(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のプラズマ発生部は、前記アクティブグロー状態のいずれか1つのプラズマ発生部が生成した負イオン前駆体及び電子を前記負イオン供給部に供給する際に、前記アフターグロー状態の他のプラズマ発生部が生成した負イオンを前記負イオン供給部に供給することを特徴とする請求項1に記載の多重パルスプラズマを用いた負イオン供給システム。
前記電磁石は、前記パルス電力の位相差に連動して前記プラズマ発生部のアクティブグロー状態で磁場を形成することを特徴とする請求項6に記載の多重パルスプラズマを用いた負イオン供給システム。
前記プラズマ粒子フィルタは、電場を印加できる電極及びグリッドのいずれかからなることを特徴とする請求項8に記載の多重パルスプラズマを用いた負イオン供給システム。
前記プラズマ発生部に連結され、前記電気的負性ガスを供給するガス供給部をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の多重パルスプラズマを用いた負イオン供給システム。
前記ガス供給部は、前記プラズマ発生部に供給されるガスの供給量を経時的に制御するガス供給制御装置を含むことを特徴とする請求項10に記載の多重パルスプラズマを用いた負イオン供給システム。
前記負イオン供給部に連結され、前記負イオンを引き出すビーム引出部をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の多重パルスプラズマを用いた負イオン供給システム。
【背景技術】
【0002】
プラズマは、物質の3つの状態である固体、液体、気体に続く、物質の第4の状態である。
【0003】
プラズマとは、気体にエネルギーを加えて生成された準中性のイオン化されたガス又は粒子の集合体を意味し、中性粒子、電子及びイオンが含まれる。ここで、電子は、エネルギーによる粒子数分布を有し、エネルギー準位によって高エネルギー電子と低エネルギー電子に分類される。
【0004】
一方、負イオン利用技術は、様々な研究・産業分野、特に核融合、半導体及び宇宙推進機分野で直接・間接的に活発に活用されている。以下、これらの各分野で活用される負イオン利用技術と要求される新たな負イオン技術について詳細に説明する。
【0005】
核融合分野において、核融合反応を起こすためには、核融合炉のプラズマの温度を上昇させる加熱装置、及び核融合炉の連続運転に必要なプラズマ電流を駆動する駆動装置が必須である。
【0006】
中性粒子ビーム入射装置(Neutral Beam Injection, NBI)は、核心的な核融合炉の加熱装置であり、かつプラズマ電流の駆動装置である。具体的には、中性粒子ビーム入射装置は、イオン源で生成された荷電粒子(例えば、重水素の正イオン又は負イオン)を、電場に印加して加速させ、その後中性化し、中性化した高速粒子を、強力な磁場を発生する核融合炉内に入射させるように構成される。
【0007】
一方、研究によれば、加速されたビームの中性化過程での中性化効率は、エネルギーによって正イオンビームと負イオンビームとで異なる。例えば、高速に加速されたビームの条件では、負イオンビームの中性化効率の方が正イオンビームの中性化効率よりはるかに高い。
【0008】
よって、高速中性粒子ビームの入射を必要とする高性能の核融合炉の効率的な運用のためには、中性粒子ビーム入射装置に負イオンを安定して供給することのできる負イオンの供給及び制御技術の開発が求められている。
【0009】
一方、数ナノメートル(nanometer, nm)レベルのチップを生産する半導体分野においては、ウエハパターンの最小線幅(Critical Dimension, CD)が狭くなるにつれて精巧なエッチング技術が用いられるようになったが、CDが非常に狭いプラズマエッチング時には、基板に荷電粒子(主に正イオン)が積層されることにより、電荷の帯電損傷(charging damage)や異常エッチング(abnormal etching)などが発生するという問題があった。
【0010】
それを解決するために、基板に積層された荷電粒子とは異なる電荷を帯びた粒子である負イオンを安定して供給して基板に積層された荷電粒子を中性化することのできる負イオンの供給及び制御技術の開発が求められている。
【0011】
一方、宇宙推進機分野において、従来の宇宙推進機である静電スラスタ(electrostatic thruster)は、プラズマイオン源から正イオンが供給されて推進力を生成するように構成される。しかし、プラズマイオン源は、推進に用いられる正イオンだけでなく、電荷の帯電損傷を起こしたり加速電場を相殺する電子を生成するので、体積が大きく重い中性化装置をさらに必要とするという問題があった。
【0012】
よって、従来の静電スラスタの問題を解決するために、従来とは異なる方式である定常状態のイオン−イオンプラズマ(steady-state ion-ion plasma)を用いる推進機が研究されている。具体的には、イオン−イオンプラズマを用いる推進機は、正イオンと負イオンとを交互に引き出す方式で推進することにより、従来における電荷の帯電及び電場の相殺の問題を解決する。ただし、そうするためには、電子の密度に比べて高い密度の負イオンを生成し続けなければならないという技術的難題がある。
【0013】
前述したように、上記の様々な分野の問題を解決するためには、高い密度の負イオンを供給し続けなければならず、そのための制御技術が必要である。以下、従来の負イオンの供給及び制御技術について詳細に説明し、それに関する問題について説明する。
【0014】
一般に、負イオンを生成して供給する装置をプラズマ負イオン源という。具体的には、プラズマ負イオン源とは、電気的負性ガス(electronegative gas)を含むガスを放電して負イオンを含むプラズマを生成し、生成された負イオンを引き出して用いる装置を意味する。ここで、電気的負性ガスとは、プラズマ状態で負イオンを生成できる原料ガス又はガスをいう。
【0015】
プラズマ負イオン源内で負イオンを生成するメカニズムは、大きく表面生成(surface production)メカニズムと体積生成(volume production)メカニズムに分けられる。
【0016】
表面生成メカニズムは、仕事関数の低い物質(例えば、セシウム(Cs))をイオン源装置の表面に塗布すると、電気的負性ガス原子(又は正イオン)がその表面から電子を受けて負イオンが生成される反応原理である。ここで、仕事関数とは、物質中から1つの電子を外に引き出すために必要な最小の仕事又はエネルギーを意味する。
【0017】
もっとも、表面生成メカニズムを用いた負イオン源は、後述する体積生成メカニズムを用いた負イオン源より負イオン生成効率が非常に高いが、塗布物質の化学特性と表面吸脱着に関する動力学が複雑であり、制御が困難であるという問題があった。
【0018】
また、塗布物質が他の残留不純物と化学反応すると、仕事関数が低下し、加速部(accelerator stage)に移動して高電圧に対する耐電圧性能(voltage holding capability)が低下するなど、管理が容易でないという問題があった。
【0019】
さらに、表面生成メカニズムを用いた負イオン源は、長時間運転時、必ず装置の表面に塗布物質を新たに塗布し、コンディショニングを行わなければならない不便があった。
【0020】
一方、前述した表面生成メカニズムを用いた負イオン源の欠点により、近年、塗布物質の使用を排除するか又は最小限に抑える高性能の負イオン源に関する研究開発が行われている。その研究開発の1つが後述する体積生成メカニズムを用いた負イオンの生成及び供給方法に関する研究開発である。
【0021】
体積生成メカニズムは、電気的負性ガス分子を高エネルギー電子(例えば、数十電子ボルト(electron volt, eV)により励起して高振動励起分子(例えば、振動量子数が5以上)を生成するステップと、前記高振動励起分子を低エネルギー電子(例えば、1eV以下)により解離性付着して原子と共に負イオンを生成するステップとから構成される。
【0022】
一方、体積生成メカニズムにおいて、高エネルギー電子は、高振動励起分子を生成して負イオン生成反応に寄与するが、同時に電子脱離反応により生成された負イオンを除去する。従って、体積生成メカニズムを用いた負イオン源は、表面生成メカニズムを用いた負イオン源よりは効率が劣るという問題があった。
【0023】
よって、研究者らは、プラズマパルシング技術を導入して体積生成メカニズムを用いた負イオン源の効率を高める試みを行っている。ここで、プラズマパルシングとは、経時的に電力供給の有無及び電力量を調整して電子のエネルギーを調整する方法を意味する。
【0024】
しかし、プラズマパルシングを用いた負イオン源は、その特性上、高い密度の負イオンが維持される時間が短いので(例えば、μs単位程度の時間)、負イオンの安定した供給が困難であるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的は、上記の様々な研究開発及び産業分野、特に核融合、半導体及び宇宙推進機分野における要求を満たす負イオンを供給するシステムを提供することにある。
【0026】
本発明の具体的な目的は次の通りである。
【0027】
本発明の第1の目的は、メンテナンスが難しい従来の負イオン表面生成メカニズムを用いた負イオン源を代替し、体積生成メカニズムを用いて負イオンを生成し、高い密度の負イオンを供給することのできるシステムを提供することにある。
【0028】
本発明の第2の目的は、プラズマに生成された高エネルギー電子が既に生成された負イオンを除去できないように、高エネルギー電子と負イオンとの反応を抑制することのできるシステムを提供することにある。
【0029】
本発明の第3の目的は、本発明に従来の表面生成メカニズムを組み込むか、又は体積生成メカニズムの反応率を高める他の技術(例えば、特異表面金属材料の使用)を組み込むことにより効率性が向上した、負イオンを供給することのできるシステムを提供することにある。
【0030】
本発明の第4の目的は、上記要求を満たす、負イオンを連続的に供給する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明の第1の目的を達成するために、多重パルスプラズマを用いた負イオン供給システムは、前記電気的負性ガスにパルス電力を供給してプラズマを生成する複数のプラズマ発生部と、前記複数のプラズマ発生部にそれぞれ連結され、前記プラズマを受け取る負イオン供給部と、前記複数のプラズマ発生部にそれぞれ連結され、該各プラズマ発生部に供給される前記パルス電力の特性をそれぞれ制御し、前記複数のプラズマ発生部のいずれか1つがアクティブグロー(active-glow)状態になると、他のプラズマ発生部がアフターグロー(after-glow)状態になるように、前記パルス電力の
パルスの位相差を制御する制御部と、を含み、前記複数のプラズマ発生部は、前記パルス電力の位相差によって
前記各プラズマ発生部が交互にプラズマを生成し、前記アクティブグロー状態のいずれか1つのプラズマ発生部から前記負イオン供給部に供給される負イオンの供給量が減少すると、前記アフターグロー状態の他のプラズマ発生部から前記負イオン供給部に負イオンを供給することにより、前記減少した負イオンの供給量を補償するようにしてもよい。
【0032】
すなわち、前記アクティブグロー状態のいずれか1つのプラズマ発生部から前記負イオン供給部への負イオンの供給量が減少すると、前記アフターグロー状態の他のプラズマ発生部から前記負イオン供給部への負イオンの供給量を増加させる。
【0033】
前記複数のプラズマ発生部は、前記アクティブグロー状態のいずれか1つのプラズマ発生部が生成した負イオン前駆体及び電子を前記負イオン供給部に供給する際に、前記アフターグロー状態の他のプラズマ発生部が生成した負イオンを前記負イオン供給部に供給するようにしてもよい。
【0034】
前記制御部は、前記複数のプラズマ発生部にそれぞれ連結され、前記プラズマ発生部が前記アクティブグロー状態又は前記アフターグロー状態になるように、前記パルス電力の特性を制御する複数のパルス電源制御部と、前記パルス電源制御部に連結され、前記アクティブグロー状態のいずれか1つのプラズマ発生部においてアクティブグロー状態が終了してから前記アフターグロー状態の他のプラズマ発生部においてアクティブグロー状態が開始する時点を遅延させるように、前記複数のパルス電源制御部間の前記パルス電力の位相差を制御するシステム制御部と、を含むようにしてもよい。
【0035】
本発明の第2の目的を達成するために、前記多重パルスプラズマを用いた負イオン供給システムは、前記プラズマ発生部と前記負イオン供給部との間に設けられる磁気フィルタをさらに含み、前記磁気フィルタは、前記プラズマ発生部のアクティブグロー状態で生成された電子のうち高エネルギー電子が前記負イオン供給部に移動することを制限するようにしてもよい。
【0036】
また、前記磁気フィルタは、永久磁石から構成されるようにしてもよい。
【0037】
前記磁気フィルタは、電磁石から構成され、前記電磁石は、前記プラズマ発生部の動作状態に応じて磁場を形成するようにしてもよい。
【0038】
前記電磁石は、前記パルス電力の位相に連動して前記プラズマ発生部のアクティブグロー状態で磁場を形成するようにしてもよい。
【0039】
前記磁気フィルタは、複数の永久磁石と、電磁石とから構成されるようにしてもよい。
【0040】
前記多重パルスプラズマを用いた負イオン供給システムは、前記プラズマ発生部と前記負イオン供給部との間に設けられるプラズマ粒子フィルタをさらに含み、前記プラズマ粒子フィルタは、前記プラズマ発生部で生成された粒子を極性によって選択的に前記負イオン供給部に輸送するようにしてもよい。
【0041】
前記プラズマ粒子フィルタは、電場を印加できる電極及びグリッドのいずれかからなるようにしてもよい。
【0042】
本発明の第3の目的を達成するために、前記多重パルスプラズマを用いた負イオン供給システムは、前記プラズマ発生部の表面に仕事関数の低い物質が塗布されるようにしてもよい。
【0043】
本発明の第4の目的を達成するために、多重パルスプラズマを用いた負イオン供給方法は、複数のプラズマ発生部にパルス電力を供給してプラズマを生成し、前記プラズマを負イオン供給部に供給する負イオンの生成及び供給ステップと、前記複数のプラズマ発生部にそれぞれ供給されるパルス電力の
パルスの位相差を制御して、前記複数のプラズマ発生部を交互に動作させ、前記負イオン供給部に負イオンを供給する負イオンの供給ステップと、前記負イオン供給部から前記負イオンを引き出す負イオンの引き出しステップと、を含むようにしてもよい。
【0044】
前記負イオンの生成及び供給ステップは、前記プラズマ発生部に前記パルス電力が供給されると、負イオン、負イオン前駆体及び電子を含むプラズマが生成されるステップと、前記負イオン前駆体及び前記電子が前記負イオン供給部に供給されるステップと、前記負イオン供給部で前記負イオン前駆体が前記電子と反応して第1負イオンが生成されるステップと、前記プラズマ発生部への前記パルス電力の供給が中断されると、前記パルス電力の供給が中断される前に生成されたプラズマから第2負イオンが生成されるステップと、前記第2負イオンが前記負イオン供給部に供給されるステップと、を含むようにしてもよい。
【0045】
前記負イオン前駆体及び前記電子が前記負イオン供給部に供給されるステップは、前記電子のうち高エネルギー電子が前記負イオン供給部に移動することが制限されるように、前記負イオン供給部と前記プラズマ発生部との間に設けられた磁気フィルタにより磁場を発生させるステップを含むようにしてもよい。
【0046】
前記負イオンの供給ステップは、前記複数のプラズマ発生部に時間差をおいてパルス電力が供給されるように、前記複数のプラズマ発生部に供給されるパルス電力の位相差を制御するステップと、前記パルス電力が供給されていずれか1つの前記プラズマ発生部がアクティブグロー状態になると、他の前記プラズマ発生部がアフターグロー状態になり、前記複数のプラズマ発生部のそれぞれが前記位相差によって前記アクティブグロー状態と前記アフターグロー状態とに交互に切り替えられるステップと、を含むようにしてもよい。
【0047】
前記負イオンの引き出しステップは、前記負イオン供給部に連結されたビーム引出部の極性を設定するステップと、前記ビーム引出部の極性が正極であれば、前記負イオン供給部から負イオンを引き出し、前記ビーム引出部の極性が負極であれば、前記負イオン供給部から正イオンを引き出すステップと、を含むようにしてもよい。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、前記ガス供給部は、前記プラズマ発生部に供給されるガスの供給量を経時的に制御するガス供給制御装置を含むようにしてもよい。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、前記多重パルスプラズマを用いた負イオン供給システムは、前記負イオン供給部に連結され、前記負イオンを引き出すビーム引出部をさらに含むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0050】
上記解決手段により得られる本発明の効果は次の通りである。
【0051】
第一に、複数のプラズマ発生部が負イオン供給部に連結され、プラズマ発生部に供給されるパルス状のプラズマ発生電力(パルス電力)の特性及び各パルス電力の位相差が制御されるようにするので、いずれか1つのプラズマ発生部のアクティブグロー状態で減少する負イオンの供給を、他のプラズマ発生部のアフターグロー状態で生成された負イオンで補償することができる。
【0052】
上記構成によれば、プラズマパルシングを導入して体積生成メカニズムを用いた負イオン源の限界として指摘されていた、負イオンの安定供給が不可能であるという問題を構造的に解決することができる。
【0053】
第二に、プラズマ発生部と負イオン供給部との間に設けられた磁気フィルタにより、高エネルギー電子が負イオン供給部に移動することを制限することができる。
【0054】
磁気フィルタは、負イオン供給部で高エネルギー電子が負イオンと反応して負イオンが消滅するメカニズムを妨げ、全体としてシステムの負イオン供給効率が低下することを防止することができる。
【0055】
第三に、表面生成メカニズムを代替して、体積生成メカニズムを用いたシステム及び方法を提供することにより、プラズマ負イオン源のメンテナンスを最小限に抑えることができる。
【0056】
第四に、前記システム及び方法は、従来の体積生成メカニズム関連技術又は表面生成メカニズム活用技術と併用することにより、従来のプラズマ負イオン源の性能及び効率性を向上させることができる。
【0057】
第五に、前記システムに適用された負イオン供給方法は、負イオン供給を必要とする様々な産業及び研究分野に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、図面を参照して、本発明による多重パルスプラズマを用いた負イオン供給システム及び方法(以下、多重パルスプラズマ負イオン連続供給システム、多重パルスプラズマ負イオン連続供給方法ともいう。)についてより詳細に説明する。
【0060】
単数の表現には、特に断らない限り複数の表現が含まれる。
【0061】
本明細書に開示された実施形態について説明する上で、関連する公知技術についての具体的な説明が本明細書に開示された実施形態の要旨を不明にすると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。
【0062】
本明細書においては、異なる実施形態及び変形例であっても同一又は類似の構成については同一又は類似の符号を付し、それについての重複する説明は省略する。
【0063】
添付図面は本明細書に開示された実施形態を容易に理解できるようにするためのものにすぎず、添付図面により本明細書に開示された技術的思想が限定されるものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されるべきである。
【0064】
本明細書においては、説明の便宜上、2つのプラズマ発生部が設けられることを前提として説明し、プラズマ発生部の符号については必要に応じて110又は110a、110bを混用する。これは、説明の便宜のためのものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0065】
なお、パルス状のプラズマ発生電力(略してパルス電力)は、一般的に、電力が供給されるオン状態又は電力が供給されないオフ状態にある。しかし、本明細書においては、パルス電力が供給されて電力がオンになった状態を略してパルス電力供給状態という。
【0066】
まず、多重パルスプラズマ負イオン連続供給システムの構成について説明し、次に、多重パルスプラズマ負イオン連続供給方法について詳細に説明する。
【0067】
図1は本発明の一実施形態による多重パルスプラズマ負イオン連続供給システム100を示す概念図である。
図2はプラズマ発生部110にパルス電力が供給される際のそれぞれのプラズマ発生部110a、110bの経時的なプラズマの特性を示す概念図である。
図3は
図1に示す複数のプラズマ発生部110a、110bが設定されたパルス電力の位相差によって動作する際の多重パルスプラズマ負イオン連続供給システム100により実現される負イオンの連続供給過程を示す概念図である。
【0068】
多重パルスプラズマ負イオン連続供給システム100は、電気的負性ガスを含む供給ガスにパルス電力を供給して負イオン、負イオン前駆体である高振動励起分子、並びに高エネルギー電子及び低エネルギー電子を含むプラズマを生成し、生成されたプラズマを負イオン供給部120に供給するように構成される。ここで、高振動励起分子は、振動量子数(v)が一般的に5以上の分子であるが、それに限定されるものではなく、4以上の分子を適用することもできる。
【0069】
複数のプラズマ発生部110のそれぞれは、位相差によってパルス電力を電気的負性ガスに供給してプラズマを生成することにより、負イオン供給部120において特定の密度の負イオンが維持され続けるようにする。なお、プラズマ発生部110で生成されたプラズマが負イオン供給部120に供給される過程と供給される粒子については後に詳述する。
【0070】
多重パルスプラズマ負イオン連続供給システム100は、プラズマ発生部110、負イオン供給部120及び制御部130を含む。
【0071】
プラズマ発生部110は、複数のプラズマ発生部110a、110bから構成され、負イオン、負イオン前駆体及び電子を含むプラズマを生成し、前記プラズマをプラズマ発生部110に連結された負イオン供給部120に供給する。
【0072】
同図において、複数のプラズマ発生部110a、110bは、負イオン供給部120にそれぞれ連結され、後述するガス供給部140a、140bから電気的負性ガスを含む供給ガスが供給され、前記電気的負性ガスにパルス電力を供給してプラズマを生成するように構成される。
【0073】
もっとも、同図においては、2つのプラズマ発生部110a、110bを図示しているが、それに限定されるものではなく、制限なくシステムを構成できることは言うまでもない。なお、複数のプラズマ発生部110a、110bにそれぞれ供給されるパルス電力の制御については後に詳述する。
【0074】
前述したように、複数のプラズマ発生部110でシステムを構成することにより、発明の背景技術において指摘した、プラズマパルシングを用いた負イオン源において負イオンの密度が一定でないことから連続運転できない問題を解決し、負イオンを連続供給できるという利点がある。
【0075】
一方、以下、
図2を参照して、パルス電力に応じてそれぞれのプラズマ発生部110において起こる現象について詳細に説明する。
【0076】
まず、プラズマ発生部110にパルス電力が供給されるか否かによって、パルス電力が供給される時間領域(又は状態)をアクティブグローといい、パルス電力が供給されない時間領域をアフターグローという。状況によって、アクティブグロー領域をプラズマ発生部の電力供給装置の電源オン状態といい、アフターグロー期間をプラズマ発生部の電力供給装置の電源オフ状態といってもよい。
【0077】
以下、
図2を参照して、アクティブグロー状態にてプラズマ発生部110で生成されたプラズマの特性と、アフターグロー状態にてプラズマ発生部110で生成されたプラズマの特性とについて具体的に説明する。
【0078】
第一に、アクティブグロー状態における、時間(μs)に対する単一のプラズマ発生部110の電子の温度(electron temperature, eV)、電子の密度(electron density, cm
-3)、高振動励起分子の密度(highly vibrational excited molecule density, cm
-3)及び負イオンの密度(cm
-3)の変化について具体的に説明する。
【0079】
同図において、電子の温度は、アクティブグロー状態で、初期には急激に増加するが定常状態の一定の温度に維持されることを示し、電子の密度は、パルス電力の供給により増加するが定常状態の一定の密度になることを示す。
【0080】
アクティブグロー領域での高振動励起分子の密度は、電子の温度及び密度の変化との高い相関性を有し、前記領域の初期には増加するが定常状態の一定の密度になる傾向を有する。これは、高エネルギー電子により生成される高振動励起分子の生成反応率が、電子の温度が高いほど、また電子の密度が高いほど、高くなるからである。
【0081】
一方、アクティブグロー領域では、負イオン消滅反応に関与する高エネルギー電子が多いので、高振動励起分子の密度は高いが、負イオンの密度は後述するアフターグロー領域での負イオンの密度より低いことが分かる。よって、パルス電力が供給されるアクティブグロー状態では、負イオン供給部120に供給できる負イオンが多くないという問題がある。
【0082】
第二に、アフターグロー状態における、時間に対するプラズマ発生部110の電子の温度、電子の密度、高振動励起分子の密度及び負イオンの密度の変化について説明する。
【0083】
同図においては、電子の温度は、アフターグロー領域に移行すると急激に減少した。これは、電子に外部の電力エネルギーが供給されなくなった状態で、粒子同士が衝突してエネルギー損失が起こったり、又は壁により電子が消滅したからである。
【0084】
電子の密度は、経時的な電子の温度のグラフに比べて緩やかに減少する傾向を有する。電子の温度のグラフと電子の密度のグラフとを比較すると、アフターグローの初期には、低エネルギー電子より高エネルギー電子の方が主に消滅することが分かる。
【0085】
高振動励起分子の密度は、高エネルギー電子の消滅による生成率の減少や衝突又は反応による損失などの理由で減少し、その減少率は電子の温度の減少率より緩やかである。
【0086】
その結果、アフターグロー領域の開始から所定の期間では、体積生成メカニズムによる負イオン生成反応に必要な低エネルギー電子及び高振動励起分子の密度は反応に必要な程度に維持されるのに対して、負イオン消滅反応に寄与する高エネルギー電子の密度は大幅に低くなる。つまり、負イオンの密度は、アクティブグロー条件での負イオンの密度より高い密度値を有するが、負イオン生成反応による低エネルギー電子及び高振動励起分子の消耗などの理由で次第に減少する。
【0087】
よって、アフターグローで高い密度の負イオンが生成されるので、複数のプラズマ発生部110により、アクティブグロー状態で減少する負イオンの供給量をアフターグローで生成された負イオンで補償することができる。
【0088】
すなわち、負イオン供給部120に複数のプラズマ発生部110を連結し、一方のプラズマ発生部110がアクティブグロー状態であるため負イオンの供給量が少ない場合、他方のプラズマ発生部110をアフターグロー状態にして負イオンの供給量を補償することにより、複数のプラズマ発生部110から負イオン供給部120に供給される負イオンの総量を一定に維持することができる。これについての具体的な構成及び制御に関しては後述する。
【0089】
一方、プラズマ発生部110は、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma, ICP)装置、電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance, ECR)プラズマ装置、マイクロ波プラズマ装置、フィラメント放電プラズマ装置、ラジオ周波数プラズマ装置、ヘリコンプラズマ装置、容量結合プラズマ(Capacitively Coupled Plasma, CCP)装置などのいずれかを含み、それらの様々な組み合わせで構成することもできる。
【0090】
同図においては、一実施形態として、プラズマ発生部110が、誘導結合プラズマ装置であるプラズマ発生部110a、及び電子サイクロトロン共鳴プラズマ装置であるプラズマ発生部110bの2つのプラズマ発生部で構成され、それぞれが負イオン供給部120に連結されていることを示す。
【0091】
誘導結合プラズマ装置である第1プラズマ発生部110aは、プラズマ生成空間111a、電気的負性ガスにパルス電力を供給するアンテナ114a、アンテナ114aに電力を供給する連続波電源供給装置113a、及びインピーダンス整合器112aを含む。
【0092】
電子サイクロトロン共鳴プラズマ装置である第2プラズマ発生部110bは、プラズマ生成空間111b、電子サイクロトロン共鳴領域(Electron Cyclotron Resonance Zone, ECR zone)を形成するための磁場発生用磁石112b、電磁波発生器用電源供給装置113b、及び電磁波発生部114bを含む。
【0093】
磁場発生用磁石112bは、電磁石112b1及び電磁石用電源供給装置112b2を含んでもよく、電磁波発生部114bは、電磁波を発生する電磁波発生器114b1、インピーダンス整合のためのスタブチューナ114b2、及び電磁波送信のための導波管114b3を含んでもよい。
【0094】
ただし、プラズマ発生部110a、110bは、上記一実施形態に限定されるものではなく、前述したように様々な組み合わせで構成することもできる。
【0095】
負イオン供給部120は、プラズマ発生部110にそれぞれ連結され、プラズマ発生部110で生成された負イオンを受けて収容したり、プラズマ発生部110から受けた負イオン前駆体と低エネルギー電子が反応して負イオンが生成される空間を設けるように構成される。
【0096】
プラズマ発生部110で生成されたプラズマが負イオン供給部120に供給される具体的な方法としては、拡散又はグリッドに電圧を印加して形成される電場を用いる方法などが考えられる。これについては後に詳述する。
【0097】
負イオン供給部120は、アフターグロー状態の一方のプラズマ発生部110で多量に生成された負イオン、アクティブグロー状態の他方のプラズマ発生部110で生成された負イオン前駆体及び電子が供給され、負イオンの密度が高く維持される。
【0098】
また、複数のプラズマ発生部110がパルス位相差に基づいて交互に運転されることにより、負イオン供給部120は経時的に一定の密度の負イオンを確保することができる。それについては後に詳述する。
【0099】
制御部130は、プラズマ発生部110にそれぞれ連結され、プラズマ発生部110に供給されるパルス電力の特性を制御するように構成される。ここで、パルス電力の特性とは、1つのプラズマ発生部110に関連するパルス電力のパルス繰り返し周波数、パルス幅、デューティサイクル(duty cycle)などであって、電源供給装置が発生するパルス電力を特定できる特性値を意味する。
【0100】
制御部130は、プラズマ発生部110のいずれか一方がアクティブグロー状態の場合、他方はアフターグロー状態になるように、プラズマ発生部110に供給されるパルス電力の位相差を制御するように構成される。
【0101】
制御部130は、負イオン供給部120の負イオンの密度を経時的に一定に維持させて負イオンを連続的に供給させるように、前述したパルス電力の位相差を装置及び運転条件に応じて最適値に調整するように構成されてもよい。
【0102】
制御部130は、複数のパルス電源制御部131a、131b及びシステム制御部132を含む。
【0103】
同図において、パルス電源制御部131a、131bは、プラズマ発生部110a、110bにそれぞれ連結され、それぞれのプラズマ発生部110a、110bに供給されるパルス電力の特性を調整するように構成される。
【0104】
なお、同図においては2つのパルス電源制御部131a、131bを示すが、パルス電源制御部131a、131bは、常に2つで構成されるわけではなく、プラズマ発生部110の設置数だけ設けられてもよく、1つだけ設けられて複数のプラズマ発生部110を制御するように構成されてもよいことは言うまでもない。
【0105】
パルス電源制御部131a、131bは、それぞれのプラズマ発生部110a、110bの電源供給装置113a、113bに連結され、パルス電力の特性を制御してプラズマ発生部110a、110bをアクティブグロー状態又はアフターグロー状態に移行させるように構成される。
【0106】
システム制御部132は、負イオン供給部120内の負イオンの密度を一定に維持するように構成されてもよい。このために、システム制御部132は、パルス電源制御部131a、131bに連結され、パルス電源制御部131a、131bのパルス電力間のパルス位相差を制御するように構成される。
【0107】
システム制御部132は、一方のプラズマ発生部110のアクティブグロー状態が終了してから、他方のプラズマ発生部110のアクティブグロー状態が開始する時点を遅延させるように、パルス電源制御部131a、131b間のパルス電力の位相差を制御することができる。
【0108】
図1において、誘導結合プラズマ装置であるプラズマ発生部110aは、第1プラズマ発生部110aといい、電子サイクロトロン共鳴プラズマ装置であるプラズマ発生部110bは、第2プラズマ発生部110bという。ただし、本発明は、上記特定された装置に限定されるものではなく、様々なプラズマ装置を用いることができる。
【0109】
図3においては、第1プラズマ発生部110aと第2プラズマ発生部110bとに所定の位相差をおいてパルス電力が供給されることにより、第1プラズマ発生部110aのアクティブグローが終了してから所定時間経過後、第2プラズマ発生部110bのアクティブグローが開始されることを示す。
【0110】
具体的には、アクティブグロー状態の第1プラズマ発生部110aで高エネルギー電子により負イオンが消滅して負イオン供給部120に供給される負イオンが減少すると、アフターグロー状態の第2プラズマ発生部110bで生成される負イオンが負イオン供給部120に供給されるようにする。
【0111】
また、パルス電力の位相差により第1プラズマ発生部110aと第2プラズマ発生部110bが交互にプラズマ生成反応を起こし、一方のプラズマ発生部110で減少した負イオンを他方のプラズマ発生部110で生成された負イオンで補償するようにする。よって、負イオン供給部120の負イオンの密度が経時的に一定に維持される。
【0112】
上記構造によれば、従来の体積生成メカニズムを用いた負イオン源の限界として指摘されていた、負イオンの連続供給が不可能であるという問題を解決することができる。具体的には、複数のプラズマ発生部110に供給されるパルス電力の位相差を制御することにより、経時的に負イオン供給部120の負イオンの密度値を一定に維持することができる。よって、本発明は、常時負イオンの活用を必要とする装置に提供することができる。
【0113】
ただし、本発明は、これに限定されるものではなく、パルス電力の位相差により、一方のプラズマ発生部110のアクティブグロー状態が終了する時点に次いで、他方のプラズマ発生部110がアクティブグロー状態に移行し、本発明のシステム全体の観点から見るとアクティブグロー状態が連続するようにしてもよい。
【0114】
多重パルスプラズマ負イオン連続供給システム100は、ガス供給部140a、140b、磁気フィルタ150、ビーム引出部160及び真空ポンプシステム180を含んでもよい。
【0115】
ガス供給部140a、140bは、プラズマ発生部110a、110bにそれぞれ連結され、プラズマの発生や工程の制御のための背景ガス、電気的負性ガス、又は背景ガスと電気的負性ガスが混合された供給ガスをプラズマ発生部110に供給する。
【0116】
背景ガスは、プラズマ発生特性又は工程に関する反応又は副反応を制御するものであり、アルゴン又は水素が含まれる。
【0117】
電気的負性ガスは、目的とする負イオンを生成できる気体であり、水素、フッ素又は塩素が含まれる。
【0118】
ガス供給部140a、140bは、プラズマ発生部110に供給されるガスの供給量を経時的に制御できるように、ガス供給制御装置141a、141bを含んでもよい。上記構成によれば、ガスの供給量を一定に又は経時的に変化するように制御することにより、プラズマ及び工程特性を調整することができる。
【0119】
ガス供給部140a、140bがそれぞれのプラズマ発生部110に連結される部分の形状は、単一孔形状や多重環のシャワーヘッド状など、ユーザの必要に応じて様々な形状にすることができる。
【0120】
ガス供給部140a、140bには、目的に応じて供給する液体、固体物質を気体状態にして供給する気化装置や、背景ガス、原料ガスと電気的負性ガスを混合するための別途の混合装置が含まれてもよい。
【0121】
ガス供給部140a、140bには、プラズマ発生部110に供給されるガスの断続や逆流防止のための断続バルブ142a、142bと、フィルタ及び特定のガスの液化防止のための温度調整装置(図示せず)とがさらに含まれてもよい。
【0122】
同図においては、ガス供給部140a、140bが背景ガスと電気的負性ガスをそれぞれ供給するように構成されていることを示す。ただし、本発明は、これに限定されるものではなく、背景ガスと電気的負性ガスとが混合されて単一のガス供給部(図示せず)により供給されるようにしてもよい。
【0123】
磁気フィルタ150は、プラズマ発生部110と負イオン供給部120との間に設けられ、磁場を形成するように構成される。
【0124】
磁気フィルタ150には、プラズマ発生部110と負イオン供給部120が連結される連結部151a、151bが設けられる。磁気フィルタ150をプラズマ発生部110又は負イオン供給部120の周辺に設けることができることは言うまでもない。
【0125】
磁気フィルタ150は、磁場を形成し、アクティブグロー状態のプラズマ発生部110で生成された高エネルギー電子が負イオン供給部120に移動することを制限するように構成される。
【0126】
磁気フィルタ150は、電磁石磁気フィルタ150a又は永久磁石磁気フィルタ150bで構成されてもよく、他の様々な組み合わせで構成されてもよいことは言うまでもない。
【0127】
電磁石磁気フィルタ150aは、電磁石用電源供給装置150a1及び電磁石150a2を含んでもよい。
【0128】
電磁石磁気フィルタ150aは、システム制御部132によりパルス電力の位相差に連動(又は同期)して、プラズマ発生部110の動作状態によって磁場の大きさを調整することができる。具体的には、磁気フィルタ150は、プラズマ発生部110がアクティブグロー状態で磁場を形成して高エネルギー電子が負イオン供給部に移動することを制限する。もちろん、電磁石磁気フィルタ150aは、経時的に変化することなく一定の磁場を形成するか、特定の時間に遅延して動作するようにしてもよいことは言うまでもない。
【0129】
同図に示すように、上記構成によれば、高エネルギー電子の移動を防いでアクティブグロー状態である第1プラズマ発生部110aで生成された低エネルギー電子及び負イオン前駆体が負イオン供給部120に供給されて負イオンを形成する反応を起こし、それと同時にアフターグロー状態である第2プラズマ発生部110bから負イオンが負イオン供給部120に供給される場合、高エネルギー電子による負イオン消滅反応を防ぐことができるという利点がある。
【0130】
よって、負イオン供給部120内の負イオンの密度を高く維持し、負イオン供給の連続性を向上させることができる。
【0131】
永久磁石磁気フィルタ150bは、設置が簡単であり、電磁石磁気フィルタ150aより経済的に高エネルギー電子の移動を制限できるという利点がある。
【0132】
上記構成によれば、負イオン供給部120で高エネルギー電子が負イオンと反応して負イオンが消滅するメカニズムが抑制され、全体として多重パルスプラズマ負イオン連続供給システム100における負イオン供給効率が低下することを防止することができる。
【0133】
一方、磁気フィルタ150を設ける代わりに、プラズマ発生部110もしくは負イオン供給部120の体積や形状を調整するか、又はプラズマ発生部110と負イオン供給部120との間の連結部151a、151bの大きさや形状を調整することにより、高エネルギー電子の消滅を誘導し、他の粒子を負イオン供給部120に拡散又は輸送させることができる。
【0134】
あるいは、プラズマ発生部110と負イオン供給部120との間には、プラズマ発生部110で生成された荷電粒子の負イオン供給部120への輸送特性を調整するように、電場を印加できる電極又はグリッドを含むプラズマ粒子フィルタ(図示せず)が設けられてもよい。例えば、前記プラズマ粒子フィルタ(図示せず)により、輸送する荷電粒子の電気的特性を考慮した供給量で選択的に輸送することができる。
【0135】
上記構成によれば、磁気フィルタ150に類似した効果を奏することができる。また、上記構成を磁気フィルタ150と共に用いてもよいことは言うまでもない。
【0136】
ビーム引出部160は、負イオン供給部120に連結され、負イオンを引き出したり、負イオンビームを用いるように構成される。
【0137】
ビーム引出部160の変形例として、ビーム引出部160に平板又はグリッド162を設けて電圧を印加し、正イオン又は負イオンを用いるか又は引き出すことのできるイオン−イオンプラズマを構成することができる。ビーム引出部160が貫通孔を備えた平板又はグリッド162から構成された場合、ビーム引出部160は、イオンビームを用いることのできる反応チャンバ170をさらに含んでもよい。
【0138】
ビーム引出部160は、電圧差を形成するために、電源供給装置161と、電源供給装置161に連結されて電圧の特性を制御するビーム引出部制御部133とを含んでもよい。
【0139】
電源供給装置161は、ユーザの利便性に応じて、AC又はRFの使用有無、電圧の大きさ、DC電源の極性、連結位置などを変えることができる。
【0140】
ビーム引出部制御部133は、システム制御部132に連結され、電圧の時変制御命令を受けるように構成される。よって、ビーム引出部制御部133は、ビーム引出部160から引き出される負イオン又は負イオンビームの特性(例えば、電流、連続性など)を制御することができる。
【0141】
真空ポンプシステム180は、反応チャンバ170に連結され、ガス供給部140a、140bと共にガス圧力を時変制御するように構成されてもよい。システムの数や連結位置などを調整して様々に構成できることは言うまでもない。
【0142】
上記構成によれば、本発明は、体積生成メカニズムを用いたシステムを提供することにより、表面生成メカニズム負イオン源に比べてプラズマ発生部110などのメンテナンスが最小限に抑えられる。
【0143】
他の実施形態として、多重パルスプラズマ負イオン連続供給システム(図示せず)は、高振動励起分子を多量に生成するために、プラズマ発生部110などの特定の表面温度の特定の物質を用いてその効率性を向上させることができ、仕事関数の低い物質を塗布するように構成されてもよい。
【0144】
上記構成によれば、表面生成メカニズムのみを用いた従来のプラズマ負イオン源より効率が高くなると共に、メンテナンスがさらに容易になる。
【0145】
次に、多重パルスプラズマを用いた負イオン連続供給方法について詳細に説明する。
【0146】
図4は本発明の一実施形態による多重パルスプラズマを用いた負イオン連続供給方法を示すフローチャートである。
【0147】
図5は
図4に示すフローチャートにおける負イオンの生成及び供給ステップ(S10)の詳細フローチャートである。
図6は
図4に示すフローチャートにおける負イオンの連続供給ステップ(S20)の詳細フローチャートである。
図7は
図4に示すフローチャートにおける最後のステップである負イオンの引き出しステップ(S30)の詳細フローチャートである。
【0148】
図8は
図4に示すフローチャートを図式化した概念図である。具体的には、
図8の(a)は一方のプラズマ発生部110aがアクティブグローであり、他方のプラズマ発生部110bがアフターグローである状態でのプラズマの形成及び粒子の移動を示し、
図8の(b)は一方のプラズマ発生部110aがアフターグローであり、他方のプラズマ発生部110bがアクティブグローである状態を示す。
【0149】
図4と
図8の(a)及び(b)に示すように、多重パルスプラズマを用いた負イオン連続供給方法は、複数のプラズマ発生部110a、110bのそれぞれにおいて、アクティブグロー状態で生成されたプラズマの負イオン、負イオン前駆体もしくは電子を負イオン供給部120に供給するか、又はアフターグロー状態で負イオンを生成して負イオン供給部120に供給する負イオンの生成及び供給ステップ(S10)と、それぞれのプラズマ発生部110a、110bに供給されるパルス電力の位相差を制御して、プラズマ発生部110a、110bを交互に動作させ、負イオン供給部120に負イオンを連続的に供給する負イオンの連続供給ステップ(S20)と、負イオン供給部120から負イオンを引き出す負イオンの引き出しステップ(S30)とからなる。
【0150】
なお、前記交互という表現は、パルス電力の位相差が180°であり、一方のプラズマ発生部110aがアフターグローに移行するとすぐに、他方のプラズマ発生部110bがアクティブグロー状態に移行することを意味するのではなく、パルス電力の位相差によってプラズマ発生部110a、110b間のオン/オフの時間差をも含む。
【0151】
以下、各ステップについて具体的に説明する。
【0152】
図5及び
図8に示すように、負イオンの生成及び供給ステップ(S10)は、プラズマ発生部110a、110bにパルス電力が供給されるか否か(S11)によって2つのステップ(S12、S16)に分岐する。
【0153】
プラズマ発生部110にパルス電力が供給されるアクティブグロー状態の場合、負イオンの生成及び供給ステップ(S10)は、プラズマを生成するが、主に多量の正イオン、負イオン前駆体及び電子を生成し、少量の負イオンを形成するステップ(S12)と、負イオン供給部120に移動した負イオン前駆体と低エネルギー電子が反応して負イオンを形成するステップ(S15)とから構成される。
【0154】
ここで、プラズマ発生部110a、110bと負イオン供給部120との間に磁気フィルタ150が備えられ、磁気フィルタ150がシステム制御部132により動作する場合、電子が負イオン供給部120に供給されるステップ(S15)の前のステップとして、高エネルギー電子が負イオン供給部120に移動することを制限するように、磁気フィルタの動作を設定するステップ(S13)と、磁気フィルタ150が磁場を形成するステップ(S14)とを含んでもよい。
【0155】
プラズマ発生部110への電力供給が中断されてアフターグロー状態である場合、負イオンの生成及び供給ステップ(S10)は、プラズマ発生部110で多量の高エネルギー電子が消滅し、負イオン前駆体と低エネルギー電子が反応して負イオンが生成されるステップ(S16)と、生成された負イオンが負イオン供給部120に供給されるステップ(S17)とから構成される。
【0156】
図6及び
図8に示すように、負イオンの連続供給ステップ(S20)は、システム制御部132が各プラズマ発生部110に供給されるパルス電力の位相差を制御するステップ(S21)と、前記パルス位相差によって、パルス電力が供給されるプラズマ発生部110では正イオン、負イオン前駆体及び電子が生成され(S10’1)、パルス電力が供給されない他のプラズマ発生部110では負イオンが生成され(S10’2〜S10’n)、プラズマ発生部110が交互に動作してアフターグローで生成された負イオンを負イオン供給部120に供給するステップ(S22)と、を含む。
【0157】
図6に示すように、負イオンが生成されるステップ(S22)においては、複数のプラズマ発生部110に供給される電力の位相(Φ1、Φ2、・・・Φn)により、それぞれのプラズマ発生部110のアフターグローでの負イオンの生成時間が異なってもよく、同じであってもよい。ここで、電力の位相であるΦ1、Φ2、・・・Φnは、互いに異なってもよく、一部の位相が同じであってもよいが、全ての位相が同じであってはならない。
【0158】
以上、一方のプラズマ発生部110がアクティブグロー状態の場合、他方のプラズマ発生部が110がアフターグロー状態で負イオンを生成することを示したが、本発明は、これに限定されるものではなく、複数で構成されたプラズマ発生部群がアクティブグロー状態の場合、複数で構成された他のプラズマ発生部群がアフターグロー状態になるように、パルス電力の位相差を制御できることは言うまでもない。
【0159】
なお、前記nは自然数であり、多重パルスプラズマを用いた負イオン連続供給システムに設けられたプラズマ発生部110の総数を意味する。
【0160】
図7及び
図8に示すように、負イオンの引き出しステップ(S30)は、負イオン供給部120に連結されたビーム引出部160の極性を設定するステップ(S31)と、ビーム引出部160の電極が正極の場合、負イオンが引き出され(S32a)、ビーム引出部160の電極が負極の場合、正イオンが引き出される(S32b)ステップ(S32)とを含む。
【0161】
上記構成によれば、負イオンの引き出しステップ(S30)において、負イオンが供給されると共に、必要に応じて、負イオン供給部に存在する正イオンもユーザの選択によって供給されるようにしてもよい。よって、本明細書においては、イオンを引き出すステップを負イオンの引き出しステップ(S30)というが、当該ステップにおける機能は名称に限定されるものではない。
【0162】
以上説明したのは、本発明による多重パルスプラズマを用いた負イオン連続供給システム又は多重パルスプラズマを用いた負イオン連続供給方法を実施するための実施形態にすぎず、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲において請求するように、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な変更実施が可能であり、それらも本発明の技術的思想に含まれる。