(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976433
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】アディティブ製造技術(AMT)低プロファイル放射器
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/10 20060101AFI20211125BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20211125BHJP
H01Q 5/357 20150101ALI20211125BHJP
H01P 11/00 20060101ALI20211125BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20211125BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20211125BHJP
H05K 3/40 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
H01Q13/10
H01Q21/06
H01Q5/357
H01P11/00
H05K1/02 P
H05K1/11 N
H05K3/40 K
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-525916(P2020-525916)
(86)(22)【出願日】2018年11月5日
(65)【公表番号】特表2021-502763(P2021-502763A)
(43)【公表日】2021年1月28日
(86)【国際出願番号】US2018059240
(87)【国際公開番号】WO2019094337
(87)【国際公開日】20190516
【審査請求日】2020年5月28日
(31)【優先権主張番号】62/584,300
(32)【優先日】2017年11月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/584,264
(32)【優先日】2017年11月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ヘイブン,ジョン,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】シキナ,トーマス,ヴイ.
(72)【発明者】
【氏名】アダムス,ピーター,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクト,ジェームズ,イー.
【審査官】
鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−514483(JP,A)
【文献】
特開2005−236672(JP,A)
【文献】
特開2007−243296(JP,A)
【文献】
特開2004−087656(JP,A)
【文献】
特開2002−271133(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0191950(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00−25/04
H01P 1/00−11/00
H05K 1/00− 1/02
H05K 1/11
H05K 3/40− 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ素子であって:
対向する第1表面及び第2表面を有する基板であり、前記第1表面に設けられているボウタイアパーチャを有する基板;及び
前記ボウタイアパーチャに近接して配置されている複数の同調素子であり、第1同調素子及び第2同調素子を含み、前記ボウタイアパーチャに対して対称的に配置されており、前記第1同調素子が前記ボウタイアパーチャの両側に対称的に配置されている第1組の同調素子を形成し、前記第2同調素子が前記ボウタイアパーチャの両側に対称的に配置されている第2組の同調素子を形成している、複数の同調素子;
を有するアンテナ素子。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ素子であって、
垂直送出と、前記ボウタイアパーチャのスロット部分を横切って配置されているフィードラインとを備える供給回路をさらに備える、アンテナ素子。
【請求項3】
請求項2に記載のアンテナ素子であって、
前記供給回路は、前記第1組の同調素子と前記第2組の同調素子との間に配置されている、アンテナ素子。
【請求項4】
請求項1のアンテナ素子を製造するための方法であって:
(a)二重クラッド誘電体基板の第1表面から銅をミリングして、ボウタイアパーチャを形成するステップ;
(b)前記二重クラッド誘電体基板の対向する第2表面から銅をミリングして、ボウタイアパーチャのためのフィードラインを形成するステップ;
(c)前記二重クラッド誘電体基板を、第2基板の第1表面に接合するステップであり、前記第2基板の第2表面上に接地面導体が配置されており、接合されたアセンブリを形成するステップ;
(d)前記接合されたアセンブリをミリングして、前記ボウタイアパーチャに近接する同調素子のための少なくとも1つの開口部を形成するステップ;及び
(e)前記少なくとも1つの開口部を導電性液体で充填し、同調素子を形成するステップ;
を含む方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記接合されたアセンブリをミリングして、垂直信号経路のための少なくとも1つの開口部を形成し、前記垂直信号経路のために前記少なくとも1つの開口部を充填するステップ;
をさらに含む方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記導電性液体は、導電性インクである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ADDITIVE MANUFACTURING TECHNOLOGY (AMT) LOW PROFILE RADIATORと題する2017年11月10日出願の米国仮特許出願第62/584,264号及びLOW PROFILE PHASED ARRAYと題する2017年11月10日出願の米国仮特許出願第62/584,300号に対する優先権を主張するものであり、これら特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野で知られているように、アンテナ又は(放射器)設計は、一般に、標準的なプリント回路基板(PCB)製造プロセスを採用しており、標準的なプリント回路基板製造プロセスは、複数のプロセス工程、高価な材料、及び低速サイクルターンアラウンド時間に依存する。複数のプロセスステップは、高コスト及び遅いターンアラウンド時間の両方のための推進力となり得てしまう。
【0003】
さらに、アンテナアセンブリは、一般に、一連のプロセス(例えば、積層化、導電性ビア埋め戻し)を介して製造され、これは、アンテナアセンブリ全体の製造の労働コストを増加させる。このような労働コストの増加に加えて、複数のプロセスの使用はサイクル時間を増加させ、長いビルド時間をもたらす。さらに、回路調整が必要な場合、複数のプロセスの使用は、何らかのトラブルシューティングフェーズを延長する可能性がある。さらに、典型的なPCBプロセスは、宇宙空間ベースの用途のための薄いアレイを生成するのに必要な小さなフィーチャサイズを許容しない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書には、約0.020インチ(20ミル)の範囲の厚さを有する放射器(radiator)が記載されている。このような放射器は、ロープロファイル(low profile)放射器と呼ばれ、このようなロープロファイル放射器で構成されるアレイアンテナでの使用に適している。本明細書に記載のロープロファイル放射器の設計は、アディティブ製造技術(additive manufacturing technology (AMT))を用いて提供され、したがって、AMT放射器と称され得る。このようなAMT放射器は、AMT製造プロセスを用いて製造され得るアレイアンテナでの使用に適している。
【0005】
AMTアプローチを介して製造可能な放射器設計は、製造コストが著しく低く、迅速にプロトタイピングでき、設計ニーズを満たすようにカスタマイズできることが認識されている。さらに、そのロープロファイルのため、本明細書に記載の放射器は、宇宙ベースの用途での使用に適している。
【0006】
さらに、本明細書に記載される放射器は、同じ又は類似の動作特性を有する従来技術のアンテナによって必要とされるコスト及びボリュームに比べて低減された、ローンチ体積(launch volume)(すなわち、ローンチビークル内で占有されるボリューム)及びコストを有する折りたたみ式アレイでの使用に適している。本明細書に記載の放射器はまた、低地球軌道宇宙環境に展開することも可能である。従って、本明細書に記載のタイプの放射器は、移動衛星システムにおける使用に適している。
【0007】
本明細書に記載の放射器設計はAMTを用いて製造することができるので、本明細書に記載の放射器は、従来のプリント回路基板(PCB)製造技術を用いて提供される放射器に関連する問題を解決する。上述したように、本明細書に記載した放射器の全体の厚さは、AMTマシンのミリング及び印刷能力により、ロープロファイルのアレイに必要とされるより小さなフィーチャサイズが可能になるため、約20ミル(508ミクロン)に制限することができる。特徴サイズは、伝送線の幅と、従来の方法よりも小さくすることができるファラデー壁(隔離要素)との両方を含むが、これらに限定されない。
【0008】
さらに、本明細書に記載される放射器は、放射器の所望の領域に電界を閉じ込めるように配置される、印刷された導電性「ファラデー壁」を利用する。このようなファラデー壁は、他の特徴をミリングするのと同じ製造工程で製造することができる。これは、アセンブリの全体的なコストを下げる、著しい労働コスト節約になる。
【0009】
本明細書に記載される放射器設計はまた、AMT能力を利用して、実質的に任意の形状及びサイズの導電性要素を、機械的制約内で印刷する。これらは、ロープロファイルアレイの所望の性能を達成するための同調素子として使用される。
【0010】
最後に、カスタムプリントコネクタインターフェースを使用して、標準BMBコネクタを使用して装置をテストすることができる。
【0011】
本明細書に記載される放射器設計は、AMT単段ミル(single-step mill)から提供され、ファラデー壁、垂直送出接続、小(2×2要素)ビルディングブロック及びミリングされた銅トレースを有する放射器を製造するための充填作業を行う。
【0012】
AMTアンテナは、同様の動作特性(例えば、動作周波数範囲、帯域幅など)を有する従来の放射器の幾何学的形状と比較して、比較的単純な幾何学的形状を有するように提供される。さらに、AMT製造技術を使用することによって、アンテナは、複同調性能を生成するのに必要な形状及び/又はサイズを有する印刷された同調素子を含むことができる。
【0013】
さらに、本明細書に記載のアンテナ設計は、短時間で印刷及びプロトタイピングすることができる完全なアレイに統合することができる。
【0014】
本開示の一態様は、アディティブ製造技術(AMT)を用いて製造されるアンテナ素子に関する。一実施形態では、アンテナ素子は、対向する第1表面及び第2表面を有する基板であり、前記第1表面に設けられたミリングされたボウタイスロットアパーチャを有する基板;及び
前記ボウタイスロットアパーチャに近接して配置された少なくとも1つのファラデー壁;を有する。
【0015】
アンテナ素子の実施形態では、前記少なくとも1つのファラデー壁は、複数のファラデー壁の第1ファラデー壁及び第2ファラデー壁を含む。前記複数のファラデー壁は、前記ボウタイスロットアパーチャに対して対称的に配置され、前記複数のファラデー壁のうちの第1ファラデー壁が前記ボウタイスロットアパーチャの両側に対称的に配置された第1組の同調素子を形成し、前記複数のファラデー壁のうちの第2ファラデー壁が前記ボウタイスロットアパーチャの両側に対称的に配置された第2組の同調素子を形成する。前記基板の前記第1表面から前記第2表面まで延びる垂直送出と、前記ミリングされたアパーチャのスロット部分を横切って配置されたフィードラインとを備える供給回路をさらに備える。前記供給回路は、前記第1組の同調素子と前記第2組の同調素子との間に配置される。
【0016】
本開示の別の態様のアンテナアセンブリは、対向する第1表面及び第2表面を有する基板であり、前記第1表面に設けられたミリングされたアパーチャを有する基板;及び 前記ミリングされたアパーチャの両側に対称的に配置された第1組の同調素子; 前記ミリングされたアパーチャの両側に対称的に配置された第2組の同調素子;及び 前記基板の前記第1表面から前記第2表面まで延びる垂直送出と、前記ミリングされたアパーチャのスロット部分を横切って配置されたフィードラインとを備える供給回路;を備える。
【0017】
幾つかの実施形態では、複数のアンテナアセンブリを備えたアレイアンテナであって、各アンテナアセンブリが請求項6に記載のアンテナアセンブリを具現化したものである。4つのアンテナアセンブリを含む、上記アレイアンテナであって: 第1アンテナアセンブリの第1組の同調素子と第2アンテナアセンブリの第1組の同調素子とが、第3アンテナアセンブリの第2組の同調素子と第4アンテナアセンブリの第2組の同調素子とにそれぞれ近接している。
【0018】
本開示のさらに別の態様は、ボウタイスロットアンテナを製造するためのAMTプロセスに関する。一実施形態では、本方法は、(a)二重クラッド誘電体基板の第1表面から銅をミリングして、アパーチャを形成するステップ; (b)前記二重クラッド誘電体基板の対向する第2表面から銅をミリングして、アパーチャのためのフィードラインを形成するステップ; (c)前記二重クラッド誘電体基板を、第2基板の第1表面に接合するステップであり、前記第2基板の第2表面上に接地面導体が配置されており、接合されたアセンブリを形成するステップ; (d)前記接合されたアセンブリをミリングして、前記アパーチャに近接するファラデー壁のための少なくとも1つの開口部を形成するステップ;及び (e)前記少なくとも1つの開口部を導電性液体で充填し、ファラデー壁を形成するステップ;を含む。
【0019】
本方法の実施形態では、前記接合されたアセンブリをミリングして、垂直信号経路のための少なくとも1つの開口部を形成し、前記垂直信号経路のために前記少なくとも1つの開口部を充填するステップをさらに含む。
【0020】
少なくとも1つの実施形態の種々の態様は、添付の図面を参照して後述されるが、これらは、縮尺通りに描かれることを意図されていない。図面は、種々の態様及び実施形態の説明及びさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成するが、本開示の限定の定義として意図されるものではない。図面において、種々の図に示されている同一又はほぼ同一の各構成要素は、同様の数字で指示することができる。明瞭にするために、全ての構成要素が全ての図においてラベル付けされているわけではない。前述の特徴は、以下の図面の説明からより十分に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】アディティブ製造技術(AMT)を用いて製造したボウタイ(bowtie)放射器の平面図である。
【
図1A】放射器入出力ポートにおける反射係数(S11)のプロットであり、同調素子を介して達成されるいわゆる「複同調」特性を示す。
【
図1B】2×2アレーアンテナを形成するように配置された、
図1に記載されたボウタイ放射器と同一又は類似の複数のボウタイ放射器の平面図である。
【
図2】印刷された反応同調素子の使用によって達成されるボウタイ放射器フィールド構成のモデルである。
【
図3】
図1に関連して上述したボウタイ放射器と同一又は類似するボウタイ放射器の斜視図である。
【
図4】
図3の線4−4の沿って切った、
図3のボウタイ放射器の断面図である。
【
図5】アパーチャアンテナを給電線に結合するプロセスを示す一連の図である。
【
図5A】アパーチャアンテナを給電線に結合するプロセスを示す一連の図である。
【
図5B】アパーチャアンテナを給電線に結合するプロセスを示す一連の図である。
【
図5C】アパーチャアンテナを給電線に結合するプロセスを示す一連の図である。
【
図5D】アパーチャアンテナを給電線に結合するプロセスを示す一連の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書に記載される概念、システム及び技術は、アディティブ製造技術を用いて提供されるフェーズドアレイアンテナ(phased array antenna)に向けられており、ロープロファイル(すなわち、約15ミル〜約25ミルの範囲の厚さ)を有するフェーズドアレイアンテナ(本明細書では、ロープロファイルフェーズドアレイと称する)を提供する。
【0023】
本明細書に記載された方法及び装置の実施形態は、以下の説明に記載された、又は添付の図面に例示された構成及び構成要素の配置の詳細に適用することに限定されないことを理解されたい。これらの方法及び装置は、他の実施形態で実装可能であり、実現可能であるか、或いは種々の方法で実行可能である。具体的な実施例は、例示的な目的のためだけに本明細書で提供されており、限定することを意図したものではない。また、本明細書中で私用される表現及び用語は制限的に理解されるべきではない。本明細書における「備える」、「含む」、「有する」、「含有する」、「包含する」及びそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目及びそれらの同等物ならびに追加の項目を包含することを意味する。「又は」への言及は、「又は」を使用して記載される用語が単一の、複数の、及び記載される用語のすべてを示すことができるように、「又は」への言及は包括的であると解釈され得る。前後、左右、上下、上方下方、下端、側面、垂直及び水平などへの言及は、本システム及び方法又はそれらの構成要素を、いずれか1つの位置又は空間方向に限定するのではなく、説明の便宜のために意図されたものである。
【0024】
次に、
図1を参照すると、アディティブ製造技術(AMT)を用いて製造された放射器10が、第1の誘電体基板14を含む。第1の誘電体基板14は、第2の誘電体基板15の上に配置され、第2の誘電体基板15に接合(又は他の方法で結合)されている。基板14の第1の表面14aは、その上に配置された導電性材料16(例えば、銅又は等価な導電性材料)を有するように設けられている(導体16の一部が、ここでは、誘電性基板表面14aの一部を明らかにするために除去されている)。
【0025】
一般的な「ボウタイ(bowtie)」形状を有するアパーチャ(aperture)アンテナ素子12(又はより単純に「アパーチャ」12)が、第1の誘電体基板14の表面14aにミル(mill)加工される。ボウタイ形状のアパーチャ12は、基板表面14aから導電性材料16を除去してボウタイ形状のアパーチャ12を形成するAMTミリング操作によって形成される。いくつかの実施態様において、導電性材料16は、0.0007インチ(すなわち、1/2オンス(oz)銅)の厚さを有する銅として、基板表面上に配置される。1つの特定の実施形態において、アパーチャ12の中央部分は、約7ミル(178ミクロン)の幅を有するように設けられる。アパーチャ12の幅は、ボウタイアパーチャを適切に励起するように選択する必要があるという点で重要である。したがって、特定のアパーチャ幅は、限定されるわけではないが、所望の動作周波数(又は動作周波数帯域幅)、放射器を提供する基板の厚さ、及びアパーチャの特定の形状を含む種々の要因に従って選択される。
【0026】
さらに、この例示的な実施形態では、導体16は、1/2オンス銅として提供されるが、当然のことながら、他の実施形態では、他の導体(すなわち、銅以外の導体)及び他の厚さ(すなわち、0.0007インチ以外の厚さを有する導体)も使用され得ることが理解されるべきである。
【0027】
ボウタイ放射器10はさらに、第1及び第2の組の同調素子18、20を含む。第1の組の同調素子18は、2つの対の導体18a、18bを含み、対内の各導体は長方形の形状を有する。第2の組の同調素子20は、2つの対の導体20a、20bを含み、対内の各導体は正方形の形状を有する。
【0028】
いくつかの実施態様において、同調素子18a、18b、20a、20bは、AMTミリング及び充填操作によって形成される。AMT操作の詳細について以下に説明する。ここでは、ミリング操作において、導電性材料16及び基板材料14は、所望の形状の同調素子(ここでは、一般的に18、20と示される長方形及び正方形の対)を有する開口部(opening)を基板内に形成するように除去されると言うことで十分であろう。次に、導電性インク(又は、より一般的には、導電性流体)が開口部(openings)内に配置されて、同調要素18、20を形成する。
【0029】
本技術では、同様の動作特性(例えば、動作周波数、帯域幅特性、利得特性など)を有する従来技術の放射器の幾何学的形状と比較して比較的単純な幾何学的形状を有する放射器が提供される。
【0030】
印刷された同調素子は、ダブルチューニング(複同調)された性能を生成するのに必要な形状又はサイズのものとすることができる。すなわち、
図2に関連して以下に記載されるように、2組の同調素子が、単位セル内に所望のフィールド構成を生成するために使用される。
【0031】
図1Aを簡単に参照すると、放射器入出力ポートにおけるプロット反射係数(S11)が、同調素子18、20を介して達成されるいわゆる「複同調特性」を示す。
図1Aに見られるように、同調素子18、20を使用して、放射器10の所望の動作周波数帯域内にある異なる周波数F1、F2で2つの共振を生成することができる。
【0032】
次に、
図1Bを参照すると、複数の、ここでは4個のボウタイ放射器10a〜10dが、アレイアンテナ30を形成して配置される。
図1Bの説明において、4個のボウタイ放射器10a〜10dは、2×2アレイを形成するように配置される。当業者は、当然のことながら、任意のサイズのアレイ又は形状のアレイが、放射器を介して形成され得ることを理解するであろう。アレイアンテナ30は、比較的大きなアレイアンテナ(例えば、特定の用途のニーズに応じて、数十、数百、又は数千のアンテナ素子を含むアレイアンテナ)を構築するための構成要素として使用することができる。従って、
図1に関連して上述した放射器設計は、短時間で印刷及びプロトタイピングすることができるフルアンテナアレイに統合することができる。
【0033】
次に、
図2を参照すると、
図1に関連して上述したタイプのAMT放射器のシミュレーションが、プリントされた反応同調素子(又は同調ポスト)18、20が、アンテナユニットセル内に所望のフィールド構成を生成することを示す。従って、同調素子18、20は、アンテナユニットセル内のフィールド構成を制御及び成形するために、いわゆるファラデー壁(Faraday walls)として機能する。
【0034】
この設計は、AMTの特徴に依存していることは理解されるべきである。例えば、比較的高い導電率(例えば、実質的に銅の範囲の導電率)を有する導電体が、通電(電流搬送)領域(例えば、ファラデー壁と比較した伝送線)において使用される。
【0035】
供給回路32が、印刷された垂直送出(vertical-launch)信号経路33とパッド34とを備える。信号は、供給回路32を介して放射器12へと/放射器12から結合される。
【0036】
図3を参照すると、同様の参照符号を有する
図1及び
図2の同様の要素が設けられているが、ボウタイ放射器は、アパーチャ12と、同調構造18、20と、垂直送出構造33、供給ポイント(又はパッド)34及びボウタイ・アパーチャ12と交差する伝送線フィード36から成る供給回路32とを含む。伝送線フィード36は、アパーチャ12が配置されている基板表面側とは反対側の基板14の表面に配置されていることを理解されたい。従って、伝送線路フィード上の電圧は、アパーチャを下方から励起する電圧勾配を作り出す。
【0037】
一実施形態では、AMTアパーチャ放射器は、以下のように形成されてもよい。アンテナ基板14が、その両側に導体を有するように設けられる(すなわち、基板は、二重クラッド基板として設けられる)。ミリング操作が、基板(例えば、第1の表面14a)の一方の側で実行され、アパーチャ(例えば、アパーチャ12)が、アパーチャの所望の形状の導体(例えば、
図1の導体16)を除去することによって形成される。基板の第2の反対側では、全ての銅が、供給ライン(例えば、
図3に最も明瞭に示され得るような供給ライン36)を残してミリングされる。
【0038】
次に、アンテナ基板は、39で第2の基板15(時には接地面基板と呼ばれる)に接合され、接合されたアセンブリ(
図4に示されるように)を形成する。第2の基板は、供給ライン(36)の反対側の、その基板表面上に配置された導体(例えば、接地平面導体40)を有する。
【0039】
ファラデー壁のための開口(例えば、同調素子18a、18b、20a、20b)を提供するためにミリング操作が行われる。重要なことに、ミリング操作の間、基板及び接合材料は除去されるが、接地平面導体40はそのまま残される。したがって、ミリング操作は、接合された基板のアパーチャ側から行うことができる(すなわち、ミリングは、アパーチャ導体16が配置される接合されたアセンブリと同じ側で行われる)。
【0040】
また、ミリング操作を行って、垂直送出信号経路(例えば、垂直送出33)のための開口部を設ける。垂直送出開口のミリングも、接合された基板のアパーチャ側から実施される(すなわち、ミリングは、アパーチャ導体16が配置される接合されたアセンブリと同じ側で実施される)。
また、ミリング操作を行って、垂直送出開口部の周囲の領域で接地面40内にパッドを形成する。このミリング操作は、接合されたアセンブリの接地面側で行われる(すなわち、ミリングは、接地面導体40が配置される接合されたアセンブリと同じ側で行われる)。
【0041】
次に、ファラデー壁及び垂直送出のための開口部は、導電性インクで満たされ、ファラデー壁18a、18b、20a、20b及び垂直送出33を形成する。別の実施形態では、ワイヤ導体が、基板の層間で「垂直に」信号を伝達することができ、様々な他の層へ又は他の層から信号を送るためにワイヤ導体を用いることができる。そのような垂直送出は、1つ以上の基板に穴を機械加工し、1つ以上の導体表面に半田を塗布し、ワイヤのセグメント(例えば、銅ワイヤ)を穴に挿入し、半田をリフローして、機械的及び電気的に接続を固定することによって形成することができる。
【0042】
次に、
図4を参照すると、
図3の同様の素子が同様の参照符号を有するように提供されており、アンテナは、ミリングされたボウタイスロット放射器を設けた接地面を含む。ボウタイ放射器は、垂直送出に連結された伝送ラインを介して供給される。構造は、約10ミルの厚さを有する誘電体基板内に形成される。基板は、その中に形成された一対のミリングされたファラデー壁と印刷されたファラデー壁を有するように提供される。
【0043】
以下の
図5〜5Dは、アディティブで安価であり、PCB製造プロセスから銅の電着を除去する導電性垂直送出を提供するための構造及び技術を説明する。
【0044】
ここで、
図5〜5Dを参照すると、AMTアパーチャアンテナ(
図1に関連して上述したアパーチャアンテナ12のような)をAMTフィード回路(
図3及び4に関連して上述したフィード回路36のような)に結合するための導電性(例えば、銅)垂直送出(
図3及び4に関連して上述した垂直送出33のような)を形成する技術は、底面トレース(すなわち、フィード回路ライン36)を二重クラッド誘電体の片側にミリングすることによって開始する(
図5及び5A)。
図5は、二重クラッド誘電体基板(アパーチャ基板)を示す。
【0045】
図5Aは、二重クラッド誘電体基板内に形成されたミル開口及び供給ラインを示す図である。
【0046】
アンテナ基板は、接地面基板に接合される(
図5B)。
【0047】
供給ラインに通じる開口部又はキャビティが、ミリング、ドリル加工、又は他の方法で形成される(
図5C)。
【0048】
開口部を形成した後、はんだバンプが開口部に再び供給ラインに配置され、銅(又は他の導電性材料)のシリンダが下方のはんだバンプに接触するまで挿入される。このような銅のシリンダは、少なくとも直径5ミル程度の小ささであり、従来の方法よりもはるかに小さいことが分かった(
図5D)。
【0049】
はんだごてなどの熱源を挿入された銅片の上端に適用する。この距離が短いため、挿入された銅片と供給ラインとの間の接続を形成する供給層にはんだをリフローさせる銅の長さに沿って熱が伝わる(
図5D)。
【0050】
ファラデー壁は、基板を通して「垂直に」電磁境界を提供する導体である。本明細書に記載されているように、ファラデー壁は、基板を通して接地面までトレンチを機械加工し、導電性材料、例えば、アディティブ製造技術で塗布された導電性インクをトレンチに充填することによって形成することができる。導電性インクは、セットされた場合、実質的に電気的に連続した導体を形成することができる。ファラデー壁が形成されたトレンチは、接地面を貫通したり貫通したりする必要がない。したがって、ファラデー壁は、接地面と電気的に接触していてもよい。さらに、ファラデー壁の頂部は、別の接地面と電気的に接触してもよく、これは、例えば、導電性インクと接地面との間の接触を確実にするために機械加工されたトレンチのわずかな過充填によって、及び/又は半田の塗布によって達成されてもよい。ファラデー壁の位置決めは、供給回路によって伝達される信号に影響するために選択されてもよい。様々な実施形態では、ファラデー壁は、分離を提供する以外の特定の方法で信号に影響を与えるようなことなく、分離を提供するように配置されてもよい。
【0051】
本明細書の主題である種々の概念、構造及び技術を例示するのに役立つ好ましい実施形態を記載したが、これらの概念、構造及び技術を組み込んだ他の実施形態が使用され得ることは当業者には明らかであろう。さらに、本明細書に記載の異なる実施形態の要素を組み合わせて、上記以外の実施形態を形成してもよい。
【0052】
従って、当該特許の範囲は、記載された実施形態に限定されるべきではなく、むしろ、以下の特許請求の範囲の精神及び範囲によってのみ限定されるべきである。