態において、本開示の方法によって調製/使用することができる治療用タンパク質としては、抗体、抗体フラグメント、モノクローナル抗体、酵素、遺伝子操作タンパク質、免疫原性タンパク質、タンパク質フラグメント、免疫グロブリンおよびそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本開示の実施形態によれば、本開示の方法によって処理された/結果として得られた治療用タンパク質は、さらなる精製および/または汚染除去ステップなしに医薬組成物に処方することができる。
【0034】
本開示の実施形態によれば、本方法で使用される前記マルチカラムクロマトグラフィーシステムは、連続モードで定常状態で運転することができる。
【0035】
本発明の主題の様々な目的、特徴、態様および利点は、以下の好ましい実施形態の詳細な説明からさらに明らかになるであろう。
【0036】
添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書中に組み込まれそしてその一部を構成する。図面は、本開示の例示的な実施形態を示しており、明細書と共に本開示の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本開示の実施形態による、4つのカラム上で治療用タンパク質を連続処理するための例示的なプロセスフローを示す図である。
図2】一つの精製システムにおいて連続的に接続された2つのカラムに対するクロマトグラムを示す図である。
図3】CPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラムおよびそれに続くプロテインAカラムにおいて、mAb Aについて連続モードで約25分間(RT)実施したクロマトグラムプロファイルを示す図である。
図4】同じ流速で運転するときのカラム1とカラム2の連続処理設定を示す図である。
図5】CPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラムおよびそれに続くプロテインAカラムにおいて、mAb Aについて連続モードで20分間(RT)実施したクロマトグラムプロファイルを示す図である。
図6】対照およびCPB−PA溶出液についてのWCEX分析データを示す図である。
図7】異なる流速で運転するときのカラム1とカラム2の連続処理設定を示す図である。
図8】CPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラムおよびそれに続くプロテインAカラムにおいて、mAb Aについて連続モードで2分間(Rt)実施したクロマトグラムプロファイルを示す図である。
図9】対照およびCPB−PA溶出液についての2分間(RT)のWCEX分析データを示す図である。
図10】mAb Aについてのカラム1上のそれぞれ20分間(RT)および2分間(RT)のCPB−PA溶出液についてのWCEX分析データを示す図である。
図11】CPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラムおよびそれに続くプロテインAカラムにおいて、mAb Bについて連続モードで2分間(RT)実施したクロマトグラムプロファイルを示す図である。
図12】2分間(RT)のmAb B対照およびmAb B CPB−PA溶出液についてのWCEX分析データを示す図である。
図13】AKTApcc(3Cpcc)での対照としてのmAb Aについて実行したプロテインAカラムのクロマトグラムプロファイルを示す図である。
図14】AKTApcc(3Cpcc)において連続モードでmAb Aについて実行したCPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラム(カラム1)およびそれに続くプロテインAカラムにおける、それぞれ10mg/ml、20mg/mlおよび40mg/mlの負荷密度でのクロマトグラムプロファイルを示す図である。
図15】AKTApcc(3Cpcc)において連続モードでmAb Aについて実行したCPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラム(カラム1)およびそれに続くプロテインAカラムにおける、80mg/mlの負荷密度でのクロマトグラムプロファイルを示す図である。
図16】対照と共に、個々の負荷密度についての中和CPB−PA溶出液のWCEX分析データを示す図である。
図17】mAb Aについてのカラム1での異なる負荷密度でのCPB−PA溶出液と対照についてのWCEX分析データを示す図である。
図18】mAb Aの連続処理のためのAKTApcc(4C PCC)設定を示す図である。
図19】AKTApcc(4C PCC)でのmAb Aについての連続処理についてのクロマトグラムプロファイルを示す図である。
図20】連続処理からのカラム2溶出液とカラム4溶出液および対照についてのWCEX分析データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下は、本開示の実施形態の詳細な説明である。実施形態は、本開示を明確に伝達するように詳細に記載されている。しかしながら、提供される詳細の量は、実施形態の予想される変形を限定することを意図しておらず、それどころか、その意図は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本開示の精神および範囲内に含まれるすべての修正形態、等価物、および代替形態を網羅することである。
【0039】
脈上別段の要求がない限り、以下の明細書全体を通して、「含むcomprise」およびその変形、例えば「含むcomprises」および「含むcomprising」は、開放的に解釈されるべきであり、「含むが、とは限らない」の意味を含む。
【0040】
本明細書を通して「一つの実施形態one embodiment」または「ある実施形態an embodiment」への言及は、その実施形態に関連して説明した特定の特徴、構造または特性が少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な箇所での「一つの実施形態では」または「ある実施形態では」という句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、一つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0041】
本明細書および以下の特許請求の範囲を通して使用されるように、「a」、「an」、および「the」の意味は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の言及を含む。また、本明細書の説明で使用されているように、「中in」の意味は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、「中in」および「上on」を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明の特定の実施形態を説明および特許請求するために使用される成分の量、濃度などの特性、プロセス条件などを表す数は、いくつかの事例では「約」という用語によって修正されると理解されるべきである。したがって、いくつかの実施形態では、記載されている説明に記載されている数値パラメータは、特定の実施形態によって得られることが求められる所望の特性に応じて変わり得る近似値である。いくつかの実施形態では、数値パラメータは、報告された有効桁数を考慮して、通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。本発明のいくつかの実施形態の広い範囲を説明する数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載された数値は実施可能な限り正確に報告されている。
【0043】
本明細書における値の範囲の列挙は単に、その範囲内に含まれるそれぞれの別々の値を個々に指す簡潔な方法として役立つことを意図している。本明細書で別段の指定がない限り、各個別の値は、あたかも本明細書で個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0044】
本明細書に記載のすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、適切な順序で実行することができる。本明細書の特定の実施形態に関して提供されるありとあらゆる例、または例示的な言語(例えば「など」)の使用は、単に本発明をよりよく明らかにするためのものであり、特許請求の範囲に記載の発明の範囲を限定しない。本明細書中のいかなる言語も、本発明の実施に必須のあらゆる請求されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0045】
本明細書に提供される本発明の見出しおよび要約は、便宜上のものにすぎず、実施形態の範囲または意味を解釈するものではない。
【0046】
本明細書では様々な用語が使用されている。請求項で使用されている用語が以下に定義されていない限り、関連分野の当業者がその時点で印刷出版物および発行済み特許に反映されているようにその用語を与えているものとする。
【0047】
本明細書で使用される「連続的方法」という用語は、一連の2つ以上の処理工程を有する任意の方法を指し、上流工程(単位操作)からの出力が最終クロマトグラフィーステップまで連続して下流工程(単位操作)に移行する。次の処理工程が開始される前に上流の処理工程が完了するまで実行する必要はない。連続的方法では、ターゲット製品の一部が常に処理システム内を移動している。理想的には、連続プロセスは、可能な限り最大限に、連続プロセスの各工程または単位操作が同時にかつ実質的に同じ生産速度で運転されるように調節される。このようにして、サイクルタイムの圧縮が最大化され、最短の完了時間が達成される。
【0048】
「連続移送」という用語は、上流の単位操作から下流の単位操作へと移動する生成物流を示し、2つの単位操作間の接続またはリンクは、上流の単位操作が製品ストリームを(直接または他のコンポーネントを介して)2番目の(下流の)単位操作に転送するようなものであり、下流の単位操作が上流の単位操作が完了する前に開始する(すなわち、2つの連続する単位操作が、2つの単位操作が一部を構成する全体のプロセス実行の少なくとも一部について、それらに流入する製品ストリームを同時に処理している)ことを意味している。
【0049】
本明細書で使用される「灌流細胞培養プロセス」という用語は、新鮮な培地をバイオリアクターに連続的に供給し、細胞をリアクター内に保持しながら絶えず無細胞消費培地を除去することによって行われる灌流培養を指し、従って、細胞は細胞保持装置を介して反応器内に保持されるので、連続培養と比較してより高い細胞密度を灌流培養において得ることができる。灌流速度は、細胞株の需要、飼料中の栄養素の濃度、および中毒化のレベルによって異なる。
【0050】
「細胞培養培地」という用語は、細胞培養の文脈において使用されるあらゆる種類の培地を指す。典型的には、細胞培養培地は、アミノ酸、エネルギー源としての少なくとも一つの炭水化物、微量元素、ビタミン、塩、および場合によっては追加の成分を含む(例えば、細胞増殖および/または生産性および/または製品品質に影響を及ぼすため)。
【0051】
「治療用タンパク質」という用語は、液体培地中にまたは宿主細胞(例えば、哺乳動物、酵母、または細菌の宿主細胞)および生物学的汚染物質(例えば、ウイルス性および細菌性汚染物質)に存在する汚染タンパク質、脂質、および核酸から十分に精製または単離された組換えタンパク質を意味し、医薬品に処方することができる。治療用タンパク質の代表的な例としては、抗体、抗体フラグメント、モノクローナル抗体、酵素、遺伝子操作されたタンパク質、免疫原性タンパク質、タンパク質フラグメントおよび免疫グロブリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
「抗体」という用語は、血清の機能成分を指し、しばしば分子の集合(抗体または免疫グロブリン、フラグメントなど)または分子として呼ばれる。抗体分子は特定の抗原決定基に結合するかまたはそれと反応することができ、そのことが特定の免疫学的効果または機構を導き得る。
【0053】
「モノクローナル抗体」という用語は、単一クローンの細胞または細胞株によって産生され、同一の抗体分子からなる抗体を指す。
【0054】
「アイソフォーム」という用語は、類似だが同一ではないアミノ酸配列を有し、異なる遺伝子によって、または異なるエクソンが除去されている同じ遺伝子からのRNA転写物によってコードされる、2つ以上の機能的に類似するタンパク質のいずれかを指す。
【0055】
「不均質性」という用語は、分泌された抗体が、抗体重鎖の一方または両方のカルボキシ末端にある一つまたは複数の余分なアミノ酸などであるがこれらに限定されない様々な別々の生化学形態を有する現象を指す。
【0056】
本明細書で使用される「不均質性を低減させる」という用語は、不均一形のモノクローナル抗体を実質的に純粋な均一形に変換するための方法を指す。
【0057】
本明細書で使用される「保持時間」という用語は、半分の量の溶質がクロマトグラフシステムから溶出される時間を指す。カラムの長さと溶質の移動速度によって決まり、1〜30分の範囲であり得る。
【0058】
「マルチカラムクロマトグラフィーシステム」または「MCCS」という用語は、全部で2つ以上の相互接続されたまたはスイッチングクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜のシステムを意味する。マルチカラムクロマトグラフィーシステムの非限定的な例には、合計2つ以上の相互接続またはスイッチングクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜を含む周期的向流クロマトグラフィーシステム(PCC)が含まれる。
【0059】
「溶出液/濾液」という用語は技術用語であり、検出可能な量の組換え治療用タンパク質を含むクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜から放出される流体を意味する。
【0060】
本開示の実施形態は、不均質性が低減された治療用タンパク質の連続生産を可能にするバイオ製造方法に関する。本明細書に開示されるバイオ製造方法は、治療用タンパク質の不均質性を低減し、治療用タンパク質を捕捉してウイルスを不活性化し、治療用タンパク質を精製し、精製した治療用タンパク質を洗練するという単位操作を行うマルチカラムクロマトグラフィーシステムを利用する。
【0061】
一つの局面において、本開示は、単一マルチカラムクロマトグラフィーシステムにおいて治療用タンパク質の一つ以上の塩基性アイソフォームを減少させることを含む、治療用タンパク質の不均質性を低減させるための連続的な方法を提供する。
【0062】
一つの実施形態において、マルチカラムクロマトグラフィーシステムは少なくとも2つのクロマトグラフィーカラムを含むことができる。
【0063】
一つの実施形態において、マルチカラムクロマトグラフィーシステムは、セファロースに固定化されたカルボキシペプチダーゼBを含むカラムを含むことができる。
【0064】
もう一つの局面において、本開示は、治療用タンパク質の不均質性を低減するための連続的方法を提供し、この方法は以下の工程を含み得る。
(a)第1のカラム、第2のカラム、第3のカラムおよび第4のカラムを含むマルチカラムクロマトグラフィーシステムを提供する工程。
(b)治療用タンパク質を含む細胞培養採取物を、セファロースに固定化されたカルボキシペプチダーゼBを含む前記第1のカラムに供給し、それによって該治療用タンパク質の不均質性を低減させる工程。
(c)前記第1のカラムからのフロースルーを前記第2のカラムへ供給し、それによって該第1のカラムの該フロースルー中の前記治療用タンパク質を捕捉する工程。
(d)前記治療用タンパク質を含む前記第2のカラムからの溶出液を前記第3のカラムに供給して該治療用タンパク質を精製する工程。
(e)前記治療用タンパク質を含む前記第3のカラムからのフロースルーを前記第4のカラムに供給して該治療用タンパク質を洗練する工程。
【0065】
一つの実施形態において、前記マルチカラムクロマトグラフィーシステムの前記第1、第2、第3および第4のカラムは、直列または並列に順次に接続することができる。
【0066】
一つの実施形態において、第1のカラムは、治療用タンパク質の塩基性アイソフォームの割合を減らすことによって治療用タンパク質の不均質性を減らす。
【0067】
一つの実施形態において、第2のカラムはアフィニティークロマトグラフィーカラムであり得る。
【0068】
一つの実施形態において、前記第3のカラムおよび第4のカラムのそれぞれは、アニオン交換クロマトグラフィカラム、カチオン交換クロマトグラフィカラム、疎水性相互作用クロマトグラフィカラムおよびマルチモーダルクロマトグラフィカラムからなる群より選択することができる。
【0069】
本開示の実施形態によれば、本方法で使用される前記マルチカラムクロマトグラフィーシステムは、連続モードで定常状態で運転することができる。
【0070】
連続法の一つの好ましい実施形態において、不均質性が低減された組換えタンパク質を含む第1のカラムからのフロースルーが収集されるか、または第2のカラムに連続的に装填される。第2のカラムからの溶出液は、それに対するpHが低pHウイルス不活性化に必要とされる範囲内になるように集められ、そして必要なインキュベーション時間の間、それをリザーバー中に保持する。ウイルス不活化後、マルチカラムクロマトグラフィーシステムの第2カラムからの溶出液のpHを、インライン緩衝液/溶液添加によって第3のカラムへのローディングに必要なpHおよび伝導率に調整する。第2カラムからの溶出液は、例えばHCP、HcDNAおよびウイルスのような他の不純物を除去するための中間精製工程のために予め平衡化された第3のカラムに負荷される。前記第3のカラムはフロースルーモードまたは結合溶出モードで操作できる。第3のカラムからのフロースルーはリザーバーに集められ、次に第4のカラムに負荷される前にシステム上でインラインでpHと導電率を調整する。サンプル条件がそれぞれの治療用タンパク質の連続的方法の条件と同じ場合は、第4のカラムに直接負荷することもできる。次いで、結合および溶出モードで操作した場合、治療用タンパク質は、第4のカラムから溶出することができ、またはフロースルーモードで操作した場合、フロースルーを収集することができる。したがって、治療用組換えタンパク質を製造するための全連続的方法は、マルチカラムクロマトグラフィーシステムの単一ユニット操作で完了することができる。このプロセスから得られる治療用タンパク質は、純粋であり、大量の生産性、合理化されたプロセスフロー、短いサイクルタイム、そして資本コストの削減が得られる。四つカラム上で治療用タンパク質を連続的に処理するための例示的なプロセスフローを図1に示す。
【0071】
一つの実施形態において、マルチカラムクロマトグラフィーシステムの第1のカラムは、治療用タンパク質の塩基性荷電アイソフォームを除去することによって治療用タンパク質の不均質性を低減させるという単位操作を実行する。
【0072】
一つの実施形態において、不均質性除去のプロセスは、AKTA Avant150、AKTA pcc2カラム、AKTA pcc3カラム、AKTA pcc4カラムおよびBioSMB PALLを含む複数のカラムを接続することができる任意のクロマトグラフィーシステムを使用して実施することができる。
【0073】
一つの実施形態において、中間の精製および洗練工程は、アニオン交換クロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーまたはマルチモーダルクロマトグラフィーなどの異なるクロマトグラフィー法を使用して連続的に実施することができる。適切なクロマトグラフィーは、プロセスパラメーター、所望の品質、純度、回収率および生産性に基づいて選択することができる。
【0074】
本開示の方法によって調製され得る/使用され得る治療用タンパク質の例としては、抗体、抗体フラグメント、モノクローナル抗体、酵素、遺伝子操作タンパク質、免疫原性タンパク質、タンパク質フラグメント、免疫グロブリンおよびそれらの任意の組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0075】
一つの実施形態において、モノクローナル抗体は、天然に存在する抗体、またはモノクローナル抗体、修飾抗体、抗体の誘導体および抗体のフラグメントあるいはそれらの任意の組み合わせから選択される組換え抗体、から選択される。
【0076】
一つの実施形態において、前記治療用タンパク質は、以下から選択することができるが、これらに限定されない:パニツムマブ、オマリズマブ、アバゴボマブ、アブシキシマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブ、アラシズマブ、アレムツズマブ、アリロクマブ、アルツモマブ、アマツキシマブ、アマツキシマブ、アナツモマブ、アンルキンズマブ、アポリズマブ、アルシツモマブ、アチヌマブ、トシリズマブ、バシリジマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベバシズマブ、ベシレソマブ、ベズロトクスマブ、ビシロマブ、ブリナツモマブ、カナキヌマブ、セルトリズマブ、セツキシマブ、シクスツムマブ、ダクリズマブ、デノスマブ、エクリズマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ、エプラツズマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、フィギツムマブ、ゴリムマブ、イブリツモマブ、チウキセタン、イゴボマブ、イムガツズマブ、インフリキシマブ、イノリモマブ、イノツズマブ、ラベツズマブ、レブリキズマブ、モキセツモマブ、ナタリズマブ、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オレゴボマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、ペルツズマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、リツキシマブ、セクキヌマブ、トシリズマブ、トシツモマブ、トラロキヌマブ、ツコツズマブ、トラスツズマブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ザルツムマブ、ザツキシマブ、酵素(例えば、ガラクトシダーゼ(例えば、アルファ−ガラクトシダーゼ)、ミオザイム、もしくはセレザイム)、タンパク質(例えば、ヒトエリスロポエチン、腫瘍壊死因子(TNF))、またはインターフェロンアルファもしくはベータ)、または免疫原性または抗原性のタンパク質またはタンパク質フラグメント(例えば、ワクチンでの使用のためのタンパク質)、アルファアルグルコシダーゼ、ラロニダーゼ、アバタセプト、ガルスルファーゼ、ルトロピンアルファ、抗血友病因子、アガルシダーゼベータ、インターフェロンベータ−1a、ダルベポエチンアルファ、テネクテプラーゼ、エタネルセプト、凝固因子IX、卵胞刺激ホルモン、インターフェロンベータ−1a、イミグルセラーゼ、ドルナーゼアルファ、エポエチンアルファ、インスリンまたはインスリンアナログ、メカセルミン、第VIII因子、第VIIa因子、抗トロンビンIII、プロテインC、ヒトアルブミン、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、インターロイキン−11、ラロニダーゼ、イデュルスルファーゼ、ガルスルファーゼ、α−1−プロテイナーゼ阻害剤、ラクターゼ、アデノシンデアミナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、チロトロピンアルファ、酸性β−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ノイラミニダーゼ、ヘキソサミニダーゼAおよびヘキソサミニダーゼB。
【0077】
好ましい実施形態において、治療用タンパク質の培地は任意の供給源に由来し得る。例えば、限定されないが、組換え細胞培養(例えば、組換えられた細菌、酵母、または哺乳動物細胞培養物)から由来する。培養培地は、流加細胞培養、組換え治療用タンパク質を分泌する細胞の培養物を含む流加バイオリアクター、または灌流細胞培養から得ることができる。液体培地はまた、組換え治療用タンパク質を分泌する細菌細胞または酵母細胞の培養物からの清澄化液体培地であり得る。
【0078】
本開示の一つの実施形態において、モノクローナル抗体の重鎖上のC末端リジン残基は、灌流細胞培養物から回収された回収物を、セファロース上に固定化されたカルボキシペプチダーゼB酵素を有するカラムに通すことによって連続的方法で切断され得る。前記反応から生成された均質収穫物は、モノクローナル抗体のさらなる精製のために、連続方式でさらにアフィニティークロマトグラフィーカラムに移される。
【0079】
本開示の一つの実施形態において、本明細書に開示される連続的方法は、モノクローナル抗体のC末端残基の減少に必要な酵素の量を減らすことができる。
【0080】
本開示の一つの実施形態において、バイオリアクターから交互接線濾過(alternative tangential filtration)を通して連続的に得られる採取細胞培養液を、カルボキシペプチダーゼB固定化カラムに所定pHで負荷し、次いで連続クロマトグラフィーシステムでタンデムにまたはMCCSで直列または並列に接続されたアフィニティーカラムに連続的に負荷することができる。
【0081】
特定の好ましい実施形態において、培養細胞中のタンパク質濃度は、採取細胞培養液1Lあたり50〜2500mgの濃度範囲である。
【0082】
一つの実施形態において、モノクローナル抗体の基本アイソフォームは、50〜100パーセントの範囲で減少させることができる。
【0083】
本開示の実施形態によれば、本開示の方法によって処理された/結果として得られた治療用タンパク質は、さらなる精製および/または汚染除去ステップなしに医薬組成物に処方することができる。
【0084】
本開示の実施形態によれば、本明細書に開示される方法は、治療用タンパク質のための連続的生物学的製造システムを形成する。
【0085】
本開示はまた、カルボキシペプチダーゼ結合セファロースカラム用の樹脂の調製方法および治療用タンパク質の処理に使用される樹脂の安定性も提供する。
【実施例】
【0086】
以下の実施例によって本開示をさらに説明するが、これは決してさらなる限定として解釈されるべきではない。記載された特定の方法および結果は単なる例示であることを当業者は容易に認識するであろう。
【0087】
実施例1:方法のための樹脂の調製
樹脂は以下の方法で調製した。
1)CNBR活性化Sepharose(商標)4B凍結乾燥粉末を水中で膨潤させ、1mMのHClで洗浄した。樹脂をpH10.0の0.1M重炭酸ナトリウム緩衝液でさらに洗浄した。
2)緩衝液交換された酵素カルボキシペプチダーゼBをpH10.0で2:1(CPB:樹脂)の比で樹脂と共に、穏やかに攪拌しながら2〜8℃で一晩インキュベートした。
3)反応混合物を周囲温度にし、水素化ホウ素ナトリウムを4mg/mLのカップリング樹脂の比で加えた。懸濁液を周囲温度で1時間インキュベートした。
4)樹脂をカラムに充填し、pH7.0の50mMリン酸ナトリウム緩衝液で十分に洗浄した。
5)カラムを使用前に、20mMトリスHClおよび150mMNaClでpH9.0でさらに洗浄した。
【0088】
インハウスCPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4B樹脂の安定性と保存:
この樹脂は、2〜8℃で貯蔵した場合になお実行可能な多数のサイクルで1年以上安定であることが見出された。この樹脂は、性能を低下させることなく室温での連続処理に使用できる。
【0089】
実施例2:抗体変異体を減少させるための方法
2つのカラムを一つの精製システムにおいて連続的に接続し、ここでCPB−セファロースカラムの入口をシステムに接続し、同じカラムの出口をプロテインAカラムの入口として使用する。CPB−セファロースカラムから出てくるフロースルーを捕捉工程のためにプロテインAカラムに直接負荷した。タンパク質は溶出緩衝液を用いて最後に溶出された(図2)。
【0090】
1.CPB−セファロースカラムはアフィニティーカラムにタンデムで接続し、灌流細胞培養からの清澄化した細胞培養回収物をpH7.0で予め平衡化したカラムに負荷し、ここで、カラム1上で約25分以上の接触時間にわたってpH6.5〜9.0で平衡化することができる。
2.CPB−セファロースカラムから出てくるフロースルーを、治療用タンパク質の捕捉のためにCPB−セファロース樹脂の出口に接続されたアフィニティーカラムに直接負荷した。
3.アフィニティーカラムである第2のカラムに捕捉された抗体を、最終的に0.1M酢酸でpH3.0で溶出し、そして2Mトリス塩基で中和した。
【0091】
灌流バイオリアクターから出て、捕獲工程のためにプロテインAに直接負荷した同じ収穫物を用いて1回の対照実験を行った。両方のプロテインA溶出サンプルを帯電変異体の分析のためにWCEX−HPLCにより分析した。
【0092】
図2は、一つの精製システムにおいて連続的に接続された2つのカラムに対するクロマトグラムを示す。
【0093】
図3は、CPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラムおよびそれに続くプロテインAカラムにおいて、mAb Aについて連続モードで約25分間(RT)行ったクロマトグラムプロファイルを示す。
【0094】
実施例3:治療用タンパク質(mAb A)の連続処理
滞留時間研究1:
カラム1上で約25分の接触時間で初期のクロマトグラフィー実行が行われたので、治療用タンパク質の不均質性の最適な低減を得るために与えられるべき最小接触時間を評価するためにさらにいくつかの実行が行われた。
【0095】
クロマトグラフィーを、インハウスCPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラム(カラム1、CV=10ml)およびそれに続くプロテインA(Mab Select SuRe(商標)pcc)カラム(カラム2、CV=1ml)(順次CPB−PA)において連続モードで行った(図4)。AKTA Avant 150プロセスクロマトグラフィーシステム(GE Healthcare)において、治療用タンパク質(mAb A)清澄化細胞培養液(約40mg)を用いて、滞留時間をそれぞれカラム1では20分、カラム2では2分に維持して0.5ml/分の流速で、処理を行った。AKTA AvantシステムはAKTA PCCシステムに置き換えることができる。
【0096】
図4は、同じ流速で運転するときのカラム1とカラム2の連続処理設定を示す。
【0097】
中和サンプル(CPB−PA溶出液)を、対照(CPBなしのプロテインA溶出液のみ)と共にWCEX分析に付した(図5)。
【0098】
図5は、CPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラムおよびそれに続くプロテインAカラムにおいてmAb Aについて連続モードで20分間(RT)実施したクロマトグラムプロファイルを示す。
【0099】
CPB−PA溶出液は、WCEX分析比較データに示されるように、対照と比較して、mAb A中の塩基性変異体の消化/除去を示した(図6)。
【0100】
図6は、対照およびCPB−PA溶出液についてのWCEX分析データを示す。この実験は、カラム上のCPBが、20分(RT)で塩基性変異体の活性または開裂/消化を示すことを結論づけた。
【0101】
滞留時間研究2:
カラム上の最小滞留時間(RT)を評価するために、CPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラム(カラム1)上で、2分間のRTを維持しつつ、流速を0.5ml/分から10ml/分に変え、一方、プロテインAカラム(カラム2)の流速は、2分間のRTを維持しつつ、0.5ml/分であった。この場合、カラム容量が異なるとき、異なるRTおよび流速を維持するように、カラム1のフロースルーを集め、次いで連続モードでカラム2に再負荷した(図7)。
【0102】
図7は、異なる流速で運転するときのカラム1とカラム2の連続処理設定を示す。中和されたサンプル(CPB−PA溶出液、2分間(RT))を、対照(CPBなしのプロテインA溶出液のみ)およびCPB−PA溶出液と共に、20分間(RT)、WCEX分析に付した。(図8)。
【0103】
図8は、CPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラムおよびそれに続くプロテインAカラムにおいて、mAb Aについて連続モードで2分間(Rt)実施したクロマトグラムプロファイルを示す。
【0104】
WCEX分析比較データに示されるように、CPB−PA溶出液は、カラム1においても、2分間(RT)において対照と比較してmAb A中の塩基性変異体の消化/除去を示した(図9)。
【0105】
図9は、対照およびCPB−PA溶出液についての2分間(RT)のWCEX分析データを示す。
【0106】
2つの異なるRTでの低減の比較
カラム1の2分の滞留時間で、消化はカラム1の20分(RT)でのものと有意に匹敵していた(図10)。図10は、mAb Aについてのカラム1でのそれぞれ20分間(RT)および2分間(RT)のCPB−PA溶出液についてのWCEX分析データを示す。したがって、クロマトグラフィーを、2分間の滞留時間で連続的に実行することもできる。2分未満の滞留時間もまた評価することができる。
【0107】
実施例4:mAb Bにおいて塩基性アイソフォームを減少させるための方法
カルボキシペプチダーゼBは、アルギニンおよびリジンなどの塩基性アミノ酸に優先的に作用する。したがって、この樹脂は、任意のクラスのIgGまたはモノクローナル抗体に属する帯電アイソフォームの除去に使用できる。連続方式での第1工程自体でのこのような帯電アイソフォームの除去は、高回収率で高品質、高純度の生成物を生成することができる。CPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラムおよびそれに続くプロテインAカラムにおいて連続モードで2分間(RT)実行したときの帯電アイソフォーム/塩基性変異体の除去について評価した別のmAbモデルはmAb Bであった(図11)。
【0108】
図11は、CPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラムおよびそれに続くプロテインAカラムにおいて、mAb Bについて連続モードで2分間(RT)実施したクロマトグラムプロファイルを示す。
【0109】
WCEX分析比較データに示されるように、CPB−PA溶出液は、対照(CPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラムなしで中和されたプロテインA溶出液のみ)と比較してmAb B中の塩基性変異体の消化/除去を示した(図12)。したがって、この戦略は塩基性帯電変異体の除去のために全てのクラスのIgGに属する任意のモノクローナル抗体に適用可能であると結論付けることができる。
【0110】
実施例5:3つのカラム上で異なる負荷密度でmAb Aにおける塩基性アイソフォームを減少させるための方法:
【0111】
CPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラムでの最大負荷容量を評価するために、表1に記載のようなmAb A清澄化細胞培養液を使用して、異なる負荷密度を連続モードで評価した。インハウスCPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラム(カラム1)およびそれに続くプロテインA(Mab Select SuRe LX)カラム(カラム2)(順次CPB−PA)を連続モードで使用して、クロマトグラフィーを実施した。一つのCPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラム(カラム1)および二つのプロテインAカラム(カラム2)が並列に接続されている場合、AKTA pcc(三カラム周期的向流クロマトグラフィー、3C PCC)(GE Healthcare)において、流速5ml/分で、潅流培地からのmAb A清澄化細胞培養液を用いて、処理を行った。カラム1で維持された滞留時間は、以前の研究よりも短い1.7分に相当し、カラム2では(使用される樹脂がMab Select SuRe LXであるので)約4.4分であった。
【0112】
【表1】
【0113】
表1に記載のWCEX分析比較のためにプロテインAカラムのみを使用して対照実験を実施した。カラム1での負荷密度がそれぞれ10mg/ml、20mg/ml、40mg/mlおよび80mg/mlである3、4、5および6番に記載の条件によるクロマトグラフィーを連続的に実施した。このクロマトグラフィー実行において、一つのCPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラム(カラム1)および二つのプロテインAカラム(カラム2)を並列に接続し、カラム1およびカラム2を順次実行した(クロマトグラムプロファイルは図13および図14について)。対照との比較のために、中和サンプルをWCEX分析に供した。
【0114】
図13は、AKTA pcc(3C pcc)での対照としてのmAb Aについて実行したプロテインAカラムのクロマトグラムプロファイルを示す。
【0115】
図14は、AKTA pcc(3C pcc)において連続モードでmAb Aについて実行したCPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラム(カラム1)およびそれに続くプロテインAカラムにおける、それぞれ10mg/ml、20mg/mlおよび40mg/mlの負荷密度でのクロマトグラムプロファイルを示す。
【0116】
図15は、AKTA pcc(3C pcc)において連続モードでmAb Aについて実行したCPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラム(カラム1)およびそれに続くプロテインAカラムにおける、80mg/mlの負荷密度でのクロマトグラムプロファイルを示す。
【0117】
図16は、対照と共に、個々の負荷密度についての中和CPB−PA溶出液のWCEX分析データを示す。図16に見られるように、対照と比較した場合、樹脂は塩基性電荷アイソフォームの活性または減少を示していた。そのため、この樹脂はカラム1において負荷密度が80mg/mlを超えても機能することがあり、この場合、プロテインA樹脂のカラム容量もCPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラムと同じままであり、並列しているプロテインAの2つのカラムは、一つのカラム1からの出力量を十分にする必要がある。
【0118】
図17は、mAb Aについてのカラム1での異なる負荷密度でのCPB−PA溶出液と対照についてのWCEX分析データを示す。すべての異なる負荷密度についてのWCEX分析データを比較すると、全てのサンプルにおいて塩基性帯電アイソフォームの減少があったが、カラム1上の80mg/mlの負荷密度の場合、酸性変異体のわずかな増加が見られた(図17)。これは、より高い負荷密度、すなわちより高いタンパク質:CPBの比、またはより長い負荷時間に起因し得る。しかし、全ての実行における滞留時間は1.7分で同じであり、カラム1において負荷時間が80分である表1に記載の条件1の一つの比較データにおいて、酸性アイソフォームの増加はなかった(図5)。したがって、考えられる理由は、カラム2を前進(フロースルーモード)したときにカラム1に負荷された総タンパク質であり、負荷されたタンパク質の時間と量に伴って酸性変異体が徐々に増加し、カラム2に蓄積され(結合および溶出モード)、溶出された総タンパク質は酸性形態が増加している可能性がある。従って、要求される品質および量が得られる実行の間に、50mM酢酸ナトリウム(pH5.0)または他の類似の緩衝液を含むpH3.0以上の緩衝液用いてカラム1が再生されればより良いであろう。
【0119】
実施例6:1ユニット操作で四つのカラム上の治療用タンパク質(mAb A)の不均質性を低減させるための連続的方法:
【0120】
AKTA pcc(3カラム周期的向流クロマトグラフィー、4C PCC)(GE Healthcare)において、流量5ml/分で、灌流培養からのmAbA清澄化細胞培養液を用いて、並行した四つのカラムが順次実行される連続モードでクロマトグラフィーを実行した(図18および図19)。インハウスCPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラム(カラム1)に続いて、プロテインA(Mab Select SuRe LX)カラム(カラム2)、続いてウイルス不活化およびアニオン交換クロマトグラフィー(QSepharoseFastFlow)(カラム3)、および続いて、カチオン交換クロマトグラフィー(SPSepharoseFastFlow)(カラム4)を連続モードで実施した。上記のスキーム、他のクロマトグラフィー技術および樹脂化学に限定されない方法を、品質、純度および生産性または回収率の要求に基づいて、疎水性相互作用クロマトグラフィーまたは混合モードクロマトグラフィーに組み込むこともできる。クロマトグラフィー工程の順序もまた必要に応じて変えることができる。
【0121】
図18は、mAb Aの連続処理のためのAKTA pcc(4C PCC)の設定を示す。
【0122】
使用したカラム方向緩衝液(column wise buffer)を以下に示す。所望の品質および生産性のために、他の組み合わせの緩衝液も同じ範囲のpHおよび導電率で使用することができる。
【0123】
1)カラム1:カラム容量=8.5ml、負荷密度=60mg/ml
平衡化および負荷後洗浄:50mMトリスHCl、pH7.0±0.2、導電率4.0±1.0mS/cm
再生:50mM酢酸ナトリウム、pH5.0±0.2、導電率3.6±1.0mS/cm
2)カラム2:カラム容量=22ml、負荷密度=23mg/ml
平衡化および負荷後洗浄:50mMトリスHCl、pH7.0±0.2、導電率4.0±1.0mS/cm
溶出:100mM酢酸、pH3.0±0.2
再生:500mM水酸化ナトリウム
3)カラム3:カラム容量=20ml、負荷密度=25mg/ml
平衡化および負荷後洗浄:50mMトリスHCl、pH7.0±0.2、導電率4.0±1.0mS/cm
再生:500mM水酸化ナトリウム
4)カラム4:カラム容量=20ml、負荷密度=25mg/ml
平衡化および負荷後洗浄:50mM酢酸ナトリウム、pH5.0±0.2、導電率3.6±1.0mS/cm
溶出:50mM酢酸ナトリウム、150mM NaCl、pH5.0、導電率15.0±1.0mS/cm
再生:500mM水酸化ナトリウム
【0124】
この連続的方法において、カラム1に8.5mlのCVカラムにおいて60mg/mlの負荷密度で負荷し、mAb Aを捕捉するためにフロースルーをカラム2に連続的に通過させた。結合タンパク質を、溶出液のpHがウイルスの不活化に必要なpHと同等になるようなCV容量で、100mMの酢酸で溶出した。ウイルス不活化をpH≦3.6で実施し、1時間保持した後、必要量の2Mトリス塩基をインライン添加することによりプロテインA溶出液の中和を行った。中和したプロテインA溶出液のpHおよび導電率は、HCP、HcDNAおよびそのウイルス除去を必要とするカラム3への負荷に必要なものに相当しており、pH7.0±0.2、および10mS/cm未満の導電率であり、約4.5±1.0mS/cmであることが分かった。この中和されたプロテインA溶出液を、フロースルーモードで操作された予備平衡化カラム3に通し、そのフロースルーを回収した。カラム4はpH5.0および導電率<6.0mS/cm(しかしこれらの条件のみには結合されていない)で結合および溶出モードで操作されるので、カラム4の負荷のための負荷準備ステップとして、ここでも必要量の酸、この場合は100mM酢酸のインライン添加を行なった。負荷のpHは5.0±0.2で導電率は≦3.5mS/cmであることが分かり、カラム4に負荷し、結合したタンパク質を50mM酢酸ナトリウムと150mMNaCl(pH5.0)で溶出し、導電率は15.0±1.0mS/cmであり、サンプルを、帯電アイソフォームの除去における比較のためにWCEX分析に付した。全てのカラムの再生および次の実行のための準備をした。クロマトグラムプロファイルおよび分析データをそれぞれ図18および図19に示す。
【0125】
図19は、AKTA pcc(4C PCC)でのmAb Aについての連続処理についてのクロマトグラムプロファイルを示す。他の生成物関連不純物の除去が必要な場合は、カラム4のプロセス条件を線形またはステップグラジエントまたは他の相互作用モードのために変更することができる。このプロセスパラメータは、治療用タンパク質の性質、等電点、品質、純度および生産性、コスト効率、操作の容易さなどの要因に応じて変更することができる。
【0126】
カラム2溶出液(中和プロテインA溶出液サンプル)およびカラム4溶出液サンプルの両方を、負荷密度実験に属する対照サンプルと一緒にWCEX分析に供した(図20)。
【0127】
図20は、連続処理からのカラム2溶出液とカラム4溶出液および対照についてのWCEX分析データを示す。カラム2およびカラム4は同じWCEXプロファイルを示し、塩基性アイソフォームの除去を示し、80mg/mlの負荷密度で観察されたこの負荷密度(60mg/ml)では酸性変異体の増加は見られない。従って、このインハウスCPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラムに最適な操作条件は、mAb Aについて約1−2時間の負荷時間において≦80mg/mlの負荷密度、および1.7分以上のRTを含むが、これらには限定されず、その後、一貫した結果を得るために実行の間に再生を組み込んでもよい。
図1
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