特許第6976450号(P6976450)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6976450センサ装置とその制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976450
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】センサ装置とその制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20211125BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20211125BHJP
   H03K 17/955 20060101ALI20211125BHJP
   H03K 17/96 20060101ALN20211125BHJP
   H03K 17/945 20060101ALN20211125BHJP
【FI】
   G06F3/041 522
   G06F3/044 110
   G06F3/044 120
   H03K17/955 G
   !H03K17/96 B
   !H03K17/945 B
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-541001(P2020-541001)
(86)(22)【出願日】2019年3月22日
(86)【国際出願番号】JP2019012229
(87)【国際公開番号】WO2020049781
(87)【国際公開日】20200312
【審査請求日】2021年1月6日
(31)【優先権主張番号】特願2018-167887(P2018-167887)
(32)【優先日】2018年9月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 朋輝
【審査官】 星野 裕
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0063993(US,A1)
【文献】 特許第5853681(JP,B2)
【文献】 特開2013−206463(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/058070(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
H03K 17/955
H03K 17/96
H03K 17/945
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の物理量に応じた振幅を持つ正弦波の検出信号を出力するセンサ部と、
前記検出信号と等しい周波数を持ち、かつ、前記検出信号と等しい位相を持った正弦波の第1参照信号を生成する参照信号生成部と、
前記センサ部から出力される前記検出信号に前記第1参照信号を乗算し、当該乗算結果の信号に含まれる直流成分に応じた信号を、前記検出対象の物理量に応じた第1復調信号として生成する復調部とを有し、
前記参照信号生成部は、前記検出信号と等しい周波数を持ち、かつ、前記検出信号に対して位相がずれた正弦波の第2参照信号を生成し、
前記復調部は、前記センサ部から出力される前記検出信号に前記第2参照信号を乗算し、当該乗算結果の信号に含まれる直流成分に応じた信号を、前記検出信号に重畳するノイズ成分に応じた第2復調信号として生成する、
センサ装置。
【請求項2】
前記参照信号生成部は、前記検出信号に対して位相が4分の1周期ずれた正弦波の信号を前記第2参照信号として生成する、
請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
正弦波の駆動信号を生成する駆動信号生成部と、
制御部とを有し、
前記センサ部は、入力される前記駆動信号に応じて、前記駆動信号の駆動周波数と等しい周波数を持った前記検出信号を出力し、
前記制御部は、前記第2復調信号の時間的変化に応じたノイズ量を算出し、算出した前記ノイズ量がしきい値を超えた場合、前記駆動周波数を変更する、
請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記復調部において連続して生成された複数の前記第2復調信号に基づいて前記ノイズ量を算出する、
請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項5】
複数の前記センサ部を有し、
前記復調部は、前記複数のセンサ部の各々について前記第1復調信号と前記第2復調信号とを生成し、
前記制御部は、前記複数のセンサ部の各々について前記ノイズ量を算出し、前記複数のセンサ部について算出した複数の前記ノイズ量の和がしきい値を超えた場合、前記駆動周波数を変更する、
請求項3又は4に記載のセンサ装置。
【請求項6】
複数の前記センサ部を有し、
前記複数のセンサ部の各々は、前記駆動信号に対して位相が遅延した前記検出信号を出力し、
前記復調部は、前記複数のセンサ部の各々について前記第1復調信号と前記第2復調信号とを生成し、
前記参照信号生成部は、前記複数のセンサ部の各々について、前記復調部が前記第1復調信号を生成するための前記第1参照信号と、前記復調部が前記第2復調信号を生成するための前記第2参照信号とを、前記駆動信号を用いて生成し、
前記制御部は、前記駆動信号に対する前記第1参照信号の位相の遅延及び前記駆動信号に対する前記第2参照信号の位相の遅延を、前記複数のセンサ部の各々について個別に設定する、
請求項3〜5の何れか一項に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記駆動周波数を変更する場合、予め定められた複数の周波数の中から、現在の前記駆動周波数と異なる周波数を新たな前記駆動周波数として選択する、
請求項3〜6の何れか一項に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記物理量を検出する通常モードにおいて、前記第1参照信号を生成するように前記参照信号生成部を制御するとともに、前記第1復調信号を生成するように前記復調部を制御し、
前記ノイズを検出するノイズ検出モードにおいて、前記第2参照信号を生成するように前記参照信号生成部を制御するとともに、前記第2復調信号を生成するように前記復調部を制御し、
前記ノイズ検出モードにおいて生成される前記第2復調信号の時間的変化に応じた前記ノイズ量を算出し、
前記ノイズ量が前記しきい値を超えた場合、前記通常モードにおける前記駆動周波数を変更する
請求項3〜6の何れか一項に記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記通常モードにおいて、前記復調部による前記第1復調信号の生成を周期的に繰り返すとともに、前記通常モードから一時的に前記ノイズ検出モードへ移行して前記ノイズ量を算出する動作を周期的に繰り返す、
請求項8に記載のセンサ装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記ノイズ検出モードへ一時的に移行する度に、予め定められた複数の周波数の中から順番に前記駆動周波数として使用する周波数を選択し、
前記駆動周波数を変更する場合、前記しきい値より前記ノイズ量が小さくなる前記第2復調信号が生成された直近の前記ノイズ検出モードにおける前記駆動周波数を、前記通常モードにおける新たな前記駆動周波数として選択する、
請求項9に記載のセンサ装置。
【請求項11】
正弦波の駆動信号を生成する駆動信号生成部を有し、
前記センサ部は、
物体の近接度合いに応じて静電容量が変化するキャパシタを形成する少なくとも1つの電極と、
前記電極を介して前記キャパシタに前記駆動信号を印加し、前記駆動信号の印加に伴って前記キャパシタに伝送される電荷に応じた前記検出信号であって、前記キャパシタの静電容量に応じた振幅を持つ前記検出信号を生成する静電容量検出回路とを含む、
請求項1〜10の何れか一項に記載のセンサ装置。
【請求項12】
正弦波の駆動信号を生成する駆動信号生成部と、
入力される前記駆動信号に応じて、前記駆動信号の駆動周波数と等しい周波数を持ち、かつ、検出対象の物理量に応じた振幅を持つ正弦波の検出信号を出力するセンサ部と、
前記検出信号と等しい周波数を持ち、かつ、前記検出信号と等しい位相を持った正弦波の第1参照信号を生成する参照信号生成部と、
前記センサ部から出力される前記検出信号に前記第1参照信号を乗算し、当該乗算結果の信号に含まれる直流成分に応じた信号を、前記検出対象の物理量に応じた第1復調信号として生成する復調部と
を有するセンサ装置の制御方法であって、
前記物理量を検出する通常モードにおいて、前記第1参照信号を生成するように前記参照信号生成部を制御することと、
前記通常モードにおいて、前記第1復調信号を生成するように前記復調部を制御することと、
前記ノイズを検出するノイズ検出モードにおいて、前記検出信号と等しい周波数を持ち、かつ、前記検出信号に対して位相がずれた正弦波の第2参照信号を生成するように前記参照信号生成部を制御することと、
前記ノイズ検出モードにおいて、前記センサ部から出力される前記検出信号に前記第2参照信号を乗算し、当該乗算結果の信号に含まれる直流成分に応じた信号を、前記検出信号に重畳するノイズ成分に応じた第2復調信号として生成するように前記復調部を制御することと、
前記ノイズ検出モードにおいて生成される前記第2復調信号の時間的変化に応じたノイズ量を算出することと、
前記ノイズ量が前記しきい値を超えた場合、前記通常モードにおける前記駆動周波数を変更することと
を有するセンサ装置の制御方法。
【請求項13】
請求項12に記載のセンサ装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、入力される駆動信号に応じて検出信号を生成するセンサ装置とその制御方法及びプログラムに係り、例えば、静電容量を検出する静電容量センサなどのセンサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物体の近接に伴う静電容量の変化を検出する一般的な静電容量センサでは、物体が近接する場所に1以上の電極が配置され、物体と電極との間若しくは電極間に形成される寄生的なキャパシタの静電容量が検出される。これらの電極には、一定の振幅を持つ駆動信号が印加され、駆動信号に応じて変化するキャパシタの電荷がチャージアンプにより検出される。駆動信号の振幅が一定である場合、チャージアンプが出力する検出信号(キャパシタの電荷に比例する信号)の変化は、キャパシタの静電容量の変化を表す。タッチパッドやタッチパネル、タッチスイッチ等に代表される静電容量センサでは、このような静電容量の変化に基づいて人体等の近接が検知され、座標の算出やジェスチャ認識が行われる。
【0003】
静電容量センサでは、電極によって寄生的に形成されるキャパシタの微小な電荷の変化が検出されるため、電極とノイズ源との静電結合によるノイズが混入し易く、検出信号にはノイズが重畳し易い。検出信号に重畳したノイズ成分を低減するため、駆動信号と同じ周波数の正弦波信号を検出信号に乗算し、その乗算結果からローパスフィルタによって直流成分を抽出する方法が一般的に用いられている。ローパスフィルタにより抽出される直流成分は、検出信号における駆動信号と同一周波数の信号成分の振幅に比例するため、駆動信号と異なる周波数を持ったノイズ成分が効果的に除去される。
【0004】
例えば下記の特許文献1に記載されるセンサでは、2つの電極間の静電容量を検出する回路において、一方の電極に駆動信号が印加され、他方の電極に電流・電圧変換回路が接続される。電流・電圧変換回路の出力信号には、駆動信号と同じ周波数を持つSIN信号とCOS信号がそれぞれ乗算され、2つの乗算結果からローパスフィルタにより2つの直流成分が抽出される。2つの直流成分は、電流・電圧変換回路の出力信号に含まれる駆動信号と同一周波数の信号成分のベクトルを表しており、このベクトルの大きさから当該信号成分の振幅、すなわち静電容量を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−135346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、駆動信号と同一周波数の参照信号を検出信号に乗算して直流成分を抽出する方法では、駆動信号と同一周波数のノイズ成分を除去することができないという問題がある。そこで、上記の特許文献1に記載されるセンサでは、駆動信号と同一周波数のノイズが混入しているか否かを判定する場合、駆動信号の印加を停止した状態で直流成分の抽出が行われる。駆動信号の印加を停止した状態で抽出された直流成分には、静電容量に関する成分が含まれておらず、概ねノイズ成分のみが含まれているため、この直流成分の大きさからノイズの混入の有無を判定することができる。
【0007】
しかしながら、駆動信号と参照信号を共通の正弦波信号に基づいて生成する簡易な回路構成を持つ場合、駆動信号の印加を停止するために正弦波信号の生成を停止すると、参照信号の生成も停止してしまう。そのため、駆動信号の生成のみを停止する回路を追加する必要があり、回路構成が複雑になるという不利益がある。また、駆動信号を出力する場合と出力を停止する場合とで、駆動信号を生成する回路の出力インピーダンスが変化すると、電極とノイズ源との間における静電結合の状態が変化してしまい、検出信号に重畳するノイズ成分の大きさが変化する可能性もある。
【0008】
他方、駆動信号と同一周波数のノイズが混入しているか否かを判定する別の方法として、参照信号と検出信号との乗算結果から抽出された直流成分の時間的な変動(例えば、連続して得られた2つの直流成分の差)を利用する方法が考えられる。駆動信号と同一周波数のノイズが混入している場合、直流成分の時間的な変動が大きくなると予想されるため、直流成分の時間的な変動が所定のしきい値を超えた場合に、駆動信号と同一周波数のノイズが混入していると判定することができる。
【0009】
しかしながら、上記のように直流成分の時間的な変動を利用する方法では、物体の近接状態が高速に変化した場合の直流成分の変動と、ノイズによる変動とを区別することができないという不利益がある。そのため、物体(指など)と電極の距離が素早く変化した場合に、この変化によって生じた直流成分の変動をノイズによるものとして誤判定する場合がある。
【0010】
そこで本開示は、検出信号に重畳するノイズ成分を簡易な構成で調べることが可能なセンサ装置とその制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の第1の態様に係るセンサ装置は、検出対象の物理量に応じた振幅を持つ正弦波の検出信号を出力するセンサ部と、検出信号と等しい周波数を持ち、かつ、検出信号と等しい位相を持った正弦波の第1参照信号を生成する参照信号生成部と、センサ部から出力される検出信号に第1参照信号を乗算し、当該乗算結果の信号に含まれる直流成分に応じた信号を、検出対象の物理量に応じた第1復調信号として生成する復調部とを有する。参照信号生成部は、検出信号と等しい周波数を持ち、かつ、検出信号に対して位相がずれた正弦波の第2参照信号を生成する。復調部は、センサ部から出力される検出信号に第2参照信号を乗算し、当該乗算結果の信号に含まれる直流成分に応じた信号を、検出信号に重畳するノイズ成分に応じた第2復調信号として生成する。
【0012】
第1の態様に係るセンサ装置によれば、復調部において、検出信号と等しい周波数を持ち、かつ、検出信号と等しい位相を持った第1参照信号と、センサ部から出力される検出信号とが乗算される。この乗算結果の信号に含まれる直流成分は、検出信号の振幅に応じた大きさ、すなわち、検出対象の物理量に応じた大きさを持つ。従って、第1復調信号は、検出対象の物理量に応じた大きさを持つ。また、復調部では、検出信号と等しい周波数を持ち、かつ、検出信号に対して位相がずれた第2参照信号と、センサ部から出力される検出信号とが乗算される。この乗算結果の信号に含まれる直流成分に応じた第2復調信号は、第1復調信号と比較して、検出信号と等しい位相を持った信号の成分が相対的に小さくなり、検出信号と同一周波数のノイズ成分が相対的に大きくなる。従って、第2復調信号は、第1復調信号に比べて、検出信号に対する相関性が低くなるとともに、検出信号と同一周波数のノイズ成分に対する相関性が高くなる。
【0013】
好適に、参照信号生成部は、検出信号に対して位相が4分の1周期ずれた正弦波の信号を第2参照信号として生成してよい。
【0014】
この構成によれば、検出信号と等しい周波数を持ち、かつ、検出信号に対して位相が4分の1周期ずれた正弦波の第2参照信号と、センサ部から出力される検出信号とが復調部において乗算される。この乗算結果に含まれる直流成分は、検出信号と等しい位相を持った信号の成分、すなわち検出信号に応じた成分をほとんど含んでおらず、検出信号と同一周波数のノイズ成分に応じた大きさを持つ。従って、第2復調信号は、検出信号に対する相関性が更に低くなるとともに、検出信号と同一周波数のノイズ成分に対する相関性が更に高くなる。
【0015】
好適に、上記センサ装置は、正弦波の駆動信号を生成する駆動信号生成部と、制御部とを有してよい。センサ部は、入力される駆動信号に応じて、駆動信号の駆動周波数と等しい周波数を持った検出信号を出力してよい。制御部は、第2復調信号の時間的変化に応じたノイズ量を算出し、算出したノイズ量がしきい値を超えた場合、駆動周波数を変更してよい。
【0016】
この構成によれば、第2復調信号に応じて、検出信号と同一周波数のノイズ成分に関するノイズ量が算出される。このノイズ量がしきい値を超えた場合、駆動周波数が変更され、ノイズの大きい周波数が駆動周波数として使用されなくなる。そのため、ノイズの混入による第1復調信号への影響が回避され易くなる。
【0017】
好適に、制御部は、復調部において連続して生成された複数の第2復調信号に基づいてノイズ量を算出してよい。
【0018】
この構成によれば、連続して生成された複数の第2復調信号に基づいて、第2復調信号の時間的変化に応じたノイズ量が算出される。
【0019】
好適に、上記センサ装置は、複数のセンサ部を有してよい。復調部は、複数のセンサ部の各々について第1復調信号と第2復調信号とを生成してよい。制御部は、複数のセンサ部の各々についてノイズ量を算出し、複数のセンサ部について算出した複数のノイズ量の和がしきい値を超えた場合、駆動周波数を変更してよい。
【0020】
この構成によれば、複数のセンサ部について算出された複数のノイズ量の和がしきい値を超えた場合、ノイズが混入したと判定され、駆動信周波数が変更される。そのため、複数のセンサ部に対して全体的に影響を与えるノイズの混入が生じた場合でも、このノイズ混入による第1復調信号への影響が回避され易くなる。
【0021】
好適に、上記センサ装置は、複数のセンサ部を有してよく、複数のセンサ部の各々は、駆動信号に対して位相が遅延した検出信号を出力してよい。復調部は、複数のセンサ部の各々について第1復調信号と第2復調信号とを生成してよい。参照信号生成部は、複数のセンサ部の各々について、復調部が第1復調信号を生成するための第1参照信号と、復調部が第2復調信号を生成するための第2参照信号とを、駆動信号を用いて生成してよい。制御部は、駆動信号に対する第1参照信号の位相の遅延及び駆動信号に対する第2参照信号の位相の遅延を、複数のセンサ部の各々について個別に設定してよい。
【0022】
この構成によれば、各センサ部において生成される検出信号が、駆動信号に対して個別の位相遅延を生じている場合でも、駆動信号に対する第1参照信号の位相の遅延及び駆動信号に対する第2参照信号の位相の遅延を、この個別の位相遅延に合わせてセンサ部ごとに適切に設定することが可能となる。
【0023】
好適に、制御部は、駆動周波数を変更する場合、予め定められた複数の周波数の中から、現在の駆動周波数と異なる周波数を新たな駆動周波数として選択してよい。
【0024】
この構成によれば、予め定められた複数の周波数の中から駆動周波数が選択されるため、駆動周波数の変更に関連する構成を簡易化することが可能となる。
【0025】
好適に、制御部は、物理量を検出する通常モードにおいて、第1参照信号を生成するように参照信号生成部を制御するとともに、第1復調信号を生成するように復調部を制御し、ノイズを検出するノイズ検出モードにおいて、第2参照信号を生成するように参照信号生成部を制御するとともに、第2復調信号を生成するように復調部を制御してよい。また、制御部は、ノイズ検出モードにおいて生成される第2復調信号の時間的変化に応じたノイズ量を算出し、ノイズ量がしきい値を超えた場合、通常モードにおける駆動周波数を変更してよい。
【0026】
この構成によれば、復調部において、検出信号と第1参照信号とに基づいて第1復調信号を生成する回路と、検出信号と第2参照信号とに基づいて第2復調信号を生成する回路とを共通化することが可能になり、復調部の回路構成が簡易になる。また、参照信号生成部において、第1参照信号と第2参照信号とを同時に生成しなくてもよいため、参照信号生成部の回路構成が簡易になる。
【0027】
好適に、制御部は、通常モードにおいて、復調部による第1復調信号の生成を周期的に繰り返すとともに、通常モードから一時的にノイズ検出モードへ移行してノイズ量を算出する動作を周期的に繰り返してよい。
【0028】
この構成によれば、通常モードにおいて第1復調信号の生成が周期的に繰り返されるとともに、通常モードから一時的にノイズ検出モードへ移行してノイズ量を算出する動作が周期的に繰り返される。そのため、ノイズの混入が新たに発生した場合でも、ノイズ量としきい値との比較に基づく駆動周波数の変更が自動的に行われる。従って、ノイズの混入による第1復調信号への影響が回避され易くなる。
【0029】
好適に、制御部は、ノイズ検出モードへ一時的に移行する度に、予め定められた複数の周波数の中から順番に駆動周波数として使用する周波数を選択し、駆動周波数を変更する場合、しきい値よりノイズ量が小さくなる第2復調信号が生成された直近のノイズ検出モードにおける駆動周波数を、通常モードにおける新たな駆動周波数として選択してよい。
【0030】
この構成によれば、ノイズ検出モードへ一時的に移行する度に、予め定められた複数の周波数の中から順番に選択された駆動周波数を使用して、ノイズ量が算出される。そして、ノイズ検出モードにおいてノイズ量がしきい値を超えた場合、しきい値よりノイズ量が小さくなる第2復調信号が生成された直近のノイズ検出モードにおける駆動周波数が、通常モードにおける新たな駆動周波数として選択される。これにより、直近においてノイズの小さい周波数が駆動周波数として選択され易くなるため、ノイズの混入による第1復調信号への影響が回避され易くなる。
【0031】
好適に、上記センサ装置は、正弦波の駆動信号を生成する駆動信号生成部を有してよい。センサ部は、物体の近接度合いに応じて静電容量が変化するキャパシタを形成する少なくとも1つの電極と、電極を介してキャパシタに駆動信号を印加し、駆動信号の印加に伴ってキャパシタに伝送される電荷に応じた検出信号であって、キャパシタの静電容量に応じた振幅を持つ検出信号を生成する静電容量検出回路とを含んでよい。
【0032】
この構成によれば、物体の近接度合いに応じた静電容量の変化を検出するセンサ装置において、検出信号に重畳する駆動信号と同一周波数のノイズ成分を簡易な構成で調べることが可能になる。
【0033】
本開示の第2の態様に係る制御方法は、正弦波の駆動信号を生成する駆動信号生成部と、入力される駆動信号に応じて、駆動信号の駆動周波数と等しい周波数を持ち、かつ、検出対象の物理量に応じた振幅を持つ正弦波の検出信号を出力するセンサ部と、検出信号と等しい周波数を持ち、かつ、検出信号と等しい位相を持った正弦波の第1参照信号を生成する参照信号生成部と、センサ部から出力される検出信号に第1参照信号を乗算し、当該乗算結果の信号に含まれる直流成分に応じた信号を、検出対象の物理量に応じた第1復調信号として生成する復調部とを有するセンサ装置の制御方法に関する。このセンサ装置の制御方法は、物理量を検出する通常モードにおいて、第1参照信号を生成するように参照信号生成部を制御することと、通常モードにおいて、第1復調信号を生成するように復調部を制御することと、ノイズを検出するノイズ検出モードにおいて、検出信号と等しい周波数を持ち、かつ、検出信号に対して位相がずれた正弦波の第2参照信号を生成するように参照信号生成部を制御することと、ノイズ検出モードにおいて、センサ部から出力される検出信号に第2参照信号を乗算し、当該乗算結果の信号に含まれる直流成分に応じた信号を、検出信号に重畳するノイズ成分に応じた第2復調信号として生成するように復調部を制御することと、ノイズ検出モードにおいて生成される第2復調信号の時間的変化に応じたノイズ量を算出することと、ノイズ量がしきい値を超えた場合、通常モードにおける駆動周波数を変更することとを有する。
【0034】
本開示の第3の態様は、上記第2の態様に係るセンサ装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【発明の効果】
【0035】
本開示によれば、検出信号に重畳するノイズ成分を簡易な構成で調べることが可能なセンサ装置とその制御方法及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本実施形態に係るセンサ装置の構成の一例を示す図である。
図2図2は、図1に示すセンサ装置における静電容量検出回路及び復調回路の構成の一例を示す図である。
図3図3は、図1に示すセンサ装置における参照信号生成部の構成の一例を示す図である。
図4図4は、図1に示すセンサ装置の動作例を説明するためのフローチャートである。
図5図5は、図1に示すセンサ装置の他の動作例を説明するためのフローチャートである。
図6図6は、他の実施形態に係るセンサ装置の構成の一例を示す図である。
図7図7は、図6に示すセンサ装置における静電容量検出回路及び復調回路の構成の一例を示す図である。
図8図8は、図6に示すセンサ装置における参照信号生成部の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本実施形態に係るセンサ装置について図面を参照しながら説明する。
【0038】
図1は、本実施形態に係るセンサ装置の構成の一例を示す図である。図1に示すセンサ装置は、複数のセンサ部10−1〜10−n(以下、各々の区別せずに「センサ部10」と記す場合がある。)と、復調部20と、正弦波発生部30と、駆動信号生成部35と、参照信号生成部40と、処理部50と、記憶部60と、インターフェース部70を有する。
【0039】
本実施形態に係るセンサ装置は、指などの物体が近接することに伴う静電容量の変化を検出する装置であり、例えば、物体の近接に伴う静電容量の変化を検出して種々の処理(接触の判定、接触位置の座標の算出など)を行うタッチパッドやタッチパネル、タッチスイッチ等を含む。なお、本明細書における「近接」とは、対象に対して近くにあることを意味しており、対象との接触の有無を限定しない。
【0040】
[センサ部10]
センサ部10−i(iは1からnまでの整数を示す。)は、指などの物体1の近接度合に応じた検出信号Si(以下、区別せずに「検出信号S」と記す場合がある。)を出力する。センサ部10−iは、入力される正弦波の駆動信号Vdに応じて、駆動信号Vdの駆動周波数fdと等しい周波数を持ち、駆動信号Vdに対して所定の位相φi(以下、区別せずに「位相φ」と記す場合がある。)を持ち、かつ、物体1の近接状態に応じて変化するキャパシタCxの静電容量に応じた振幅を持つ正弦波の検出信号Siを生成する。
【0041】
検出信号Siが駆動信号Vdに対して持つ位相φiは、センサ部10−iの検出信号Siが持つ固有の値である。すなわち、各センサ部10において生成される検出信号Sは、駆動信号Vdに対して個別の位相φを持つ。
【0042】
センサ部10−iは、例えば図2に示すように、指などの物体1が近接する場所に配置された電極101と、静電容量検出回路102を含む。電極101は、物体1の近接度合いに応じて静電容量が変化するキャパシタCxを形成する。キャパシタCxは、交流的に接地電位の導体とみなせる指などの物体1と電極101との間に形成される寄生的な容量成分である。キャパシタCxの静電容量は、物体1が電極101に近づくほど大きくなる。
【0043】
静電容量検出回路102は、電極101を介してキャパシタCxに伝送される電荷に基づいて、キャパシタCxの静電容量に応じた検出信号Siを生成する。静電容量検出回路102は、電極101を介してキャパシタCxに駆動信号Vdを印加し、駆動信号Vdの印加に伴ってキャパシタCxに伝送される電荷に応じた検出信号Siを生成する。検出信号Siは、キャパシタCxの静電容量に応じた振幅を持つ。
【0044】
静電容量検出回路102は、例えば図2に示すように、演算増幅器110と、キャパシタCf1を含む。演算増幅器110の反転入力端子と出力端子との間には、キャパシタCf1が接続される。演算増幅器110の非反転入力端子には、駆動信号生成部35によって正弦波の駆動電圧Vdが供給される。電極101は、演算増幅器110の反転入力端子に接続される。駆動電圧Vdは、例えば正弦波の交流電圧である。演算増幅器110は、反転入力端子の電圧と非反転入力端子の電圧とがほぼ一致するように出力電圧を制御するため、キャパシタCxには、駆動電圧Vdとほぼ同じ交流電圧が発生する。キャパシタCxに交流電圧が発生するとき、この交流電圧とキャパシタCxの静電容量とに比例した電荷の変化が生じる。キャパシタCxにおける電荷の変化は、キャパシタCf1における電荷の変化とほぼ等しい。その結果、キャパシタCf1に生じる交流電圧は、キャパシタCxの静電容量に概ね比例した振幅を持つ。検出信号Siは、演算増幅器110の出力端子と非反転入力端子との間に生じる電圧であり、キャパシタCf1に生じる交流電圧と略等しい。従って、検出信号Siは、キャパシタCxの静電容量に概ね比例した振幅を持つ。
【0045】
[正弦波発生部30]
正弦波発生部30は、処理部50の後述する制御部501の制御に従って、駆動信号Vdの基となる正弦波信号Wを生成する。正弦波発生部30は、例えば処理部50のクロックと同期して動作するデジタル回路であり、正弦波信号Wは駆動周波数fdに設定されたデジタル信号である。
【0046】
[駆動信号生成部35]
駆動信号生成部35は、正弦波発生部30において生成された正弦波信号Wに基づいて、アナログ信号である正弦波の駆動信号Vdを生成する。一例において、駆動信号Vdは正弦波の交流電圧であるが、他の例において、駆動信号Vdは非正弦波(例えば矩形波)の交流電圧であってもよい。駆動信号Vdを正弦波の交流電圧とすることにより、電極101から放出される高調波のノイズを低減することができる。
【0047】
[参照信号生成部40]
参照信号生成部40は、後述する復調部20において検出信号S1〜Snとの乗算に用いられる参照信号F1〜Fn(以下、各々を区別せずに「参照信号F」と記す場合がある。)を生成する。参照信号Fiは、検出信号Siとの乗算に用いられる。
【0048】
本実施形態に係るセンサ装置は、2つの動作モード(通常モード、ノイズ検出モード)を有する。通常モードは、キャパシタCxの静電容量を検出する動作モードであり、ノイズ検出モードは、検出信号Siに重畳したノイズ成分を検出する動作モードである。参照信号生成部40は、この通常モードとノイズ検出モードとにおいて、参照信号Fiの位相を4分の1周期(π/2ラジアン)変化させる。
【0049】
すなわち参照信号生成部40は、通常モードにおいて、正弦波の検出信号Siと等しい周波数を持ち、かつ、正弦波の検出信号Siと等しい位相を持った正弦波の参照信号Fi(以下、「第1参照信号FAi」と記す場合がある。)を生成する。具体的には、参照信号生成部40は、駆動信号生成部35から入力される駆動信号Vdに応じて、駆動周波数fdと等しい周波数を持ち、かつ、駆動信号Vdに対して所定の位相φiを持った第1参照信号FAiを生成する。
【0050】
また、参照信号生成部40は、ノイズ検出モードにおいて、正弦波の検出信号Siと等しい周波数を持ち、かつ、正弦波の検出信号Siに対して位相が4分の1周期ずれた正弦波の参照信号Fi(以下、「第2参照信号FBi」と記す場合がある。)を生成する。具体的は、参照信号生成部40は、駆動周波数fdと等しい周波数を持ち、かつ、駆動信号Vdに対する位相が第1参照信号FAiと比較して4分の1周期ずれた第2参照信号FBiを生成する。
【0051】
通常モード時の第1参照信号FAiは、検出信号Siと略同じ位相を持つが、ノイズ検出モード時の第2参照信号FBiは、検出信号Siに対して4分の1周期ずれた位相を持つ。
【0052】
図3は、参照信号生成部40の構成の一例を示す図である。図3に示す参照信号生成部40は、位相調節部42と、マルチプレクサ43と、位相調節部44−1〜44−nとを有する。位相調節部42は、正弦波信号Wに対して位相が4分の1周期(π/2ラジアン)ずれた信号を出力する。マルチプレクサ43は、通常モードにおいて正弦波信号Wを選択し、ノイズ検出モードにおいて位相調節部42の出力信号を選択する。位相調節部44−iは、マルチプレクサ43において選択された信号を入力し、この入力信号に対して「φi」の位相を持つように調節された信号を、参照信号Fiとして出力する。
【0053】
[復調部20]
復調部20は、検出信号S1〜Snをそれぞれ参照信号F1〜Fnにより復調し、その復調結果を示す復調信号D1〜Dn(以下、各々を区別せずに「復調信号D」と記す場合がある。)を生成する。復調信号Diは、検出信号Siを参照信号Fiによって復調した
信号である。
【0054】
復調部20は、例えば図1に示すように、n個の復調回路21−1〜21−n(以下、各々を区別せずに「復調回路21」と記す場合がある。)を含む。復調回路21−iは、検出信号Siを参照信号Fiによって復調した復調信号Diを生成する。すなわち、復調回路21−iは、検出信号Siに参照信号Fiを乗算し、その乗算結果の信号に含まれる直流成分に応じた信号を復調信号Diとして生成する。
【0055】
上述したように、通常モード時の第1参照信号FAiと、ノイズ検出モード時の第2参照信号FBiとでは位相が4分の1周期ずれているため、復調回路21−iが生成する復調信号Diも、通常モード時とノイズ検出モード時とでは性質の異なった信号となる。以下、通常モード時の復調信号Diを「第1復調信号DAi」と記し、ノイズ検出モード時の復調信号Diを「第2復調信号DBi」と記す。
【0056】
第1復調信号DAiは、検出信号Siと第1参照信号FAiとの乗算結果の信号に含まれる直流成分に応じた信号である。検出信号Siを「As・Sin(ωt−φi)」とし、第1参照信号FAiを「Af・Sin(ωt−φi)」とし、角周波数ωを「2πfd」とした場合、検出信号Siと第1参照信号FAiとを乗算して得られる信号Y1は、次の式で表される。
【0057】
Y1 = As・Sin(ωt−φi)×Af・Sin(ωt−φi)
= − K・COS(2ωt−2φi)+K … (1)
ただし、K = As・Af/2
【0058】
第1復調信号DAiは、式(1)に示す信号Y1の直流成分に応じた信号であり、「K」に比例した大きさを持つ。従って、通常モード時に復調回路21−iが生成する第1復調信号DAiは、キャパシタCxの静電容量に応じた大きさを持つ信号となる。
【0059】
他方、検出信号Siに対して位相が4分の1周期(π/2ラジアン)ずれた第2参照信号FBiを「Af・Sin(ωt−φi−π/2)」とした場合、検出信号Siと第2参照信号FBiとを乗算して得られる信号Y2は、次の式で表される。
【0060】
Y2 = As・Sin(ωt−φi−π/2)×Af・Sin(ωt−φi)
= − K・COS(2ωt−2φi)+K・COS(π/2) … (2)
【0061】
第2復調信号DBiは、式(2)に示す信号Y2の直流成分に応じた信号であり、式(2)における「COS(π/2)」はゼロである。そのため、検出信号Siに全くノイズ成分が重畳していない場合、信号Y2の直流成分はゼロになるため、第2復調信号DBiもゼロ(若しくはゼロに相当する基準値)となる。逆にいうと、第2復調信号DBiは、駆動周波数fdと同じ周波数を持ち、かつ、検出信号Siとは異なる位相を持ったノイズ成分に応じた大きさを持つ。従って、ノイズ検出モード時に復調回路21−iが生成する第2復調信号DBiは、検出信号Siに重畳する駆動周波数fdと同一周波数のノイズ成分に応じた大きさを持つ信号となる。
【0062】
復調回路21−iは、例えば図2に示すように、アナログの検出信号Siをデジタル信号に変換するA/D変換器211と、乗算回路212と、ローパスフィルタ213とを有する。A/D変換器211は、例えば、演算増幅器110の出力信号と駆動信号Vdとの差を増幅するとともに、エイリアシングを防ぐローパスフィルタとしても機能する差動アンプを含む。A/D変換器211は、この差動アンプの出力信号(キャパシタCf1の交流電圧に相当する信号)をデジタル信号に変換する。乗算回路212は、A/D変換器211においてデジタル信号に変換された検出信号Siと、参照信号Fi(第1参照信号FAi又は第2参照信号FBi)とを乗算する。ローパスフィルタ213は、乗算回路212の乗算結果に信号に含まれる高周波成分を除去し、直流成分を抽出する。ローパスフィルタ213において抽出された直流成分が、復調信号Diとして後述の処理部50に出力される。
【0063】
なお、図1に示す復調部20の例では、n個の復調回路21を用いてn個の復調信号Dを生成しているが、マルチプレクサなどを用いて1つの復調回路21に複数のセンサ部10を接続することにより、n個より少ない数の復調回路21を用いてn個の復調信号Dを生成するようにしてもよい。
【0064】
[処理部50]
処理部50は、入力装置の全体的な動作を制御する回路であり、例えば、記憶部60に格納されたプログラム601の命令コードに従って処理を行う1以上のコンピュータや、特定の機能を実現するように構成された専用のハードウェア(ロジック回路等)を含んで構成される。処理部50の処理は、全て1以上のコンピュータにおいてプログラム601に基づいて実行してもよいし、その少なくとも一部を専用のハードウェアで実行してもよい。
【0065】
処理部50は、例えば図1に示すように、制御部501と位置算出部502を含む。
【0066】
制御部501は、各動作モード(通常モード、ノイズ検出モード)において各信号(正弦波信号W、参照信号F、駆動信号Vd、検出信号S、復調信号D)が適切に生成されるように、各回路(センサ部10、復調部20、正弦波発生部30、駆動信号生成部35、参照信号生成部40)における信号の生成タイミングなどを制御する。
【0067】
具体的には、制御部501は、通常モードにおいて、第1参照信号FAiを生成するように参照信号生成部40を制御するとともに、第1復調信号DAiを生成するように復調部20を制御し、ノイズ検出モードにおいて、第2参照信号FBiを生成するように参照信号生成部40を制御するとともに、第2復調信号DBiを生成するように復調部20を制御する。
【0068】
更に、制御部501は、ノイズ検出モードにおいて生成される第2復調信号DBiの時間的変化に応じたノイズ量を算出し、ノイズ量がしきい値を超えた場合、通常モードにおける駆動周波数fdを変更する。
【0069】
まず、制御部501は、n個の第2復調信号DB1〜DBnに対応するn個のノイズ量N1〜Nn(以下、各々を区別せずに「ノイズ量N」と記す場合がある。)を算出する。制御部501は、第2復調信号DBiに対応するノイズ量Niを算出する場合、連続して生成された複数の第2復調信号DBiに基づいて、第2復調信号DBiの時間的変化に応じたノイズ量Niを算出する。
【0070】
例えば、制御部501は、連続して生成された2つの第2復調信号DBiの差(絶対値)を、ノイズ量Niとして算出してもよい。また、制御部501は、連続して生成された2つの第2復調信号DBiの差(絶対値)を、連続して生成された3以上の第2復調信号DBiについて全て計算し、計算した全ての差(絶対値)の合計値を、ノイズ量Niとして算出してもよい。あるいは、制御部501は、連続して生成された3以上の第2復調信号DBiにおける最大値と最小値との差(絶対値)をノイズ量Niとして算出してもよいし、連続して生成された複数の第2復調信号DBiの分散をノイズ量Niとして算出してもよい。すなわちノイズ量Niは、第2復調信号DBiの時間的変化を表す値であればよく、その算出方法は実施態様に応じて適宜選択してよい。
【0071】
また、制御部501は、ノイズ量Niの算出結果として、上述のような方法により得られた1つのノイズ量Niをそのまま使用してもよいし、複数連続して取得したノイズ量Niを移動平均法などにより平均化したものをノイズ量Niの算出結果として使用してもよい。
【0072】
次に、制御部501は、n個のノイズ量N1〜Nnの算出結果に基づいて、ノイズの混入の有無を判定する。例えば、制御部501は、n個のノイズ量N1〜Nnの算出結果に基づいて1つのノイズ量の代表値を求め、このノイズ量の代表値が所定のしきい値を超える場合、ノイズが混入していると判定する。ノイズ量の代表値は、例えば、n個のノイズ量N1〜Nnの算出結果を合計したもの(あるいは平均化したもの)でもよいし、n個のノイズ量N1〜Nnの算出結果における最大値でもよい。
【0073】
また制御部501は、n個のノイズ量N1〜Nnの算出結果をそれぞれしきい値と判定し、n個のノイズ量N1〜Nnの中でしきい値を超えるものの数が所定数に達した場合、ノイズが混入していると判定してもよい。
【0074】
制御部501は、n個のノイズ量N1〜Nnの算出結果に基づいてノイズが混入していると判定した場合、駆動周波数fdを変更する。駆動周波数fdを変更する場合、制御部501は、予め定められた複数の周波数の中から、現在の駆動周波数fdと異なる周波数を新たな駆動周波数fdとして選択する。
【0075】
例えば、制御部501は、通常モードにおいて、復調部20による第1復調信号DAiの生成を周期的に繰り返すとともに、通常モードから一時的にノイズ検出モードへ移行して、ノイズ量N1〜Niを算出する動作を周期的に繰り返す。すなわち、制御部501は、ノイズ量N1〜Niを算出してノイズの混入の有無を判定する動作を周期的に繰り返す。また、制御部501は、ノイズ検出モードへ一時的に移行する度に、予め定められた複数の周波数の中から順番に駆動周波数fdとして使用する周波数を選択する。すなわち、制御部501は、ノイズ検出モードへ一時的に移行する度に、駆動周波数fdを切り替えてノイズ量N1〜Niを算出し、ノイズの混入の有無を判定する。そして、制御部501は、ノイズ量N1〜Nnの算出結果に基づいてノイズが混入していると判定した場合、しきい値よりノイズ量が小さくなる第2復調信号が生成された直近のノイズ検出モード(ノイズが混入していないと判定した直近のノイズ検出モード)において使用した駆動周波数fdを特定し、この特定した駆動周波数fdを、通常モードにおける新たな駆動周波数fdとして選択する。
【0076】
位置算出部502は、復調部20において生成された第1復調信号DA1〜DAnに基づいて、指などの物体1が近接した位置を算出する。例えば、センサ部10−1〜10−nの各電極101は、物体1が近接する操作面において2つの方向(X方向、Y方向)に並んで配置されている。位置算出部502は、X方向に並んだ電極101に対応する一群の第1復調信号DAiの分布と、Y方向に並んだ電極101に対応する一群の第1復調信号DAiの分布とに基づいて、操作面における物体1の近接位置(X方向の座標及びY方向の座標)を算出する。
【0077】
[記憶部60]
記憶部60は、処理部50において処理に使用される定数データや、処理の過程で一時的に参照される変数データを記憶する。また記憶部60は、処理部50のコンピュータによって実行されるプログラム601を記憶する。記憶部60は、例えば、DRAMやSRAMなどの揮発性メモリ、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリ、ハードディスクドライブなどの磁気記憶装置のうちの1つ以上を含んで構成される。
【0078】
[インターフェース部70]
インターフェース部70は、センサ装置と他の制御装置(センサ装置を搭載する電子機器のコントロール用ICなど)との間でデータをやり取りするための回路である。処理部50は、記憶部60に記憶される情報(物体1の座標の情報など)をインターフェース部70から図示しない制御装置へ出力する。また、インターフェース部70は、処理部50のコンピュータにおいて実行されるプログラム601を、光ディスクやUSBメモリなどの非一時的記録媒体やネットワーク上のサーバなどから取得して、記憶部60にロードしてもよい。
【0079】
ここで、上述した構成を有するセンサ装置の動作の一例について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0080】
制御部501は、動作モードを通常モードに設定した場合、参照信号生成部40において第1参照信号FA1〜FAnを生成しながら、復調部20において第1復調信号DA1〜DAnの生成を周期的に繰り返す(ST100)。位置算出部502は、生成された第1復調信号DA1〜DAnに基づいて、物体の近接位置の座標を算出する。
【0081】
制御部501は、通常モードの動作を実行しながら、ノイズ検出モードへの周期的な移行のタイミングを監視する(ST105)。ノイズ検出モードへ移行するタイミングとなった場合(ST105のYes)、制御部501は、動作モードを通常モードからノイズ検出モードへ一時的に切り替える(ST110)。
【0082】
制御部501は、ノイズ検出モードへ移行すると、予め定められた複数の周波数の中から、駆動周波数fdとして設定すべき周波数を選択する。予め定められた複数の周波数を仮にf1,f2,f3,f4,f5とすると、制御部501は、この5つの周波数の中から、順番に駆動周波数fdとして使用する周波数を選択する。例えば、5つの周波数における順番がf1,f2,f3,f4,f5,f1,f2,f3,…のように定められている場合において、前回のノイズ検出モードで使用した周波数が「f3」であったとすると、制御部501は、今回のノイズ検出モードで駆動周波数fdとして使用する周波数として、「f3」の次の「f4」を選択する(ST110)。
【0083】
制御部501は、選択した駆動周波数fdを持つ正弦波信号Wを正弦波発生部30において生成し、これにより駆動信号Vdの駆動周波数fdを設定する。また制御部501は、参照信号生成部40において第2参照信号FB1〜FBnを生成しながら、復調部20において第2復調信号DB1〜DBnの生成を繰り返す(ST110)。
【0084】
制御部501は、ノイズ検出モードにおいて連続して生成された複数の第2復調信号DBiに基づいて、第2復調信号DBiの時間的変化を表すノイズ量Niを算出する。そして制御部501は、算出したn個のノイズ量N1〜Nnの算出結果からノイズ量の代表値を求め(ST110)、このノイズ量の代表値が所定のしきい値を超えるか否か判定する(ST115)。
【0085】
ノイズ量の代表値が所定のしきい値以下の場合(ST115のNo)、制御部501は、ステップST115においてノイズ量がしきい値より小さいと判定した最新のノイズ検出モードの駆動周波数fdとして、現在の駆動周波数fdを記録する(ST125)。そして制御部501は、動作モードをノイズ検出モードから通常モードへ戻し、ステップST100の動作を繰り返す。
【0086】
一方、ノイズ量の代表値が所定のしきい値を超える場合(ST115のYes)、制御部501は、しきい値よりノイズ量が小さくなる第2復調信号が生成された直近のノイズ検出モードにおける駆動周波数fd(ステップST125において最後に記録した駆動周波数fd)を特定し(ST120)、この特定した駆動周波数fdを、次の通常モードにおける新たな駆動周波数fdとして選択する(ST130)。その後、制御部501は、動作モードをノイズ検出モードから通常モードへ戻し、ステップST100の動作を繰り返す。
【0087】
図5は、本実施形態に係るセンサ装置の他の動作例を説明するためのフローチャートである。図5に示すフローチャートにおけるステップST200及びST205は、図4に示すフローチャートにおけるステップST100及びST105と同じであるため、説明を割愛する。
【0088】
制御部501は、ノイズ検出モードへ移行するタイミングとなった場合(ST205のYes)、動作モードを通常モードからノイズ検出モードへ一時的に切り替える(ST210)。
【0089】
制御部501は、ノイズ検出モードへ移行すると、通常モードと同じ駆動周波数fdのまま、参照信号生成部40において第2参照信号FB1〜FBnを生成し、復調部20において第2復調信号DB1〜DBnの生成を繰り返す(ST210)。
【0090】
制御部501は、連続的に生成された複数の第2復調信号DB1〜DBnに基づいてn個のノイズ量N1〜Nnを算出し、その算出結果からノイズ量の代表値を求め(ST210)、ノイズ量の代表値が所定のしきい値を超えるか否か判定する(ST215)。
【0091】
ノイズ量の代表値が所定のしきい値以下の場合(ST215のNo)、制御部501は動作モードをノイズ検出モードから通常モードへ戻し、ステップST200の動作を繰り返す。
【0092】
一方、ノイズ量の代表値が所定のしきい値を超える場合(ST215のYes)、制御部501は、予め定められた複数の周波数の中から、他の駆動周波数fdを選択する。例えば、制御部501は、複数の周波数において予め定められた順番に従って、現在の駆動周波数fdの次にあたる周波数を、新たな駆動周波数fdとして選択する。例えば、複数の周波数がf1,f2,f3,f4,f5と定められており、その順番がf1,f2,f3,f4,f5,f1,f2,f3,…のように定められている場合において、現在の駆動周波数fdが「f5」であったとすると、制御部501は、新たな駆動周波数fdとして、「f5」の次の「f1」を選択する(ST220)。
【0093】
制御部501は、選択した駆動周波数fdを持つ正弦波信号Wを正弦波発生部30において生成し、これにより駆動信号Vdの駆動周波数fdを設定する。また制御部501は、参照信号生成部40において第2参照信号FB1〜FBnを生成しながら、復調部20において第2復調信号DB1〜DBnの生成を繰り返す(ST220)。
【0094】
制御部501は、連続的に生成された複数の第2復調信号DB1〜DBnに基づいてn個のノイズ量N1〜Nnを算出し、その算出結果からノイズ量の代表値を求め(ST220)、ノイズ量の代表値が所定のしきい値を超えるか否か判定する(ST225)。
【0095】
ノイズ量の代表値が所定のしきい値以下の場合(ST225のNo)、制御部501は動作モードをノイズ検出モードから通常モードへ戻し、ステップST200の動作を繰り返す。
【0096】
一方、ノイズ量の代表値が所定のしきい値を超える場合(ST225のYes)、制御部は、予め定められた複数の周波数の中から、ステップST220において未だ駆動周波数fdとして選択されていない周波数があるか否かを判定する(ST230)。ステップST220において選択されていない周波数がある場合(ST230のYes)、制御部501は、その周波数を駆動周波数fdとして選択し、ステップST220以降の動作を繰り返す。ステップST220において全ての周波数が選択された場合(ST230のNo)、制御部501は、ステップST220において選択された全ての駆動周波数fdにおけるノイズ量(n個のノイズ量N1〜Nnから求めた代表値)を比較し、ノイズ量が最も小さくなった駆動周波数fdを、新たな駆動周波数fdとして選択する(ST235)。そして、制御部501は、動作モードをノイズ検出モードから通常モードへ戻し、ステップST200の動作を繰り返す。
【0097】
(まとめ)
本実施形態によれば、通常モードにおいて、駆動信号Vdの駆動周波数fdと等しい周波数を持ち、かつ、駆動信号Vdに対して所定の位相φiを持った検出信号Siと、駆動周波数fdと等しい周波数を持ち、かつ、駆動信号Vdに対して所定の位相φiを持った第1参照信号FAiとが乗算される。この乗算結果の信号Y1に含まれる直流成分は、式(1)において示すように、検出信号Siの振幅に応じた大きさ、すなわち、キャパシタCxの静電容量に応じた大きさを持つ。従って、復調部20が生成する第1復調信号DAiは、キャパシタCxの静電容量に応じた大きさを持つ。
【0098】
また、本実施形態によれば、ノイズ検出モードにおいて、駆動周波数fdと等しい周波数を持ち、かつ、駆動信号Vdに対する位相が第1参照信号FAiと比較して4分の1周期ずれた第2参照信号FBiと、検出信号Siとが乗算される。この乗算結果の信号に含まれる直流成分は、式(2)に示すように、駆動信号Vdに対して所定の位相φiを持った信号の成分、すなわち検出信号Siに応じた成分をほとんど含んでおらず、駆動周波数fdと同一周波数のノイズ成分に応じた大きさを持つ。従って、復調部20が生成する第2復調信号DBiは、検出信号Siに重畳する駆動周波数fdと同一周波数のノイズ成分に応じた大きさを持っている。つまり、第2復調信号DBiに基づいて、検出信号Siに重畳する駆動周波数fdと同一周波数のノイズ成分を調べることができる。
【0099】
本実施形態によれば、第2参照信号FBiの時間的変化に応じて、駆動周波数fdと同一周波数のノイズ成分に関するノイズ量が算出される。このノイズ量がしきい値を超えた場合、駆動周波数fdが変更され、ノイズの大きい周波数が駆動周波数fdとして使用されなくなる。そのため、ノイズの混入による第1参照信号FAiへの影響が回避され易くなる。
【0100】
本実施形態によれば、複数のセンサ部10について算出された複数のノイズ量Nの和がしきい値を超えた場合、ノイズが混入したと判定され、駆動周波数fdが変更される。そのため、複数のセンサ部10に対して全体的に影響を与えるノイズの混入が生じた場合でも、このノイズ混入による第1参照信号FAiへの影響が回避され易くなる。
【0101】
本実施形態によれば、駆動信号Vdに対して第1参照信号FAiが持つ所定の位相φiが、複数のセンサ部10の各々について個別に設定される。すなわち、駆動信号Vdに対する第1参照信号FAiの位相の遅延及び駆動信号Vdに対する第2参照信号FBiの位相の遅延が、複数のセンサ部10の各々について個別に設定される。これにより、各センサ部10において生成される検出信号Siが、駆動信号Vdに対して個別の位相φiを持っている場合でも、駆動信号Vdに対して第1参照信号FAiが持つ所定の位相を、この個別の位相φiに合わせてセンサ部10ごとに設定することが可能となり、第1参照信号FAiの位相と検出信号Siの位相とを精度よく一致させることができる。また、第2参照信号FBiと検出信号Siとの位相差を、精度よく4分の1周期に設定することができる。第1参照信号FAiの位相と検出信号Siの位相との差が小さくなることにより、第1復調信号DAiによる検出信号Siの検出感度が高くなる。第2参照信号FBiと検出信号Siとの位相差が4分の1周期に近づくことにより、第2復調信号DBiによる検出信号Si以外の成分(ノイズ成分)の検出感度が高くなる。
【0102】
本実施形態によれば、ノイズ量としきい値との比較結果に基づいて駆動周波数fdを変更する場合、予め定められた複数の周波数の中から駆動周波数fdが選択されるため、駆動周波数fdの変更に関連する構成を簡易化することが可能となる。
【0103】
本実施形態によれば、通常モードにおいて第1復調信号DAiの生成が周期的に繰り返されるとともに、通常モードから一時的にノイズ検出モードへ移行してノイズ量を算出する動作が周期的に繰り返される。そのため、ノイズの混入が新たに発生した場合でも、ノイズ量としきい値との比較に基づく駆動周波数fdの変更が自動的に行われる。従って、ノイズの混入による第1復調信号DAiへの影響が回避され易くなる。
【0104】
本実施形態によれば、ノイズ検出モードへ一時的に移行する度に、予め定められた複数の周波数の中から順番に選択された駆動周波数fdを使用して、ノイズ量が算出される。そして、ノイズ検出モードにおいてノイズ量がしきい値を超えた場合、しきい値よりノイズ量が小さくなる第2復調信号DBiが生成された直近のノイズ検出モードにおける駆動周波数fdが、通常モードにおける新たな駆動周波数fdとして選択される。これにより、直近においてノイズの小さい周波数が駆動周波数fdとして選択され易くなるため、ノイズの混入による第1復調信号DAiへの影響が回避され易くなる。
【0105】
なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0106】
例えば、上述した実施形態では、通常モードにおいて第1復調信号DAiが生成され、ノイズ検出モードにおいて第2復調信号DBiが生成されるが、本開示の他の実施形態では、第1復調信号DAiと第2復調信号DBiを同時に生成できるようにしてもよい。
【0107】
図6は、他の実施形態に係るセンサ装置の構成の一例を示す図である。図6に示すセンサ装置は、図1に示すセンサ装置における復調部20及び参照信号生成部40を復調部20A及び参照信号生成部40Aに置き換えたものである。
【0108】
復調部20Aは、例えば図7に示すように、復調部20におけるn個の復調回路21−1〜21−n(図1)に対応したn個の復調回路22−1〜22−nを有する。復調回路22−iは、復調回路21−i(図2)と同様の構成に加えて、A/D変換器211の出力信号(検出信号Siをデジタル化した信号)と第2参照信号FBiとの乗算を行う乗算回路222、及び、乗算回路222の乗算結果から直流成分を抽出するローパスフィルタ223を含む。ローパスフィルタ223は第2復調信号DBiを出力する。また、図6の例において、乗算回路212は第1参照信号FAiを入力し、ローパスフィルタ213は第1復調信号DAiを出力する。
【0109】
参照信号生成部40Aは、正弦波信号Wに基づいて第1参照信号FAi及び第2参照信号FBiを同時に生成する。図8に示す参照信号生成部40Aは、図3に示す参照信号生成部40において位相調節部42とマルチプレクサ43を削除し、位相調節部44−1〜44−nへそれぞれ正弦波信号Wを入力するとともに、第2参照信号FB1〜FBnを生成するための位相調節部45−1〜45−nを新たに追加したものである。位相調節部44−iは、第1参照信号FAiに対して位相が4分の1周期ずれた信号を、第2参照信号FBiとして出力する。
【0110】
図6図8に示すセンサ装置によれば、図1図3に示すセンサ装置に比べて回路の構成部品が増えるものの、第1復調信号DAiと第2復調信号DBiを同時に生成することによってノイズの検出頻度を高めることができるため、ノイズの混入による第1復調信号DAへの影響が更に効果的に回避され易くなる。
【0111】
上述した実施形態では、第2参照信号FBiの位相が検出信号Siの位相(第1参照信号FAiの位相)に対して4分の1周期ずれている例を挙げたが、本開示の他の実施形態におけるセンサ装置では、第2参照信号FBiと検出信号Siとの位相のずれが4分の1周期以外であってもよい。この場合でも、第2復調信号は、第1復調信号に比べて、検出信号に対する相関性が低くなるとともに、検出信号と同一周波数のノイズ成分に対する相関性が高くなる。そのため、第2復調信号DBiに基づいて、検出信号Siに重畳する駆動周波数fdと同一周波数のノイズ成分を調べることができる。
【0112】
上述した実施形態では、センサ部10に供給する駆動信号Vdに基づいて第1参照信号FAi及び第2参照信号FBiが生成されているが、本開示の他の実施形態におけるセンサ装置では、検出信号に関係する他の信号や、センサ部が出力する検出信号自身に基づいて第1参照信号及び第2参照信号を生成してもよい。
【0113】
上述した実施形態では、電極と物体との間に形成されるキャパシタの静電容量を検出する自己容量型のセンサ装置の例を示したが、本開示の他の実施形態におけるセンサ装置は、2つの電極間に形成されるキャパシタの静電容量を検出する相互容量型のセンサ装置でもよい。
【0114】
上述した実施形態では、静電容量を検出するセンサ装置の例を示したが、本開示の技術に係るセンサ装置は、静電容量以外の種々の物理量を検出するセンサ装置にも広く適用可能である。
【0115】
本願は、日本特許庁に2018年9月7日に出願された特願2018−167887号の優先権を主張するものであり、その全内容を参照によりここに援用する。
【符号の説明】
【0116】
1…物体、Cx…キャパシタ、10−1〜10−n…センサ部、101…電極、102…静電容量検出回路、110…演算増幅器、20,20A…復調部、21−1〜21−n,22−1〜22−n…復調回路、211…A/D変換器、212,222…乗算回路、213,223…ローパスフィルタ、30…正弦波発生部、35…駆動信号生成部、40,40A…参照信号生成部、42,44−1〜44−n,45−1〜45−n…位相調節部、43…マルチプレクサ、50…処理部、501…制御部、502…位置算出部、60…記憶部、601…プログラム、70…インターフェース部、Cf1…キャパシタ、W…正弦波信号、Vd…駆動信号、F1〜Fn…参照信号、FA1〜FAn…第1参照信号、FB1〜FBn…第2参照信号、S1〜Sn…検出信号、D1〜Dn…復調信号、DA1〜DAn…第1復調信号、DB1〜DBn…第2復調信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8