特許第6976400号(P6976400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6976400受容体媒介クリアランスが減少した、生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片との結合体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976400
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】受容体媒介クリアランスが減少した、生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片との結合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20211125BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20211125BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20211125BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20211125BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20211125BHJP
   A61K 38/25 20060101ALI20211125BHJP
   A61K 38/26 20060101ALI20211125BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20211125BHJP
   A61K 38/36 20060101ALI20211125BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20211125BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20211125BHJP
   A61K 38/38 20060101ALI20211125BHJP
   A61K 38/42 20060101ALI20211125BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20211125BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   A61K47/68ZNA
   A61K38/02
   A61K38/18
   A61K38/19
   A61K38/22
   A61K38/25
   A61K38/26
   A61K38/28
   A61K38/36
   A61K38/20
   A61K38/21
   A61K38/38
   A61K38/42
   A61K38/43
   A61K39/395 A
   A61K39/395 Y
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-216289(P2020-216289)
(22)【出願日】2020年12月25日
(62)【分割の表示】特願2019-67886(P2019-67886)の分割
【原出願日】2014年7月14日
(65)【公開番号】特開2021-59585(P2021-59585A)
(43)【公開日】2021年4月15日
【審査請求日】2021年1月22日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0082511
(32)【優先日】2013年7月12日
(33)【優先権主張国】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】パク スン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム ミン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リム ヒョン キュ
(72)【発明者】
【氏名】ペ ソン ミン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン スン ヨプ
(72)【発明者】
【氏名】クォン セチャン
【審査官】 福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/066106(WO,A1)
【文献】 特表2012−520873(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/173422(WO,A1)
【文献】 特開2008−169195(JP,A)
【文献】 Diabetes Metabolism Research and Reviews,2010年,Vol.26,No.4,p287−296
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00−38/58
A61K 39/00−39/44
A61K 47/00−47/69
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫グロブリンFc断片に連結された生理活性ポリペプチドを含む結合体含有する持続性薬剤組成物であって、
前記組成物は、2つの免疫グロブリンFc鎖を有する1つの免疫グロブリンFc断片の1つの免疫グロブリンFc鎖に連結された1分子の生理活性ポリペプチドを含む単量体結合体及び2つの免疫グロブリンFc鎖を有する1つの免疫グロブリンFc断片に連結された2分子以上の同じ生理活性ポリペプチドを含む多量体結合体を含有し、前記組成物内の多量体結合体に対する単量体結合体のモル比は19以上であり、
多量体結合体中の2つの免疫グロブリンFc鎖のそれぞれが1分子以上の生理活性ポリペプチドと結合し、
前記単量体結合体は、非ペプチド性リンカーにより1つの免疫グロブリンFc断片に連結された2分子の生理活性ポリペプチドを含む二量体結合体、又は免疫グロブリンFc断片とインフレームで連結された生理活性ポリペプチド二量体を含む結合体に比べて低い受容体媒介インターナリゼーション(receptor-mediated internalization)又は受容体媒介クリアランス(receptor-mediated clearance)を示し、
前記生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルカゴン、オキシントモジュリン、インスリン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン受容体、インターロイキン、インターロイキン受容体、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、細胞壊死糖タンパク質、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、α1−アンチトリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン、アポリポタンパク質E、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液凝固第VII因子、第VIIa因子 、第VIII因子、第IX因子、及び第XIII因子、プラスミノーゲン活性因子、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C反応性タンパク質、スーパーオキシドディスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、カルシトニン、アトリオペプチン、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路インヒビター、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、及びミオスタチンからなる群から選択される、持続性薬剤組成物。
【請求項2】
前記生理活性ポリペプチドを含む結合体、前記単量体結合体、及び前記多量体結合体は、生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc断片間に介在し、生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc断片とが連結する非ペプチド性リンカーをさらに含む、請求項1に記載の持続性薬剤組成物。
【請求項3】
前記非ペプチド性リンカーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の持続性薬剤組成物。
【請求項4】
前記非ペプチド性リンカーは、分子量が1〜100kDaの範囲である、請求項2に記載の持続性薬剤組成物。
【請求項5】
前記生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルカゴン、オキシントモジュリン、及びインスリンらなる群から選択される、請求項1に記載の持続性薬剤組成物。
【請求項6】
前記免疫グロブリンFc断片は、CH1、CH2、CH3及びCH4ドメインからなる群から選択される1つ〜4つのドメインを含む、請求項1に記載の持続性薬剤組成物。
【請求項7】
前記免疫グロブリンFc断片はヒンジ(hinge)領域をさらに含む、請求項1に記載の持続性薬剤組成物。
【請求項8】
前記免疫グロブリンFc断片は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM、それらの組み合わせ(combination)及びそれらのハイブリッド(hybrid)からなる群から選択されるものから誘導されるFc断片である、請求項1に記載の持続性薬剤組成物。
【請求項9】
前記免疫グロブリンFc断片はIgG4 Fc断片である、請求項1に記載の持続性薬剤組成物。
【請求項10】
前記免疫グロブリンFc断片は非グリコシル化されたものである、請求項1に記載の持続性薬剤組成物。
【請求項11】
(a)生理活性ポリペプチドと、2つの免疫グロブリンFc鎖を有する免疫グロブリンFc断片を連結させ、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片結合体の混合物を製造するステップと、
(b)前記混合物から、2つの免疫グロブリンFc鎖を有する1つの免疫グロブリンFc断片の1つの免疫グロブリンFc鎖に連結された1分子の生理活性ポリペプチドを含む生理活性ポリペプチド単量体−免疫グロブリンFc断片結合体を分離するステップとを含む、
請求項1の持続性薬剤組成物の製造方法。
【請求項12】
前記生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーにより互いに連結されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記持続性薬剤組成物の前記単量体結合体は、2つの免疫グロブリンFc鎖を有する1つの免疫グロブリンFc断片の1つの免疫グロブリンFc鎖に連結された1分子の生理活性ポリペプチドを含み、2つの免疫グロブリンFc鎖を有する1つの免疫グロブリンFc断片に非ペプチド性リンカーにより連結された2分子の生理活性ポリペプチドを含む二量体結合体、又は免疫グロブリンFc断片とインフレームで連結された生理活性ポリペプチド二量体に比べて低い受容体媒介インターナリゼーション(receptor-mediated internalization)又は受容体媒介クリアランス(receptor-mediated clearance)を示す、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記生理活性ポリペプチドが配列番号1又は2のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の持続性薬剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理活性ポリペプチドが免疫グロブリンFc断片に連結された結合体を含有する組成物であって、前記組成物は、1つの免疫グロブリンFc断片に対して1分子の生理活性ポリペプチドが連結された単量体結合体を含有し、任意的に1つの免疫グロブリンFc断片に対して同じ生理活性ポリペプチドが2分子以上連結された多量体結合体を含有し、前記組成物内の多量体結合体に対する単量体結合体のモル比は19以上である持続性薬剤組成物に関し、また生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーで連結された、生理活性ポリペプチド単量体−免疫グロブリンFc断片結合体であって、前記生理活性ポリペプチドは、単量体形態で1つの免疫グロブリンFc断片に非ペプチド性リンカーで連結され、生理活性ポリペプチド2分子が1つの免疫グロブリンFc断片に非ペプチド性重合体により連結された二量体結合体、又は生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片インフレーム結合体に比べて低い受容体媒介インターナリゼーション又は受容体媒介クリアランスを示すことを特徴とする結合体に関し、さらに前記持続性薬剤組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内タンパク質は、血中タンパク質分解酵素により分解されるか、腎臓を介して排泄されるか、受容体により除去されるなど様々な経路を介して除去されることが知られている。よって、このようなタンパク質除去機序を回避し、生理活性タンパク質の半減期を延長させることにより治療学的効能を向上させるための様々な試みがなされている。特に、タンパク質の血中半減期を延長させるために、ポリエチレングリコール高分子(PEG)、アルブミン、脂肪酸又は抗体Fc断片(constant region)を結合させたタンパク質結合体に関する研究が行われている。これらの研究は、生理活性タンパク質に前記物質を共有結合させることにより、生理活性タンパク質の血中半減期を延長させ、薬物投与間隔を短くし、患者の利便性を増大させることを目的とする。そのうちタンパク質を安定化させてタンパク質加水分解酵素との接触及び腎臓消失を抑制する方法として、ポリエチレングリコールなどの溶解度が高い高分子をタンパク質薬物の表面に化学的に付加させる方法が用いられている。この方法は、標的タンパク質の特定部位又は様々な部位に非特異的に結合して溶解度を向上させることによりタンパク質を安定化させ、タンパク質の加水分解を防止する効果があり、さらに特に副作用もないことが知られている(非特許文献1)。しかし、この方法においては、PEG結合によりタンパク質の安定性は向上させることができるが、生理活性タンパク質の力価が著しく低下し、PEGの分子量が増加するにつれてタンパク質との反応性が低下して収率が減少するという問題がある。また、タンパク質の特定アミノ酸に脂肪酸を修飾すると、修飾された脂肪酸が血中アルブミンに可逆的に結合して半減期が延長されるが、その効果は1日から1週間ほどと半減期の延長効果がそれほど大きくなく、可逆的にアルブミンから分離された生理活性タンパク質は容易に腎臓を介して排泄されるという欠点がある。
【0003】
よって、タンパク質をはじめとする生理活性物質の半減期を延長させるために免疫グロブリン断片を用いる努力がなされている。特に、このようなFc断片と治療用タンパク質との融合により治療用タンパク質の安定性を向上させる研究が盛んに行われている。遺伝子組換え方法によりインターフェロン(特許文献1)と、インターロイキン4受容体、インターロイキン7受容体又は赤血球生成因子受容体(特許文献2)とを免疫グロブリンのFc断片に融合させた形態で哺乳動物から発現させることが知られており、特許文献3には、サイトカイン又は成長因子をオリゴペプチドリンカー(linker)により免疫グロブリンのFc断片に結合させた融合タンパク質が開示されている。また、特許文献4は、LHR(lymphocyte cell surface glycoprotein)又はCD4タンパク質を免疫グロブリンFc断片のN末端又はC末端に遺伝子組換え方法により融合させたタンパク質を開示しており、特許文献5は、IL−2を免疫グロブリンFc断片に融合させた融合タンパク質を開示している。その他にも、遺伝子組換えにより製造されたFc融合タンパク質の例として、インターフェロンβ又はその誘導体と免疫グロブリンFc断片の融合タンパク質(特許文献6)、IL−5受容体と免疫グロブリンFc断片の融合タンパク質(特許文献7)、インターフェロンαと免疫グロブリンG4のFc断片の融合タンパク質(特許文献8)、及びCD4タンパク質と免疫グロブリンG2のFc断片の融合タンパク質(特許文献9)が開示されている。また、免疫グロブリンFc断片のアミノ酸を改変した特許文献10には、免疫グロブリンFc断片において特に補体結合部位や受容体結合部位のアミノ酸を改変したFcを用いて遺伝子組換え方法により製造されたTNFR−IgG1 Fc融合タンパク質が開示されている。このように改変された免疫グロブリンのFc領域を用いた遺伝子組換えによる融合タンパク質の製造方法は、特許文献11、12及び13にも開示されている。しかし、免疫グロブリンFc断片が融合されたバイオ医薬品は、Fc断片の固有機能であるエフェクター機能による細胞毒性問題を解決しなければならないという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許第2003−0009464号公報
【特許文献2】韓国登録特許第0249572号公報
【特許文献3】国際公開第01/003737号
【特許文献4】米国特許第5116964号明細書
【特許文献5】米国特許第5349053号明細書
【特許文献6】国際公開第00/023472号
【特許文献7】米国特許第5712121号明細書
【特許文献8】米国特許第5723125号明細書
【特許文献9】米国特許第6451313号明細書
【特許文献10】米国特許第5605690号明細書
【特許文献11】米国特許第6277375号明細書
【特許文献12】米国特許第6410008号明細書
【特許文献13】米国特許第6444792号明細書
【特許文献14】韓国公開特許第10−2012−0137271号公報
【特許文献15】韓国公開特許第10−2009−0008151号公報
【特許文献16】国際公開第97/034631号
【特許文献17】国際公開第96/032478号
【特許文献18】韓国登録特許第10−0725315号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sada et al., J. Fermentation Bioengineering 71: 137-139, 1991
【非特許文献2】H.Neurath, R.L.Hill, The Proteins, Academic Press, New York, 1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、生理活性ポリペプチドに免疫グロブリンFc断片を結合させることにより血中半減期が延長された結合体を製造すべく鋭意努力した結果、生理活性ポリペプチドを単量体(monomer)形態で免疫グロブリンFc断片に連結すると、生理活性ポリペプチドが多量体である場合に比べて、受容体により媒介されるクリアランス(receptor-mediated clearance)が大幅に減少し、ラット動物モデルにおいても優れた半減期を示すことを確認し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、生理活性ポリペプチドが免疫グロブリンFc断片に連結された結合体を含有する組成物であって、前記組成物は、1つの免疫グロブリンFc断片に対して1分子の生理活性ポリペプチドが連結された単量体結合体を含有し、任意的に1つの免疫グロブリンFc断片に対して同じ生理活性ポリペプチドが2分子以上連結された多量体結合体を含有し、前記組成物内の多量体結合体に対する単量体結合体のモル比は19以上である持続性薬剤組成物を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーで連結された、生理活性ポリペプチド単量体−免疫グロブリンFc断片結合体であって、前記生理活性ポリペプチドは、単量体形態で免疫グロブリンFc断片に非ペプチド性リンカーで連結され、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片インフレーム結合体に比べて低い受容体媒介インターナリゼーション(receptor-mediated internalization)又は受容体媒介クリアランス(receptor-mediated clearance)を示すことを特徴とする結合体を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、(a)生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc断片を互いに連結させ、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片結合体の混合物を製造するステップと、(b)前記混合物から、生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片が互いに連結された、生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片が連結された結合体を分離するステップとを含む、前記持続性薬剤組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の結合体は、生理活性ポリペプチド単量体が免疫グロブリンFc断片に結合することにより、受容体媒介インターナリゼーション又は受容体媒介クリアランス(receptor-mediated clearance)が大幅に減少して血中半減期が延長されるので、血中半減期が延長された薬物において治療学的優越性を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(A)生理活性ポリペプチド単量体結合体の代表的な構造、及び(B)生理活性ポリペプチド二量体結合体の主な形態を示す模式図である。
図2】本発明のGLP−1アゴニスト単量体と免疫グロブリンFc断片の結合体(実施例)と、GLP−1アゴニストが二量体として存在するGLP−1アゴニストと免疫グロブリンFc断片の融合タンパク質(比較例)の受容体インターナリゼーション(receptor internalization)の程度を比較した図である。
図3】本発明のGLP−1アゴニスト結合体と、比較例のGLP−1アゴニスト結合体のインビボ薬物動態を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一態様は、生理活性ポリペプチドが免疫グロブリンFc断片に連結された結合体を含有する組成物であって、前記組成物は、1つの免疫グロブリンFc断片に対して1分子の生理活性ポリペプチドが連結された単量体結合体を含有し、任意的に1つの免疫グロブリンFc断片に対して同じ生理活性ポリペプチドが2分子以上連結された多量体結合体を含有し、前記組成物内の多量体結合体に対する単量体結合体のモル比は19以上である持続性薬剤組成物を提供する。
【0013】
一具体例として、前記持続性薬剤組成物に含まれる結合体は、生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc断片間に介在する非ペプチド性リンカーで連結されていることを特徴とする。
【0014】
他の具体例として、前記単量体結合体は、1つの免疫グロブリンFc断片に対して生理活性ポリペプチド2分子が非ペプチド性重合体により連結された二量体結合体、又は生理活性ポリペプチド二量体と免疫グロブリンFc断片のインフレーム結合体に比べて低い受容体媒介インターナリゼーション(receptor-mediated internalization)又は受容体媒介クリアランス(receptor-mediated clearance)を示すことを特徴とする。
【0015】
さらに他の具体例として、前記生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、好中球増加因子(G−CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、グルカゴン、オキシントモジュリン、インスリン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、Gタンパク質共役受容体(G protein-coupled receptor)、インターロイキン、インターロイキン受容体、酵素類、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α1−アンチトリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン、アポリポタンパク質E、高グリコシル化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX及びXIII、プラスミノーゲン活性因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C反応性タンパク質、レニンインヒビター、コラゲナーゼインヒビター、スーパーオキシドディスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性化因子、組織因子経路インヒビター、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び抗体断片からなる群から選択されることを特徴とする。
【0016】
さらに他の具体例として、前記生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、好中球増加因子(G−CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、グルカゴン、オキシントモジュリン、インスリン及びそれらの誘導体からなる群から選択されることを特徴とする。
【0017】
さらに他の具体例として、前記非ペプチド性リンカーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする。
【0018】
さらに他の具体例として、前記非ペプチド性リンカーは、分子量が1〜100kDaの範囲であることを特徴とする。
【0019】
さらに他の具体例として、前記免疫グロブリンFc断片は、CH1、CH2、CH3及びCH4ドメインからなる群から選択される1つ〜4つのドメインからなることを特徴とする。
【0020】
さらに他の具体例として、前記免疫グロブリンFc断片はヒンジ(hinge)領域をさらに含むことを特徴とする。
【0021】
さらに他の具体例として、前記免疫グロブリンFc断片は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM、それらの組み合わせ(combination)及びそれらのハイブリッド(hybrid)からなる群から選択されることを特徴とする。
【0022】
さらに他の具体例として、前記免疫グロブリンFc断片はIgG4 Fc断片であることを特徴とする。
【0023】
さらに他の具体例として、前記免疫グロブリンFc断片は非グリコシル化されたものであることを特徴とする。
【0024】
本発明の他の態様は、生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーで連結された、生理活性ポリペプチド単量体−免疫グロブリンFc断片結合体であって、前記生理活性ポリペプチドが、単量体形態で1つの免疫グロブリンFc断片に非ペプチド性リンカーで連結された前記結合体は、生理活性ポリペプチド2分子が1つの免疫グロブリンFc断片に非ペプチド性重合体により連結された二量体結合体、又は生理活性ポリペプチド二量体と免疫グロブリンFc断片のインフレーム結合体に比べて低い受容体媒介インターナリゼーション又は受容体媒介クリアランスを示すことを特徴とする結合体を提供する。
【0025】
本発明のさらに他の態様は、(a)生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc断片を互いに連結させ、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片結合体の混合物を製造するステップと、(b)前記混合物から、生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片が互いに連結された、1分子の生理活性ポリペプチドが1つの免疫グロブリンFc断片に連結された結合体を分離するステップとを含む、前記持続性薬剤組成物の製造方法を提供する。
【0026】
一具体例として、上記方法の結合体は、前記生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーにより互いに連結されていることを特徴とする。
【0027】
他の具体例として、上記方法の1分子の生理活性ポリペプチドが1つの免疫グロブリンFc断片に連結された結合体は、2分子の生理活性ポリペプチドが1つの免疫グロブリンFc断片に非ペプチド性重合体により連結された二量体結合体、又は生理活性ポリペプチド二量体と免疫グロブリンFc断片のインフレーム結合体に比べて低い受容体媒介インターナリゼーション又は受容体媒介クリアランス(receptor-mediated clearance)を示すことを特徴とする。
【0028】
本発明の一態様は、生理活性ポリペプチドが免疫グロブリンFc断片に連結された結合体を含有する組成物であって、前記組成物は、1つの免疫グロブリンFc断片に対して1分子の生理活性ポリペプチドが連結された単量体結合体を含有し、任意的に1つの免疫グロブリンFc断片に対して同じ生理活性ポリペプチドが2分子以上連結された多量体結合体を含有し、前記組成物内の多量体結合体に対する単量体結合体のモル比は19以上である持続性薬剤組成物を提供する。
【0029】
本発明の一実施例において、生理活性ポリペプチド単量体を免疫グロブリンFc断片に結合した結合体は、多量体、具体的には二量体形態の生理活性ポリペプチドが免疫グロブリンFc断片に結合された結合体に比べて、受容体により媒介されるインターナリゼーション(receptor-mediated internalization)及びクリアランス(receptor-mediated clearance)の程度が低く、血中半減期を延長できることが確認された。よって、生理活性ポリペプチド単量体が免疫グロブリンFc断片に結合され、受容体により媒介されるクリアランスの程度が低い結合体を含む薬剤においては、受容体により媒介されるインターナリゼーション及びクリアランスが少ないので、血中半減期を延長させる持続性薬剤として用いることができることが確認された。すなわち、本発明は、生理活性ポリペプチド単量体結合体が多量体結合体、具体的には二量体結合体より受容体により媒介されるインターナリゼーション及びクリアランスが少ないことを解明したことに基づくものである。
【0030】
本発明における「持続性薬剤組成物」とは、生理活性ポリペプチド自体、又は生理活性ポリペプチド多量体と免疫グロブリンFc断片の結合体に比べて受容体媒介インターナリゼーション及びクリアランスが減少することにより血中半減期が延長された、生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片が連結された結合体を含む薬剤組成物を意味する。すなわち、1つの免疫グロブリンFc断片に対して1分子の生理活性ポリペプチドが連結された単量体結合体を含有する薬剤組成物を意味する。また、前記「薬剤組成物」は「製剤」と混用される。
【0031】
本発明の薬剤組成物において、1つの免疫グロブリンFc断片に対して1分子の生理活性ポリペプチドが連結された単量体結合体は、免疫グロブリンFc断片に対して同じ生理活性ポリペプチド2分子以上が連結された多量体結合体に対して19:1又はそれ以上、好ましくは99:1以上、より好ましくは500:1以上である。すなわち、本発明の前記持続性薬剤組成物は、前記単量体結合体の前記多量体結合体に対するモル比([単量体結合体]/[多量体結合体])が19以上であることを特徴とする。
【0032】
本発明の一実施例によれば、生理活性ポリペプチドが単量体で存在する、生理活性ポリペプチド−非ペプチド性重合体−免疫グロブリンFc断片結合体においては、生理活性ポリペプチドが二量体である結合体に比べて体内持続性に優れる。よって、多量体結合体は存在せず、単量体結合体のみ結合体として存在するか、前記単量体結合体の多量体結合体、特に二量体結合体に対するモル比が19以上である組成物においては、そうでない組成物と比較すると、血中半減期を延長させる効果に優れる。
【0033】
特に、生理活性ポリペプチドが少なくとも2つ連結された多量体結合体に比べて、本発明による単量体結合体は、当該生理活性ポリペプチドの受容体による受容体媒介インターナリゼーションが低いので体内持続性に優れる。また、生体内で半減期を左右するもう一つの主要経路である腎クリアランスにおいては、分子量に依存することが知られている。よって、腎クリアランスが半減期を決定する重要な変数であるとすると、分子の大きさが、より大きい多量体結合体の割合が高いほど半減期が長くなるが、本発明においては、単量体結合体のほうが体内持続性に優れるという結果が得られた。これらのことから、受容体媒介インターナリゼーションが本発明による結合体の体内半減期延長の重要な要素であることが分かる。これらの結果は、単量体結合剤において、多量体結合体には見られない有利な効果(例えば、立体障害の減少)に起因するものであり得る。
【0034】
よって、本発明の持続性薬剤組成物は、生理活性ポリペプチド多量体−免疫グロブリンFc断片結合体、又は生理活性ポリペプチド二量体−免疫グロブリンFc断片インフレーム結合体を含む薬剤に比べて優れた体内持続性効果を提供することができる。特に、本発明の薬剤組成物において、1つの免疫グロブリンFc断片に対して1分子の生理活性ポリペプチドが連結された単量体結合体が、免疫グロブリンFc断片に対して同じ生理活性ポリペプチド2分子以上が連結された多量体結合体に対して19:1又はそれ以上、具体的には99:1以上、より具体的には500:1以上のモル比で存在する場合、これを含む組成物の優れた体内半減期持続効果が減少しないので、持続性製剤として優れている。
【0035】
本発明における「生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc断片が結合された結合体」とは、生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc断片が連結された結合体を意味する。前記結合体は、生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc断片間に介在する非ペプチド性リンカーにより連結された形態であることが好ましい。
【0036】
本発明における「生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片が連結された結合体」とは、生理活性ポリペプチド単量体が免疫グロブリンFc断片に連結された結合体を意味する。前記結合体は、1つの生理活性ポリペプチドが1つの免疫グロブリンFc断片に結合された形態を含む。ここで、1つの免疫グロブリンFc断片は、ジスルフィド結合などの結合により2つのFc鎖が連結された形態であることが好ましいが、これに限定されるものではない。このような生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片が連結された結合体の構造の例を図1に示すが、これに限定されるものではない。また、前記生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片が連結された結合体は、本発明において単量体結合体と混用される。
【0037】
前記生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片が連結された結合体は、2分子以上の生理活性ポリペプチドが1つの免疫グロブリンFc断片に非ペプチド性重合体により連結された多量体結合体、又は生理活性ポリペプチド多量体と免疫グロブリンFc断片のインフレーム結合体に比べて、低い受容体媒介インターナリゼーション又は受容体媒介クリアランス(receptor-mediated clearance)を示すことを特徴とする。よって、前記生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片が連結された結合体のみ又はそれを高い割合で含む薬剤は、体内持続性に優れるので、治療学的効能に優れる。
【0038】
一方、前記免疫グロブリンFc断片に対して生理活性ポリペプチドが2分子以上連結された多量体結合体は、1つの免疫グロブリンFc断片(例えば、ジスルフィド結合などの結合により2つのFc鎖が連結された形態)に2分子以上の生理活性ポリペプチドが連結された形態を含む。
【0039】
特に、前記生理活性ポリペプチド二量体−免疫グロブリンFc断片結合体は、1つの免疫グロブリンFc断片(例えば、ジスルフィド結合などの結合により2つのFc鎖が連結された形態)に2分子の生理活性ポリペプチドが連結された形態を含む。ここで、前記生理活性ポリペプチドは、免疫グロブリンFc断片を構成する2つのFc鎖のそれぞれに非ペプチド性重合体により連結された形態であるが、これに限定されるものではなく、その形態を図1の(B)に示す。
【0040】
また、前記インフレーム結合体には、生理活性ポリペプチド多量体、具体的には二量体と1つの免疫グロブリンFc断片が互いに連結された形態も含まれ、1つの生理活性ポリペプチドと1つの免疫グロブリンFc断片が融合された、少なくとも2つの融合タンパク質が多量体を形成したケースも含まれる。
【0041】
一方、本発明による前記生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片が連結された結合体は、非ペプチド性リンカーにより共有結合的に連結された形態であることが好ましい。
【0042】
本発明における非ペプチド性リンカーとは、繰り返し単位が少なくとも2つ結合された生体適合性重合体を意味し、前記繰り返し単位はペプチド結合を除く任意の共有結合により互いに連結される。このような非ペプチド性リンカーは両末端又は三末端を有してもよい。
【0043】
本発明に使用可能な非ペプチド性リンカーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、PLA(ポリ乳酸,polylactic acid)及びPLGA(ポリ乳酸−グリコール酸,polylactic-glycolic acid)などの生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、これに限定されるものではないが、ポリエチレングリコールであることが好ましい。当該分野に周知のこれらの誘導体や当該分野の技術水準で容易に製造できる誘導体なども本発明に含まれる。
【0044】
従来のインフレームフュージョン(inframe fusion)方法で製造された融合タンパク質に用いられていたペプチド性リンカーにおいては、生体内でタンパク質分解酵素により容易に切断され、キャリアによる活性薬物の血中半減期の延長効果を期待したほど得られないこともあるが、本発明においては、ペプチドリンカーだけでなく、非ペプチドリンカーを用いることにより結合体を製造することができる。非ペプチドリンカーは、タンパク質分解酵素に抵抗性のある重合体を用いることにより、キャリアと同様にペプチドの血中半減期を維持することができる。よって、本発明に用いられる非ペプチド性リンカーは、このような役割を果たすもの、すなわち生体内タンパク質分解酵素に抵抗性のある重合体であれば制限なく用いられる。非ペプチド性リンカーの分子量は1〜100kDaの範囲、好ましくは1〜20kDaの範囲であるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
また、前記免疫グロブリンFc領域に結合される本発明の非ペプチド性リンカーは、1種類の重合体だけでなく、異なる種類の重合体の組み合わせが用いられてもよい。
【0046】
本発明に用いられる非ペプチド性リンカーは、免疫グロブリンFc領域及びタンパク質薬物に結合される反応基を有する。
【0047】
前記非ペプチド性重合体の両末端の反応基は、反応アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基、マレイミド(maleimide)基及びスクシンイミド(succinimide)誘導体からなる群から選択されることが好ましい。ここで、スクシンイミド誘導体としては、スクシンイミジルプロピオネート、ヒドロキシスクシンイミジル、スクシンイミジルカルボキシメチル又はスクシンイミジルカーボネートが用いられる。特に、前記非ペプチド性リンカーが両末端に反応アルデヒド基の反応基を有する場合、非特異的反応を最小限に抑え、非ペプチド性リンカーの両末端に生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンがそれぞれ結合するのに効果的である。アルデヒド結合による還元性アルキル化で生成された最終産物は、アミド結合により連結されたものよりはるかに安定している。アルデヒド反応基は、低いpHではN末端に選択的に反応し、高いpH、例えばpH9.0条件ではリシン残基と共有結合を形成することができる。
【0048】
前記非ペプチド性リンカーの両末端の反応基は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。例えば、一末端にはマレイミド基、他の末端にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基を有してもよい。両末端にヒドロキシ反応基を有するポリエチレングリコールを非ペプチド性リンカーとして用いる場合、公知の化学反応により前記ヒドロキシ基を前述した様々な反応基として活性化するか、商業的に入手可能な修飾された反応基を有するポリエチレングリコールを用いることにより、本発明の結合体を製造することができる。
【0049】
本発明における「生理活性ポリペプチド」とは、生体内で何らかの生理作用を有するポリペプチドを総称する概念であり、ポリペプチド構造を有するという共通点を有し、様々な生理活性を有する。前記生理活性ポリペプチドとは、遺伝表現と生理機能を調整することにより、生体内における機能調節に関与する物質の欠乏や過度な分泌により正常でない病態を示す場合にそれを正常にする役割を果たすものであり、一般的なタンパク質治療剤が含まれる。
【0050】
本発明の結合体における生理活性ポリペプチドは、単量体形態で免疫グロブリンFc断片に結合され、多量体形態で免疫グロブリンFc断片に結合される場合と比較して、低い受容体媒介インターナリゼーション(receptor-mediated internalization)又は受容体媒介クリアランス(receptor-mediated clearance)を示すものであれば、特にその種類やサイズが限定されるものではない。また、受容体媒介インターナリゼーション又は受容体媒介クリアランスが生体内タンパク質除去の主要メカニズムとして作用する生理活性ポリペプチドであることが好ましい。
【0051】
前記生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、好中球増加因子(G−CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、グルカゴン、オキシントモジュリン、インスリン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、グルカゴン様ペプチド、Gタンパク質共役受容体(G protein-coupled receptor)、インターロイキン、インターロイキン受容体、酵素類、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α1−アンチトリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン、アポリポタンパク質E、高グリコシル化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液凝固第VII因子、第VIIa因子 、第VIII因子、第IX因子、及び第XIII因子、プラスミノーゲン活性因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C反応性タンパク質、レニンインヒビター、コラゲナーゼインヒビター、スーパーオキシドディスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性化因子、組織因子経路インヒビター、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び抗体断片からなる群から選択されるものであってもよい。また、前記生理活性ポリペプチドは、受容体媒介クリアランスが主な生体内タンパク質除去機序である、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、好中球増加因子(G−CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、グルカゴン、オキシントモジュリン、インスリン又はそれらの誘導体であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0052】
また、本発明における前記生理活性ポリペプチドは、天然の生理活性ポリペプチドだけでなく、各ポリペプチドのアゴニスト、前駆物質、誘導体、断片又は変異体を全て包括する概念である。
【0053】
本発明に用いられる前記生理活性ポリペプチドは、GLP−1アゴニストであってもよく、特にこれらに限定されるものではないが、その例として、[(1H−Imidazol−4−yl)−acetyl1]GEGTFTSDL SKQMEEEAVR LFIEWLKNGGPSSGAPPPS(配列番号1)(Bachem社)、又はHGEGTFTSDV SSYLEEQAAK EFIAWLVKG(配列番号2)(Bachem社)が挙げられる。上記アミノ酸配列は、N末端からC末端方向に記載したものである。
【0054】
そのうち、[(1H−Imidazol−4−yl)−acetyl1]GEGTFTSDL SKQMEEEAVR LFIEWLKNGGPSSGAPPPS(Bachem社)が本発明によるGLP−1アゴニストと免疫グロブリンFc断片の結合体(実施例)の製造に用いられる。
【0055】
ここで、オキシントモジュリン誘導体の例には特許文献14に開示されているものが全て含まれ、インスリン分泌ペプチド誘導体の例には特許文献15に開示されているものが全て含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
免疫グロブリンFc領域は、生体内で代謝される生分解性のポリペプチドであるので、薬物のキャリアとして安全に使用できる。また、免疫グロブリンFc領域は、免疫グロブリン分子全体に比べて相対的に分子量が少ないので、結合体の製造、精製及び収率の面で有利であるだけでなく、アミノ酸配列が抗体ごとに異なるため、高い非均質性を示すFab部分を除去することにより、物質の同質性が非常に高くなり、血中抗原性を誘発する可能性が低くなるという効果も期待することができる。
【0057】
本発明における「免疫グロブリンFc領域」とは、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域、重鎖定常領域1(CH1)及び軽鎖定常領域(CL1)を除いたものであり、重鎖定常領域2(CH2)及び重鎖定常領域3(CH3)部分を意味し、重鎖定常領域にヒンジ(hinge)部分を含むこともある。また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然のものと実質的に同等又は向上した効果を有するものであれば、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域を除き、一部又は全部の重鎖定常領域1(CH1)及び/又は軽鎖定常領域1(CL1)を含む拡張されたFc領域であってもよい。さらに、CH2及び/又はCH3に相当する非常に長い一部のアミノ酸配列が除去された領域であってもよい。
【0058】
すなわち、本発明の免疫グロブリンFc領域は、1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン、2)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、3)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、4)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、5)1つ又は2つ以上のドメインと免疫グロブリンヒンジ領域(又はヒンジ領域の一部)との組み合わせ、6)重鎖定常領域の各ドメインと軽鎖定常領域の二量体であってもよい。
【0059】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域には、天然アミノ酸配列だけでなく、その配列変異体(mutant)も含まれる。アミノ酸配列変異体とは、天然アミノ酸配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより異なる配列を有するものを意味する。例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であることが知られている214〜238、297〜299、318〜322又は327〜331位のアミノ酸残基が修飾に適した部位として用いられる。
【0060】
また、ジスルフィド結合を形成する部位が除去された変異体、天然FcからN末端のいくつかのアミノ酸が除去された変異体、天然FcのN末端にメチオニン残基が付加された変異体など、様々な種類の変異体が用いられる。また、エフェクター機能をなくすために、補体結合部位、例えばC1q結合部位が除去されてもよく、ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去されてもよい。このような免疫グロブリンFc領域の配列誘導体を製造する技術は、特許文献16、17などに開示されている。
【0061】
分子の活性を全体的に変化させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸交換は当該分野において公知である(非特許文献2)。最も一般的な交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。
【0062】
場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫酸化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、グリコシル化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)及びアミド化(amidation)などにより修飾(modification)されてもよい。
【0063】
前述したFc変異体は、本発明のFc領域と同じ生物学的活性を示すが、Fc領域の熱、pHなどに対する構造的安定性を向上させた変異体である。
【0064】
また、このようなFc領域は、ヒト、及びウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物の生体内から分離した天然のものから得てもよく、形質転換された動物細胞もしくは微生物から得られた組換えたもの又はその誘導体であってもよい。ここで、天然のものから得る方法は、全免疫グロブリンをヒト又は動物の生体から分離し、その後タンパク質分解酵素で処理して得ることができる。パパインで処理するとFab及びFcに切断され、ペプシンで処理するとpF’c及びF(ab)2に切断される。これらは、サイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)などを用いてFc又はpF’cを分離することができる。
【0065】
ヒト由来のFc領域、微生物から得られた組換え免疫グロブリンFc領域であることが好ましい。
【0066】
また、免疫グロブリンFc領域は、天然糖鎖、天然のものに比べて増加した糖鎖、天然のものに比べて減少した糖鎖、又は糖鎖が除去された形態であってもよい。このような免疫グロブリンFc糖鎖の増減又は除去には、化学的方法、酵素学的方法及び微生物を用いた遺伝工学的手法などの通常の方法が用いられる。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc領域は、補体(c1q)の結合力が著しく低下し、抗体依存性細胞傷害又は補体依存性細胞傷害が低減又は除去されるので、生体内で不要な免疫反応を誘発しない。このようなことから、糖鎖が除去されるか、非グリコシル化された免疫グロブリンFc領域は、薬物のキャリアとしての本発明の目的に適する。
【0067】
本発明における「糖鎖の除去(Deglycosylation)」とは、酵素で糖を除去したFc領域を意味し、「非グリコシル化(Aglycosylation)」とは、原核生物、好ましくは大腸菌で産生されてグリコシル化されていないFc領域を意味する。
【0068】
一方、免疫グロブリンFc領域は、ヒト起源、又はウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物起源であり、ヒト起源であることが好ましい。また、免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来であるか、又はそれらの組み合わせ(combination)もしくはそれらのハイブリッド(hybrid)によるFc領域であってもよい。ヒト血液に最も豊富なIgG又はIgM由来であることが好ましく、リガンド結合タンパク質の半減期を延長させることが知られているIgG由来であることが最も好ましい。
【0069】
一方、本発明における組み合わせ(combination)とは、二量体又は多量体を形成する際に、同一起源の単鎖免疫グロブリンFc領域をコードするポリペプチドが異なる起源の単鎖ポリペプチドに結合することを意味する。すなわち、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD Fc及びIgE Fc断片からなる群から選択される少なくとも2つの断片から二量体又は多量体を製造することができる。
【0070】
本発明における「ハイブリッド(hybrid)」とは、単鎖の免疫グロブリンFc領域内に、少なくとも2つの異なる起源の免疫グロブリンFc断片に相当する配列が存在することを意味する。本発明においては、様々な形態のハイブリッドが可能である。すなわち、IgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE Fc及びIgD FcのCH1、CH2、CH3及びCH4からなる群から選択される1つ〜4つのドメインのハイブリッドが可能であり、ヒンジを含んでもよい。
【0071】
一方、IgGもIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブクラスに分けられ、本発明においては、それらの組み合わせ又はそれらのハイブリダイゼーションも可能である。IgG2及びIgG4サブクラスであることが好ましく、補体依存性細胞傷害(CDC, complementdependent cytotoxicity)などのエフェクター機能(effector function)のほとんどないIgG4のFc領域であることが最も好ましい。すなわち、本発明の薬物のキャリアとして最も好ましい免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4由来の非グリコシル化されたFc領域である。ヒト由来のFc領域は、ヒト生体において抗原として作用し、それに対する新規な抗体を生成するなどの好ましくない免疫反応を起こす非ヒト由来のFc領域に比べて好ましい。
【0072】
本発明の一実施例においては、生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性重合体で連結された結合体を製造し(実施例)、前記結合体においては、生理活性ポリペプチドが二量体である結合体に比べて低い受容体媒介インターナリゼーションを示し、このことにより体内半減期が延長されることが確認された(図2及び図3)。
【0073】
本発明の他の態様は、生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーで連結された、生理活性ポリペプチド単量体−免疫グロブリンFc断片結合体であって、前記生理活性ポリペプチドは、単量体形態で免疫グロブリンFc断片に非ペプチド性リンカーで連結され、生理活性ポリペプチド二量体と免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性重合体により連結された二量体結合体、又は生理活性ポリペプチド二量体と免疫グロブリンFc断片のインフレーム結合体に比べて低い受容体媒介インターナリゼーション又は受容体媒介クリアランスを示すことを特徴とする結合体を提供する。
【0074】
前記生理活性ポリペプチド、免疫グロブリンFc断片、非ペプチド性リンカー及び結合体については前述した通りである。
【0075】
本発明のさらに他の態様は、(a)生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc断片を互いに連結させ、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片結合体の混合物を製造するステップと、(b)前記混合物から、生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片が互いに連結された、生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片が連結された結合体を分離するステップとを含む、前記持続性薬剤の製造方法を提供する。
【0076】
前記生理活性ポリペプチド、免疫グロブリンFc断片、結合体及び持続性薬剤については前述した通りである。
【0077】
上記方法の(a)ステップは、生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーにより共有結合的に互いに連結するステップである。(a)ステップは、(i)生理活性ポリペプチド単量体又は免疫グロブリンFc断片のいずれか一方をまず非ペプチド性リンカーの一末端の反応基に連結するステップ、及び(ii)非ペプチド性リンカーの他末端の反応基に他方を連結するステップを含んでもよく、ここで(i)ステップと(ii)ステップの間に、非ペプチド性リンカーの一末端に生理活性ポリペプチド単量体又は免疫グロブリンFc断片が結合されたものを分離するステップをさらに含んでもよい。このような結合体の製造において、特許文献18は本発明に参考資料として引用される。
【0078】
このような過程により結合体を製造すると、生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片が結合された結合体以外にも、生理活性ポリペプチドが二量体以上で存在する結合体なども副産物として発生し得る。
【0079】
よって、(a)過程により結合体を製造し、次いで(b)前記混合物から、生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片が互いに連結された、生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片が連結された結合体を分離するステップをさらに含んでもよい。
【0080】
ここで、用いられる非ペプチド性リンカー、生理活性ポリペプチドなどの種類によって分離条件が変わり得る。
【実施例】
【0081】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示するものにすぎず、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0082】
GLP−1アゴニストと免疫グロブリンFc断片の結合体の製造
3.4kDaのプロピオン(propion)−ALD2 PEG(IDB. 韓国)をGLP−1アゴニストのリシン(Lysine)と位置特異的に反応させ、その後PEGとGLP−1アゴニストが1:1で結合された連結体を得るために、前記反応混合物を陽イオン交換カラムを用いてモノペグ化された(mono-PEGylated)GLP−1アゴニストを精製した。免疫グロブリンFcのN末端と特異的にモノペグ化されたGLP−1アゴニストが連結されたGLP−1アゴニスト−免疫グロブリンFc断片結合体を製造するために、pH5.0〜8.2の条件で反応させた。カップリング反応後に疎水性カラムと陰イオン交換カラムを用いた2段階の精製方法を行うことにより、最終的に位置特異的に結合されたGLP−1アゴニスト−免疫グロブリンFc断片結合体を精製した。
【0083】
このような精製過程で製造したGLP−1アゴニストと免疫グロブリンFcの結合体を分析した結果、GLP−1アゴニスト単量体と免疫グロブリンFcの結合体のみ存在するか、微量のGLP−1アゴニスト二量体と免疫グロブリンFcの結合体、具体的には結合体の総濃度において多量体結合体が5%(w/w)以下の割合で存在することが確認された。
【0084】
比較例:GLP−1アゴニスト二量体−免疫グロブリンFc断片結合体の製造
GLP−1アゴニストと免疫グロブリンFc断片部位が連結されたDNA配列を動物細胞発現ベクターにクローニングした。この組換えタンパク質をコードするDNAをトランスフェクション溶液(FreeStyle MAX ReagentTM, Invitrogen)により動物細胞株である293−F(Freestyle 293-F cell, invtrogen)にトランスフェクションし、その後48時間培養して培養液を得た。発現したGLP−1アゴニスト二量体−免疫グロブリンFc断片結合体は親和性カラムを用いて培養液から精製した。
【0085】
実験例1:受容体インターナリゼーション(Receptor internalization)の評価
受容体インターナリゼーション(receptor internalization)を評価するために、PathHunter(登録商標) eXpress Activated GPCR Internalization Assayを用いた。ヒトGLP−1受容体を発現するU2OS細胞を白色96ウェルプレートに接種して24〜48時間培養した。実施例のGLP1アゴニスト結合体は3μMから、比較例のインフレームGLP1アゴニスト結合体は15μMから1/4ずつ段階希釈(serial dilution)して添加し、37℃のCO2培養器で3時間かけて受容体インターナリゼーションを誘導した。次に、エンドサイトーシスが起こった受容体を検出する基質を添加して室温で60分間反応させ、ルミネッセンスプレートリーダー(luminescence plate reader)で発光度を測定した。その結果を図2に示す。
【0086】
その結果、図2に示すように、実施例の結合体はEC50 377nMであり、比較例の結合体はEC50 14.59nMであったので、本発明のGLP1アゴニスト結合体が比較例のGLP1結合体に比べて著しく低い受容体インターナリゼーション誘発を示すことが確認された。これらの結果は、生理活性ポリペプチド単量体が免疫グロブリンFc断片に連結された結合体は、生理活性ポリペプチドが二量体である結合体に比べて低い受容体媒介インターナリゼーション及びクリアランスを示すことを示唆するものである。
【0087】
実験例2:GLP1アゴニスト結合体のインビボ薬物動態比較試験
実施例のGLP1アゴニスト結合体と比較例のGLP1アゴニスト結合体のインビボ薬物動態を比較するために、正常SDラットを用いて血中濃度の変化を確認した。
【0088】
具体的には、前記動物に実施例のGLP1アゴニスト結合体(400mcg/kg)、比較例のGLP1アゴニスト結合体(400mcg/kg)を生理食塩水で希釈して2mL/kgの投与用量で皮下投与した。次いで、試験物質投与4、8、24、48、72、96、120、144、168、192、216、240、288、312及び336時間後にラットの頚静脈から採血して血清に分離した。その後、血清試料に酵素免疫法を行うことにより薬物の濃度を定量した。その結果を図3に示す。
【0089】
その結果、実施例のGLP1アゴニスト結合体と比較例のGLP1アゴニスト結合体の血中半減期はそれぞれ40.9時間、28時間であり、最大血清濃度は1758.6ng/mLと742.7ng/mLであった。すなわち、同一用量の薬物を正常ラットに皮下投与した場合に、本発明のGLP1アゴニスト結合体が比較例のGLP1アゴニスト結合体より体内吸収及び持続性の面で優れた結果を示した(図3)。これらの結果は、生理活性ポリペプチド単量体が免疫グロブリンFc断片に連結された結合体は、生理活性ポリペプチドが二量体である結合体に比べて高い体内持続性を示すことを示唆するものである。
【0090】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例は 全ての面において例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明の範囲は、前記詳細な説明ではなく、特許請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態を含むものであると解釈すべきである。
次に、本発明の好ましい態様を示す。
1. 生理活性ポリペプチドが免疫グロブリンFc断片に連結された結合体を含有する組成物であって、前記組成物は、1つの免疫グロブリンFc断片に対して1分子の生理活性ポリペプチドが連結された単量体結合体を含有し、任意的に1つの免疫グロブリンFc断片に対して同じ生理活性ポリペプチドが2分子以上連結された多量体結合体を含有し、前記組成物内の多量体結合体に対する単量体結合体のモル比は19以上である持続性薬剤組成物。
2. 前記結合体は、生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc断片間に介在する非ペプチド性リンカーで連結されている、上記1に記載の持続性薬剤組成物。
3. 前記単量体結合体は、1つの免疫グロブリンFc断片に対して生理活性ポリペプチド2分子が非ペプチド性重合体により連結された二量体結合体、又は生理活性ポリペプチド二量体と免疫グロブリンFc断片のインフレーム結合体に比べて低い受容体媒介インターナリゼーション(receptor-mediated internalization)又は受容体媒介クリアランス(receptor-mediated clearance)を示すことを特徴とする、上記1に記載の持続性薬剤組成物。
4. 前記生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、好中球増加因子(G−CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、グルカゴン、オキシントモジュリン、インスリン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、Gタンパク質共役受容体(G protein-coupled receptor)、インターロイキン、インターロイキン受容体、酵素類、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α1−アンチトリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン、アポリポタンパク質E、高グリコシル化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液凝固第VII因子、第VIIa因子 、第VIII因子、第IX因子、及び第XIII因子、プラスミノーゲン活性因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C反応性タンパク質、レニンインヒビター、コラゲナーゼインヒビター、スーパーオキシドディスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路インヒビター、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び抗体断片からなる群から選択される、上記1に記載の持続性薬剤組成物。
5. 前記生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、好中球増加因子(G−CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、グルカゴン、オキシントモジュリン、インスリン及びそれらの誘導体からなる群から選択される、上記1に記載の持続性薬剤組成物。
6. 前記非ペプチド性リンカーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記2に記載の持続性薬剤組成物。
7. 前記非ペプチド性リンカーは、分子量が1〜100kDaの範囲である、上記2に記載の持続性薬剤組成物。
8. 前記免疫グロブリンFc断片は、CH1、CH2、CH3及びCH4ドメインからなる群から選択される1つ〜4つのドメインからなる、上記1に記載の持続性薬剤組成物。
9. 前記免疫グロブリンFc断片はヒンジ(hinge)領域をさらに含む、上記1に記載の持続性薬剤組成物。
10. 前記免疫グロブリンFc断片は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM、それらの組み合わせ(combination)及びそれらのハイブリッド(hybrid)からなる群から選択される、上記1に記載の持続性薬剤組成物。
11. 前記免疫グロブリンFc断片はIgG4 Fc断片である、上記1に記載の持続性薬剤組成物。
12. 前記免疫グロブリンFc断片は非グリコシル化されたものである、上記1に記載の持続性薬剤組成物。
13. 生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーで連結された、生理活性ポリペプチド単量体−免疫グロブリンFc断片結合体であって、
前記生理活性ポリペプチドが単量体形態で1つの免疫グロブリンFc断片に非ペプチド性リンカーで連結された前記結合体は、生理活性ポリペプチド2分子が1つの免疫グロブリンFc断片に非ペプチド性重合体により連結された二量体結合体、又は生理活性ポリペプチド二量体と免疫グロブリンFc断片のインフレーム結合体に比べて低い受容体媒介インターナリゼーション又は受容体媒介クリアランスを示すことを特徴とする結合体。
14. (a)生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc断片を互いに連結させ、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片結合体の混合物を製造するステップと、
(b)前記混合物から、生理活性ポリペプチド単量体と免疫グロブリンFc断片が互いに連結された、1分子の生理活性ポリペプチドが1つの免疫グロブリンFc断片に連結された結合体を分離するステップとを含む、
上記1の持続性薬剤組成物の製造方法。
15. 前記生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーにより互いに連結されている、上記14に記載の方法。
16. 前記持続性薬剤組成物の1分子の生理活性ポリペプチドが1つの免疫グロブリンFc断片に連結された結合体は、2分子の生理活性ポリペプチドが1つの免疫グロブリンFc断片に非ペプチド性重合体により連結された二量体結合体、又は生理活性ポリペプチド二量体と免疫グロブリンFc断片のインフレーム結合体に比べて低い受容体媒介インターナリゼーション又は受容体媒介クリアランス(receptor-mediated clearance)を示すことを特徴とする、上記14に記載の方法。
図1
図2
図3
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]