【実施例】
【0086】
以下の実施例によって本開示をさらに説明するが、これは決してさらなる限定として解釈されるべきではない。記載された特定の方法および結果は単なる例示であることを当業者は容易に認識するであろう。
【0087】
実施例1:方法のための樹脂の調製
樹脂は以下の方法で調製した。
1)CNBR活性化Sepharose(商標)4B凍結乾燥粉末を水中で膨潤させ、1mMのHClで洗浄した。樹脂をpH10.0の0.1M重炭酸ナトリウム緩衝液でさらに洗浄した。
2)緩衝液交換された酵素カルボキシペプチダーゼBをpH10.0で2:1(CPB:樹脂)の比で樹脂と共に、穏やかに攪拌しながら2〜8℃で一晩インキュベートした。
3)反応混合物を周囲温度にし、水素化ホウ素ナトリウムを4mg/mLのカップリング樹脂の比で加えた。懸濁液を周囲温度で1時間インキュベートした。
4)樹脂をカラムに充填し、pH7.0の50mMリン酸ナトリウム緩衝液で十分に洗浄した。
5)カラムを使用前に、20mMトリスHClおよび150mMNaClでpH9.0でさらに洗浄した。
【0088】
インハウスCPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4B樹脂の安定性と保存:
この樹脂は、2〜8℃で貯蔵した場合になお実行可能な多数のサイクルで1年以上安定であることが見出された。この樹脂は、性能を低下させることなく室温での連続処理に使用できる。
【0089】
実施例2:抗体変異体を減少させるための方法
2つのカラムを一つの精製システムにおいて連続的に接続し、ここでCPB−セファロースカラムの入口をシステムに接続し、同じカラムの出口をプロテインAカラムの入口として使用する。CPB−セファロースカラムから出てくるフロースルーを捕捉工程のためにプロテインAカラムに直接負荷した。タンパク質は溶出緩衝液を用いて最後に溶出された(
図2)。
【0090】
1.CPB−セファロースカラムはアフィニティーカラムにタンデムで接続し、灌流細胞培養からの清澄化した細胞培養回収物をpH7.0で予め平衡化したカラムに負荷し、ここで、カラム1上で約25分以上の接触時間にわたってpH6.5〜9.0で平衡化することができる。
2.CPB−セファロースカラムから出てくるフロースルーを、治療用タンパク質の捕捉のためにCPB−セファロース樹脂の出口に接続されたアフィニティーカラムに直接負荷した。
3.アフィニティーカラムである第2のカラムに捕捉された抗体を、最終的に0.1M酢酸でpH3.0で溶出し、そして2Mトリス塩基で中和した。
【0091】
灌流バイオリアクターから出て、捕獲工程のためにプロテインAに直接負荷した同じ収穫物を用いて1回の対照実験を行った。両方のプロテインA溶出サンプルを帯電変異体の分析のためにWCEX−HPLCにより分析した。
【0092】
図2は、一つの精製システムにおいて連続的に接続された2つのカラムに対するクロマトグラムを示す。
【0093】
図3は、CPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラムおよびそれに続くプロテインAカラムにおいて、mAb Aについて連続モードで約25分間(RT)行ったクロマトグラムプロファイルを示す。
【0094】
実施例3:治療用タンパク質(mAb A)の連続処理
滞留時間研究1:
カラム1上で約25分の接触時間で初期のクロマトグラフィー実行が行われたので、治療用タンパク質の不均質性の最適な低減を得るために与えられるべき最小接触時間を評価するためにさらにいくつかの実行が行われた。
【0095】
クロマトグラフィーを、インハウスCPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラム(カラム1、CV=10ml)およびそれに続くプロテインA(Mab Select SuRe(商標)pcc)カラム(カラム2、CV=1ml)(順次CPB−PA)において連続モードで行った(
図4)。AKTA Avant 150プロセスクロマトグラフィーシステム(GE Healthcare)において、治療用タンパク質(mAb A)清澄化細胞培養液(約40mg)を用いて、滞留時間をそれぞれカラム1では20分、カラム2では2分に維持して0.5ml/分の流速で、処理を行った。AKTA AvantシステムはAKTA PCCシステムに置き換えることができる。
【0096】
図4は、同じ流速で運転するときのカラム1とカラム2の連続処理設定を示す。
【0097】
中和サンプル(CPB−PA溶出液)を、対照(CPBなしのプロテインA溶出液のみ)と共にWCEX分析に付した(
図5)。
【0098】
図5は、CPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラムおよびそれに続くプロテインAカラムにおいてmAb Aについて連続モードで20分間(RT)実施したクロマトグラムプロファイルを示す。
【0099】
CPB−PA溶出液は、WCEX分析比較データに示されるように、対照と比較して、mAb A中の塩基性変異体の消化/除去を示した(
図6)。
【0100】
図6は、対照およびCPB−PA溶出液についてのWCEX分析データを示す。この実験は、カラム上のCPBが、20分(RT)で塩基性変異体の活性または開裂/消化を示すことを結論づけた。
【0101】
滞留時間研究2:
カラム上の最小滞留時間(RT)を評価するために、CPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラム(カラム1)上で、2分間のRTを維持しつつ、流速を0.5ml/分から10ml/分に変え、一方、プロテインAカラム(カラム2)の流速は、2分間のRTを維持しつつ、0.5ml/分であった。この場合、カラム容量が異なるとき、異なるRTおよび流速を維持するように、カラム1のフロースルーを集め、次いで連続モードでカラム2に再負荷した(
図7)。
【0102】
図7は、異なる流速で運転するときのカラム1とカラム2の連続処理設定を示す。中和されたサンプル(CPB−PA溶出液、2分間(RT))を、対照(CPBなしのプロテインA溶出液のみ)およびCPB−PA溶出液と共に、20分間(RT)、WCEX分析に付した。(
図8)。
【0103】
図8は、CPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラムおよびそれに続くプロテインAカラムにおいて、mAb Aについて連続モードで2分間(Rt)実施したクロマトグラムプロファイルを示す。
【0104】
WCEX分析比較データに示されるように、CPB−PA溶出液は、カラム1においても、2分間(RT)において対照と比較してmAb A中の塩基性変異体の消化/除去を示した(
図9)。
【0105】
図9は、対照およびCPB−PA溶出液についての2分間(RT)のWCEX分析データを示す。
【0106】
2つの異なるRTでの低減の比較
カラム1の2分の滞留時間で、消化はカラム1の20分(RT)でのものと有意に匹敵していた(
図10)。
図10は、mAb Aについてのカラム1でのそれぞれ20分間(RT)および2分間(RT)のCPB−PA溶出液についてのWCEX分析データを示す。したがって、クロマトグラフィーを、2分間の滞留時間で連続的に実行することもできる。2分未満の滞留時間もまた評価することができる。
【0107】
実施例4:mAb Bにおいて塩基性アイソフォームを減少させるための方法
カルボキシペプチダーゼBは、アルギニンおよびリジンなどの塩基性アミノ酸に優先的に作用する。したがって、この樹脂は、任意のクラスのIgGまたはモノクローナル抗体に属する帯電アイソフォームの除去に使用できる。連続方式での第1工程自体でのこのような帯電アイソフォームの除去は、高回収率で高品質、高純度の生成物を生成することができる。CPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラムおよびそれに続くプロテインAカラムにおいて連続モードで2分間(RT)実行したときの帯電アイソフォーム/塩基性変異体の除去について評価した別のmAbモデルはmAb Bであった(
図11)。
【0108】
図11は、CPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラムおよびそれに続くプロテインAカラムにおいて、mAb Bについて連続モードで2分間(RT)実施したクロマトグラムプロファイルを示す。
【0109】
WCEX分析比較データに示されるように、CPB−PA溶出液は、対照(CPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラムなしで中和されたプロテインA溶出液のみ)と比較してmAb B中の塩基性変異体の消化/除去を示した(
図12)。したがって、この戦略は塩基性帯電変異体の除去のために全てのクラスのIgGに属する任意のモノクローナル抗体に適用可能であると結論付けることができる。
【0110】
実施例5:3つのカラム上で異なる負荷密度でmAb Aにおける塩基性アイソフォームを減少させるための方法:
【0111】
CPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラムでの最大負荷容量を評価するために、表1に記載のようなmAb A清澄化細胞培養液を使用して、異なる負荷密度を連続モードで評価した。インハウスCPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラム(カラム1)およびそれに続くプロテインA(Mab Select SuRe LX)カラム(カラム2)(順次CPB−PA)を連続モードで使用して、クロマトグラフィーを実施した。一つのCPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラム(カラム1)および二つのプロテインAカラム(カラム2)が並列に接続されている場合、AKTA pcc(三カラム周期的向流クロマトグラフィー、3C PCC)(GE Healthcare)において、流速5ml/分で、潅流培地からのmAb A清澄化細胞培養液を用いて、処理を行った。カラム1で維持された滞留時間は、以前の研究よりも短い1.7分に相当し、カラム2では(使用される樹脂がMab Select SuRe LXであるので)約4.4分であった。
【0112】
【表1】
【0113】
表1に記載のWCEX分析比較のためにプロテインAカラムのみを使用して対照実験を実施した。カラム1での負荷密度がそれぞれ10mg/ml、20mg/ml、40mg/mlおよび80mg/mlである3、4、5および6番に記載の条件によるクロマトグラフィーを連続的に実施した。このクロマトグラフィー実行において、一つのCPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラム(カラム1)および二つのプロテインAカラム(カラム2)を並列に接続し、カラム1およびカラム2を順次実行した(クロマトグラムプロファイルは
図13および
図14について)。対照との比較のために、中和サンプルをWCEX分析に供した。
【0114】
図13は、AKTA pcc(3C pcc)での対照としてのmAb Aについて実行したプロテインAカラムのクロマトグラムプロファイルを示す。
【0115】
図14は、AKTA pcc(3C pcc)において連続モードでmAb Aについて実行したCPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラム(カラム1)およびそれに続くプロテインAカラムにおける、それぞれ10mg/ml、20mg/mlおよび40mg/mlの負荷密度でのクロマトグラムプロファイルを示す。
【0116】
図15は、AKTA pcc(3C pcc)において連続モードでmAb Aについて実行したCPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラム(カラム1)およびそれに続くプロテインAカラムにおける、80mg/mlの負荷密度でのクロマトグラムプロファイルを示す。
【0117】
図16は、対照と共に、個々の負荷密度についての中和CPB−PA溶出液のWCEX分析データを示す。
図16に見られるように、対照と比較した場合、樹脂は塩基性電荷アイソフォームの活性または減少を示していた。そのため、この樹脂はカラム1において負荷密度が80mg/mlを超えても機能することがあり、この場合、プロテインA樹脂のカラム容量もCPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラムと同じままであり、並列しているプロテインAの2つのカラムは、一つのカラム1からの出力量を十分にする必要がある。
【0118】
図17は、mAb Aについてのカラム1での異なる負荷密度でのCPB−PA溶出液と対照についてのWCEX分析データを示す。すべての異なる負荷密度についてのWCEX分析データを比較すると、全てのサンプルにおいて塩基性帯電アイソフォームの減少があったが、カラム1上の80mg/mlの負荷密度の場合、酸性変異体のわずかな増加が見られた(
図17)。これは、より高い負荷密度、すなわちより高いタンパク質:CPBの比、またはより長い負荷時間に起因し得る。しかし、全ての実行における滞留時間は1.7分で同じであり、カラム1において負荷時間が80分である表1に記載の条件1の一つの比較データにおいて、酸性アイソフォームの増加はなかった(
図5)。したがって、考えられる理由は、カラム2を前進(フロースルーモード)したときにカラム1に負荷された総タンパク質であり、負荷されたタンパク質の時間と量に伴って酸性変異体が徐々に増加し、カラム2に蓄積され(結合および溶出モード)、溶出された総タンパク質は酸性形態が増加している可能性がある。従って、要求される品質および量が得られる実行の間に、50mM酢酸ナトリウム(pH5.0)または他の類似の緩衝液を含むpH3.0以上の緩衝液用いてカラム1が再生されればより良いであろう。
【0119】
実施例6:1ユニット操作で四つのカラム上の治療用タンパク質(mAb A)の不均質性を低減させるための連続的方法:
【0120】
AKTA pcc(3カラム周期的向流クロマトグラフィー、4C PCC)(GE Healthcare)において、流量5ml/分で、灌流培養からのmAbA清澄化細胞培養液を用いて、並行した四つのカラムが順次実行される連続モードでクロマトグラフィーを実行した(
図18および
図19)。インハウスCPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラム(カラム1)に続いて、プロテインA(Mab Select SuRe LX)カラム(カラム2)、続いてウイルス不活化およびアニオン交換クロマトグラフィー(QSepharoseFastFlow)(カラム3)、および続いて、カチオン交換クロマトグラフィー(SPSepharoseFastFlow)(カラム4)を連続モードで実施した。上記のスキーム、他のクロマトグラフィー技術および樹脂化学に限定されない方法を、品質、純度および生産性または回収率の要求に基づいて、疎水性相互作用クロマトグラフィーまたは混合モードクロマトグラフィーに組み込むこともできる。クロマトグラフィー工程の順序もまた必要に応じて変えることができる。
【0121】
図18は、mAb Aの連続処理のためのAKTA pcc(4C PCC)の設定を示す。
【0122】
使用したカラム方向緩衝液(column wise buffer)を以下に示す。所望の品質および生産性のために、他の組み合わせの緩衝液も同じ範囲のpHおよび導電率で使用することができる。
【0123】
1)カラム1:カラム容量=8.5ml、負荷密度=60mg/ml
平衡化および負荷後洗浄:50mMトリスHCl、pH7.0±0.2、導電率4.0±1.0mS/cm
再生:50mM酢酸ナトリウム、pH5.0±0.2、導電率3.6±1.0mS/cm
2)カラム2:カラム容量=22ml、負荷密度=23mg/ml
平衡化および負荷後洗浄:50mMトリスHCl、pH7.0±0.2、導電率4.0±1.0mS/cm
溶出:100mM酢酸、pH3.0±0.2
再生:500mM水酸化ナトリウム
3)カラム3:カラム容量=20ml、負荷密度=25mg/ml
平衡化および負荷後洗浄:50mMトリスHCl、pH7.0±0.2、導電率4.0±1.0mS/cm
再生:500mM水酸化ナトリウム
4)カラム4:カラム容量=20ml、負荷密度=25mg/ml
平衡化および負荷後洗浄:50mM酢酸ナトリウム、pH5.0±0.2、導電率3.6±1.0mS/cm
溶出:50mM酢酸ナトリウム、150mM NaCl、pH5.0、導電率15.0±1.0mS/cm
再生:500mM水酸化ナトリウム
【0124】
この連続的方法において、カラム1に8.5mlのCVカラムにおいて60mg/mlの負荷密度で負荷し、mAb Aを捕捉するためにフロースルーをカラム2に連続的に通過させた。結合タンパク質を、溶出液のpHがウイルスの不活化に必要なpHと同等になるようなCV容量で、100mMの酢酸で溶出した。ウイルス不活化をpH≦3.6で実施し、1時間保持した後、必要量の2Mトリス塩基をインライン添加することによりプロテインA溶出液の中和を行った。中和したプロテインA溶出液のpHおよび導電率は、HCP、HcDNAおよびそのウイルス除去を必要とするカラム3への負荷に必要なものに相当しており、pH7.0±0.2、および10mS/cm未満の導電率であり、約4.5±1.0mS/cmであることが分かった。この中和されたプロテインA溶出液を、フロースルーモードで操作された予備平衡化カラム3に通し、そのフロースルーを回収した。カラム4はpH5.0および導電率<6.0mS/cm(しかしこれらの条件のみには結合されていない)で結合および溶出モードで操作されるので、カラム4の負荷のための負荷準備ステップとして、ここでも必要量の酸、この場合は100mM酢酸のインライン添加を行なった。負荷のpHは5.0±0.2で導電率は≦3.5mS/cmであることが分かり、カラム4に負荷し、結合したタンパク質を50mM酢酸ナトリウムと150mMNaCl(pH5.0)で溶出し、導電率は15.0±1.0mS/cmであり、サンプルを、帯電アイソフォームの除去における比較のためにWCEX分析に付した。全てのカラムの再生および次の実行のための準備をした。クロマトグラムプロファイルおよび分析データをそれぞれ
図18および
図19に示す。
【0125】
図19は、AKTA pcc(4C PCC)でのmAb Aについての連続処理についてのクロマトグラムプロファイルを示す。他の生成物関連不純物の除去が必要な場合は、カラム4のプロセス条件を線形またはステップグラジエントまたは他の相互作用モードのために変更することができる。このプロセスパラメータは、治療用タンパク質の性質、等電点、品質、純度および生産性、コスト効率、操作の容易さなどの要因に応じて変更することができる。
【0126】
カラム2溶出液(中和プロテインA溶出液サンプル)およびカラム4溶出液サンプルの両方を、負荷密度実験に属する対照サンプルと一緒にWCEX分析に供した(
図20)。
【0127】
図20は、連続処理からのカラム2溶出液とカラム4溶出液および対照についてのWCEX分析データを示す。カラム2およびカラム4は同じWCEXプロファイルを示し、塩基性アイソフォームの除去を示し、80mg/mlの負荷密度で観察されたこの負荷密度(60mg/ml)では酸性変異体の増加は見られない。従って、このインハウスCPB−CNBR活性化Sepharose(商標)4Bカラムに最適な操作条件は、mAb Aについて約1−2時間の負荷時間において≦80mg/mlの負荷密度、および1.7分以上のRTを含むが、これらには限定されず、その後、一貫した結果を得るために実行の間に再生を組み込んでもよい。