(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
舵角を制御するための指令に基づいて船舶の舵角を制御する舵角制御系を備え、前記舵角の制御に基づいて前記船舶を操舵するようにした船舶の制御装置に設けられ、前記船舶を欲する方位に保持して航走させ又は欲する方位へ変更させながら航走させる機能を有する船舶の方位制御装置であって、
ユーザーインターフェースの操作により生成された方位信号を方位指令に変換して出力する方位指令生成器と、
前記方位指令に基づいて振動成分を有する角速度指令を生成して出力する方位制御器と、
前記角速度指令に基づいて振動成分を有する舵角指令を生成して出力する角速度制御器と、
前記舵角指令に重畳された角速度制御帯域外の振動成分を抑制して最終舵角指令を生成して出力する振動抑制制御器と、
を備え、
前記最終舵角指令を、前記舵角を制御するための指令として前記舵角制御系に与えるように構成され、
前記角速度制御器は、
前記角速度指令と実角速度との間の角速度偏差と、前記船舶の設けられたセンサ群から出力されたセンサ群情報のうちの船速に応じて可変となるゲインとに基づいて、前記角速度偏差を零とするようにフィードバック制御を行ない、前記フィードバック制御の出力を第1の操作量として出力する第1のゲインスケジューリング制御器と、
前記第1の操作量と、前記センサ群情報のうちの前記船速と、に基づいて、前記第1の操作量を予め定められた量だけ進相させて出力する位相補償器と、
前記角速度指令と、前記センサ群情報のうちの前記船速に応じて可変となる可変ゲインとに基づいて得た舵角指令を第2の操作量として出力する第2のゲインスケジューリング制御器と、を有し、
前記位相補償器の出力と前記第2の操作量とを加算して前記舵角指令を生成するように構成されている、
ことを特徴とする船舶の方位制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願による船舶の方位制御装置および方位制御方法について、各実施の形態に従って図面を用いて説明する。なお、各実施の形態において、同一もしくは相当部分は同一符号で示す。
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による船舶の方位制御装置および方位制御方法における、船舶の方位を表現するための、慣性座標系および機体固定座標系の定義を示す説明図である。
図1において、慣性座標系は、慣性の法則が成立する慣性空間に固定された座標系であって、紙面に平行な軸XAと、紙面に平行でかつ軸XAと直交する軸YAと、紙面に対して垂直でかつ軸XAと軸YAに直交する軸ZAと、を有する。また、機体座標系は、機体としての船舶300の重心位置Gに固定され、 慣性空間を移動もしくは回転する座標系であって、紙面に平行な軸XOと、紙面に平行でかつ軸XOと直交する軸YOと、紙面に対して垂直でかつ軸XOと軸YOに対して直交する軸ZOと、を有する。
【0017】
方位AZは、基準とする慣性座標系における軸XAと機体固定座標系における軸XOとの間の相対角度で表わされる。なお、「方位」を角度で表現したものが「方位角」であり、方位角は「ヨー角」とも称されるが、本願において「方位」は、特に定義しない限り、「方位角」、「ヨー角」と同義であるとし、また、後述する「角速度」は、特に定義しない限り、方位の時間微分として表現されるいわゆるヨーレートと同義であるとする。
【0018】
図2は、実施の形態1による船舶の方位制御装置を備えた船舶の制御装置の全体構成を示す機能ブロック図である。
図2において、船舶の制御装置800は、操作装置303と、ユーザーインターフェース600と、実施の形態1による方位制御装置1Aと、舵角制御系100と、センサ群200とを備えている。
【0019】
船舶300には、船舶の制御装置800と、船舶の前後左右の並進運動または方位を制御するためのアクチュエータである船外機(図示せず)が具備されている。操作装置303には、ジョイスティックなどのユーザーインターフェース600が設けられている。操作装置303に設けられたユーザーインターフェース600は、操船者が意図した方向に船首の方位を保持あるいは変更するための、方位信号azを生成する。なお、ユーザーインターフェース600には、操船者の指先で操船を指示するタッチパネル、あるいは操船者の音声で操船を指示する音声認識装置などの、あらゆるGUI(Graphical User Interface)を用いることができる。
【0020】
船外機は、船舶300への推力を与える推力発生機構(図示せず)と、船舶300の舵を切るための操舵機構(図示せず)を備えており、船舶300の方位制御装置1Aの出力である最終舵角指令fsacに基づいて、船外機の実舵角asaが最終舵角指令fsacに追従するように制御される。船外機は、船舶300の推進および操舵機構であり、船外機のエンジンの下方にスクリューが一体に設けられた船外機本体が、船舶300の船体の外側に取り付けられており、船外機の本体の向きを変更することにより、船舶300の方位AZを変更することができる。このような船外機は、小型船舶に多く用いられている。
【0021】
なお、実施の形態1による船舶の方位制御装置1Aの制御対象は、船外機を備えた船舶に限られるものではなく、船内機を備えた船舶も含むものである。ここで、船内機とは、エンジンなどの駆動部が船内に設けられており、船外に露出したスクリュー部で推力を発生させ、当該推力の方向を舵で変更する形態の推進および操舵機構である。このような船内機は、大型船に多く用いられている。
【0022】
また、船舶300の運動状態を検出するためのセンサ群200は、たとえば、船舶300が存在している場所の緯度と経度を計測するGPS(Global Positioning System)、船舶300の方位AZを計測する磁気方位センサなどから構成されているが、この構成に制限されるものではなく、船舶300が旋回する角速度を計測するジャイロ、船舶300の並進運動の加速度である並進加速度を計測する加速度センサなども備えた、いわゆる周知の慣性航法装置を備えたセンサ群であってもよい。センサ群200は、少なくとも、実角速度aavと、実方位aazと、船速ssとを含むセンサ群情報sgiを出力する。
【0023】
実施の形態1による船舶の方位制御装置1Aは、方位指令生成器10Aと、方位制御器20Aと、角速度制御器30Aと、振動抑制制御器40Aとを備えている。以下、船舶300の方位制御装置1Aに設けられている方位指令生成器10Aと、方位制御器20Aと、角速度制御器30Aと、振動抑制制御器40Aとのそれぞれについて、入出力関係とともに、その機能を詳細に説明する。
【0024】
方位指令生成器10Aは、操船者によるユーザーインターフェース600の操作を受けてユーザーインターフェース600から出力される方位信号azに基づいて方位指令azcを生成し、この生成した方位指令azcを後述する方位制御器20Aへ出力する。方位指令生成器10Aは、ユーザーインターフェース600により生成されたままの離散的な生値である方位信号azに、一定の処理を施して方位指令azcを生成して出力する。ここで、方位信号azに施す処理としては、たとえば、ローパスフィルタ、移動平均フィルタ、バンドパスフィルタなどによる処理を利用することができる。
【0025】
次に、角速度制御器30Aについて説明する。
図3Aは、実施の形態1による船舶の制御装置における、角速度制御器の内部構成を示す機能ブロック図である。
図3Aに示す角速度制御器30Aは、前述のように方位制御装置1Aに設けられている。
図3Aにおいて、角速度制御器30Aは、第1のゲインスケジューリング制御器31Aと、位相補償器32Aと、第2のゲインスケジューリング制御器33Aとを備えている。第1のゲインスケジューリング制御器31Aは、角速度指令avcと、センサ群情報sgiのうちの実角速度aavとの偏差である角速度偏差(図示せず)と、センサ群情報sgiのうちの船速ssとに基づいて、前述の角速度偏差を零とするようにフィードバック制御を行なう。
【0026】
第1のゲインスケジューリング制御器31Aは、たとえば、比例制御器と積分制御器と微分制御器とを組み合わせた、いわゆるPID(Proportional Integral Derivative)制御器により構成される。この場合、PID制御器における比例制御器の比例ゲインと、積分制御器の積分ゲインと、微分制御器の微分ゲインとが、前述の船速ssに応じて可変となる可変ゲインとなる。なお、第1のゲインスケジューリング制御器31Aは、前述のPID制御器による構成に代えて、PI(Proportional Integral)制御器などのさまざまな制御器による構成を取り得ることは言うまでもない。また、前述の角速度偏差に対する前処理として、角速度偏差が小さい予め設定された区間では、角速度偏差を便宜的に零とする不感帯処理などを取り入れるようにしてもよい。
【0027】
第1のゲインスケジューリング制御器31Aの前述の可変ゲインは、
図2に示す舵角制御系100、船舶300および船舶300に搭載されたセンサ群200、までの開ループ周波数伝達関数に基づいて、試行錯誤することなく、以下述べるように系統的に設計することができる。以下、第1のゲインスケジューリング制御器31Aの可変ゲインの設計の詳細について説明する。
【0028】
すなわち、航走する船舶300の船速ssを一定とし、舵角指令sacとして正弦波を与え、この正弦波の周波数を掃引することで、舵角指令sacに対する実舵角asaの周波数応答特性と、実舵角asaに対する実角速度aavの周波数応答特性とを事前に計測する。つぎに、舵角指令sacに対する実舵角asaの周波数応答特性の計測値を曲線近似して、舵角指令sacに対する実舵角asaの開ループ周波数伝達関数を同定する。同様に、実舵角asaに対する実角速度aavの周波数応答特性の計測値を曲線近似して、実舵角asaに対する実角速度aavの開ループ周波数伝達関数を同定する。
【0029】
そして、船速ssを、必要回数だけそれぞれ異なる船速に変更し、この変更したそれぞれの船速毎に船舶300を定速航走させ、それぞれの船速毎に、前述と同様にしてパラメータとしての舵角指令sacに対する実舵角asaの開ループ周波数伝達関数を同定し、かつ実舵角asaに対する実角速度aavの開ループ周波数伝達関数を同定する。このようにして、変更した船速毎に、対象とする船舶300の舵角指令sacに対する実舵角asaの周波数伝達関数と、実舵角asaに対する実角速度aavの周波数伝達関数と、をオフラインで取得する。
【0030】
なお、前述の計測に用いる舵角指令sacは、フィードバック制御しているときの舵角指令ではないことを明確にするために、「最終舵角指令fsac」とはせずに、単に、「舵角指令sac」としていることに留意する必要がある。つまり、この「舵角指令sac」は、方位制御装置1Aによる演算結果ではなく、舵角制御系100に直接印加する正弦波であることに留意する必要がある。また、計測に用いる舵角指令sacの信号形状としては、前述の正弦波に代えて、矩形波、あるいはM系列(M−sequence)など、設計者が考慮すべき周波数帯域で十分なパワーを有する信号を用いることも可能である。
【0031】
次に、前述のオフラインで得た舵角指令sacに対する実舵角asaの周波数伝達関数と、実舵角asaに対する実角速度aavの周波数伝達関数とに基づいて、角速度制御系、すなわち角速度指令avcからセンサ群情報sgiのうちの実角速度aavまでの制御系の閉ループ伝達関数が欲する特性となるように、設計者が定めた角速度制御器30Aの型(PID制御器、PI制御器など)、角速度制御帯域、および角速度指令avcから実角速度aavまでの規範的な閉ループ伝達関数、を定め、第1のゲインスケジューリング制御器31Aのゲインを、たとえば、周知の技術である部分的モデルマッチング法、あるいは極配置法などのゲイン設計手法により、船速ss毎に一意に決定する。
【0032】
前述のようにして、船速ss毎にゲインを取得した第1のゲインスケジューリング制御器31Aは、後述する方位制御器20Aの出力である角速度指令avcと、センサ群情報sgiのうちの船速ssとに基づいて、実角速度aavを角速度指令avcに完全に追従させて角速度偏差を零とするようにフィードバック制御を行ない、その出力としての第1の操作量om1を出力する。なお、第1のゲインスケジューリング制御器31Aにおける可変ゲインは、船速ssの関数として与えられてもよいし、船速ssとゲインが1対1で対応したマップとして与えられてもよい。
【0033】
次に、位相補償器32Aについて説明する。
図3Aにおいて、位相補償器32Aは、センサ群200の出力であるセンサ群情報sgiのうちの船速ssと、第1のゲインスケジューリング制御器31Aの出力である第1の操作量om1とを入力とし、第1の操作量om1を予め定められた位相だけ進相させた出力om1sを発生するように構成されている。前述したように、船舶300の運動は、船速ssに依存して変化し、この船舶300の運動の変化は、前述した開ループ周波数応答特性に強く現れる。特に、舵を切っても方位を変更させ難い低船速の速度領域では、一般に開ループゲインが極めて低いため、角速度指令avcに対する実角速度aavの位相遅れを、低船速以外の速度領域と同等になるように小さくする必要がある。
【0034】
そこで、位相補償器32Aは、たとえば、その内部のパラメータが船速ssに応じて変化する可変パラメータとして構成されている。この可変パラメータは、位相遅れを低減させることが特に必要な低船速の速度領域でのみに第1の操作量om1を進相させ、それ以外の速度領域では、第1の操作量om1を進相させることなく、すなわち直列結合のゲインが1となるように、第1の操作量om1をそのまま通過させるように設定される。
【0035】
なお、位相補償器32Aの内部の可変パラメータは、船速ssの関数として与えられてもよいし、船速ssとパラメータが[1:1]で対応するマップとして与えられてもよい。また、低船速以外の領域での進相が必要な場合は、当該速度領域でも進相を効かせるように設定することもできる。さらに、位相補償器32Aの具体的構成は、いわゆる周知の位相進み補償要素、あるいは位相進み補償要素と位相遅れ補償要素の直列結合など、第1の操作量om1に予め定められた速度領域のみに位相補償効果を効かせるようにした位相補償要素の構成であれば、どのような構成でもよい。
【0036】
次に、第2のゲインスケジューリング制御器33Aについて説明する。
図3Aにおいて、第2のゲインスケジューリング制御器33Aは、センサ群200の出力であるセンサ群情報sgiのうちの船速ssと、後述する方位制御器20Aの出力である角速度指令avcとを入力とし、フィードフォワードで、前述の角速度指令avcを満足するための舵角指令を、第2の操作量om2として出力する。具体的には、第2のゲインスケジューリング制御器33Aの内部のゲインとして、実舵角asaから実角速度aavまでの周波数応答特性に近似した周波数伝達関数の逆モデルのゲインが与えられる。あるいは、第2の操作量om2を位相補償器32Aの出力om1sに加える合わせる加算点34A以降からセンサ群200までの周波数伝達関数の逆モデルのゲインが与えられてもよい。これらの逆モデルのゲインは、船速ssに応じて変化する可変ゲインである。
【0037】
第2のゲインスケジューリング制御器33Aの可変ゲインは、前述の第1のゲインスケジューリング制御器31Aと同様な手順で、試行錯誤することなく系統的に設計することができる。以下、その詳細を説明する。すなわち、航走する船舶300の船速ssを一定とし、舵角指令sacとして正弦波を与え、この正弦波の周波数を掃引することで、舵角指令sacに対する実舵角asaの周波数応答特性と、実舵角asaに対する実角速度aavの周波数応答特性とを事前に計測する。つぎに、舵角指令sacに対する実舵角asaの周波数応答特性の計測値を曲線近似して、舵角指令sacに対する実舵角asaの開ループ周波数伝達関数を同定する。同様に、実舵角asaに対する実角速度aavの周波数応答特性の計測値を曲線近似して、実舵角asaに対する実角速度aavの開ループ周波数伝達関数を同定する。
【0038】
そして、船速ssを、必要回数だけそれぞれ異なる船速に変更し、この変更したそれぞれの船速毎に船舶300を定速航走させ、それぞれの船速毎に、前述と同様にしてパラメータとしての舵角指令sacに対する実舵角asaの開ループ周波数伝達関数を同定し、かつ実舵角asaに対する実角速度aavの開ループ周波数伝達関数を同定する。このようにして、変更した船速毎に、対象とする船舶300の舵角指令sacに対する実舵角asaの周波数伝達関数と、実舵角asaに対する実角速度aavの周波数伝達関数と、をオフラインで取得する。
【0039】
なお、前述の計測に用いる舵角指令sacは、フィードバック制御しているときの舵角指令ではないことを明確にするために、「最終舵角指令fsac」とはせずに、単に、「舵角指令sac」としていることに留意する必要がある。つまり、この「舵角指令sac」は、方位制御装置1Aによる演算結果ではなく、舵角制御系100に直接印加する正弦波であることに留意する必要がある。また、計測に用いる舵角指令sacの信号形状としては、前述の正弦波に代えて、矩形波、あるいはM系列など、設計者が考慮すべき周波数帯域で十分なパワーを有する信号を用いることも可能である。
【0040】
次に、前述のオフラインで得た舵角指令sacに対する実舵角asaの周波数伝達関数と、実舵角asaに対する実角速度aavの周波数伝達関数とに基づいて、角速度制御系としての、角速度指令avcからセンサ群200の出力であるセンサ群情報sgiのうちの実角速度aavまでの制御系、の閉ループ伝達関数が「1」となるように、すなわち実角速度aavが角速度指令avcに完全追従することを満足するように、第2のゲインスケジューリング制御器33Aの内部のゲインを、例えば、部分的モデルマッチング法、あるいは極配置法などのゲイン設計手法などにより船速毎に一意に決定する。
【0041】
前述のようにして、船速ss毎にゲインを取得した第2のゲインスケジューリング制御器33Aは、後述する方位制御器20Aの出力である角速度指令avcと、センサ群情報sgiのうちの船速ssとに基づいて、実角速度aavを角速度指令avcに完全に追従させるようにフィードフォワード制御を行ない、その出力としての第2の操作量om2を出力する。なお、第2のゲインスケジューリング制御器33Aにおける可変ゲインは、船速ssの関数として与えられてもよいし、船速ssとゲインが1対1で対応したマップとして与えられてもよい。
【0042】
図3Bは、実施の形態1による船舶の方位制御装置における、角速度制御器の内部構成の別の構成例を示す機能ブロック図である。
図3Bに示す角速度制御器30Aが前述の
図3Aに示す角速度制御器30Aと相違する点は、
図3Bの位相補償器32Aが、第1のゲインスケジューリング制御器31Aの出力である第1の操作量om1と、第2のゲインスケジューリング制御器33Aの出力である第2の操作量om2とが加算される加算点34Aの後段に配置されていることである。この場合、
図3Bに示す第1のゲインスケジューリング制御器31Aは、
図3Aに示す第1のゲインスケジューリング制御器31Aをそのまま利用することができる。
【0043】
また、
図3Bの第2のゲインスケジューリング制御器33Aの内部のゲインとして、
図3Aの第2のゲインスケジューリング制御器33Aの内部のゲインと同様に、実舵角asaから実角速度aavまでの周波数応答特性に近似した周波数伝達関数の逆モデルのゲインが与えられてもよいし、第2の操作量om2を位相補償器32Aの出力om1sに加え合わせる加算点34A以降からセンサ群200までの周波数伝達関数の逆モデルのゲインが与えられてもよい。これらの逆モデルのゲインは、船速ssに応じて変化する可変ゲインである。
【0044】
なお、
図3Aと
図3Bとにおける、それぞれの第1のゲインスケジューリング制御器31Aと位相補償器32Aの内部演算は同一であるが、第2のゲインスケジューリング制御器33Aの内部演算は、
図3Bの場合に比較して
図3Aの場合のほうが、より簡素な構成となる。
【0045】
前述の
図3A、もしくは
図3Bに示すように角速度制御器30Aを構成することで、船速ssに依存して船舶300の動特性が変化しても、船速ssに依らずに常に一定の角速度制御帯域を有した角速度制御系を構築することができる。
【0046】
次に、実施の形態1による船舶の方位制御装置における、振動抑制制御器40Aについて説明する。
図4は、実施の形態1による船舶の方位制御装置における、振動抑制制御器の内部構成を示す機能ブロック図である。
図4において、振動抑制制御器40Aは、前述の角速度制御器30Aの出力である舵角指令sacを入力とし、舵角制御系100へ最終舵角指令fsacを出力する。振動抑制制御器40Aは、第1の演算器41Aと、第2の演算器42Aとにより構成されている。第1の演算器41Aは、舵角指令sacに重畳した角速度制御帯域外の交流主成分のみを局所的に減衰させるフィルタ、たとえば中心周波数が角速度制御帯域外の交流主成分に相当するノッチフィルタにより構成されている。
【0047】
第2の演算器42Aは、舵角指令sacに重畳した角速度制御帯域外の交流副成分を減衰させるフィルタ、たとえばローパスフィルタにより構成されている。なお、第1の演算器41Aは、前述のノッチフィルタに限定されるものではなく、交流主成分のみを局所的に減衰させる機能を有するフィルタであればよく、たとえばバンドパスフィルタなどあらゆる構成を取ることができる。また、第2の演算器42Aは、交流副成分を減衰させる機能を有するフィルタであればよく、たとえば次数が1次以上のローパスフィルタなどあらゆる構成を取ることができる。
【0048】
第1の演算器41Aと第2の演算器42Aを構成するフィルタのパラメータは、以下のようにして一意に設計することができる。すなわち、航走する船舶300の船速ssを一定とし、舵角指令sacとして正弦波を与え、この正弦波の周波数を掃引することで、舵角指令sacに対する実舵角asaの周波数応答特性と、実舵角asaに対する実角速度aavの周波数応答特性とを事前に計測する。つぎに、舵角指令sacに対する実舵角asaの周波数応答特性の計測値を曲線近似して、舵角指令sacに対する実舵角asaの開ループ周波数伝達関数を同定する。同様に、実舵角asaに対する実角速度aavの周波数応答特性の計測値を曲線近似して、実舵角asaに対する実角速度aavの開ループ周波数伝達関数を同定する。
【0049】
そして、船速ssを、必要回数だけそれぞれ異なる船速に変更し、この変更したそれぞれの船速毎に船舶300を定速航走させ、それぞれの船速毎に、前述と同様にしてパラメータとしての舵角指令sacに対する実舵角asaの開ループ周波数伝達関数を同定し、かつ実舵角asaに対する実角速度aavの開ループ周波数伝達関数を同定する。このようにして、変更した船速毎に、対象とする船舶300の舵角指令sacに対する実舵角asaの周波数伝達関数と、実舵角asaに対する実角速度aavの周波数伝達関数と、をオフラインで取得する。
【0050】
なお、前述の計測に用いる舵角指令sacは、フィードバック制御しているときの舵角指令ではないことを明確にするために、「最終舵角指令fsac」とはせずに、単に、「舵角指令sac」としていることに留意する必要がある。つまり、この「舵角指令sac」は、方位制御装置1Aによる演算結果ではなく、舵角制御系100に直接印加する正弦波であることに留意する必要がある。また、計測に用いる舵角指令sacの信号形状としては、前述の正弦波に代えて、矩形波、あるいはM系列など、設計者が考慮すべき周波数帯域で十分なパワーを有する信号を用いることも可能である。
【0051】
次に、前述のようにしてオフラインで得た舵角指令sacに対する実舵角asaの周波数伝達関数と、実舵角asaに対する実角速度aavの周波数伝達関数とにおいて、角速度制御帯域外で、ピークゲインに基づいて位相が遅れている周波数を抽出し、ピークゲインが最も大きく出ている周波数を交流主成分として捉えることで、第1の演算器41Aを構成するフィルタの中心周波数、ノッチ減衰比、ノッチ深さに関わるパラメータを一意に決定することができる。
【0052】
また、第2の演算器42Aを構成するフィルタのパラメータを決定するための交流副成分は、あらゆる船舶の種類での航走試験の結果を鑑みると、交流主成分より高い周波数帯域に複数存在していることがあるため、前述の交流主成分をカットオフ周波数として、例えば1次以上のローパスフィルタとして一意に決定することができる。このようにして、第1の演算器41Aおよび第2の演算器42Aをそれぞれ構成するフィルタのパラメータは、船速ssに依らず固定値とすることができる。
【0053】
一方、オフラインで得た船速ss毎の、舵角指令sacに対する実舵角asaの周波数伝達関数と、実舵角asaに対する実角速度aavの周波数伝達関数の傾向によっては、ピークゲインの周波数帯が船速ss毎に変化する、あるいはその大きさが変化することも考えられる。その場合、第1の演算器41Aおよび第2の演算器42Aを構成するそれぞれのフィルタのパラメータは、全速度領域で固定値とせず、センサ群情報sgiのうちの船速ssを用いた関数、あるいは船速ssと当該パラメータが1対1で対応するマップとして、それぞれのフィルタのパラメータを、船速ssを参照して与えることもできる。
【0054】
さらに、振動抑制制御器40Aは、舵角指令sacに重畳した角速度制御帯域外の交流主成分と交流副成分とで見分けが付き難く、同等の大きさの成分が複数存在している場合、前述の交流成分のそれぞれの周波数に対応させ、中心周波数とノッチ減衰比とノッチ深さの異なる複数の第1の演算器41Aを直列に接続し、あるいは、交流主成分だけが卓越していて当該周波数帯の振動だけが乗り心地などの観点で問題となる場合には、交流主成分を減衰させる第1の演算器41Aだけの単一の構成としてもよい。また、振動抑制制御器40Aは、舵角指令sacに重畳した角速度制御帯域外の交流主成分と交流副成分とで見分けが付き難く、同等の大きさの成分が複数存在している場合には、最も周波数が低い交流成分よりもやや低いカットオフ周波数で設定した交流副成分を減衰させる第2の演算器42Aだけの単一の構成としてもよい。
【0055】
このように振動抑制制御器40Aを構成することで、方位保持時もしくは方位変更時の阻害要因となる角速度制御帯域外の振動を抑制し、船舶300が航走する全船速域で安定した角速度制御を実現することができる。
【0056】
次に、
図2に示す方位制御器20Aについて説明する。方位制御器20Aは、方位指令生成器10Aの出力である方位指令azcと、センサ群情報sgiのうちの実方位(図示せず)との差に相当する方位偏差(図示せず)を零とするようにフィードバック制御する。方位制御器20Aは、例えば、PID制御器などのさまざまな構造を取ることができる。
【0057】
前述したように、角速度制御器30Aからなる角速度制御系の角速度制御帯域は、船速ssによらず一定であるので、方位制御器20Aのゲインは、方位指令azcから実方位までの閉ループ伝達関数が欲する特性となるように、設計者が定めた方位制御帯域および方位指令azcから実方位までの規範的な閉ループ伝達関数に基づいて、船速ssに依らず一意に求めることができる。また、前述の方位偏差を示す偏差信号に対する前処理として、方位偏差が小さい予め設定された区間では、方位偏差を便宜的に零とする不感帯処理などを取り入れてもよい。
【0058】
図5は、実施の形態1による船舶の方位制御装置における、基本的設計手順を示すフローチャートであって、前述の角速度制御器30A、振動抑制制御器40A、方位制御器20Aの基本的な設計手順を示している。
図5において、ステップST1からステップST8で実行される内容は以下のとおりである。
【0059】
<ステップST1>
船舶300を一定の船速で航走させて舵角指令sacとして正弦波を与え、(1)舵角指令sacに対する実舵角asaの周波数応答特性と、(2)実舵角asaに対する実角速度aavの周波数応答特性と、を事前に計測する。船速を変更しながら、それぞれの船速毎に前述の計測を実施する。
【0060】
<ステップST2>
ステップST1で計測した、(1)舵角指令sacに対する実舵角asaの周波数応答特性と、(2)実舵角asaに対する実角速度aavの周波数応答特性とをオフラインで曲線近似し、船速毎に前述のそれぞれの周波数伝達関数をパラメータ同定する。
【0061】
<ステップST3>
角速度制御器30Aの型、角速度制御帯域、角速度制御系の規範閉ループ伝達関数を定め、ステップST2で求めた周波数伝達関数に基づいて、第1のゲインスケジューリング制御器31Aのゲインを船速毎に決定する。
【0062】
<ステップST4>
ステップST3で求めた第1のゲインスケジューリング制御器31Aを含む角速度制御系の開ループ伝達関数を指標として、進相が必要な船速および周波数帯における進相量を定め、位相補償器32Aのパラメータを、船速ssに依存しない固定値あるいは船速毎の可変のパラメータとして決定する。
【0063】
<ステップST5>
ステップST4までで定めた第1のゲインスケジューリング制御器31Aと、位相補償器32Aとを含む角速度制御系、すなわち角速度指令avcからセンサ群200の出力であるセンサ群情報sgiのうちの実角速度aavまでの閉ループ伝達関数が「1」、すなわち実角速度aavが角速度指令avcに完全に追従するように、第2のゲインスケジューリング制御器33Aのゲインを、船速毎に決定する。たとえば、船速毎の周波数伝達関数に基づいて、その逆モデルを利用して上記ゲインを決定する。
【0064】
<ステップST6>
ステップST2で同定した船速毎の舵角指令sacに対する実舵角asaの周波数伝達関数と、実舵角asaに対する実角速度aavの周波数伝達関数とに基づいて、角速度制御帯域外のピークゲインとその位相差を抽出し、当該ピークゲインを抑制させる振動抑制制御器40Aのパラメータを、船速ssに依存しない固定値あるいは船速毎の可変のパラメータとして決定する。
【0065】
<ステップST7>
方位制御器20Aの型、方位制御帯域、方位制御系の規範閉ループ伝達関数を定め、ステップST2で求めた周波数伝達関数、角速度制御器30A、位相補償器32Aおよび振動抑制制御器40Aを含む角速度制御系の閉ループ伝達関数に基づいて、方位制御器20Aのゲインを、船速ssに依存しない固定値として決定する。
【0066】
<ステップST8>
角速度制御器30A、振動抑制制御器40A、方位制御器20Aをソフトウェア実装する。
【0067】
以上述べた実施の形態1は、少なくとも下記の構成を含む。
(1)舵角を制御するための指令に基づいて船舶の舵角を制御する舵角制御系を備え、前記舵角の制御に基づいて前記船舶を操舵するようにした船舶の制御装置に設けられ、前記船舶を欲する方位に保持して航走させ又は欲する方位へ変更させながら航走させる機能を有する船舶の方位制御装置であって、
ユーザーインターフェースの操作により生成された方位信号を方位指令に変換して出力する方位指令生成器と、
前記方位指令に基づいて角速度指令を生成して出力する方位制御器と、
前記角速度指令に基づいて舵角指令を生成して出力する角速度制御器と、
前記舵角指令に重畳された角速度制御帯域外の振動成分を抑制して最終舵角指令を生成して出力する振動抑制制御器と、
を備え、
前記最終舵角指令を前記舵角を制御するための指令として前記舵角制御系に与えるように構成されている。
この構成により、船舶を振動させることなく、方位保持または方位変更するために必要な船外機の最終的な舵角指令を生成することができる。
【0068】
(2)前記角速度制御器は、
角速度指令と実角速度の偏差と、前記船舶の設けられたセンサ群から出力されたセンサ群情報のうちの船速に応じて可変となるゲインと、に基づいて、第1の操作量を生成して出力する第1のゲインスケジューリング制御器と、
前記第1の操作量と、前記センサ群情報のうちの前記船速と、に基づいて、前記第1の操作量を予め定められた量だけ進相させて出力する位相補償器と、
前記角速度指令と、前記センサ群情報のうちの前記船速に応じて可変となる可変ゲインと、に基づいて、第2の操作量を生成して出力する第2のゲインスケジューリング制御器と、
を有し、
前記位相補償器の出力と前記第2の操作量とを加算して前記舵角指令を生成するように構成されている。
この構成により、船速が変化しても角速度制御帯域が変動することなく、常に一定の角速度制御応答を実現できる。
【0069】
(3)前記第1のゲインスケジューリング制御器のゲイン、および前記第2のゲインスケジューリング制御器におけるゲインは、
前記船舶を複数の異なる船速でそれぞれ定速航走させたときの舵角指令から実舵角までの、前記異なる船速毎の予め取得された周波数応答特性と、
前記船舶を複数の異なる船速でそれぞれ定速航走させたときの前記実舵角から実角速度までの、前記異なる船速毎の予め取得された周波数応答特性と、
前記角速度制御帯域内での設計値と、
前記角速度制御器における角速度制御系の規範的な閉ループ伝達関数と、
に基づいて一意に決定され、
前記ゲインは、前記船速の関数又は予め定められた船速に対するマップとして与えられる可変ゲインである。
この構成により、船速が変化しても角速度制御帯域が変動することなく、常に一定の角速度制御応答を実現することができる。
【0070】
(4)前記位相補償器は、
前記船舶を複数の異なる船速でそれぞれ定速航走させたときの舵角指令から実舵角までの、前記異なる船速毎の予め取得された周波数応答特性と、
前記船舶を複数の異なる船速でそれぞれ定速航走させたときの前記実舵角から実角速度までの、前記異なる船速毎の予め取得された周波数応答特性と、
に基づいて、前記角速度制御器から出力された前記舵角指令を、予め定められた速度領域において進相させるように構成され、
前記位相補償器のパラメータは、全船速領域において固定値であり、又は前記センサ群情報のうちの前記船速の関数であり、又はマップとして与えられている。
この構成により、所定船速における角速度制御器の出力の位相遅れを低減し、角速度制御系を安定化できる。
【0071】
(5)前記振動抑制制御器は、
前記角速度制御器から出力された前記舵角指令に重畳した前記角速度制御帯域外の交流主成分を減衰させる第1の演算器と、
前記第1の演算器の出力に重畳した前記角速度制御帯域外の交流副成分を減衰させる第2の演算器と、
を有し、
前記第1の演算器におけるパラメータと前記第2の演算器におけるパラメータは、
前記船舶を複数の異なる船速でそれぞれ定速航走させたときの舵角指令から実舵角までの、前記異なる船速毎の予め取得された周波数応答特性と、
前記船舶を複数の異なる船速でそれぞれ定速航走させたときの前記実舵角から実角速度までの、前記異なる船速毎の予め取得された周波数応答特性と、
に基づいて、全船速領域で固定値であり、又は前記センサ群情報のうちの前記船速の関数であり、又はマップで与えられている。
この構成により、方位保持時もしくは方位変更時の阻害要因となる角速度制御帯域外の振動を抑制し、全船速域で安定した角速度制御を可能とする。
【0072】
(6)前記振動抑制制御器は、
前記舵角指令に重畳した前記角速度制御帯域外の交流主成分を減衰させる第1の演算器と、
前記舵角指令に重畳した前記角速度制御帯域外の交流副成分を減衰させる第2の演算器と、
のうちの何れか一方のみを有し、
前記振動抑制制御器が有する前記何れか一方の演算器におけるパラメータは、
前記船舶を複数の異なる船速でそれぞれ定速航走させたときの舵角指令から実舵角までの、前記異なる船速毎の予め取得された周波数応答特性と、
前記船舶を複数の異なる船速でそれぞれ定速航走させたときの前記実舵角から実角速度までの、前記異なる船速毎の予め取得された周波数応答特性と、
に基づいて、全船速領域で固定値であり、又は前記センサ群情報のうちの前記船速の関数であり、又はマップで与えられている。
この構成により、振動抑制のための演算を簡素化できる。
【0073】
また、実施の形態1は、少なくとも下記の方法を含む。
(7)船舶を欲する方位で保持し、又は船舶を欲する方位へ変更させながら航走させる船舶の方位制御方法であって、
ユーザーインターフェースの操作による方位信号を方位指令に変換し、
前記方位指令と実方位との偏差を零とする角速度指令を生成し、
前記角速度指令と実角速度との偏差を零とする舵角指令を生成し、
前記舵角指令に重畳する振動成分を減衰させた最終舵角指令を生成し、
前記最終舵角指令に基づいて前記船舶の方位を制御する方法。
この方法により、船舶を振動させることなく、方位保持または方位変更するために必要な船外機の最終的な舵角指令を生成することができる。
【0074】
実施の形態1による船舶の方位制御装置および方位制御方法によれば、船舶が航走する全船速域において、角速度制御応答と方位制御応答それぞれの制御帯域を船速に依らず一定としつつ、潮流もしくは風などの船舶への外乱および舵角制御系から船舶までの特性に起因する振動を助長させることなく、安定した角速度制御と方位制御を実現することができる。さらに、角速度制御器、振動抑制制御器および方位制御器の内部演算におけるゲインおよびパラメータは、予めオフラインで得た、船速毎の舵角指令に対する実舵角の周波数伝達関数と、実舵角に対する実角速度の周波数伝達関数の傾向によって一意に決定され、特許文献2に開示されたような行列の逐次演算を一切必要としない簡素な構成とすることができるので、方位制御装置の演算負荷を低減することができる。
【0075】
実施の形態2.
つぎに、実施の形態2による船舶の方位制御装置および方位制御方法について説明する。
図6は、実施の形態2による船舶の方位制御装置を備えた船舶の制御装置の全体構成を示す機能ブロック図である。
図6に示すユーザーインターフェース600、船舶300、センサ群200、舵角制御系100の構成は、前述の実施の形態1の船舶の方位制御装置におけるそれらと同様であるので、説明は省略する。
【0076】
実施の形態2による船舶の方位制御装置1Bは、方位指令生成器10Aと、方位制御器20Aと、角速度制御器30Aと、振動抑制制御器40Bとを備えている。方位制御装置1Bに設けられている方位指令生成器10A、方位制御器20A、角速度制御器30Aは、実施の形態1の方位制御装置1Aに設けられている方位指令生成器10A、方位制御器20A、角速度制御器30Aと同一である。実施の形態1との違いは、振動抑制制御器40Bの内部構成にある。
【0077】
つぎに、振動抑制制御器40Bについて詳細に説明する。
図7は、実施の形態2による船舶の方位制御装置における、振動抑制制御器の内部構成を示す機能ブロック図である。
図7において、振動抑制制御器40Bは、前述の角速度制御器30Aの出力である舵角指令sacを入力とし、舵角制御系100へ最終舵角指令fsacを出力するものである。振動抑制制御器40Bは、第1の演算器41Bと、第2の演算器42Bと、周波数分析器43Bとにより構成されている。振動抑制制御器40Bは、前述の
図4に示した実施の形態1における振動抑制制御器40Aと比較して、周波数分析器43Bが加わっている点が異なる。
【0078】
周波数分析器43Bは、センサ群情報sgiのうちの実角速度aavの時系列を入力とし、この実角速度aavの時系列に対して、高速フーリエ変換などの周知の周波数分析アルゴリズムにより、交流主成分の分析を行う。この分析により求められた実角速度aavにおける角速度制御帯域外の交流主成分の周波数と振幅から、実角速度aavにおける角速度制御帯域外の交流主成分の中心周波数、ノッチ減衰比、ノッチ深さを、第1の演算器41Bへ出力する。さらに、同様な分析により求められた実角速度aavにおける角速度制御帯域外の交流副成分の周波数と振幅から、カットオフ周波数を第2の演算器42Bへ出力する。
【0079】
第1の演算器41Bは、角速度制御帯域外の交流主成分の周波数と振幅を受けて、中心周波数、ノッチ減衰比、ノッチ深さに代表されるパラメータを適応的に決定する。第2の演算器42Bは、角速度制御帯域外の交流副成分の周波数と振幅を受けて、カットオフ周波数に代表されるパラメータを適応的に決定する。なお、第1の演算器41Bを直列に複数接続した場合は、その直列接続要素それぞれのパラメータを適応的に決定できる。また、第2の演算器42Bを直列に複数接続した場合は、その直列接続要素それぞれのパラメータを適応的に決定できる。
【0080】
なお、振動抑制制御器40Bは、舵角指令sacに重畳した角速度制御帯域外の交流主成分と交流副成分とで見分けが付き難く、同等の大きさの成分が複数存在している場合、前述の交流成分のそれぞれの周波数に対応させ、中心周波数とノッチ減衰比とノッチ深さの異なる複数の第1の演算器41Bを直列に接続し、あるいは、交流主成分だけが卓越していて当該周波数帯の振動だけが乗り心地などの観点で問題となる場合には、交流主成分を減衰させる第1の演算器41Bだけの単一の構成としてもよい。また、振動抑制制御器40Bは、舵角指令sacに重畳した角速度制御帯域外の交流主成分と交流副成分とで見分けが付き難く、同等の大きさの成分が複数存在している場合には、最も周波数が低い交流成分よりもやや低いカットオフ周波数で設定した交流副成分を減衰させる第2の演算器42Bだけの単一の構成としてもよい。
【0081】
以上述べた実施の形態2は、前述の実施の形態1の構成と同一となる構成および方法の他に、少なくとも以下の構成を含む。
(8)前記振動抑制制御器は、
前記角速度制御器から出力された前記舵角指令に重畳した前記角速度制御帯域外の交流主成分を減衰させる第1の演算器と、
前記第1の演算器の出力に重畳した前記角速度制御帯域外の交流副成分を減衰させる第2の演算器と、
前記船舶の設けられたセンサ群から出力されたセンサ群情報のうちの実角速度に重畳した振動成分を抽出し、前記角速度制御帯域外の交流主成分の周波数と振幅、および交流副成分の周波数と振幅を出力する周波数分析器と、
を有し、
前記第1の演算器のパラメータは、前記周波数分析器から出力された前記角速度制御帯域外の交流主成分の周波数と振幅とに基づいて与えられ、
前記第2の演算器のパラメータは、前記周波数分析器から出力された前記角速度制御帯域外の交流副成分の周波数と振幅とに基づいて与えられている、
ことを特徴とする請求項1から4のうちの何れか一項に記載の船舶の方位制御装置。
この構成により、センサ群情報のうちの実角速度に重畳した振動成分に逐次適合させ、最適な第1の演算器と第2の演算器を得ることができる。
【0082】
(9)前記振動抑制制御器は、
前記角速度制御器から出力された舵角指令に重畳した角速度制御帯域外の交流成分を減衰させる演算器と、
前記船舶の設けられたセンサ群から出力されたセンサ群情報のうちの実角速度に重畳した振動成分を抽出し、角速度制御帯域外の交流成分の周波数と振幅を出力する周波数分析器と、
を有し、
前記演算器のパラメータは、前記周波数分析器から出力された前記角速度制御帯域外の交流成分の周波数と振幅とに基づいて与えられている、
ことを特徴とする請求項1から4のうちの何れか一項に記載の船舶の方位制御装置。
この構成により、センサ群情報のうちの実角速度に重畳した振動成分に逐次適合させ、最適な演算器を得ることができるとともに、振動抑制のための演算を簡素化できる。
【0083】
以上、この実施の形態2によれば、実施の形態1における振動抑制制御器40Aに比較して、センサ群情報sgiのうちの実角速度aavに重畳した振動成分に逐次適合させ、最適な第1の演算器41Bと第2の演算器42Bのそれぞれのフィルタを、可変のパラメータとして得ることができる。これにより、船舶300が航走する全船速域において、角速度制御応答と方位制御応答それぞれの制御帯域を一定としつつ、潮流、風などの船舶300への外乱および舵角制御系100から船舶300までの特性に起因する振動を助長させることなく、安定した角速度制御と方位制御を実現することができる。
【0084】
実施の形態3.
つぎに、実施の形態3による船舶の方位制御装置及び方位制御方法について説明する。
図8は、実施の形態3による船舶の方位制御装置を備えた船舶の制御装置の全体構成を示す機能ブロック図である。
図8に示すユーザーインターフェース600、船舶300、センサ群200、舵角制御系100の構成は、前述の実施の形態1及び実施の形態2の船舶の方位制御装置におけるそれらと同様であるので、説明は省略する。
【0085】
実施の形態3による船舶の方位制御装置1Cは、方位指令生成器10Aと、方位制御器20Cと、角速度制御器30Cと、振動抑制制御器40Cとを備えている。方位制御装置1Cに設けられている方位指令生成器10Aは、実施の形態1および実施の形態2の方位制御装置1A、1Bに設けられている方位指令生成器10Aと同一である。実施の形態1および実施の形態2との違いは、振動抑制制御器40Cへの入力に、センサ群情報sgiのうちの実角速度aavと実方位aazを用いている点である。
【0086】
つぎに、振動抑制制御器40Cについて詳細に説明する。
図9は、実施の形態3による船舶の方位制御装置における、振動抑制制御器の内部構成を示す機能ブロック図である。
図9において、振動抑制制御器40Cは、センサ群200の出力であるセンサ群情報sgiのうちの実角速度aavと実方位aazをそれぞれ入力とし、角速度制御器30Cへ処理後実角速度faavを出力し、方位制御器20Cへ処理後実方位faazをそれぞれ出力する。
【0087】
振動抑制制御器40Cは、第1の演算器41Cと第2の演算器42Cとにより構成される。第1の演算器41Cは、実角速度aavに重畳した角速度制御帯域外の交流主成分のみを局所的に減衰させるフィルタであって、例えば、中心周波数が前述の交流主成分に相当するノッチフィルタである。第2の演算器42Cは、実角速度aavに重畳した角速度制御帯域外の交流副成分を減衰させるフィルタであって、例えば、ローパスフィルタである。なお、第1の演算器41Cと第2の演算器42Cのフィルタのパラメータの設計法は、実施の形態1の場合と同様であって、第1の演算器41Cと第2の演算器42Cのそれぞれのフィルタのパラメータは、実施の形態1で示した第1の演算器41Aと第2の演算器42Aそれぞれと同一構成とする。
【0088】
図10は、実施の形態3による船舶の方位制御装置における、振動抑制制御器の内部構成の別の例を示す機能ブロック図である。実施の形態3による船舶の方位制御装置1Cは、前述の
図9に示す振動抑制制御器40Cに代えて、
図10に示す振動抑制制御器40Dを用いることができる。
図10において、振動抑制制御器40Dは、センサ群200の出力であるセンサ群情報sgiのうちの実角速度aavと実方位aazを入力とし、処理後実角速度faavおよび処理後実方位faazを出力する。
【0089】
振動抑制制御器40Dは、センサ群200の出力であるセンサ群情報sgiのうちの実角速度aavおよび実方位aazを入力とし、角速度制御器30Cへ処理後実角速度faavを出力し、方位制御器20Cへ処理後実方位faazを出力する。振動抑制制御器40Dは、第1の演算器41Dと、第2の演算器42Dと、周波数分析器43Dとにより構成されている。なお、第1の演算器41Dと第2の演算器42Dのフィルタのパラメータは、実施の形態2の場合と同様にして、適応的に決定することができる。周波数分析器43Dは、主成分分析で求められた角速度制御帯域外の交流主成分の周波数と振幅から、中心周波数、ノッチ減衰比、ノッチ深さを第1の演算器41Dへ出力する。さらに、周波数分析器43Dは、同様な分析により求められた角速度制御帯域外の交流副成分の周波数と振幅から、カットオフ周波数を第2の演算器42Dへ出力する。
【0090】
つぎに、角速度制御器30Cについて説明する。
図11Aは、実施の形態3による船舶の方位制御装置における、角速度制御器の内部構成を示す機能ブロック図である。
図11Aにおいて、第1のゲインスケジューリング制御器31Cは、後述する方位制御器20Cの出力である角速度指令avcと、振動抑制制御器40Cまたは振動抑制制御器40Dの出力である処理後実角速度faavとの差に相当する角速度偏差と、センサ群情報sgiのうちの船速ssとに基づいて、前述の角速度偏差を零とするようにフィードバック制御し、その出力として第1の操作量om1を出力する。第1のゲインスケジューリング制御器31Cは、実施の形態1の場合と同様の構成を取ることができる。また、前述の角速度偏差を示す偏差信号への前処理として、角速度偏差が小さい予め設定された区間は、角速度偏差を便宜的に零とする不感帯処理などを適用してもよい。なお、位相補償器32Aは、実施の形態1および実施の形態2の場合と同様である。
【0091】
図11Bは、実施の形態3による船舶の方位制御装置における、角速度制御器の内部構成の別の例を示す機能ブロック図である。実施の形態3による船舶の方位制御装置1Cは、前述の
図11Aに示す角速度制御器30Cに代えて、
図11Bに示す角速度制御器30Cを用いることができる。前述の
図11Aとの違いは、位相補償器32Aが、第1のゲインスケジューリング制御器31Cの出力である第1の操作量om1と、第2のゲインスケジューリング制御器33Cの出力である第2の操作量om2とを加算する加算点34Aの後段に配置されている点である。この場合、第1のゲインスケジューリング制御器31Cは、実施の形態1で述べたものをそのまま利用できる。
【0092】
第2のゲインスケジューリング制御器33Cの内部のゲインとして、実舵角asaから実角速度aavまでの周波数応答特性に近似した周波数伝達関数の逆モデルのゲインが与えられる。あるいは、第2の操作量om2を第1の操作量om1に加える合わせる加算点34A以降からセンサ群200までの周波数伝達関数の逆モデルのゲインが与えられてもよい。これらの逆モデルのゲインは、船速ssに応じて変化する可変ゲインである。
【0093】
図8に示す方位制御器20Cは、方位指令生成器10Aの出力である方位指令azcと、振動抑制制御器40Cまたは振動抑制制御器40Dの出力である処理後実方位faazとの差に相当する方位偏差を零とするようにフィードバック制御するためのものである。方位制御器20Cは、例えば、PID制御器などのさまざまな構造を取ることができる。前述したように、舵角制御系100の角速度制御帯域が船速ssに依らず一定であるので、方位制御器20Cのゲインは、方位指令azcから実方位aazまでの閉ループ伝達関数が欲する特性となるように、設計者が定めた方位制御帯域および方位指令azcから実方位aazまでの規範的な閉ループ伝達関数に基づいて、船速ssに依らず一意に求めることができる。また、前述の方位偏差を示す偏差信号への前処理として、偏差が小さい予め設定された区間では、方位偏差を便宜的に零とする不感帯処理などを適用してもよい
【0094】
以上述べた実施の形態3は、少なくとも以下の構成を含む。
(10)舵角を制御するための指令に基づいて船舶の舵角を制御する舵角制御系を備え、前記舵角の制御に基づいて前記船舶を操舵するようにした船舶の制御装置に設けられ、前記船舶を欲する方位に保持して航走させ又は欲する方位へ変更させながら航走させる機能を有する船舶の方位制御装置であって、
前記船舶に設けられたセンサ群からのセンサ群情報に重畳した制御帯域外の振動成分を抑制して出力する振動抑制制御器と、
ユーザーインターフェースの操作により生成された方位信号を方位指令に変換して出力する方位指令生成器と、
前記方位指令と前記振動抑制制御器から出力された処理後実方位とに基づいて、角速度指令を生成して出力する方位制御器と、
前記角速度指令と前記振動抑制制御器から出力された処理後実角速度とに基づいて、最終舵角指令を生成して出力する角速度制御器と、
を備え、
前記最終舵角指令を前記舵角を制御するための指令として前記舵角制御系に与えるように構成されている。
この構成により、方位保持時もしくは方位変更時の阻害要因となる振動を抑制し、全船速域で安定した方位制御を可能とする。
【0095】
(11)前記角速度制御器は、
前記角速度指令と前記処理後実角速度との偏差と、前記センサ群情報のうちの船速に応じて可変となるゲインとに基づいて、第1の操作量を生成して出力する第1のゲインスケジューリング制御器と、
前記第1の操作量と、前記センサ群情報のうちの船速とに基づいて、予め定められた船速にて前記第1の操作量を予め定められた量だけ進相させる位相補償器と、
前記角速度指令と、前記センサ群情報のうちの船速に応じて可変とする可変ゲインとに基づいて、第2の操作量を生成して出力する第2のゲインスケジューリング制御器と、
を有し、
前記位相補償器の出力と前記第2の操作量とを加算して前記最終舵角指令を生成するように構成されている。
この構成により、方位保持時もしくは方位変更時の阻害要因となる振動を抑制し、全船速域で安定した方位制御を可能とする。
【0096】
また、実施の形態3は、少なくとも下記の方法を含む。
(12)船舶を欲する方位で保持し、又は船舶を欲する方位へ変更させながら航走させる船舶の方位制御方法であって、
前記船舶に設けられたセンサ群からのセンサ群情報に重畳した制御帯域外の振動成分を抑制して、処理後実方位と処理後実角速度とを生成し、
ユーザーインターフェースの操作による方位信号を方位指令に変換し、
前記方位指令と前記処理後実方位との偏差を零とする角速度指令を生成し、
前記角速度指令と前記処理後実角速度との偏差を零とする最終舵角指令を生成し、
前記最終舵角指令に基づいて前記船舶の方位を制御する方法。
この方法により、方位保持時もしくは方位変更時の阻害要因となる振動を抑制し、全船速域で安定した方位制御を可能とする。
【0097】
以上、この実施の形態3によれば、先に示した実施の形態1および実施の形態2と同様な効果を得ることができる。
【0098】
さらに、以上のすべての実施の形態において、船速に依らず常に一定の角速度制御系を構築できるので、角速度制御系の外側の制御ループをなす方位制御系の方位制御帯域、すなわち方位制御応答は、設計者のみならず、操船者自身の志向に応じてユーザーインターフェース600の操作で自由に調整する機能も付加することができる。たとえば、角速度制御帯域に対して、方位制御帯域を1/3倍、1/4倍など1未満の比率で調整できる。さらに、角速度制御帯域と方位制御帯域が一定の比率で設定できる場合、角速度制御器のゲインを係数倍することで、両制御帯域を同時に広帯域化あるいは狭帯域化することもできる。
【0099】
なお、前述の各実施の形態において、
図2に記載された方位制御装置1Aの方位指令生成器10A、方位制御器20A、角速度制御器30A、振動抑制制御器40A,さらにはこれらを構成する
図3から
図11に示された各機能からなる制御部分は、別々の制御回路で構成してもよく、あるいは1つの制御回路でまとめて構成してもよい。また、前述の制御部分においては、船外機および船内機の舵角を制御する舵角制御系100までを含めてもよい。この点に関し、これらの機能を実現する処理回路は、専用のハードウェアであっても、メモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit:中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSPともいう)であっても構成可能である。
【0100】
図12Aは、実施の形態1から実施の形態3による船舶の方位制御装置における、制御部分をハードウェアで構成した場合の例を示すブロック図である。
図12Aにおいて、処理回路1000は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらを組み合わせたものが該当する。上記各部の機能それぞれを処理回路で実現してもよいし、各部の機能をまとめて処理回路で実現してもよい。
【0101】
図12Bは、実施の形態1から実施の形態3による船舶の方位制御装置における、制御部分をソフトウェアで構成した場合のハードウェア構成の例を示すブロック図であって、各実施の形態のそれぞれの制御部分の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。
図12Bにおいて、ソフトウェア、ファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ2100に格納される。処理回路であるプロセッサ2000は、メモリ2100に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。これらのプログラムは、前述の各部の手順、方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。ここで、メモリ2100とは、たとえば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等が該当する。
【0102】
なお、前述の各部の機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。
【0103】
このように、各実施の形態の処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。また処理に必要な各種情報は、ハードウェア構成の場合は回路に予め設定され、またソフトウェア構成の場合にはメモリに予め記憶させておく。
【0104】
なお、各実施の形態を組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。